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周りから見れば分かりやすいのだろうか。
自分ではまだ、よく分からないのに。
「……何の話?」
不意に横から声がした。
振り返ると、末永さんが自分の席からこちらを見ていた。
昼食のサンドイッチを片手に、少し不思議そうな顔をしている。
「あ、末永さん!」
優奈が嬉しそうに手を振った。
「白金くんの恋バナしてたの!」
「だから違うって」
「またその話?」
末永さんは小さく笑った。
「最近よく聞く気がする」
「だって白金くんが怪しいんだもん」
「怪しいね」
「お前らな……」
俺がため息を吐くと、末永さんは少し考えるように首を傾げた。
「でも、変わったとは思うよ」
「……末永さんまで?」
「うん」
あっさりと頷かれた。
「前はもっと話しかけづらかったし」
「そんなに?」
「そんなに」
「必要なことしか話さないし、自分から会話に入ろうとしなかったよね」
「そうそう!」
「それ!」
優奈と原田さんが勢いよく同意する。
「……ひどくないか?」
「事実だし」
「否定できる?」
「……」
できなかった。
「でも」
末永さんは少し視線を落としてから続けた。
「最近は違うと思う」
「違う?」
「こうやって騒がれてもちゃんと返してるし」
「前なら席立って終わりだったよね」
「たぶん、どっか行ってた」
「……否定できない」
「ふふっ」
末永さんは少しだけ笑った。
「だから、今の白金くんの方が私は好きかな」
「おぉー」
「出ましたー」
「え?」
優奈と原田さんの反応に、末永さんは目を瞬かせた。
「何?」
「その『好き』ってやつ」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「まただ」
「最近みんなその前置きするよね」
「本当に違うから」
末永さんは困ったように苦笑した。
「私はただ、今の白金くんの方が話しやすいってこと」
「それは分かるかも」
柔らかな声がした。
見ると、小林楓がこちらを見ていた。
「小林さん!」
「お昼食べ終わったの?」
「うん」
楓は俺たちの輪の近くまで来ると、少し照れたように笑う。
「前より笑うこと増えたよね」
「……」
「だから私も、今の白金くんの方が好きだな」
「小林さんまで!」
「えっ」
楓は一瞬固まった。
そしてみるみるうちに頬を赤くする。
「ち、違うの! そういう意味じゃなくて!」
「まただー!」
「本日二人目」
「もう何回目だろうね」
原田さんが楽しそうに笑う。
「絶対、白金くん本人より周りの方が気づいてるよね」
「何にだよ」
「さぁ?」
「そこまで言ったなら言えよ」
「言わなーい」
優奈はいたずらっぽく笑った。
騒がしい声が教室に溶けていく。
窓の外では運動部の掛け声が聞こえていた。
教室のあちこちでも、昼食を囲むグループの笑い声が響いている。
そんな何気ない昼休みの中で。
「でも、いいことだと思うよ」
末永さんがぽつりと言った。
「変わるのって、悪いことばっかりじゃないから」
「……」
「前の白金くんも白金くんだったけど、今の白金くんもちゃんと白金くんだし」
「そうそう」
「むしろ今の方が親しみやすい」
「私は好きだよ」
「私も」
「私もかな」
優奈、楓、末永さん。
それぞれ違う調子で紡がれた言葉に、原田さんは少し笑って肩をすくめた。
「私はからかいがいがあって好きかな」
「お前だけ理由おかしいだろ」
「あ、ツッコんだ」
「また変わったね」
「前なら無視してたかも」
「……」
言い返そうとして、やめた。
たぶん、その通りだから。
一人でいる方が楽だと思っていた。
誰とも深く関わらない方が面倒がなくていいと思っていた。
だけど。
「……悪くない」
「ん?」
「何か言った?」
「別に」
「絶対何か言った!」
「気になるー!」
昼休みの笑い声に囲まれながら。
俺は小さく息を吐いた。
――こういう時間も。
案外、嫌いじゃないのかもしれない。
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