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4.激闘の後――腹を満たす――感動の再会()

下要素があります。

苦手な方はご注意ください。

 「――…………んー?」


 太陽に照らされて、倒木を背凭れにして剥き出しの地面に片膝を立てて座っていたラウドが瞼を開く。

 周囲をキョロキョロと見回した後、眼前に力無く横たわる首の無い碧龍の亡骸を目にし、自身が眠っていたことにラウドは遅れて気付いた。

 

(いつの間に寝てたんだ……記憶が無い。もし、魔物に襲われていたら眠っているうちに死んでいたな)


 限界まで疲労が溜まっていたのだろう――太陽が真上に上る時間まで警戒のけの字も無い程、無防備に眠っていたようだった。

 熟睡の甲斐あってか、疲労はすっかり取れており、あの激戦の後だと言うのに力強い動きでラウドは立ち上がる。


 凄まじい戦闘の跡だった。

 龍が巣にしていた山は綺麗さっぱり消え去り、緑豊かな平原は龍の業火が燃え広がってすっかり残り火と煙が燻る立派な焼野原と化していた。


 龍とラウドの激闘は地形を変えた。

 山一つ分の資源が根こそぎ消えたとなれば、国の重鎮からのお叱り――特に自然にうるさい長耳(エルフ)からの追求は免れないであろう。

 これはまた怒られるなー、とぷんすか怒るトモエ達の姿を脳内に浮かべつつ、呑気に欠伸を決めるラウド。

 熟睡後だというのに、どうにも強い眠気が瞼に重しを掛けるのだ。

 眠気覚ましに一つ伸びをすると、ラウドのお腹が獣のような唸り声を上げて空腹を訴える。


 「腹が減って死にそうだ……まずは飯にするか」


 

 「――うっま……なにこれぇ……」

 

 戦闘の衝撃で茸の傘のようにめくれあがり、地面に影を作る場所に風除けの為に龍の亡骸を引きずって移動するラウド。

 龍のブレスが残した火に薪を加え、その上に鱗を全て剥がした龍の生首を置いて焼き、焼き上がればそのまま丸かじりする野生スタイルで肉を口にしたラウドは湧き上がる感動を口から漏らした。

 火の通った龍の肉を口に含み、咀嚼すると暴力的な旨味と肉汁が口内に溢れ、脂と涎が絡み合う。

 今まで食べた牛、豚、鳥のどれにも当てはまらない凝縮された素晴らしい旨味にラウドは青空の下、眠気に意識を引きずられながらも、驚愕に心を震わせていた。

 生態系頂点捕食者の肉はとんでもなく美味しかったのだ。

 

 (これなら幾らでも食べられる……もうちょっと焼くか)


 最後に切り落とした片前足を拾い、尾を根元から切り落とす。

 試しに鱗が付いたまま焼いてみたが、鱗の下の肉は焼けるどころか冷たいままだったので面倒だが、赤槍を短く持ってナイフのように扱って丁寧に鱗を剥がした後に火へ掛ける。

 そうして首から上、片前足、尻尾全てを食べ終えたラウドは不思議と力が滾る中、心地の良い満腹のまま眠気に従い目を瞑り眠りにつく。

 

 夜から昼、そして昼から再び夜になり、龍の肉の味がする牛を飼う夢を見ていたラウドは再び目覚め、また龍を喰らう。

 途中雨が降ったのは幸いだった。

 龍の頭蓋に溜めた雨水の中に龍骨と肉を入れて作ったスープを作ったり、腐る足が速そうは優先して食らう。

 しっかりと血抜きが出来ている訳でも無いのに、血生臭さが一切無いことに感動しながら腹を満たす。

 激戦の後だからか、とにかく眠くて腹が減るのだ。

 食べて寝ることしか考えられない――腹が膨れたラウドは腕を枕に硬い地面の上で横になると、すぐに静かな寝息を立てる。

 

 ラウドの眠気が完全に取れたのは、それから二日後。

 龍の肉どころか可食臓器も全て食べつくした後の事だった。


 

 ――何か忘れている気がする。大事な何かを。

 骨と鱗だけになった龍を前に、牙を爪楊枝替わり歯の掃除をしながらラウドは頭を回す――が、すぐに目の前の龍骨に意識を持っていかれる。

 鱗や骨はラウドとの戦いで傷に塗れな為、本来持つ価値を大きく下げており、無事なのは牙や背中から後ろの部位の骨ばかり。


(綺麗な状態だったら組み立てて家に飾りたかったな……無傷ならカッコよかっただろうな)


 顔や腕、胸や横腹――取り分け正面側の骨の損傷が酷く、これでは飾っても今一迫力に欠けるだろう。

 仕方が無いことだけど残念だ――ラウドが勿体無く思いながら骨を見ているとふと、疑問が頭によぎる。


「あれ、俺何で龍と戦ったんだっけ……?」

 

 龍と戦ってから既に三日目。

 その間、食事以外の時間は泥のように眠り続けていたラウドの寝ぼけた脳みそは、肉の旨味に横入されてすっかり龍退治の理由を記憶の奥底へと追いやっていた。

 しかし、口にした疑問の答えはすぐに出た――否、ラウドの前に姿を"現した(・・・・)"。


「ラ、ラウドー! 其方無事なのかー!」


 遠方からたくさんの馬車を引き連れる一団――その先頭で黒馬に跨る菖蒲色の髪をした女の子、トモエが大声を出しながら視線を左右に振り、ラウドを探す。

 凹凸が激しく、龍の炎の影響で三日経った今でも至る所で煙を上げるこの場所は現在視界が悪い。

 特に、焚火を風から守る為に、めくれあがった地面を傘にしているラウドの姿は常人では見つけられないだろう。


「其方は無事なのか! らうどおおおおお!」

 

 凄惨な戦闘跡の中で馬を走らせ、必死で不安に震えたトモエの声を耳にするラウドだったが、その顔は珍しく動揺一色に染まっていた。

 トモエの姿を目視した瞬間、完全に思い出したのだ。


「やばいやばいやばいやばい! 忘れてた何してんの俺ぇ……姫君に献上するはずの龍を全部一人で食べちゃったよ!!」

 

 龍を倒す前のラウドは 龍を倒す → 持って帰る → 姫大喜び → 一緒に肉食べる →二人は幸せな焼き肉をして仲直り終了 な手筈だったのだが、その肝心の肉は全て、あまりの空腹と眠気で何も考えられなくなっていたラウドの腹の中だ。

 

「ど、どうしよう。うわ、全部いっちゃったよ俺……!? 二人で食べれば腹も膨れて姫君も許してくれるかなって思ってたのに!」


 額に汗を流し、うわ言のように呟くラウド。

 焦りからせわしなく身体を動かしていると、その足が立て掛けていた赤槍に触れてしまい、バランスを崩した赤槍が硬い地面にぶつかる。

 カーン、という高い金属音が風の靡く音のみだった平地になった山の跡地に響き渡る。

 バッと反射的に振り向いたトモエと頭を抱え蹲るラウドの目が合う。

 

「ッスゥー……ど、どうも姫君、お久しぶり――「そこに居るなら返事をせぬかあぁぁぁ!」」

 

 意外と近くまで来ていたトモエとラウドは数日振りに感動?の再開を果たしたのであった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「何故このような無茶をしたのだ!」


 怒髪冠を衝くトモエが地面に正座するラウドに怒声を浴びせる。


「いや、そのーー……」


「誰が龍と戦えと命じた! 妾も随分と其方を叱ったが、死ねと言うた覚えは無いぞ! 嘘隠し事一切無用。全てを己が口で説明せよ!」


 犬歯を見せて正座するラウドの前で腕を組み、威圧するように仁王立ちするトモエ。

 彼女の胸中は今、先日よりもさらに激しい怒りの炎が燃え盛っていた。

 トモエの説教は長い。

 罪を軽くするべく、ラウドは覚悟を決めて口を開いた。

 

「その、前に姫君が龍が住み着いて困ってると、愚痴ってたじゃないですか……」

 

「一国の姫に愚痴ってたとか言うでないわ。……あの時冗談で倒して来いと言うたが、本気では無いことは知っておったであろう。というか、酪農馬鹿の其方はちゃんと命じても戦わんだろう?」


「それはそうなんですけど。ほら前の……あれ、何日前だ? ずっと寝てたから何日経ったか正確にわからん……」


「……"ずっと寝てた"? 後で詳しく話せ。妾が大門で説教をしたのは三日前だ」


「いやいや、疲れて三日間ほぼここで寝てただけなんで。……で、その時ですけど俺が姫君を傷付けてしまったかな~、と……」


「むっ……」


 なんとも申し訳なさそうに言うラウドの言葉に、怒りに染まっていたトモエの表情に初めて困惑の色が産まれる。

 確かにあの日、トモエは僅かながらにもショックを受けてしまった自覚があった。


「……ラウドが気にすることでは無い。皇族に産まれその末席を汚す身でありながらあの程度でショックを受ける妾が未熟なだけだ」


「そうは言いますが、俺が傷付けたのは事実。仲良くなって三年経ちますが、初めて姫君の傷付いた表情を見たんです。だから、そ、その……」


 その先を、何故か落ち着き無くもじもじし始めるラウド。

 

「なんだ。 なんとなく察したが言うてみよ」

 

「あ、あの……龍を倒したら姫君の困りごとも無くなるし、龍が居なくなれば仲直りをして貰えるんじゃないかな~……なんて……」


「そんなことだろうと思ったが、人付き合いが下手糞過ぎるわ! 仲直りに龍退治なんぞ、絵物語でもやっとらんだろうに! 気持ちは嬉しいがそんなことで龍と戦うな馬鹿者。死んだら仲直りも出来んのだぞ」


「姫君が騎士並って言ってたんで"ダル絡みアイス"程度ならまだ勝てるなーって……」


「確かに其方は毎度絡まれておるが、その渾名を帝国人の前で絶対に口にするでないぞ!? 帝国騎士を公然と侮辱したとあれば、また面倒事になるぞ! それに帝国の氷結騎士は其方と同じ位を授与されたばかりで経験の浅い新参者。こう言ってはあれだが、龍と比べるべきでは無い」


 帝国は大昔に悪しき魔物を倒し大陸を救った騎士が築いた国。

 故に、帝国は騎士至上主義とまでは言わないがそれに近い側面を持ち、自国の騎士への侮辱は何であろうと許さず、また決闘だなんだと言い出すこと間違いなしだろう。

 龍と一人戦ったり、帝国騎士を妙な渾名で公然と呼んだりラウドはあまりにも無防備が多すぎる――トモエは内心でラウドの危うさを危惧する。


(やれやれ、妾が目を離すとすぐにとんでもないことを起こすなラウドは。騎士という立場の重責くらいは理解して欲しいが……まぁ、今は良いか)


 ラウドがトモエを思い、酪農を我慢して自分の為に動いてくれた。

 あの(・・)ラウドが家畜の世話を三日もしないなんてことはこれまではあり得なかったことだ。

 小さなことだが、それでもトモエは今の状況を喜んでいた。

 先日の一件や今回の無茶も、割とどうでもよくなる程トモエの機嫌は良くなっていた。


「全く。龍なんぞを倒しに行く前に、仲直りがしたいなら言うことがあるであろう?」


「ご、ごめんなさい……?」


「うむ! そう言ってくれれば龍なんぞに挑まなくとも水に流しておったぞ!」


 すっかり機嫌良くしたトモエはニコニコと嬉しそうに笑う。

 

「三日も魔物の肉ばかり食べて飽きたであろう。共に王城へ戻り、贅を尽くした料理を食べるとしようか……ところで倒した龍はどこだ?」


「あっ……」


 ラウドの背にある雑に盛られた骨の山。

 それを見て、"ラウドが三日間ここで過ごす間に食べた別の魔物の骨だろう"と意識することなく判断したトモエがラウドへ龍の遺骸の場所を尋ねる。

 

「龍の骸は皇国の宝物庫にも存在しない貴重な宝物。そんなものを野晒しに放置はできん。城に持ち帰らねばな」


 気まずさからトモエを直視できないラウドを他所に、トモエはペラペラとそれはもう饒舌に話を始める。

 

「龍は超偏食家でな。

 その途轍もない性能を持った巨体を維持し続ける為、口に入れる物は卵の為に危険を遠退ける産卵期以外は全て龍の御眼鏡に叶う栄養価が高い物。――つまりは、『破城魔猪』のような強力な魔物の肉や、前人未踏の秘境や霊峰のような場所に生える特別効果の高い薬草や果実のみなのだ。

 そのせいか、龍は世界一の薬用生物と言われておる。

 牙や鱗、瞳は王族のような何よりも命が優先される者に送られる超強力な武具に。

 血肉はこの世で最も美味な食材と名高く、臓物は万病に効く薬となり、龍の生命の根幹たる心臓はその者に不老長寿を齎すとまで言われている――不老云々は眉唾物だが、それでも滋養強壮に富んだ素晴らしい物なのは間違いない。

 実は子供の頃に龍の血肉を食べ、この世ならざる美貌を手にした女を取り合った男達が争いを始め、結果幾つも国を滅ぼした魔女の物語を読んだことがあってな……女として一度口にしてみたいと思っておったのだ。感謝するぞ、ラウド! 龍を倒した騎士が皇国に居ると言う話はすぐに世界中に喧伝されるであろう。諸外国との外交に良い影響を与えるであろう!」

 「すみません全部食べちゃいました」


 あっさりと自白するラウド。

 食べてしまった事に気付いた時は動揺したが、産まれ持った尋常では無い図太い(無神経な)精神を持つラウドは時間経過と共に不要な落ち着きを取り戻し、その感情は薄れ今では平然としたものだ。

 ラウドのあっさりした声色を前に、トモエはそれどころでは無かった。

 ラウドの言葉を脳は言葉として認識出来ず、うきうきだったトモエの機嫌をどん底に落とし、全身が石化しように硬直させる。

 トモエの口からなんとか漏れ出た言葉は酷く空虚で胡乱なものだった。


「……………………は???」

 

 ラウドの言葉を反芻、拒絶、反芻――と何度も繰り返して出た言葉は長い沈黙の後。

 

「これ、龍の骨です」

 

 ここまで正座しっぱなしのラウドが親指で自身の背後にある骨山を指す。

 

「――――龍……こくほー……わらわ……えっ?」

 

「すいません、お腹が減って食べちゃいました」

 

 トモエの脳内は意味不明なラウドの言葉で完全に停止。

 宇宙を背景にした猫を幻視させる。

 トモエの瞳がラウドの後ろに向けられる。

 槍傷が激しく刻まれたボロボロの骨。そして、肉片一つ残さない白い骨の中に混じる"何故か色褪せた白色の(出汁を取った)"龍骨がトモエの記憶に糊のようにべったりとこびり付く。

 もう二度と忘れることは出来ないだろう。

 

「美味しかったです、ほんっとうに。特に心臓なんてそれはもう、この世の物とは思えない程でしたね。是非姫君にも食べて欲しかったんですが……この結果は俺としても残念です」


「……あ"?」


 トモエの熱された血が激しい動悸で迅速に昇り、額に血管を浮き上げる。

 質が悪いことに言葉の終わり際に開けられた絶妙な間と本当に残念に思っているのか、眉間に皺を寄せ顔を数度横に振ったその態度にトモエはこれまで覚えたことが無い()を胸に宿す。

 それこそ、あんなに嬉しかった"ラウドが自身の為に動いてくれたこと"が些末に思える程のグツグツとしたマグマのような()だ。


「……なんで……」


「ん? 食べた理由ですか? もう眠気と空腹がもう酷くって……今思うと英断でしたね。あれ程の素晴らしい強敵の命を自らの手で奪ったのです。腐らせず、しっかり自身の血肉にすることが一番の弔いと命への感謝というものでしょう」


 龍の身体は早々腐らん――頭では言葉が出てくるのにトモエの唇は小刻みに震えるばかりで彼女の意志に反して動いてくれない。


「――妾の為ではなかったのか……?」


 静かに呟くトモエの瞳は前髪に隠れてラウドからは見えない。

 食べちゃったもんはしょうがない、とキレイに吹っ切れているラウドがトモエの堪忍袋の紐に撃鉄を落とした。

 

「実はさっきまで姫君のことも忘れてたんですよね」


 最低の言葉を口にしながら飄々とするラウド。

 ラウドを見るトモエが腰に指した剣に手を掛け、抜き放つ。

 皇族の責務として、ある程度戦闘訓練を受けているトモエの抜剣は歳の割には洗練されたもの。


「……姫君?」


 心底不思議そうに正座したままライドが首を傾げる。

 皇族専用の剣はラウドの赤槍と同じく労力、費用、材料を惜しげも無く懸けて製造されたラウドの持つ槍と同等――その刃がラウドに向けられる。

 

「え、姫君……?」


「妾は何度貴様(・・)に裏切られるんだろうな……毎日貴様に踊らされ、褒めればこの仕打ち」

「苦節三年。貴様にも漸く人並みの思い遣りが芽生え、妾の為に龍殺しを為してくれたと嬉しく思えば『食べちゃった』?『残念』?……挙句の果てには妾への謝罪の思いも『忘れてた』とは!」

「本当に女を弄ぶのが巧いなァラウド――しかし困る、困るぞラウドよ……。我が国の騎士が誑しの屑になられては国の威信に関わると思わんか? ん? そうよな? そうだよなァ? そうだと言えラウド(クソ野郎)


「そ、そうです、ね?」


「うむうむ。そうであろう、そうであろう。ならば教育が必要だな」

「え」

「躾には飴と鞭が効果的と言うであろう? だから、この妾が手ずから飴と鞭をくれてやろう……飴は甘いものだ。だからこそ、恐ろしい鞭が必要なのだ。愚かな女遊びを、忘れるようなのぉ」


 キィィィィン――――

 トモエの剣が持つ特別な機構――刃が高速振動する音である。

 

「姫君!?」

「死ぬが良い奸夫」

 

「ちょっと待ったァ!!」

 

 トモエが向ける純粋な殺気を感じ取ったラウドが慌てて立ち上がる。

 龍の炎で全身を焼かれたその身体は驚異的な代謝により自然治癒されており、真上から下りる陽光がラウドの全てを明るく照らす。

 

 "下着一枚残さず燃え失せていることを龍との激闘ですっかり忘れていたラウド"と"三日も皇都に顔を出さず、知らせを受けて心配と焦りのあまり今の今までラウドの状態に気が付かなかった皇女"

 全裸のラウドはトモエの前で惜しげも無く、全てを開帳する。

 後に皇族内で語られる『全裸(フル〇ン)騎士第二皇女全開帳事件』である。

 

「ラウド様は帝国では【豪傑の牛騎士(エルコーレ・ミノス)】なんて呼ばれてるらしいが……」

「てっきり牛飼いに異常執着があるから二つ名に牛が付いていると思ってたが……」

「"牛"……なるほど、あれを見れば確かに。でも、どちらかというとあれは"馬"と言うんじゃないのか?」

「凄い不敬罪だ……っ! 俺達みたいな凡夫には到底真似出来ないことを平然と……!」


 立ち上がる振動でトモエの前でぶらぶらとぶら下がるそれにトモエが、衛兵が、ちょっと遅れてラウドの視線が向けられる。

 全裸で過ごすこと三日。

 すっかり全裸で居ることに違和感を感じなくなっていたラウドは今の自分の状態を見て、脂汗を垂らした。

 

「ほ、ほぉ……みじゅ(・・)から切り落とすよう差し出すとはぃい度胸だらうど……っ!」

 

 顔を真っ赤に染めたトモエがラウドの胸……からちょっと下に剣の切っ先を向ける。

 

「わ、妾にそのようなモノまで見せびらかすとゎ、良い度胸だ、じゃないか……っ」


 言葉の文脈が乱れながらも剣を両手で握り持ち上げたトモエを前にするラウドはくるりと回転し、その引き締まった尻をトモエに向け、一目散に逃げ出す。

 

「……さらば姫君っ!」


「尻まで妾に見せつけるか! ……っ!? 走るな! 背中越しでもちょっと視界に入るだろうがこの変態駄馬が!!!」


 顔を真っ赤湯立たせたトモエと全裸のラウドの競争は衛兵達が龍の遺骨を荷馬車に運び終わるまでの間、続いたという……。

思い付きで書いてるんで毎日更新が難しい……。

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