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「一年B組の白金結城くんっていますか?」
教室の空気が、一瞬だけ静まり返る。
「え?」
「白金?」
「誰?」
「女の子?」
視線が一斉に俺へ集まった。
「白金くん」
優奈が口元を押さえながら笑う。
「……また何か始まりそうだね」
「だから違うって」
苦笑しながら席を立ち、教室の外へ出る。
「すみません、お待たせしました」
「いえ。先生が職員室に来てほしいそうです」
「職員室?」
「はい。伝言だけなので」
女子生徒は軽く会釈をすると、そのまま廊下を歩いて行った。
(先生が俺を……?)
特に何かした覚えはない。
首を傾げながら職員室へ向かう。
◇
「失礼します」
職員室へ入ると、担任がこちらに気付いて手招きした。
「おう、白金。悪いな、呼び出して」
「何かありましたか?」
「まあ座れ……と言いたいところだが、すぐ終わる」
先生は苦笑しながら周囲を見回し、少しだけ声を落とした。
「実はな。この後のホームルームでクラスのみんなにも話すことなんだが」
「はい」
「十一月下旬に校外学習を実施することになった」
「校外学習ですか」
思わず聞き返す。
高校に入ってから初めての校外学習だ。
「それで、お前には先に伝えておきたいことがある」
先生は一枚の資料に目を落とした。
「学校側の都合で、班編成を一部調整することになってな」
「調整……ですか」
「ああ。本来ならホームルームで発表する予定だったんだが、お前の性格を考えて先に話しておこうと思った」
先生は俺を真っ直ぐ見た。
「白金、お前には優奈さんたちの班に入ってもらう予定だ」
「……え?」
思わず固まる。
「もちろん、まだ正式発表前だ。だが、お前なら『自分が入ったら迷惑じゃないですか』なんて考えそうだからな」
図星だった。
何も言い返せずにいると、先生は小さく笑う。
「安心しろ。これは学校側で決めたことだ。それに、島崎たちにも事情は説明してある。」
「そう、なんですか……」
「ホームルームで詳しく説明する。だから今は、『そういう話がある』くらいに思っておいてくれ」
「……分かりました」
「よし。それじゃ教室へ戻れ」
「失礼しました」
職員室を出ても、頭の中は整理が追いつかなかった。
(優奈たちの班……)
まさかそんなことになるとは思ってもいなかった。
◇
教室へ戻ると、案の定だった。
「おかえりー!」
真っ先に声を掛けてきたのは原田さん。
「何だったの?」
「先生に怒られた?」
「それとも、さっきの子と何かあった?」
「だから違うって」
席へ戻ると、優奈が興味津々といった様子で身を乗り出してきた。
「で?」
「……まだ言えない」
「え?」
「この後のホームルームで先生から話があるらしい」
その一言で、四人は顔を見合わせた。
「ホームルーム?」
「何だろう?」
「気になるね」
末永さんが小さく首を傾げる。
楓も静かに考え込んでいた。
その時――。
キーンコーンカーンコーン。
ホームルーム開始のチャイムが教室に響く。
「はい、席に着けー」
担任がプリントの束を抱えて教室へ入ってきた。
その表情は、どこか嬉しそうだった。
「今日はみんなに一つ、嬉しい知らせがある」
教室がざわつく。
俺は机の上に置かれたプリントへ視線を落とし、小さく息をついた。
(いよいよ、校外学習の話か……)
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