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知らぬ間にギャル達の様子が変わっていたのですが、俺はまだ気づいていません。  作者: プリンアラモード


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9月20修正済み

俺は今、恵理と手を繋いで駅前に向かっている。


一応言っておくが——これは俺の意思じゃない。


さっきまで腕を掴まれていたはずなのに、気づいたら、恵理が当然みたいな顔で俺の手を握っていたのだ。


「手、離してくれない? 逃げないから」


「信用してない」


「即答すんな」


「だって前科があるもん」


「だから『もん』とか言うな」


「前科は否定しないんだ! やっぱり結城の嘘つき! もう一生信用しない!」


「そこまで言うか」


大げさに拗ねてみせながらも、恵理は繋いだ手を離さない。


……こっちは手汗が心配で、それどころじゃない。


いやいや、相手は恵理だぞ。今さら何を意識してるんだ、俺は。


「ほら結城、早く! 限定グッズ、売り切れちゃう前に行かなきゃ!」


繋いだ手をぐいぐい引かれる。


隣では、恵理が楽しそうに笑っている。


対して俺は、周囲の視線が気になって仕方なかった。


放課後の駅前は、俺達の学校の制服も他校の制服もごちゃ混ぜだ。


そんな人混みの中を手を繋いで歩いていれば、嫌でも視線を集める。


しかも——


陰キャの俺と、陽キャ美少女。


ゲームで言えば、村人Aとヒロインが並んで歩いているようなものだ。


どう考えても悪目立ちする組み合わせだった。


まあ、そもそも同じ学校に俺の顔を覚えている奴がどれだけいるのかも怪しいが。


それでも、これだけ目立つ相手と並んでいれば、嫌でも人の目は気になる。


「結城?」


「あ、いや……なんでもない」


恵理が不思議そうに首を傾げる。


昔からこうだ。


こっちが勝手に悩んでても、本人は気にせず隣に来る。


騒がしくて、強引で、振り回される。


なのに——恵理といる時間は、不思議と気まずくならなかった。


そうこうしているうちに、目的のショップに着いた。


アニメフェアのおかげで、店内はいつもより人が多い。


けど、客層はほとんど同類だ。


ここだけは、俺のホームグラウンドだった。


「見て見て結城、限定のやつ、全種類ある!」


「コンプリートする気か……」


「当たり前でしょ! 全部手に入れるって言ったじゃん!」


目を輝かせてグッズを選ぶ恵理を横目に、俺も少しだけ肩の力が抜ける。


会計を済ませて店を出ると、恵理は買ったばかりの袋を大事そうに抱えていた。


鞄には、さっそく付けたキーホルダーが揺れている。


しっかりコンプリート済みだ。


「あ、そうだ。はい、これ」


恵理が袋から小さな包みを取り出して、俺に差し出す。


「え?」


「結城の好きなキャラのやつ。買っておいた」


「いつの間に……」


「結城が棚の前でぼーっとしてる間に。いつも付き合ってもらってるお礼」


さらっと言ってのける。


推しの話なんて、そんなにした覚えはないのに。


ちゃんと覚えていてくれたことが、少しだけ、嬉しかった。


「……ありがとう。で、満足した?」


「うん、大満足! ……でね、結城」


恵理が少しだけ身を乗り出す。


「私、カフェ行きたい」


「カフェ? グッズはもう買っただろ」


「何言ってるの。ここからが本番」


「……本番って、カフェが?」


「うん。最近SNSでバズってたとこ」


嫌な予感しかしない。


映え系で有名な店だ。


人も多いし、客はリア充だらけ。


しかも、こっちは制服のまま。


入店した瞬間に、陰キャの俺は浄化されて灰になる自信がある。


「で、でも混んでるかもだし! 同じ学校の人とかいたら、変な誤解されるって!」


完璧な言い訳。


これで回避——


「別に私は平気。結城と一緒にいて、恥ずかしいなんて思ったことないもん」


当たり前みたいに言って、恵理が笑う。


「それに、結城と行った方が絶対楽しいし」


その顔が妙に嬉しそうで、少しだけ言葉に詰まった。


「……そこまで行きたいの?」


「行きたい! 行けなかったら泣く!」


「もう半分泣いてるだろ、それ」


恵理の目が、うっすら潤んでいる。


——けど、俺は知っている。


本気で泣く時の恵理は、絶対に顔を隠す。


つまり、これは演技だ。


そう分かっているのに、断れないのが幼馴染の弱みだった。


行くのが避けられないなら、せめて隣を歩いて浮かないようにするしかない。


俺は近くの店のガラスに映った自分を見て、小さく息を吐いた。


そこには、絵に描いたような地味な男子高校生が立っていた。


「……仕方ない。ちょっとだけ、手を離してくれる?」


「逃げない?」


「逃げないから」


恵理は少し迷ってから、そっと手を離した。


鞄からコンタクトのケースを取り出し、眼鏡を外して、慣れた手つきでレンズを入れる。


顔を上げると、恵理が目を丸くしてこっちを見ていた。


「……なに?」


「な、なんでもない!」


慌てて視線を逸らす。


その耳が、ほんのり赤い。


……珍しい。


「そ、それより! コンタクト持ち歩いてるの?」


「非常時用」


「なにそれ」


「今が非常時なんだよ」


恵理は呆れたように笑う。


それから、また当然みたいに手を差し出した。


「ほら」


「……」


黙ってその手を取る。


温かい。


いや、今はそこじゃない。

読んでくれてありがとうございます!次回もよろしくお願いします!

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