第五十話
~前回までのあらすじ~
コーポレーションを設立し、一先ずのリソース不足は解消。
更にペットを増やし、牽引する蓋も増え、プレイヤーの能力に依存しない戦力が着々と増すのであった。
取り急ぎではあるが、多岐に渡る素材を確保し、今度は自身の為の行動に移る。
目一杯換金物を現金に戻し、教会へ向かう。
「さあ。一気にLvを上げちゃおう」
進化6回目のLv160を超え、7回目のLv46まで上げれた。
進化2回分の肩書取得と、覚醒振り分けを行う。
「肩書か…シーラからの情報を信じるなら、プランを崩して[幸運]を高める価値が有るな」
遡る事数日。
「そうだテツさん。あなた方とハイエルフの親密度が最高になっているので、今後の成長要素について、情報を開示できますが、どうします?」
対価は要求される様だが、値千金どころの騒ぎではない情報なので、色々と希少な物資を渡す。
「これだけ出して貰えるなら、詳細まで開示しても大丈夫ですね」
そして語られた情報がコレだ。
・進化の次の成長要素の名称は[淘汰]。
・10回目の進化で、Lv200の状態で解放。
・淘汰を行うと、パラメータ、ギフト、肩書のいずれかから(全27種)1つ選択し、消去する。
・淘汰をする毎に、パラメータに補正が掛かる。
・パラメータを消去し、無意味になった肩書等が存在する場合は自動消滅する。その分パラメータへの補正が更に高まる。
・消去したパラメータが覚醒済みだった場合、他のパラメータに振り分ける事が出来る。
・無意味となった因子やパラメータの覚醒数は、再振り分けする事が出来る。
・強力な効果を持った、[刻印]を取得出来る。
・刻印を取得し、無意味になったパラメータ等は消滅し、その分パラメータの補正が高まる。
・淘汰は10回行える。
・Lv1毎に上昇するパラメータは1000。
・上昇量は1000で固定であり、淘汰数での変動も無い。
・同様に、因子とパラメータの覚醒数への補正も無い。
という感じなっている。
「これはまた詳細に…。成程、リビルドとまではいかなくても、ビルドの方向性を変える事が出来そうな位には、影響が大きそうだな」
「そうですね、この期間で終のビルドが決まると言っても過言…という程ではありませんが、色々と取り返しのつかない事態が多いので、よくよく考えた方が良いですね」
「これは値千金どころの話じゃないな」
という事があった。
「俺にとって最重要なのは、肩書を消せることだな」
皆同じ条件の中、俺には《生命フリーク》と《生命マニア》という、真っ先に切り捨てられるギフトが在るのは有難い。
そして、これから行う2回分の進化の手続きと、残り3回の進化で、幾つか踏み台となる肩書を、気兼ねなく選べることを意味する。
「これなら、最後に《幸運神》を取る為に、今から計画的なプランを練らねば」
今、残りの再覚醒数は40回で、最後に《幸運神》を取る事を考えると、10回目の進化時には[幸運]の覚醒数が190に達してる必要がある。
「先ず、6回目の進化特典の再覚醒を振り分け[幸運]の覚醒数を36に…この時点では【引換券】を2つ使っても、必要覚醒数が60の《幸運マニア》までは14足りないから…」
そして7回目で振り分けると43で、引換券を使えば53になって、8回目で振り分けて61…、9回目で70か…。
6回目で引換券を使って《幸運フリーク》を取れば66、7回目でマニアを取れば103、8回目で信者で161、9回目で信者Lv1で230か…。
「これは《幸運神》は現実的じゃないな」
あくまで[幸運]のスキルを変化させたいだけだし、ギリギリ覚醒数90に届けば良いのだから、その方向で考えると。
「10回目で《幸運マニア》を取るか、消去を前提に8回目で《幸運信者》を取ってフリークとマニアを消すか」
いや、先ずは消してもいいパラメータとギフトを捻出してからの方が良いか。
現座の俺のパラメータとギフトがこれだ。
[幸運][観察][魔力]←覚醒させてるので消すのが勿体ない。 【[速度]】←ギフトと紐づけ。 [制圧][跳躍][解体][包囲]
【生への執着Lv1+31】【速度】【蛇使い】【ドリス】【核細胞保護Lv1+30】【獣人+1】【吸血鬼+1】【植物人間】
「この中からリストラ候補と言えば、[跳躍][解体]は鉄板か」
両方共強力だが、無くても困らないという位置付けなので、候補に挙がった。
「最低でも10個は消去する必要があるんだもんな、となるとあと8つか…」
そうなると、肩書とギフトから捻出する必要が出るから…
「先ず《生命フリーク》と《生命マニア》は消せるだろ、そうすると執着と保護の+値が5も下がると」
ともあれこれで4つ、あと6つ。
「いや、無意識に[魔力]を消すのは勿体ないと思ってたが、消せば1つ捻出できる上に、覚醒数が7回分も戻って来るのか…」
暫定だが、これであと5つ。
「ここで《生命神Lv1》を取れば、これ以上ギフトの+値を落とさず《生命信者Lv1》を消せるから、これであと3つになるのか」
…ダメだ、知恵熱が出そうだ。
「一旦進化を保留にするか」
Lv上げをキャンセルし、金を物に換えてPAに戻った。
「おやテツさん、どうしました?」
「また情報を買いたい」
シーラに換金物の一部を譲渡し、欲しい情報を伝える。
「肩書の情報ですか、分かりました。テツさんにとって有用な肩書の情報で良いんですね?」
「どんな些細な事でも構わない」
「分かりました、ここまで報酬を頂けるのでしたら、奮発しましょう」
そして、初っ端から超有益な情報が飛び出す。
「先ずは《運命の神》の情報から、これは[生命][幸運]双方の覚醒数が100を超えた上に、総覚醒数が400を超えてる場合に取得できます。効果は両方の覚醒数を100上昇させます」
「…いきなり問題が解決しそうな情報が出て来たな…」
「まだまだいきますよ、《生命の深奥》と《幸運の深奥》は、[生命]と[幸運]それぞれの覚醒数が400を超えた場合、取得するとスキル変化が起こります」
マジか、ただでさえ3回目以降の変化は強化度合いが顕著に表れるのに、既に5回変化してる[生命]のスキルの6回目とかどうなるんだ?
その後、他にも有益な情報を受け取ったが、最初の3つを超える情報は1つか無かった。
Ver2.4まで残す事数日。
俺は再び教会に訪れていた。
「これで良し」
前回キャンセルした時よりもLvを上げ、進化7回目のLv103までになった。
そしてここからが、綿密な計画の見せ所だ。
残り肩書取得数は5、その中で、《運命の神》の解放を目指し、2回取得する事を目指す。
先ずは6回目の進化から。
「現在の[生命]の覚醒数は300越え、後は[幸運]を100以上にするだけだから…」
現状の幸運の覚醒数は30、振り分けと引換券込みでも46。ここまではおさらいだな。
「先ずは《幸運フリーク》を取得して覚醒数を66にしてと」
因子の追覚醒は[蛇使い]4回と[植物人間]を2回で、16回と14回に。これで、[植物人間]が2回目のスキル変化を起こす。
途中[幸運]のスキルの検証を挟みつつ、構築を続ける。
「7回目も[幸運]に4回振り分けて《幸運マニア》を取れば、晴れて覚醒数が100になると」
これで、8回目の進化時には、《運命の神》が取得出来る。
「となると、《生命フリーク》《生命マニア》《生命信者Lv1》《生命神》《幸運フリーク》《幸運マニア》は消去しても問題無いと」
この時点で、消去候補を7つも捻出できる。
「あと3つはそうだなあ…」
1つ消すごとに、パラメータに補正が掛かるのだから、出来るだけパラメータは消去しない方向が理想だ。
「となると、【核細胞保護】と[跳躍][解体]を消去すれば、強力なギフトを残しつつ、パラメータ補正を享受できるか」
しっかりとした今後のビジョンが出来てるので、今回はキャンセルはしないでそのまま完了し、PAに帰還した。
ちなみに、パラメータの残り追覚醒3回は[観察]に。因子は[蛇使い]を1回、[農家]を5回、[パイパー]を1回覚醒させた。
これで[植物人間]に続いて[蛇使い]と[農家]もスキル変化が起こる。
スキル変化に拘るのは止そうとか言ってたのは誰だっけ?って思うくらい、清々しい程スキル変化に拘っているな。
「えーっと、変化したスキルはどうなってるかな~?」
スキルの一覧を見ると、こんな感じに変わっていた。
[植物人間]
<岩にも生える>[生命]が5上昇。
<超合成>光を浴びている間満腹度が少しずつ回復。
↓
<鉄にも生える>[生命]が10上昇。
<極合成>光を浴びている間、満腹度と保水度が少しずつ回復。
[農家]
<品種改革>:生産速度4%上昇。
<土壌改革>:生産数2%上昇。
↓
<品種革命>生産速度6%上昇。
<土壌革命>生産数3%上昇。
[蛇使い]
<高価な蛇壺>キングコブラを2体使役する。
<名工の蛇笛>キングコブラを2体使役する。
↓
<国宝級の蛇壺>グリーンマンバを2体使役する。
<国宝級の蛇笛>ブラックマンバを2体使役する。
そして本命の[幸運]
<神の使い>金色の大蛇を10体使役する。
<島亀>巨大な亀を使役する。
<黒いダイヤ>クロマグロを使役する。
<皇虫>究極の甲虫を使役する。
↓
<鯱>黄金の鯱を10体使役する。
<大陸亀>超巨大な亀を使役する。
<豪州ブランド>カジキマグロを使役する。
<耕虫>螻蛄を使役する。
↓
<ナーガ>ナーガを使役する。
<星亀>星亀を使役する。
<リュウグウノツカイ>リュウグウノツカイを使役する。
<光虫>発光する甲虫を使役する。
「[植物人間]と[農家]は順当に強化されたけど、[蛇使い]はなんか凄い事になってんな」
攻撃力だけで言ったら、間違いなくマンバの方が上だけど、打たれ強さは前の方が強い筈なんだよな…。
純粋な強化じゃなく、変化球で来ることはこれまでもあったので、今回もその一例という事だろう。
「[幸運]は最早凄いを通り越した変化をしてるな」
<鯱><大陸亀><豪州ブランド><耕虫>は非常に強力で、<鯱>とカジキと亀は順当に強化され、悪党を手古摺らせ、<耕虫>は地中からの奇襲が強力で、期待以上の戦力と化していた。
これが、更に強化されてるんだから、検証が楽しみでならない。
「取り敢えず、使い魔版マンバがどの程度戦えるか見ないとな」
そして試し切りの相手は悪党。
ホームから出ればそれなりの数が居て、即エンカウント出来るのもお手軽で良い。
消耗品は最低限に留め、畑を耕しマンバが戦うのを気長に待つ。
というのも、マンバはキングコブラと違い、毒を噴射する遠隔攻撃がオミットされてしまったため、中々噛み付きまで至らないのだ。
そんな中、気概の有る悪党が使い魔の大群に態々突っ込んで来て、大剣を振り回し無双をし始める。
「ハッハッハ!!こんなもの手応えの無い!!」
確かに宣うだけあって、凄まじい破壊力と攻撃範囲だ。
そんな暴力の化身の足元に、スルスルと這いよったマンバがカプリ。
「ぎゃあああああああああ!‼」
ほんの一瞬で、悪党のLPが2割消し飛び、面白い位に狼狽える悪党。
「こんの糞蛇がぁ!!」
と、足元に目が向けば、上段がお留守になるわけで…
「あ、ちょ!!やめ、ウザい!!」
金蝙蝠と蜂に群がられ、完全に集中力を欠いた悪党に、ガーディアンの魔法が炸裂して止めを刺した。
「リーチは終わってるが、近寄れれば使い魔とは思えない火力が出せるのか」
毒防御という、中々盛り難い耐性のお陰もあって、マンバの毒が面白いように悪党に刺さる。
尤も、初見殺しの様なもので、気づかれれば接敵は不可能と化す。
それでも警戒させるだけで十分なので、抑止力としては活躍が期待できる。
「さて、お楽しみの[幸運]のスキルの検証に入るか」
まあ、既にどんな感じかは解っているが、改めて検証。
悪党をかませ犬に、その戦いぶりを観察。
<ナーガ>は上半身が人型、下半身は蛇の見た目で、盾と剣を持っている。
数は1体と減ってしまったが、その強さたるは絶するもので、キリの方の蟲人間と伯仲する程の能力だと思われる。
そんなのが、[観察]で鬼の様な状態異常耐性を誇り、<煽動者Lv1>で凶悪な移動速度で迫ってくる上に、安い代償で何度でも復活してくるので、「ふざけんな!!」と悪党が発狂してしまう程だ。
流石6回も変化してるスキルと言えよう。
<星亀>は、これと言って捻りの無い現実の星亀と同じ見た目で、移動速度も補正を抜けば現実に則したもので、これと言って強みが無いように思えた。
だが、やはり堅さには定評があった亀枠の使い魔だけあって、バランス型のビルドのプレイヤーの匹敵する程堅く、直ぐに狙われなくなってしまう位だ。…つまり、囮としては役に立たない(弱いとは言っていない)という事だ。
<リュウグウノツカイ>は、全長15m程で、かつての<青龍>を想起させる見た目となったが、実体は全くと言っていい程別物へと変わってしまった。
兎に角動きが緩慢で、ゆったりと宙を遊泳し、敵に接近するので、まあまず攻撃が成功する事は無かった。
とはいえ、貴重な空中ユニットで、堅く目立つので、蜂や蝙蝠から目を逸らさせるのに丁度良く、火力も噛み付きが当たりさえすれば中々のものなので、意外と砲台ビルドには警戒されていた。
<光虫>は、只々光るだけで、特殊能力は無いが、堅さは<皇虫>を遥かに凌ぐ。
そして、只光るだけと言っても、敵からは光の波長が長く見えるのか、悪党なんかは眩しそうにしていたので、目晦ましの効果もある様だ。
そんな感じで、使い魔の変化の確認を終え、PAに帰還した。
検証を済ませ、休憩を挟んでから再開。
アプデまで後僅かに迫ったが、現状の成長限界には数歩及ばない事は確定してる。
上限解放と同時に、淘汰に到達できないのは悔しくはあるが、仕方がない事だ。
どうせ、焦って金策をしたって碌な事にならんし、アプデまでに進化3回にLv200とか絶対…無理って事は無いが、無茶する気も無いし、一旦寄り道を挟むか。
「うーん、やっぱダンジョンコアは高いな~」
需要が天井知らずで上がってるせいで、競売の価格が300億超えがザラだ。
かと言って、トレードしようものなら何を求められるか分かったもんじゃないしな。
やっぱ自分で見つけて確保するしかないよな。
多分、攻略が出来るかどうかは兎も角、アースに的を絞って練り歩けば、ダンジョンでなかろうとも、何か面白い出来事に遭遇出来る筈だ…根拠は無いけどな。
そういう事で、先ずは超不人気エリアの雪原に向かう。
装備のお陰で、これと言って環境ダメージも受けないし、地形ペナルティで移動速度が落ちても、今はデフォルトの70倍程で動けるから、そこまで気にならない。
快適とは程遠い散策だが、順調に練り歩き、マンモスの集落に到着。
コチラの事を覚えてるようで、門番に内部へ招き入れられる。
そして、何故か内部にはNPCやプレイヤーが居て、塀に囲まれた篝火で暖を取っている。
なんでこうなってるかは不明だが、悪い事ではなさそうだし、ダンジョン跡へ入る。
「あ~、坑道化してるのね」
特に希少な金属が取れるわけでは無いが、品質が良くて、一度に沢山採掘できるという事で、それなりに賑わうロケーションとなっていた。
それにして、誰かに滅ぼされてるとかじゃなく良かった。
マンモスの集落を後にし、再びローラーをしていると、巨大な池を発見。
取り敢えず、入水してみる。当然馬鹿冷たくてダメージを受ける。
「でも耐えられない程ではないな」
意を決し、潜ってみると、水底に亀裂が空いていて、魚が亀裂付近に集まっている。
(これは温水…温泉か?)
一旦呼吸の為に浮上し、再び水底の亀裂を調べる。
(ああ、只の湧き水か)
湧いたばかりで、多少温く感じただけだった。
とまあ、大したことじゃなかったわけだけど、そこで終わらないのがこのゲームの良い所。
どうせ何かあんだろ?と斜に構えつつ謎の確信を持って亀裂に半身を突っ込む。
するとどうだろうか?いつの間にかPAでリスポンしていた。
念入りに準備をして、再び巨大な池に到着。
先ずは水中適応薬を飲む。これで水中でも地上と同じ様に動けるし、現行品はデメリットもない。
そして水底を亀裂に向かって歩き、前に到着。
「ヒヒヒ…くたばれ糞蛇が!!」
さっき俺を殺ったのは、巨大な蛇だった。
亀裂にマッドから貰った爆薬を放り、急いで距離を取る。
数秒してドカンと炸裂し、亀裂から大蛇が飛び出してきた。
「丸呑みにされた時点で思ってたが、デカすぎだろ…」
全長30mと、シロナガス級の大蛇…というかヒレやら髭やらがあるから、水龍的な何かかもしれない。
普通、こういった存在は、守り神的な扱いを受けてても不思議ではないのだが、未開だった惑星の生物だし、大丈夫だよね?大丈夫だな!!
多分祟られることも無いだろうと、早速戦闘を開始。
戦闘自体は使い魔に任せ、俺自身はピョンピョン跳んだり走ったりして逃げるという、なんともしょっぱい戦い方だが、これが一番の正攻法だから仕方ない。
適宜適応薬を飲み、回復を挟み、水底を畑(意味不明)にしながら消耗戦を仕掛ける。
ネチネチと持久戦を仕掛ける事四十分。漸くマンバの噛み付きで決着が付いた。
「なんだ?まだ終わってないのか?」
強力無比な[幸運]の使い魔のお陰で戦闘が終わり、使い魔も遺骸に反応しなくなったというのに、ドロップも無ければ死体も消えない。
不審に思ってると、死んだと思っていた水龍?が動き出し、巣穴に引っ込んだと思ったら、直ぐに何かを加えて戻って来る。
「これはダンジョンコア!?」
ポトリと俺に目の前に落としてくるのでキャッチ。
その様子に頷くと、今度は付いて来るように頭で促してきて、巣穴に付いていく。
そのまま空気のある巨大空間に出ると、水龍の前に<ナーガ>が佇む。
そして、水龍が<ナーガ>に対し、波動を送るとこんなアナウンスが。
『スキル<ナーガ>が変化の切っ掛けを掴みました』
とアナウンスが出てた。
その後、巨大空間で、変化を促す為か、摸擬戦をやらされたが、全く持って歯が立たずに何度も地に伏す事に。
水中では、力の片鱗すら見せて無かったという事だ。
そんな水龍様の巣を辞して、PAに帰還した。
帰還後、<ナーガ>が水龍から受けた加護について理解を深める為に、識者の下を訪れる。
そしたら摸擬戦を行う事なったたのだが、相手がローレンスさん直々というサプライズだ。
「ほほう…まさか<ナーガ>にお目に掛かれるとは」
「珍しんですか?」
「[幸運]の使い魔の、1つの到達点と言われる存在だね」
「しかも、若いのはまだ伸びしろを残してるんだろう?楽しみだな」
タツキチもローレンスさんも、この先の変化に心当たりが有るのか、うんうんと頷いている。
さて、タツキチにコアを託し、ローレンスさんとの摸擬戦を開始。
「先ずは小手調べだよ」
いきなりノーモーション<ブラストウィンド>が飛んできて、蜂と鼠とマンバが消滅。
「更にこうだ」
黒い霧が俺に纏わり付き、…何も起こらなかった。
「ほー、戦闘時に要になるSTAの保護を怠って無かったか、良いぞ若いの」
どうやらSTAにデバフを掛ける魔法か何かだったようだ。
「ポリポリ」
7割ほどに減ったLPを回復させ、使い魔の進撃を見守る。
「良いね、初撃での脱落が随分と少ないね。ならもう一打!!」
再び<ブラストウィンド>が飛んできて、蝙蝠、マウス、人形、ゴーレムが消滅。
ここで<リュウグウノツカイ>がローレンスさんに噛み付こうとするが、アッサリと躱される。
「やるね。<ウォーターエッジ>」
左手を貫き手状に構え、80㎝程の刃を生成し、<リュウグウノツカイ>を一刀両断。
「ぬ、ご先祖様の魔法は迎撃させてもらう」
氏を目掛けて飛来する魔法を、[ダークニンバス]に似た魔法でカーテンを作り相殺。
そしてここで漸く<ナーガ>のが接敵。
「さあ、真価を見せる時だね、<ハリケーンエッジ>!!」
自身を中心に、鋭利な暴風雨を発生させ、<ナーガ>と遅れてきた<星亀><光虫>を切り刻む。
「なに!?」
この魔法で、<星亀><光虫>もリスポン待ちになると思った様だが、<ナーガ>を含めそのまま氏に喰らい付いていく。
「ええい!鬱陶しい」
直後、杖の石突を地面に突き刺すと、周囲を地面から生えた氷柱が埋め尽くす。
ここで、流石に<星亀>と<光虫>もリタイヤとなったが。
「これも耐えるかい」
流石累計変化数6回の使い魔だ。いくら俺の[生命]が高いと言っても、使い魔でこの堅さは驚嘆ものだ。
この後直ぐ、ローレンスさんによって、<ナーガ>も蹴散らされた。
これで<ナーガ>の強さも正確に分かったし、ここからはガチンコの摸擬戦をした。
当然俺の敗北での幕引きとなったが、結構善戦したんだぜ?
流石の氏も、ランタン10個のデバフは看過出来ぬ様で、タブレットを齧りながら、執拗に追い回す俺から距離を取っていた。
最後はアウトレンジから<ウォーターザッパー>と<アイススピア>で削り殺された。
「<ナーガ>も素晴らしいが、テツ君自体の地力も良かったよ。それに、相手の嫌がる事をリスクと天秤に掛けての判断も素晴らしい」
「流石のレン坊も、ランタン10個はヤバいか」
「ああ、流石にこのレベルの相手になると、1割でも力が削がれたら致命的だからな」
寧ろ10個あって1割位しか効かないの!?
「しかし<ナーガ>の時点であの強さとはね、これは伝説のアレが出てもおかしくないね」
「へ~、伝説って?」
「ああ」
雑談を終え、PAに帰還した。
結局、加護については、俺の推察通りで、兎に角経験を積みまくれば、いずれ形になって現れるとの事だ。
蓋4号機の完成まで時間を潰す必要があるので、鬼ヶ島へ向かう。
「ドラグーンよりかは訪れてるけど、それでも全然来てないな」
これまでに二桁…は来てるが、やはり少ないよな。
そんな鬼ヶ島の現在の攻略度は44%、ドラグーンに至っては12%と、大層低い。
惑星が増え、人が分散し過ぎている、そもそも難易度が高い等、分かりやすい理由によって、一番新しい未開の惑星の攻略は遅れているのだ。
「確かに小鬼、大鬼共に知能が矢鱈高く、戦闘力も高いからな~」
ちょっとした観光気分で歩いてたら、ゴブリンの盗賊に絡まれ、絶賛戦闘中。
「ヤレーコロセー」
と中々の殺意を振り撒き纏わり付いて来るが、凶悪な使い魔の暴力に既に及び腰だ。
そりゃいくら賢かろうと、強かろうと、上段を無数の蜂と堅い蝙蝠が飛び交い、中断を強力な主力級の使い魔が犇めき、下段をイヤらしい上に凶悪な毒持ちまでもが這い寄って来るんだ。相当ステータスで優位に立つか、数で押せなければキツイわな。
「バカヤローニゲルゾ、ジェネレーターアイテジャブガワルイ」
言ってる間に盗賊が尻尾撒いて逃走。
幾つか連中の物資も拾得出来たし、まあ良しとしよう。
後日、タツキチの下を訪れ、蓋4号機を受け取る。
「これでアサルトディスクも4号機か、そろそろ分けて編成するのも検討したらどうだ?」
「うーん、考えたんだけど、やっぱ数は力だなと」
「まあ、所有者がそう決めたんならそれが良いさ」
受け取りも済み、早速部隊編成に4号機を組み込む。
「現在のNPCの評判は…中の下、まずまずだな」
評判維持を、職人に一任したが、今の所上手くいってる感じだ。
その分、部隊を遠征に出す事で、蓋の学習能力は高まり、ペットのLvも上がる。
しかし、マローダーといい勝負が出来る、ドローンが4機も居て安心できないのはヤバい。
どんだけプレイヤーサイドの強さが上がってるんだって話だ。
そんな事を考えてると、丁度部隊の出撃なので、俺も付いていく。
「おっほ!!<ナーガ>強!!」
ただでさえ金色で目立ってた<神の使い>が、<ナーガ>になった事で、これまで以上に注目されている。
当然目立つという事は標的にされるという事で、集中砲火に遭うが、俺は豚と畑を使い凌ぎ、その間耐えた<ナーガ>が悪党を懲らしめる。
蓋部隊も持ち前の堅さで、ワッショイされつつも耐え、その隙にペットが揉みくちゃにしてグダらせ貢献。
良い感じに悪党と戦ってたら、大規模な戦闘に発展し、ピリピリしたガチな空気に萎えたので、蓋を守りつつ素材の回収にシフト。最後は蓋も無事帰還させる事が出来た。
そしてVer2.4アップデート当日。
内容こそ、細かい修正と成長限界の解放と並盛だが、中身は豪華だ。
詳細は以前にも触れたから端折るが、情報が遅いと今頃とんでもなく悩む羽目になっただろうな。
インストールとダウンロードを終え、ログインする。
「こんにちは」
時間差で先にログインしていたユキとユナと素知らぬ顔で挨拶し、マサと駄弁り始める。
「早速巷が阿鼻叫喚の嵐だぞ」
「そりゃNPCから情報を、又はそれをまた聞きした人以外は、不意打ち以外の何物でもないからな」
パラメータ、ギフト、肩書から、淘汰1回ごとに最低1つ消去だもんな。
「マサはどうだ?ちゃんとマネジメント出来てるか?」
「まあ、なんとかな。一応、+補正で、範囲を抑えるだけなら【圧縮波】は1つで良いから、Lv2から2つ消去して、無印に戻す気だけど」
「【圧縮波Lv2】から【圧縮波】にするのか、範囲抑制はともかくノックバックが減るのは痛いな」
「そうなんだが、他に捨て駒に出来そうなギフトも無いし、肩書もどこまで残そうか迷ってるんだよな」
「迷うよな、なんせパラメータに補正が乗算で入るって話だから、パラメータを消し過ぎるのは勿体なさ過ぎるよな」
というのも、既に人柱たちが齎した情報によると、1回目の淘汰でパラメータに掛かる補正は20%、2回目で乗算で40%掛るそうだ。
よくそんな金が在ったなと思ったが、コーポメンバー総出で金を掻き集めれば、造作も無いとの事だ。
「つまり、回を重ねる毎に、20%、40%、60%って増えてくのか」
「ここまで補正が強いと、パラメータの効果だけでもギフトや肩書を上回る効力を発揮するから、出来るだけ残したいところだ」
「そうだよな~、俺もそう思ってなるべくパラメータを残す方向では検討してるんだが」
「ほう、何を消す心算なんだ?」
「[跳躍]と[解体]だ」
「その2つか…確かに数値が低いと、無くてもやってけるパラメータだが、淘汰突入後の補正を考えると…」
「ホント悩ましいよな」
さて、アプデを迎えはしたが、俺達は未だに進化の過程にあるので、頑張ってLvを上げる必要がある。
しかし、ここにきて、俺達みたいな半端なLvの人間にとっての、大逆風が吹き荒れる。
「…なんてこったい、ここにきて本当に大デフレ到来とか」
なぜこうなったかというと、成長要素の新ステージたる淘汰の消去が原因だ。
皆、それぞれのビルドの思惑から、これだけは死守、これは出来れば消したくない。そんな思惑と葛藤が入り混じり、既に淘汰へ辿り着いたプレイヤー、未だ至らないプレイヤー含め、ある行動に出る。
「そうだよな、こうなれば消去を免れる術は無いんだから、少しでも被害を抑え、現行のビルドを維持したいと思うのは必定。その為に、代替に成りえる装備を整えようとするのは当然の流れだよな」
そんな感じで、皆が皆、金に物を言わせ、質のいいものを買い漁り、市場から価値のある物が消え失せた。
普通、こうなると物価も上がりそうなものだが、実際、価値のある物…それも最上級のモノは極度のインフレを起こし、それ以外の消耗品や中堅の装備や素材は見向きもされず、価値は暴落していった。
だが、俺達はこの流れも予想しており、ここぞとばかりにお値打ち価格で出品されている物を買い漁る。
最初こそ、極々少数の者たちの行動だったが、次第に理解の広まりと、やはり本来の価値以下で買われる事への忌避感不快感が勝り、現金収入よりも精神的損失を嫌った出し渋りが横行。
市場は一気に品不足へと陥り、大デフレからハイパーインフレへと突入。
更に拍車を掛ける様に、買い占めと出し渋りが原因で、現行の最上級装備へ至る為の、過程素材が枯渇。
というか、錬金等で有益な効果やOPを継ぎ足し引き継がせる為に、最下級素材こそが重要で、極端な話、石ころ1つですら建材以外への利用価値があるものへと変貌していた。
例としては、上物のインゴットを作る場合、鉄を加工するのが手っ取り早いが、敢えて屑鉄から精錬していき、普通の鉄に行きついた時点でOPを2つ3つ付ける事が可能で、最上の装備を揃えようと思うと、この面倒極まりないガチャの沼は、避けられない道なのだ。
当然、狙ったOP、確率で効果が乗る系のスキルや設備を活かそうと思うと、兎に角試行回数が求められ、それが原因で、深刻な素材不足が起きている。
そんな状態だが、新規には最高の環境とも言える。
ホーム内で受けれる、清掃依頼の拾得物が、本来では有り得なかった価格で売れるのだから、Lvアップが楽々で、直ぐにビルドの選択肢が広がるので、一層楽しみやすい事だろう。
とまあ、そんな感じで、インフレのお陰で、我がカンパニーは絶好の稼ぎ時が来たというわけだ。
「これから人気を伸ばす装備は革系ですね」
シーラの下を訪れ、需要の推移を教えて貰う。
「革?」
「ええ、最近ティラノサウルスの素材が流通する様になって、革の装備を一新する流れが出来始めています」
「つまり、土台になる革装備と加工用の素材が高騰するわけか」
「その通りです」
こんな感じで、うちの情報源はシーラ達ハイエルフであり、非常に強力なバックとなってくれている。
「はい、見返りの素材ね」
「確かに受け取りました」
見返りとして、俺らは向こうが要求した素材を納品。きっとこの先高騰する素材なんだろう。
こういう所でも、有益な情報を齎してくれるので、やはり親密度最高は伊達ではないという事か。
「という事で、次は革が流行するそうだ」
「フム、というと、ティラノの格下の皮をを集めれば良いのか」
「ああ、それとなめし材の材料もな」
「ピンポイントの様で、割と雑多だな」
そんなこんなで、マサと連れ立って、高騰目前の素材を集める事に。
「えーっと、T-rexの直ぐ下ってなんだ?」
「んん-、取り敢えずマンモスの皮とモンゴリアンデスワームの皮が有れば良いんじゃね?」
「そうだな、それでいこう」
先ずは雪山を登り、マンモスの巣に到着。
「人が全く居ないんだが」
「まあ、想像は付くがな」
そしてマンモスと一当たりしてみて確信。
「うん、テコ入れでかなり強くなっているな」
「割に合わないから、誰も居ないんだな」
「まあ、丁度良いな」
「ああ」
確かに強化はされてるが、今の俺らなら真っ向から狩れる相手だ。
「俺が抑えるから、マサはとにかくかち上げにに専念してくれ」
「応!!」
ドッペルと同盟を発動し、ガンガン開墾して、地の利を得る。
其処へマンモスが突っ込んでくるが、人形のモルヒネ光線とガーディアンの凶悪な魔法が炸裂。
勢いを殺したところで、大量の蜂が群がり、そこへ<ナーガ>が肉薄し、完全に塞き止める。
その脇を他のマンモスがすり抜けるが、残りの使い魔と畑で抑える。
ここで漸くマサの出番到来だ。
「1体も逃がさねえからな!!オラ!!」
大斧を下段から振り上げ、マンモスを垂直にかち上げる。
すかさずその真下へ畑を差し込み、陣を押し上げつつ、マンモスの腹部を痛め付ける。
この方法で、マンモスが一々スロープの底へ逃げるのを阻止しつつ、狩っていく。
そして四十分後、全てのマンモスを狩り、付加価値の付与を職人に託し、砂漠へ向かった。
「どうする?」
「どうせ数集めなけりゃならんから、幼生体から片っ端から狩って行こう」
砂漠を南下し、幼生体の縄張りに突入。
「おー、幼生体が成体並みに強くなってるのな」
「その分、素材のドロップ数も増えてるな」
これは美味しい。
ワームを美味しくしゃぶってると、ランダムイベントに巻き込まれ、ミイラの巣窟に誘われたが、まあテコ入れ後であっても、今の俺らには問題ない程度の難易度で、キッチリしゃぶり尽くしておいた。
粗方幼生体を狩ると、今度は成体の縄張りに入る。
「グッ!!流石に強い!!」
「舐めるな!!」
途端に敵のステータスが跳ね上がり、一気に緊張感が高まる。
マンモスと違い、環境が此方に何の有利にも働かないのが厄介だ。
常に四方を囲まれ、対処がし辛い地中からの攻撃は、ほとほと厄介だ。
「マサが範囲を捨てて無けりゃ、これで完封で来たんだがな」
畑の下からノックしてくるワームを指さし、つい呟く。
「そうだな…まあ、俺も現状に色々と思う所が無いわけじゃないが、流石に無策じゃな」
やっぱ、範囲が有った頃のビルドが懐かしい時があるみたいだ。
「その辺も含めて、兎に角金が要るし、頑張ろう」
「そうだな」
「次は薬品に使えそうな素材か」
素材を持ち帰り、お次の行き先を決める。
「…行きたくは無いが、フォレストが一番効率が良いだろうな」
「仕方ないな」
本当に行きたくはないんだが、危険な代わりに美味しいのは事実なんだよな。
「なら俺も行くぜ」
ベッタラ名乗り出てくれたので、3人でフォレストへ乗り込む。
「いやー、<ゴーレム1号><ゴーレム2号>が超便利だ」
3人でゴーレムを囲み、畑を敷き、迫る敵を迎え撃つ。
クロスイーターの大群も、畑に陣取る大量の使い魔に削られ、弱った所を次々とゴーレムに引き寄せられ、それを陣の中心の俺らが一歩的にボコるだけなので、非常に楽に素材が溜まる。
「俺らは大物を狩れば良いだけだから、ホント楽だわ」
「だな」
マサもベッタラも、予想していた苦戦とは程遠い現状に、ご満悦の様だ。
「でも、知ってるぞ、このまま調子に乗って、ホームから離れすぎると即死するって」
「「だな」」
そんなオチは勘弁なので、程々の所で満足しておこう。
「ここら辺ならまだ余裕が有るな」
定点狩りの位置を定め、暫く狩りに勤しんだ。
数日間、頑張って高騰予想の素材を集め、価値の下落した売り物を買い漁る。
勿論、闇雲に買うのではなく、再高騰の見込みが強い物を狙ってだ。
「どんな感じだ?」
「はい、マンモスとワームの皮を、革に加工したです」
「付加価値はどうだ?」
「全体の0.1%も無いですけど、質の向上と[聖水効果:大]と聖属性の付与、その他のOPを4つ付ける事が出来たです」
「それは凄いな、もっと下級の革から加工していけば、より強力な革に出来るんだよな?」
「理屈ではそうです、でも確率が…」
「マンモスとワームの皮単体の加工で0.1%以下だもんな」
やはり、究極の装備というのは狂人が目指す物なのだろう。
ちなみに、現状の狂人仕様の剣は、OPだけでも20個ほどあって、全てが○○:大や○○:極らしい。
そんな化け物装備の推定価格は兆を超えるそうだ。
さらに捕捉すると、その剣は初期装備仕様のショートソードとの事だ。
運も良かったのだろうが、よくもまあ、そこまで辿り着いたもんだよ。
「うん、半端な失敗作でも恐ろしい程売れ行きが良いな」
更に後日、予想通り革製品が高騰し、加工済みの革が飛ぶように売れていく。
「ヒヒ…そりゃそうだ、失敗っつっても聖水効果が付かなかったとか、5%の質上昇を引けなかったとか、そんなだからな、品質に問題はねえよ」
この数日間、マッドも様々な薬品を量産し、革の販売に合わせて出品。
加工に使える品なので、こちらも飛ぶように売れている。
「さて、売上金のストック期間が残ってる内に、次の行動に移るか」
という事で、数日ぶりにシーラの下へ。
「お陰様で大儲けさせてもらってるよ」
「どういたしまして、ではお次は接着剤と樹脂が高騰します」
「その心は」
「余った革で装飾品や防具の裏地にするのに使うからです」
「ほうほう、でもそれって、次と言うより今じゃ?」
「その通りです。本題はここからで、接着剤と樹脂が余ると?」
「成程…建材とかも売れるって事か」
「他にも紙製品や車両部品も高騰しますね」
「それだけ、接着剤と樹脂の需要が広いという事か」
「ええ、ですから、如何に儲けの大きいニッチなジャンルを攻めれるかが鍵ですよ」
「ありがとう、参考にするよ」
「という感じで、何が一番売れると思う?」
「メジャーな流用先以外ですか」
パミルと相談しながら候補を挙げていく。
「私の専門の、装飾品なんかも、地味に使いますね」
「確かに地味かもしれんが、装飾品自体は超メジャーだからなぁ…」
「ですよね」
「なら[塗装屋]向けに、塗料を生産するのはどうでしょうか?」
と、おりょうさんが助言をしてくれる。
「塗装関連ですか…良いかも」
確かにかなりニッチな市場かもしれん。
「塗装の力を侮る気は無いけど、どうしてもこだわるのは後回しにしそうだしな」
「つまり、終始安定して売れると」
決まりだな、うちの次の主力商品は、塗料で決まりだ。
「じゃあ行こうか」
パミルとおりょうさん、サーモンを連れ、鉱脈を巡る。
鉱物はペンキや顔料の材料になるからね。
「ボスアッシーって討伐されたのに、なんでまだ居るんだろうな?」
ボス部屋で、焼き豚を仕込みながら、少しずつ水晶やらを回収。
相変わらずなブレスの暴威に晒されながらも、畑と豚と<ナーガ>を盾にする事で、遠距離でコソ泥する分には余裕が有る。
「そういえば、ここの水中に潜った事って無いけど、何か素材が採れるんだか?」
気になったので、3人を安全圏に戻し、1人で潜水を開始。
(んー…海藻ばっかか)
少々期待外れだが、折角だしと、根こそぎ採取しておく。
水中では、アッシーのブレスも飛んでこないし、安全だと思ってたが、巨大なウツボが襲って来たので即撤退した。
「なにアレ?」
PAに戻り、識者に聞く。
「大ウツボですね、アッシーとは共生関係にあって、相当強いみたいですね」
適応薬が無ければ、敵いそうもなかったし、逃げて正解だったな。
「そういえば、海藻を取ってきたんだっけ、これは使えるのか?」
「お~、[地底湖昆布]に[地底湖ワカメ]ですか。食べて良し、接着剤にして良し、使い勝手が良い素材ですね」
という事なので、マッドとタロウに託す。良きに計らってくれる筈だ。
塗料の素材を集める事数日。
「そろそろ放出し始めるか」
革関連の需要低下と共に在庫が捌けたので、塗料素材を放出。
すると、ジワリジワリとだが、品質に自信がある分、強気な価格設定にも関わらず、売れていく塗料の材料。
「マンモスの脂肪とモンゴリアンデスワームの脂肪も、いい具合で売れてるな」
先日の狩りで、大量に余っていた余剰素材だが、ここに来て主力商品と化すとは。
っていうか、大分ニッチな需要を狙ってるのに、初動で既に売れ始めてるって事は、自力で先読みしてるか、同じようにNPCとのパイプを持ってる連中が多数いるって事か。
確かに、展開が読めてるなら、うちの物を加工して転売するだけでもかなり儲かるだろうな。
しかし、ジャンル被りを避けた甲斐はあった様で、数日してメジャーなジャンルが失速する中、うちの商品は安定して売れ続け、トータルでかなりの儲けを叩き出せた。
「うーん…また増えてる」
「頑張ったわ!!」
金儲けは一旦休憩にし、アコと雑談。
「数も凄いが、よくもまあここまで平均Lvを上げたものだ」
総数170体、平均Lv900。最早ふれあい動物園という規模ではない。
「蓋が4機になったお陰で、ペットの被害が大幅に減ったのが大きいわ」
「それだけ、経験値効率が良くなったって事か」
ペットの話をしてる中で、ペットの流行の話に。
「相変わらずマンバは人気よ、コスパが素晴らしいもの」
「その割に見かけないけど」
「小さいから見逃してるだけじゃないかしら?テツ君の場合は使い魔だから、ただ突っ込むだけだけど、ペットだと体に巻いて隠したりもするからね」
「ああ、腕に巻いとくのか」
「そうそう、アレが近接には刺さるのよ」
剣戟の最中に、唐突に毒ダメージを受ければ、さぞ均衡が崩れるだろうな。
「アレは?コズミックキャットとかいうの」
「アレも超希少かつ、圧倒的需要のせいで、未だに行き渡って無いわね」
「というか、どうやってテイムするんだ?」
「気合と根気ね」
「道理で見かけないわけだ」
そもそもテイムのハードルが高すぎるんじゃ、滅多にお目に掛かれないのも納得。
というか、よっぽど余裕が有る戦闘とかじゃなきゃ、人のプレイスタイル何て見てる暇が無いしな。
とは言ったものの、少々今のペット事情も気になるし、ホーム外壁を散歩する。
すると早速発見、腕にマンバを仕込んだ悪党と善人を。
お互い、それで初見殺しを成功させてきて味を占めているのか、お互いにバレていても、必死にマンバを相手に噛み付かせようとしている。
これはグダってると思った矢先、善人が突然衰弱し、死亡した。
(おお、パンツの裾からマンバを進ませてたのか)
それに気づかず、足を噛まれ絶命した様だ。悪党の方が一枚上手だったようだ。
(しかし、僅か数噛みで、今の森をうろつけるプライヤーを仕留めるのか)
相当鍛えてるのが窺える。そしてやられた方も、きっとマンバに全部リしてるんだろうから、当たれば必殺なんだろう。
正攻法が勝つか、絡め手が勝つかの勝負だったようだ。
そういう視点で振り返ると、中々緊張感ある差し合いだった。
お互い「おい」「おい」と手を伸ばし合ってる様は、酷くシュールだったが。
時折絡んでくる悪党を、周囲の善人と協力して追い払いつつ、テイマーを探す。
「ん?」
急に使い魔が反応し、豚が大ダメージを受ける。
周囲を見渡すと、いつの間にかゴーレムによって、カビの生えたジャガイモが拘束されていた。
「モグラか」
ゴーレムの手の中で、もぞもぞと動く様は中々可愛らしい。
その後も豚が絶叫し、使い魔にボコられるモグラが続出し、最後はステルスが切れたテイマーを、ガーディアンが撃ち抜いて、決着が付いた。
「地中からの奇襲一本でやってきたのか」
確かに、飼い主は姿を消し、ペットによる地中からの奇襲は凶悪な戦法だ。
その後もテイマーを探すが、虎や狼といった王道が多く、変わり種は早々お目に掛かれないと諦めてたが、ティラノサウルスを3体連れた善人に遭遇。
というかペットマスターの面々だった。
向こうもこちらに気付き、お互いに軽く会釈をするに留める。
お互い干渉せずにって事で、暗黙の了解で意思の疎通が完了した。
俺は自分の安全を確保しつつ、彼らの動向を観察。
戦闘を期待し、ドキドキワクワクで見守っていたが、一向に始まらない戦闘。
悪党がガン逃げして、戦闘が成立しないのだ。
流石ティラノ、居るだけで周囲を圧倒してやがる。
とか思ってたら、なんと悪党側にもT-rexが3体登場。怪獣バトルが勃発した。
まあ、普通に戦えば補正分悪党が有利なので、それとなく加勢する。
ペットマスターに目配せで助力を伝え、取り敢えず悪党側のサイドを突く。
これで少しは気を引けるだろう。
「ピギィーーー!!」
うん、悪党側のT-rexが豚にまっしぐらで、戦闘は一瞬で破壊された。
気を取り直し、別の悪党との戦闘を見守る。
流石現時点での最強格のペットだけあり、強い堅い速いの三拍子揃った優秀なペットだ。
それでも、ペット化でかなりの弱体化を喰らってるので、悪党をサポート無しで圧倒できるかと言えば、それは無理な様だ。
…まあ、コストを工面して、Lv100にでも上げれば野生時の強さに匹敵するだろうけどな。
彼らのT-rexは、まだまだその域には達してはいない様だ。
だからこそ、こうやってLv上げをしてるんだろうけど。
そんな感じで、ある程度T-rexに経験を積ませると、T-rexを控えさせ、いよいよ本気を出す様だ。
その戦法が、さっき見たマンバの差し合いという、一見しょーもない戦い方だが、彼らは一味違う。
なんせ、肝心のマンバがグリーンやブラックではなく、レッドマンバとスノーマンバという、上位種だからだ。
相当Lvを上げてるのか、今度は奇をてらう事無く直進させ、真正面から悪党や魔物を毒殺していく。
「というか数多すぎだろ…」
レッドとスノー混合で、30体は居るだろうか?そんな超小型の蛇がスルスルと這って行き、波状攻撃を仕掛ける様は、中々に恐怖を誘う。
「Lvも高いんだろうけど、サポートも充実してるな」
それぞれが、ペットへのバフ、敵へのデバフ、露払いを分担し、着実にマンバの群れを接敵させていく。
まるで「腕に括り付けるだけがマンバの使い道じゃねえぞ」と言わんばかりだ。
いや~、良い物を見させて貰った。
さて、金策を再開。
「次はインゴットが高騰します」
更に数日経過し、いよいよインフレの全盛期到来か、換金物の需要が高まると、シーラは言う。
「皆、目的の達成と、妥協と諦めが付く頃合いですしね、そろそろ資産を貯め込む時期です」
そうなると、もう何が売れるとか、何が売れないとか関係なしに、何でも売ってインゴットに変えるべきだな。
そうと決まれば行動は速い。
どんなものでも売れるなら売り切る、それでいて1円でも多く売り上げを確保する。
このシンプルな方針を掲げ、このインフレを最良の形で乗り切るのだ。
先ずはシンボル巡りから、進化7回目ともなると復活も遅く、計画的に回らないと常にシンボルが枯渇状態となってしまう。
アースを巡り、バグスターを巡り…しっかりと練り歩いて地道に回収。
その間も、農耕で金目の物を育て、合わせて職人衆に託す。
そして、資源が枯渇すれば、今度は狩りで収入を得る。
それの繰り返しで、着実にインゴットの備蓄が増えていく。
でもまだだ、ハイパーインフレが落ち着いた時、10回目の進化を済ませ、淘汰へ到達する為にはまだ足りない。
俺も含め、メンバー全員の正念場だ。
「やっぱ作物で稼ぐなら此処だよな」
フォレストを訪れ、ポータルを乗り継ぎ北へ向かう。
今回は流石に全力を出さないと厳しいので、全メンバー、Lv1500超えのペットも連れて来た。
目的地に辿り着き、安全地帯から意を決して踏み出す。
仲間には、死なない事を前提に、敵の数を減らす事を優先して貰う。
「良し、[ドッペルゲンガー]<百姓連合+1>!!」
フュージョンボックスも起動し、全力で鍬を振るう。
瞬く間に一面原木畑時々畑に変わり、皆でその内側に立て籠もる。
「先ずはリソースの確保からだ」
数少ない畑でスイカやトマトを栽培し、食料飲料を確保。
これで長期戦の準備は整った。後はどれだけ粘れるかの勝負だ。
テコ入れ後のフォレスト、それもエリアを跨ぐと正に魔境で、敵が途切れることなく攻め立てて来る。
その分、耕作地ランクは高く、収穫できるものは、現在流通してる最高級の物に引けを足らない。
既に敵の素材込みで、相当数取得したが、最後の追い込みとしてはまだ足りない。
皆に聞けば、装備の耐久度が心許ないとの事なので、一旦帰還。
無理してロストする位ならば、回り道した方が結果として得が大きいので、安全策を取った。
念入りにケアを行い、再び戦場に舞い戻る。
リソースは先程十分に用意したので、いよいよ本格的に高級品に手を着ける。
「原木畑には松茸にトリュフ、畑にはメロンに薬草を植えよう」
数ある農産物の中で、最上では無いが、そこそこ値が張り、回転率の良いこの四品目。
本音を言えば、最高級品を栽培するのが良いのだが、リスクが大きいのだ。
それなら、守る時間が短く済む、中級以上の作物を回した方が、危険な現場では効率が良いのだ。
さてさて、そろそろ潮時だな。
PAに戻り、全員で締めの作業を始める。
方々から屑鉄に粗悪なインゴット、格安の金属製武具を買い集める。
同時進行で、これまでの戦利品を現金化し、金属収集の費用に充てる。
そんな感じで、最後の追い込みを掛け、Lv上げも我慢し、限界までインゴットの質と数を揃える事に成功した。
そしてアプデから十数日後。
ゲーム内経済が、一時だがハイパーインフレと化した稼ぎ時は終局を迎えた。
アプデから数日は、皆、淘汰でパラメータやギフト、肩書の消去を知るや、その選定と代替装備の収集や回収に躍起となり、最初こそ金がモノを言っていたが、直ぐに物の価値が急上昇。
金で物が買い漁られ、物が無くなったら急激なデフレから急激なインフレへと変化。
この一連の騒動で、大儲けした我がコーポは、その後も資本を上手く運用し、巨万の富を得る事に成功。
メンバーのLvを一気に淘汰直前まで引き上げる事に成功した。
こんな事が成立したのも、事前に淘汰の情報を得ていて準備をしていた事、バランスよく職人が揃っていた事、その職人に物を供給できる体制が整っていた事、強力な後ろ盾が居た事が、大きな要因だ。
ホントぼろ儲けだったわ、何の相場が上がりそうだとか、これが直ぐに売れなくなるだとか、そんな投資家なら喉から手が出る程欲しい情報を、高騰寸前の素材を融通する事で教えて貰えるのだ。
しかも、その素材が高騰する背景もバッチシだから、うちに出来る範囲で最高の加工を施した状態で売りに出すので、それはもうバカ売れであった。
そんな感じでアプデから二週間強が経ってしまったが、漸く俺らも淘汰へ到達した。
色々とアイデアを書き留めたり練ったりゲームをしたり仕事が忙しかったりで、二週間ペースに戻るのはまだ時間が掛かりそうです。
という事で、次回も三週間後に投稿します。




