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傍観者ではいられない!  作者: ぽぽりんご
第三章 タイガ編(エロバカラノベ風味)
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第12話 巫に捧げる祀り

時間を置くと話を書き直したくなる病にかかってしまったので、さっさと投稿する事にしました。中途半端な日常話はカットカットカット。


普通のお祭り話も書いてみたいけど(リア充爆発しろ)、今回は別のお祭りです。

かんなぎとは、神の寄り代等の事を指します。

全く関係ないけど、巫女さんの衣装は卑猥だと思います。



 

 

 穏やかな風が吹き抜けていく。

 高台から見下ろすと、平和そうな町を見通す事ができた。

 

「今までは気に入らないと思ってたが、こうなってみると良い町とさえ思えてくるな」

 

 鳥の魔物を使役し、何度か町中を偵察した事もある。

 賑やかで、平穏で、憎らしい。

 

 自身の存在意義を疑問に思った事もあったが、今となってはなぜそんな下らない事を考えていたのだろうと思う。

 自らの内から溢れてくるのだ。恨み、怨嗟、呪い。人が憎いという感情が溢れてくる。

 そうだ。殺したければ殺せばいい。

 

 町を見下ろす黒ずくめの影は、魔族だった。

 フードを目深に被っているため、その顔を見通すことはできない。

 いや、フードなど無くとも見通せないのだ。なぜなら、彼の本体は胸の部分にある宝玉。服をまとって人型であるかのように見せかけているだけだ。

 

「もうすぐ真なる我らの神の復活だ。盛大に前祝いといこうじゃないか」

 

 集めた魔物の数は千を超える。数の上では互角といった所か。

 だが、人間共は魔物と違い高度な連携をする。そして町には防壁もある。

 単純に攻めるだけでは、防壁すら超えられずに全滅するだろう。

 

 フードの男は後ろを振り返った。

 そこには、体長十メートルを超える巨躯を持つ魔族の姿。

 大きな山羊の上半身に馬の後ろ足の下半身を持つ、魔族らしくない者だ。

 魔族はその生まれ故に、人型や不定形の者が殆どを占める。この魔族もその例に漏れず、決まった形を持っているわけではない。

 この巨躯は、質量を持った幻影のようなものだ。

 

 かつて猛威を振るったという魔物達の王、ルベル。

 神人達に滅ぼされた、最初の魔王の姿。魔物達を生み出した魔族の力すら超える突然変異の怪物。知りうる限りで最強の肉体を持つ者の姿を借りているのだった。

 

 フードの男は、ルベルの幻影に命令を下す。

 

「雑魚共だけでは防壁すら超えられん。お前は防壁を壊し、町を破壊しろ。俺は後ろで魔物達の流れをコントロールする」

「……いいのか? 後ろで見ているだけではつまらんだろう」

 

 ルベルの幻影は、その巨体に相応しい重く低い声を操り強引に言葉を紡ぐ。

 ルベルの言葉を受け、フードの男は楽しそうに返答を返した。

 

「構わんさ。遠くから眺めているだけでも存外楽しいものだ、祭りとは」

 

 祭り。

 そう、祭りだ。

 

 自分達を生み出した親。自分達が崇める神――ウィルに生贄を捧げ、復活を祝う神事。

 

「さあ、(いくさ)のはじまりだ」

 

 フードの男は、高らかに宣言した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 俺達は、旅の目的地。敵がしばらく根城にしていたという遺跡の最寄町に到着した。

 到着するなり俺達はまっすぐ冒険者組合へと向かう。

 

 妙に町が慌しい。避難しようとする住人を止める警備隊の姿を度々目撃する事ができた。

 途中で教会の脇を通ったが、住人達が協力してドアや窓の補強をしている様子が伺えた。チラリと見えた教会の内部では、沢山の子供達が不安そうな表情を浮かべている。泣き出しそうな子をシスターが宥めていたが、あまり効果はないようだった。おそらくその子供達の母親であろう者達はせわしなく走り回り、教会の内部に物資を運び込んでいる。

 どう考えても、教会に篭城するための準備にしか見えない。

 

「道中、やけに魔物の姿を目撃したのは偶然ではなかったみたいね」

 

 横に並んだレオが低い声を出した。

 獰猛な獣を思わせる剣呑な雰囲気。レオがこのような空気を放つなんて珍しい。

 よほどの大事という事か。

 

 

 冒険者組合は、かつてないほどの人でごったがえしていた。

 室内で処理できる人数を超えているため、周辺の道路で職員達が冒険者達と会話を繰り広げている。

 臨時の掲示板を立ててなにか通知しているようだが、ここからだと字が小さすぎて読めない。

 

 あまり良い雰囲気ではない。

 所々で意見が衝突し、小競り合いが起きている。

 衝突は冒険者同士だけで起きているのではない。むしろ、町の住人と組合職員達との間の方がひどい状況になっていた。

 

「避難できないってどういう事よ!」

「魔物達が襲ってきたらどうするんだっ」

「襲撃を防げるって保障はあるのかよ!」

 

 組合職員達が町の住人をなだめているが、焼け石に水だ。

 一部の者達が納得したとしても、次から次へと新しい住人が押しかけて怒号を撒き散らす。

 騒音の中、レオが俺の耳元に顔を寄せて状況を説明してくれた。

 おそらく、掲示板に書いてある内容を読んだのだろう。

 

「どうやら近くに魔物達が集結しているらしい。狙いはおそらく、この町」

「……魔物達が集まって町を襲う? そんな事があるのか?」

 

 そういえば、俺がこの世界で最初に寄った町も魔物の群れから襲撃を受けたのだったか?

 防壁の修復をしていたのはそのためだったはずだ。

 

「たまにね……と言っても、数年前までは無かったわ。小さな村ならともかく、こんな大規模な町が襲われるなんて異常事態よ。かつて魔王がいたという時代にはよくあった事らしいから、魔王が復活したなんて噂が流れてる」

「マジかよ……」

 

 これは酷い状況になる。いや既になっているのか。

 冒険者組合に来る途中で見た住人達の表情には恐怖の色がありありと浮かんでいた。

 ここに詰め掛けて叫んでいる人達は、おそらくこの町を離れても生きていける人達。商人や、比較的裕福な層なのだろう。

 この町を離れては生きてはいけない人達は、この町で生き残るしかない。魔物が襲ってきても篭城し、若い男は武器を持って戦う。そうするしかない。

 今のこの町には、二つの相反する感情が渦巻いている。薄暗い悲壮感と、恐怖を塗りつぶすための高揚感。それが余計にあらゆる所で住民同士の衝突を招いている。町の空気は最悪だ。

 

 見回すと、守備隊や冒険者の面々からも張り詰めたような空気を感じ取る事ができた。戦闘経験があるぶん住人達より余裕はあるようだが、それでも心中穏やかではなさそうだ。

 

 

「安心せいっ!! 魔物の千や二千程度でこの町は落ちん!!」

 

 と、唐突に響いた大声に思わず耳を塞ぐ。

 とんでもない大声だ。あまりに大きすぎて、最初は人の声だと認識できなかったほど。

 

「この町の守備隊・冒険者合わせて約千人! 防壁での防衛線ともなれば、数倍の敵が押し寄せてきたとしても押しかえせるわ! 斥候の報告によれば、魔物の数は千程度。その程度の数など恐るるに足らず、このガストンが蹴散らしてくれる。ガッハハハハハ!」

 

 豪快な笑い声を上げた髭面のムキムキマッチョなおっさんは、周囲にいる人達の背中を叩きながら冒険者組合の中へと入っていく。

 至近距離で大声を聞いた俺は、いまだにキーンと耳鳴りのする耳を押さえて苦悶した。

 周りを見回すと、俺と同じような状況の人が多数。ざわめきが消え去ったのは、実際にみんな黙ったのか。それとも俺の耳がおかしくなっただけか。

 

「……ガストン。この町の冒険者組合長。現役時代は、世界で有数の冒険者とも言われた人ね」

「へぇ、なるほどね。確かに貫禄はあるな」

 

 遠くでレオとバヤールが話しているのがわずかに聞こえる。

 実際はすぐ隣にいるのにこれとは……あのおっさん、声でかすぎだろ。

 

 しばらくして、ようやく聴力が回復してきた。町のざわめきが戻ってくる。

 と、組合本部から再び大声が響いてきた。外にいても普通に聞こえるってどういう事だよ。

 

「周辺の町に伝令を送れ! 交通の封鎖と、援軍の要請だ! 忙しくなるぞ。だが飯は抜くなよ! たらふく食って英気をやしなっておけっ」

 

 命令を受けた組合員達は、すぐに動き始めている。

 伝令を護衛する冒険者の選定を行っている間に書簡の作成も進んでいるようだ。

 ずいぶんフットワークが軽いな。鶴の一声とはこの事か。

 

「指揮系統に問題は無さそうね。防壁もそれなり、頭数も揃っている……あとは敵の質次第だけど、たしかに千や二千程度なら簡単に撃退できるでしょう」

 

 めずらしくレオが楽観的な意見を打ち出した。

 たぶん俺や周囲の人間を気遣っての事だろうけど。

 

 直後、ガストンが再び顔を見せる。

 職員に出す指示は終わったのだろうか。たったあれだけの命令で? 部下は大変そうだな。

 

 と、ガストンがこちらの方を見たかと思うと満面の笑みを浮かべて近づいてきた。

 何だお前。暑苦しいぞ。

 

「おお、これはこれは。バーストゥの女神、レオ殿ではありませんか!」

 

 それを聞いた周囲の冒険者がざわめき始める。レオは有名人だからな。

 女神と呼ばれてレオは若干に嫌そうな顔を見せたが、すぐに引っ込めた。今はその名前を受け入れたほうが都合がいいと思ったのだろう。

 

「おいお前ら。ここにいるレオ殿は、バーストゥの町での戦いでオーバーSランクの魔物を三体も仕留めた剛の者! バーストゥ防衛戦の勝利の立役者だ。喜べ、俺達には勝利の女神がついてるぞ! 勝利への道筋は見えたっ。吠えろ、勝利の栄光我らにありぃ!!」

 

 ガストンが右手を上げ雄叫びを上げると、それにつられて周囲の者達も喝采を上げた。レオはクールな表情を浮かべたまま手を上げその声に応える……あ、若干頬がピクピクしてる。無理してるなこいつ。

 

 いつの間にかレオを放置して雄叫びを上げつつ駆け出したガストンを見送り、レオは赤面しながら俺の手を引いて早足で移動を始めた。

 女神呼ばわりされるのはやはり恥ずかしかったらしい。

 

「この状況で町の外に出るのは危険ね。この町の防衛戦に協力しましょう……とりあえず、空いてる宿はあるかしら。この状況じゃ一人部屋は難しいかも。二人部屋になるかな」

「あー、混んでそうだもんな。二人部屋かー。二人……」

 

 な、何ッッ!? 二人部屋だと?

 

 女の子と一緒に同じ部屋で寝泊まりする。

 興奮するシチュエーションだ。

 

 いや、野宿する時は一人部屋も二人部屋もないから今更って感じはするけどさ。

 でも町中で同じ部屋に泊まるというのとは、やはり違うのではないだろうか。

 

 


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