あ・ぶ・な・い❤︎ 真夏の夜の・・・
夏と言えば夏祭り!
親友の杏珠のかわりに一緒に来たのは
彼ではなくあの人・・・?!
満天の星が、私を見下ろすように輝いている。
沿道に並ぶ数々の支店から、家族や恋人などの声が飛び交う。
「すっごい人だね~姫野、お祭り来たの久しぶりだなあ」
「……そりゃよかったわね」
「お姉ちゃんもそれなりにかわいくてよかったね~下僕達が選んだ着物、すぅぅっごく似合ってるよ?」
「嫌味?」
「でも姫野は、お姉ちゃんより何倍もかわいいけどねっ❤︎」
楽しそうにかつ嬉しそうにその場をくるくる回る。
夏祭り当日。なぜか私は、こいつー姫野とともにいる。
それもこれも姫野が急に祭りに行こうと言い出したからだ。
ご丁寧に着物まで準備されていて、断らせまいと下僕の何人かが私を連れに迎えに来たほど。
おかげで普段は目立ってしょうがない私でも、姫野がいるとそれが薄くなる。
それもそのはず。だって彼女の周りには……
「姫野様! たこ焼きいかがですか?!」
「わぁ~嬉しい~❤︎ ありがたいんだけど、姫野のかわいい顔が汚れちゃうからいらないかなっ」
「姫野様っ、かき氷買ってきました!」
「あ、ありがとう~! でも姫野、イチゴ味がよかったなあ。買いなおしてきて❤︎」
当然、下僕達がいる。
それもまた、体がごつい人ばかりだ。
おそらく自分がかわいいから、ガラの悪い人に口説かれたとき用の対策だろう。
そういうことを踏まえて用意しているところとか、あえて目立つようにしているところとか、ほんと腹が立つ。
せっかく着物まできてやったのに、何なのよこの扱いは!
そもそもなんで私が妹の言いなりになってんのよ!
こんなところ、今すぐにでも逃げ出してやるんだから!
「ひ、姫野? その男達じゃ話にならないでしょ? 私が食べ物買ってくるから」
「本当? お姉ゃん、やっさし~! じゃあ姫野、あっちの休憩所で待ってるね❤︎」
いちいちウインクするところが、また姫野のいやったらしいところ。
ああ、もう。こんなことなら、馨君誘うんだったなぁ。
いやいやいや、あの人誘ったら余計に姫野がめんどくさくなる。
第一、こんなところに彼が来るわけが……
「本当にいいの? これ、全部もらっちゃって」
「いいっつてんだろ。しっかしあの店長も鬼だよなあ。あと三つってところで出禁出すとか」
「さすがに全部取られるのは、店としてまずいんじゃない? メインは子供達なんだし」
「まあそうだけどよぉ。あ、ポテト食う?」
「え、いいの? もらってばっかりじゃ悪いし、あとでなにかおごるよ」
うわあ………何? このあるあるパターン。
三列目の店の端から見えたのは、楽しそうに二人ではしゃいでいる馨君と寺濱君だった。
なんで彼らがここに、なんでこんな目立つ場所に来てんのよ!
ていうか寺濱君はどう考えても姫野側でしょ! 肝心な時に役立たないんだから!
あんなイケメンが歩いていたら、誰だって声をかける。
だが彼は声をかけられても、「興味ないんで」の一言でさらりとかわしてしまう。
忘れてた、あの人女子に興味ないんだった……
目立とうが目立たまいが、あいつにとってはどうでもいいことなんだろうな。
だったらやっぱり、誘ってみようかな。
花火だけでも、一緒に見ないかって。
べ、別に誘うくらいならいいわよ、ね。
誘う、だけなんだし……
「おんやぁ、嬢ちゃん一人かい?」
途端、現実に戻された気がした。
振り返ると、そこにはいかにもガラの悪そうな野郎どもが私を囲んでいる。
しまった、私今一人だったんだ。
一人になったところを狙う、こいつらの十八番って奴ね。
「いえ、連れがいますけど」
「連れ~? どこにいるってんだい?」
「そ、それは……」
『お客様にお知らせいたします。只今から、打ち上げ花火百連発を開始します。どうぞ見える場所で、たっぷりお楽しみください』
こ、このタイミングで!?
ぞろぞろと通り過ぎるように、みんながみんな遠くに行ってしまう。
よし、この野次馬にまぎれて私も逃げよう!
そう思って歩こうとした、時だった。
「おっと、どこへいくのかなあ」
強い力でぐいっと引き寄せられる。
抵抗するようにぐっと力を入れたせいか、下駄の鼻緒がぶちりときれる。
「嫌っ! 離しなさいよ!!」
「俺達と一緒に遊ぼうぜぇ、かわいこちゃん?」
「離せっつってんの! 警察呼ぶわよ!?」
「呼べるもんなら呼んでみろ! お前ら、こいつを運べ!」
「なっ、何するつもり!?」
「決まってんだろ、服脱がせんだよ。ヌード写真なんて、高く売れるぜぇ」
げらげら笑う声、下品な男どもの顔。
醜い。
だから男は嫌いなんだ。自分の欲望のために、女を締め付けもてあそぶ。
どんなに抵抗しても、私の叫びは花火の音でかき消される。
誰にも気づかれないまま、連れられるがまま訳の分からない場所に連れていかれるー
「性懲りもなく何やってんだ、そこは」
声が、聞こえた。
顔をあげるとそこには、馨君の姿があった。
彼は深いため息をつくと同時に、不良たちに鋭い眼光を向ける。
「なんだ、てめぇ。やんのか?」
「そいつ、俺の連れ」
「だから返してほしいってか? そんな簡単にやれるわけ……」
瞬間、私を捕まえていた男性が倒れこんだ。
何が起こったのか、最初はわからなかった。
分かったのは、目の前に足を高く振り上げていた彼の姿があって……
「あ、兄貴ぃ! てめぇ、よくも!」
「聞こえなかったのか? こいつは俺の連れだっつってんだよ。分かったら、失せろ」
鋭い眼光、圧倒される力の差……
不良たちは恐れ入ったのか、殴られた人を連れ逃げるように行ってしまう。
私、助かった、の?
一瞬の出来事すぎて理解ができなくて、信じられなくて……
「まったく、来てたんならそういえよな」
「馨……君」
「お前みたいな女が一人で歩いてたら、狙ってくださいって言ってるようなもんだろ。俺がみかけたからいいものを注意くらい……」
気が付くと私は彼にしがみついていた。
驚いたような彼の声が、頭上から聞こえる。
「柴乃……? 泣いてるのか?」
「うるさい……! なんで、なんで助けてくれたのよ!」
「通りがかっただけいいだろ? すこしは感謝くらいしろよ」
「別に助けてなんて頼んでないし! 頼んで、ないのに……! 助けるなら、もっと早く助けなさいよ……バカぁ……!」
泣いても泣いても、涙がとまらなかった。
彼がそばにいるって思うと安心して、ほっとして。
花火の音が鳴り響く中、彼がポンポン私の頭をなでていた感触がずっと私に残っていたー
(つづく・・・)
これにて、GW連続投稿も終わりです。
皆さん、GW楽しめましたか?
こんなに一気に大丈夫?といわれたりもしますが
そこはぬかりないです、ご安心を。
次回から通常通り、日曜日の13日更新です。




