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昼休み。
四時間目の終了を告げるチャイムが鳴る。
教室の空気が一気に緩んだ。
俺も軽く息を吐く。
今日は本当に授業が頭に入らない。
原因は分かっている。
分かっているからこそ困っている。
「白金くん」
不意に声を掛けられた。
顔を上げると原田さんが立っていた。
「ん?」
「今いい?」
「別に」
そう答えると、原田さんは俺の前の席に腰掛けた。
そしてニヤニヤする。
嫌な予感しかしない。
「何だよ」
「いやー」
「その顔やめろ」
「最近さ」
原田さんは頬杖をついた。
「なんか変わったよね」
「何が?」
「白金くん」
意味が分からない。
「変わってないだろ」
「変わったって」
「例えば?」
「授業中」
心臓が少し跳ねる。
「ぼーっとしてること増えた」
「そんなことない」
「ある」
即答された。
反論できないのが悔しい。
「なんか考え事してるでしょ?」
「まぁ……少しは」
「恋愛?」
「違う」
「即答じゃない時点で怪しい」
鋭い。
原田さんは楽しそうに笑った。
「誰のこと考えてるの?」
「だから違うって」
「ふーん」
全然信じていない顔だった。
その時だった。
「おは……じゃなくてこんにちは」
聞き慣れた声。
振り返ると島崎優奈がやって来た。
「何の話してるの?」
「白金くんの恋バナ」
「は?」
勝手に話を作らないでほしい。
だが優奈の目が輝いた。
「えっ!?」
「違うからな」
「誰!?」
「だから違う」
「本当に?」
「本当に」
優奈はじーっと俺を見る。
疑いの目だ。
「怪しいなぁ」
「なんでだよ」
「だって最近変だもん」
お前まで言うのか。
「変じゃない」
「変」
「変じゃない」
「変」
原田さんまで参加してくる。
完全に包囲網だった。
そんなやり取りの最中。
ふと視線を感じた。
教室の窓際。
小林楓がこちらを見ていた。
目が合う。
一瞬だけ。
楓は小さく首を傾げた。
――どうしたの?
そんな風に聞いているみたいだった。
その仕草に妙に意識が向く。
すると楓は少しだけ笑った。
そして何事もなかったように友人との会話へ戻る。
「……」
「白金?」
優奈の声で我に返る。
「聞いてる?」
「聞いてる」
「絶対聞いてなかった」
「聞いてた」
「嘘だ」
優奈が頬を膨らませる。
原田さんはその様子を見ながらニヤリと笑った。
「なるほどねぇ」
「何がだよ」
「別に?」
絶対に何か分かっている顔だった。
だけど教えてくれる気はないらしい。
俺はため息を吐く。
周りから見れば分かりやすいのだろうか。
自分ではまだ、よく分からないのに。




