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知らぬ間にギャル達の様子が変わっていたのですが、俺はまだ気づいていません。  作者: プリンアラモード


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3

9月20日修正済み

俺達は、目的のカフェに到着した。


「うわ……」


思わず声が漏れる。


目の前には長蛇の列。


放課後の学生で溢れ返っていた。


「やっぱり混んでるじゃん……」


「でも来れてよかった!」


恵理は嬉しそうだ。


対して俺は、今すぐ帰りたい。


映え系カフェの行列なんて、周りは女子とカップルばかりだ。


そこに、制服のまま手を繋いで並ぶ陰キャ。


公開処刑にもほどがある。


「ねぇ結城」


「ん?」


「私達、周りからどう見えてると思う?」


「知らない」


「えー、ちゃんと考えてよ」


恵理が繋いだ手に、ぎゅっと力を込める。


そのまま肩が触れるくらいまで身を寄せて、上目遣いでこっちを見た。


「カップルっぽくない?」


近い。


ふわりと、桃みたいな甘いシャンプーの匂いがした。


「……ない」


即答したつもりが、声が少しだけ裏返る。


「ちょっと、即否定はひどくない!?」


恵理が頬を膨らませる。


けど、すぐににやっと笑った。


「でも結城、顔ちょっと赤いよ?」


「人混みで暑いだけだ」


「ふーん?」


……絶対、分かってやってる。


「それより、そろそろ手、離してくれない?」


「嫌」


これも即答だった。


周囲の視線が痛い。


……と、その時。


「……ん?」


列の前方が、少し騒がしい。


「なんかあったのかな」


恵理が背伸びして前を覗き込む。


その拍子に、繋いだ手がわずかに緩んだ。


好機だ。


「ちょっと見てくる。ここで待ってて」


「え、結城?」


引き止められる前に、手をするりとほどく。


……逃げるわけじゃない。断じて違う。様子を見に行くだけだ。


少しだけ解放感を覚えながら、人混みを抜ける。


そして——


「いいじゃん、ちょっとだけ付き合ってよ」


「……ごめんなさい」


聞こえてきた声に、足が止まった。


男が三人。


どいつも、俺より頭一つ分は背が高い。


金髪にピアスの男。腕にタトゥーの入った男。やたら肩幅の広い、坊主頭の男。


……見るからに、関わっちゃいけない連中だ。


囲まれているのは、女の子が一人。


肩までの黒髪に、落ち着いた服装。


眼鏡の奥の瞳は、怯えたように伏せられている。


静かで大人しそうな女の子だった。


(……誰かに似てる)


どこかで見た気がするのに、普段見ている雰囲気とはまるで違う。


思い出せない。


「あの……私、列に並んでいるので……」


「並ぶとか時間の無駄だって。俺らがもっといい店連れてってやるからさ」


金髪の男が、女の子の腕を掴む。


「や、やめてください……!」


振りほどこうとするが、男の力には敵わない。


女の子の肩が、小さく震えた。


周りに人は大勢いる。


けど、誰も動かない。


列に並んでいるのはほとんど女子ばかりで、遠巻きに顔をしかめるだけ。


数少ない男子も、目を逸らしてスマホを見るふりをしている。


……責められない。


俺だって、本当なら同じ側の人間だ。


——関わるな。


頭では分かってる。


でも。


「その子、嫌がってます」


気づけば、口が動いていた。


三人の視線が一斉にこっちを向く。


「……は?」


「手、離してください」


声が少し震える。


怖い。


普通に怖い。


膝が笑って、足が地面に貼りついたみたいに動かない。


心臓の音が、うるさいくらい耳に響く。


背中を、冷たい汗が伝った。


「なんだお前」


坊主頭の男が近づいてくる。


見上げるほどの体格に、思わず息を呑んだ。


反射的に、体に力が入った。


もし掴まれても、崩せる。


でも、下手にやれば大事になる。


どうする——


男が舌打ちして、拳を振り上げた。


「その手、下ろしてもらっていいですか?」


静かな声が、割って入った。


「……え?」


振り向く。


そこにいたのは——恵理だった。


「は? なんだお前」


男は鼻で笑って、そのまま拳を振り下ろした。


——けど、その拳が俺に届くことはなかった。


乾いた音。


男の体が宙を舞う。


綺麗な背負い投げ。


見慣れた動きだった。


「え、ちょっ——」


残り二人が慌てて距離を取る。


でも、遅い。


数秒後には、三人とも地面に転がっていた。


「……忠告はしたよ」


何事もなかったみたいに言って、恵理がこっちを見る。


「行こ?」


周囲がざわつく。


「すご……」


「彼女さん強っ」


強いのは、俺が一番よく知ってる。


……あと、彼女でもない。


けど、こんなに目立つのは勘弁してほしい。


「結城、大丈夫?」


恵理が心配そうに首を傾げて、こっちの顔を覗き込む。


近い。


距離が近い。


「……大丈夫」


そう答えながら、視線は別の方向へ向いていた。


さっきの女の子。


目が合う。


一瞬だけ。


「……ありがとうございました」


小さな声で、頭を下げる。


そのまま、彼女は並んでいた列を抜けて、駅の方へ足早に歩いていく。


「あ——」


呼び止める間もなかった。


小さくなっていく背中を、俺はただ見送るしかなかった。


やっぱり、どこかで聞いた気がする。


でも、思い出せない。


「結城?」


「……いや、なんでもない」


胸の奥に、小さな違和感だけが残った。


そして——


「結城ー、列に戻ろ?」


当然みたいに腕を絡めてくる恵理に、俺は小さくため息を吐いた。


……今日一日で、寿命が確実に縮んだ気がする。

読んでくれてありがとうございます!

次回もよろしくお願いします!

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