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俺は今、恵理と手を繋いで街中を歩いている。
一応言っておくが——これは俺の意思じゃない。
気づいたら、恵理が当然みたいな顔で俺の手を握っていたのだ。
「ねぇ、結城。今日はどこ行きたい?」
「……え?」
いや待て。
さっきお前、「付き合って」って言ったよな?
まさかとは思うけど——ノープランで連れ出したのか?
……と、心の中では叫びつつ、俺は平静を装う。
隣では、恵理が楽しそうに笑っている。
対して俺は、周囲の視線が気になって仕方なかった。
陰キャの俺と、陽キャ美少女。
どう考えても悪目立ちする組み合わせだ。
同じ学校の奴に見られたら終わる。
明日から男子全員敵になる未来しか見えない。
「結城?」
「あ、いや……なんでもない」
恵理が不思議そうに首を傾げる。
昔からこうだ。
こっちが勝手に悩んでても、本人は気にせず隣に来る。
騒がしくて、強引で、振り回される。
なのに——恵理といる時間は、不思議と気まずくならなかった。
「そうだ!」
俺は慌てて話題を変える。
「アニメショップ行かない? この前言ってた新作グッズ、もう出てるだろ」
「あー、ごめん。それもう買った」
恵理が鞄についたキーホルダーを見せてくる。
しっかりコンプリート済みだった。
「じゃ、じゃあゲーセン」
「昨日行った」
「本屋」
「さっき寄った」
「……」
詰んだ。
「ねぇ、結城」
恵理が少しだけ身を乗り出す。
「私、カフェ行きたい」
「カフェ?」
「うん。最近テレビでやってたとこ」
嫌な予感しかしない。
映え系で有名な店だ。
人も多いし、若者だらけ。
俺みたいなのが行く場所じゃない。
「で、でも混んでるかもだし! 同じ学校の人とかいたら、変な誤解されるって!」
完璧な言い訳。
これで回避——
「別に私は平気。だって結城だもん」
当たり前みたいに言って、恵理が笑う。
その顔が妙に嬉しそうで、少しだけ言葉に詰まった。
「……そこまで行きたいの?」
「行きたい」
即答。
これはもう無理だ。
このままじゃ本当に目立つ。
俺は近くの店のガラスに映った自分を見て、小さく息を吐いた。
「……仕方ない」
鞄からケースを取り出し、眼鏡を外す。
「コンタクト持ち歩いてるの?」
「非常時用」
「なにそれ」
「今が非常時なんだよ」
恵理は呆れたように笑う。
それから、また当然みたいに手を差し出した。
「ほら」
「……」
仕方なく、その手を握る。
温かい。
いや、今はそこじゃない。




