蕾の想いは、光を求め
姫野から、一緒にケーキを食べに行かない? 誘われ
直樹と彼女をくっつかそうと考える柴乃は、
彼に告白を促すが・・・?
「ねえ柴乃、帰ろうよ……」
「何言ってるの! まだ来たばっかりじゃない!!」
「見つかったらどうするの? 相手はあの姫野ちゃんでしょ?」
「大丈夫! 変装はばっちりだから!」
「……心配してるところ、そこじゃないんだけど……」
あんちゃんが心配そうにはらはらしながら、気が気じゃないようにため息をつく。
そんな彼女をみつつも気にしないように、ジュースをすすった。
あれから翌日、私たちはとあるカフェに来ていた。
駅前にできたという新しいところで、女の子が好きそうなスイーツがよりどりみどりだ。
なぜ私たちがそこにいるのか、そんなの答えは一つ。
「うわぁ~~~! このパフェおいしい~❤︎ 寺濱君も食べてみる?」
「ほえ!? いいいいえ、いいです!!」
「そんな緊張しなくてもいいのにぃ~せっかくのおいしいスイーツが、台無しだよ?」
「は……はい……」
もちろん、あの二人―寺濱君と姫野の様子を見守るためである。
練習したとはいえ、あの人の様子的に告白どころか会話もままならない。
せっかくのこの機会を、だめにするわけないじゃない!
だからこうして変装をほどこし、学校終わりからここまでつけてきたというわけだ。
「にしても会話続かなさすぎ。ほんっと寺濱君は男気がないんだから」
「あんまり言うと、聞こえちゃうよ?」
「だってそう思わない? あんちゃん」
「寺濱君にもペースがあるんだよ。そっと見守ってあげよう?」
まあ、あんちゃんがそういうなら……
なんだかんだいって、いつもこうしてついていてくれるのが彼女だ。
もともと性格がこんなだからか、長続きする友達なんていなかった私にとって、彼女がどれだけ心強いか……
「でも柴乃。柴乃が頼んだもの、私が食べてもいいの?」
「ああ、うん。一口もらえれば十分だから。いつも付き合ってくれるお礼」
「ありがとう……ん、これおいしい! すごくおいしいよ、柴乃!」
もうあんちゃんってば、うれしそうな笑顔を浮かべちゃって。
クールでおとなしいあんちゃんは、甘いものにとにかく目がない。
これも彼女のギャップの一つだ。
カフェに行くと必ず甘いものを頼むし、何ともおいしそうな表情で笑いかけてくる。
全く、普段からこうならすごくかわいいのに。もったいない。
まあ私には、到底及ばないけどね!
それに比べてこっちは……
「ねえ寺濱君。浅沼君ってぇ、姫野のこととか何か言ってた?」
「い、いえとくには何も……」
「浅沼君ってほんっとかっこいいよねぇ~❤︎ 姫野、好きになっちゃいそう❤︎」
「……そ、そうですよ、ね~……」
会話がなさすぎ! 何なのよ、あいつは!
もう少しアタックするとかないわけ!? どんだけヘタレなのよ!
というか姫野も! よく他の男の人の話できるわね!?
ほんとうなら、この場に割ってでも入って文句を言いたい。
でもそれでは意味がない。
これは寺濱君自身の問題だもん。これ以上、私がちゃちゃをいれるのは……
「なぁ~にしてるんだぁ? かわいい女子ランキング二年連続二位さんよぉ」
こ、この低い声は!?
ばっと振り向くと、そこにいたのは浅沼君だった。
ものすごい形相で、私達を見つめている。
バイト帰りなのか服装がいつもと違い、まるで別人のように見える眼鏡をかけている。
「なっ! なんであんた……っ!!」
「静かにしろ。見つかりたいのか」
そういって浅沼君が、手を私の口に当てる。
息のかかるくらいの距離に来た彼の顔に、思わず胸がうるさく鳴る。
それに気づいたあんちゃんも、驚いたように彼を見つめていた。
「ど、どうしてここに……?」
「こんなこったろうと思って、わざわざ早上がりにしてもらったんだよ。帰るぞ」
「はぁ!? 帰るわけ……!」
「少しはあいつを……直樹を信じてやれよ」
そういう浅沼君の顔は真剣そのもので、とてつもなくかっこよく見えた。
私はあんちゃんと顔を見合わせると、仕方ないとばかりに席を立つ。
家に帰るまで、私はずっと彼らのことが気になって仕方がなかったー
€€€€€
「あれ? 寺濱君、もう食べないの?」
ジュースに入れられた氷がぶつかり合い、こつんと音を立てる。
グラスに映った自分の姿を見ながら、直樹はゆっくり前も向いた。
顔をあげると、不思議そうに首をかしげている姫野の姿がある。
「お、おなかいっぱいで……よかったら、食べますか?」
「いいの~? ありがと~❤︎」
「あの、姫野さん。下僕の皆さんの中で、一番信用している人とか、いますか……?」
何かを決心したようなまっすぐな目―姫野はそれを直視はできなかった。
彼女は目線を落とすと、自分の頼んだオレンジジュースをストローで混ぜながら言った。
「うーん、どうだろうね~? みんな姫野のために尽くしてくれるし、いい子達ばっかりだよ?」
「そ、そうですか……」
「でも最近つまんなぁい。自分から告白してきておいて、もう無理ですって泣いて帰っちゃうんだよ? 姫野、悪くないのになぁ。いっそのこと、姫野に一生仕えてくれる家臣さんとか雇いたいなぁ~なんて♪」
「……それ、僕じゃだめですか?」
予想外の一言に、へ? と姫野が声を漏らす。
直樹は一人うなずいたかと思うと、彼女を真っすぐ見て一言。
「僕、姫野さんのことが好きです! 下僕でも、家臣でも何でもいいです! 姫野さんのおそばに、いさせてもらえないでしょうか!!!?」
陰に隠れていた花が光に向かって開花した瞬間だった。
(つづく・・・)
告白!! ・・・とみせかせて、
こういう展開になりました。
予想の斜め上を行く、それが直樹君です。
この二人がどうなっていくのか、
それはおいおいわかるとして・・・
次回から、大きく色々動き出します。
どうぞお楽しみに!




