表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/63

第五十話

~前回までのあらすじ~

コーポレーションを設立し、一先ずのリソース不足は解消。

更にペットを増やし、牽引する蓋も増え、プレイヤーの能力に依存しない戦力が着々と増すのであった。

 取り急ぎではあるが、多岐に渡る素材を確保し、今度は自身の為の行動に移る。

 目一杯換金物を現金に戻し、教会へ向かう。

「さあ。一気にLvを上げちゃおう」

 進化6回目のLv160を超え、7回目のLv46まで上げれた。

 進化2回分の肩書取得と、覚醒振り分けを行う。

「肩書か…シーラからの情報を信じるなら、プランを崩して[幸運]を高める価値が有るな」


 遡る事数日。

「そうだテツさん。あなた方とハイエルフの親密度が最高になっているので、今後の成長要素について、情報を開示できますが、どうします?」

 対価は要求される様だが、値千金どころの騒ぎではない情報なので、色々と希少な物資を渡す。

「これだけ出して貰えるなら、詳細まで開示しても大丈夫ですね」

 そして語られた情報がコレだ。

・進化の次の成長要素の名称は[淘汰]。

・10回目の進化で、Lv200の状態で解放。

・淘汰を行うと、パラメータ、ギフト、肩書のいずれかから(全27種)1つ選択し、消去する。

・淘汰をする毎に、パラメータに補正が掛かる。

・パラメータを消去し、無意味になった肩書等が存在する場合は自動消滅する。その分パラメータへの補正が更に高まる。

・消去したパラメータが覚醒済みだった場合、他のパラメータに振り分ける事が出来る。

・無意味となった因子やパラメータの覚醒数は、再振り分けする事が出来る。

・強力な効果を持った、[刻印]を取得出来る。

・刻印を取得し、無意味になったパラメータ等は消滅し、その分パラメータの補正が高まる。

・淘汰は10回行える。

・Lv1毎に上昇するパラメータは1000。

・上昇量は1000で固定であり、淘汰数での変動も無い。

・同様に、因子とパラメータの覚醒数への補正も無い。

 という感じなっている。

「これはまた詳細に…。成程、リビルドとまではいかなくても、ビルドの方向性を変える事が出来そうな位には、影響が大きそうだな」

「そうですね、この期間で終のビルドが決まると言っても過言…という程ではありませんが、色々と取り返しのつかない事態が多いので、よくよく考えた方が良いですね」

「これは値千金どころの話じゃないな」


 という事があった。

「俺にとって最重要なのは、肩書を消せることだな」

 皆同じ条件の中、俺には《生命フリーク》と《生命マニア》という、真っ先に切り捨てられるギフトが在るのは有難い。

 そして、これから行う2回分の進化の手続きと、残り3回の進化で、幾つか踏み台となる肩書を、気兼ねなく選べることを意味する。

「これなら、最後に《幸運神》を取る為に、今から計画的なプランを練らねば」

 今、残りの再覚醒数は40回で、最後に《幸運神》を取る事を考えると、10回目の進化時には[幸運]の覚醒数が190に達してる必要がある。

「先ず、6回目の進化特典の再覚醒を振り分け[幸運]の覚醒数を36に…この時点では【引換券】を2つ使っても、必要覚醒数が60の《幸運マニア》までは14足りないから…」

 そして7回目で振り分けると43で、引換券を使えば53になって、8回目で振り分けて61…、9回目で70か…。

 6回目で引換券を使って《幸運フリーク》を取れば66、7回目でマニアを取れば103、8回目で信者で161、9回目で信者Lv1で230か…。

「これは《幸運神》は現実的じゃないな」

 あくまで[幸運]のスキルを変化させたいだけだし、ギリギリ覚醒数90に届けば良いのだから、その方向で考えると。

「10回目で《幸運マニア》を取るか、消去を前提に8回目で《幸運信者》を取ってフリークとマニアを消すか」

 いや、先ずは消してもいいパラメータとギフトを捻出してからの方が良いか。


 現座の俺のパラメータとギフトがこれだ。

[幸運][観察][魔力]←覚醒させてるので消すのが勿体ない。 【[速度]】←ギフトと紐づけ。 [制圧][跳躍][解体][包囲]

【生への執着Lv1+31】【速度】【蛇使い】【ドリス】【核細胞保護Lv1+30】【獣人+1】【吸血鬼+1】【植物人間】

「この中からリストラ候補と言えば、[跳躍][解体]は鉄板か」

 両方共強力だが、無くても困らないという位置付けなので、候補に挙がった。

「最低でも10個は消去する必要があるんだもんな、となるとあと8つか…」

 そうなると、肩書とギフトから捻出する必要が出るから…

「先ず《生命フリーク》と《生命マニア》は消せるだろ、そうすると執着と保護の+値が5も下がると」

 ともあれこれで4つ、あと6つ。

「いや、無意識に[魔力]を消すのは勿体ないと思ってたが、消せば1つ捻出できる上に、覚醒数が7回分も戻って来るのか…」

 暫定だが、これであと5つ。

「ここで《生命神Lv1》を取れば、これ以上ギフトの+値を落とさず《生命信者Lv1》を消せるから、これであと3つになるのか」

 …ダメだ、知恵熱が出そうだ。

「一旦進化を保留にするか」

 Lv上げをキャンセルし、金を物に換えてPAに戻った。


「おやテツさん、どうしました?」

「また情報を買いたい」

 シーラに換金物の一部を譲渡し、欲しい情報を伝える。

「肩書の情報ですか、分かりました。テツさんにとって有用な肩書の情報で良いんですね?」

「どんな些細な事でも構わない」

「分かりました、ここまで報酬を頂けるのでしたら、奮発しましょう」

 そして、初っ端から超有益な情報が飛び出す。

「先ずは《運命の神》の情報から、これは[生命][幸運]双方の覚醒数が100を超えた上に、総覚醒数が400を超えてる場合に取得できます。効果は両方の覚醒数を100上昇させます」

「…いきなり問題が解決しそうな情報が出て来たな…」

「まだまだいきますよ、《生命の深奥》と《幸運の深奥》は、[生命]と[幸運]それぞれの覚醒数が400を超えた場合、取得するとスキル変化が起こります」

 マジか、ただでさえ3回目以降の変化は強化度合いが顕著に表れるのに、既に5回変化してる[生命]のスキルの6回目とかどうなるんだ?

 その後、他にも有益な情報を受け取ったが、最初の3つを超える情報は1つか無かった。


 Ver2.4まで残す事数日。

 俺は再び教会に訪れていた。

「これで良し」

 前回キャンセルした時よりもLvを上げ、進化7回目のLv103までになった。

 そしてここからが、綿密な計画の見せ所だ。

 残り肩書取得数は5、その中で、《運命の神》の解放を目指し、2回取得する事を目指す。

 先ずは6回目の進化から。

「現在の[生命]の覚醒数は300越え、後は[幸運]を100以上にするだけだから…」

 現状の幸運の覚醒数は30、振り分けと引換券込みでも46。ここまではおさらいだな。

「先ずは《幸運フリーク》を取得して覚醒数を66にしてと」

 因子の追覚醒は[蛇使い]4回と[植物人間]を2回で、16回と14回に。これで、[植物人間]が2回目のスキル変化を起こす。

 途中[幸運]のスキルの検証を挟みつつ、構築を続ける。


「7回目も[幸運]に4回振り分けて《幸運マニア》を取れば、晴れて覚醒数が100になると」

 これで、8回目の進化時には、《運命の神》が取得出来る。

「となると、《生命フリーク》《生命マニア》《生命信者Lv1》《生命神》《幸運フリーク》《幸運マニア》は消去しても問題無いと」

 この時点で、消去候補を7つも捻出できる。

「あと3つはそうだなあ…」

 1つ消すごとに、パラメータに補正が掛かるのだから、出来るだけパラメータは消去しない方向が理想だ。

「となると、【核細胞保護】と[跳躍][解体]を消去すれば、強力なギフトを残しつつ、パラメータ補正を享受できるか」

 しっかりとした今後のビジョンが出来てるので、今回はキャンセルはしないでそのまま完了し、PAに帰還した。

 ちなみに、パラメータの残り追覚醒3回は[観察]に。因子は[蛇使い]を1回、[農家]を5回、[パイパー]を1回覚醒させた。

 これで[植物人間]に続いて[蛇使い]と[農家]もスキル変化が起こる。

 スキル変化に拘るのは止そうとか言ってたのは誰だっけ?って思うくらい、清々しい程スキル変化に拘っているな。


「えーっと、変化したスキルはどうなってるかな~?」

 スキルの一覧を見ると、こんな感じに変わっていた。

[植物人間]

<岩にも生える>[生命]が5上昇。

<超合成>光を浴びている間満腹度が少しずつ回復。

 ↓

<鉄にも生える>[生命]が10上昇。

<極合成>光を浴びている間、満腹度と保水度が少しずつ回復。


[農家]

<品種改革>:生産速度4%上昇。

<土壌改革>:生産数2%上昇。

 ↓

<品種革命>生産速度6%上昇。

<土壌革命>生産数3%上昇。


[蛇使い]

<高価な蛇壺>キングコブラを2体使役する。

<名工の蛇笛>キングコブラを2体使役する。

 ↓

<国宝級の蛇壺>グリーンマンバを2体使役する。

<国宝級の蛇笛>ブラックマンバを2体使役する。


 そして本命の[幸運]

<神の使い>金色の大蛇を10体使役する。

<島亀>巨大な亀を使役する。

<黒いダイヤ>クロマグロを使役する。

<皇虫>究極の甲虫を使役する。

 ↓

<鯱>黄金の鯱を10体使役する。

<大陸亀>超巨大な亀を使役する。

<豪州ブランド>カジキマグロを使役する。

<耕虫>螻蛄を使役する。

 ↓

<ナーガ>ナーガを使役する。

<星亀>星亀を使役する。

<リュウグウノツカイ>リュウグウノツカイを使役する。

<光虫>発光する甲虫を使役する。


「[植物人間]と[農家]は順当に強化されたけど、[蛇使い]はなんか凄い事になってんな」

 攻撃力だけで言ったら、間違いなくマンバの方が上だけど、打たれ強さは前の方が強い筈なんだよな…。

 純粋な強化じゃなく、変化球で来ることはこれまでもあったので、今回もその一例という事だろう。

「[幸運]は最早凄いを通り越した変化をしてるな」

<鯱><大陸亀><豪州ブランド><耕虫>は非常に強力で、<鯱>とカジキと亀は順当に強化され、悪党を手古摺らせ、<耕虫>は地中からの奇襲が強力で、期待以上の戦力と化していた。

 これが、更に強化されてるんだから、検証が楽しみでならない。

「取り敢えず、使い魔版マンバがどの程度戦えるか見ないとな」


 そして試し切りの相手は悪党。

 ホームから出ればそれなりの数が居て、即エンカウント出来るのもお手軽で良い。

 消耗品は最低限に留め、畑を耕しマンバが戦うのを気長に待つ。

 というのも、マンバはキングコブラと違い、毒を噴射する遠隔攻撃がオミットされてしまったため、中々噛み付きまで至らないのだ。

 そんな中、気概の有る悪党が使い魔の大群に態々突っ込んで来て、大剣を振り回し無双をし始める。

「ハッハッハ!!こんなもの手応えの無い!!」

 確かに宣うだけあって、凄まじい破壊力と攻撃範囲だ。

 そんな暴力の化身の足元に、スルスルと這いよったマンバがカプリ。

「ぎゃあああああああああ!‼」

 ほんの一瞬で、悪党のLPが2割消し飛び、面白い位に狼狽える悪党。

「こんの糞蛇がぁ!!」

 と、足元に目が向けば、上段がお留守になるわけで…

「あ、ちょ!!やめ、ウザい!!」

 金蝙蝠と蜂に群がられ、完全に集中力を欠いた悪党に、ガーディアンの魔法が炸裂して止めを刺した。

「リーチは終わってるが、近寄れれば使い魔とは思えない火力が出せるのか」

 毒防御という、中々盛り難い耐性のお陰もあって、マンバの毒が面白いように悪党に刺さる。

 尤も、初見殺しの様なもので、気づかれれば接敵は不可能と化す。

 それでも警戒させるだけで十分なので、抑止力としては活躍が期待できる。


「さて、お楽しみの[幸運]のスキルの検証に入るか」

 まあ、既にどんな感じかは解っているが、改めて検証。

 悪党をかませ犬に、その戦いぶりを観察。

<ナーガ>は上半身が人型、下半身は蛇の見た目で、盾と剣を持っている。

 数は1体と減ってしまったが、その強さたるは絶するもので、キリの方の蟲人間と伯仲する程の能力だと思われる。

 そんなのが、[観察]で鬼の様な状態異常耐性を誇り、<煽動者Lv1>で凶悪な移動速度で迫ってくる上に、安い代償で何度でも復活してくるので、「ふざけんな!!」と悪党が発狂してしまう程だ。

 流石6回も変化してるスキルと言えよう。

<星亀>は、これと言って捻りの無い現実の星亀と同じ見た目で、移動速度も補正を抜けば現実に則したもので、これと言って強みが無いように思えた。

 だが、やはり堅さには定評があった亀枠の使い魔だけあって、バランス型のビルドのプレイヤーの匹敵する程堅く、直ぐに狙われなくなってしまう位だ。…つまり、囮としては役に立たない(弱いとは言っていない)という事だ。

<リュウグウノツカイ>は、全長15m程で、かつての<青龍>を想起させる見た目となったが、実体は全くと言っていい程別物へと変わってしまった。

 兎に角動きが緩慢で、ゆったりと宙を遊泳し、敵に接近するので、まあまず攻撃が成功する事は無かった。

 とはいえ、貴重な空中ユニットで、堅く目立つので、蜂や蝙蝠から目を逸らさせるのに丁度良く、火力も噛み付きが当たりさえすれば中々のものなので、意外と砲台ビルドには警戒されていた。

<光虫>は、只々光るだけで、特殊能力は無いが、堅さは<皇虫>を遥かに凌ぐ。

 そして、只光るだけと言っても、敵からは光の波長が長く見えるのか、悪党なんかは眩しそうにしていたので、目晦ましの効果もある様だ。

 そんな感じで、使い魔の変化の確認を終え、PAに帰還した。


 検証を済ませ、休憩を挟んでから再開。

 アプデまで後僅かに迫ったが、現状の成長限界には数歩及ばない事は確定してる。

 上限解放と同時に、淘汰に到達できないのは悔しくはあるが、仕方がない事だ。

 どうせ、焦って金策をしたって碌な事にならんし、アプデまでに進化3回にLv200とか絶対…無理って事は無いが、無茶する気も無いし、一旦寄り道を挟むか。

「うーん、やっぱダンジョンコアは高いな~」

 需要が天井知らずで上がってるせいで、競売の価格が300億超えがザラだ。

 かと言って、トレードしようものなら何を求められるか分かったもんじゃないしな。

 やっぱ自分で見つけて確保するしかないよな。

 多分、攻略が出来るかどうかは兎も角、アースに的を絞って練り歩けば、ダンジョンでなかろうとも、何か面白い出来事に遭遇出来る筈だ…根拠は無いけどな。

 そういう事で、先ずは超不人気エリアの雪原に向かう。

 装備のお陰で、これと言って環境ダメージも受けないし、地形ペナルティで移動速度が落ちても、今はデフォルトの70倍程で動けるから、そこまで気にならない。

 快適とは程遠い散策だが、順調に練り歩き、マンモスの集落に到着。

 コチラの事を覚えてるようで、門番に内部へ招き入れられる。

 そして、何故か内部にはNPCやプレイヤーが居て、塀に囲まれた篝火で暖を取っている。

 なんでこうなってるかは不明だが、悪い事ではなさそうだし、ダンジョン跡へ入る。

「あ~、坑道化してるのね」

 特に希少な金属が取れるわけでは無いが、品質が良くて、一度に沢山採掘できるという事で、それなりに賑わうロケーションとなっていた。

 それにして、誰かに滅ぼされてるとかじゃなく良かった。


 マンモスの集落を後にし、再びローラーをしていると、巨大な池を発見。

 取り敢えず、入水してみる。当然馬鹿冷たくてダメージを受ける。

「でも耐えられない程ではないな」

 意を決し、潜ってみると、水底に亀裂が空いていて、魚が亀裂付近に集まっている。

(これは温水…温泉か?)

 一旦呼吸の為に浮上し、再び水底の亀裂を調べる。

(ああ、只の湧き水か)

 湧いたばかりで、多少温く感じただけだった。

 とまあ、大したことじゃなかったわけだけど、そこで終わらないのがこのゲームの良い所。

 どうせ何かあんだろ?と斜に構えつつ謎の確信を持って亀裂に半身を突っ込む。

 するとどうだろうか?いつの間にかPAでリスポンしていた。


 念入りに準備をして、再び巨大な池に到着。

 先ずは水中適応薬を飲む。これで水中でも地上と同じ様に動けるし、現行品はデメリットもない。

 そして水底を亀裂に向かって歩き、前に到着。

「ヒヒヒ…くたばれ糞蛇が!!」

 さっき俺を殺ったのは、巨大な蛇だった。

 亀裂にマッドから貰った爆薬を放り、急いで距離を取る。

 数秒してドカンと炸裂し、亀裂から大蛇が飛び出してきた。

「丸呑みにされた時点で思ってたが、デカすぎだろ…」

 全長30mと、シロナガス級の大蛇…というかヒレやら髭やらがあるから、水龍的な何かかもしれない。

 普通、こういった存在は、守り神的な扱いを受けてても不思議ではないのだが、未開だった惑星の生物だし、大丈夫だよね?大丈夫だな!!

 多分祟られることも無いだろうと、早速戦闘を開始。

 戦闘自体は使い魔に任せ、俺自身はピョンピョン跳んだり走ったりして逃げるという、なんともしょっぱい戦い方だが、これが一番の正攻法だから仕方ない。

 適宜適応薬を飲み、回復を挟み、水底を畑(意味不明)にしながら消耗戦を仕掛ける。

 ネチネチと持久戦を仕掛ける事四十分。漸くマンバの噛み付きで決着が付いた。


「なんだ?まだ終わってないのか?」

 強力無比な[幸運]の使い魔のお陰で戦闘が終わり、使い魔も遺骸に反応しなくなったというのに、ドロップも無ければ死体も消えない。

 不審に思ってると、死んだと思っていた水龍?が動き出し、巣穴に引っ込んだと思ったら、直ぐに何かを加えて戻って来る。

「これはダンジョンコア!?」

 ポトリと俺に目の前に落としてくるのでキャッチ。

 その様子に頷くと、今度は付いて来るように頭で促してきて、巣穴に付いていく。

 そのまま空気のある巨大空間に出ると、水龍の前に<ナーガ>が佇む。

 そして、水龍が<ナーガ>に対し、波動を送るとこんなアナウンスが。

『スキル<ナーガ>が変化の切っ掛けを掴みました』

 とアナウンスが出てた。

 その後、巨大空間で、変化を促す為か、摸擬戦をやらされたが、全く持って歯が立たずに何度も地に伏す事に。

 水中では、力の片鱗すら見せて無かったという事だ。

 そんな水龍様の巣を辞して、PAに帰還した。


 帰還後、<ナーガ>が水龍から受けた加護について理解を深める為に、識者の下を訪れる。

 そしたら摸擬戦を行う事なったたのだが、相手がローレンスさん直々というサプライズだ。

「ほほう…まさか<ナーガ>にお目に掛かれるとは」

「珍しんですか?」

「[幸運]の使い魔の、1つの到達点と言われる存在だね」

「しかも、若いのはまだ伸びしろを残してるんだろう?楽しみだな」

 タツキチもローレンスさんも、この先の変化に心当たりが有るのか、うんうんと頷いている。

 さて、タツキチにコアを託し、ローレンスさんとの摸擬戦を開始。

「先ずは小手調べだよ」

 いきなりノーモーション<ブラストウィンド>が飛んできて、蜂と鼠とマンバが消滅。

「更にこうだ」

 黒い霧が俺に纏わり付き、…何も起こらなかった。

「ほー、戦闘時に要になるSTAの保護を怠って無かったか、良いぞ若いの」

 どうやらSTAにデバフを掛ける魔法か何かだったようだ。

「ポリポリ」

 7割ほどに減ったLPを回復させ、使い魔の進撃を見守る。

「良いね、初撃での脱落が随分と少ないね。ならもう一打!!」

 再び<ブラストウィンド>が飛んできて、蝙蝠、マウス、人形、ゴーレムが消滅。

 ここで<リュウグウノツカイ>がローレンスさんに噛み付こうとするが、アッサリと躱される。

「やるね。<ウォーターエッジ>」

 左手を貫き手状に構え、80㎝程の刃を生成し、<リュウグウノツカイ>を一刀両断。

「ぬ、ご先祖様の魔法は迎撃させてもらう」

 氏を目掛けて飛来する魔法を、[ダークニンバス]に似た魔法でカーテンを作り相殺。

 そしてここで漸く<ナーガ>のが接敵。

「さあ、真価を見せる時だね、<ハリケーンエッジ>!!」

 自身を中心に、鋭利な暴風雨を発生させ、<ナーガ>と遅れてきた<星亀><光虫>を切り刻む。

「なに!?」

 この魔法で、<星亀><光虫>もリスポン待ちになると思った様だが、<ナーガ>を含めそのまま氏に喰らい付いていく。

「ええい!鬱陶しい」

 直後、杖の石突を地面に突き刺すと、周囲を地面から生えた氷柱が埋め尽くす。

 ここで、流石に<星亀>と<光虫>もリタイヤとなったが。

「これも耐えるかい」

 流石累計変化数6回の使い魔だ。いくら俺の[生命]が高いと言っても、使い魔でこの堅さは驚嘆ものだ。

 この後直ぐ、ローレンスさんによって、<ナーガ>も蹴散らされた。

 これで<ナーガ>の強さも正確に分かったし、ここからはガチンコの摸擬戦をした。

 当然俺の敗北での幕引きとなったが、結構善戦したんだぜ?

 流石の氏も、ランタン10個のデバフは看過出来ぬ様で、タブレットを齧りながら、執拗に追い回す俺から距離を取っていた。

 最後はアウトレンジから<ウォーターザッパー>と<アイススピア>で削り殺された。


「<ナーガ>も素晴らしいが、テツ君自体の地力も良かったよ。それに、相手の嫌がる事をリスクと天秤に掛けての判断も素晴らしい」

「流石のレン坊も、ランタン10個はヤバいか」

「ああ、流石にこのレベルの相手になると、1割でも力が削がれたら致命的だからな」

 寧ろ10個あって1割位しか効かないの!?

「しかし<ナーガ>の時点であの強さとはね、これは伝説のアレが出てもおかしくないね」

「へ~、伝説って?」

「ああ」

 雑談を終え、PAに帰還した。

 結局、加護については、俺の推察通りで、兎に角経験を積みまくれば、いずれ形になって現れるとの事だ。


 蓋4号機の完成まで時間を潰す必要があるので、鬼ヶ島へ向かう。

「ドラグーンよりかは訪れてるけど、それでも全然来てないな」

 これまでに二桁…は来てるが、やはり少ないよな。

 そんな鬼ヶ島の現在の攻略度は44%、ドラグーンに至っては12%と、大層低い。

 惑星が増え、人が分散し過ぎている、そもそも難易度が高い等、分かりやすい理由によって、一番新しい未開の惑星の攻略は遅れているのだ。

「確かに小鬼、大鬼共に知能が矢鱈高く、戦闘力も高いからな~」

 ちょっとした観光気分で歩いてたら、ゴブリンの盗賊に絡まれ、絶賛戦闘中。

「ヤレーコロセー」

 と中々の殺意を振り撒き纏わり付いて来るが、凶悪な使い魔の暴力に既に及び腰だ。

 そりゃいくら賢かろうと、強かろうと、上段を無数の蜂と堅い蝙蝠が飛び交い、中断を強力な主力級の使い魔が犇めき、下段をイヤらしい上に凶悪な毒持ちまでもが這い寄って来るんだ。相当ステータスで優位に立つか、数で押せなければキツイわな。

「バカヤローニゲルゾ、ジェネレーターアイテジャブガワルイ」

 言ってる間に盗賊が尻尾撒いて逃走。

 幾つか連中の物資も拾得出来たし、まあ良しとしよう。


 後日、タツキチの下を訪れ、蓋4号機を受け取る。

「これでアサルトディスクも4号機か、そろそろ分けて編成するのも検討したらどうだ?」

「うーん、考えたんだけど、やっぱ数は力だなと」

「まあ、所有者がそう決めたんならそれが良いさ」

 受け取りも済み、早速部隊編成に4号機を組み込む。

「現在のNPCの評判は…中の下、まずまずだな」

 評判維持を、職人に一任したが、今の所上手くいってる感じだ。

 その分、部隊を遠征に出す事で、蓋の学習能力は高まり、ペットのLvも上がる。

 しかし、マローダーといい勝負が出来る、ドローンが4機も居て安心できないのはヤバい。

 どんだけプレイヤーサイドの強さが上がってるんだって話だ。

 そんな事を考えてると、丁度部隊の出撃なので、俺も付いていく。


「おっほ!!<ナーガ>強!!」

 ただでさえ金色で目立ってた<神の使い>が、<ナーガ>になった事で、これまで以上に注目されている。

 当然目立つという事は標的にされるという事で、集中砲火に遭うが、俺は豚と畑を使い凌ぎ、その間耐えた<ナーガ>が悪党を懲らしめる。

 蓋部隊も持ち前の堅さで、ワッショイされつつも耐え、その隙にペットが揉みくちゃにしてグダらせ貢献。

 良い感じに悪党と戦ってたら、大規模な戦闘に発展し、ピリピリしたガチな空気に萎えたので、蓋を守りつつ素材の回収にシフト。最後は蓋も無事帰還させる事が出来た。


 そしてVer2.4アップデート当日。

 内容こそ、細かい修正と成長限界の解放と並盛だが、中身は豪華だ。

 詳細は以前にも触れたから端折るが、情報が遅いと今頃とんでもなく悩む羽目になっただろうな。

 インストールとダウンロードを終え、ログインする。

「こんにちは」

 時間差で先にログインしていたユキとユナと素知らぬ顔で挨拶し、マサと駄弁り始める。

「早速巷が阿鼻叫喚の嵐だぞ」

「そりゃNPCから情報を、又はそれをまた聞きした人以外は、不意打ち以外の何物でもないからな」

 パラメータ、ギフト、肩書から、淘汰1回ごとに最低1つ消去だもんな。

「マサはどうだ?ちゃんとマネジメント出来てるか?」

「まあ、なんとかな。一応、+補正で、範囲を抑えるだけなら【圧縮波】は1つで良いから、Lv2から2つ消去して、無印に戻す気だけど」

「【圧縮波Lv2】から【圧縮波】にするのか、範囲抑制はともかくノックバックが減るのは痛いな」

「そうなんだが、他に捨て駒に出来そうなギフトも無いし、肩書もどこまで残そうか迷ってるんだよな」

「迷うよな、なんせパラメータに補正が乗算で入るって話だから、パラメータを消し過ぎるのは勿体なさ過ぎるよな」

 というのも、既に人柱たちが齎した情報によると、1回目の淘汰でパラメータに掛かる補正は20%、2回目で乗算で40%掛るそうだ。

 よくそんな金が在ったなと思ったが、コーポメンバー総出で金を掻き集めれば、造作も無いとの事だ。

「つまり、回を重ねる毎に、20%、40%、60%って増えてくのか」

「ここまで補正が強いと、パラメータの効果だけでもギフトや肩書を上回る効力を発揮するから、出来るだけ残したいところだ」

「そうだよな~、俺もそう思ってなるべくパラメータを残す方向では検討してるんだが」

「ほう、何を消す心算なんだ?」

「[跳躍]と[解体]だ」

「その2つか…確かに数値が低いと、無くてもやってけるパラメータだが、淘汰突入後の補正を考えると…」

「ホント悩ましいよな」


 さて、アプデを迎えはしたが、俺達は未だに進化の過程にあるので、頑張ってLvを上げる必要がある。

 しかし、ここにきて、俺達みたいな半端なLvの人間にとっての、大逆風が吹き荒れる。

「…なんてこったい、ここにきて本当に大デフレ到来とか」

 なぜこうなったかというと、成長要素の新ステージたる淘汰の消去が原因だ。

 皆、それぞれのビルドの思惑から、これだけは死守、これは出来れば消したくない。そんな思惑と葛藤が入り混じり、既に淘汰へ辿り着いたプレイヤー、未だ至らないプレイヤー含め、ある行動に出る。

「そうだよな、こうなれば消去を免れる術は無いんだから、少しでも被害を抑え、現行のビルドを維持したいと思うのは必定。その為に、代替に成りえる装備を整えようとするのは当然の流れだよな」

 そんな感じで、皆が皆、金に物を言わせ、質のいいものを買い漁り、市場から価値のある物が消え失せた。

 普通、こうなると物価も上がりそうなものだが、実際、価値のある物…それも最上級のモノは極度のインフレを起こし、それ以外の消耗品や中堅の装備や素材は見向きもされず、価値は暴落していった。

 だが、俺達はこの流れも予想しており、ここぞとばかりにお値打ち価格で出品されている物を買い漁る。

 最初こそ、極々少数の者たちの行動だったが、次第に理解の広まりと、やはり本来の価値以下で買われる事への忌避感不快感が勝り、現金収入よりも精神的損失を嫌った出し渋りが横行。

 市場は一気に品不足へと陥り、大デフレからハイパーインフレへと突入。

 更に拍車を掛ける様に、買い占めと出し渋りが原因で、現行の最上級装備へ至る為の、過程素材が枯渇。

 というか、錬金等で有益な効果やOPを継ぎ足し引き継がせる為に、最下級素材こそが重要で、極端な話、石ころ1つですら建材以外への利用価値があるものへと変貌していた。

 例としては、上物のインゴットを作る場合、鉄を加工するのが手っ取り早いが、敢えて屑鉄から精錬していき、普通の鉄に行きついた時点でOPを2つ3つ付ける事が可能で、最上の装備を揃えようと思うと、この面倒極まりないガチャの沼は、避けられない道なのだ。

 当然、狙ったOP、確率で効果が乗る系のスキルや設備を活かそうと思うと、兎に角試行回数が求められ、それが原因で、深刻な素材不足が起きている。

 そんな状態だが、新規には最高の環境とも言える。

 ホーム内で受けれる、清掃依頼の拾得物が、本来では有り得なかった価格で売れるのだから、Lvアップが楽々で、直ぐにビルドの選択肢が広がるので、一層楽しみやすい事だろう。

 とまあ、そんな感じで、インフレのお陰で、我がカンパニーは絶好の稼ぎ時が来たというわけだ。


「これから人気を伸ばす装備は革系ですね」

 シーラの下を訪れ、需要の推移を教えて貰う。

「革?」

「ええ、最近ティラノサウルスの素材が流通する様になって、革の装備を一新する流れが出来始めています」

「つまり、土台になる革装備と加工用の素材が高騰するわけか」

「その通りです」

 こんな感じで、うちの情報源はシーラ達ハイエルフであり、非常に強力なバックとなってくれている。

「はい、見返りの素材ね」

「確かに受け取りました」

 見返りとして、俺らは向こうが要求した素材を納品。きっとこの先高騰する素材なんだろう。

 こういう所でも、有益な情報を齎してくれるので、やはり親密度最高は伊達ではないという事か。


「という事で、次は革が流行するそうだ」

「フム、というと、ティラノの格下の皮をを集めれば良いのか」

「ああ、それとなめし材の材料もな」

「ピンポイントの様で、割と雑多だな」

 そんなこんなで、マサと連れ立って、高騰目前の素材を集める事に。

「えーっと、T-rexの直ぐ下ってなんだ?」

「んん-、取り敢えずマンモスの皮とモンゴリアンデスワームの皮が有れば良いんじゃね?」

「そうだな、それでいこう」

 先ずは雪山を登り、マンモスの巣に到着。

「人が全く居ないんだが」

「まあ、想像は付くがな」

 そしてマンモスと一当たりしてみて確信。

「うん、テコ入れでかなり強くなっているな」

「割に合わないから、誰も居ないんだな」

「まあ、丁度良いな」

「ああ」

 確かに強化はされてるが、今の俺らなら真っ向から狩れる相手だ。

「俺が抑えるから、マサはとにかくかち上げにに専念してくれ」

「応!!」

 ドッペルと同盟を発動し、ガンガン開墾して、地の利を得る。

 其処へマンモスが突っ込んでくるが、人形のモルヒネ光線とガーディアンの凶悪な魔法が炸裂。

 勢いを殺したところで、大量の蜂が群がり、そこへ<ナーガ>が肉薄し、完全に塞き止める。

 その脇を他のマンモスがすり抜けるが、残りの使い魔と畑で抑える。

 ここで漸くマサの出番到来だ。

「1体も逃がさねえからな!!オラ!!」

 大斧を下段から振り上げ、マンモスを垂直にかち上げる。

 すかさずその真下へ畑を差し込み、陣を押し上げつつ、マンモスの腹部を痛め付ける。

 この方法で、マンモスが一々スロープの底へ逃げるのを阻止しつつ、狩っていく。

 そして四十分後、全てのマンモスを狩り、付加価値の付与を職人に託し、砂漠へ向かった。


「どうする?」

「どうせ数集めなけりゃならんから、幼生体から片っ端から狩って行こう」

 砂漠を南下し、幼生体の縄張りに突入。

「おー、幼生体が成体並みに強くなってるのな」

「その分、素材のドロップ数も増えてるな」

 これは美味しい。

 ワームを美味しくしゃぶってると、ランダムイベントに巻き込まれ、ミイラの巣窟に誘われたが、まあテコ入れ後であっても、今の俺らには問題ない程度の難易度で、キッチリしゃぶり尽くしておいた。

 粗方幼生体を狩ると、今度は成体の縄張りに入る。

「グッ!!流石に強い!!」

「舐めるな!!」

 途端に敵のステータスが跳ね上がり、一気に緊張感が高まる。

 マンモスと違い、環境が此方に何の有利にも働かないのが厄介だ。

 常に四方を囲まれ、対処がし辛い地中からの攻撃は、ほとほと厄介だ。

「マサが範囲を捨てて無けりゃ、これで完封で来たんだがな」

 畑の下からノックしてくるワームを指さし、つい呟く。

「そうだな…まあ、俺も現状に色々と思う所が無いわけじゃないが、流石に無策じゃな」

 やっぱ、範囲が有った頃のビルドが懐かしい時があるみたいだ。

「その辺も含めて、兎に角金が要るし、頑張ろう」

「そうだな」


「次は薬品に使えそうな素材か」

 素材を持ち帰り、お次の行き先を決める。

「…行きたくは無いが、フォレストが一番効率が良いだろうな」

「仕方ないな」

 本当に行きたくはないんだが、危険な代わりに美味しいのは事実なんだよな。

「なら俺も行くぜ」

 ベッタラ名乗り出てくれたので、3人でフォレストへ乗り込む。

「いやー、<ゴーレム1号><ゴーレム2号>が超便利だ」

 3人でゴーレムを囲み、畑を敷き、迫る敵を迎え撃つ。

 クロスイーターの大群も、畑に陣取る大量の使い魔に削られ、弱った所を次々とゴーレムに引き寄せられ、それを陣の中心の俺らが一歩的にボコるだけなので、非常に楽に素材が溜まる。

「俺らは大物を狩れば良いだけだから、ホント楽だわ」

「だな」

 マサもベッタラも、予想していた苦戦とは程遠い現状に、ご満悦の様だ。

「でも、知ってるぞ、このまま調子に乗って、ホームから離れすぎると即死するって」

「「だな」」

 そんなオチは勘弁なので、程々の所で満足しておこう。

「ここら辺ならまだ余裕が有るな」

 定点狩りの位置を定め、暫く狩りに勤しんだ。


 数日間、頑張って高騰予想の素材を集め、価値の下落した売り物を買い漁る。

 勿論、闇雲に買うのではなく、再高騰の見込みが強い物を狙ってだ。

「どんな感じだ?」

「はい、マンモスとワームの皮を、革に加工したです」

「付加価値はどうだ?」

「全体の0.1%も無いですけど、質の向上と[聖水効果:大]と聖属性の付与、その他のOPを4つ付ける事が出来たです」

「それは凄いな、もっと下級の革から加工していけば、より強力な革に出来るんだよな?」

「理屈ではそうです、でも確率が…」

「マンモスとワームの皮単体の加工で0.1%以下だもんな」

 やはり、究極の装備というのは狂人が目指す物なのだろう。

 ちなみに、現状の狂人仕様の剣は、OPだけでも20個ほどあって、全てが○○:大や○○:極らしい。

 そんな化け物装備の推定価格は兆を超えるそうだ。

 さらに捕捉すると、その剣は初期装備仕様のショートソードとの事だ。

 運も良かったのだろうが、よくもまあ、そこまで辿り着いたもんだよ。


「うん、半端な失敗作でも恐ろしい程売れ行きが良いな」

 更に後日、予想通り革製品が高騰し、加工済みの革が飛ぶように売れていく。

「ヒヒ…そりゃそうだ、失敗っつっても聖水効果が付かなかったとか、5%の質上昇を引けなかったとか、そんなだからな、品質に問題はねえよ」

 この数日間、マッドも様々な薬品を量産し、革の販売に合わせて出品。

 加工に使える品なので、こちらも飛ぶように売れている。

「さて、売上金のストック期間が残ってる内に、次の行動に移るか」

 という事で、数日ぶりにシーラの下へ。

「お陰様で大儲けさせてもらってるよ」

「どういたしまして、ではお次は接着剤と樹脂が高騰します」

「その心は」

「余った革で装飾品や防具の裏地にするのに使うからです」

「ほうほう、でもそれって、次と言うより今じゃ?」

「その通りです。本題はここからで、接着剤と樹脂が余ると?」

「成程…建材とかも売れるって事か」

「他にも紙製品や車両部品も高騰しますね」

「それだけ、接着剤と樹脂の需要が広いという事か」

「ええ、ですから、如何に儲けの大きいニッチなジャンルを攻めれるかが鍵ですよ」

「ありがとう、参考にするよ」


「という感じで、何が一番売れると思う?」

「メジャーな流用先以外ですか」

 パミルと相談しながら候補を挙げていく。

「私の専門の、装飾品なんかも、地味に使いますね」

「確かに地味かもしれんが、装飾品自体は超メジャーだからなぁ…」

「ですよね」

「なら[塗装屋]向けに、塗料を生産するのはどうでしょうか?」

 と、おりょうさんが助言をしてくれる。

「塗装関連ですか…良いかも」

 確かにかなりニッチな市場かもしれん。

「塗装の力を侮る気は無いけど、どうしてもこだわるのは後回しにしそうだしな」

「つまり、終始安定して売れると」

 決まりだな、うちの次の主力商品は、塗料で決まりだ。


「じゃあ行こうか」

 パミルとおりょうさん、サーモンを連れ、鉱脈を巡る。

 鉱物はペンキや顔料の材料になるからね。

「ボスアッシーって討伐されたのに、なんでまだ居るんだろうな?」

 ボス部屋で、焼き豚を仕込みながら、少しずつ水晶やらを回収。

 相変わらずなブレスの暴威に晒されながらも、畑と豚と<ナーガ>を盾にする事で、遠距離でコソ泥する分には余裕が有る。

「そういえば、ここの水中に潜った事って無いけど、何か素材が採れるんだか?」

 気になったので、3人を安全圏に戻し、1人で潜水を開始。

(んー…海藻ばっかか)

 少々期待外れだが、折角だしと、根こそぎ採取しておく。

 水中では、アッシーのブレスも飛んでこないし、安全だと思ってたが、巨大なウツボが襲って来たので即撤退した。


「なにアレ?」

 PAに戻り、識者に聞く。

「大ウツボですね、アッシーとは共生関係にあって、相当強いみたいですね」

 適応薬が無ければ、敵いそうもなかったし、逃げて正解だったな。

「そういえば、海藻を取ってきたんだっけ、これは使えるのか?」

「お~、[地底湖昆布]に[地底湖ワカメ]ですか。食べて良し、接着剤にして良し、使い勝手が良い素材ですね」

 という事なので、マッドとタロウに託す。良きに計らってくれる筈だ。


 塗料の素材を集める事数日。

「そろそろ放出し始めるか」

 革関連の需要低下と共に在庫が捌けたので、塗料素材を放出。

 すると、ジワリジワリとだが、品質に自信がある分、強気な価格設定にも関わらず、売れていく塗料の材料。

「マンモスの脂肪とモンゴリアンデスワームの脂肪も、いい具合で売れてるな」

 先日の狩りで、大量に余っていた余剰素材だが、ここに来て主力商品と化すとは。

 っていうか、大分ニッチな需要を狙ってるのに、初動で既に売れ始めてるって事は、自力で先読みしてるか、同じようにNPCとのパイプを持ってる連中が多数いるって事か。

 確かに、展開が読めてるなら、うちの物を加工して転売するだけでもかなり儲かるだろうな。

 しかし、ジャンル被りを避けた甲斐はあった様で、数日してメジャーなジャンルが失速する中、うちの商品は安定して売れ続け、トータルでかなりの儲けを叩き出せた。


「うーん…また増えてる」

「頑張ったわ!!」

 金儲けは一旦休憩にし、アコと雑談。

「数も凄いが、よくもまあここまで平均Lvを上げたものだ」

 総数170体、平均Lv900。最早ふれあい動物園という規模ではない。

「蓋が4機になったお陰で、ペットの被害が大幅に減ったのが大きいわ」

「それだけ、経験値効率が良くなったって事か」

 ペットの話をしてる中で、ペットの流行の話に。

「相変わらずマンバは人気よ、コスパが素晴らしいもの」

「その割に見かけないけど」

「小さいから見逃してるだけじゃないかしら?テツ君の場合は使い魔だから、ただ突っ込むだけだけど、ペットだと体に巻いて隠したりもするからね」

「ああ、腕に巻いとくのか」

「そうそう、アレが近接には刺さるのよ」

 剣戟の最中に、唐突に毒ダメージを受ければ、さぞ均衡が崩れるだろうな。

「アレは?コズミックキャットとかいうの」

「アレも超希少かつ、圧倒的需要のせいで、未だに行き渡って無いわね」

「というか、どうやってテイムするんだ?」

「気合と根気ね」

「道理で見かけないわけだ」

 そもそもテイムのハードルが高すぎるんじゃ、滅多にお目に掛かれないのも納得。

 というか、よっぽど余裕が有る戦闘とかじゃなきゃ、人のプレイスタイル何て見てる暇が無いしな。


 とは言ったものの、少々今のペット事情も気になるし、ホーム外壁を散歩する。

 すると早速発見、腕にマンバを仕込んだ悪党と善人を。

 お互い、それで初見殺しを成功させてきて味を占めているのか、お互いにバレていても、必死にマンバを相手に噛み付かせようとしている。

 これはグダってると思った矢先、善人が突然衰弱し、死亡した。

(おお、パンツの裾からマンバを進ませてたのか)

 それに気づかず、足を噛まれ絶命した様だ。悪党の方が一枚上手だったようだ。

(しかし、僅か数噛みで、今の森をうろつけるプライヤーを仕留めるのか)

 相当鍛えてるのが窺える。そしてやられた方も、きっとマンバに全部リしてるんだろうから、当たれば必殺なんだろう。

 正攻法が勝つか、絡め手が勝つかの勝負だったようだ。

 そういう視点で振り返ると、中々緊張感ある差し合いだった。

 お互い「おい」「おい」と手を伸ばし合ってる様は、酷くシュールだったが。


 時折絡んでくる悪党を、周囲の善人と協力して追い払いつつ、テイマーを探す。

「ん?」

 急に使い魔が反応し、豚が大ダメージを受ける。

 周囲を見渡すと、いつの間にかゴーレムによって、カビの生えたジャガイモが拘束されていた。

「モグラか」

 ゴーレムの手の中で、もぞもぞと動く様は中々可愛らしい。

 その後も豚が絶叫し、使い魔にボコられるモグラが続出し、最後はステルスが切れたテイマーを、ガーディアンが撃ち抜いて、決着が付いた。

「地中からの奇襲一本でやってきたのか」

 確かに、飼い主は姿を消し、ペットによる地中からの奇襲は凶悪な戦法だ。


 その後もテイマーを探すが、虎や狼といった王道が多く、変わり種は早々お目に掛かれないと諦めてたが、ティラノサウルスを3体連れた善人に遭遇。

 というかペットマスターの面々だった。

 向こうもこちらに気付き、お互いに軽く会釈をするに留める。

 お互い干渉せずにって事で、暗黙の了解で意思の疎通が完了した。

 俺は自分の安全を確保しつつ、彼らの動向を観察。

 戦闘を期待し、ドキドキワクワクで見守っていたが、一向に始まらない戦闘。

 悪党がガン逃げして、戦闘が成立しないのだ。

 流石ティラノ、居るだけで周囲を圧倒してやがる。

 とか思ってたら、なんと悪党側にもT-rexが3体登場。怪獣バトルが勃発した。

 まあ、普通に戦えば補正分悪党が有利なので、それとなく加勢する。

 ペットマスターに目配せで助力を伝え、取り敢えず悪党側のサイドを突く。

 これで少しは気を引けるだろう。

「ピギィーーー!!」

 うん、悪党側のT-rexが豚にまっしぐらで、戦闘は一瞬で破壊された。


 気を取り直し、別の悪党との戦闘を見守る。

 流石現時点での最強格のペットだけあり、強い堅い速いの三拍子揃った優秀なペットだ。

 それでも、ペット化でかなりの弱体化を喰らってるので、悪党をサポート無しで圧倒できるかと言えば、それは無理な様だ。

 …まあ、コストを工面して、Lv100にでも上げれば野生時の強さに匹敵するだろうけどな。

 彼らのT-rexは、まだまだその域には達してはいない様だ。

 だからこそ、こうやってLv上げをしてるんだろうけど。

 そんな感じで、ある程度T-rexに経験を積ませると、T-rexを控えさせ、いよいよ本気を出す様だ。

 その戦法が、さっき見たマンバの差し合いという、一見しょーもない戦い方だが、彼らは一味違う。

 なんせ、肝心のマンバがグリーンやブラックではなく、レッドマンバとスノーマンバという、上位種だからだ。

 相当Lvを上げてるのか、今度は奇をてらう事無く直進させ、真正面から悪党や魔物を毒殺していく。

「というか数多すぎだろ…」

 レッドとスノー混合で、30体は居るだろうか?そんな超小型の蛇がスルスルと這って行き、波状攻撃を仕掛ける様は、中々に恐怖を誘う。

「Lvも高いんだろうけど、サポートも充実してるな」

 それぞれが、ペットへのバフ、敵へのデバフ、露払いを分担し、着実にマンバの群れを接敵させていく。

 まるで「腕に括り付けるだけがマンバの使い道じゃねえぞ」と言わんばかりだ。

 いや~、良い物を見させて貰った。


 さて、金策を再開。

「次はインゴットが高騰します」

 更に数日経過し、いよいよインフレの全盛期到来か、換金物の需要が高まると、シーラは言う。

「皆、目的の達成と、妥協と諦めが付く頃合いですしね、そろそろ資産を貯め込む時期です」

 そうなると、もう何が売れるとか、何が売れないとか関係なしに、何でも売ってインゴットに変えるべきだな。

 そうと決まれば行動は速い。

 どんなものでも売れるなら売り切る、それでいて1円でも多く売り上げを確保する。

 このシンプルな方針を掲げ、このインフレを最良の形で乗り切るのだ。

 先ずはシンボル巡りから、進化7回目ともなると復活も遅く、計画的に回らないと常にシンボルが枯渇状態となってしまう。

 アースを巡り、バグスターを巡り…しっかりと練り歩いて地道に回収。

 その間も、農耕で金目の物を育て、合わせて職人衆に託す。

 そして、資源が枯渇すれば、今度は狩りで収入を得る。

 それの繰り返しで、着実にインゴットの備蓄が増えていく。

 でもまだだ、ハイパーインフレが落ち着いた時、10回目の進化を済ませ、淘汰へ到達する為にはまだ足りない。

 俺も含め、メンバー全員の正念場だ。


「やっぱ作物で稼ぐなら此処だよな」

 フォレストを訪れ、ポータルを乗り継ぎ北へ向かう。

 今回は流石に全力を出さないと厳しいので、全メンバー、Lv1500超えのペットも連れて来た。

 目的地に辿り着き、安全地帯から意を決して踏み出す。

 仲間には、死なない事を前提に、敵の数を減らす事を優先して貰う。

「良し、[ドッペルゲンガー]<百姓連合+1>!!」

 フュージョンボックスも起動し、全力で鍬を振るう。

 瞬く間に一面原木畑時々畑に変わり、皆でその内側に立て籠もる。

「先ずはリソースの確保からだ」

 数少ない畑でスイカやトマトを栽培し、食料飲料を確保。

 これで長期戦の準備は整った。後はどれだけ粘れるかの勝負だ。


 テコ入れ後のフォレスト、それもエリアを跨ぐと正に魔境で、敵が途切れることなく攻め立てて来る。

 その分、耕作地ランクは高く、収穫できるものは、現在流通してる最高級の物に引けを足らない。

 既に敵の素材込みで、相当数取得したが、最後の追い込みとしてはまだ足りない。

 皆に聞けば、装備の耐久度が心許ないとの事なので、一旦帰還。

 無理してロストする位ならば、回り道した方が結果として得が大きいので、安全策を取った。

 念入りにケアを行い、再び戦場に舞い戻る。

 リソースは先程十分に用意したので、いよいよ本格的に高級品に手を着ける。

「原木畑には松茸にトリュフ、畑にはメロンに薬草を植えよう」

 数ある農産物の中で、最上では無いが、そこそこ値が張り、回転率の良いこの四品目。

 本音を言えば、最高級品を栽培するのが良いのだが、リスクが大きいのだ。

 それなら、守る時間が短く済む、中級以上の作物を回した方が、危険な現場では効率が良いのだ。

 さてさて、そろそろ潮時だな。


 PAに戻り、全員で締めの作業を始める。

 方々から屑鉄に粗悪なインゴット、格安の金属製武具を買い集める。

 同時進行で、これまでの戦利品を現金化し、金属収集の費用に充てる。

 そんな感じで、最後の追い込みを掛け、Lv上げも我慢し、限界までインゴットの質と数を揃える事に成功した。

 そしてアプデから十数日後。

 ゲーム内経済が、一時だがハイパーインフレと化した稼ぎ時は終局を迎えた。

 アプデから数日は、皆、淘汰でパラメータやギフト、肩書の消去を知るや、その選定と代替装備の収集や回収に躍起となり、最初こそ金がモノを言っていたが、直ぐに物の価値が急上昇。

 金で物が買い漁られ、物が無くなったら急激なデフレから急激なインフレへと変化。

 この一連の騒動で、大儲けした我がコーポは、その後も資本を上手く運用し、巨万の富を得る事に成功。

 メンバーのLvを一気に淘汰直前まで引き上げる事に成功した。

 こんな事が成立したのも、事前に淘汰の情報を得ていて準備をしていた事、バランスよく職人が揃っていた事、その職人に物を供給できる体制が整っていた事、強力な後ろハイエルフが居た事が、大きな要因だ。

 ホントぼろ儲けだったわ、何の相場が上がりそうだとか、これが直ぐに売れなくなるだとか、そんな投資家なら喉から手が出る程欲しい情報を、高騰寸前の素材を融通する事で教えて貰えるのだ。

 しかも、その素材が高騰する背景もバッチシだから、うちに出来る範囲で最高の加工を施した状態で売りに出すので、それはもうバカ売れであった。

 そんな感じでアプデから二週間強が経ってしまったが、漸く俺らも淘汰へ到達した。


色々とアイデアを書き留めたり練ったりゲームをしたり仕事が忙しかったりで、二週間ペースに戻るのはまだ時間が掛かりそうです。

という事で、次回も三週間後に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 50話おめでとうございます! 今後も楽しみにしてます 幸運の召喚変化は半分ぐらい強くなったのかどうかよく分からないですねぇ...今後に期待
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ