第五十六話
~前回までのあらすじ~
イベントが始まり、屋台の防衛から商品の補充まで、メンバー総出で緩く楽しく満喫。
しかし、時間と共にイベントが牙を剥き始め、遂には屋台を放棄する事に。
マッドと2人で待ってると、マサがログイン。
「メッセ見たぜ、残り期間は、人が多いときは屋台をやるけど、少ないときは素材集めにするんだな?」
「ああ、だからここでログアウトした人を回収しないとな…そうだ!!」
「どうしたんだ?」
「ちょっと良い事思いついた。数分待っててくれ」
そして数分後。
「お帰り、どうしたんだ?」
「直ぐに分かるさ」
それから十分程して、マサとマッドは納得した様子で呟く。
「あ~。そういうことか」
「ペットを援軍として呼んだのか…ヒヒ、良いアイデアだ…」
蓋14機に引率され、180を超える白モフが現れた。
「一時間しか居られないが、諸々込みでもまた一時間弱で戻って来るからな」
「少し頑張れば、十分に引き上げが可能になるな」
ペットが到着し、ゲーム内は夕方に。
「さあ、始まったぞ」
襲撃が始まり、猪が大量に襲ってくる…筈だったのが…。
「すみません、この子たちに触ってもいいですか?」
ペットに釣られ、大勢の女性プレイヤーが現れ、猪共を蹂躙。
活躍する筈だったペットすら、手持無沙汰になる始末。
ちょっと釈然としないが、お陰で仲間のリスキルを防げそうなので、良しとしようか。
「おはよう」
「おはようです」
数時間前、マサとマッド、待機中にインしてきたラークとショーに後を託し、PAに戻りログアウト。
今しがたインすると、無事PAに戻れたというシルクと出会う。
確認すると、他の取り残されてたメンバーも、無事リスキルを免れ、PAでログアウト出来たようだ。
「一旦飯落ちするわ」
「了解です」
確認の為、朝食前にインしていたので、一旦飯落ち。
「ただいま」
「お帰りです」
サーモンとサチもインしてたので、挨拶する。
「さてと…」
昨夜、仲間の安全確保の為、ペットを利用したが、残りの期間どうしようか。
女性プレイヤーの登場は考慮しないにしても、蓋を含め、200近い強力な味方はとても頼りになった。
ただ、時間切れと往復とクールタイムを考慮すると、実質二時間に一時間稼働するという、微妙に穴の開く戦力となってしまう。
「屋台の儲けは置いとくにしても、頻繁にモンスターが湧くのは、素材的にもペットのレベリング的にも美味しいから、多少無理してでも、イベントに参加した方が美味しいか」
僅か数時間だが、ペットの平均Lvが4も上がってるので、ペットのサポートも兼ねて、現地に居た方が良さそうだ。
パミルとタロウがログインし、シルクがログアウトし、現在メンバーは俺込みで5人。
俺はペットのレベリングに関して4人に話し、屋台を少しでも稼働させようと誘う。
「ペットのLvが上がるなら、多少無理してでもやる意味が有るな」
「私は皆に合わせるわ」
サーモンとサチは大丈夫と。
「私も協力しますよ」
「俺も」
パミルもタロウも承諾してくれたので、5人で屋台の場所に赴く。
「…誰も居ないな」
設置された屋台は破壊され、NPCや敵含め、人っ子一人居やしない。
取り敢えず屋台に近づき、修復を選択。
『修復を開始、後二時間で完了します』
リアルで三十分掛るので、のんびりと待つ。
「誰も居ないから、襲撃も発生しないんだな」
何事も起きないまま、作物を量産する事三十分。
『修復完了』
エフェクトも無く完了と共に残骸が屋台へと変化。手抜きにも程があるが、困らないから良いか。
早速、タロウが料理を作って自販機に突っ込むと、どこからともなくNPCが現れて、自販機に寄って来る。
周りが閑散としてる分、NPCの数も半日前とは比較にならない程少ないが、この位がまったりしてて丁度いいな。
そんな折に襲撃が発生。敵の種類は犬だが、数が200いってるかどうか位か?やはり敵の数も少ない。
だが、ヘルハウンドはしっかりと湧いてるので、油断は禁物。
犬を迎え撃つそのタイミングで、今度はペットが登場し、犬の群れと衝突。
今回は追っかけも居ない様で、ペットのLv上げには好条件が揃った形だ。
普通の犬や狼はそのまま、魔犬や魔狼にヘルハウンド等の魔物以上はある程度削っておく事で、ペットの止めをアシストしていく。
こうして良い感じに温い襲撃を乗り切り、ペットのLvも上がった。
午前中に何度も襲撃を乗り切り、午後はユキとユナと一緒に屋台に行くと、屋台が幾つか復活していた。
屋台と人が戻った事で、襲撃の激化が懸念されるが、そこはペットのLv上げには都合が良いと思う事に。
屋台にはタロウとカメキチさんが居たので、留守の間の状況を聞く。
「最初は楽だったけど、テツやんが来るちょい前辺りから人が戻ってきて、雲行きが怪しい感じになっとったね」
捌けない事も無いが、やや厳しいと感じる位だったそうだ。
其処に、俺ら3人が加わり、さてどうなる事やら。
そして十数分後。
「やっぱ、数が増える程きつくなるんやね」
俺らが着いてからも、少しずつだが人が戻り、多少が活気が戻ったものの、襲撃の難易度は劇的に上がっている。
既にペットも到着済みで、5人しか居ないながらも、準備は万端。
難易度の上昇を体感出来てはいるが、まだペットに止めを譲る程度には余裕がある。
俺らの方に向かって来たナメクジを駆除し、少し考える。
(うーん、次の襲撃がおよそ二十分後として、そのタイミングだとペットはクールタイム中…)
俺なりに考え、一旦ペットを引き上げさせ、俺もPAに戻る。
「あの様子だと、夕方から夜で、もう少し人が戻りそうだから、独立行動を2グループに分けても、そのままだと自殺行為だから…」
1人でブツブツと言いながら、色々と弄っていく。
「良し、こんなもんか」
再び屋台に戻り、弄った部分を仲間に説明。
「ペットを2グループに分けて、遠征場所をあの辺りにしておいた」
「あの辺りって…ここら辺の襲撃で発生した敵の、可動範囲ギリギリだったわね」
少し前に、このエリアの襲撃の敵がどこまで来るかを検証しておいた。
「数が半分だから、そのまま運用すると、多分物量で押されると思うから、端っこで摘まみ食い出来そうな位置に置く事にしたんだ」
ペットの居ない間の襲撃は、商品だけ回収し、屋台を放棄する事で回避。
ペットが交代制で、配置に着ける様になったところで、屋台の修復をする。
その間にも、襲撃が発生したが、俺らの屋台は崩壊中なので、猪がそれほど向かって来ず、手持無沙汰だったので、離れた位置に居るペットに合流し、敵を引っ張って来るなどして、Lv上げをアシストしつつ時間を潰した。
頃合いを見て、屋台の場所に戻ると、良いタイミングで修復完了。襲撃も発生した。
インターバルがどんどん短くなり、朝昼でも二十分を切っている。
さて、頑張って生き残ろうと思った矢先、リーダーの蓋が悪党の急襲で破壊され、ペットが撤収してしまう。
これは、完全に悪党の存在を忘れていた自分の差配ミスだな。
思わぬ横槍のせいで、思ったような成果も出ず、屋台も放棄せざるを得なくなるなど、散々な結果となってしまった。
再び撤収し、蓋を修理して、独立行動を再編集。
「やっぱ、戦力は分散せずに、纏めて運用した方が良いな」
そして夜。
「そもそも独立させなくても、一緒に連れてけば良いんだよな」
一纏めにしておいたペット部隊を随伴させ、屋台の場所へ向かう。
流石に、プレイヤーが複数人随伴してると、悪党も手を出してこないので、無事に目的地へと到着。
デフォルトの移動速度でも、走れば五分程の距離なのに、随分とスリルに満ちた道中だ。
で、現地はというと、イベントも最終盤で、かなり激しいこともあって、殆どの屋台が瓦礫状態になっている。
「まあ、あんだけ敵の襲撃は激しいと、俺らよりもLvが低いとこは、ひとたまりもないだろうな」
これまで見てきた感じ、この辺りだと、数もステータスも俺らが一番高いようだったので、その俺らが手に負えない状況なら、そら余所も無理だろう。
それでも、屋台の修復待ちをしてる人が結構いるのは、やっぱ終盤のテコ入れ、怪物の出現だろう。
怪物という撒き餌に、まんまと釣られてる形だな。
そして三十分待って、屋台が復活した頃には夜になり、常時襲撃状態へと突入。
一応、NPCも活用する為に、シルクとタロウには、投擲網とバフ料理を量産して貰い、パミルとマッドとおりょうさんには、戦闘に参加してもらう。
今回は、ある程度だが陣形を決めていて、前中後衛を軽く意識しつつ、互いの距離を広く保つようにしている。
これは、連れて来たペットや蓋が、俺らの周囲を通り抜けやすくする為だ。
一番大きいのでも、中型犬の白柴犬なので、広くと言っても精々両手を広げた位だ。
「いや~美味過ぎる」
素材はタンマリ、ペットのLvもガンガン上がっていくので、爽快感はたまらない。
中段上段は、俺らプレイヤーがカバーしてるので、ペットと蓋は下段のみ抑えればよく、ダメージ効率もすこぶる良い。
ペットのLvが上がる毎にどんどん楽になって、大量の素材で物を売ればNPCも戦力になり、増々押し返す力が強まる。
「でも、蓋のLPが心許ないな」
専用のアイテムやスキル等が無いと、出先でのサポーターや車両は回復出来ないので、俺だけ一旦蓋を率いてとんずらする事に。
そして皆から預かった素材を倉庫に仕舞い、蓋の回復を完了させ、再び戦場へ。
蓋の移動速度が速い分、数分しか経っていないので、仲間の瓦解は免れたが、やはりLPが数十億を超えるデコイの存在は大きい様だ。
直ぐに隙間を埋め、仲間の負担を分散させる。
そして、蓋のLPがヤバくなったら戻って回復。これを終日まで繰り返し、ペットの平均Lvを10も上げる事が出来た。
イベント最終日。
もはやイベントの結果などどうでも良く、このペットのLvを簡単に上げられる状況が終わる事の方が悲しかった。
そんなわけで、平均Lvを1でも多く上げる為に、朝から居合わせたメンツでペットのLv上げに励む。
Lvが高い子たちは、簡単には上がらないが、1000未満の上がり方が著しい。
一番Lvの高い、白兎のシフォンのLvが約1800なので、下振れが減る感じでの強化だ。
さて、イベント最終日の今日。何もないわけがなく、直ぐに変化に気付く。
「敵のステータスと格が底上げされてるのな」
ステータスは測りかねるが、格については分かりやすく、犬が減って狼に、魔犬が減って魔狼に、という感じで、上位種の比率が高くなっている。
「でも、目玉はやっぱモンスターの比率の大幅増だよな」
これまでは、襲撃の度に2~3体だった怪物が、人数補正にも依るが、多いと一度に5体以上は湧く様に。
ハッキリ言って、俺らでも少数じゃ屋台を守るのは不可能なレベルだ。
状況を見つつ、屋台を放棄したり修復したりを繰り返し、粘れるだけ粘って物資が尽きたら逃走。
午前中はこんな感じで消化した。
午後。
現地は無人の野と化していた。
屋台は全てが廃材と化し、襲撃で湧いた敵も、人が居なくなり自然消滅。
お陰で屋台の修復は簡単に出来るが、その後維持出来るかは別問題だ。
襲撃発生のトリガーの屋台を修復し、間を置かずに敵が湧いてくる。
俺ら以外の屋台が無いからか、敵の数が150程と随分と少なく、パミルのクリスタルゴーレムだけでも上回っている。
本来なら、敵のステータスや格が底上げされ、まともに戦えない筈だったが、数で圧倒してる今なら話は別だ。
猪の群れを囲みこみ、ドッペルと百性で足元も畑に変え包囲網を形成した。
数で上回り地形でも有利を取り、圧倒的なアドバンテージでもって蹂躙。
あまりに早く殲滅した為、敵の居ない空白が発生。
常時襲撃状態かと思ってたが、一応ある程度のインターバルは設けられてる様だ。
「おお、イベント初期に戻ったみたいだな」
敵が途切れ、手が空いたのでNPC用の商品をセット。
早速NPCが湧いて出て自販機を物色。
直後、犬系が湧き、NPCを交え開戦。
結果は当然圧勝。先程よりも数で押してるので当然の結果だ。
再び手が空き、商品を充実させる。
これで更に楽になれば良いのだが、チラホラと人が戻り、屋台の修復を開始している。
「うーん…どうなるやら」
このまま受け身でいると、襲撃が手に負えなくなる頃には身動きが取れなくなりそうなので、少し早いが撤収の準備を始めておく。
三十分後には、屋台が復活し始め、敵の数が激増。
「良し、潮時だな。今のうちに撤収しよう」
イベントの終了までは、まだ三時間あるが、余裕のあるうちに畳み、素材を持ち帰る事を優先した。
PAにて、仕分けを済ませ、ログアウトした。
夜に再ログインし、イベント終了まであと一時間。
念のため、一っ走り屋台を見てきたが、敵の処理が覚束なく、NPCも自販機に辿り着けない状態だった。
「あれはもうダメだな」
PAに戻り、そのままイベントの終了を迎えた。
残念ながら俺らの順位は上位1%にも入らなかったので、追加の報酬は得られなかった。
ただ、NPCから巻き上げた金の総額は10億程で、未加工の素材はそのまま資産として残るので、ペットのLv上げを考慮すれば、かなり美味しい結果だと言える。
ペット達をいつものルーティーンに戻し、マサとイベントの感想を話す。
「兎にも角にも場所選びが鍵だったな」
「そうだな。ランキング上位は、人口密度が低い場所に、屋台を構えてたみたいだもんな」
「襲撃をどれだけ低ランクに抑えれるかに直結するからな」
低ランク進行とか、昔のSTGかよってなるが、実際に低ランク進行を実践出来たとこが結果を残してるのだからな。
「あとはエリアの難易度も重要だな」
「売上補正が大きいよな」
結果発表で、諸々の数字が公開されていたが、上位陣と下位陣の間には、圧倒的な差があったわけではなく、自分たちの実力と規模を正確に認識し、無理のない範囲で補正を得られたところが、補正差で勝ったような感じだ。
実際、うちも補正抜きの商品の単価は平均よりも少し安い程度で、売り上げ数は平均よりも多い位だったが、エリアの難易度が然程高くなく、参加人数も18人と多かったのが敗因となった。
「総評としては、参加して損は無いイベントって感じだな」
「身も蓋も無いがその通りだな」
短期間ながら、中々の成果を齎してくれた。
感想会を経て、俺とマサは別々に依頼を受けに行く。
イベント期間中、コーポの依頼消化をサボり気味だったので、NPC様のご機嫌取りを再開する。
依頼を物色し、選んだのは護衛依頼で、場所はフォレストとなっている。
現地に到着し、久々にヌメさんと再会し、詳細を聞く。
「最近、ホームの真裏にマザーツリーやツリーオブクイーンを超える大樹…ツリーオブエンプレスが見つかってな。それの調査に赴くのだ」
説明を聞いてる最中、続々と参加者が集まる。
締め切りの時間がきた頃には、50人を超える大所帯へと膨れていた。
早速、一団となりホーム北のポータルへ乗り込み、北のエリアを目指す。
そこからは、エリアを横断し、最果てへのポータルを目指す必要がある為、気を引き締める。
ポータルの安全地帯を抜けると、瞬く間に植物と菌類の化け物共に囲まれてしまう。
お馴染みのクロスイーター、トレントを始め、粘菌、巨大キノコ、メデューサボールっぽいもの(蔦の塊)、巨大食虫植物等、エリア補正と人数補正も相まって、かなりの数と質を伴って押し寄せる。
他の参加者が各々動くなか、俺は何もせずに様子見に徹する。
変に畑などを作って、他の人のビルディングや開墾を妨げるのも悪いからだ。
なんて、俺が気を遣ってるにも関わらず、「おい、そんなとこに通り抜けれないバリケードを作るな!!」「畑が邪魔なんだよ!!」「誰だよこのタレット置いたの!!」等々、中々に香ばしい感じに。
こういう烏合の衆感も、ある種の醍醐味なんだろうが、ちょっと状況的に勘弁願いたい。
このまま手をこまねいている訳にもいかないので、進路とは逆サイドへジャンプ。
即座に様々な攻撃が飛来し、蔦の化け物に引き寄せられてしまう。
尤も、この状況を望んでいたので、直ぐに動き出す。
ドッペルと百姓を呼び、フュージョンボックスも起動。
既に[スワンプマン]の発動条件をほぼ満たしてたので、LPにダメージを受け発動。
ドッペルとスワンプをそれぞれ百姓を呼び、6人掛かりで畑を広げる。
一団からは引き離され、遠慮の必要が無く全力で事に当たる。
俺の行動に、漸く依頼の本来の趣旨を思い出した参加者たち。
過程はどうでも良く、調査隊を無事に目的地に届け、無事にホームに返せればいいのだ。
報酬の査定も、その結果に対しどれだけ貢献したかで決まる。
では、俺の行動はどうかと言うと、殿軍を買った形となり、大量の使い魔と畑で以て、多くの敵を引きつけ抑えている。
更に、貢献度を継続的に得る為、味方をある程度追うように、畑を形成。
どう過小評価しても、敵の1~2%位の戦力は割いてる筈だ。
遅れながらも俺の動きに追従する者が現れ、一団のから距離を取りつつも、周囲を囲う壁が形成された。
さて、多少なりとも、目的に沿った連係が成立し、行進が正常化したわけだが。
「…凄まじい猛攻だ」
使い魔も畑も、執着免疫で尋常じゃない補正を受けてるにも関わらず、八岐大蛇とゴーレムや近衛鼠にガーディアンに天使といった、突出した強さの使い魔や傍付きの使い魔以外は、次々とやられていき、畑に至っては消しゴムで消される文字の如く削られていく。
「これでも、ランタン10~30個分のデバフ込みなんだもんな」
勿論、デバフがしっかりと効いてるからこそ、こうして生き残ってるわけだが、流石に火力不足が祟って仕様がないな。
「誰か連れて来れば良かったか」
まあ、現状に嘆いたところで状況は好転しないので、黙々と遅滞行動に徹する。
暫らく移動を続け、本隊から遅れ始めた頃、前方に大型のドローンが出現し、植物共を薙ぎ倒す。
どうやら、北エリアの中央に築かれた拠点から、援軍として寄越された様だ。
こうして、殿軍の俺もどうにか中継地点の拠点に辿り着く事が出来た。
拠点に着くと、既に本隊は出発した様で、同じように殿軍や囮を買って出た連中と、後を追う。
先程と違い、味方が居る事で行進速度は遥かに上がり、少しして誰かが戦闘中の場面に遭遇。
「おお!!助かりました!!」
先程の俺らと同様に、殿軍を買って出た1人に追い付いた形だ。
そんな最後尾のプレイヤーを拾い、更に歩を進めるともう1人拾い、その後も転々と囮役を回収。
流石に囮を買って出るだけあって、皆非常に堅く、中には火力も高い人も居て、増々進むのが楽に。
人数補正が下がり、敵の数が減ったのも大きな一因だが、自己犠牲を厭わない人同士だと、連携もスムーズなのが一番の要素だろう。
そして、漸く本隊に合流する頃には、プレイヤーの参加者は瓦解寸前だった。
そんな連中なので、遅いだのなんだの囀りだしたが無視だ無視。
後で知ったが、やはり碌でも無い連中ばかりで、護衛対象のNPCを盾にする等、カスっぷりが凄く、NPCからも敵視されていたのも納得だ。
そいつ等だけ、ドローンにも守ってもらえてないんだもん。
しかも、ヌメさんから「態度を改めて従事するか、このまま帰るか。選べ」と二択を突きつけられる始末。
それでも、まだ依頼から強制排除されない分、有難いと思えって話だ。
ここまで言われ、漸くカス共も立場を弁えた様で、大人しく付いてくる事を選択。
帰らない事に、呆れつつも、弾除けになれば良いか位の気持ちで受け入れる。
それから少し進み、漸く最果てへのポータルに辿り着いた。
ポータルを使い、フォレストの真裏へ到着。
渋々大人しくなった連中も、最果てで捨て駒にされるのは困るようで、真面目に護衛をする気になった様だ。
少し準備し、安全地帯を抜ける。
「ははは…洒落になんないな」
一瞬で100以上のクロスイーターがワープアウトし、先頭のフラフープ使いに襲い掛かる。
それに対し、5つものフラフープが自動回転しながら、ナイフの二刀流で応戦。
7割ほどは弾いて迎撃出来たが、あとの3割には僅かに齧られ、回復の為後退した。
弾かれたクロスイーターが再度飛翔する前に、農薬散布機のようなものを背負った人が前に出て、霧を散布。
地面で復帰しようと藻掻く、クロスイーターを次々と仕留めていく。
それに続けとどんどん安全地帯から飛び出し、遅れて来た大物に挑みかかる。
クロスイーターの第二波もワープアウトし、瞬く間に激戦へと突入した。
北エリアと違い、段違いに強化された植物共。
先程は、7000超えの戦闘蜂が居れば、クロスイーターの2~3体は相手取れたのが、ここでは全てが1体に群がって、漸く十数秒で斃せるという感じになっている。
まあ、蜂は基本離れた位置で戦ってるので、ランタンの恩恵無しだから、余計苦戦が目立つのだが。
ということで、蜂の援護がてら、傍付きの使い魔をもっと活用しようと、積極的に仕掛けに行く。
敵を引き寄せるゴーレム、飛び道具持ちのガーディアンと天使は兎も角、1体しか居らず傍付きな為、活躍の機会の少ない<近衛鼠>に仕事をさせる為だ。
北エリアと同じ様に、少しだけ本隊から離れ、同じ手順で陣地を構築。
それでも全く安全では無いが、俺1人が足掻くには丁度良い広さとなった。
早速、畑の削り取りに躍起になっている、メデューサボールを畑に打ち上げしゃぶる。
敵が一定範囲内に入り、近衛鼠が飛び掛かる。
流石に喰らい付くのが精一杯といった感じだが、掌サイズの鼠が、単体で粘れてる事を考えれば、十分な活躍と言えるだろう。
其処に、やられてリスポンしたスカラベが参戦し、その強靭な顎でメデューサボールをズタズタにする。
流石、6回も変化した使い魔と言える強さだ。単体の魔物や怪物未満なら、圧倒してしまうんだから。
…近衛鼠の活躍するシーンの筈が、スカラベの引き立て役になってしまったな。
まあ、変化数が2回と6回、しかも大きく変わる3回目を迎えてないんじゃ、強さで張り合うのは土台無理な話ではある。
使い魔を全て活躍させるよう立ち回り、味方を行進をサポート。
ただ、最果ては甘くは無く、現在は2人の火力職と組んで、3人で殿軍をしている。
1人は鬼火力で有名なビルド、鋏二刀流。もう1人は因子[イエティ]や[ビッグフット][スナリーガスター]等をブーストしたビルド、UMA。
鋏ビルドは以前も触れたが、ギフト【馬鹿と鋏は使いよう】で、頭のおかしい火力を叩き出す。
そして二刀流ということで、手数も倍となり、トレントを二秒弱で仕留めてしまう。
その分、ギフトや肩書が火力に偏ってる為、堅さに関してはそこそこ止まりとなっている。
ビルドUMAは、[イエティ]の専用CA、<雪玉投擲><雪被せ>、[ビッグフット]のCA、<目の錯覚><隠れ蓑>を巧みに使い、その他のUMA系因子の強力な効果やスキルを活かした、やや器用貧乏型だが、火力の高いビルドとなっている。
俺は、そんな2人の足場を確保するために、畑の維持に専念。
鋏二刀流は、鎧や柵を盾に、チョキチョキとクロスイーターやトレントを剪定。
うん、やられる前にやるを地で行く、気持ちの良いビルドだな。
さて、滅多にお目に掛かれないビルド、UMAを観察する。
先程触れた、<雪玉投擲>という、名の通り雪玉を投擲するCAを使い、トレントを足止め。
それなりの威力と射程を持ちながら、当てた相手を僅かに鈍らせる上に、クールタイムも短めな使い勝手の良いCAだ。
もう1つの<雪被せ>も、射程は短いものの、威力と範囲に優れる、優秀なCAだ。
更に、これらのCAを邪魔されずに使う為に、相手の距離感を錯覚させる<目の錯覚>、景色に溶け込む<隠れ蓑>を使い、反撃をやり過ごしつつ雪で削り、[ビッグフット]の因子効果、近接ダメージ20%上昇で、強化された近接で止めを刺す。
やはり、しっかりと覚醒数を伸ばした因子のスキルやCAは非常に強力だな。
特に、隠密系の<目の錯覚>と<隠れ蓑>は。パッシブでもオートでも無い、任意発動のアクティブなので、元が強力な上に、重複と変化も相まって、サチの取った〖忍びの刻印〗〖間者の刻印〗と比較しても、上回る効果を発揮している。
他にも、色々な特殊能力を持ってるのか、近づいた敵が[呪い]状態になったり[恐慌]状態になったりと、デバフも備えてるようだ。
総じて安定した、悪く言えば器用貧乏、良く言えば万能なビルドという感じだな。
鋏二刀流が大物を、UMAが小物を蹴散らし、本隊をアシスト。
他にも、露払いや側面を守る別動隊の活躍もあり、漸くツリーオブエンプレスの下へと辿り着いた。
んで、ヌメさん達が樹に張り付いた途端、大量の敵がポップ。
「やっぱり出て来たか!!」
これ、ヌメさんのセリフね。なんというか…メタいよね。
だが、状況はこれでもかというほど深刻だ。
先ず大物が3体居て、マザーツリーのトレントが2体、ツリーオブクイーンのトレントが1体、の計3体。
これを軸に、大物が軽く数十体。クロスイーターに至っては数十ダースはワープアウトしてきている。
コチラも、動かないわけにはいかないので、取り敢えずビルダーやファーマーは、互いに干渉しあわないよう距離を取る。
そこに、各々相性が良さそうなビルドが追従し、なんとなくのグループ分けが完成。
俺の所には、先程の2人と、超重装の近接が3人が来てくれた。
何故か装甲に自身の有りそうなのばっかだが、まあ困らないので良いか。
鋏二刀流とUMA、この2人が頼りになるのは判ってるので、重装騎士の3人を観察。
1人はロングソード1本のみを得物に、突く、切る、叩く、を巧みに使い分け、小物は手数を活かしてバッサバッサと切り捨て、大物は重装と相殺を活かし、がっぷり四つで競り勝つという、自身の強みを存分に生かした戦い方を披露。
もう1人の得物はタワーシールドに大槍。距離が有るうちは槍で突き、薙ぎ払い、詰められたら盾で打ちかますという、見ていて気持ちの良いスタイル。
3人目は、両手にボーリングの玉のような物をはめ、玉で殴るのかと思ってたら、玉から電流が迸り、それで範囲攻撃したり、電撃を飛ばしたりと、想像とは違う戦いを見せてくれた。勿論、殴りもしていたけど、メインは電撃の方で、クロスイーターなどの小物には、滅法強く見えた。
そんな感じの3人の協力で、非常にバランスの良い編成になり、俺らの陣地はかなりの堅牢さを発揮。
俺は畑の維持、クロスイーターなどの小物は使い魔と、UMAと重装ロングソードが対処。
大物は残りの3人が相手取り、畑の浸蝕を許さない。
途中、ボス級のマザートレントがしゃしゃって来て、大事に至るとこだったが本隊の援護で事なきを得る。
その後は特に山場も無く、湧き続ける植物の化け物共を処理。
暫くして、本隊がボス3体を倒し、調査を開始する事が出来た。
調査後、同じ要領で帰りも護衛するのだが、烏合の衆にも一体感が芽生え、行きとは見違えるほどスムーズに帰って来る事が出来た。
PAに戻り、評判をチェックすると、俺が調査依頼に拘束されてる間に、他のメンバーが依頼を消化した様で、程々に上がっていた。
「さてと、次は何を受けようか」
再びギルドへ向かい、依頼を吟味していると、鬼ヶ島の攻略が完了したと、インフォメーションが流れた。
「へ~、見に行ってみるか」
と、軽い気持ちで鬼ヶ島へ跳ぶと、いきなり修羅場に遭遇。
人類連合とそこへ加入した友好的鬼族と、敵対的鬼族とで、惑星を舞台に戦争をしてるのだ。
まあ、攻略度100%って、あくまで各エリアに足掛かりを築いたって程度の話で、完全に支配したわけではないからな。
どうやら、この戦争状態が、鬼ヶ島のテコ入れなんだろう。
後に、何処に行っても敵味方入り乱れて戦闘をしてるから、乱戦スキーには最高。という評価を受ける。
「先ずはこの状況を乗り切らなければな」
現状、ホームの防壁やゲートは無事だが、引き籠っていてはいずれは…といった感じなので、誰かの音頭で打って出る必要があるだろう。
誰かが何とかしてくれる。
そんな願望はかなぐり捨て、自分に出来る事をする。
ということで、現在誰も居ない場所で防壁に張り付き、外に使い魔がポップする様に調整。
何度かホーム内をシャトルランし、うまい事[幸運]の4体と、[蛇使い]のマンバ、おまけで豚と羊を外へワープさせることに成功。
すると、防壁を隔てて戦闘音が聞こえてくる。
やってる事は、壁向こうからの使い魔供給という、なんともせこいのだが、有効なのだから仕方ない。
更に、飛行ユニットの蜂と天使と円盤も、空から壁を越え参戦。
一層、壁向こうからの音が激しさを増す。
時折、ゴブリンの騎獣やらペットやらの素材が手に入り、凄い勢いで蜂がリスポンしてSTAをバカ食い。
程なくして、雨観亀がリスポン、続いて黄龍、スカラベ、更に間を置いて八岐大蛇がリスポン。
まだ、羊と豚が逃げ延びてる様だが、ここで一旦仕切り直しを図る。
何度か往復し、もう一回強力な使い魔を外に出す事に成功した。
ホーム内で畑が作れれば良いのだが、まだ敵が侵入してきてないからか、使い魔は顕現するものの、開墾やビルディングは出来ない様だ。
畑さえ作れれば、リソースの確保が出来、ドッペルを使えるんだが…。
一応<極合成>で、満腹度保水度は回復するのだが、時間帯が限定されるし、重複14のスキルLv200程度だと、自然消費を少し上回る位なので、どの道賄うには足りない。
こればっかは仕様がないので、この姑息な戦法を延々と擦る事にした。
そして、就寝の為にログアウトする頃には、十分な素材と、ライセンスの熟練度を稼ぐ事が出来た。
「今日はどうするか」
イベントから一夜明け、何をするか考える。
「折角鬼ヶ島が100%になったんだし、今日も行ってみるか」
「なら私も付いていっていいかしら?」
「俺もええかな?」
サチとタロウが同行を申し出てくれたので、一緒に鬼ヶ島へ跳ぶ。
「…て感じで稼いでたんだ」
一夜明けたにも関わらず、変わらずホーム周辺でドンパチやっている。
2人に、昨日の稼ぎ方を伝え、3人で壁越し戦法を取る。
誰も居ない場所を見つけ、サチが等間隔で壁際に罠を置いていく。
俺は昨日と同様に、使い魔がより多く壁向こうにワープする様調整。
タロウは、弾丸が山なりに飛ぶのを利用し、防壁上を通り過ぎる様、弾幕を張る。
単純に労力が3倍になったことも有り、凄い勢いでドロップ素材が舞い込む。
タロウの弾幕に当たったり、使い魔が倒したり、壁際に来たせいで罠の餌食になったりと、遠中近とバランスよく攻撃出来、非常に効率が良い。
「これは楽で良いわね」
「ホンマに楽やわ~」
2人も、壁越し戦術の虜となった様だ。
ただ、そんな甘い汁を吸い続けるのは土台無理な話。暫くしてホーム側が敵を追い返してしまった。
「さて、どう動く?」
「そうね…」
「稼ぐだけなら此処じゃなくてもええからな~」
3人で相談し合い、鬼ヶ島に残り、次の戦場を目指す事に。
「でも、たった3人だからな、脇から摘まみ食い位が身の丈に合ってるだろう」
3人で戦場にしゃしゃったところで、物量で圧殺されるのがオチだ。
勿論、味方と連兼を取ればその限りではないんだが、特に依頼を受けてるとかそういうのも無いから、利益が不確定過ぎて美味しくないのだ。
だったら、多少危険を孕んでいても、利益の見込める立ち回りの方が良いよね、というう理屈だ。
そんな事を話しながら決め、広大な湿原へと辿り着く。
どうやら、水源を巡って争っている様だ。
主戦場は、判り易く湿地の中央で、両勢力が激しく陣取りしている。
そんな中、俺ら3人はブッシュで敵の視線を遮り、湿地で半身浴をしながら敵のサイドへ移動中。
湿地に身を浸していると、蛭が寄って来るが、例えテコ入れ後の惑星であっても、ランタン10個分の放射線には耐えられない様で、足を取られる以外の弊害も無く移動出来る。
ただ、折角を身を隠して動いてるにも関わらず、使い魔のせいでちょこちょこゴブリンやオーガが寄って来るのは困りもの。
距離も有るし、使役者自体が隠れてる分、意味はあるんだが、なんとも間抜けな感じが否めない。
それでも、敵の本隊に対し、一度も姿を晒していないので、何とか無事に位置に着く事が出来た。
「良し、周囲に敵は居ない、退路も万全。やるか」
現在、俺らが持ち併せる最高射程は、天使の放つ矢だ。
と言う事で、先程までの使い魔に釣られて…という、受動的偶発的な釣り出しではなく、能動的な釣り出しの為、天使の射程まで歩を歩める。勿論、身を隠して。
天使の射程が、敵のサイドにギリギリ届かないとこまで行き、待機する。
少しすると、遠目に見える使い魔に反応したのや、隊列が膨らんで射程内に入って来た敵に矢が射掛けられ、ポツポツとだが敵の釣り出しが始まった。
「アーン?コンナトコロニツカイマ?」「イテエ!!ヤッタナコノヤロウ!!」
こんな感じで、鬼族やその家畜を釣り出してしゃぶる。
敵が単体の場合、天使の矢がヒットし、更に近づいたところで円盤が出撃し、移動を妨害し、その間に矢の猛追が襲い掛かり、討伐。
複数釣り出しても、ある程度の位置に来れば、タロウの弾幕が降り注ぎ、そこを乗り越えても大量の使い魔が、罠が待ち構えるという、万全の布陣だ。
最初は、順調に摘まみ食い出来ていて、余裕綽々だったが、次第にこちらへ向かってくる敵が増えて来る。
「やっぱ、モブもしっかりと思考するゲームだからか、延々とはしゃぶれないか」
更に時間がたった頃には、かなり本気でこちらを潰しに掛って来るように。
仕方なく、撤退。メインの戦場はこちらが勝ったらしい。
夕飯後、結構な資産が貯まった為、4回目の淘汰を行う。
「さて、先ずは《幸運マニア》を消すか」
元々消す心算の肩書なので、迷いなく消去。
「んで、刻印は何を取るかだが…」
…。
「ん?おおおおお!?ちょっと!?これが有れば今度こそ問題が解決するんじゃ!?」
〖超細胞の刻印〗割合ダメージを最大LPではなく現在のLPを参照する様にする。また最大でも99%までのダメージに抑える。
幾つか解放されていた刻印の中に、これがあった。
「これさえ有れば、最悪【核細胞保護】が無くても即死は防ぐ事が出来るな」
勿論、割合によってはそのまま乙る事にもなるので、油断は出来ないが…。
「少なくとも、割合ダメージだけでやられる事はなくなるな」
これを念頭に、ビルドを再考していく。
「これで、もう1つ【核細胞保護】を消せるようになったとして4つ、《生命マニア》《幸運マニア》《生命信者Lv1》を消せば8つまで、更に《生命神》も消せば9つまで捻出出来るわけだが…どうだかな~」
あるいは、《生命神》を残して、【生への執着】を1つ消すか。
「でも、このままじゃどの道パラメータに手を出さざるを得なくなるか」
それから、少しだけ思案し。
「…前回、【核細胞保護】を消した時には、〖超細胞の刻印〗は無かった筈だ」
だが、今回は選択肢に現れたという事は。
「何かを消去する事が、新たな刻印の解放条件だったとしても、即時選択肢に出るわけじゃないのか」
となると、もし【生への執着】にも、消す事で解放される刻印があったとしたら、早い内に消しといた方が、選択肢が広がる可能性が高いのか。
「仮に、+補正抜きの状態での比較で、上位互換が解放されるとして、2つとも消去すれば、《生命神》を残せるのか…、…それだったら執着を1個残した方が良さげかな?」
まあ、仮の話だし、どの道次の淘汰までお預けなので、一先ず目先の話に戻ろう。
「良し、【核細胞保護】を切り捨てる為に、〖超細胞の刻印〗を取ろう」
こうして4回目の淘汰を終え、Lvも200まで上げた。
今回は、特に大きく変わったとこも無いので、検証も特にしない。
いや、パラメータが80%乗算され、約4.8倍に(3回目の時は約2.6倍)なってるので、超強化されてるから、変わってはいるのだが、真新しさは無いんでね。
今回の淘汰は、前述の通り、変化に乏しい為、出来れば5回目をさっさと済ませたいところ。
その為には当然先立つものが要るわけで…。
「結局やる事は変わらないんだよな」
いつもの様に、作物で稼ぐ為に出掛けようとするが、ここでふと考える。
(どうせなら、ペットも連れてった方が、安全だしLv上げにもなるか)
如何にも、森でのLv上げに限界を感じてきたので、ここいらで自らの手で育成するのも試してみるか。
という事で、蓋とペットを全て編入し、良いタイミングで居合わせたベルを徴兵。
2人と大群で、フォレストへ向かった。
現在地はフォレストの西エリアの中心地。
欲を言えば、最果てが良かったのだが、2人じゃペットの安全マージンを考えると、ここら辺が限界となり、妥協する事に。
畑を敷き、ペット達が動き回れる広さを確保し、ペットのケアをベルに丸投げし、俺は畑の維持と作付収穫に専念。
手始めに大根を植えて、耕作地ランクを見る。
「ふむ、[丸々太った上質な艶のある美味しい大根]か」
耕作地ランク70前後って感じか。
これだけあれば、高級作物が、[痩せた]とか[欠けた]、とかにならずに済むだろう。
という事で、メロンやマンゴー、マタンゴや死霊の腰掛等を作付。
どれも、[種苗袋]や鍬のお陰か、[良質]や[太った]が付いたりして、収入に期待が持てる。
コチラが順調に金の元を増やす中。ペットの方も順調に戦っている。
小物とはいえ、クロスイーターは沢山湧いてくるため、上位陣は兎も角、下位陣の子達には、良い経験値となっている様だ。
蓋も、難易度がそれほどでもない+淘汰4回目で俺の[生命]が更に上がった事で、堅さに拍車が掛かり、平均的な損傷は10%にも満たない程度で済んでいる。
後は野となれ山となれ。ベルと蓋の耐久度の限界まで稼ぎ、アースへ引き上げる。
成果は直ぐに金に換えるのではなく、タロウとマッドに加工を頼んだので、後の楽しみとなる。
週末。
今日もペットを連れ、フォレストで金策に勤しむ。
只、連日の金策で、上位陣のLv上げには、フォレストは効率が悪かったので、今回は下から数えて60体までを連れてきている。
蓋も、その分減らして4機だけ引き連れ、残りのペットと蓋は従来通り森に向かわせている。
話は変わって、先日の戦果が金に代わり、ベルが4回目の淘汰を行なって来たという。
「今回は【教会兵】を切って、〖延命の刻印〗を取りました」
〖延命の刻印〗<ヒール>を受けてから三秒間、どれだけダメージを受けようとLPが1残る。
「あれ?結局【教会兵】も切っちゃうんだ」
なんか、今の環境だと、気にする程の反射ダメにならないとかそんな風だったが。
「ええ、結局、ギフトだけじゃ火力が足りなくなりましてね、だったら近接も捨てて支援特化でいこうかと」
「まあ、現状じゃ【教会兵】だけで防御力をぶち抜くのは困難だろうからな」
俺やユナの様な、LPだけが高いなら兎も角、しっかり物理防御を盛った相手だと、ダメージが通るかも怪しいところだ。
「しかし、そうなると自衛力は皆無になるな」
「そうですね…でも、どうせ近いうちに有っても無くてもな事になるでしょうし、慣れるなら早い方が良いでしょう」
「確かにそうだな」
金策中、早速ベルの刻印が威力を発揮。
追い込まれた犬に、<ヒール>を掛け、直後にトレント等の攻撃が集中したが、三秒間だけならLPが必ず1残る上に、ベルのヒール系は持続回復になってる為、そのまま[僅かな施し]【届いた祈り】(+100以上)〖癒しの刻印〗の効果で、秒間20%の回復を受け全快した。
これ、マジで持続回復と相性良すぎでしょ。
どんなに追い込まれてても、ヒールさえ差し込めればワンチャン復活できるって相当だ。
ベルのお陰で、まだまだLvの低い、下位のペット達の安全性が飛躍的に向上。
そして、今回は蓋用の修理キットも沢山用意したので、長時間作業が可能となっている。
蓋の回復は2人で分担しつつ、俺は農作業。ベルはペットの御守。それぞれの仕事を堅実に熟す。
そんな中、一ヶ所に長く留まり過ぎたせいで、滞在する区画の汚染度が100%になってしまい、離れようと思った矢先。ゲートキーパーが出現した。
「うわ、100%と同時に出現条件も満たしちゃったか」
「アレは…[トレントウォーリアー]でしょうか?」
ベルも見るのは初めてなのか、疑問符が付く。
トレントウォーリアー。名前の通りトレントで、右手に巨大なこん棒、左手に蔦の大楯、全身をゴツい瘤で覆われた、厳つい見た目をしている。
「アレの能力は?」
「特殊能力の類は無かった筈です。ただ、その分基礎能力が非常に高いと聞きます」
「いかにも近接しか出来ませんって感じだもんな」
俺らが考察を済ませた頃、向こうもこちらへの攻撃を開始。
早速、円盤がキャトルミューティレーションを仕掛ける。
「おお…ゲートキーパー相手でも一応効くんだな」
ほんの一瞬だが、僅かに宙に浮き、接近を妨害。
その間、天使が矢を射掛け、ガーディアンと魔道人形の魔法が飛んでいく。
戦闘蜂と金蝙蝠も間合いに入り、毒針で刺したり噛み付いたり爆撃したり、敵の注意を上段へと向けさせる。
遅れて虹色マウスが接敵、怪物トレントにFFを適用。早速クロスイーターがトレントにくっつく様に。
更に八岐大蛇、雨観亀、黄龍、スカラベも肉薄し、まもなくペット達も到着する。
「このままイケそうだな」
「そうですね」
俺の言葉に、ヒールを何時でも打てるように待機するベルが同意する。
「本来でしたら、無限に湧いて出るクロスイーターがネックなんでしょうけど、【ドリス】のFFがこれでもかと刺さってますね」
「そうだな、実質、数千vs数百vs1でやってるようなもんだもんな」
あまりに偏った戦力費の三つ巴。決着までの過程は兎も角、結果は見えたも同然だ。
予想通り…いや、FFのお陰で予想以上のペースで怪物トレントのLPが削られていき、今しがた討伐が完了した。
結果論で言えば、圧勝だったが、トレントはかなり強かった。
だが、特殊能力を持たない分、こちらの物量と絡め手に対し非力で、いとも容易く型に嵌めれたのが大きかった。
「さて、先ずはシンボル漁りしちゃおう」
なんせ、制限時間は三十分だ。既にトレントの討伐に十分以上使ってるからな、急がないと。
採取を終え、PAに帰還。
戦利品を仕分けしていると。
「お、[トレント材]じゃねーか!」
通りかかったマサが、戦利品に食いつく。
「さっき、ゲートキーパーのトレントからドロップしたんだ」
「お~、運が良いな、枝とか葉と違って、最初から材木状態の[トレント材]は希少素材だからな」
マサによると、使い道は多岐に渡り、売れば軽く数千万は超えるそうだ。
「素材にして武器防具を作ると、耐久度は上がるし、コストの上昇も抑えられる優等生だ」
「へ~」
耐久度が上がって、コストも上がり難いのは凄いな。
「欲しいのか?」
とマサに聞いたが。
「要らなくはないが、今すぐ必要でもないな」
まあ、そういう事なら売りに出すか…と思ったが。
「なら私が加工するので預けてくれませんか?」
そう、パミルが申し出たので、売り上げから10%を手間賃として払う事で、パミルが加工する事に決まった。
パミルに素材を預け、ペットと蓋を森組に編入。
今度はマサと2人だけで格納庫へ来ている。
格納庫に、危険な宇宙生物が侵入したとの事で、その討伐依頼を受けてきたのだ。
「そうだ、戦闘前に言っておくが、俺も4回目の淘汰を終えたからな」
「おお、何を取ったんだ?」
「フフフ…今回も【圧縮波】を消去し、遂に範囲攻撃が復活したぜ。刻印は〖濃縮波の刻印〗を取得した」
〖濃縮波の刻印〗武器のリーチが10mになる。刻印取得によってリーチが縮んだ場合、縮んだ分怯ませ易くなる。
「ほ~、リーチが強制的に10mになる代わりに、縮んだ分怯ませ易くなるのか。範囲も程よいし、良いとこ取りで超強い刻印だな」
「だろう?これなら、ある程度リスクの管理もし易いし、売りの衝撃力も補えるしで。最高だよ」
マサの最新情報を聞き終えたところで、あつらえ向きに討伐対象が出現。
見た目は、蛸の頭部が脳になったような感じで、松果体の代わりに巨大な眼球の有る、SAN値の削られるビジュアルをしている。勿論巨体だ。
こいつに見つめられ続けると、身体が動かなくなってしまう為、とっとこ圧殺する。
「そらよ!!」
円盤が拘束し、天使がチクチク削る中、マサもトマホークを投げつけ加勢。
大量の使い魔で視線を遮っている為、2人で安全に近づき、マサがブチかます。
すると、リーチが縮んだ分の補正が凄い様で、一撃で宇宙生物がひっくり返ってしまう。
この時露出している、蛸で言えば口に相当する場所がこいつの弱点の様で、マサがそこへ斬撃をお見舞いすると、絶叫を上げ消滅していった。
マサの攻撃で、弱点を簡単に露出させられると判り、ドンドン宇宙生物を狩っていく。
試しに、マサに攻撃を控えて貰い、使い魔のみでやってみると、えらい強かった宇宙生物。
今度は畑も駆使すると、畑で浮いた分小型の使い魔や案山子が弱点を突き、早々に撃破出来た。
「俺やマサみたいに、弱点を露出させる手段が有れば、カモ同然だな」
但し、そうじゃなければ、拘束の魔眼と強くて堅い上に、手数も多い強敵と化す。
ま、今回はそういう苦戦するケースではないので、楽々と狩らせてもらう。
2人で脳みそタコをしゃぶり尽くし、無事依頼を完了。
久々に、能力が噛み合って、無双気分を味わえた気がする。
ちなみに、今回の依頼。俺らが一番の功労者となり、2人で5千万も貰えた。
更に蛸の素材も有るので、相当良い稼ぎとなった。
一週間後。
パミルに預けたトレント材の売り上げや、蛸の素材が捌け、更にコツコツと稼いだお陰で、5回目の淘汰が見えてきた。
とはいえ、幾らLv上げ費用が安い淘汰とはいえ、5回目ともなれば総額は10億。そう簡単には貯めれる筈もない。
今日も銭っこ稼ぎに精を出すとする。
「お待たせ」
俺に遅れ、ユキ達も4回目の淘汰を終え、今から実戦での検証を行いつつ金策をする。
場所は無難にバグスターにした。
「それじゃ私からね。私は今回も【コメット】を消去したわ」
「ふむ、確か吸収対策で、属性の複合は避けたいんだっけ?」
「ええ」
「それって、対応力も落ちるけど大丈夫なのか?」
「使える属性が減るからって事ね?その点は考慮しているわ。と言う事で、今回私が取得した刻印は〖雨乞いの刻印〗よ」
〖雨乞いの刻印〗毎分雨雲を発生させる。
「【コメット】を消して、魔法に物理と火と氷が乗らなくなったけど、これのお陰で水属性が扱えるようになったわ」
「そうか、氷は<アイススピア>系、火は<ファイアーオーブ>系で出せるから、問題無いのか…ん?でも〖魔導士の刻印〗だっけ?アレでスピアとオーブが同時に出るから、どの道混合属性になってねーか?」
「…そうね、だからこそ、水属性の、しかもちゃんと独立したオート魔法を導入したのよ」
「あ、キチンと魔法扱いなのね」
「そこは抜かりないわ」
「でも、毎分強制発動って、ちょっと使い辛いな」
「まあ、任意で発動する手間が掛からないとも言えるから」
そこは好みの差か。
ただ、こうして説明を受けてる間も、ユキの真上に雨雲が発生して、局地的などしゃ降りになってるのを見ると、何とも言えない気分になる。
ちなみに持続は一分間だ。なので実質雨が降り続ける事になる。
そして、肝心な威力の程を見てみる。
「来たわね、…へ~、ダメージの頻度は[ダークニンバス]と全く一緒なのね、というか、この雨雲が本家で[ダークニンバス]が亜種なのかな?」
肝心なダメージも、相性にも依るだろうが、中々出ている感じで、上手く活用できれば火力の大幅アップに繋がりそうだ。
「そんじゃ、次はアコね」
「了解。今回は【重装甲】を消去したわ、絶対ないとは言わないけど、カウンターを貰う事なんてまず無いからね」
「そうだな、天馬に乗ってるから、貰うとしても馬だけだもんな」
「そして選んだ刻印は〖槍矢の刻印〗よ」
〖槍矢の刻印〗槍を矢として扱い、射れるようになる。
「弾代が嵩むのが玉に瑕だけど、破壊力は折り紙付きよ」
そりゃ、槍が矢と同じ様に飛んでくなら、単純な運動エネルギーだけでも桁違いだろうよ。
実際にどんな感じなのか試すべく、寄って来た蟲に試射する。
「どれどれ…構えた感じは全く違和感ないわね」
傍から見ると、弓に不釣り合いな程巨大な矢を番えてる様に見えるから、凄い不自然なんだが…。
「それじゃいくわ」
番えた槍を射ると、矢と大差ない挙動で飛んでいき、蟲に突き刺さる。
「ウハッ!一撃で8割も減ったわ、流石槍ね」
続けて二射目を放ち、蟲に止めを刺した。
「うーん、やっぱ弾代を考えると、使い分ける必要が有るわね」
「まあ、どう考えても単価が違い過ぎるもんな」
「私の出番ね。今回は《吸血鬼信者》を消去して、〖恒星の刻印〗を取得したわ」
〖恒星の刻印〗敵を引き寄せる。時間経過と共に範囲と効果が上昇。十分でリセットされる。
論じるにも、先ずは効果のほどを見る事に。
そして細かく検証する事に時間。
「…長い事付き合わせて悪いわね」
検証の結果、0分~二分は効果の確認が出来ない程、狭く低かった。要は計測不能。
二分~四分。少しずつ実感出来るようになり、四分頃には、10m以内で毎秒1㎝位かな?
以降どんどん効果が目に見えてきて、リセット直前…最後の十秒位には、200m以内で毎秒30㎝位引き寄せていた。
「成程…五分超えるまでの使えなさは如何にもならないわね」
「その分リセット直前は頭おかしいレベルだけどな…」
200mも離れてるのに、毎秒30㎝も引き寄せられるとか恐怖でしかない。
これなら、〖重力の刻印〗と併せて、存分に敵を掻き回せるだろう。
次は少し間が空くかもしれません。




