12
――放課後屋上にて――
「好きです!付き合ってください!」
突然だが、俺は今、告白している。
その人物は末永さんだ。
だけど、これはただの告白ではない。
強制的にやらされたやらせ告白だ。
――時は遡り昼休み――
あれは、島崎さん達に占領されていた席を取り戻したときだった。
島崎さんが俺に近づいき耳元に囁いた。
「キモオタにお願いがあるんだけど……」
「なにかな?」
「末永に告白しろ」
と言うお願い……いや、要求だった。
「む、無理だよ……」
勿論、そんな島崎さんの要求は飲み込める訳がなかった。
なぜなら、告白と言うものはそう簡単にできるものではないし、末永さんは俺が本当に好きな人だからだ。
だけど、島崎さん達が「はいそうですか」と言って引くわけがなかった。
「あれれ~私たちに逆らってもいいのかな~」
原田さんと小林さんが俺の前に立った。
二人とも俺を見下している。
「あっ、私良いこと思いついちゃった。もし、キモオタ君が私たちの命令を無視するなら……」
原田さんがニヤッと不敵に笑った。
そして原田さんはこう続ける。
「キモオタ君が末永さんのことが好きすぎて、放課後、誰も居ないところで、末永さんの上履きの匂いを嗅ぎまくって発情してしまった……なんてシナリオをみんなにばらそうかなー?」
そんなシナリオ、ばらしても誰も信じてくれない。
俺はそう思う。
けれど、こうも思う。
ただし、それは普通の生活を送っている人に限る。
俺みたいにモテない陰キャはそうはいかない。
俺みたいな陰キャは、女子から話かけられるなんてこともないし、それそこ彼女ができるなんてありえないはなしだ。
だから、欲求不満でそう言うことをしてしまうなんてこともありえると周囲には思われているに違いない。
もし、その状況で島崎さん達がそんな嘘を言いふらしたら、周りは信じるだろう。
そして、俺は、学校中から白い目で見られ、クラスからは完全に孤立するのが当たり前。
そして、末永さんはきっと俺の事を嫌いになるだろう。
そしたら、もう末永さんとは関係もなくなるはずだ……
だったら、この際、告白をすることを選ぶ。
告白に失敗するのは分かっているが、嫌われるよりましだからだ。
末永さんは黙り込んだ。
だけど、どうせ結果は……
「気持ちは嬉しいよ。だけどごめんなさい……」
頭を下げる末永さん。
当然な結果だ。
俺みたいな奴とは付き合いたくないに決まっている。
そんなこと最初から分かっていたのに、好きだった女の子に振られるのは悲しいし辛い……
誰も居ないところで泣きたい気分だ。
「そ、そうだよね。ごめんね。変なことで呼び出してしまって」
「ううん、そんなことないよ……」
多分、この告白のせいでこれから、末永さんとの関係も気まずくなってしまうだろう。
もしかしたら、もう末永さんと関わることもなくなるかもしれない。
そしたら、あの嬉しかった時間や、楽しかった時間はもう二度とこないだろう。
こうして俺の告白は当然と言う結果で終わった。
俺は今にも泣きたい気持ちを抑え、末永さんと別れるのであった。
「おつかれ、最高だったよ」
靴箱に向かった先で島崎さん達が待っていた。
「これでいい?……」
「うん、最高」
俺は島崎さんのスマホを見せられた。
そこには俺が告白して、末永さんに振られている、なんともみっとない動画が移っている。
「いや~助かったよ。ほら、最近キモオタが生意気だから、こう言う脅しも必要だなと思っていたからさぁ……」
「これで、私達の真のしもべだね」
「おめでとう」
島崎さん達には脅され、挙句の果てに、好きな人に告白。
そして、当たり前のように振られて最終的には島崎達に弱みを握られる始末。
全く、俺は情けない。
恐怖のあまり、島崎さん達の脅しに屈するなんて、我ながら反吐が出る。
自分が嫌になる。
――帰り道――
俺は今まで耐えていた涙を流していた。
読んでくれてありがとうございます
次回もよろしくお願いします




