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第五十七話

 検証を終え、PAに帰還。

 少しだけ休憩し、パミルとおりょうさんを加えて再出撃。

 2人も、数日前には4回目の淘汰を終えており、以下の様になった。


 パミルは《鉱石商丁稚》を消して〖火竜の刻印〗を取得。


《鉱石商丁稚》[鉱夫]と[宝石商]の覚醒数を10増やす。

〖火竜の刻印〗[火傷]と火属性ダメージを無効化。


 おりょうさんは[穿孔]を消して〖溶け込みの刻印〗を取得。


[穿孔]相手の物理防御を無効化。

〖溶け込みの刻印〗アパレルの色と環境や風景の色が近い程見つかり難くなる。


 パミルの方は、更に耐性を高める刻印を取得し、より戦闘面を強化、

 おりょうさんは、場所に合わせてアパレルをコーディネイトする事で、ステルス性を得られるようにし、生存性を強化。

 2人とも、方向性は違うが、戦闘で有利になる刻印を取得した事になる。


「おりょうさんの〖溶け込みの刻印〗て準備が面倒じゃないですか?」

 おりょうさんの希望で、ゴブリンのインクを求め鬼ヶ島へ移動中。

「一見そう思えるかもしれませんが、意外とお手軽にステルス性を得られるんですよ」

「ほうほう」

「別に全身を景色に合わせる必要は無く、例えばカーディガンやマフラーだけを保護色にするだけでも、かなりの効果を期待出来ますよ」

 そういうおりょうさんのコーデは、着物は夜間対応の漆黒。靴とグローブが砂漠対応のデザートカラー。帽子が草原対応の薄緑。カーディガンとマフラーが市街地対応のグレーとなっている。

「勿論、完全に合わせた方が良いのですが、この位緩い感じでも、距離が有れば十分効果が見込めますね」

 実際、現地に到着してから見せて貰ったが、1人だけ目立つ場所に居たにも関わらず、おりょうさんの傍に近寄るまでは気付かない事が多かった。

 しかし、市街地対応とか、エルフィンの廃都とか軍事基地以外でどこで活躍するんだ?なんて思ってたが、普通にゴブリンの街や居住地でも機能するのか。

 そりゃ、こんだけアバウトに機能するなら、コーデに取り入れるわな。


 ゴブリンとの戦闘中。

「フフフ…効きませんねぇ!!」

 火炎壺を受けながら、強引にゴブリンを掘っていくパミル。

 魔法はゴーレムを盾にして、斬撃打撃はギフトでカスダメなので、下級ゴブリンは成す術無く蹂躙されていく。

「[火傷]に火属性無効って、実際に見るととんでもなく強いな」

「一応、魔法含めて属性攻撃の火力部門ですからね」

 火属性以外で火力を出そうとすると、結構ハードルが高いからなぁ…。

「仮に、<メテオ>を使われても結局火と打撃の混合だから、そこまで痛くないですね」

「それ以外の魔法なら、大概クリスタルゴーレムで反射出来るしな」

 尤も、最近では反射対策が浸透してる為、以前ほど抑止力にはならないけどね。


 鬼ヶ島を転々とする中、敵ゴブリンの輜重隊を発見。

 ラッキー!!しゃぶったろ!!と意気揚々と近づくも、10体の内、6体が接近戦のスペシャリストのゴブリンウォーリアー。4体が支援のスペシャリストのゴブリンロジスティクスという、まんまと嵌められた感満載な状況。

 幸い、敵の前衛に対して此方の総数が負けて無かったので、開幕乙は避けられた。

 いや~、ロジのバフを受けたウォーリアーの、一斉シールドバッシュは強烈だった。

 パミルのクリスタルゴーレムや、俺の使い魔の大半を轢殺し、肉薄寸前までいったが、ユナのSTAデバフがこれでもかと刺さり、一気に形勢逆転となり、前衛をしゃぶり尽くした。

 その後、ロジスティクスをキッチリ仕留め、戦利品にありつく事が出来た。


 輸送自体が偽装で、物資なんて無かった。とはならずに済んで一安心。

 輸送品から大量の素材を獲得し、目当てのインクもゲット。

 なんでも、ゴブリンシャーマンが呪いに使う、魔法薬的な物で、これで染めると魔法耐性が付いたり魔法攻撃が上がったりするそうだ。

 PAに戻る為、ホームを目指し移動中。今度は味方の輜重隊が襲われていた。

「リペアリペア!!」「メディメディ!!」

 貨物車両が破壊され、負傷したゴブリンの悲痛な叫びが響き渡る。

 相手はゴブリンチャンピオンに、ゴブリンビショップ、ゴブリンウォーリアー、ゴブリンウィザード、ゴブリンスカウトのパーティーだ。

 なんか、如何にも勇者パーティー的な編成だが、輸送隊を狙うセコイ勇者が居るわけない!!と決めつけ輜重隊を援護する。

 少なくとも、ウォーリアーにはユナのSTAデバフが刺さる事は判ってるので、ユナを輜重隊の傍へ配置。

 パミルも、ウィザードの魔法対策に、輜重隊の傍へ配置。

 おりょうさんは、コーデが良い具合に景色と合ってる為、遊撃にしたかったが、単独では危なそうなので、輜重隊の傍へ配置。

 ユキは、〖雨乞いの刻印〗を活かし、輜重隊を守るために以下略。

 アコは馬次第なのでお任せ。

 俺は以下略。

 全員輜重隊の傍へ配置した形だ。


 先ず、小手調べとばかりに、スカウトがナイフを投げてくる。

 本来であれば、大量の使い魔に阻まれる筈だが、射線上の使い魔を避け、俺に一直線で飛んでくる。

「ピギィ!!」

 だが、豚の膨らんだ判定は避けれなかったようで、斜め後方で豚が破裂した。

 一瞬見えたが、ナイフには粘液が塗りたくられていたので、猛毒だったのだろう。

 これで、スカウトの手札を1つ暴いた形だ。

 ちなみに、コチラ側ではアコが槍を射かけたり、円盤や天使にガーディアンが常にちょっかいを掛け、向こうの呼吸を乱している。

 お次に動いたのはゴブリンビショップ。

 何やら詠唱を完了させると…。

「!?」

 いつの間にかビショップの前にひきず出されていた。

 どうやら、ピンポイントの吸引魔法か何かを喰らったらしい。

 即座にチャンピオンとウォーリアーが切りかかって来た為、片方を鍬で相殺し、片方をフュージョンボックスのバリアで受ける。

「良し、ドッペル百姓!!」

 ドッペルと百姓を呼びだし、箱の自傷ダメで[スワンプマン]が発動。

 更に俺と俺の百姓が鍬を地面に突き立て、続いてドッペルとスワンプも百姓を呼び、一斉に鍬を振るう。

 もう、そこらじゅう畑だらけや。

 相手としては、この吸引で、リーダーの俺を仕留めて押し切る心算だったのだろうが、生憎と俺には高い[生命]と、その恩恵を受けたフュージョンボックスがある。

 痛恨の一撃でも、一撃だけならかなり軽減出来てしまうので、こういった反撃が可能なのだ。

 さあ、これでペースはこちらが握ったので、このままじくじくと削るとしよう。


 俺の使い魔も傍にポップし、更に奴らの後ろに回り込み、仲間と挟み撃ち状態にする、

 普通だったら、この時点で勝ち確なんだが、相手は粒揃い。

 ビショップがバフを掛け、ウォーリアーがシールドバッシュで血路を開く。

 更にチャンピオンが、露払いとばかりに<地揺らし>と<波動剣>で、退路を拡張。

 ダメ押しにウィザードが<ブラストウィンド>を放ち、包囲を突破されてしまう。

 当然、こちらも黙って観てるわけもなく、直ぐに畑で蓋をしようと試みるが、スカウトの放った爆弾に押され、失敗に終わる。

 ただ、これは俺単体での結果であって、この間仲間がキッチリと仕事をし、スカウトに大ダメージを与えている。

 円盤がスカウトを拘束した瞬間を狙って、アコとユキが集中砲火し、距離を詰めたパミルの貫き手が炸裂。

 このダメージは、直ぐにビショップにより回復されてるが、状態異常の[骨折]が入って、治癒出来てないのか、スカウトの動作が緩慢だ。

 仕切り直しとはなったけど、キッチリ有利を取る事が出来た。

 そして、輜重隊も立て直しが完了した様で、戦闘復帰を果たす。

 相手はというと、気持ちい程の逃走っぷりを披露。

 全員どんな移動速度してんだという位、ササーっと引いていった。

 まあ、輜重隊を守る事が出来たんだし、勝ちは勝ちだ。

 ちなみに、負傷したスカウトはウォーリアーが抱えていた。


 後日。

 カメキチさんとタロウと一緒に、ホーム西の樹海を探索。

 どうも、樹海のどこかに、薬の密売組織の基地があるらしく、一獲千金を狙って捜索してるのだ。

 さて、今回同行する2人も、4回目の淘汰を済ませてる為、その説明をしよう。

 カメキチさんは、【核細胞保護】を消去し、〖白陽の刻印〗の刻印を取得。


【核細胞保護】LPに割合ダメージを与える攻撃のダメージを30%軽減。

〖白陽の刻印〗頭上に光属性の放射能を浮かべる。


 刻印の効果で、頭上にボーリング玉サイズの白熱した光球が浮かんでいる。

 効き目の程は〖陽光の刻印〗と全く一緒だそうで、見た目と名前が違うだけだという。

 あと、【核細胞保護】を消去したのは、俺と同じ様に〖超細胞の刻印〗を取りたいからと言っていた。

 既に、条件の裏取りも済んでる為、次回の淘汰時に確実に選択できるはずだ。


 タロウは【ザラ弾幕】を消去し、〖長篠の刻印〗を取得したそうだ。


【ザラ弾幕】ショットガンのペレット数が2倍になる。

〖長篠の刻印〗弾丸が着地などで停止しても、十秒間残存する。


 ただでさえ、〖紙吹雪の刻印〗で、弾速が極限まで遅く、触れてる間は複数回ヒットという、面倒や仕様だったのが、地面や壁にまで十秒も残るという、非常に迷惑度の高いものへと昇華。

 これまで以上に、罠の様な使い方が出来る様になった。


 樹海を捜索し、二十分程経過した頃。

「ん?」

 突然可愛らしい小鳥が飛来し、俺らを先導し始める。

「付いて行けば行けばいいのか?」

「もしかしたら誰かが基地を見つけたのかも」

「なら、極力音を出さずに付いて行かへんとな」

 という事で、3人で黙々と鳥の先導に従い、樹海を進む。

 途中、他にも鳥に先導される人たちと合流しつつ、静かに行進。

 暫らく移動し、小鳥たちの飼い主らしき人物が居るグループの下へ到着。

 そして、リーダーらしき人物が、ゼスチャーで屈むよう促し、先導。

 少し進み、指さした先に、巧妙に隠されてはいるものの、何かの住処に見える洞穴が在った。

 全員が入り口を認識したところで、更に指刺しされた方に視線を向けると。

(成程。隠密状態の歩哨が居るわけか)

 状況に対する共通認識を作り、一旦後退した。


「さて、どうしようか?」

 現在、このまま突撃するか、加勢を待つかの決議の最中だ。

「バレてないなら加勢待ちが無難に思えますが」

「こうは考えられへんか?時間を掛けるとホームに居るかもしれないスパイに気取られる。とか」

「確かに。加勢を頼んだ先にスパイが居て、情報が漏れ伝わる可能性も否定できないな」

 採択の時、俺らは判断保留と同時に、懸念を表明。

 すると、他にも同様の懸念を持っていたグループも居て、採択が頓挫。

 全30名分の視線が、発見したグループのリーダーに注がれる。

 皆、基地を発見したグループの判断を聞いてみる様だ。

 その結果、今いる面子だけでの突撃が決定。

 先ずは、歩哨の無力化から始めるそうだ。


 歩哨は全部で4人。対するは斥候などを生業にする選出された6人。

 彼らは素早く且つ音もなく配置に着き、合図と共に歩哨を始末。

 急いで次の手順へ移行する。

 1人が筒状の何かを洞穴内へと投げ込む。

 数秒して、入り口からとんでもない量の煙が溢れ出て来る。

「やはり、出入り口が複数あったか」

 空を見上げるリーダーの言葉の通り、樹海の複数の箇所から煙が上がっている。

「では、各自最良の行動を取ってください」

 そう言って、リーダーの居るグループと、幾つかのグループが煙に突っ込んで行った。

 残った面子の内、幾つかは他の煙の出所に向かった。

 俺らはこの場で待機し、出て来た敵を始末し、万が一味方が追われてたら助ける事に、

 程なくして、目の前の穴から喧騒が漏れ聞こえてくる。

 俺らも、出番に備え準備をしておくか。


「これだけ畑で囲んどけば安心だな」

 洞穴周辺を、これでもかと畑で塗りつぶし、入り口にはカメキチさんが寝そべり、その背後にタロウがどっしりと構えている。

「チッ!!ここにも居やがったか!そこをどけい!!」

 チンピラが3人、穴の中から走って来たが、タロウがショットガンを5発ぱなして処理。

 貫通、バウンド、爆発、多段ヒット、判定残留が組み合わさり、閉所だと凶悪な威力を発揮するな。

 その後も、某草刈りゲーの拠点よろしく、雑魚が無限に湧いて来て、その都度各々の力を駆使して対処。

 面白かったのが、正面に構えるタロウが目立ちすぎるのか、横になっているカメキチさんに気付かずに、足を取られ転ぶ者が続出していた。

 そんな珍事を笑いながら、雑魚を処理続けていると、今度は敵判定を持たない連中が出現。

 必死の形相で、コチラに保護を求めて来る辺り、尋常じゃない事態なんだろう。

 程なくして、リーダー率いるグループ達も脱出。

 直後、身体が異常に肥大化したワーウルフが飛び出して来た。

 目は真っ赤に充血し、口からは絶えず涎が零れ、爪は鋭くも捩じれ禍々しい。

 そんなワーウルフが、早速獲物を見繕い、畑を跳躍で飛び越え、豚に躍りかかる。

 豚の数m手前で宙に張り付き、爪を突き立て豚を破裂させる。

 更に、穴からワーウルフが2体出現し、密売人が正気を保てなくなり発狂。

 当然、ホラーでは、そういうのから真っ先に狙われるし、実際にそうなって、全員惨殺されてしまう。

 血を啜り、更に活性化した3体のワーウルフ。

 さて、どうやって料理してやろうかね。


 ワーウルフとの戦いが始まって、俺ら3人は1体を受け持つことに。

 というのも、脱出してきた連中の内、最初の発見者達以外はLvが低く、とてもじゃないが少数でワーウルフと対峙が出来ないので、俺らが1体、彼ら全員で2体を相手取る事に。

「先ずはカメキチさんからですね」

「任されました」

 ワーウルフをカメキチさんに誘導し、背中におぶさるようにしがみ付かせることに成功。

 チョークスリーパーを仕掛け、じわじわとSTAやLPを削り、移動速度も鈍らせる。

 それでも、縦横無尽に飛び回るワーウルフを、中々捉えられないタロウがぼやく。

「あ~、本当に面倒なやっちゃな!!」

 といっても、あくまで直撃が困難なだけで、移動先に置き気味に撃った弾は避け切れずにカス当たりしたり、残留弾の上に数舜留まったせいでダメージを受けたりしているので、キッチリと仕事は熟してるあたりは流石だ。

 俺も、奴の動きを積極的に止める為、ドッペルや百姓を絶やさず展開。

 畑で足場を塞ぎつつ、鍬で攻撃を相殺し、カメキチさんの回復を支援。

 そんな感じで、持久戦を仕掛け、漸く[呼吸困難]が入り、一気に動きが鈍くなる。

 そうなってしまえばこちらのもので、使い魔がタコ殴りにしつつ、タロウの火力が火を噴く。

 少しすると、[制圧]で疲労がピークに達したのか、ワーウルフのステータスが激減し、ダメージが一気に通るように。

 そこからはあっという間で、十数秒でワーウルフのLPを削り切り、勝利する事が出来た。


 俺らがワーウルフを仕留め、そのまま残ってた方に加勢。

 流石に数の暴力には成す術無い様で、そのまま蹂躙させてもらった。

 加勢と分断の件を感謝され、そのまま出入り口の監視を継続。

 侵入組は、再び基地へと潜っていった。

「やっぱLvって大事だな」

「ですね、特に淘汰での回数差は雲泥の差になりますね」

「そやね、刻印もさることながら、パラメータ補正がダンチだわ」

 先程のワーウルフ戦も、淘汰4回目Lv200の俺らには、そこそこの強敵だったが、侵入組に交じってた淘汰回数が少ないグループは、大いに苦戦していた。

「まあ、淘汰3回目と4回目じゃ、二倍弱差があるからな」

 例えば一撃は耐えられる攻撃が、[生命][持久]の差だけでも二撃三撃、他の防御系パラメータ次第では四撃五撃耐えられるとなると、その歴然とした差が解るだろう。

 防御面でこれなのだから、攻撃は勿論、金策面でも圧倒的な差が出る為、装備を整える意味でも凄まじい差が出てしまうのだ。

 そう考えると、淘汰1回目2回目程度なら兎も角、4回目以降となると、最早装備や腕前でどうにか出来る段階ではないのかもな。

 最近は金策も順調で、Lv上げに全投入してるから問題無いが、一時装備を強化するのに大いに後れを取ったからな。

 今後はそういった事態は避けたいが、果たして…。


「えー、残念ながら重要な資料や装置は持ち逃げされてしまいました。今回はお疲れ様でした」

 結局、基地を潰す事は出来上が、こちらの戦力が少なかった為、幹部級と重要な物を取り逃がしてしまった。

 ただ、ホームの下水に居た首領の追い出しといい、最近は治安も回復してるので、そこそこの褒賞を貰えるだろうとの事だ。

 実際、ギルドに戻り申告すると、少ない戦力で敵の歩みを十年は遅らせたとお褒め頂き、中々の額を頂戴する事が出来た。


 休憩を挟み、淘汰を済ませ、バグスターで試運転をするという、シルクとベッタラに付いて行く。

「私は【獣王の威光】を消して、〖放水の刻印〗を取得したです」


【獣王の威光】範囲内の敵から受けるダメージを20%軽減。

〖放水の刻印〗十秒毎に半径25m以内に、ランダムで水柱が立つ。


「さっきからなんだと思ってたが…水柱が立つのはその刻印のせいか」

 バグスターのホームから出て直ぐ、ザバーッっと水柱が発生し、何事かと思ったわ。

「持続は五秒程、高さは3m程ですか…まあまあです」

 戦闘時に、どれ程のダメージが出るかは後の検証で見るとして。

 お次はベッタラの取捨選択を聞く。


「俺は【楔打ち込み】を消して、〖刀持ちの刻印〗を取得したぜ」


【楔打ち込み】ダメージを与えた相手の物理防御力と物理軽減を20%低下させる。

〖刀持ちの刻印〗囮の小間使いを使役し、刀剣類のコストが0になる。


「〖剣の刻印〗で相手の防御とカット率を下げれるから、【楔打ち込み】を消したのね」

「ああ、【楔打ち込み】もLv2以上+5以上とかだと、大抵のプレイヤーのカット率を超過出来るんだが、俺の場合そこまで特化してないからな」

「だったら、淘汰の礎にしちまおうってか」

「そういうこった。それに刻印の方は装備解除無効に防御もカット率も半減だからな。中途半端な俺には断然こっちの方が強い」

「まあ、そうなるわな」


 ホームから離れ、実戦にて検証を行う。

「グギギギ…」

 それなりの時間をかけ、漸く蟲人間に水柱がヒット。

「ムムム…ダメージは大した事ない代わりに、転倒ですか」

「シルク的にはどうなんだ?蟲人間が問答無用で転倒って。相当ヤバい効果に思えるんだが」

 一時、蟲人間を狩りまくったからこそ分かるが、こいつ等の体幹はマジで異常だからな。

「悪くは無いです…無いですが…」

「そうだな、ちょっと運要素が大きいな」

 水柱が立つといっても、幅は精々マンホール程度。

 それが周囲25m内に、十秒毎にランダム発生ときた。そりゃ当たらない時は一向に当たらないだろうよ。

 だが、強敵を当たりさえすれば、簡単に転倒させるのはやはり強力だ。

 シルクも、なんだかんだ言いつつも、転倒した蟲人間に網を幾重にも投げつけ身動きを完全に封じ、使い魔に嬲り殺しにさせていた。

 案外気に入るのも早いかもしれんな。


 お次はベッタラ。

「ま、こんなもんだよな」

 目の前で、蟻に追い回される囮を眺めながら、ベッタラが言ちる。

 非武装で、一切の攻撃を行わずに、逃げるだけの刀持ちの使い魔。

「いや、移動速度も速いし、狙われ易い様だし、意外に当たりなのか?」

 暫らくしても、蟻から逃げ続ける使い魔を見て、評価を変え始めたようだ。

「うん、囮としての性能は最高峰、そして刀剣類のコスト0化を加味すれば、かなり強い刻印だな」

 ベッタラの、もう1体の使い魔である追っかけも、蟻の尻を執拗に叩いているが、一向に狙われる気配がない。

 流石に、参戦したベッタラ切ったら反応し、そのまま追加のダメージが入って消滅した。

 どうやら、短時間に一定以上のダメージを与えなければ、囮が優先的に狙われる様だ。


 バグスターを後にし、マンモスの巣へ赴く。

 シルクの〖放水の刻印〗を掘り下げる為だ。

「おっと、ある程度の大物だと、流石に転倒まではいかないですか…」

 シルクが残念そうに呟く。

 それでも、かなり長い硬直が発生したので、有用には違いない。

 少々マンモスを狩ってから、今度は砂漠でワームを相手に検証。

 こちらも体の大半が砂中だからか、大きく仰け反りはするものの、転倒まではいかなかった。

 それから様々な強敵や大物を相手に調べ、効き目の程が判明。

「ステータスじゃなくて、単純にデカブツは仰け反り止まり、それ未満は転倒って感じだったな」

「まあ、運は絡むですが、スフィンクスすら大きく仰け反るなら、十分使えるです」

 運が絡む事はどうしようもないが、衝撃力はチート級だった。


 シルクはクラフトに入り、ベッタラはログアウト。

 代わりにサチとサーモンを連れて、ドラグーンに向かう。

 現在ドラグーンの攻略度は96%で、残すはボスの討伐のみとなっている。

 そんなボスの姿を一目見る為に、観光気分で訪れたのだ。

 ついでに、2人が4回目の淘汰で得た能力も見せて貰う事に。


「先ずは私からかな?まあ、見て分かると思うけど、身丈が縮んでるわ。これは〖卑下の刻印〗の効果よ。あ、消去は《生命信者》を選んだわ」


〖卑下の刻印〗自身を小さく見せる。

《生命信者》[生命]の覚醒数を50増やす。


「見た目だけで判定がそのままなのか?」

「そうよ。尤も、私の場合〖詐欺判定の刻印〗で、判定も縮んでるけどね。更に言えば、〖卑下の刻印〗自体が〖詐欺判定の刻印〗を取得した後に解放されるものだとしたら、縮んだ判定に見た目を合わせる為の刻印かもしれないわね」

「ああ、確かにそう考えた方が合点がいくな」

 そんなサチの見た目は大体1.4m程で、高さは頭1つ分位、縦横は一回り小さくなった感じだ。

「でも、判定も見た目を縮んだとすると、リーチとかはどうなるんだ?」

「その点はご安心。良く解らない補正で、移動速度とかジャンプ力も、縮む前と変わらなかったわ、多分リーチも補正で伸びてると思うわ」

 抜かりはないわけね。

 さて、実際にどこまで変わったか見せてもらったが、まあ地味だ。

 いや、これまで隠れられなかったオブジェクトに、屈んだり寝そべれば隠れられうようになってるので、途轍もなく便利なのは解る。

 だが、〖間者の刻印〗〖忍びの刻印〗があるのに、態々選ぶ必要があったかは、正直微妙に思えた。

「フフン、この刻印の真価はココにあるのよ!!」

 と言い、サーモンの背後に回るサチ。

「おお…サチが消えた」

「どう?プレイヤーのアバターより、何もかもが小さいから、例え遮蔽物が無くても、こうして簡単に身を隠せることが出来るのよ」

 確かにこれは強い。味方を盾に出来るし、敵に数を見誤ませる事も可能だ。

 その上で、間者と忍びの両刻印のお陰で、合流離脱も柔軟に熟せるときた。

 一層、遊撃時の安定性が増した事だろう。


 今度はサーモンの番。

「俺は《上級召喚士》を消して、〖重装従魔の刻印〗を取得したぜ」


《上級召喚士》核のコストを10%軽減。

〖重装従魔の刻印〗人型従魔を重装備で武装させる。


「確か《上級召喚士Lv2》で50%カット、Lv1で25%カットだっけか?」

 サーモンのはLv2で、今回消去したって事は、Lv1に下がってるわけだ。

「そう、だから実質コスト2倍だな」

「そこをパラメータ補正で相殺出来るから、消去したわけね」

「ああ、ホント何を消去しようか困ってたから、パラメータ補正は渡りに船だぜ」

 肩書1個分を、パラメータ補正で補えるんだから、淘汰4回目辺りからは、本当に恩恵がデカい。

「んで、今回取得した刻印の恩恵がこれか」

 元々、【制式装備】や、前回取得した〖武装従魔の刻印〗で、全身鎧に金属盾に直剣という、上質な装備を身に纏っていたゴブリン。

 それが、薄っぺらい鎧(それでもリアルなら軽く20㎏近くありそうだが)が、分厚い金属板のゴツイ鎧に、全身を隠せるタワーシールド、騎馬を串刺しにするパイクに近接用の消火斧と、非常に堅牢且つ充実したラインナップへと変化。

 こりゃ戦闘を見るのが楽しみだ。


 場所を移し、先ずはサチの隠形を見る。

「じゃあ、あのトリケラトプスを手玉に取るわね」

 物陰で潜む俺らにそう告げ、単身標的に近づくサチ。

 ドラグーンは、アニマル程では無いが、草食の恐竜や竜の胃袋を満たす為か、ちょっとした原っぱでも、人の背丈に比肩する雑草が生い茂る等、身を隠すには好条件な環境である。

 それでも、薄いとこや低いとこもあり、徒歩だけで迫れるほどステルスは簡単ではない。

 しかし、サチには〖卑下の刻印〗があるので、半端なブッシュでも、軽く身を屈めるだけで隠れ進む事が出来、スムーズに得物へと近付ける。

 これが屈伸状態や匍匐だと、移動してる最中に獲物が移動したり、最悪気付かれるリスクもある為、普通なら態々近距離で奇襲を仕掛ける意味は無い。

 そんな事を考えてる内に、サチが位置に着いたとメールで知らせて来た。

 サーモンも、何時でも仕掛けられるようスタンバっている。

 あ、俺は使い魔が目立つ為、更に距離を取って待機中だ。

 そして、聞こえてくる重厚感のある足音。

 俺も急いで現場へ向かうと、重武装のゴブリンにパイクで槍衾を喰らい、身動きが取れないトリケラトプスに、ゴブリンや遮蔽物、刻印で巧妙に姿を眩ましながら、罠で獲物を削るサチが映る。

「流石重武装だな」

 ゴブリンを指揮するサーモンの横に並び立ち、ゴブリンの活躍を称える。

「そうだな、以前のままだったら、死にはしないでも、ウェイト差フレーム差で蹴散らされてただろう」

 パイクを突き立て勢いを殺し、何時でもブチかましを防ぐぜとタワーシールドを構えるゴブリン達。

 痺れを切らし、刺突のカウンターを覚悟で盾に角を突き立てるも、総重量の重いゴブリンは浮かせず、反撃で鼻先に消化斧の痛過ぎる一撃を貰うという失態付きだ。

 トリケラトプスは最後まで諦めなかったが、勝敗はサチに気付けなかった時点で付いていたと言える。

 多重トラバサミの拘束で、あらゆる選択肢が後手後手になってしまったのだからな。そのままジワジワトLPが削られていき、程なくして討伐された。


「うん、良いもん見させてもらったよ」

 奇襲からの拘束と固定ダメージの嵐。

 重装甲で衝撃に強い上に数も多いゴブリンの囲い込み。

 決まれば、それなりの格上でも押し切れそうなコンボだ。

 まあPvPだと、相手次第では、奇襲が決まっても平然と抜けられそうだがな。

「さて、じゃあもう1つの目的、ドラグーンのラスボスでも見に行くか」

 場所は、ホームの真裏とお約束な場所で、現地へは超高級戦車のジャガーノートへの転送で行けるそうだ。

 早速ホームに戻り、ドラグーンのギルド支部から現地に跳ぶ。

 安全区域から、現地を目指す人波に乗り、歩く事少々。

 沢山の恐竜とドラゴンが居る、魔境へと到達。

「あの馬鹿でかいのは?」

 一際巨大なブラキオサウルスを指さし、傍らのサーモンに聞く。

「あれはブラキオキングだな。強さは桁違いな癖に、落とす素材は通常のブラキオと同じで、テイムも出来ない糞迷惑野郎だ」

 散々な言い草だが、まあ納得だ。

「しかも、数も多いから一層煙たがられてるな」

「確かに、パッと見ても二桁は居る感じだな」

 見た感じの強さは、最新モデルのマローダー三十両程か?うん、桁違いのバケモンだわ。迷惑野郎だわ。


 巨大怪獣を遠目に観察し、ふと肝心なボスを見に来てたことを思い出し、再び近づく。

「なあ。あの一団はなんだ?」

 かなり遠くに、一見何にもない場所で、大勢のPCNPCが絶叫している奇妙な光景が。

「ああ、あれはドラグーンの、しかもこのエリア限定の[レインボーマンバ]のテイムを狙ってるのさ」

「あれだけ群がってるって事は、迷惑野郎ではないのか」

「超有能野郎だな。コストは驚異の50万だが、毒耐性無効と秒間18万の毒ダメージの噛み付きに、10億近いLPを持ってる超常の化け物だ」

 ヤバ過ぎワロタ。

「ってか、コストが判明してるって事は…」

「ああ、テイムに成功した奴が居るんだろうな」

「狂人だな…いや、思い当たる連中が居るな」

「ああ、その思い当たる連中だ」

「やっぱペットマスターの面々か」

 改めて、人集りを眺める。

「蛇1匹に何やってんだと思わなくも無いが…」

 俺自身、連中には報酬で助けられたしな。精々いい結果が出るよう祈るとしようか。


 更に中心地へと近づくと、長らく使い魔でお世話になった、ヒュドラが沢山見えてくる。

「おお…本家本元のヒュドラはこんなに強かったのか」

 高速走行するデストロイヤー数両を相手に、多頭から放たれる毒液やポイズンブレスで応戦。

 更に、巨体に見合わない機動力を見せ、互角に戦って見せている。

 使い魔の時にはブレスとか吐かなかったのに…どれだけパラメータを削られた上に特技もオミットされてた事やら…。

 更に進むと、色違いのT-rexや、ワイバーン、地竜と味方が交戦してる様が見られた。

 だが、いまだに肝心なボスが見えてこない。

「まだ先なのか?」

「ああ、ボスは中心らしいからな」

「これ以上進むと戦闘は避けられないけど?」

「そうだな…俺らだけでは勝てなさそうなのは?」

「1体だけを相手にするのを前提にするなら、糞迷惑野郎とヒュドラ、T-rex以外なら大丈夫だろう」

 サーモンの分析を信じ、それら大物を迂回しつつ中心を目指した。


「お?」

 ふと、視界に光る物が在った為、近寄ってみる。

「シャーーッ!」

「あぶね!!」

 コチラに牙を突き立てようとした、レインボーマンバを手掴みで捕獲。

「あっ!!コラ!!大人しくしろ!!」

 流石にステータスが馬鹿高いからか、もの凄い抵抗に遭い、何度も指を嚙まれてしまう。

「うおおおおお!?LPがすんごい減るよ!!一噛み秒間18万じゃなかったのかよ!!」

「ああ、スマン。それはLv1のペット時のダメージだったわ」

「通りで!!あわわわメディメディ!!」

 20億以上あるLPが、あっと言う間に15億を下回るという、驚異の毒攻撃。

 急いでタブレットを噛み、LPを快復させつつどうしようか思案。

 そのまま暫くすると、[制圧]の疲労蓄積が効いたのか、大人しくなったマンバ。

「ん?抵抗しなくなったけど、今までこんな事あったっけ?」

 初めて挙動に、訝しんでいると。

「リーダー、それテイムに成功したんだぞ」

「え?俺そういうスキルの類は持ってないんだが?」

「スキル等は、あくまで確立を上げる為のもので、無くても一応可能なんだよ」

「マジか…。あ、本当にテイムできてるんだな、コストが50万分圧迫されてるわ」

「それにしても珍しいわね、スキル無しでのテイム成功なんて」

「そうだな、兎とか栗鼠なら、根気さえあれば結構イケるらしいが、レインボーマンバとかになると、少数点に0が幾つ付くか分かんねえな…」

 なんか、奇跡が起きてしまった様だ。


 一旦PAに戻り、レインボーマンバをペットルームに登録。

 コストに余裕があるので、自己負担でも良かったが、一応ね。

 更に、変にLvが上がってコストを圧迫するのも嫌だから、そのまま預けようとしたが。

「いや、そいつクラスになると、戦闘だけじゃそう簡単にはLvは上がらないだろうから、そのまま連れて行こう」

 と、サーモンが言うので、連れて行くことに。

 ポジションは俺の左腕で、機会が在ったら噛み付きをしてもらおうと思っている。

 ふと、互いにマンバを腕に括り付け、マンバの噛み付きに全てを掛けてた者同士の戦いを思い出す。

 あの時は、傍から見て間抜けな戦いだと思ってたが、成程、自分がマンバを使う側になると、これが一番お手軽だと気付かされるな。

 ペットを効率よく運用するスキルやギフト、装備等も無い限られた手札で、リーチの短いマンバを守りつつ、火力にするにはこれしかない。

 そう考えるに至り、あの時小馬鹿にした2人に、心中で謝っておく。


 再びボスエリアへ赴き、大物をやり過ごしつつ中心地へ。

 すると、遠目にだが、明らかに格の違う有翼のドラゴンを目視。

「アレがドラグーンのラスボスか?」

「そのようだな。実物は初めて見るが、結構小さいんだな」

 サーモンの言う通り、距離が有るから正確な所は分らんが、多分10m無いんじゃなかろうか。

 更に近づくと、その全容が見えて来る。

「体色は光沢掛った灰色か」

「割と地味なのね」

「だが、攻撃は苛烈みたいだぞ」

 攻撃方法は、咆哮、体当たり、踏みつけ、爪撃、そして…。

「おいおい、なんだあのファ〇ネルは」

 かなり大き目な鱗が自在に飛行し、突撃や飛び道具を放っている。

 ボス自体も非常に速く、且つ小回りも抜群で、制空権はややあちら側に傾いていると言える。

「そういえば、ドラゴンの代表的な攻撃の、ブレスが無いんだな」

「みたいだな。だが、その代わりに小柄で在りながら、驚異的な肉体性能を誇るとも言える」

 どういうことかと聞くと、ドラゴンの構造において、ブレスを吐く為の器官というのは結構なスペースを取る物で、これが原因でドラゴンは巨体に成りやすいんだとか。

「じゃあ、アレはブレス用の器官を進化によってオミットした新種って訳か」

「進化なのか原種なのかは知らんが、体の密度が段違いなのは間違いないな」

 だからなのか、ただの音と空気の衝撃波に過ぎない咆哮すら、重装ヘリコプターを大きく揺さぶらせる程の威力があるのだろう。

 というか、咆哮が馬鹿五月蠅いんだが!!

 これだけで、そこそこの距離があっても一瞬怯むんだが。

 あんなのを至近距離で喰らったら、ひとたまりも無いな。

 これは、今の俺らじゃ到底太刀打ち出来るレベルに無いわ。

 という事で、ボスも一目拝む事が出来たし、帰ろうか。


「さて、このマンバちゃんを実戦投入してみるか」

 夕食後、折角だしレインボーマンバを使った戦闘の練習をする事に。

 どうせコストは余ってるので、マンバのコストを自己負担し、左腕に括り付け連れて行く。

 強さを見るなら、やはりバグスターが安定だ。

 現地に跳び、適当に外を出歩いて、蟲を探す。

「お、蟲人間か、丁度いい」

 誂え向きに、タフな蟲人間を発見。

「今回は俺も肉弾戦を仕掛けてみるか」

 鍬を中段に構え、使い魔が群がるまで待機。

「今だ!!」

 飛行ユニットが接敵し、主力級の使い魔が蟲人間を囲んだとこで、俺も肉薄。

 背後から鍬で押したり、各部位を叩いたり引っ掛けたりと妨害しつつ、タイミングを計り…。

「ここだ!!」

 サッと左腕を差し出すと。

「シャーー!!」

 レインボーマンバが威嚇と共に噛み付きをお見舞い。

 カプっと噛み付いたのを確認し、直ぐに腕を引き戻し、蟲人間の反撃を鍬で相殺。

 そうしてる内に、再びこちらに背を向けたので、再び左腕を差し出す。

 この2回目の噛み付きが止めとなり、蟲人間を仕留める事が出来た。

「うん、強いけど、狙えたら狙うって感じで良いな」

 使い魔が機能しない、畑も作れない。そういった縛りが制約として科されない限りは、普通に戦った方が早い。

 まあ、コスト的にはLv10に上げても負担出来るので、そうすればその限りではないがな。

 まあ、のんびりと戦術に組み込んでいこう。

 ちなみに、蟲人間を仕留めたにも関わらず、レインボーマンバのLvは上がらなかった。


 翌朝。

「そういえば、『ジャックオーランタン』の熟練度が全然稼げてないな」

 巡回は、新規や低Lv層が参加すると、救済の為に難易度が相当抑えめになるし、そもそも人が多くて効率が悪いからなぁ…。

 一時はガーディアンの強化の為に、廃都に潜ってたから稼げてたが、あれからあまり増えていない。

「あと少しで『案山子職人』が神級に挑めそうだし、こっちもここらで伸ばしとくべきだな」

 早速諸々の準備を整え、エルフィンに跳ぶ。

 そこから徒歩で廃都に向かうと、以前とは様子が変わっていた。

「おー、なんか外側は綺麗な感じになってるな」

 以前は、所々亀裂が入った防壁に囲まれてたのが、材質は不明だが、分厚く頑丈そうな壁が菱形状に新築され、東西南北の門には監視塔も備わっていて、中々様になっている。

 だが、内部からは相変わらず物騒な音が聞こえてくるので、まだまだ再制圧出来ていないのだろう。

 早速門を潜り、内部へと足を踏み入れる。

 瓦礫もある程度は撤去され、兵舎などの施設も新設され、大分整備された様子だ。

 しかし、視線を廃都の中心へと向けると、もう一枚防壁が目に入る。

 コチラは急造というか、取り敢えず境界を作れればそれで良い、といった感じで用意したのだろう。

 作りが雑で、所々…では済まされないレベルで、至る所に補修した跡が見受けられる。

 そして、何処を見ても、通過箇所が見当たらない。

 その代わりに、周囲を補強され、立派な階段が出来ている、かつてマンホールのあった場所。

「成程、あの壁の向こうには、地下から行かないとダメなのね」

 先程から、壁の周囲を警邏するNPCや、それに混ざるプレイヤーをチラホラとは見かけるが、大半が地下へと続く階段に出入りしている。

「良し、一丁行ってみるか」


 人波に乗り、階段を下る事数分。

「…妙に長いぞ?」

 確かに惑星と同名を関していた首都だから、地下も広大だし、それなりに深さはあった。

 だが、どう考えても階段で数分下っても、まだ終わりが見えないのはおかし過ぎるだろ。

 既に、後ろを振り返っても、地上からの明かりは小さく遠い。

「取り敢えずイケるとこまで行くしかないか」

 周りの人が疑問も抱かずに降りてるという事は、そういうもんだろうしな。

 そして階段の終着点。

「なになに…廃都のダンジョンB1?」

 いや、確かにダンジョンめいてたけどさ…いつの間に本当にダンジョンに成っちゃったんだよ。

 まあ、商業的な理由なのは察せれるけど、考えても仕方ない。

 折角来たのだから、せめてアンデッドの有無だけでも確認しないとな。

 一応、案内板に確認済みの敵性生物や存在が載っており、B1にはゾンビとスケルトンが出るらしい。

 以前は、普通にゴーストやスペクターが湧いてた地下が、ダンジョン化した事で、浅い階層は弱いアンデッドしか出なくなってるようだ。

「それじゃ、進んでみるか」

 階段部屋から先の部屋に移り、周囲を見渡す。

「いきなり分岐が三ヶ所もあるのか」

 先程見た掲示板に依ると、このダンジョンは拡張し続けてるようで、今まで行き止まりだった場所が、前触れなく道が出来てたりするのだとか。

 ただ、拡張はするが既存の構造が変わる事は無い為、トライアンドエラーで地形を覚える事は無駄にはならない。…らしい。

「…というか、壁の向こうに行くにのに、地下は関係無かったのかよ」

 一旦掲示板に戻り、地図を見ても、それらしい場所がない。

 ただ単に、隔離してるだけだった模様。


 改めてダンジョンの攻略、というか熟練度稼ぎを始める。

 アンデッドを求め、散策するが…。

「そういえば、下位のアンデッドを浄化しても旨味が無かったんだっけな」

 久しぶり過ぎて忘れてたが、巡回みたいな、ライセンス公式の依頼とかじゃないと、遥か格下のアンデッドをしゃぶっても、ほぼ意味がない。

「…となると、感触を確かめつつ、ドンドン下に潜るか…如何にか壁の向こうに行く方が良さげか」

 どちらが良いかは判らないが、先に壁の方を当たる方が、所要時間的にもベストだろう。

 そう考え、一旦地上に戻り、壁に近づいていく。

「ん?おいおい、ここは先は立ち入り禁止だ」

 警邏してるNPCに止められてしまう。

「自己責任の一方通行でもか?」

「何を馬鹿な事を…当然だろう。この先は高位のアンデッドが跋扈する危険地帯だ。少なくとも高位の退魔師でもなければ…」

 と、俺を凝視したNPCが。

「も、もしかして『ジャックオーランタン』の神級保持者か!?、いや、ですか?」

 お、これは良い流れかも。


 で、壁の向こう側に居るわけだ。

 端折り過ぎ?だって実のある会話があったわけじゃないから、これでいいんだ。

「さて、一度中に入ると、一定時間は脱出出来ないんだよな」

 壁をジャンプで越えようにも、ロケーション全体に制約が科されてるようで、ジャンプ力が著しく落ち、よっぽど特化した人しか、越えられないようになっているのだ。

 では、どうやって出入りするかというと、クレーンでコンテナごと釣りあげて貰うのだ。

 当然、周囲に敵が居て、クレーンが激しい攻撃に晒されるような状況では、出る事は勿論入る事も出来ない。

 一定時間出れないのは、クレーンがアンデッドの目に長く留まらない為の措置、というわけだ。

「じゃあ、目的を果たしに行くか」


 壁の内部を彷徨ってると、いきなりスペクター1ダースにタコ殴りにされる。

「一気に来すぎなんだよ!!」

 向こうがその気なら、こっちも自重などかなぐり捨ててやろうじゃないか。

 インベントリから聖水擬きをポイポイ。苦しみだすスペクター共。

「ハハハ、ざまあないぜ!!」

 そのままランタン10個分の光に、ゴーストを呼ぶ間もなく浄化。

 ちょっと勿体無い気もしたが、まあいいだろう。

「お、[レイスの核]じゃん!!幸先が良いぜ!」

 純物理を一切通さない、従魔のレイスを召喚出来る核をゲット。

 矢鱈ドロップ率が渋い上に、召喚に核が10個も要るので、中々に敷居が高く、中々環境には顔を出さないが、着々と、物理メタとして人気を上げてきている核だ。

 ちなみに、上位の[ゴーストの核]や[スペクターの核]は、存在自体は確認されているが、入手方法は不明との事だ。

 再びアンデッドを求め、軌跡を畑に塗り替えつつ移動。

 まだ、壁の傍をなぞってるだけなのに、リッチと遭遇。

 早速スナリーガスターを呼ぶリッチに対し、俺は一気に距離を詰め、奴らの足元へ畑をお見舞いする。

 更に、畑に押し上げられた、スナリーガスターの下に潜りこみ、レインボーマンバにしこたま噛み付かせる。

 聖水を腐らせ、ダメージの通り難い面倒なスナリーガスターを、アッサリと毒殺。

 リッチが、不安定な足場ながら、慌てて次の手を講じようとするが、杖を鍬で強かに打ち付け妨害。

 すかさずマンバに嚙み付かせ、使い魔と一緒にタコ殴りにする。これで、アッサリと浄化出来た。

 かつて苦戦した相手に、こうも圧勝できるってのは、気持ちが良いものだ。


 リッチに圧勝し、意気揚々と歩を議事堂の在る中心地へ向ける。

 そしてゴーストに先手を取られ驚愕。

「グハッ!?ちょ、え?一撃でフュージョンボックスの各種バリアが消し飛んだが!?」

 一撃約5億…。楽勝だったのは壁沿いだけだった模様。

 まあ、幸い奇襲は単体で済み、手早く聖水で浄化。

 火力は異次元だが、現状の手札でも十分に対抗できるのが救いだ。

「問題は、さっきみたいにワープ系が複数出た場合だな」

 一応、聖水を服用しつつ浴びていれば、ダメージを激減出来はするものの、流石に消耗が激し過ぎる。

 後は、歩みは牛歩になるが、常に鍬をジャイアントスイングよろしく振り回しながら移動すれば、ある程度は相殺出来るだろう。

 うん、どっちも現実的ではないな。


 壁の内部は、中心へと近づくほど、アンデッドの脅威度が上がる。

 当然、熟練度も上がりやすいので、ここはリスクを取ってリターンを求める方針で行く。

 常にドッペルやスワンプ、百姓を自分より中心へ置く様に動き、レイス系のアンデッドを釣る。

 こういう時、豚や羊といった、非戦闘系の使い魔がデコイとして輝く。

 基本、使役者からも距離を取ろうとするので、無防備な姿をアンデッドの索敵内で晒し続ければ…。

「ピギィ!!」

 3体のゴーストに詰められ、一瞬で破裂する豚。

 そこへ、聖水を放り急接近。これで大体何とかなる。

 ちょこちょこ吸魂も発生し、色々と美味しい。

 かつては最強クラスの使い魔だったガーディアンだが、今では[幸運]の使い魔に後れを取り、八岐大蛇との間には、隔絶した差がある為、ちっとやそっとの強化じゃ追い付くのは不可能。

 だからと言って、吸魂が無駄なわけではないので、熟練度稼ぎと並行し、なるべく狙っていきたいところだ。

 囮を駆使し、聖水が尽きるまで熟練度を稼いだ結果、2%程上げる事が出来た。

 一月もこのペースで稼いだら、涅槃級への挑戦も夢ではないな。


 一夜明け、今日も熟練度を稼ぎたかったが、聖水が足りないので、マッドが十分な数を用意するまで、お金稼ぎを優先。

 そのついでに、折角だからレインボーマンバのLvも上げていく。

 どうせ、淘汰5回目になれば、更にコストに余裕が出来るので、余り気味のコストはレインボーマンバの為に使ってしまおう。

 常々、余り気味のコストで、強力な装備をと考えてはいたものの、資金面の問題や、ピンとくる物が無かったので、装備の更新も滞っていた。

 いや~、ホント良いタイミングでコストの使い道が出来て良かった。

「しかし、蟲人間もそうだし、昨日そこそこアンデッドと戦わせて、止めも何回かさせたのに、まだLv1なんだよな…」

 勿論、元々Lvが上がらないとか、俺にスキルとかが足りないからとか、そういう理由ではない。単純にこいつの要求経験値が高すぎるのだ。

 まるで、ド〇クエ5のギガ〇テスみたいだな。…マド〇ンド…奇跡の剣…うっ、頭が。


 マンバの経験値効率と、金策を考えた結果、砂漠でワーム狩りをする事に決定。

 マンモスや、砂漠の地下ダンジョンも悪くないのだが、数を熟そうと思うと、ワーム狩りがベストだと判断した。

 流石に、今のステータスだと、幼生体じゃ楽勝過ぎるので、成体の縄張りに足を延ばす。

 軌跡に敷いてきた畑を、幼生体がかじかじするのを尻目に、成体の領域へと鍬を振り下ろす。

 直後、ズガガガ!!という轟音と共に、幾つかの畑が残骸化を通り越し消滅。

 まだ、執着免疫が発動してないとはいえ、これは驚異的だ。

 道中、農耕で十分なリソースを確保してるので、こちらも全力でもてなす。

 畑を破壊し、得意気に頭部を晒し、溶解液で隣接する畑の破壊を目論むワームに狙いを定め、駆け寄ってから鍬を振るう。

 畑が出来た事で、巨体ごと地上へと押し上げられたワームを、レインボーマンバにしゃぶらせる。

 膨大なLPを誇るワームはしぶとく、中々Lv1のマンバではダメージが稼げない。

 結局、最初の1体目は、八岐大蛇が仕留め、マンバの経験値はあまり稼げなかった。

 その後も同じ要領で、ワームを孤立させ、何度目かに漸くワームに止めを刺させる事に成功。

 更に作業を加速させ、マンバの仕留めたワームの数が10を超えた頃、漸くその時が訪れた。

「やったぜ!!やっとレインボーマンバのマンバのLvが2に上がったぜ」

 受けたダメージをポーションで癒してやり、今度はLv3を目指す。

 そして、Lv2に上がった事で、ダメージ効率が倍になり、仕留める速度と止めの成功率が格段に上昇。

 とんとん拍子にワームを仕留めていき、何とか終日にはLv3にまで上げる事が出来た。


 翌日。

 レインボーマンバのLvが3になり、かなり効率が上がった筈なので、ターゲットを変える。

 やって来たのは砂漠の地下ダンジョンの地下30階。

 以前はこの辺りで這う這うの体だったが、今では道中も問題無く、ここまで辿り着けた。

 早速大部屋に陣地を構築し、スフィンクス狩りを始める。

 やる事はワーム狩りと大差ないので、とっとと仕掛けて数を熟す。

 流石に雑魚枠では、最上位に位置するだけあって、スフィンクスの経験値は美味しく、30体程止めを刺させたところで、マンバがLv4に成り、更に100体程仕留めた段階で、Lv5に上がり、就寝時間となった。


 二日後。

「あー、Lvが上がんね~」

 昨日と今日半日。マンバのLv上げに励んだが、未だにLv5のままだ。

「まあ、Lv5でも十分過ぎる程強いし、一旦熟練度稼ぎに戻るか」

 合間合間に、マッドが聖水を量産してくれ、十分な数が確保出来た。

 これだけあれば、速攻したいときに、惜しげもなく使う事が出来る。

 早速廃都に向かい、熟練度稼ぎを再開する。


 壁沿いで食料飲料を確保し、少しだけ内側へと移動。

 畑や使い魔などを囮に、強力な補正を受けたアンデッドを釣り出していく。

 スケルトンやゾンビ、レイス系をガンガン浄化し、素材も熟練度も溜まっていく一方で、やはり聖水の消耗も激しいものとなってしまう。

 どうしても、火力が足らないので、常に少数を相手取る為にも、聖水の使用は止められないのだ。

 相手が相手だけに、レインボーマンバでの接近戦もハイリスクで、やらない方がマシ。

 やはり、効率を上げる為に、もう少し自身を強化してからの方が良いかもな。

 そう結論付け、手持ちの聖水を使い切るまで熟練度を稼ぎ、作業を切り上げた。

色々トラブってるせいで、半年も間が空いてしまった…。

まだまだ落ち着くのに時間が掛かりそうなので、次回も遅くなります。

それと沢山の誤字脱字修正感謝です。

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