ep.42 デスィグナール・クエスト⑤
「先程からあなた方は何をしているのですか?」
聞こえて来たのはダウラの声。
岩の上に座り、肩に大鎌をかけていた。
───傷一つない。
声にならない程驚いている夜賊の面々。
「さっき、俺の槍で貫いたはず。感触もあった。」
「貫いた????」
「ハッ、冗談は顔だけにしてくれませんか、このゴミ虫が!」
そう言い放ったダウラは大鎌を振り上げ、一瞬でジャフに近づいた。
足が切られる。
他の奴らも同様に足を切られているようだ。
のたうち回って苦しんでいる。
「ところで。貴方は何故、、先程から怯えているフリをしているのですか?」
例の情報のない新入りの女性の方へと近づいていくダウラ。
「いや!!来ないで!!!」
「貴方にもあいつらと同様に掛けたはずなんですがね?おかしいですね。」
ダウラはこの場に出てから一度も攻撃をしていない。
夢幻魔導で全て幻覚を見せているだけだった。
「いつまでその、フリを続けるつもりで?」
「はぁ。」
「やっぱバレるかぁ。」
黒い髪の女は続けた。
「ところであんた。冥界のどこの出身?」
ダウラは驚く。まさか冥界という言葉を聞くとこになるとはこれっぽっちも思っていなかった。
「うるさい方ですね!」
ダウラは大鎌を振り抜く。
キーンっと甲高い音が響く。
杖でダウラの攻撃をいとも簡単に防いだ。
「ちょっと、ちょっとー。レディーに随分と失礼じゃない?」
「もうちょっとお話しましょう、よっ!」
杖で大鎌を弾いたと同時に大地がせり上がる。
無詠唱でダウラを土の牢獄に閉じ込めようとしたが、ダウラもそれには反応をして飛び上がる。
「随分とお喋りですね?」
「あなたと話す事などありませんよ?」
ダウラは結界を足場にして女の元へ凄まじい速さで向かっていく。
しかし突然、ダウラの視界が真っ暗になる。
全方位。無数の槍、剣、斧、矢、ありとあらゆる武器に囲まれたと思ったと、同時。
全てがダウラに向かって突き刺さる。
「夢幻ですか。こざかしい!!!」
ダウラは禍魂で応戦する。
視界が戻った瞬間、腹に重い一撃が来る。
後方の岩壁に吹き飛ばされるダウラ。
岩煙が消える前にダウラは起き上がるが、口から少し血がでている。
「今のは少し効きましたね。」
「少しばかり頭にきました。」
バチバチと音を立て禍魂を纏ったダウラは女の方に歩き出す。
「あれ?まだ立てるんだ?」
「思いっきり殴ったんだけどなー。」
「まぁ、私、体術は得意じゃないから、この程度じゃだめかー。」
「あなた、何者ですか?」
「あれあれ?お話してくれる気になったのかなー?」
「お話?何を言ってるのですか?」
「ここから一方的に質問するだけですよ?」
「あはは。それは無理だよ。」
「だって、あたしの方が強いから。」
そのセリフ。ダウラの癇に障ったのだろう。
纏っていた禍魂を解放した。
その時、女も対抗する。
禍魂で。
遠くから見ていたヒイラギも驚く。
女が放ったそれが神威ではなく禍魂だった事にだ。
それはダウラも同じであった。
「魔族か?それとも冥族か?答えろ。」
直後、ダウラは先程自分に掛けられた夢幻を女に掛け返した。
そして同じく。
女の腹に一発をお返しし、吹っ飛ぶ女。
「お前の方が強い?ふざけるなよ?」
「手を抜いてやってるんだ。」
いつもの丁寧な口調のダウラはそこにはいなかった。
起き上がった女が言う。
「はは。やるじゃない。」
「あなたが手を抜いてるって?」
「あたしも受けてあげただけよ。」
ダウラの空気感が一瞬にして変わる。
「あら、これはちょっとまずいわね。」
「まぁあなた達とはまた会うわよ。」
「必ずね。」
そう言い残してゲートを出した女。
「逃がすか!」
「死の狂想曲【デス・ワルツ】」
ダウラが大鎌を天高く振り上げた。
「ちっ。ダウラのやつ。」
ヒイラギは爆発的な速度でダウラの所へと移動。
「【ラフ・デュラペスト】」
落ちていた剣を手に取りダウラの攻撃に合わせてそれを止める。
同時にゲートへと消えていった女。
「ダウラ。やりすぎだ。」
「今回の任務は対象の捕縛。忘れたか?」
ヒイラギを目にし我に返るダウラ。
「ヒイラギ様。」
「申し訳ございません。」
「ああ、大丈夫だ。」
「それより、今のあれ、冥族か?」
「人間の姿をしていたのでどこの者かまでは分かりませんが、冥族で間違いないです。」
「そうか、あいつ。」
「我とリリィの存在にも気付いていた。」
「ヒイラギ様。奴はまた会う。と、申していました。その時は。」
「ああ。分かっている。」
後味の悪い結果となってしまった、今回の指名依頼。
女を逃してしまったことにか、はたまた、自分の実力になのか。ダウラはいつもの様子と少し違っていた。
しかし、ヒイラギは笑っていた。あの顔で。
____24名の捕縛。
ギルド本部に身柄を渡し今回の依頼は完了となった。
ただ、実際に25名いたことはグロリオサの面々しか知らない。
後に聞いた話によると、リーダーのジャフは冒険者時代に付き合っていた彼女を賊に殺されてしまった事が原因で闇堕ちしたそうだ。
そういった過去を持った人の集まりが叛逆夜賊だったと。
そして、囚われていた行商人。
裏で人身売買をしていたそうで、怯えていた女性2人はその行商人によって裏オークションに出品される予定だったの事。
叛逆夜賊はそういった裏社会に手を染めた行商人や貴族しか襲っていなかった。
しかし、やり方が間違っていた。と、今は牢獄で反省しているようだ。
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