たがために、勝利をつかみ握り締め。
季節は秋、高校では体育祭が開催される
馨とは別の組になってしまった柴乃に対し、
同じ組である隼人は彼に勝負を持ち掛ける。
馨が負けたら、一切関わるなといわれて・・・
『続いてプログラム十番、百メートル走です』
放送部のアナウンスが、校庭中に響く。
言うまでもなく女子生徒の歓声が、彼らを包み込んでいた。
馨君が人気なのは言うまでもなかったけど、隼人君があそこまで支持されてるとは思っていなかった。
姫野が言ってた通り、彼は昔陸上の大会に出て優勝したことがある。
それどころか、新記録を更新したとかで表彰されてたっけ……
「ねぇ柴乃、顔色悪いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫……なんか、見てるこっちが緊張しちゃって……」
「まあ、そうだよね。浅沼君が負けたら、一緒にいられないかもしれないんだもんね」
あんちゃんもあんちゃんで、少し不安そうな顔を浮かべている。
入場門をはさんだもう一つのテントには、キャンプイスに優雅に座っている姫野と親衛隊がいる。
彼も心配なのか、少し離れたところで馨君を見ている寺濱君の姿もあった。
『もしそれにオレが勝ったら……今後一切柴乃ちゃんにかかわるの、やめてくれる?』
隼人君のあの目……本気だった。
前にあんちゃんがいっていたことが本当で、私のことが好きなのだとしたら彼に勝負を挑む行為は不思議じゃない。
誰だって、好きな人は一人じめしたいって思うもの。
勝負事に関しては人一倍負けず嫌いな馨君が乗ってきたのも、納得がいく。
でも、何か引っかかる。
どうして、隼人君がそこまでするのか。
そもそも私が馨君と仲がいい、なんて誰から聞いたんだろう。
男子だったら寺濱君とだっているし、告白してくる連中はやむことないし。
気のせいかな、昔と違って見えるのは……
「始まったよ」
あんちゃんの声で、はっと前を向く。
ピストルの音と同時に、二人の少年が飛び出した。
他の人達が遅いというわけでもないのに、二人の速さは一気に差を広めていった。
どちらもひけをとらない、真剣勝負。
今までの経験上なのか、勝負に出た隼人君が少し前に出た。
ゴールまで、そう距離はない。
このままじゃ、負ける……! それじゃあ私は……!
「……けたら……負けたら承知しないんだからぁぁぁぁぁぁ!」
気が付くと、声が出ていた。
絞り出すかのように出たその一言が、彼に届いたかはわからない。
ただ、なぜだか一瞬にして血の気が引けるように力が抜けてー
「柴乃っ!!!」
私の世界は暗く、暗転したー
€€€€€
たくさんの女子生徒たちが勝利をたたえてくれている。
そんなことは、彼にとってどうでもよかった。
静かに息を整え、人ごみをかき分けるかのように足を進める。
「……随分と遅い到着だね、王子様ってのは」
たどり着いた時には、柴乃のそばに隼人がいた。
心配そうに寄り添う杏珠が、不安げな表情を彼に浮かべている。
「俺が勝ったんだから、かけは無効でいいよな?」
「ま、言い出したのオレだしね。約束は守るよ」
「柴乃……渕脇は、大丈夫なんだろうな?」
「朝から体調悪かったみたいだから、寝てれば問題ないんじゃない? それとも君は、そんなことにも気づけなかった?」
隼人のまっすぐな瞳に、思わず声を失ってしまう。
そのまま彼は何も言わず、平然とお姫様抱っこをすると保健室の方へ行ってしまった。
それについていく杏珠が、ぺこりと会釈して……
「大丈夫かな、柴乃さん……気づいてあげられないなんて……お世話係失格だね…」
「……タイミングがよすぎるとは思わねぇのか」
「え? それってどういう意味? 馨?」
「あいつの出る競技は全員のみ、しかもそれはまだ行われていない。にもかかわらず、俺とあいつの決着前に倒れた……」
「ってことは……誰かが柴乃さんの体調を、コントロールしたってこと……?」
「詳しくは分からんが……俺達の知らないとこで、何かが動いてるのは確かだな……」
怪しむように隼人の背中を睨む彼らの陰にこっそり、その人物はほくそ笑んでいたー
つづく・・・
なんだかんだで他人視点を書くのは、
久しぶりなような気がします・・・笑
実は今月で作者は年をとったのですが、
そういえばこの子達の誕生日、まだですね
明かす機会を見失ってます笑
とりあえずキャラ全員出てからかなー・・・
あっ、なんか軽く
ネタバレしちゃったかな?なんて
次回! 秋の二大イベント編に突入!




