表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知らぬ間にギャル集団の様子が変わっていったのですがまさか……いや、そんな事絶対あり得ないことですよね?……  作者: プリンアラモード


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/93

91

屋上を出て、階段を降りる。


小林さんの背中を、少しだけ距離を空けて追いかける。


さっきの言葉が、頭から離れない。


——ちゃんと、見ててね。


「……見るって、なんだ」


小さく呟いた声は、当然届かない。


でも——


「聞こえてるよ」


前を歩いていた小林さんが、振り向かずに言った。


「……は?」


「今の」


「いや、別に——」


「ふふ」


くすっと笑う声。


それだけで、さっきより距離が近くなった気がするのが、少し悔しい。


教室に戻る直前、小林さんがふと足を止めた。


「ね、白金」


「ん?」


今度は、ちゃんとこっちを向く。


さっきより、少しだけ真面目な顔。


「優奈のこと、“友達”って言ってたけどさ」


「……うん」


「それ、本当に?」


 一瞬、言葉が詰まる。


否定する理由はない。


でも、肯定するには——少しだけ引っかかる。


「……今は、そうだよ」


 少しだけ曖昧な答え。


小林さんは、それを聞いて小さく頷いた。


「そっか」


 それだけ。


それだけなのに——


ほんの少しだけ、安心したようにも見えた。


「じゃあさ」


 軽く息をついて、いつもの調子に戻る。


「その“今”が変わるとき、教えてよ」


「え?」


「ちゃんと、最初に知りたいから」


 そう言って、にやっと笑う。


さっきまでの空気が、少しだけ崩れる。


でも——


その奥にある本音が、消えたわけじゃない。


「……なんだよ、それ」


「別に?」


 くるっと背を向ける。


「約束ね」


「いや、勝手に決めないでよ」


「もう決まった」


 即答。


強引なのに、不思議と嫌じゃない。


教室のドアを開ける直前。


「あとさ」


 小林さんが、もう一度だけ振り返る。


「“楽”って言った責任、取ってよ?」


「……責任?」


「うん」


 少しだけ目を細める。


「他の子にも同じこと言ってたら、ちょっとムカつくから」


「言わない」


 反射的に出た言葉。


その瞬間、小林さんがふっと笑った。


「なら、いいや」


 ガラッとドアを開けて、中に入る。


——なんなんだよ、ほんと。


自分も後に続きながら、さっきのやり取りを思い返す。


島崎さん。


小林さん。


そして——


「……楽、ね」


自分で言った言葉なのに、妙に引っかかる。


席に座ると、窓の外から風が吹き込んできた。


屋上と同じ風。


でも、さっきより少しだけ——


落ち着かない。



席に座ると、窓の外から風が吹き込んできた。


 屋上と同じ風。


 でも、さっきより少しだけ——落ち着かない。


「白金ー」


 後ろから声がかかる。


 振り向くと、島崎さんが机に頬杖をついてこっちを見ていた。


「どうした?」


「どうした、じゃないでしょ」


 じっと見てくる視線。


 からかってるようで、でも少しだけ探るような目。


「楓と、なに話してたの?」


「別に、普通の話」


「ふーん?」


 納得してない顔。


 そりゃそうか。


「……気になる?」


「まあね」


 あっさり肯定。


 その返しに、少しだけ言葉に詰まる。


「だってさ」


 島崎さんが少しだけ体を乗り出す。


「最近、楓——白金のこと、めっちゃ見るじゃん」


「は?」


 思わず変な声が出る。


「いや、気づいてないの?」


「いや……」


 言われてみれば、屋上でも——


「ほら、今も」


「え?」


 反射的に視線を前に向ける。


 すると——


 一瞬だけ、小林さんと目が合った。


 すぐに逸らされたけど。


「……」


「ね?」


 島崎さんがニヤっと笑う。


「分かりやす」


「うるさい!」


 視線を机に落とす。


 でも、さっきの言葉がまた浮かぶ。


——ちゃんと、見ててね。

——最初に知りたいから。


「……」


「なにその顔」


「なんでもない」


「嘘だね」


 即答。


 本当にこいつは——


「白金さ」


 島崎さんの声が、少しだけ落ちる。


「どうしたいの?」


「……なにが」


「私と、楓と」


 軽い調子じゃない。


 ちゃんとした問い。


 逃げられないやつ。


「どっちも“楽”で済ませるの、無理だよ?」


「……」


 図星だった。


 だから、何も言えない。


「別にさ」


 島崎さんがふっと笑う。


「どっち選んでもいいよ」


「選ぶって……」


「でも」


 そのまま、少しだけ目を細める。


「中途半端なのが一番ダサいから」


「……」


 ぐうの音も出ない。


「ま、今すぐじゃなくていいけどね」


 空気を戻すように、軽く肩をすくめる。


「ただの忠告」


「……ありがとよ」


「どーいたしまして」


 島崎さんは満足そうに笑った。


 その向こうで——


 小林さんが、また一瞬だけこっちを見ていた。


「……厄介だな」


 小さく呟く。


 でも——


 本当は分かってる。


 これは、厄介じゃない。


 ただ、


「——ちゃんと、選べってことか」


 風が、もう一度強く吹いた。


そのとき——


「ねえ」


 前の席から、声が飛んでくる。


 顔を上げると、小林さんがこっちを見ていた。


 今度は、逸らさない。


「今日、放課後ヒマ?」


「……は?」


 教室の空気が、ほんの少しだけ揺れる。


「ちょっと付き合ってよ」


 いつもの軽い調子。


 でも——


 断られる前提じゃない言い方。


「……なんで俺」


「約束」


 即答。


 にやっと笑う。


「責任、取るんでしょ?」


「……」


 言葉に詰まる。


 さっきのやり取りが、そのまま返ってくる。


「それとも」


 少しだけ目を細める。


「無理?」


「……いや」


 気づいたときには、答えていた。


「別に、いいけど」


「よし、決まり」


 満足そうに前を向く小林さん。


 その横顔を見ながら——


「へぇ」


 すぐ後ろで、島崎さんが小さく笑った。


「もう動くんだ」


「……うるさい」


「楽しそうでなにより」


 からかう声。


 でも、その奥にあるものは——さっきより少しだけ、見えない。


「……」


 放課後。


 たぶん、何かが変わる。


 そんな予感だけが、やけに鮮明だった。


 ——いや。


 違う。


 変わるんじゃない。


 もう、動き出してる。

読んでくれてありがとうございます!次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ