少年よ、闘志を抱け!
直樹の恋事情を知り、姫野とくっつかそうとする柴乃
その作戦はあっけなく、馨にも知られてしまう。
それでも彼女はあきらめず、策を練り続ける・・・
いつも通る桜並木が、緑に色づいている。
地面に落ちていた一枚の葉を、私は拾いながら空に透かして見せた。
季節はすっかり夏。
いかにも元気とばかりに、今日も今日とて太陽は絶好調に私を照らしていた。
「夏ってきらぁい、熱くてまぶしいし。かわいい姫野のお肌が焼けちゃうんだも~ん。お姉ちゃんもそう思わない?」
「……知らない」
私の横で、文句を言いながら自分の顔を鏡で見ている奴がいる。
無論、姫野だ。
相当日焼けが嫌なのか、夏はいつも日傘常備。日焼け止めなどの対策もばっちりである。
私にとって彼女といるこの時間こそが、一番嫌いだ。
特に朝の通学。
通るだけで色々な人に二度見されるだけでなく、姫野に限っては男子がたむろってしょうがない。
その被害にあう私の目になってほしいものだわ。
「おはよ、柴乃」
そんな地獄から解放してくれるのは、いつもあんちゃんだ。
彼女は私を見つけると、こうして話しかけてくれる。
おはよと軽く挨拶すると、あんちゃんは
「相変わらず朝は機嫌悪いね」
と、呆れたように言った。
「当たり前でしょ? 毎日毎晩これなんだから」
「ぶれないね、姫野ちゃんは」
「まったく、こんな奴が妹なんて……」
「あっ♪ 浅沼くぅぅぅぅん❤︎」
こんなにぶりっこな声を出すときは、決まってかわいいところを見せつける時だ。
しかも彼女が呼んだ名前……まさか……
「こんな朝早くから会えるなんて、運命みたい❤︎ おはよっ♪」
「……どうも」
姫野と話しているのは、まぎれもなく浅沼君だ。
後ろの方には彼のファンであろう、女の子達がいっぱいいる。
当の本人である浅沼君は、いかにも寝起きっぽいようなあくびをしている。
「あれから考え直してくれた? 姫野のこと」
「なんだったっけな、覚えてねぇわ」
「え~ひっどぉい、姫野本気なんだよぉ?」
「ひ、姫野さん! おおおおおおおはようござい、ますっ!」
「あれ、寺濱君もいたんだ。おはよ~」
見るからにテンションが違う。
彼女があいさつした彼―寺濱君は、そそくさと浅沼君の後ろに隠れてしまう。
やっぱり姫野は、完全に彼を狙っている。
それだけは絶対に阻止しなくちゃ!!
そう思ってた、その時。
「あ、そうだ❤︎ 浅沼君、甘いもの好き? 最近できたって話題のカフェがあるんだ~姫野と一緒に行かない?」
「悪いが、今日は用事があるんだ。誘うならこいつでも誘えば?」
「うええ!? 馨、何言ってるの!?」
こ、これはチャンス到来って奴じゃない!!
「実はねぇ、姫野! 寺濱君ってちょ~~~甘いものが好きなのぉ! あんたと好み合うんじゃないかな?!」
「し、柴乃さんまで!? そんな僕には……!」
「え~? 何~? ぜひ行かせてくださいって~?」
にこにこ笑顔を浮かべつつ、彼の口をふさぐ。
もごもごと何かを訴えている寺濱君の言葉は、私達には届かなかった。
こんなチャンス、私が見逃すわけないじゃない!
ここでこの二人をくっつければ、浅沼君との距離が縮まるし!
「寺濱君、甘いもの好きなの?」
「ほえ!? え、ええ。まあ……」
「じゃあ姫野と、一緒に行く?」
よし! 大成功!
あとは寺濱君が行くって返事をすれば……!
「え、えっと……明日でもいいでしょうか……?」
はぁ!??!
「ちょっと寺濱君! なんなのよ、明日でもいいでしょうかって! ふざけてんの!!!?」
「ふ、ふざけてないです! そもそも、どうして僕が行くことになってるんですか!?」
「二人とも、少し落ち着いて……」
「どうでもいいけど……人のバイト先でやるの、やめてくんね?」
その日の放課後、私たちは浅沼君のバイト先でもある喫茶店に来ていた。
というのも彼がバイトだといったのが始まり。
クラスが違うからまともに話すことができないため、こうして放課後にしか集まることができない。
そのため朝からたまっていたイライラを、彼にぶつけているところで……
「あんた分かってるの!? これはまたとないチャンスなの! 姫野と二人きりになることで、距離だって縮まるでしょ!?」
「無理です! いきなりすぎます!」
「男でしょ!? びしっと告白くらいしてきなさいよ!」
「ここここここここ告白!? そ、そんなことできるわけっ!」
「お前らうるさい。ここから追い出されてもいいのか?」
浅沼君の一言がなかったら、私達は延々と言い合いをしていただろう。
それくらい私はいらついてたし、正直今でも収まらない。
だって信じられる? せっかくの姫野の誘いを「明日」に伸ばすなんて!
「大体、馨のせいでこうなったんだよ~? 責任とってよ~」
「事実を言ったまでだろ? そもそも俺、甘いもん苦手だし」
へえ、浅沼君って甘いもの苦手なんだ……。
って何ちゃっかり覚えようとしてるのよ、私は!
「言っとくけど明日もバイトだから、助けにすがってもいないからな。自分で頑張れ」
「ええ!? ひどいよ、馨ぅ!」
「俺より頼りになるもう一人の淵脇さんいりゃあ、大丈夫じゃね?」
いきなり彼から名前が出たものだから、びっくりしてジュースをこぼしそうになる。
相変わらずと言っていいほど浅沼君は平然とした顔で、私達の隣の席を布巾で拭いていた。
ていうかこの人、今頼りになるって言わなかった?
私、もしかして期待されてる!?
そうと分かれば、やることはひとつ!
「いい!? 寺濱直樹! 姫野と一緒に出かけるってなった以上、絶対に告白はしてもらうわよ!」
「ほ、本気ですか!?」
「当たり前でしょ! そうと決まれば、練習よ! 私を姫野だと思って! さあ早く!」
「ええええ!?」
その後私と彼との告白練習は、日が落ちるまで行い続けたー
(つづく!!)
何もかも普通すぎる、直樹君の特徴がへたれです。
だからこそ柴乃とのやり取りは、
いつも楽しくて仕方ないです。
この作品では美男美女ぞろいなんですが、
直樹君はほんっとうになんもない
平凡な人なので・・・笑
次回、ついにその時が!?!?!?




