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知らぬ間にギャル達の様子が変わっていたのですが、俺はまだ気づいていません。  作者: プリンアラモード


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一時間目の授業が始まった。


黒板には数学の公式が次々と書き込まれていく。


普段なら、先生の説明を聞きながらノートに写していくだけなのだが――。


「…………」


気づけば、俺はほんの少しだけ顔を左へ向けていた。


正確には、左後ろ。


そこには原田さんが座っている。


「…………」


まただ。


俺は慌てて黒板へ視線を戻す。


何をやってるんだ、俺は。


授業中だぞ。


しかも原田さんは、斜め左後ろの席で普通に授業を受けているだけだ。


何か特別なことをしているわけでもない。


ノートを取って。


時々、先生の話を聞きながら首を傾げて。


それだけ。


なのに、なぜか気になってしまう。


俺はシャープペンを握り直した。


……集中しよう。


昨日のことを意識しすぎなんだ。


一緒に帰った。


別れ際に振り返った。


今朝、少し話した。


それだけじゃないか。


こんなの、二、三日もすれば元に戻る。


そう思いながらノートへ視線を落とした、その時。


「白金」


「はい!」


反射的に返事をする。


教室が静まり返った。


先生が黒板の前でこちらを見ている。


「……ずいぶん元気がいいな」


「あ……すみません」


教室のあちこちから笑い声が漏れた。


「じゃあ、そんなに元気ならこの問題を解いてみろ」


先生が黒板の端を指差す。


「え」


そこには、いつの間にか例題が書かれていた。


……まずい。


全然聞いてなかった。


「分かりません」


「即答するな」


再び笑いが起きる。


「ちゃんと授業を聞けよ」


「はい……」


恥ずかしさを感じながら座る。


その直後。


斜め左後ろから、小さな笑い声が聞こえた。


「……ふふっ」


聞き覚えのある声。


振り返らなくても分かる。


原田さんだ。


「…………」


それだけで、また胸が妙にざわついた。


見たい。


でも、振り返ったら絶対目が合う気がする。


そんなことを考えてしまい、俺は無理やり黒板だけを見る。


ダメだ。


やっぱり今日はおかしい。



「白金、今日どうしたの?」


一時間目が終わった直後。


島崎さんが俺の席へやってきた。


「何が?」


「授業中、完全にボーッとしてたじゃん」


「寝不足なんだよ」


嘘ではない。


昨日、なかなか眠れなかったのだから。


「ふーん」


島崎さんは俺の机に両手をつき、顔を近づけてくる。


「その寝不足ってさ」


「何?」


「昨日、美玖のこと考えて眠れなかったとか?」


「なんでそうなるんだよ」


思わず声が大きくなった。


その反応を見た瞬間、島崎さんの目が細くなる。


「……へぇ」


「何だよ」


「いやあ?」


明らかに何かを察したような顔だ。


「反応が分かりやすいなーって」


「違うから」


「私はまだ何も言ってないけど?」


「今言っただろ」


「『美玖のこと考えて眠れなかった?』って聞いただけじゃん」


「だから違うって言ってるんだよ」


「じゃあ、なんでそんな焦ってるの?」


「焦ってない」


「焦ってる」


「焦ってないって」


「優奈、その辺にしておきなよ」


小林さんがやってきて、島崎さんの肩を軽く叩いた。


「朝からずっと白金に絡んでるじゃん」


「だって面白いんだもん」


「玩具にしないの」


「楓だって気になってるくせに」


「まあ、それは否定しないけど」


否定しないのかよ。


小林さんは俺を見ると、少し考えるように顎へ指を当てた。


「でも確かに、今日の白金は変かもね」


「小林さんまで何言ってるんだよ」


「だってさ」


小林さんが少し笑う。


「授業中、何回も左後ろ気にしてなかった?」


「え?」


言葉に詰まった。


「やっぱり」


島崎さんがニヤッと笑う。


「美玖の席、白金の斜め左後ろだもんね」


「たまたまだよ」


「何がたまたまなの?」


「……後ろが気になっただけ」


「何があったの、後ろに」


「…………」


逃げ道がない。


「ほらー!」


島崎さんが嬉しそうに俺を指差した。


「絶対美玖のこと見ようとしてた!」


「見ようとはしてないよ」


「じゃあ、気にしてた?」


「……知らない」


「それほぼ認めてない?」


「認めてないって」


そう反論した、その時だった。


「何を認めてないの?」


背後から声がした。


「っ!」


思わず肩が跳ねる。


振り向くと、斜め左後ろの席から立ち上がった原田さんが、こちらを不思議そうに見ていた。


「あ、美玖」


島崎さんの表情が一瞬だけ固まる。


それから、悪戯を思いついたように笑った。


……嫌な予感がする。


「今ね、白金が――」


「島崎さん!」


思わず遮る。


「な、何よ」


「次の授業の準備しなくていいの?」


「まだ休み時間始まったばっかりだけど」


「予習とか!」


「私がすると思う?」


「自信満々に言うことじゃないだろ!」


「あははっ!」


原田さんが笑う。


しかも、俺のすぐ後ろから。


さっきまで意識していた本人がそこにいるせいで、余計に落ち着かない。


「二人とも朝から元気だね」


「白金が面白いからね」


「俺のせいなの?」


「九割くらい」


「ほぼ俺じゃん」


原田さんがまた小さく笑う。


その声を聞いているだけなのに。


昨日の帰り道を、また思い出してしまった。

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