第五十八話
一旦、方針を自分のLv上げに切り替え、金策の為の行動を優先。
丁度、クラフトを切り上げたマッドとパーティーを組んで、出撃する。
「…そういや、俺の淘汰4回目の話はまだだったな」
「そういえばそうだな」
という事で、マッドのビルドの話へ移行。
「4回目は…というか4回目も【神獣の加護】を消去して、〖神獣の刻印〗を取得した」
【神獣の加護】STAゲージが二本追加される。
〖神獣の刻印〗消費STAはそのままに、全てのSTA補正が1.2倍になる。
「おお、これまたシンプルに強い刻印だな」
「効果対象が広いのが良いよな…」
攻撃、防御、回避、ダッシュ、ジャンプ、特定のアイテムの使用等、様々なシーンでSTAを消耗するからな。
例えば、投擲なら威力や飛距離に速度と、STA補正でかなりの影響を受けるので、マッドには一層恩恵の大きい刻印だろう。
「俺は【塔に住まうスライム】の為に、[速度]もそこそこ覚醒させてたからな、ダッシュの補正アップも良い感じだぜ」
と言い、目の前でダッシュを披露するマッドの移動速度は、確かに凄まじい事になっている。
補正込みで、俺の2.4倍位か?とにかく速すぎる。
更に、実戦ではどうかと、フォレストに跳んで、北エリアの安全地帯から、戦場へと爆薬を放る。
STA補正で飛距離が伸びた爆薬がかなり遠くへ飛び、起爆。
肩書で大幅に爆発範囲が広くなっていて、更にSTA補正で範囲と威力が上乗せされ、そこら中に潜んでいた植物が死滅。
「ヒヒヒ…美味し過ぎるぜ…」
「これズルくね?」
「何を申す、これも色々と犠牲にした結果だ」
まあ、確かに多大な犠牲を払った上に、消耗品込みの戦果だから、ズルくは無いんだけど…。
「やっぱり安地からこれはズルい」
「まあ、お手軽なのは認めるがな…ヒヒ」
そんなやり取りをしつつ、俺が囮でクロスイーターを筆頭に色々と釣って、マッドが掃討。
これを繰り返し、短時間で驚くほどの戦果を叩き出す。
「とまあ、金に糸目を付けなければ、こういう事も出来るんだぜ」
「…爆薬代でトータルお幾ら?」
「…お値段は爽やかとなっております」
…まあ、高かったんだろうな…。
ごめんよ、ズルいなんて言って。
「まあ、実際はあんなポンポンと切り札級の爆薬は使わんけどな」
「だろうな」
改めて、安い爆薬や〖導火線の刻印〗で設置出来る、無料の爆発物を駆使し、植物狩りをする。
「やっぱ、爆薬の質が落ちれば効率もかなり落ちるのな」
「…それは仕方ないだろう、どうしても全力は出費が嵩むからな。こうやって遣り繰りする事も大事なんだ」
それでも、導火線の爆発を3発ほど当ててやれば、クロスイーター位なら纏めて焼き払えるので、効率は良い方ではある。
やっぱ、雑に広範囲を薙ぎ払えるのは強いぜ。
あと、今のところはだが、消耗品のダメージを反射する敵やスキル等が存在しないのも、追い風になっているな。
時々しゃしゃって来る大物を、レインボーマンバで毒殺しつつ、金目の素材を掻き集める。
この時、マンバのLvが6になり、更に火力が上昇。
「Lv6か…これだけステータスが高いなら、イケるか?」
元々、ペット状態のLv1でも、ここなら十分通用するスペックだったが、Lvが6にもなると捨て駒にでもしない限りは、単独で動かしても平気な筈だ。
「良し、あまり離れすぎなければ、好きに動いて良いぞ」
マンバをそっと地面に降ろし、半径20m程で遊撃をさせてみる。
「さて、どう活躍してくれるかな?」
マンバを自由にさせ、数分。
「おお~、Lv6じゃ回避スキルなんかも碌に持ってない筈なのに、小さすぎて全然被弾しないな」
「…そりゃな…いくら現実のグリーンマンバよりも大きいとはいえ、全長40㎝程度の細い蛇に、どう当てていけと…」
激戦地で、クロスイーターの集中砲火を浴びるレインボーマンバ。
だが、身体が小さく細すぎる為、吸い付こうにも地面や草木が邪魔をし、当たってもLP50億越えには無意味ときた。
そして、反撃で噛み付きを喰らえば、秒間100万超えの軽減出来ない毒ダメージを受けるという、相手からしたら理不尽極まりない状況だ。
尤も、最初に述べた通り、マンバは非常に小さい為、相手が密着して来ない限りは、噛み付きをヒットさせる事さえ困難なので、この状況は稀とも言える。
「しかし、あれだけ小型で、常軌を逸した堅さとエグイ固定ダメージは、牽制としては最強クラスだな」
「ヒヒ…分かってたら、見つけた瞬間から、絶対に無視できないからな」
足元に注意を剥ければ、鼠、使い魔のマンバ4体、レインボーマンバを牽制出来るが、中段上段が疎かになるからな。
「あ、状態異常を喰らって、味方の使い魔を攻撃し出したな」
そういや、使い魔は380万超えの[観察]で、状態異常から守られてるけど、ペットのレインボーマンバには適応されないんだっけ。
しかもLv6と低いから、幾ら強力な種族でも、スキル無しだとアッサリと罹っちゃうのね。
「まあ、被害に遭うのは使い魔だし、問題無いっちゃ無いが、留意しとく事柄だな」
寧ろ、このタイミングで気づけて良かったぜ。
飼い主にスキルが無く、低Lvのペットが状態異常に弱い問題が発覚しつつも、ゴリ押しで植物共を毒殺しまくるレインボーマンバ。
やはり、手元を離れた方が、接敵率は高い様で、討伐数は良い感じに稼げている。
クロスイーターは小物だが、それでも多少は糧になるだろうし、ちょこちょこと大物も仕留めてるので、もしかしたらLv7は近いかもしれない。
さて、時間も時間なので、今日は切り上げようか。
今日も金策とマンバのLv上げをと、ログイン。
一緒にログインしたアコ、丁度居た仲良しトリオと合流。
トリオも4回目の淘汰を完了済みなので、情報をアップデートする為、聞き込みを開始。
「それじゃ、ラークからお願い」
「分かりました。俺が今回消去したのは【強靭な肺】ですね。理由はパミルさんも取った〖地竜の刻印〗目当てです。ただ[鉱夫]の覚醒数が足りないのか、消して直ぐには選択肢に出なかったので、今回は〖知識の刻印〗を取得しました」
【強靭な肺】鉱物系の状態異常を無効化。
〖知識の刻印〗一般スキルの固定値上昇効果を1加算する。
「えーっと、ちゃんと〖地竜の刻印〗は出るんだよな?」
「ええ、ネットで探しましたが、覚醒数が足りないと即座には出ないというだけで、次かそのまた次位で、選択肢に出るみたいですよ」
「ラークの[鉱夫]の覚醒数って…」
「1回ですね」
へー、覚醒数で出現へのタイムラグがあったりするのか。
ま、中には覚醒数関係なく、消したその回は出ないのも数多く在る様だがな。
「では、改めて。一般スキルの固定値上昇効果を1加算は相当だよな?」
「ですね。<LP上昇>が元が1なんで、実質初期値の倍化、という事になりますね」
「そこに、各種補正が掛かるんだもんな、凶悪な刻印だ」
元が1上昇なら倍、0.5なら3倍だもんな…。
続いてワイド。
「俺は《吸血狼》を消去して、〖飛蝗の刻印〗を取得しました」
《吸血狼》[獣人]と[吸血鬼]の覚醒数を20増やす。
〖飛蝗の刻印〗ジャンプ中、かなり動けるようになり、飛距離も伸びる。
「ジャンプ中の動きが良くなるって事か?」
「ええ、見て下さい」
と、ジャンプしたワイドが、上昇しながらスーッと前に行ったと思ったら、そのまま戻ってきて円を描きながら最高高度に到達し、自由落下中も円を描いたり四角を描きながら着地した。
「物理法則を無視した動きが出来るのね」
空中で、ほぼ地上と同等に動けるのは、回避を考えると相当強力だ。
最後はショー。
「俺は[体力]を消して、〖温暖化の刻印〗を取得しました」
[体力]HPゲージを追加。[体力]の値がそのままHPに
〖温暖化の刻印〗炎熱系のダメージを吸収。
「ほ~、氷水メタの次は炎熱メタか」
「これで、[魔導士]由来の魔法には、かなり強気に向かって行けますね」
「絶対ではないのが、気を付けなきゃならないところだな」
「ですね。そもそも<アイススピア>には物理も含まれてますし、ギフトで属性を追加されてると、結局は避けなければいけませんしね」
まあ、それでも素の<アイススピア><ファイアオーブ>を、それぞれの刻印でほぼ無力化出来る時点で非常に強力だ。
「さて、実際に戦ってどうなのかを見させてもらおうか」
ショーの刻印を見る為に、今回は地底湖でアッシーを相手にする。
こいつ等の中には、冷気が主体のブレスを吐くのも居るからな。
ボスアッシーの部屋は、今の俺らなら問題ないが、盛況で落ち着いた検証も出来ないので、その手前のアッシーの巣で戦う。
「ははは、流石に今のLvだと、テコ入れ後でも大して痛くないですね」
ラークが、先ずは自分の番だと前に出て、ブレスの狙撃を受けるが、まるで動じていない。
まあ、初めてここでアッシーと遭遇した時は、まだ覚醒1回目とかだっけ?そりゃ、その100倍以上は強くなってるんだから、当然と言えば当然だよな。
そのまま盾でブレスを防ぎながら、お散歩気分でアッシーを切り伏せて戻って来るラーク。
かつての風格が、無残にも崩れ去るアッシーであった。
ちなみに、足場を用意する為、俺も後ろから畑を敷きながら追従していた。
続いてワイドが前に出る。
ラークは、その圧倒的なまでの基礎のスペックの高さがあったからこそ、正面からゴリ押して見せたが、ワイドはどう出る?
「それじゃ、行ってきます」
宣言し、ピョンピョンと跳びながらアッシーに迫る。
対して、アッシーもブレスの照射で応戦するが、盾を構えつつも、宙で自在に動き回るワイドを、いくら高制度とはいえ、ブレスで捉え続けるのは困難な様で、精々カス当たりがいいとこで、ワイドの接近を阻止出来ずにいる。
そのまま接敵すると、ワイドはアッシーを踏み台にしつつ、上段から斬撃と踏みつけを浴びせ続け、下段はライカンとヴァンパイアが容赦なく攻め立て、アッシーを追い詰める。
結局、止めは天使が掻っ攫ってしまったが、まあ、九割方ワイドが削ったし、十分なデータは取れた。
最後はショーで、やっと冷気ブレスを吐く個体を見つけたので、そいつに迫る。
「ハッハー!!」
革鎧に革の服に、石斧を持って、ブレスを浴びて気持ちよさそうにしている姿は、紛う事なき変態。
そんな変態が、ブレスの中を悠々と進むのを、アッシーはどんな気持ちで見てるんだろうか…。
程なくして、アッシーに肉薄し、石斧でミンチにして、戦闘は終了となった。
3人共、流石に物足りなかったようで、今度はボス部屋でアッシーを狩る事に。
当然、今度は1人ずつではなく、全員で戦う。
ボスアッシーは、夥しい数のプレイヤーと戦ってる為、端で摘まみ食いを企む俺らには手出し出来ない筈だ。
ボス部屋は、基本足場がないので、水上に鍬を突き入れ、田んぼにしてから進む。
ある程度進んだところで、アッシー数体から攻撃を受ける。
何故か、全てがアコに注がれるが、ペガサスが盾になり、ペガサスが蒸発しても、《ゴールド免許Lv2》と、【コメディームーブ】で宙に留まりつつ、矢を射り〖鳴弦の刻印〗で極限までダメージを抑えるアコ。
更に、〖鳴弦の刻印〗の為に射った槍が、アッシーに刺さり、〖返し矢の刻印〗で追加でダメージを与え続けている。
そしてペガサスが復活し、アコがペガサスに着地。
その頃には、水上を行く俺らも狙われ始め、豚が炙られ、ラークが防ぎ。ワイドが引きつけながら、ドンドン距離を詰めていく。
ある程度距離が縮まった時点で、ワイドが動く。
「とう!!」
掛け声と共に飛翔し、アッシーの頭部を踏みに行く。
当然、向こうも黙って観てるわけもなく、複数のブレスに晒されるワイドだが、先程見せた空中制動で被弾を最小限に抑え、被弾しても盾でダメージを軽減し、見事に最前列のアッシーを踏んで見せる。
「凄いな、動きもだが【太陽を背に】と、空中で動ける事との相性がこれ程とは…」
ただでさえ、空中でスイ―ッと動いて的を絞らせないのに、姿も霞がちとくれば、そりゃあ碌に狙いも付けられんわな。
俺らに敵意を向けるアッシーは5体居るが、それらの集中砲火をものともせず、空中戦を仕掛ける様は、一つの極地に思える。
「さて、ワイドやアコさんだけに良い恰好はさせられませんね!!」
「応!!」
アコとワイドがアッシーのタゲを引き付けてる内に、畑がアッシーに接触。
一気に仕留めるべく、ラークとワイドが前に出る。
「制約は無し、吸収等も無し、行くぞ!!」
区画に制約は無く、アッシーに有利が無い事を看破し、ラークが直剣で切りつける。
「グガアアアア!!」
近接の非常に重い、一撃らしい一撃を受けアッシーが悲鳴を上げる。
「さあ、逃げられると面倒だ、一気に仕留める!!」
ショーも肉薄し、《蛮勇の王Lv2》《蛮勇の覇王Lv1》で、イカレたレベルで基礎ダメージが上がっている、石斧の一撃を叩き込む。
「グウウウガアッ!!」
この一撃だけでもそれなりの被害が出ているが、更に〖火熾しの刻印〗〖漫画星の刻印〗により、火柱とお星様が発生し、追加で大ダメージを与える。
当然、2人とも一撃で終わる筈もなく、続けて二撃目三撃目と入れ、アコの痛過ぎる狙撃と追加ダメージ、ワイドの頭部への執拗な攻撃に耐えられるわけもなく、1体目のアッシーを逃走もさせず討伐。
ホント、皆強くなったな。
トリオと、アコが午後出勤の為にログアウト。
代わりに、健康診断を終えた双子がログイン。
「お疲れさん」
午前丸々検査で、ぐったりしてた2人を労う。
「ありがと」
「しんどかったわ…でも、今回からは1人じゃないのが救いだわ」
「そうね、少なくとも結果待ちの間もお喋りで気が紛れたわね」
と、軽くやり取りし、3人でパーティーを組んだ。
「で?何処に行くの?」
「そうだな、こいつのLv上げには何処がいいと思う?」
レインボーマンバを手に乗せながら、ユキの問いに質問で返す。
「え?そうね…ユナは何処が良いと思う?」
「丸投げ!?そうね…昨日の時点で狭い範囲だけど、自由に戦わせてたのよね?」
「ああ」
「なら、敵から距離を詰めて来る場所が理想よね」
「まあ、バグスターかフォレストが無難か」
流石に、Lv6だと、砂漠でワームに当てるのは、少し不安だし、この二カ所でもう少し鍛えてからにするか。
今回は、経験値単価を優先し、バグスターを選択。
そして、最果てエリアに向かい、何故か復活してる鱗粉の嵐に突入する。
「ゴホッ…相変わらず息苦しいわね」
「いつの間にボスが復活したんだ?」
「確か、ここ数日で、こっそりと復活させてみたと、寺門さんが言ってたわ」
と、ユナからの情報が。
「でも、そうなるとここに建築されたベースは?」
「その点だけど、そもそも各惑星のボスを強化復活させてくれ、っていうユーザーの声に、開発が「ベースが消えるけど良いの?」て回答して、かなりの数のユーザーが構わんと答えたから、実現したそうよ」
「へ~、じゃあ、フォレストとかアニマル、鬼ヶ島のボスも復活してる、又は近いうちに復活するのか」
「そうみたいね」
ほうほう、それは楽しみだ。
なんせ、フォレストやアニマルのボスとか、どんなのだったか知らないからね。
他にかまけてる内に討伐されて、戦ってないんだもん。
そういう意味では、救済措置として、有難いと感謝するべきだろうな。
嵐内部で畑を敷き、3人で寄り合って縮こまりながら戦う。
畑にランタン10個で姿勢を低くすると、意外と鱗粉中でも耐えられるのだ。
嵐の中、襲ってくる蟻や蜘蛛を迎え撃ち、時折近くを通る弩級百足をやり過ごす。
「相変わらず巨大過ぎるな」
以前のが、全長幾つかは覚えて無いが、嵐内部に居る4体の全長は、軽く2㎞以上は有りそうだ。
…なんで4体も居るんだろうね。
多分、どうせ復活させるなら、ダンジョンで斃された分も含めた方が、ユーザーも喜ぶだろう。なんて考えたに違いない。
なんにせよ、以前より一層、百足に邪魔され易いので、注意が必要だ。
さて、肝心なマンバのLv上げの方だが、微妙言わざるを得ない。
確かに、個々の経験値は多いかもしれんが、巨大で俊敏な蟲相手に、噛み付くのが大変そうなんだ。
使い魔のマンバは、スキルの効果で滅茶苦茶速く、飛び道具でやられさえしなければ、接敵自体は
難なくこなすが、ペットのマンバはそうはいかない。
「やっぱ、起伏の激しい蟲より、取り付きやすいトレントの方がレインボーマンバには良いか」
この分なら、フォレストの方が、ずっと効率が良さそうだな。
改めてフォレストへ跳び、頑張って最果てへ向かう。
道中、3人でも少々苦戦したが、速足で駆け抜けたので、大した被害もないし、時間も掛かっていない。
ただ、最果てではあまり奥に行かない様、心掛けなければな。
最果てに着き、早速陣地の構築を開始。
畑を敷き、ユキとユナを守りつつ、範囲を広める。
ある程度、場が整った時点でマンバを解き放つ。
柵や鎧で入り組んだ畑を、味方判定ですり抜け敵に近づく。
柵を踏みつぶそうと躍起になっているトレントによじ登り、カプカプと執拗に毒を注入。
流石に、テコ入れ後の最果てエリアの大物だけあって、そう簡単には力尽きてはくれないが、それでも凄い勢いで削れていくLPは、見ていて爽快感がある。
これで、Lvが簡単に上がるか、費用が安ければなぁ…。
ブラキオサウルス、アスペルマンバ、墓守、こいつ等も含め、超強力なペットはLvを1上げるのに軽く数千万掛かるのだから、金がいくらあっても足りない。
俺に出来るのは、こうやってコツコツと経験値を稼がせてやる位だ。
マンバのLPが減ったら回収し、タブレットを与えては解き放つ。
やはり、大物の合間のクロスイーターが効いてるのか、ここでLv7に。
増々火力が増し、ドンドン経験値を稼いでいく。
暫らく狩りをしていると、急に豚が破裂する。
何事かと周囲を見回すと、大木の陰に気配があったので、一気に近づき鍬を振り下ろす。
「チィ!!気付かれたか!!」
ぐぐもった変声機越しの様な声で、毒づく何か。
「こんなとこで悪党かよ…」
コチラに気付かれた事で、急いで距離を取って身を隠す悪党。
それとなくマンバを回収し、ユキとユナを連れ、撤退する。
何度もしつこく絡んでくる悪党を捌きつつ、無事にホームへ帰還。
とんだ横槍が入ったが、まあ十分稼いだ後だから、良しとしよう。
「そりゃ、単純なPvPじゃなくて、PKをしたいやつも出て来るわな」
現状、PvPしたけりゃ傍の森、これがなんとなくの認識だったが、中には嫌がらせに全力を注ぐ人種も居るのだ。
「まあ、やってる側は緊張感あって楽しいかもしれないけど、水を差される方は堪ったものじゃないわね」
「そうね、ゲームのスパイスとはいえ、状況次第では一方的に悪党が勝てるのはヤバいわね」
さっきのも、相手が豚の判定の広さを甘く見ていたからこそ、奇襲を防げたわけで、油断が無ければかなり危なかった。
しかし、PKを繰り返し過ぎると、ゲームプレイに洒落にならない程ほハンデが科せられるのにようやるわ。なんて思ってたら。
「あ、もしかして原因はこれかも」
ユキが、運営のインフォメーションを見るよう促すので、俺とユナも目を通す。
「何々…単独で複数のプレイヤーを撃破して、ライセンス『マンハンター』を取ろう!!とな」
「ああ、どう考えてもこれが原因ね」
どうやら、新しいライセンス『マンハンター』が解禁され、運営が宣伝してる事が原因の様だ。
また、どうでもいいような妙なタイミングで、と思うが仕様がない。
運営が決めた事は素直に受け入れる。ごねる事は否定しないが、大概は成就しないんだから、何処かで折り合いつけて諦めた方が建設的だ。
ま、PKが増えるのは迷惑ではあるが、それなりに付き合えばいいのさ。
「さーて、胃袋は満たされ、身体もリフレッシュ。いざ」
至福のマッサージチェアへと誘われるが、両の腕を両サイドから掴まれ、強制的にPCの前に座らされる。
「いや、勘弁してくれ。明日は後輩と取引先に、納品の遅れをせっつきに行くんだから、早く寝たいんだよ」
「「えー」」
「えーって言われても」
こちとら初老が見えてきたおっさんだぞ。足を動かす前後には十分な休息が欲しいんだ。
ごねる2人の隙を突き、マッサージチェアーオン!!もう梃子でも動かないぞ!!
「もう、仕方ないわね」
「ぴちぴちの十代後半女子の誘いを断るなんて」
小娘共がなんか囀ってるが、もう聞こえな…い…。
「はっ!?」
「あ、起きた」
「ん…亜紀か」
チラッと周囲を見ると、三時間ほど寝てた様で、いつの間にか、ウィスキーときゅうりの糠漬けと燻製味玉で、一杯やってる亜紀。
「旨そうだな、俺にも1本寄越せ」
冷蔵庫からピルスナーを取り出し、キュウリを肴に軽く一杯。
「あー、気持ち良かったわ」
「そういうとこは、完全におっさんよね」
「いや、名実ともにおっさんだからな」
トシハトリタカナイヨー。
「んーっ!!ふうーー。天辺までだ有るし、少しだけやるか、亜紀は?」
「私はパス。結構飲んじゃったからね」
ちゃぶ台に、封を切ったばかりの500mℓのウィスキーが3/5程の状態で乗っている。
「…量は兎も角として…リッチだな」
「偶にはね」
流石高給取り。ピンキリとはいえ、ウィスキーは高いからな~。
そんなほろ酔いの高給取りさんを背に、俺もデジタルの世界へと飛び込んだ。
「こんばんは~」
「こんばんはテツさん」
丁度ベルが居たので、挨拶。
レインボーマンバも、シュルシュルと足を登ってきてスタンバイ。
「今日はログインが遅かったですね」
「そうね、ちょっと寝てから呑んでだからな。今日は一時間半程で落ちるよ」
その後、ベルは出撃し、俺もマンバのLv上げに向かう。
「時間も無いし、砂漠でちょいちょいっとやって良しにしよう」
ダッシュで砂漠を駆け抜け、ワームの成体の縄張りに到着。
取り敢えず、畑を広げマンバを解き放ち、畑の維持に努める。
畑を下部から突き破ったワームを、再度敷設した畑で打ち上げ、マンバの餌にしていく。
時折、マンバがワームに喰われるが、身体が小さすぎて、丸呑みにされても体内で動けるらしく、直ぐに吐き出されるので、回復だけは適宜怠らなければ安心だ。最初はヒヤリとしたけどね。
マンバを自由にさせてる分、俺の行動にも選択肢が増えてるので、全力でマンバの行動をサポート。
在庫処理として、シルクに押し付けられた投網を、ここぞとばかりに使いまくる。
合間に鍬を振るい、畑を維持しつつ、投網でワームの行動を阻害。
その成果は、マンバの噛み付き成功回数という形で現れ、効率は依然とは段違いに良くなった。
短めの時間だったが、十分な経験値を稼げ、マンバのLvを8に上げる事が出来、充実感の中ログアウトする事が出来た。
翌昼。
「ただいま」
「哲也君お帰りなさい」
「宮原さん、昼飯在ります?」
「有るわよ、私は買い物に行って来るから自分で温めてね」
買い出しに行く宮原さんを見送り、昼飯を頂く。
「あ、哲兄おかえり」
「お疲れ様」
「ああ、ただいま」
丁度、勉強を終えた雪乃と雪奈と別宅へ移動。
「で、速攻マッサージチェアの住人は流石ね…」
呆れ気味雪乃が呟く。
「お前らはまだ若いから良いが、労働後の乳酸分解は大事だぞ?」
宮原さん特製の紫蘇ジュースを飲みながら、全身もみほぐしコースを堪能。
「ふーん…どれどれ…結構酸っぱいわね。でもイケるわ」
雪奈も紫蘇ジュースを飲み、強い酸味に顔を顰めるが、イケなくはないらしい。
「まあ、そんなわけだから少し寝るわ」
「分かったわ」
仕事後の昼食と昼寝。これもまた、贅沢の極地かもしれないな。
んで、一時間後。
良い感じで疲れも和らぎ、いざログイン。
先にログインしてた2人もPAに戻り、出迎えてくれる。
「今日もその子のLv上げをするのね?」
「昨日Lv8になったって言ってたわね。それならもっと厳しい所が良いのかしら?」
3人で場所選びをし、ちょっと危険を冒して砂漠の中心地へ向かう事に。
ホームから出て只管南下し、ワームの幼生体、成体の住処を抜け、変異体、又は完全体の住処に到達。
酸で対空したり、外骨格を纏ったり、飛行したりと、変化に富んだ個性的なワームがてんこ盛りだ。
「おお、ここまで来ると、結構人が多いんだな」
成体の住処だと、居ても精々数十人程だったが、ここには軽く三桁を超えるプレイヤーが、各々ワームと死闘を繰り広げている。
「流石、完全体と変異体だ…昨今のプレイヤー相手に、あの暴威の振るいっぷりはヤバい」
完全体の、巨体に物を言わした体当たりからの磨り潰し、頭上からの攻撃に対し正確無比でありながら面で制圧する超射程の酸幕。
外骨格を持ちながら、分厚い皮膚と皮下脂肪に守られた、凶悪な防御力を持つ、変異体。
羽化し、蟷螂の様な鎌にセミの様な翅をもち、頭上から鋭い斬撃を浴びせてくる変異体。
他にも、敏捷性を犠牲に粘液の守りを得た個体や、放電する個体も居たりして、まだまだ全種類は網羅出来ていない。
そんな強敵の中で、俺らが狙うのは、正統派の完全体だ。
こいつなら、苦戦は必至だが、いつものパターンの延長で戦える筈なので、一番の狙い目だろう。
「良し、完全体を釣れたぞ!!」
縄張りの境界を、行ったり来たりし、畑や豚を餌に漸く目当ての個体を誘い出せた。
一旦、囮のユナと入れ違い、ワームがユナにかぶり付いたところで足元に畑をお見舞い。
【威圧の魔眼】等の能力のせいで、STAが枯渇したのか、ペッと吐き出されるユナ。
絵的には、結構ショッキングな光景なのだが、喰われた本人が不快そうにしてるだけで、LP的には余裕があるので、まあ良いだろう。
そして、相変わらず範囲内にユナが居て、STAは枯渇し、暴れようにも畑に打ち上げられてるので、出来る事も限られるという、俎板の鯉状態のワーム。
それでも、凄まじいウェイトとフレームから繰り出されるパワーは凄まじく、ただの身動ぎすら破壊力を伴い、畑を損壊させる。
「ユキは周囲を警戒がてら削りを、ユナはワームの近くで寝ててくれ」
俺は少し離れた位置から鍬を振り続け、解き放ったマンバの雄姿を見守る。
畑の上で、使い魔に痛めつけられ、のたうち回るワームに、遅ればせながらレインボーマンバが肉薄。
何度もワームの身動ぎに振り落とされ、鑢も真っ青な皮膚で削られるが、果敢に毒を打ち込みに行くマンバ。
Lvが上がり、秒間ダメージは144万に増え、持続も伸びた毒の重複は凶悪で、完全体のワームのLPが目に見えて減っていく。
其処へ、ユキが適宜削りの魔法を叩き込み、マンバの止めをサポート。
それから程なくして、マンバが1体目の完全体を仕留めた。
上手くハマれば、1体辺り10分も掛からずに完全体を仕留められ、非常に効率がいい。
マンバのLvが低い内は、止めを譲るのに苦心したが、今では戦力としても申し分なく、この面子ならば、多少手を抜くだけで高確率で止めを譲れるのは、ストレスフリーで良い。
ただ、完全体ばかり狙ってると、遭遇率の面で多少非効率な感が否めないので、変異体も相手にしてみる事に。
取り敢えず、マンバを回収し、ピョンピョン跳びながら変異体に近づく。
すると、自身のテリトリーを侵されたと怒り狂った変異体が、俺に向かって一直線に襲ってくる。
これをジャンプで躱し、試しに変異体の背中にマンバを投下。
当然、激しく暴れられるが、飛行出来るよう進化した代償か、身動ぎのパワーも落ちてるようで、マンバを振り落とせずに、そのまま空へ逃亡を図るも、噛み付かれ続けた結果、空中で中毒死した。
「キャッチ」
落ちて来たマンバを回収し、次の得物を探す。
そして、飛行型を何体も相手にし、非常に美味しい相手だと判明。
「飛行タイプは、投げたマンバが良いとこに当たれば、一撃なのは美味しいな」
釣ってきて、最初の突撃を躱すなり喰らうなりして、飛行型に隙を晒させ、そこへマンバを放る。
マンバが振り落とされない所に当てれれば、そのまま試合終了。
振り落とされても、以降攻めてこないとかそういう事態にはならないので、実質チャンスは無限にあるので、時間は掛かっても確実に削り切れるのもグッドだ。
飛行型が、しゃぶれる相手だと判ったので、今度は別の変異体を狙おうか。
「うん、完全体、外骨格、飛行、この3タイプが狙い目だな」
甲殻は、畑の上でも自由が利き、身動ぎが強力だが、堅牢な装甲の割にLPが低めに設定されてる分、マンバを張り付かせさえすれば楽勝。
それ以外の変異体は、狩れない事は無いが、効率が悪いので、スルーする事にした。
そして、検証の間にマンバのLvが9に上がり、更に討伐速度が上がり、前述の3タイプをガンガン狩っていく。
「良いね、目標のLv10になる頃には、5回目の淘汰にも入れそうだ。そしたらもっとLvを上げて…」
自己強化が捗るこの感じ…久々だがやはり良いものだ。
さて、狙いも定まった事だし、一層気合を入れてワームを狩るとするか。
「やった!!遂にレインボーマンバのLvが10になったぞ!!」
「おめでとう」
「やったわね」
「なんだよ、あんまり嬉しそうじゃないな?」
「いやまあ…」
「絶妙な加減で他人事だし…」
…確かに、俺が強くなれば、皆の益になるとはいえ、他人事と言えば他人事だもんな。
「まあ、それは良いとして、素材も堪ったし、一旦戻るか」
3人でPAに戻り、大量のワームの素材をチェストに突っ込む。
数日もすれば、職人衆が金目の物に変えてくれるだろう。
そろそろ夕飯の時間という事で、ユキとユナがログアウト。
俺もログアウトしたいが、その前にサーモンに確認。
「なあ、これってどの位で売れると思う?」
先程ドロップした、[ワーム×2の核]をサーモンに見せる。
「おおう…これまた微妙なお宝が出て来たな」
「微妙なのか…」
「そうだな…ワーム自体は狩り放題だから、×2はそこそこ出回ってるんだ、でも必要数は10個」
「ああ、確かに微妙だ」
欲しい奴には、強烈な需要がありそうだが、そうでない人が衝動買いするには、必要数10個は敷居が高すぎる。
「特化した時の強さは皆が認めるところだが、やっぱ汎用性に欠けるのがネックだな。で、肝心な価値だが、×2で1億、×3で40億位だな」
「やっぱ、ゴブリンの×3よりも、評価が低い感じか」
「そりゃな。あっちは希少価値もそうだが、実用性がダンチだからな」
ここぞという時に大活躍するワームと違い、ゴブリンは取り敢えず出しとける、汎用性の塊だからな~。
「まあ、参考通り1億で出しておくよ」
サーモンに礼を言い、ログアウトした。
夜。
折角レインボーマンバがLv10になったという事で、難所に挑んでみ。
ロケーションは砂漠の地下ダンジョン。ここの地下50階まで潜ってみる。
連れてくメンバーは身内3人と、ベルとサチとサーモンの3人だ。
入念に準備を済ませ、ダンジョンに潜る。
序盤は、人波に乗りつつ敵を無視して駆け足で進む。
地下30階からは、戦闘をしつつ確実に歩を進め、リソースの消耗を避ける。
そして地下40階。ここからは敵が異様に強くなり、新たな難敵の[アヌビス兵]と[アポピス兵]が出現する。
前者は人型狗顔の戦士タイプ。後者は下半身蛇上半身人の戦士タイプで、双方とも非常に強力で、階を下る毎に編隊数が増えていくそうだ。
地下40階では、基本単独行動しかしない様なので、ここで動きを覚えておきたいところだ。
これまでもそうだったが、階段を降りて最初の部屋…所謂階段部屋はもれなく広い。
その広い部屋を見渡し、状況を確認。
分岐路が7つあり、露骨に人が多い所と少ない所に分かれている。
おそらく、人が多い箇所は、階段部屋に続いてるか、何か別の旨味が有るのだろう。
俺らの目的は、地下50階を目指す事だが、先ずは敵の情報を得るのが優先される為、あえて人気の少ない通路を選んだ。
「お、あれがアヌビス兵か…」
狗顔で長身痩躯の戦士。細身だが野犬の様な太い骨格に無駄のない肉付きが、その強さを物語っている。
こちらが何時でも戦えるよう身構えると、向こうもこちらに気付き接近してくる。
「速い!」
先端が鋭い槍状で、石突が金槌の様なポールウェポンを構え、チャージを仕掛けて来る。
軽く20mは在った距離が、数舜で詰められてしまう。
渾身の突きが豚に命中し、豚が破裂。追撃の押し込みも豚2号が防ぎ破裂。
初撃のチャージを、豚で凌ぎ切ったにも関わらず、構わず接近戦を継続するアヌビス兵。
突き、薙ぎ払い、遠心力を乗せた石突の殴打、ラウンドシールドのバッシュと、多彩な手札を駆使し、あっと言う間に豚を駆逐し、豚のリスポンの隙間を縫って、円盤の拘束を受けつつも、八岐大蛇にも大ダメージを与えて見せる。
「凄い、まるで舞踏の様な連撃ね」
ユキが思わず呟くほど、無駄も隙も無い、見事な技の繋がりを見た。
更に、足癖も中々に悪く、地踏みでマウスを仕留め、鋭い蹴り上げで蜂や蝙蝠を蹴散らすなど、武器に依らない体術も驚異的だ。
「かなりの強敵だな、これが深くなる程、一度に遭遇する数が増えるとか…」
サーモンの懸念は尤もだ。数が増えて手に負えないなら、50階前でも切り上げるべきだな。
そんな事を考えてる内に、使い魔の物量と、サーモンのゴブリンの質の前に、アヌビス兵が倒れた。
アヌビス兵を倒し、今度はアポピス兵と遭遇。
こちらは、アヌビス兵は対極…では無いが、手数のアヌビス兵に対し、一撃のアポピス兵、という感じだ。
敵を認識するなり突撃するアヌビス兵と違い、タワーシールドを構え、分厚い刃の曲剣を構え、じりじりと間合いを詰めて来るアポピス兵。
一撃の、と評したように、そこそこ堅い筈の円盤を、曲剣の二振りで墜とす火力は驚異的だ。
それでいて、下半身の蛇の部分での悪さもお手のものらしく、隙のない構えで近寄って来る癖に、時折盾の向こうから、毒薬が放物線を描いて飛んでくる。
物を投げるなんて芸当が出来るのなら、接近戦でも、両の手以上の芸当をしてくることは明白。今のうちに警戒しておこう。
さて、前に出た使い魔とアポピス兵が戦い始めたので、改めて奴の戦力を測る
「成程、手数はアヌビス兵に比べ、相当劣るのに隙が無いな」
常に正面に構えたタワーシールドを、片手で小刻みに地面に打ち付け衝撃波を発生させ、分厚い曲剣の一振りは範囲攻撃と化し、死角は下半身を鞭の様にしならせ薙ぎ払う。
四方八方そして対空と、面での攻撃に穴が無い。
先程、アヌビス兵を数で圧倒したが、アポピス兵は対多のスペシャリストで、次々と蹴散らされる使い魔達。
ここは攻め方を変え、ユキに任せる事に。
前に出たユキは、アポピス兵の周囲を回りつつ、発動可能な魔法をぱなしていく。
設置系魔法である、[旋風][ダークニンバス]に、〖雨乞いの刻印〗で出現する雨雲。
これらを防ごうにも、盾を常にユキに向けていなければ、<ファイアーオーブ>や<アイススピア>を直接受ける羽目になるので、無防備に受け続けるしかない。
結局、【速度】持ちのユキを捉えきれず、三種の設置系魔法で削り倒されたアポピス兵。
対多、近接には強いが、素早い遠隔持ちには、脆い様だ。
地下40階で、新顔の戦力も測れたので、そろそろ下を目指し始める。
先ずおさらいとして、アヌビス兵とアポピス兵との、相性を纏めてみる。
今いる7人だと、俺、アコ、サーモンはアヌビス兵に強く、ユキとサチがアポピス兵に強い。
残念ながら、ベルは決定打不足、ユナは火力0なので、単独では如何にもならなかった。
これらを念頭に置いて、地下50階を目指す。
…つもりだったんだが、41階に降りた途端、1階からの皆勤賞だった蠍と蝙蝠が超強化され、スフィンクスも数が増えた上に強化され、アヌビス兵アポピス兵どころではなくなった。
ただ、幸いなのが、蠍と蝙蝠に関しては、ユナが容易に無力化出来た為、まだ多少の苦戦で進む事は出来ている。
小物をユナに無効化してもらいつつ、最小限の戦闘で地下46階へ降り立つ。
既にレインボーマンバも戦闘に投入済みであり、戦力的な余力は残っていない。
今ある戦力が通じなくなったら、それが撤退のタイミングだろう。
そして、アヌビス兵の編隊数が4になったこの46階。
もう、戦闘するまでも無く無理だと悟り、余力のあるうちに撤退する事にした。
目標の50階には及ばなかったが、素材も十分過ぎる程手に入り、マンバのLvも11に上がったので、満足のいく戦果と言える。
「良し、十分な金が集まったな」
ダンジョンアタックから一夜明け、戦力的にもコスト的にも、ここらで5回目の淘汰をしないと厳しいので、今からする事に。
「さて、先ずは消去からだな。本当は〖超細胞の刻印〗があるから、【核細胞保護】を完全に消しちゃいたいとこだが、ここは感を信じて【生への執着】を消してみるか」
多少指が震えたが、『本当に【生への執着】を消去してもよろしいですか?』の問いに、『はい』を選択し、無事消去完了。
「どれ…執着の消去がトリガーっぽい刻印は無しか…」
まあ、これは予想してたので、まだ希望は残ってる。
気を取り直し、今度は刻印を見ていく。
一通り目を通し、今回新たに解放された刻印をピックアップする。
〖雑草の刻印〗作付していない自分の畑に雑草が生い茂る。稀に雑穀や牧草も生える。
〖温室の刻印〗畑がビニールハウスになる。
〖水龍の刻印〗水中での呼吸が可能になり、ある程度の水圧や重力に耐えられるようになる。
〖長命種の刻印〗魔法、化学由来の攻撃のダメージを30%軽減する。
〖悪鬼の刻印〗日に一度、LPが20%以下になった場合、デーモンが召喚される。
〖地鎮式の刻印〗5%の確立で、畑に地鎮碑が立ち、畑として使用できない代わりに、隣接してる畑を含め耐久度を大幅に上げる。
〖細胞活性化の刻印〗STAとLPに関係するデバフを無効化する。
〖万能細胞の刻印〗全パラメータを倍にする。
以上の8つが新規の刻印だ。
どれもこれも、中々個性的で強力だ。
「うーん…どれも魅力的だな~」
特に魅力的なのは〖万能細胞の刻印〗だ。
ここ数日で、[積載]への俺の評価は鰻登りだ。
理由は当然、コスト馬鹿食いのレインボーマンバだ。
今回の淘汰で、俺のパラメータ補正は約9倍、更にパラメータが倍になれば、その恩恵は凄まじい事になる。
「ん?」
ふとここで
〖覚醒の刻印〗全ての因子とパラメータの覚醒数を10増やす。
これを思い出す。
「これ、今冷静に見るとぶっ壊れ過ぎじゃない?」
だって、無覚醒のパラメータだったら、そのまま10倍だし、覚醒数が10回以下なら2倍以上の恩恵だろ?ヤバ過ぎるだろ。
一度思考が定まると、もう心が動く事は無かった。
「決まりだな。〖覚醒の刻印〗を取ろう」
「さあ、諸々確認していくか」
一旦、教会の長椅子に座り、現在の状況を確認。
【獣人】26→36
【吸血鬼】26→36
[農家]15→25
[百姓]10→20
【蛇使い】17→27
【植物人間】14→24
[養蜂家]15→25
[パイパー]24→34
[養豚家]2→12
[羊飼い]1→11
[生命]43(+10)→53(+10) *(+10)は【速度】の覚醒数を振り分けてる為。
[持久]0→10
[積載]6→16
[幸運]50→60
[観察]39→49
[魔力]7→17
[制圧]0→10
[包囲]0→10
[解体]0→10
[跳躍]0→10
【速度】0→10 *キャラメイクで選択したパラメータでは無い為、スキル変化の対象外。
という感じで、各因子各パラメータの覚醒数が変化している。
「んで…何か変化してるかな~?」
[農家]
<品種革命>生産速度を6%上昇。
<土壌革命>生産数を3%上昇。
これが。
<品種創造>生産速度を10%上昇。
<大地の恵み>生産数を5%上昇。
こうなった。
[百姓]
<百姓連合+1>四分間NPCの百姓を呼び出す(CA)。
<鍬術教育>百姓が鍬で戦闘をするようになる。
これが。
<奉公人募集>二分間、農業専門の奉公人を2体呼び出す(CA)。
<駆除依頼>二分間、マタギを呼び出す(CA)。
こうなった。
[羊飼い]
[シープドッグ]牧羊犬を使役する。
[羊の群れ]敵から逃げ惑う4体の羊を使役する。
これが。
<噛ませ犬>羊から逃げ惑う牧羊犬を使役する。
<狂暴な羊>好戦的で牧羊犬を追い回す羊を4体使役する。
こうなった。
[持久]
<持久上昇>[持久]が2上昇。
<持久増加>[持久]が1%上昇。
<深呼吸>スタミナの回復量が1%上昇。
<腹式呼吸>スタミナの回復速度が1%上昇。
これが。
<持久強化>[持久]が4上昇
<持久増強>[持久]が2%上昇
<深呼吸Lv1>スタミナの回復量が1.5%上昇。
<腹式呼吸Lv1>スタミナの回復速度が1.5%上昇。
[制圧]
<圧制>疲労ダメージが1%上昇。
<殲滅>区画内の敵が少ない程疲労ダメージが上昇。
<煽動>区画内のユニット数が上回っている場合、疲労ダメージ上昇。
<見せしめ>敵を倒した場合、区画内の敵に疲労ダメージを与える。
これが。
<抑圧>疲労ダメージが2%上昇。
<掃討>区画内の敵が少ない程、ダメージと疲労ダメージが上昇。
<離間の計>区画内のユニット数が上回っている場合、疲労ダメージが上昇し、超低確率で敵にFFを適用する。
<公開処刑>敵を倒した場合、区画内の敵に疲労ダメージを多く与える。
[包囲]
<足止め>敵のいる区画を周囲5区画以上囲んでいる場合、敵の移動速度を5%低下。
<投降呼びかけ>敵の居る区画を周囲6区画以上囲んでいる場合、敵の防御力を1%低下。
<兵糧攻め>敵の居る区画を周囲7区画以上囲んでいる場合、敵の満腹度と保水度の減少速度が2%上昇。
<火計>敵の居る区画の周囲を完全に囲んでいる場合、毎秒10ダメージ与える。
これが。
<足攻め>敵のいる区画を周囲5区画以上囲んでいる場合、敵の移動速度を5%低下させ、ダメージを1%上昇。
<最終勧告>敵の居る区画を周囲6区画以上囲んでいる場合、敵の防御力を2%低下。
<経済制裁>敵の居る区画を周囲7区画以上囲んでいる場合、敵の満腹度と保水度の減少速度が4%上昇。
<焦土化>敵の居る区画の周囲を完全に囲んでいる場合、敵のダメージ軽減を2%低下。
こうなった。
[解体]
<基礎の撤去>建築物へのダメージを10上昇。
<大黒柱撤去>建築物へのダメージを10上昇。
<屋根の撤去>建築物へのダメージを10上昇。
<壁の撤去>建築物へのダメージを10上昇。
これが。
<基礎破壊>建築物へのダメージを100上昇。
<大黒柱破壊>建築物へのダメージを100上昇。
<屋根破壊>建築物へのダメージを100上昇。
<壁破壊>建築物へのダメージを100上昇。
こうなった。
[跳躍]
<跳躍上昇>[跳躍]が2%上昇。
<飛躍>ジャンプの上昇速度が3%上昇。
<腹筋跳躍>匍匐時にジャンプ出来るようになり、ジャンプの1%分、匍匐時のジャンプが上昇。
<自由落下>空中にいる時の動ける距離が5%上昇。
これが。
<跳躍強化>[跳躍]が4%上昇。
<飛翔>ジャンプの上昇速度が3%上昇。
<腹ジャン>匍匐時にジャンプ出来るようになり、ジャンプの2%分、匍匐時のジャンプが上昇。
<自由降下>空中にいる時の動ける距離が10%上昇。
こうなった。
お次は強化されたギフトだが、大半が地味な強化だった為割愛するが、【ドリス】だけは、張り付いた敵以外へのFF適用範囲が0.3mから0.4mへと広がり、更に凶悪な効果となってくれた。
一見地味に見えるかもだが、この10㎝が馬鹿になんねえんだわ。
「変化はこんなもんか」
んじゃ、Lvを200にして、久々にステータスをお見せしよう。
名前:テツ Lv:200 パラメータ補正:9.6768倍
LP:573485594863 STA:106483507 COST:164544307 *全ての補正込みの数値。
刻印:〖天使の刻印〗〖神縛りの刻印〗〖円盤の刻印〗〖超細胞の刻印〗〖覚醒の刻印〗
肩書:《生命マニア》《生命信者Lv1》《生命神》《運命の神Lv1》《運命の深奥》
ギフト:【生への執着+52】【核細胞保護+51】【速度】【ドリス+4】【蛇使い+1】【植物人間+1】【獣人+2】【吸血鬼+2】
因子:【獣人35+2】【吸血鬼35+2】 [農家25] [百姓20]【蛇使い27+1】【植物人間24+1】[養蜂家25][パイパー34][養豚家12][羊飼い11]
パラメータ:[生命53+10]12800000[持久10]2200000[積載16]3400000[幸運60]122200000[観察49]10000000[魔力17]3600000[制圧10]2200000[包囲10]2200000[解体10]2200000[跳躍10]2200000 *スキルやパラメータ補正は無反映。
アビリティ:[種苗袋][ボロボロの防柵] [死への免疫] [スワンプマン][超純度ヒアルロン酸]
スキル(因子):<生存義務><野生の脈動><不死の根源><精鋭部隊><国宝級の蛇壺><国宝級の蛇笛><鉄にも生える><極合成><品種創造><大地の恵み><奉公人募集><駆除依頼><戦闘蜂Lv1><増蜂Lv1><近衛鼠><煽動者Lv2><養豚><過剰肥育><噛ませ犬><狂暴な羊>
スキル(パラメータ):<運命上昇><運命増加><運命共同体><運命の底力><持久強化><持久増強><深呼吸Lv1><腹式呼吸Lv1><積載強化><積載増強><ウロボロス><雨観亀><黄龍><神虫><虹色マウス1号>~4号<魔道人形1号><魔道人形2号><ゴーレム1号><ゴーレム2号><抑圧><掃討><離間の計><公開処刑><足攻め><最終勧告><経済制裁><焦土化><基礎破壊><大黒柱破壊><屋根破壊><壁破壊><跳躍強化><飛翔><腹ジャン><自由降下> *スキルLvは全て200。
装備:[復興の道しるべ][シャツ][ズボン][靴][帽子][御霊の器][100フリーホルダー][フュージョンボックス][スチールランタン]×10
という感じだ。
「こうして改めて見ると、LPがおかしい数値になってるな」
5700億ってどんだけ~。でも、やられる時はアッサリなのが、このゲームのインフレを物語ってる。
「そして、コストは1億6千万…Lv11のレインボーマンバがコスト550万だから、大分余裕が出来たな」
Lv300まで上げても、まだ余裕があるって凄いよね。そこまで自力で上げれるかは兎も角だが。
「さて、今度は実戦で確認していくか」
傍の森は治安が悪い為、東の樹海に向かいテスト。
「先ずは大根を栽培してみるか。そい」
鍬を振るい、畑を拵え種をまく。直後には大根が実った。
「…まあ、早い分に困らないもんな」
以前は二秒弱位だったかな?それでも早かったが、これは次元が違う。
そして収穫数に至っては、1回の収穫で150本程収穫出来た。
「凄すぎて、言葉が思い浮かばないな」
収穫数は、そのまま金策に直結するので、多いに越した事はない。
「しかし、大根なら種を蒔いた瞬間は嬉しいな」
畑に作物が実ってるかどうかは、畑の堅さとヘイトに直結する重要な要素なので、この影響は確実に戦闘にも出る。
「うん、スキル変化と覚醒数増加の恩恵は大きいな」
お次は[百姓]を調べる。
「先ずは<奉公人募集>発動!!」
コンバットアーツの<奉公人募集>を使用し、奉公人を2体呼び出す。
奉公人は、農作業し易い恰好で、笠を被り首に手拭いを巻き、鍬を持った完全農家スタイルだ。
呼び出された奉公人2体は、早速鍬を振るい始め、瞬く間に俺と同じ柵付き案山子付きの畑を敷いていく。
そこへ、カラフルな体毛で、頭部の毛が奇抜な猿が襲い掛かる。
奉公人は、猿を鬱陶しそうにしつつも、上手に畑を盾にしながら開墾を続ける。
「ほうほう、戦闘はしないけど、敵の躱し方捌き方は上手なのね」
さて、折角敵が来た事だし、今度は<駆除依頼>を発動。
全身動物の毛皮コーデの、厳つすぎる山人が登場。
呼ばれて直ぐに周囲を一瞥し、即座に猿にライフルの弾丸を叩き込むマタギ。
間一髪でそれを避けた猿共が、ゴソゴソと身体をまさぐり、スマホの様な端末を取り出し…。
「ヘイヘイ、ドコネラッテンダ?」「ビビッテンノカ?」「アア、イタイイタイ!!キガナ!!ギャハハハ」
などと、音声ソフトを使って煽って来る。
最高に温まるが、流石に召喚したNPCには効かんだろう、そう思ってたが見事に効いたようで、無言で猿共を追いかけ回し始めた。
制限時間間際、猿の断末魔が聞こえて来た為、見事本懐を達せたようだ。
飛び道具持ちだし、中々戦力になりそうで、なによりだ。
やっとゴタゴタが落ち着いたので、少しずつ投降出来たらと思います。




