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傍観者ではいられない!  作者: ぽぽりんご
第三章 タイガ編(エロバカラノベ風味)
32/51

第5話 必殺技(ただし殺されるのは自分)

 

 

 翌朝。

 疲れて早くに眠ったからか、俺は夜明けと共に目を覚ました。

 というかカーテンを閉めていなかったため、目に太陽の光が入ってきたから目が覚めたと言ったほうが正しいか。

 とはいえ、睡眠の不足感は感じない。それはそうだ、十時間は眠っただろうからな。

 

 俺は宿に備え付けられた洗面台で歯と顔を洗う。

 科学的に進んでいる感じはしなかったが、ある程度までなら蛇口から水が出るらしい。これも魔法か何かだろうか。もう気にしないようにしよう。

 

 朝の準備を終えて着替えた俺は少し迷う。これからどうすりゃいいんだ?

 と思っていたら、扉がノックされる音が聞こえてきた。

 

「タイガ、起きてる? 朝食前にちょっと付き合って欲しいんだけど」

 

 ノックしてきたのは、レオだ。

 俺が扉を開けると、昨日の道中と同様過激な格好をしたレオの姿が目に入る。

 

「いいけど、何するんだ?」

「ちょっとあなたの事を見てみたいのよ」

「!?」

 

 ふぇぇ、俺を? 俺のどこを?

 ふぅ……やれやれ、朝からお盛んなことだ。昨日体を密着させていた事で、どうやら俺は彼女の心を奪ってしまったらしい。

 まったく、俺って奴は。罪な男だぜ……

 

 なんてお馬鹿な妄想を繰り広げてみるが、まぁたぶん違う意味だろう。俺にだってそれぐらいはわかる。


「見るのは良いけど、何を?」

「今後の方針を決めるために、あなたがどの程度動けるか見ておきたい。ここの裏庭で軽く組み手をする」

「うん、まぁそうだよね。わかってたけど悲しいね」

 

 俺は心の涙を流しながら、レオの後ろを着いて行った。

 

 

 

 

 裏庭に出て、準備体操を行う。

 くるぶし程度までの長さの草が生い茂っているため、これなら倒れても大した怪我はしなさそうだ。

 裏庭に隣接した部屋からは慌しい空気が漏れているのを感じた。煙突が出てくる所を見るに、おそらく調理場で朝食を作っているのだろう。

 パンか何かを焼いている香りが鼻腔をくすぐり、俺の腹の虫が激しく自己主張をはじめた。うお、腹減った。飯食いてぇ。

 俺が腹を押さえてそんな事を考えていると、レオはわずかに微笑みを浮かべながら声を掛けてくる。

 

「ここの料理は美味しいわよ。期待してなさい」

「まじですか。今ならいくらでも飯食えそう」

「でも、その前に」

 

 レオは軽く腰を落として、構えを取る。ああ、組み手するんだっけ。

 女の子相手に組み手をするのもなんだか気が引けるんだけど。

 殴る蹴るよりも組み付いて押し倒すような感じでいけばいいかな? それなら怪我はしないだろう。

 自分がレオを押し倒している所をイメージすると、若干卑猥なイメージが頭をよぎる。組み手なんてする以上、くんずほずれつしてしまうのは仕方の無い事なのではないだろうか。

 

 いかんいかん、俺は健全な男子高校生なのだ。こんな軟弱なイメージを持ってはいけない。

 

 もっとだ。もっとエロエロな妄想をしてこそ男子高校生というものだろう。

 俺の器官が膨張を始めた。おおう、いかんいかん。これでは動きづらい。というか、激しく動いて擦り続けると発車オーライになってしまうというか。全然オーライじゃねぇよ。むしろNGだよ。

 俺は若干股間のテンションを(物理的な意味で)下げた。

 

「んじゃ、いくぞ? 出来るだけ怪我はさせないようにするよ」

「それはこっちのセリフなんだけど……まぁいいか」

 

 そう宣言した俺は間合いを詰め、レオの腕を掴もうと手を伸ばす。

 レオの腕に自分の手が触れたと思った瞬間、俺の視点はくるりと回って地面に横たわっていた。強い衝撃が背中を襲い、思わず息を吐き出してしまう。反射的に受身を取らなければ悶絶していただろう。

 

「……え、ちょっと待って。今何が起こったの?」

「足元が隙だらけだったから。あなたが踏み込もうとした瞬間に軽く足を払って投げ飛ばしただけ」

「足を払ったって……何かされたような感覚は全く無かったんだけど」

「いきなり怪我されても困るから、軽く添える程度に抑えたのよ。でなければ、今頃あなたの足は折れてるわ」

「マジで!?」

 

 ちょ、レオってもしかして滅茶苦茶強い?

 立ち上がりつつ改めてレオの方を見ると、確かに尋常じゃないオーラが立ち上っているように見える。バスケの試合でレオが立ちふさがっている状況をイメージしてみるとよくわかった。俺はバスケには自信があるが、それでもレオを抜けるイメージが全く沸かない。

 

「タイガ、本気で掛かったほうが良いぜ。今のお前じゃレオに一撃だって入れることはできねぇよ」

「不本意ながら、そうみたいだな……そういやレオのレベルっていくつなんだ?」

「51よ」

「げ……俺の十倍かよ」

 

 ちなみに俺のレベルは5だ。昨日馬に乗っている時にステータスの見方を教えてもらって確認した。

 この世界に来た時は1だったはずだが、あの熊を倒しただけで一気にレベル5まで上がったのだ。

 あの魔物が高レベルだったというのもあるが、バヤールによると異世界人はレベルが上がりやすいらしい。レベルキャップの都合がうんたらかんたらとか。正直、レオのおっぱいをどうやって揉んでやろうかと考えるので頭が一杯で聞いていなかった。

 

 しかし、いくらレベルが上がりやすいとは言っても現状で俺とレオのレベル差は圧倒的だ。

 レオをはるかに格上の相手と認めて、俺は気合を入れなおす。ギアを一段上げると、程よい緊張感が体を包み込んだ。

 俺は慎重にレオとの間合いを詰める。手足自体は俺の方が長いのだ。つまり、俺の方がレオより間合いが広い。注意すべきは蹴り技か。

 

 レオの足元に注意しつつ接近するが、レオが動く様子は見えない。

 いけると思った俺は再びレオの腕に手を伸ばした。が、逆に腕を掴まれて捻られ、それに抵抗しようとした俺はするりと投げ飛ばされる。気づいた時には、俺は地面にうつ伏せの状態で組み敷かれていた。

 右腕だけを上方に捻り上げられ、左手はレオの足に押さえ込まれている。腰も完全に地面に押しつけられているため、ろくに足を動かす事もできない。手加減されているようでそれほど右手に痛みはないが、この状況から抜け出すのは不可能だろう。

 

「……一応聞くけど、戦闘の経験はどれぐらいあるの?」

「なんだよ戦闘って。俺はバスケ部だよ」

「おいレオ、言ってなかったか? 戦闘経験には期待するなと」

「それは聞いてたけど、これじゃ戦闘経験が少ないどころか完全にゼロじゃない」

 

 どうも俺は期待外れらしい。運動神経には結構自信あったんだけど、さすがにレオのとんでもな動きには付いていけない。

 なんなのこいつ、特殊部隊の隊員か何かなの? 

 

「すまん、俺は格闘技経験はないんだ」

「……そう。なら、別の方向で考えたほうが良さそうね。バヤールの力で身体能力だけ上げても、これじゃ知能の低い魔物相手にしか通用しないわ」

 

 そういってレオは考え込む。

 どうでもいいけど拘束解いてくれないかな。

 そう思いながらもぞもぞと体を動かすが、一向に拘束が解ける気配はない。

 

 ……あ、でもこれってある意味女の子に抱きしめられている状況なのか。そう考えると悪い状況でもないのかもしれない。

 昨日の乗馬訓練中と同様、背中にもろにおっぱいが押し付けられている。更に、レオの生足が絡んだ左腕からはすべすべして柔らかい太腿の感触をダイレクトに感じる。

 地面に押し付けられているマイサンからドクンドクンという生命の鼓動を感じた。い、いかん! 今立ってはならぬ。地面に強く押し付けられているのだ。今お前が立ち上がる事はできん! 立つなァーッッ! 絶対に立つんじゃないぞォーーーッッ!!

 

 そんなアホな事を考えて悶絶している俺を放置して、レオとバヤールは二人で話し合っていた。

 しばらくして話がまとまったのか、俺を解放する気配を感じる。ああ、残念なような、早く解放してほしいような……背中でごそごそやられているので俺の下半身はグリグリと地面に押し付けられていた。もう限界に近い。何が限界なのかは言えないが。

 

「伸び代はあるんだけどな。でも即戦力で考えるなら魔法をメインにすべきだろう。それなら俺の補助が最大限効果を発揮するし」

「そうね。そっちの具合を確かめて見ましょう」

 

 方針が決まり、俺はレオから手渡された指輪を左手の薬指にはめた。それを見たレオが何か言いたげな表情をしたが、スルーする事にしたようだ。若干悲しい。

 この指輪はバヤールの分身体みたいなものらしい。これがあれば、俺もバヤールの補助を受けられるとの事。

 たしかに、魔法を使おうと意識してみると頭の中にイメージが沸きあがってくる。このイメージ通りにすれば魔法が使えるのだろう。

 俺はイメージに従って、いくつかの攻撃魔法を使ってみた。

 

「アイスジャベリン!」

 

 俺の手から放たれた氷の槍はバヤールが空中に浮かべた的に命中し、凍りつかせる。直撃した箇所は大きな穴が開き、穴の周囲には無数の罅割れが走っていた。もう一発ぶち込んだら的が粉々になってしまいそうだ。そりゃ氷の固まりなんてぶつけられたらそうなるわな。これ、凍りつかせる意味あるんだろうか。大型の動物とかでもない限りこんなもんが直撃したら即死だと思うんだけど。

 

「攻撃魔法は問題なく使えるな。初めてでこれだけイメージできるのはすげぇよ」

「バヤールの補助があったら、VRゲームで魔法使う感覚と大差ないからなぁ。初めてっていう感じはしないよ」

「ゲームね。その辺はよくわからんが、その経験が役に立ったなら何よりだ。んじゃ次は補助魔法の練習だな。前衛がいないから、足止め系の魔法が欲しい」

「足止めねぇ」

 

 最初に思いついたのは、バスケのディフィンスライン形成だ。試しにゴーレムを作り出し両手を上げさせて壁にしてみる。

 目の前で地面が盛り上がりゴーレムが造られるのを見た時は迫力に飲まれて「けっこういけるんじゃね?」と思ったが、実際に動かしてみたらとんだウンコ野郎共だった。

 

「ああ、これはあかんね。動作が鈍すぎる。うまく操作できるなら多少役に立つかもしれんけど」

 

 うまく操作か。

 もっと鋭いディフェンスをイメージして動かしてみよう。変にリアルに拘るより、漫画みたいな荒唐無稽なイメージをしたほうがいいだろうか? よし、ここは大昔の国民的バスケ漫画に登場する奴をイメージしてみよう。ディフェンスに定評のある三年の某バスケマンの動きをトレース!

 ……うん、やっぱ駄目だな。ぶち抜かれるイメージしか沸かない。

 一体どうすればいいんだ……ディーフェンス! ディーフェンス!

 

 発想を逆転させよう。力と力でぶつかり合う必要などない。足を止められたらいいのだ。

 バヤールから送られてくるイメージ……バヤールが使える魔法の中から、良さそうな魔法を探してみる。

 足止め……あ、アレなんかよさそうだ。

 

「スパイダーネット!」

 

 作成した白くどろどろした液体を地面にぶちまける。バヤールいわく、本来は蜘蛛の巣状に広がるらしい。が、俺の邪念が混じってしまったためこのような形状になった。

 その上にゴーレムを進ませてみると、ゴーレムたちは足が地面にくっついて全員すっ転んだ。

 おお、いけそうだ。

 

「スパイダーネットか、まぁ無難だな。構成が変なのは気になるけど」

 

 バヤールからのお墨付きも貰った。

 この後も俺はいくつかの魔法を試し、最後に動くレオに対してスパイダーネットを当てる練習をして合格を言い渡された。

 白くネバネバした液体をぶっ掛けられ、拘束されて動けなくなったレオの姿を見ると何故だか俺の清純な心が汚されていく。不思議だ。

 

 

 

 レオとバヤールからの要望を一通りこなした俺は、最後にチャレンジ精神を発揮してみる。

 最初から用意されたものだけを使うだけなんてつまらないじゃないか?

 

「何か必殺技的なものが欲しいな」

「必殺技? 強力な魔法ならあるぞ。町中では使えないけど」

「いやそういうんじゃなく、なんかこう……俺のオリジナル技というか」

「初心者が変に手を入れるのはお勧めしないけど」

 

 最後にレオが少し反対意見を出したが、バヤールは思いつくものがあるならやってみろスタイルのようだ。投げ槍ともいう。

 

 俺が使おうとしてるのは磁力魔法。空間収納で大量の物資を持ち運べるのだ、敵に磁力を帯びさせた状態で大量の刃物や金属製鈍器をばら撒いたらどうなるか。

 

 答え:相手は死ぬ。

 

「マグネットフォース!」

「あ、タイガ。それはやめたほうが」

 

 バヤールの静止の声が届く。だが遅かった。

 

「ぐぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 俺は周辺から飛んできた金属片に全身ボコボコにされて吹っ飛んだ。

 ちょ、待って! 敵にぶつけるまで磁力発生させるのは待って!

 

「タイガ、よっぽどの大魔道師でも無い限りその魔法は自爆と変わらんぜ。自分の体から離した魔力を性質変化させるのは難しいからな。アイスジャベリンもスパイダーネットも、魔法を完成させてから射出していただろう?」

「ま、まじか……上手くいけばかっこいい必中攻撃になると思ったのに……」

 

 この魔法を使ったときの答え:俺が死ぬ。

 

 俺はレオに回復魔法をかけてもらって復活した。

 三日連続で回復魔法のお世話になるとか……しかも全部敵と戦った事による負傷じゃないし。

 一回目はレオとの全裸対面、二回目は落馬、三回目は自爆だ。

 俺はもしかしたらアホなのか?

 

 ……いやいや、そんな馬鹿な。

 ただ、そう。ちょっと運が悪いだけさ。

 

 


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