13 謎の再会
今日は休日。
地獄のような学校生活から解放され、今日は一日バイトの日だ。
そんな休日の午前――。
それは、あまりにも突然の再会だった。
「あ、あの時はありがとうございました……以前、ご一緒だった女性の方から、こちらで会えると伺ったので……つい来てしまいました」
目の前に立っていたのは、以前ナンパ男たちから助けた女子生徒だった。
まさか、こんなところで再会するとは思ってもいなかった。
だが、それ以上に俺を驚かせたことがある。
あの時は騒ぎの最中で、彼女の顔をまともに見る余裕なんてなかった。
しかし、こうして間近で見ると――驚いた。
容姿も、声も。
あの忌々しい原田さんによく似ている。
まるで、原田さん本人と話しているような錯覚さえ覚える。
「あ、あの……もしかして、ご迷惑でしたか?」
「い、いえ! そんなことありません! わざわざ来ていただいて、ありがとうございます!」
「いえいえ。当然のことをしただけですから」
「……」
「……」
気まずい沈黙が流れる。
緊張する。
……いや、落ち着け。
原田さんじゃない。
違う、違う。絶対に違う。
こんな大人しくて礼儀正しい子が、原田さんのはずがない。
もし本物の原田さんだったら、
「おい!」
「キモオタ君!」
「何ジロジロ見てるの?」
くらいは言ってくるだろう。
それに、原田さんはもっと明るく、見た目も派手だ。
目の前にいるのは、眼鏡を掛けた物静かな少女。
どう見ても別人だった。
「あ、あの……せっかくなので、注文してもいいですか?」
「は、はい! もちろんです!」
注文を終えた彼女は、俺から見える席へ腰を下ろした。
鞄から参考書を取り出し、静かに勉強を始める。
その横顔を見るたびに、原田さんの姿が頭をよぎる。
本当に、よく似ている。
「先輩! ちょっと聞いてますか!」
不意に声を掛けられ、俺は振り返った。
そこには頬をぷくっと膨らませ、じっと俺を睨む後藤さんが立っていた。
どう見ても機嫌が悪い。
「ご、ごめん……聞いてなかった」
「やっぱり! 先輩、さっきからあの子ばっかり見てますよね!」
そう言うと、後藤さんはぷいっと顔を背ける。
どうやら、かなり怒らせてしまったらしい。
……でも凄いな。
俺は彼女をじっと見ていたわけじゃない。
仕事の合間に何度か視線を向けただけだ。
それなのに、よく気付いたものだ。
少しでも機嫌を直してもらおうと、俺は笑いながら言った。
「すごいね、後藤さん。よく気付いたね」
「あっ……い、いや、その……たまたまです!」
さっきまで怒っていた後藤さんは、一転して顔を真っ赤に染める。
視線を泳がせ、制服の裾をぎゅっと握りしめていた。
……あれ?
俺、何か変なこと言ったか?
「後藤さん、大丈夫? もしかして俺――」
「だ、大丈夫です! そんなことより仕事に集中しましょう!」
それだけ言い残すと、後藤さんはモップを片手に足早に掃除へ向かってしまった。
……なんだか今日は様子がおかしい。
首を傾げながらも、俺は気持ちを切り替えて仕事に戻った。
それから一時間ほど経った頃だった。
「あれ……?」
いつの間にか、あの少女の姿は消えていた。
この店の出入口は一つしかない。
それなのに、彼女が帰ったことにも気付かなかった。
それだけ仕事に集中していたということだろう。
……そういえば。
名前も聞き忘れてしまった。
一体、あの子は何者だったんだろう。
その時の俺は、彼女と再び深く関わることになるなんて、まだ知る由もなかった。
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