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自由なイケメンに振り回される美少女の図

夏休み。みんなの予定があったため

昔の知り合いという旅館にお泊りすることに!


「ようこそ、東雲旅館へ。今回担当させていただきます、伊佐波(いさなみ)紬(つむぎ)と申します。よろしくお願いしたします」


彼女にあった青い着物で床に正座しながら、きれいな姿勢で手を添えてお辞儀する。

偽りのない、心から歓迎しているかのようなその笑みを見ながら私はみんなの顔を見た。


当日。私達一行は、竹馬駅から「東雲(しののめ)旅館」に来ていた。

急すぎたお願いにもかかわらず、彼女は「柴乃の頼みなら、仕方ないよね」と快く受けてくれたのだ。


「え、ええっと、初めまして! 僕は、そのっ!」


「ふふっ、かしこまらなくて大丈夫ですよ。大体ですが、二人から話は聞いてます。寺濱さんに浅沼さん、それに渉さんですよね。前々からお目にかかりたいなって思っていたんです」


丁寧な話し方でありながらも、優しげな笑みを浮かべる彼女こそ当旅館の仲居であるむぎちゃん。

昔からここに通っているせいか、すっかり顔なじみになってしまった。

仲居としての腕は確かで、八代目の女将とも呼び声が高い。

しっかり者で、優しいからお姉さんみたいな存在なんだよね。


「確かここ、結構有名なほうだよな? そんなとこに毎年世話になってる渕脇って、相当な金持ち?」


「知らないわよ! お父さんが勝手にやってるの!」


「まあいっか。今日一日、お世話になりまぁす」


「いえいえ。それではお部屋へご案内します」


むぎちゃんに通された部屋は、和式の部屋だった。

東雲旅館はもともと和を基調としており、老若男女問わず人気の場所。

テレビでも紹介されたこともあるし、今じゃ知らない人はいないってほど。 

馨君の言うとおり、それなりにお金はかかるみたいだけど……何せ親がいつもやってくれてるから、詳しいことは私にもわからなくて……


「にしてもあんちゃぁん、むぎちゃんに緊張しすぎ」


そんなこと今はどうでもいい私にとって、気にかかっていたことを口にする。

あんちゃんは荷物を一か所にまとめながら、対抗するように言った。


「しょ、しょうがないでしょ。初対面なんだから」


「だからって会話なしはあんまりでしょ。いい加減私の後ろに隠れるのやめたら?」


「柴乃さん、そんな強く言わないでくださいよ。初めての人とって緊張して、うまく言葉が出ないときないですか? 僕もそうだから、分かります」


「寺濱君の言う通りよ。柴乃だって、年上相手だと逆らえないじゃない」


「そ、それは……っ!」


「はいそこ、けんかすんなっての。んで? これからどうする?」


馨君が割って入るように、ため息交じりで聞いてくる。

私が答えようとすると、姫野が相変わらずの笑顔で言った。


「まずはお風呂、はいろっか♪ お風呂分かれてるから、先に浅沼君達が入っていいよ?」


「そ、そうですか? じゃあ、お言葉に甘えて……」


「でもその前にぃ、寝る場所だけ決めておかない??」


また妙なたくらみをしてきたな。

どうせ姫野のことだ、自分が馨君の隣になるように仕組んでるに違いない。

確かに寺濱君が告白したけど、こいつ自身がどうなのかはまだ不明。

このピンチを、果たしてどう切り抜けるか……


「俺いいわ、そういうの。パス」


へ????


「ちょっ、馨! いいの!?」


「だってどこに寝ても変わんなくね?」


「そ、それもそうだけど……」


「じゃあ適当に決めていい? 右からお前、渕脇、直樹、渉。んで、端っこ俺な」


「なっ! 勝手に決められても困るんだけど!」


「あー、俺の隣はお前で固定だから。変えるならそこ以外で。祭りの貸しだ、文句ないよな?」


そういって逃げるように、寺濱君と二人でたったといってしまう。

強引な勝手な決め方に、怒りがこみ上げる。

はずなのに、胸の鼓動は収まることを知らない。


今、隣は私で固定って言わなかった?

固定って何? 動かすなら私以外でってこと?

つまりあれよね、私の隣はどうあがいても馨君になるの!?


「……やっぱり浅沼君って変わってるよね。意外と」


「…………なんなのあいつ……意味わかんない」


「あーあ、なんかしらけちゃった。お姉ちゃん、姫野のど乾いた。いちごミルク買ってきて❤︎」


はぁ!?


「お姉ちゃぁん。今回このメンバーで行けたのが、パパのおかげだと思ってなぁい? そのパパにお願いしに行ったの、誰だったかな~?」


「うぐっ……いきます……」


反論できずに、姫野の笑顔とたくらみにまんまとはめられる。

我ながら情けないなと思いつつ、あんちゃんが


「ついていこっか? 柴乃」


と背中をたたきながら言ってくれた優しさが、ずっと心に響いていた。



あー、どうしよう。

いちごミルクのボタンを押しながら、また私はため息をつく。

何をしてても、何を話しててもあの人のことで頭がいっぱいだった。


隣で寝る。

そのことが、どんなに緊張することか。

しかもあいつ、こういう時に限ってお祭りのことをネタにするとか何なの!

今までなんっも言ってこなかったくせに!!


「ついでに私たちのと、あの人達の分も買ってく?」


「それがいいかもね。でも二人の好み、知らないから難しいんじゃ……」


「好きかどうかは分かんないけど、馨君はゲームセンターで飲み物おごってもらった時、コーヒー飲んでたよ。寺濱君は紅茶系が好きなんだって」


「へぇ……よくみてるよね、彼のこと」


「別に! たまたまよ、たまたま!」


「……ねぇ柴乃」


自動販売機から紙パックが「がたん」と落ちる。

それを手に取りながら、私は彼女の方を見た。

あんちゃんの顔は何かを考えているような、そんな真剣な顔つきに見えた。


「ゲームセンターに二人で行ったり、いつの間にか名前呼びになってたり……柴乃には、驚かされることばっかりだね」


「そ、そうかな?」


「夏祭りのことをあまり話してくれないのも、浅沼君が関係してる?」


「そんなこと……あるようなないような……」


「柴乃。もし私が、柴乃よりずっと前から、浅沼君が好きだったって言ったら……どうする?」


彼女のまっすぐな瞳、意味深な発言。

私の知らない何かが今、動き出すー


(つづく・・・)

というわけで、新キャラ登場です。

むぎちゃんと覚えてください。

一応、これでもメインなんです。

まあそれは、あとあとわかるとして…

同時に最後の展開にえ!? 

となる人もいるのではないかと…


次回、まさかの修羅場発覚に

柴乃どうする!


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