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店内の片付けを終えた俺たちは、店の奥の席へ移動した。
「待たせてごめんね」
原田さんがそう言うと、島崎さんは笑顔で首を横に振る。
「全然大丈夫。私たちもポテト食べながら待ってただけだし」
テーブルには空になったポテトの箱と、まだ少しだけ残っているドリンクが並んでいた。
島崎さんは先生から配られたプリントを机の上に広げる。
「それじゃあ始めようか」
「今回の校外学習、私たちの班は○○商店街の調査だね」
俺もプリントへ目を落とす。
テーマは『商店街の活性化について調べよう』
店の工夫や、お客さんを増やすための取り組みを調査し、後日レポートにまとめて発表するらしい。
「思ってたよりちゃんと調べるんだね」
末永さんがプリントを見ながら苦笑する。
「先生、『最低一店舗はインタビューしてください』って書いてあるよ。」
小林さんが指差した。
「誰がお店の人に聞く?」
その一言で、テーブルが静かになる。
「……。」
「……。」
「……。」
「みんな黙らないでよ」
島崎さんが苦笑した。
「じゃあ私が質問役やるよ」
「助かる」
自然と全員が頷く。
「私は写真担当!」
末永さんが元気よく手を挙げた。
「じゃあ私はメモかな」
小林さんも続ける。
「私は時間管理」
原田さんが言う。
「寄り道しすぎる人がいそうだから」
その瞬間、全員の視線が末永さんへ向いた。
「えっ!? なんで私?」
「甘い匂いしたら絶対止まるでしょ」
小林さんが笑う。
「止まらないよ!」
「本当に?」
「…………。」
少し考え込んだ末永さんは、小さく笑った。
「……一本くらいなら」
「あははは!」
全員が一斉に笑い出す。
「一本で済まないでしょ」
「えへへ……」
照れ笑いを浮かべる末永さん。
賑やかな空気に包まれる。
「白金君は?」
島崎さんが俺を見る。
「地図を見て、回る順番を決める。」
「じゃあルート担当だね」
「あと、当日は時間が押したら臨機応変に判断してもらえる?」
「分かった」
役割も集合時間も決まり、話し合いは思っていたよりも早く終わった。
島崎さんがプリントをしまう。
「これで大丈夫そうだね」
「うん」
時計を見ると、十時少し前だった。
「じゃあ帰ろっか」
全員で席を立ち、店を出る。
夜風が火照った体に心地よかった。
「私たちこっちだから」
駅前の交差点で島崎さんが立ち止まる。
「また明日ね!」
末永さんが大きく手を振る。
「また学校で」
小林さんも笑顔を見せた。
「またね」
三人は楽しそうに話しながら歩いていく。
少し歩いたところで、島崎さんが振り返った。
「あれ?」
「どうしたの?」
小林さんが聞く。
「白金と美玖って、帰る方向一緒じゃなかった?」
「あ、そういえば」
末永さんも思い出したように頷く。
島崎さんは二人を振り返る。
「じゃあ二人とも、気を付けて帰ってね」
「また明日!」
三人は手を振り、そのまま帰っていった。
その場に残ったのは、俺と原田さんだけだった。
「……行こっか」
「ああ。」
並んで歩き始める。
しばらくは、静かな時間が流れた。
「さっきまであんなに賑やかだったのに」
原田さんが苦笑する。
「急に静かになると変な感じ」
「そうだな」
会話はそこで途切れる。
少し気まずい沈黙。
すると原田さんが小さく笑った。
「前だったら、この空気耐えられなかったかも」
「そうか?」
「うん」
少し前を見ながら続ける。
「今は普通に歩けるし」
「バイトでも毎日のように会ってるからな」
俺が何気なくそう言うと、原田さんは少しだけ目を丸くした。
「……そういうことにしておく」
「?」
意味が分からず首を傾げる。
「何でもない」
原田さんは小さく笑い、歩幅を少しだけ速めた。
「ほら、信号変わるよ」
「ああ」
俺は慌ててその後を追いかけた。
夜の街を照らす街灯の下。
二人の距離は、以前よりも少しだけ近くなっていた。




