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昼休み。
「白金、一緒に食べよ?」
声をかけてきたのは、小林さんだった。
「うん、いいよ」
なんとなく流れで、屋上へ向かう。
今日は風が少し強くて、フェンス越しに街の音がかすかに聞こえる。
「ここ、落ち着くよね」
「そうだね」
適当に返しながら、隣に座る。
小林さんはコンビニの袋を開けながら、ちらっとこっちを見た。
「昨日さ、楽しかったね」
「うん、楽しかったね」
「優奈、すごい嬉しそうだった。特に白金のこと見てるとき」
その名前が出た瞬間、少しだけ胸がざわつく。
「……そうかな?」
「うん」
少しだけ間を置いてから、続ける。
「ああいう顔ってさ、ケーキだけじゃ出ないよ」
「え?」
「白金がいたからでしょ」
「いや、ケーキとか準備したのはお前らだし——」
「でも」
食い気味に、遮られる。
「誕生日、ちゃんと覚えてたのは白金じゃん」
「……まぁ」
「それって、結構大きいよ」
まっすぐな言葉だった。
原田さんみたいに軽くもない。
どこか、静かで——でも逃げ場がない。
気づいたら、奥に入ってくる
「……ありがと」
それしか言えなかった。
少しの沈黙。
風の音だけが、間を埋める。
「ねぇ、白金」
「ん?」
「優奈のこと、どう思ってるの?」
——またその話か。
……でも、嫌じゃない
思わず苦笑する。
「なんだよ、みんなして」
「気になるから」
さらっと言う。
「別に……普通だよ。ただの友達」
「友達、ね」
小林さんはそれ以上は踏み込まなかった。
ただ、少しだけ目を細める。
「そっか」
それだけ。
なのに、なんとなく見透かされてる気がした。
「じゃあさ」
今度は、小林さんの方から少しだけ距離を詰めてくる。
「私のことは?」
昨日と同じ質問。
でも、空気は全然違う。
逃げ場がないわけじゃない。
でも、逃げたくなくなる。
「……小林さんは」
言葉を選ぶ。
「一緒にいて、楽だなって思う」
正直な気持ちだった。
変に取り繕わなくていい。
無理しなくていい。
「そっか」
小林さんは、少しだけ笑った。
そのまま、ほんの少しだけ肩が触れる距離まで近づく。
でも、わざとらしさはない。
自然に。
「それってさ」
静かな声。
「……結構、ずるいよね」
「え?」
意味が分からず、顔を見る。
小林さんは、こっちを見ないまま続けた。
「楽って思える人って、なかなかいないじゃん」
「まぁ……そうかもな」
「でしょ?」
少しだけ、間。
「だからさ」
ようやく、目が合う。
逃げられない距離。
「そのままでいてくれると、嬉しいな」
「……そのまま?」
「うん」
小さく頷く。
「無理して誰かに合わせたりしないで」
風が吹いて、彼女の髪が揺れる。
「私は、今の白金がいい」
一瞬、言葉を失った。
強くもない。
重くもない。
でも、確かに届く。
「……ありがと」
それしか言えない自分が、少しもどかしい。
小林さんは、ふっと笑った。
「うん。それでいいよ」
そのまま立ち上がる。
「そろそろ戻ろっか」
「そうだね」
歩き出して、少ししてから。
「ね、白金」
「ん?」
振り向いた瞬間。
ほんの少しだけ、袖を引かれた。
昨日とは違う、優しい引き方。
「ちゃんと、見ててね」
そう言って、手を離す。
「私のことも」
軽く笑って、先に歩いていく。
——静かなのに、やけに残る。
さっきの言葉も、あの距離も
読んでくれてありがとうございます!
次回もよろしくお願いします!




