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そして『器』を奪われた俺  作者: 深爪 みなみ


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ep.46 シュナ・フリージア①

静まり返るシブルクの街。


風が穏やかに吹く。


時の流れが止まったとさえ感じた。


息絶えた巨躯の上からグロリオサを見下ろすシュナ。

その目は笑っていなかった。






________朝霧がかかる頃。

シブルクの街より離れた異国の地。



産声があがる。

誕生したのは元気な女の子だった。



ダン・フリージア。

マリア・フリージア。

二人の間に生まれた子は【シュナ】と名付けられた。



とても裕福とは言えないが家族三人で暮らすには十分な環境であった。




____シュナが5歳になる頃。

それは突如、平穏を壊していった。


魔祖四厄災ケルベロス


街は暗紅の炎に包まれ、人々は息絶えていく。


『マリア!シュナを連れて遠くへ!』


『いやよ!あなたは!!』


『いいんだ!任せておけ!』

トンっと力強く背中を押す。

その手は、愛情そのものだった。


泣きじゃくるシュナ。

恐怖が止まらない。

少しだけ。

ほんの少しだけ現実を見たかった。




抱き抱えられたシュナが目にしたのは、

既に頭部が見当たらない父親の後ろ姿だった。



『.........お父さん?』

『.........ねぇ、お母さん?お父さんが。』


涙が止まっていた。


『あの犬。殺さないと。』


母親も分からない。

本人すらも分からない。



消えゆく本格の意識。

その意識下で制御を成し遂げる。

ダヴルの発現。と、同時に覚醒。


『死ね。犬。』


付けていた髪留めピンをケルベロスへと投げつける。

三つ首の1つの右目を穿く。


『ぐぁぁああ!』


ふたつの首が辺りを見回す。

逃げ惑う人間。

こちらへの明らかな敵意を感じ取れずにいた。


どこからの攻撃だ?

誰がやった?

何が穿いた?


戦場を支配していたケルベロスにとっては

未知の恐怖。



巨躯は撤退を選ぶ他なかった。





____辺りを見回すと荒れ果てた街並み。

生きている人はいるのか。

所々から聞こえてくるのはうめき声。

鳴き声、嗚咽。




呆然と立ち尽くす母娘。


そこに希望などなかった。


あったのはただの虚構だった。




崩れ倒れる母。

既に深手を負っていた。


とびきりの愛情を注いで頭を撫でる。

前が見えない。

息が浅くなる。



『.........シュナ。ごめんね。』

『.........お母さん、お父さん迎えに行かないと行けないみたい。』

『あなたを.........残して行く事を....許してちょうだい。』





全てを奪われた。



何故、自分。



何故、生きている。



何故。



分からない。



その文字は何。



見えていいものではない。




『悪魔め。皆殺しだ。』







________「.........シュナ?......なのか?」



「.................。」

「.......グロリオサか。丁度いい。」



冷たく、灰色のような空気が流れていた。

読んでいただきありがとうございます。


感想やレビューもらえると


めちゃくちゃ喜びます。


拝読いただきありがとうございました。


では、また次回。

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