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第四十四話

~前回までのあらすじ~

バグスターの攻略度を100%にし、PvP要素にもメスが入り、一層活気づくゲームシーン。

そんな中、俺はハイエルフ一向に連行され、軍事基地の解放に携わる事になったが…

「故人じゃ…?」

「ああ、彼は晩年、惑星開拓において、農業のスペシャリストとして、エルフの農業顧問として、軍部に招かれていたんだ」

 この間、使い魔が敵の畑を攻撃し破壊。即座に隙間を俺の畑で埋め、最低限の足場を確保する。

「ノーラ、バル、シーラ、お前達は時間を稼いでくれ、私とテツ君は…タツキチを鎮める!!」

 ローレンスさんの指示に、3人が即応し、背後に向け駆け出す。

「今回は様子見の心算だったがこうなれば仕方ない。さあ、テツ君の最大の出番が来たよ」

「何かアドバイスは?」

「兎に角、彼の土俵で張り合わない事だ。私には魔法、君には使い魔の群れが有る、それらを持って押し切るぞ!!」

 ローレンスさんが、自身と俺と使い魔に、<ウェイトアップ><エアーガード>を掛ける。

 それぞれ、怯み耐性とノックバック耐性を上昇させる魔法だ。

「ただ、生前と違い、どんな能力を引っ提げてるか不明なのがね…慎重に立ち回って暴いていこう」

 先ずは陣取りだと、作付されていない畑を徹底して除去する氏に追随し、<百姓連合>を使用し畑を敷設、ドッペルはリソース的に温存する。

 幸い、タツキチの畑自体は、破壊時に撃ち返す事も無い様で、ここに神経を擦り減らす事は無い様で一安心。

 俺らが陣取りを始めたところで、タツキチにも動きが。

「さあ始まった始まった」

 付近の敵性畑を破壊しつつ、タツキチの行動を観察する氏が俺や家族に聞かせるように、声を上げる。

「今蒔いたのは、恐らく[火炎放射草の種]と[トレントの苗]だ。育つと攻撃してくるから注意してくれ」

「原木畑に種や苗を作付出来るのか…」

 流石農業の申し子という訳か。

 それにしても、前者もヤバそうだが、後者は更にヤバそうだ。何とか成長前に止めたいが…。

 今、リスクを背負ってもメリットが薄いか、そう思い一旦無視して地固めを優先したが…。

「嘘だろ!?もう成長したのかよ!?」

 本当に、一瞬目を離した隙に、ニョキニョキと真っ赤な花弁に巨大で極悪な刺胞たっぷりな火炎放射草、見慣れたトレントがが生えてきた。

「これが伝説の農家の力なのか」

 確かに、農業で張り合ってもどうしよも無いな。


「ちっ…撃ち返しがうぜぇ…」

 育つ度に、トレントが此方に突っ込んで来ては、使い魔と乱戦し、消滅と同時に多数の撃ち返しを発生させ、俺とローレンスさん、稀に後方で戦う3人にも被害が発生。

 戦闘開始から、一歩も動いていないタツキチ相手に、苦戦を強いられていた。

 だが、こちらも黙ってやられてるわけもなく、漸く陣取りを完了。

 後方の3人の為の避難所も確保し、いよいよタツキチと本格的な戦闘に突入する。

「さて、タツキチよ、第二ラウンドといこうじゃないか」

「俺はどうすれば?」

「タツキチの事だ、まず間違いなく罠が仕掛けられてるから、出来れば範囲外から破壊したいから、使い魔を送り出す事を最優先で頼む」

 確かに、作物を破壊すると、手痛い撃ち返しがくる以上、使い捨ての駒で押していくのは当然だろう。

「やはり、テツ君を連れてきて正解だったね…生前私の方が強くなっていたとはいえ、相性が良いとも言えないし、何よりアンデッド化して何をしてくるか判らないからね」

「出来れば自分の手で葬ってやりたかったがね」と零していた辺り、濃い関係だったんだろうな。

 なら、せめてその手助けを全力でしようじゃないか。

 どうやら、農業の分野では足元に及ばずとも、陣を奪う程度の農業力と、強力無比な使い魔の数々に、ランタン×5のデバフは、相手にとって相当相性が悪いらしく、遥か格上を相手に牛歩ではあるが、着実に追い詰めている。

 しかし、相手も戦況が不利となれば次なる一手を繰り出す。

 これまで一歩も動かず、作付だけしていたタツキチが動く。

「ピギィーー!!」

 アンデッド化時に、発現したのか、ハイエルフゾンビと同様の引き寄せを発動。

 見事豚を引き寄せ、鍬で耕してしまった。

「鍬で攻撃出来るのか…」

 しかも、それなりに堅い筈の豚を瞬殺出来る程の火力を持っているときた。

 更に、火炎放射草とトレントとは別の種を蒔き始め、即成長からの即収穫で、用心棒が出現。

 どうやら【年貢の見返り】か、同じような効果のスキルか何かを持っている様だ。

 ハハ…これで手下の質という、アドバンテージが消えてしまった。


「どうしましょう?」

「参ったね、ユニット数では未だ圧倒的に有利だけど…質は拮抗かやや不利になってしまったね」

 次々と前線へとたどり着く侍を、バッタバッタ薙ぎ倒すローレンスさん。

 しかし、作物トレントからの撃ち返しで、それなりのダメージを負う為、決して無双とは言えない状況だ。

「俺が追い込まれれば手駒の質も盛り返せそうですけど…」

「厳しいね、撃ち返しで事故死するのが関の山だよ」

「ですよね…」

 今の[生命]は3億越えだが、撃ち返しを含め、敵の攻撃ワンコンボで大体1500~2000万程ダメージを受けるからな、常に八割以上は維持しておきたいので、執着免疫維持は…狙えたら短時間だけって感じか。

「そうなると…」

 ローレンスさんの視線に、意を決し頷く。

「十分耐えてくれ、その間にノーラたちの方を片付ける!!」

 そう言い残し、後方で司令官達を抑える3人の下へ向かうローレンスさん。

 その彼を追う、侍とトレントを、体と畑を張って受け止める。

「ここから先は通さん!!」

 虎の子の、持続性に優れた、シリンジャ―型の高級ポーションを打ち、使い魔を少しでも敵の後方へと送り出す。

 こうすれば、[制圧][包囲]の効果を最大限発揮出来、身体を張った分、敵の撃破速度が上がるのだ。

 ローレンスさんが下がり、無限に湧いてくる火炎放射草とトレントと侍を抑え、時間を稼ぐ。

「しかし、コントロールボックスをオンにしていてもこれか…」

 致死性の高い、[出血][混乱][麻痺]を無効化し、HPとバリア三種をそれぞれ1000万以上追加してもなお、ガリガリとLPが削られ、ポーションの在庫がどんどん消化される。

「このままじゃ十分なんて無理だな…早速使わせてもらうぜ、マッド!!」

 ストレージから、マッド謹製の爆薬を取り出し全力投球。

 傍に投げるとどうなるかは、よく知ってるので、なるべく遠くに放ったが…。

 チュドーン!!と、盛大に炸裂し、タツキチと畑は当然、隠されていた罠や、離れた俺と俺を襲う侍やトレントも含むすべてを巻き込む。

 直後、膨大な撃ち返しが襲ってくるので、横移動を駆使し、被弾を最小限に抑えつつ、タブレットを只管擦って耐え抜く。

 爆風が収まり、視界が晴れた事で、爆薬の戦果が身に入ってくる。

「流石マッドの爆薬」

 つい最近、在庫処分として、旧型の爆薬を押し付けられたのが此処で生きるとは。

「さあ、次はどう出る?」


 視線の先で、倒れていたタツキチがのそりと起き上がる。

 直後、タツキチが消え、背中から気配が。

「ぐっは!」

 タツキチの鍬の一撃を、豚が吸い、ガーディアンが相殺まで図ろうとしたにもかかわらず、重過ぎる一撃が俺に通る。

 先程はゾンビの引き寄せ、今度はスペクターのワープを繰り出して来たのか。

 不意の一撃で、自陣から追い出され、追い打ちを掛けるように、更地がタツキチの畑にされてしまう。

 一瞬で位置を入れ替えられた上に、重い一撃まで喰らってしまった。

『なんだ若いの、一端に鍬を振るう様だがこんな程度なのか?』

 と、直接脳に声が響く。

『聞こえとらんのか?若いのに耳が悪い』

 いや、聞こえてるんだが…反応に困るんだよな、急展開過ぎて。

『折角レン坊が気を利かせてくれたんだ、みっちり農業とは何かをレクチャーしてやるけん』

 なんか良く解らんが、アンデッド化した農業の神が自我を取り戻し、実戦形式で農業を学ぶことになった。


『そうじゃない、鍬は土を耕すもんだが、武器としても十分使える。こうだ!!』

 どんな能力か知らんが、謎空間に拉致られ、ランタンは無効化され、使い魔も消え去り、マンツーマン指導を受ける羽目に。

 謎空間の効果か、先程より顔色の良くなった感じのするタツキチ。

 そんな、恐らく生前の姿をしたタツキチが、鍬を正面に構え、目にも留まらぬ速さで突きを放つ。

 それに対し、俺も同じように構えていた鍬を突き出し迎撃。

 このままお互いの鍬が衝突し、仕切り直しになるかと思いきや、タツキチの鍬がクルッと周り、俺の鍬を絡めとる。

『見たか、今のは先端が引っ掛けられる形状の竿なら、どんな物でも再現可能な技だ』

 そうして、一度見せられた技を、只管反復練習させられる。

『ふむ、若いのは鍬での攻撃能力を持っていないのか』

 タツキチは、俺に鍬での攻撃スキルやCAを仕込みたかったようだが、残念ながら、俺には鍬に火力を持たせる能力がない。

『仕方ない、その分絡め手を存分に仕込んじゃる』

 剣道ならぬ鍬道の門に引きずり込まれ、早一時間。

 鍬道の型は独自で、常に土を耕せる状態からの、攻撃を意識した構えを取る。

 簡単に言えば、鍬先を腰より高い位置に構えないという事だ。

 実際、その型を仕込まれるにつれ、攻撃の方は兎も角、耕す速度の上昇と隙が減り、開墾速度が上がった。

『うむ、及第点はやれるな。じゃあ次は実戦形式でいくぞ』

 タツキチに、畑を敷けと言われ、お互いに畑を用意。

『農兵同士の戦になるとな、如何に自分の畑に相手を引きずり込む、又は相手を畑から弾き出すかが鍵だ』

 これから教わるのは、自分の畑に居る間、衝撃全般に対しての受け流し方法と、畑に陣取る相手を追い出す方法だという。

 過程は省くが、気持ち衝撃に強くなり、タツキチを吹き飛ばし易くなった気がする。

『さて、そろそろ時間切れか…最後の仕上げといくか!!』

 その瞬間、目の前の景色が切り替わり、先程まで居た基地の地下に戻っていた。

 既にタツキチの声も聞こえなくなっていた。

「ああ、俺なりの鍬使いであんたを納得させてやる」


 状況は、謎空間に移る前と全く同じで、俺が自身の畑上から追い出された直後だ。

「ここからは俺も全力で行かせてもらう」

 開墾、攻撃、瞬時にどちらも行えるよう、教わった型をなぞり構える。更に。

「[ドッペルゲンガー]<百姓連合>」

 後先考えずに、物資を使い切る心算でドッペルも惜しまない。

 既に自我が希薄なタツキチだが、これには驚いたようで、数舜動きが止まる。

 が、直ぐに動き出し、俺の畑に鍬を振るう。

「おいおい、そんなのありかよ!!」

 一瞬で、俺の畑がタツキチの畑に変貌。まるでオセロだ。

 直後、豚が吸われ、ハズレを引いたとみるや、姿が消える。

「そいや」

 多分ワープしてくると読んでたので、突きを相殺し、タツキチの足を刈る。

 本来であれば、鍬道初級の俺が、タツキチ相手に有効を取れるわけないが、ランタンデバフとモルヒネ光線×2と、ゴーレム×2の引き寄せで動きが鈍り、転倒させる事に成功。

 ここで畳みかけなければ、次に接近出来るのが何時になるか分からないので、聖水を投入。

 現時点で用意できる、最高峰の聖水をタツキチに浴びせるが、全く効いた様子がない。

「まさか!?」

 即座に周囲を見ると、俺を囲うスナリーガスターが4体。

 更に、この一瞬の隙を突かれ、周囲の畑をタツキチに奪われてしまう。

「ふ、聖水は無粋ってか」

 こうなれば、消耗品に頼らずに戦うまでだ。

 依然ピンチではあるが、俺の圧倒的な[生命]と数は、しっかりとタツキチに対し、有利に作用している。

 指導を受ける前なら、この状態は自力での打開が不可能であり、詰み状態だったが、今は違う。

「先ずは畑を返して貰おう」

 タツキチにより、奪われた畑に鍬を突き立てる。

 一度でダメなら二度、二度でダメなら三度と繰り返す。

 それを阻止しようと、タツキチも鍬を振り返すが、徐々に俺の方に畑が傾いてくる(意味不明)。

 畑を介した俺とタツキチの力比べは、鍬の圧倒的な性能のお陰か、ランタンのデバフが効いてるからか、俺に軍配が上がりそうだ。

 しかし、ここでまたしても、アンデッドの権能が勝利を阻む。

「ここに来てゾンビとゴーストの召喚かよ…」

 まさかのノーモーション召喚で、形勢が五分どころか不利にされてしまう。

 流石に、スナリーガスター4体、ゾンビ4体、ゴースト4体は、聖水が呪われるこの状況下では厳し過ぎる。

 豚の判定を抜け、使い魔の壁を乗り越え肉薄され、あっと言う間にLPが削られる。

「まあ、奥の手は俺にも有るんだけどな」

 LPが50%程になった事で、執着の条件が満たされ、[スワンプマン]が発動。

 撃ち返しを、屈んだり鍬で払ったりしてやり過ごし、タブレットでLPを全快させる。

 すかさずドッペルと連合を使い、作物と従魔は圧倒的な使い魔で抑え、畑争奪戦は百姓3人俺3人の6:1でゴリ押す。

 計15個のランタンで、タツキチ含め作物アンデッド共に極度に弱体化し、使い魔が取り巻きを蹂躙。

 そして、圧倒的な数の暴力で、畑を完全に取り戻し、タツキチを拘束した。

 これでチェックメイトだな。


「終わったようだね」

 ローレンスさんに声を掛けられ、視線を向ければ、軍人たちが全身拘束具を付けられ、床に転がされている。

「わざと苦戦を演出して、俺にやらせたんですね」

「ああ、良い訓練になっただろ?」

「なんでまた」

「タツキチが自我を取り戻した瞬間、頼まれたからさ」

 どうやら、戦闘開始直後には、自我を取り戻していたようだ。

 そこで、一計を案じ、俺とサシでやり合う時間を工面したようだ。

『あ~あ、まさかこうも簡単に負けちまうとはな』

 徐々に体が消えゆく中、再びタツキチの自我が戻る。

「長い間お疲れさん。今のタツキチは全盛時とは程遠いし、このテツ君は対アンデッドのスペシャリスト。結果は決まりきっていたさ」

『そいで、俺をどうする気だ?』

「分かっているだろう?まだまだ引退しようにも、周囲が許さないよ」

 タツキチが、チラッと俺を見る。

『は~…全く、用意周到だ事で、レン坊は可愛気がなくなったの~』

 え?なになに?このまま消滅ってパターンじゃないの?

『ま、そういう訳だから若いの。輸送宜しく』

 と言い、身体が粒子となりランタンに入り込んでくる。

「良し、タツキチの魂の回収も済んだし、終わらせよう」

 チョット、全く展開について行けないんですが?


 その後、転がされた将校を浄化し、資料を根こそぎ回収し、基地を後にする。

「で?結局何がどうなってんですか?」

「タツキチと取引したのさ」

 ローレンス氏を見て、刹那的に自我を取り戻したタツキチが、せめて最後に自分が自分のまま死ねるよう、介錯を頼んできたそうだ。

 そこへ、浄化が出来て農業を齧ってる俺を宛がい、満足させてやるから後で言う事を聞け、というやり取りが有ったそうな。

「ええ?そこで人任せだったの!?」

「一種の賭けだったけどね。結果、テツ君はタツキチのお眼鏡に適い、しかも独力で浄化してみせたんだから、私の目に狂いは無かった」

 まあ、結果丸く収まって、俺自身鍬の習熟にも繋がったし、良いこと尽くめだけど。

「さて、後は報告をして――ああ、こちらの仕事は済んだ、報酬の件、分かっているね?」

 少々声音がアレな感じになっているが、問題無く報告も済んだようだ。

 そして、ハイエルフ陣営のホームに辿り着き、先祖供養が始まる。

 また、少しの間ランタンと鍬を貸出す。

 取り敢えず、今日はこれで寝るとするか。


 翌日。

「お、テツさんおはよう」

「おはよう、ハンニバル」

 昨夜は、そのままエルフィンのホームでログアウトしたので、ログインと同時にハンニバルと遭遇。

「この間言ってた、テツさんに有用なデータ、纏めといたからインストールしておきな」

 と、近くのテーブルを指さし、データの検分に戻るハンニバル。

「どれどれ…一体どんな有益な情報が有るのかな?」

 早速データをインストールすると、途轍もない恩恵を得る。

「凄い…[農家]と[百姓]、それに[幸運]の覚醒数がそれぞれ2回増えたぞ」

 1回の再誕までに、9回の覚醒枠がある事を考えれば、計6回分は破格過ぎる。

 これは、火事場泥棒してでもサルベージしたいのも解る。

 そう思っているとこへ、シーラが鍬とランタンを返却しに来た。

「此度もご先祖の供養に協力していただきありがとうございました」

 頭を下げ、報酬に関する目録を受け取る。

 金や物資に混ざり、こんな物が。

 [帽子]アルファ版に存在した、初期装備仕様の防具。コスト0。

「またか」

「またです。こういうお得感満載の装備、お好きでしょう?」

「大好き」

 壊れない、コスト0で、強化可能。なんて素敵なんだ。

 こうして、素敵な報酬を受け取り、エルフィンを後にした。

 そういえば吸い込んだタツキチはどうしたんだろう?ま、いっか。


「あれ、テツさん帽子を被る様にしたんですか」

「ん?貰い物でな、損が無いから取り敢えず付けてるんだ」

 PAに戻ると、ベルが居たので、経緯を話す。

「ほうほう、コスト0の初期装備仕様ですか。しかもテツさんは靴も持ってるんですか」

「ああ、まだ強化してないから、ただの見た目装備と化してるけどな」

「なら、早いとこ何かしらのOPを付けたいですね~」

 そんな感じで話続けてると、ベルからこんな情報が。

「僕の知る限りですと、コスト0の初期装備仕様のナイフや棍棒も存在するらしいんですよ。勿論性能はダメダメらしいけど、強化でOPを付与していくと、コスト0とは思えない程の凶悪装備に変貌するようです。ちなみに推定価値はゲーム内で2500億、リアルマネーで200万程らしいですね」

 たっけーー、でも納得の価値だ。

 そして、そんな装備が幾つか存在してるというのが恐ろしいし、そんな物を2つも持ってる俺も用心しなきゃな。

「さて、有意義な話も聞けたし、Lvを上げて来るわ」

「行ってらっしゃい」

 報酬で大金を受け取ったしな、消化しておこう。

 教会でLvを70まで上げ、PAに戻り、靴と帽子の強化を職人に依頼する。

 強化の方針は、装備自体の性能は伸ばさずに、コスト0でOP沢山を目指す。

 ついでにシャツとズボンも新たに発注し、強化を依頼し、見積もりは1億円程となった。

 勿論直ぐには無理なので、溜まったら頼む事に。

 更に、俺が溜め込んだ素材の数々を融通すれば、4千万でやってくれるとの事なので、素材負担を申し出て、予約をしておいた。

 さ、頑張って稼がねば。


 教会を出て、何処に行こうかと思っていると。

「テツさん、ちょっと一緒に来てください」

 さっきぶりにシーラと遭遇。

「タツキチさんが用が有ると」

 そう言われれば仕方ないので、直ぐにエルフィンに向かう。

「おう、若いの。数日ぶりだな」

「はあ、どういった御用で」

「おいおい、冷たいじゃないか」

 妙に若々しい身体で、はきはきと喋るタツキチ。

 どうやらこれが、全盛時の肉体のようだ。

「なに、折角魂をサルベージして貰ったんだ。そのお礼がしたくてよ」

「お礼ですか?それなら既に貰ってますよ」

「良いんだよ、俺からもとっておきををやろうと思ってな。さて、若いののステータスは…ほうほう。進化2回目か…どう思うレン坊」

「そうだな…今後の事を考えれば、【捨て石】を授けた方が良いんじゃないか?」

「確かにな…だがそれでも2つが限界だな」

「2つも有れば十分だろう。テツ君、今の構成に不満はあるかね?」

「え?そりゃありますけど、言ってたらキリが無いですし」

「だそうだ。決まりだろう」

「ああ…いや、それだと選択次第では、全くの無意味になるから、もっとシンプルな恩恵の方が良いんじゃ?」

 なんなんだ?

「むう…確かに、【捨て石】は本当に捨て石にしかならんからな、なら無難に何かを覚醒させた方が良いか、という事で若いののステータス的には…」

「あ、タツキチ、【引換券】はどうだ?これならテツ君の好きなタイミングで好きなものを覚醒出来る」

「おお!!そういやそれが在ったな!!」

 そう言い、手元で何か操作をし、俺の画面上に、『ギフト【引換券v1】を取得しました』と出た。

【引換券】転生時に、消費する事で、因子かパラメータから任意のモノを選び、覚醒数を5増やすギフト。

 となっている。察するに、これと引き換えに、進化時に何かを覚醒させれるという事だろう。

「無事取得した様だな、俺は暫くここで世話になる。用が有れば訪ねて来ると良い」

「分かりました。ところでローレンスさん、軍事基地に二度と行きたくないって言ってたのは…」

「ん!!まあまあ、それはまた別の機会で」

 と、用は済んだとばかりに追い出されてしまった。ははーん、どうやら変わり果てた知り合いを見たくないってだけではなかったようだな。

「さて、レン坊、ちょっとお話をしようか」

 何て声が聞こえた気がするが、俺には関係ないのでさっさと立ち去るべ。


「金策の前に、今回の基地浄化で、ガーディアンがどれだけ強くなったか見るか」

 再び教会に行き、二度目の神級試験に挑む。

「前回より大分Lvも上がったし、真剣に昇級を狙ってみるか」

 今のステータスならば、慎重に立ち回りさえすれば、良い線行ける筈なので、廃都の外に出る。

「先ずは、外側で下級アンデッドと自立兵器を減らしていこう」

 それと並行し、ドッペル用に食料飲料を栽培。

 ドローンを相手取ると、結構な音が出てしまうので、釣らなくともアンデッドが出向いてくれるのもgood。

 さて、肝心なガーディアンの強化具合だが、基礎能力が少々上がった程度で、基地攻略前と大きな差はない。

 まあ、その少々が、ガーディアンクラスだと、重要な差ではあるけどね。

 少なくとも、前回と比べ、Lvアップ分を加味しても、<ファイアーキャノン><ウォーターザッパー>で、ハイエルフスケルトンやハイエルフゾンビを、転倒させれるようになったのはデカい。

 当然の様に、下位のエルフスケルトンとエルフゾンビは一撃なので、安全度はかなり高くなった。…これはパラメータの数値次第では以前からか。

 なんにせよ、今の俺のステータスだと、ハイスケルトンハイゾンビも、雑魚のカテゴリーに入れれるので、序盤は盤石の態勢と言える。


「うん、大分雑魚の数が減ってきたな」

 廃都から距離を取り、農耕と並行し、敵の数を減らす事一時間(リアルタイムでは数分程度)。

「やっぱ、試験補正で敵が強いな」

 どうせなら、完全再現してくれればいいものを、無駄に強化されてるのが腹立つ。

 まあ、超級試験みたいに、時間でウェーブ数が上がって難しくなるわけではないので、じっくりいかせてもうらおう。

 そして、更に一時間。

「良し、廃都外周の敵は駆逐したな」

 という事で、今度は廃都内の浅い区画で戦う。

 流石に内部だけあり、敵の密度が濃く、油断出来る程の余裕は無くなった。

 少しでも、一度に相手取る敵を減らす為、短時間で敵を倒す事が肝要となるので、敵が溜まり出したらドッペルも使用し、迅速な殲滅を心掛ける。

 結局、この試験の最終段階は、俺のビルド的に、聖水とポーションの垂れ流しゴリ押しが最適解なので、そこに至るまでに、如何にリソースを確保するかに掛かっている。

 無駄に時間を掛け、不必要な消耗を出す事は、絶対に避けなければならないのだ。


 内部に侵入し、スペクターやリッチが出始め、いよいよ終盤も近いと感じる。

 リッチは兎も角、スペクターは無傷でやり過ごせるかは、今の俺では運も絡むので、非常に厄介な相手だ。

 一応、タツキチに倣った鍬道を活かし、勘で迎撃を試み、三度に一度程度は成功し、無傷で斃せたりもしたが、失敗の方が多く、歯痒い思いを何度もする羽目に。

 何度も上位アンデッドに仕掛けられ、タブレットを2つ程噛み砕いたところで、漸く議事堂が解放された。

 パターンは分かっているので、速攻を仕掛ける。

 長リッチに、スナリーガスターを呼ばれる前に、ガンガン間合いを詰め聖水をぶちまける。

「なんとしても、初手で取り巻きの大半を仕留めなければ!!」

 この緒戦で、敵の数を減らせないと、[速度]デバフのオンパレードと、スペクターにしゃぶられながらの退却戦に移行するからな。

 また、下水に逃げ込んで、消耗する一方の物資に怯えながら戦うのは勘弁。

 ましてや、自分1人だから、ミスれば骨折り損のくたびれ儲けだ。是が非でもここで勝負を決めたい。

 そんな祈りが通じ、聖水で取り巻きを浄化出来た。

 更に距離を詰め、前回戦わなかった風と土の長リッチに聖水を放り、大ダメージを与える事に成功。

 これで、相当戦いは有利になった筈だ。

 初手で、勝負を決定付ける打撃を与え、掃討戦の構えを取る。

 相手も、即スナリーガスターを4体ずつ召喚し、魔法で応戦。

 コチラも、ドッペルと連合を発動し、畑で分断に掛かる。

 飛んでくる、<ファイアーキャノン><ウォーターザッパー>は元より、<ソニックブーム><サンドブラスター>の脅威にさらされながらも、分断は完了した。

 しかし、上位の攻撃魔法とはいえ、貫通弾で、連射出来て一撃5000万以上は洒落にならんな。

 しかも、アンデッドで上位だから、物理にも異常に強く、飛行ユニットではダメージが殆ど取れない。

 そのせいか、ヘイトが高い筈の金蝙蝠も狙ってくれず、常に水平に魔法が飛んできて、常に死と隣り合わせの緊張感に包まれる。

 おかしい、こんな筈では無かった。やはり、全ての強敵を1人で相手取るという事を、舐めていたという訳か。

 でも、以前と同様の手段を取っていたら、狭い下水で一方向から、一発一割以上消し飛ぶ弾幕に晒される事を考えれば、まだダメージを与えられるだけ、マシと言える。

 どの道、貫通弾で豚の意味がほぼ無い状況なので、跳んでみる事に。

 跳んだところで、正確無比な狙いのせいで、回避には繋がらないが、どうせ弾幕に晒されるのなら、使い魔と畑の被害を少しでも減らした方が、有意義な筈だ。

 ジャンプ中は、タブレットを噛みつつ、穴の開きそうな箇所を探し、見つけたら付近に着地し、ドッペルなり百姓を置き、再びタブレットを噛みつつ全体を監視。

 俺自身に直接的な攻撃能力が無いので、こういった戦況の見極めは、強敵と戦う際には極めて重要な要素となる。一切の手抜きは許されない。

 俺が身を挺して、弾幕を空中に逸らす中、使い魔もドッペルも百姓も応えてくれる。

 1800を超える蜂と、4体の金蝙蝠が、土の長を包囲し、デバフと疲労と、毎秒2000の炎ダメージを与える。

 マウスと鼠が、風の長に取り付き、少しでもFFを誘発しようと頑張っている。

[蛇使い]のキングコブラは、スナリーガスターを毒殺すべく、果敢に毒霧を浴びせ、既に何体も仕留め、長たちの手を、召喚に割かしている。

 コブラたちが相手にしきれないスナリーガスターは、豚と羊が遠くへ誘き出し、<シープドッグ>により釘付けに。

 クロマグロ、亀、カブトは、火の長を相手取り、突進で魔法を妨害し、巨体と堅さを武器に視線を遮断し、足を掬い姿勢を崩したりと、少数ながら奮戦している。

 そして、大本命のガーディアンは、水の長に魔法の反撃を行い、同じく大本命の金色蛇達は、長を囲み、巻き付きと噛み付きで、聖水とランタンデバフが無いにも関わらず、目に見えてダメージを与えている。

 其処へ、ドッペルやスワンプの使い魔が時折乱入し、チャンスを作り出そうと奮戦。

 そして、待望の機会がやってきた。

「良し!!この瞬間を待ってた!!」

 極めて短時間だが、戦場からスナリーガスターが消えたこの瞬間に、聖水で勝負を決める。

 既に風と土の長を、聖水の射程内に収めているので、容赦なく投擲。

 これで、風を虫の息に、土にも致命的なダメージを負わせる事に成功。

 直ぐに風の長に肉薄し、ランタンで浄化し、止めを刺した。

 こうなれば、後はもう作業だ。

 長を鎮める毎に、残りの長が強化されるとかいう、蛇足な演出こそあったが、まあ如何にかゴリ押しで乗り越えれる範疇だった。

 そして、最後の1人、火の長を浄化し、神級を無事に完了する事が出来た。


「おめでとう。最速での神級昇格だ」

 部長からお褒めの御言葉を頂き、ついでに軍事基地の浄化協力も感謝された。

「ああ、急にホームで拉致られて驚きましたけどね」

「ははは…いや、本来であれば自組織の構成員を強制連行されたとなれば、猛抗議案件なんだがね…遥か格上な上に、君個人と昵懇の間柄となると、何も言えなくてね」

「俺にも旨過ぎる見返りがあったんで、構いませんよ」

「そうか、搾取されたわけではないのなら良かった」

 まあ、ある意味しゃぶられてるけどね。

「ところで、神級の次ってあるんですか?」

「ん?ああ…勿論ある」

「何級ですか?」

「涅槃級だ」

「名前からして凄まじいですね」

 まさに究極の悟りの境地。

「そもそも、ライセンスの涅槃級は、歴史上五桁も居なかったからね。最早目指してなれるようなものでもない」

「はえ~…まあそれはそれとして。晴れて神級になれたわけですが、何か特典ってありますか?」

「そうだな、一応購買で買える物が増えたりはするが、君は今まで購買で何かを購入したかね?」

「したようなしてないような…?」

「まあそうだろうな、普通は購入制限の緩和だけでも、相当な特典なんだがな」

「一応、後で確認はしますよ」

 もしかしたら、飛び切り上等な品が追加されてるかもだしな。

「そうしてくれ、とはいえ久方振りの神級到達者だからな、何かプレゼントが有れば良いが…どんな物が欲しい?」

「なら、ランタンを強化してくれませんか?コスト据え置きで」

「無理」

 即答か。まあ想定内だ。

「だったら、[50フリーホルダー]を強化してくれませんか?コスト据え置きで」

「うーん…うーん…いけなくは無いが予算がなぁ」

 ほうほう、出来なくは無いと。

「では、資金を此方で用意すれば、可能なんですね?」

「可能だが、60フリーにするだけでも、6000~7000万掛かるぞ?」

 ぎゃああああああああ!!高すぎる!!…って程でもないぞ!?

「ちなみに100以上にするには?」

「ひゃ!?100!?そうだな、20億もあればイケるな!!」

 目指す価値は大いにあるが、神級昇格報酬で、20億の身銭が要るとか悲しい。でも目指しちゃう!!

「では、その内用意して支払うので、その時はお願いします」

「ちょ!?正気かね!?」

「勿論!!ランタンをより強力にしつつ、0コストで積めるのなら、決して高い費用では無いですから」

 それこそ、Lv上げ以外で、無条件(費用は掛かるがコストは0)で強くなれる要素があるならば、誰でも喰いつく筈だ。

「うむむ、…分かった、金の目途がついたら何時でも声を掛けてくれ」

「ありがとうございます」

 これで、話も纏まったので、ライセンスを更新し、支部を離れた。


「さて、Lv上げの費用捻出と並行し、20億4000万貯めなけりゃならんのか」

 というか、[50フリーホルダー]って超高価な装備だったんだな。まさか強化にあれ程の費用が要るとは。

 って事は、[極光のランタン][微睡の香炉][不協和音のオルゴール][聖人の抱擁][トリックゴースト]のいずれも、同等の価値が有るって事か、まあうち2つはアビリティだが。

 なら、これらを幾つか貰えば良いんじゃ?

 そう思い、急いで部長の下へ戻るが「もうないよ」と言われ、断念。

 やはり、超高級品だったようだ。

 そうだよな、素の状態でも強力な三点が、強化も可能となれば、何処まで化けた事やら…

 まあ、今更悔やんでも仕方のない事だ、切り替えていこう。

「では、お楽しみの神級の変化はなんだろな?」

 超級昇格時には、ガーディアンが阿修羅化し、大幅な強化を遂げたが果たして。

「お久しぶりです」

 例によって、チェスト内の骨がこれでもかかと主張してくるので。ギブン先生を訪ねる。

「神級になりました」

「成程。ランタンを見せてみなさい。…成程」

「どうですか?」

「君、ハイエルフの、それも高貴なお方の御霊を鎮めているね?」

「ええ…、というか、ランタンに入ってますね」

「そういう事か、どうもね、残りの2つ、又は別系統の御霊を2つ集めろと主張してる様なのだよ」

「んー?風と土以外にも有るんですか?」

 それは分からんが、兎に角話はそれからだと、突っぱねられてしまったので、仕方なくエルフィンへ向かった。


「別系統の氏族ですか…」

 丁度シーラが居たので、早速情報収集を図る。

「それは光、闇、悪、善かしら?」

「いや、秩序、混沌、創造、破壊かもしれんぞ」

 エレノーラさんとハイドライクさんが乱入。

「そんなに色んな一族が居たんですか…」

「昔はもっと多かったがな、今は大分減ったが…」

 折角集まってくれたので、ギブン先生から聞いた事を伝える。

「別系統の御霊は無理だろう、完全に滅んでるか存命の二択だからな」

「そうよね~、そうなると、土と風の回収が必要だけど、廃都は既に解放済みだし…」

 だよな…、でも、そうなるとランタンからの要求は満たせないが。

「一応、廃都の整備は始まって無いし、御霊が彷徨っている可能性も有るから見に行ってみると良い」

 とハイドライクさんに言われ、廃都に向かってみる。

 すると、居たよ、水と火の長を鎮めたのと寸分違わぬ座標に、もの凄く恨めしそうな気配を漂わしたハイエルフの亡霊が2人。

「えーっと…こんにちは?」

「「遅い!!」」

 その後も、もの凄い剣幕で、最近の若いもんは年長者を敬う気持ちが足らんとか、グチグチと怨嗟を吐き出し、最後はランタンに強引に入り込んできてしまった。

 ランタンは呪われてしまった!!としか見えないんだが、大丈夫かコレ?

 兎も角、無事に御霊の回収が済んだので、ホームに届けると、両氏族の関係者を呼べと大騒ぎに。

「いや、まさか本当に地縛霊化して待ってるとは…」

 半分冗談で言った事が、現実となり大事化した事で、色々と気まずそうなハイドライクさん。

 まあ、後の流れは察しの通りで、各所から感謝を述べられ、お礼として、ランタンに祝福を掛けて貰った。

 なんにせよ、これでギブン先生から、話の続きが聞けそうだ。


「さっきぶりです」

「ほう、本当に御霊を揃えて来るとは」

 で、話を聞いてみると。

「スケルトンを4体に増せと訴えているな」

 流石に、骸骨1体に、長の御霊4つは窮屈で、個別に依り代を寄越せと言っているらしい。

 随分とフリーダムな御霊たちだ事。

 しかも、それぞれキチンとした器じゃないとイヤだと主張し、もっと骨を集めて参れだそうだ。

 舐めてんのかコラ!!とプンスカしていても仕方ないので、バグスターとアースの墓地を巡ってみる。

 アースの方は、常に誰かしらが巡回してるようで、全然稼げないので、神級昇格の報告だけする。

「おおお、やりましたね!!」

「ありがとう、ハッキリ言って、初手でどれだけ取り巻きを排除できるかの、超クソゲーだから、気軽に数を熟すと良いよ」

「…身も蓋も無いアドバイスですね」

「実際、俺以上に火力が有って、耐久が劣るなら、よりその傾向が顕著に出ると思うぞ?」

 と、既に、神級に臨めるギルに、アドバイスを送る。

 後は、ちょっとした情報交換をして、バグスターに向かう。

 だが、ここでもアンデッドの取り合いが発生し、骨を稼ぐ事は叶わなかった。


「どうすんべかね」

 他に、アンデッドと戦える場所ねぇ…在るには在るけど…人のじゃないとなぁ。

「こういう時は、悩むより出来る事をしながら、解決策が転がり込んでくることを祈った方が良いな」

 ということで、PvPの懸賞金寄生でもするか。

 ホームから出ると、相変わらずドンパチやってるので、渦巻き状にローラーしながら開墾する。

 すると、僅かな貢献が認められてるのか、2000円とか3000円程度の小銭が転がり込んでくる。

 多分、鎧の剣が掠ったとか、攻撃を畑に吸われたとか、そんなのだろう。

 それでも、塵積も精神で、根気よく続ける事数時間。懸賞金のみで500万程の収入を得る事が出来た。

 ついでに、森のシンボルを採取し、色々おかしい事になってる、森の生物や魔物を狩り、その素材で300万程稼ぐ事が出来た。

 休憩後。

 Lvを上げたい衝動を抑えつつ、寄生を再開。

 森の、原生生物や変異生物を狩っても、それなりに稼げることが判ったので、畑を敷きながら中層を目指す。

 あまりに、手広く開墾して、周囲の顰蹙を買うのも馬鹿らしいので、先程とは方針を変えて、最小限の範囲のみ開墾していく。

 これなら、巻き込まれた悪党側が悪いし、俺に懸賞金が分配されても、そうなる前に仕留めろと言い放つことが出来るからだ。

 そう思って、周囲への気遣いも含めた措置だったが、何故か畑に群がる悪党と善人によって、荒らされまくる畑。

「なんで?」

 と聞いてみたら。

「バウンティポイントを稼げるから」

「戦いが有利になるから」

 という返答が返って来る。

 後者は解るが、前者はなんだ?

「悪党限定のライセンスの解放等、兎に角稼ぐ必要があるんだ」

 と、悪党の癖に懇切丁寧に教えてくれた。

 でも、これってアビューズにならないか?と聞くと、微々たるものだから、大丈夫だそうだ。

 なら、壊すなよと思うが、その微々たるが超重要らしい。

 どうも、隠しライセンスや因子にパラメータが魅力的らしく、バウンティ対象の物体が超不足状態らしい。

 それで畑に群がって来るのか…。

 謎も解けた事だし、そういう事ならと、持てる全てを駆使して獲物を用意してやる事に。

 ちなみに、「体感でだが…」と前置きしたうえで、PKで100、オブジェクトや従魔で1、畑や使い魔が0.1という感じで、そこに個々の性能や質などの補正が掛ったポイントが入る感じだそうだ。で、俺の畑や使い魔は、平均で0.2程入って非常に美味しいらしい。


 畑を食わせつつ、森を彷徨う事、二時間。

 楽して稼ぎたいやつ、本気で嫌がらせしたいやつ、お祭りが好きな奴、有利に戦いたいやつ、それぞれ思惑を持った連中が集まり、森の浅層中層辺りがカオスな状態に。

 最初は、チャンバラ感覚で楽しみたいvP勢とバウンティポイントを稼ぎたい層とで、ほのぼのとした戦いだったんだが、前述の人種が混ざり始めると、空気が一変。

 誰がガチで誰がカジュアルか疑心暗鬼に陥り、現場の混沌化に、最初こそ慎重になっていた連中も、直ぐに温まり狂暴化。

 あっという間にガチの殺し合いに発展してしまった。

 俺も、既に4回は殺されていて、キッチリとやり返して金を取り戻すが、直ぐにやられてまたロストを繰り返している。

 駄目だね、一度こうなれば、続けるだけ時間の無駄なんだが、一度温まると、冷静になって冷えるまで、意地でも続けてしまう。

 まあ、やり返して金を取り戻すと言ったように、自身をキルした悪党を、キルし返すと、ロストした金が一部リロールされるので、一概には無駄とは言えないが…。

 何より、大勢が入り乱れてのPK合戦が面白すぎるのが悪い!!

 完全にカメレオン化した奴に、背後から刺され死亡したり、そいつがガーディアンの魔法の流れ弾で死んだり、大量の蜂ごと丸焼きにされたり、瀕死状態でジャンプした奴の足元に、畑を作って鎧に殺させたりと、死因や止めがバラエティーに富み過ぎてる。

「へへへ、逃げ切ったぜこの野郎」

 何とかホームに逃げ帰り、収支は+30万に落ち着いた。

「…二時間で30万、完全に赤字だな」

 楽しさや経験と引き換えに、時間を大幅に消費してしまった。


「やっぱ、畑を敷きながら逃げるのが一番効率が良いか…いや、そもそもPvPを利用した金稼ぎを止めるべきか」

 でも、今後の事を考えて、vPにも慣れておく必要もあるだろうし、ここは稼ぎより経験を優先しよう。

 今度は、どうせ何回も死ぬからと、物資も最小限で外へ出る。

 ただし、森方面の西門ではなく、正反対の東門からだ。

 取り敢えずは、ホームの周辺に、畑を敷いてからだ。

 そう思ってたら、東側でも、畑を破壊されて怒り狂うファーマーと、ポイントを稼ぎたい悪党とでドンパチやっていた。

 最早、外での農業に安全地帯は存在しない様だ。

「そうだよな、悪党側にもメリットが有れば、必死になるのは当然の話だもんな」

 そういう事なら、俺も遠慮はいらないだろうと、怒り狂う農家に混ざり、鎧畑を敷いていく。

 当然壊そうとする奴らが群がり、ポイントの旨さに気付いて更に勢いづく。

 その分、唾漬けが凄い勢いで成立し、懸賞金のおこぼれも凄い勢いで入ってくる。

 例え、一件あたり500円程でも、ポイント目当ての悪党が、引っ切り無しに現れるから、効率は中々なものだ。

 ただ、好循環が生まれると、必ず嫌がらせ大好き勢とガチ勢が降臨するので、先手を打って金を物に換えておく。

 これなら、一々ロストに怯える必要も無く、お金を貯める事が出来る。

 そうして、ホームの外壁傍で戦う事で、ロスト対策も万全にした甲斐あって、時給200万程まで伸ばす事が出来た。

 これでも、稼ぎとしては微妙だが、ホームから出て直ぐの事を考えれば、納得はいく数字かな。


 一週間後。

 お金を貯め、シャツ、ズボン、靴、帽子の強化も完了。以下の様になった。

 [シャツ]何の変哲もないシャツ。[保温][保冷][生命上昇5%][積載上昇5%][全ダメージ1%軽減][アンデッド耐性:大][聖水効果:小]。コスト0。

 [ズボン]何の変哲もないズボン。[保温][保冷][生命上昇5%][積載上昇5%][全ダメージ1%軽減][アンデッド耐性:大][聖水効果:小]。コスト0。

 [靴]アルファ版に存在した、初期装備仕様の防具。[保温][保冷][生命上昇5%][積載上昇5%][全ダメージ1%軽減][アンデッド耐性:大][聖水効果:小]。コスト0。

 [帽子]アルファ版に存在した、初期装備仕様の防具。[保温][保冷][生命上昇5%][積載上昇5%][全ダメージ1%軽減][アンデッド耐性:大][聖水効果:小]。コスト0。

 という風に強化された。

 [保温]に加え、[保冷]が付いた事で、熱帯寒冷双方に強くなり、[積載上昇5%]と[全ダメージ1%軽減][アンデッド耐性:大][聖水効果:小]もついて、コストは据え置き0のままなので、かなり凶悪な装備と成ってくれた。

 その代わり、金も希少素材も底を尽き、余剰財産が皆無となった。

 あ、Lvも74まで上がってるので、戦力的には一週間前と比べ、大幅に増している。

 さて、新装備の力を試すべく、戦場に向かうとしようか。


 そしてやってきたのは、初期の方に発見された、海底ダンジョンだ。

 なんと、此処がアースにおける、最後の未踏破ロケーションとなっている様だ。

 入り口は、東の大陸に向かう途中の海底に在るのだが、実はもう1つ存在し、今はそこから入ってきた。

 そのもう1つの入り口というのが、地底湖の大渦エリアだ。

 あそこを潜り、暫く進むと横穴が在って、そこを進むと如何にもダンジョン、という感じの洞窟に出るのだ。

 ここからは、空気が存在するので、水中用の装備も無く攻略できるので、殆どの人が、渦を潜水艇で抜けて此処に来るようだ。

 ちなみに、少し離れた位置に、正規のルートからの合流地点もあって、そちらは難易度がイカレテル代わりに、採取出来る素材が希少なのだそうだ。

「さて、頑張ってボス部屋の素材を持ち帰るぞ」

 この海底ダンジョンのボスはアッシーで、見た目こそ地底湖で遭遇したアッシーと相違ないが、強さは別次元の強敵となっている。

 何しろ、ブレスがちょっと触れただけで、2~3億は軽く消し飛ぶ程の威力だ。

 とてもじゃないが、まともに戦おうとは思えない。

 なので、ボスアッシーの部屋(構造はこれまでのアッシーの住処と同じ構造)の、シンボルから採れる、水晶などをこそっと掠め取り、金を稼ぐ。

 既に、何度も死にながら素材を掠めているが、進化は転生二回と同様の判定の為か、シンボルの復活が早く、選り取り見取りとなっている。

 なので、ロストを気にせず、運を天に任せ死地へと飛び込んでいった。


「三時間で1700万か、これで数日はお預けか」

 シンボルが復活するまでは、別の方法で稼ぐ必要があるので、別の場所へ向かう。

「でもその前に」

 墓地に行き、自主的に巡回をして、少しでも骨を集めておく。

 一週間、コツコツと集めてきたが、まだ規定数に達してないのか、音沙汰がない。

 ギルも神級に昇格し、やっくんもモンドも挑戦中だし、後続がこぞってアンデッドを狩るので、今後は増々アンデッド不足に苛まれる事になりそうだ。

「良し、始めるか」

 金稼ぎの為に、鬼ヶ島を訪れ、現在行われている、ゴブリンの氏族とオーガの氏族の戦争に、ゴブリン陣営として参加する。

 人類連邦が、双方に入植の協力を打診したところ、ゴブリンの氏族は協力と条件次第で、オーガの氏族は一蹴した為、ゴブリンの氏族と同盟を締結したようだ。

 ちなみに、このゴブリンの氏族は妖術や呪術といった、特殊な魔法を繰り、普通に衛星軌道砲やドロップシップを撃沈してくるので、敵対は厳禁との事だ。

 まあ、相手のオーガも同じようなレベルの相手なんだけどね。


「はいよ、食料」

「おう、ご苦労さん」

 戦争と言っても、俺が居るのは遥か後方で、仕事は食料生産だ。

 矢鱈流暢に人語を話す、ゴブリンコックに野菜やハチミツに豚肉を納品。

 羊毛も、医療班に納品し、ポイントを稼ぐ。

 偶にオーガが、怪鳥に輸送されて後方までしゃしゃって来るが、集中砲火で処理出来ている。

 前線の方は、オーガ側に自主的についた悪党が居たりして、凄い混戦模様となっている。

 そんな前線の喧騒とは無縁な後方だが、悪党の奇襲で俄かに慌ただしくなる。

 流石、後方に奇襲を掛けるだけあって、腕前的にもステータス的にも強いプレイヤーで、こちらのカジュアル層を翻弄。

 奇襲してきたのは、たったの10人だが、後方の生産能力が著しく低下し、前線にも悪影響が出かねない状態に。

 暫らくの間、防戦一方でジリ貧状態に陥り掛けていた時、事態が動く。

 唐突に、悪党の1人が斬り伏せられ、続いて2人目3人目と倒れていく。

「…助太刀する」

 なんと、大分前に工業地区で共闘した忍者が、助っ人として参戦。

 どうも、一定以上の悪事を働くと、このような強力なNPCが、バウンティハンターとして、纏わりついてくるようになる様だ。

 俺の脳内で、某忍者の木琴Ver以外のBGMが再生される。

 事態を呑み込んだ悪党側が応戦し、うち2人がアサルトライフルで射撃するが、<変わり身の術>や<煙幕>に<ジャミング>を駆使し、的を絞らせずに接敵。一息に2人を始末。

 更にその間にも、クナイの投擲でキャスターを始末し、手裏剣で剣士の脚部を破壊し、無力化。

 相手のアーチャーも、負けじと<ピアシングアロー>を放つが、屈伸でアッサリと躱し、ボーラのような鎖で連結した分銅を投げつけ、弓を絡めとる。

 脚部を破壊した剣士に止めを刺し、アーチャーを仕留めようとする忍者を防ごうと、戦士2人が立ちはだかるが、1人は一瞬で斬り伏せられ、もう1人は短刀を頸動脈に突き立てられ即死。

 最後はアーチャーを斬って、見事奇襲部隊を殲滅してみせた。

「任務完了」

 と、一言残し消えていった。

 マジでカッコ良かったぜ。


 後方の生産能力が回復し、戦いは膠着状態に。

「オイ、オマエハボウズカ?」

 いきなりゴブリンの1人に聞かれ、返答に困る。

「お前さんが僧侶かなんか…要は除霊の類が出来るかを聞いてるんだよ」

 ゴブリンコックが補足を入れてくれ、質問の意図を理解する。

「ああ、これが証明だ」

 腰に掲げたランタンで、そういう能力なり資格なりが有ると思われたのだろう。

 俺は、ライセンスの情報を見せてやる。

「うっほ!!『ジャックオーランタン』神級とな!!こりゃとんだ大物だぜ」

 物知りなコックが、質問者に説明。直ぐに来てくれと要請されたので、ついていく。

「オマエニタノミタイノハ、シシャノクヨウトチンコンダ。レイハスル、タノム」

 そういう事ならと、快諾。人型のゴブリンの浄化なら、[昇華された骨]も手に入るだろうし、お互いにメリットあって、都合の良い依頼だ。

 とはいえ、人道的には、アンデッド化を未然に防ぐべきなので、遺体の傍で順に回っていく。

 必ずしもうまくいくわけではないが、こうすれば少しでもアンデッド化を防げるので、安置所を全て回る。

 次は、手遅れになったゴブリンの隔離所に赴き、鉄格子越しにランタンの光を当てていく。

 しかし、死体のアンデッド化阻止と違い、此方は酷く時間が掛かるので、やっくんとモンドに助っ人を要請。

 すると、深刻なアンデッド不足に喘いでいた、中堅下級『ジャックオーランタン』が大挙して押し寄せ、隔離施設内のゴブリンは全て浄化。

 更に収容出来ずに野晒しの遺体や放置されてるアンデッドにまで群がり始める始末。

 最早どっちがアンデッドだよと、突っ込みたくなる光景だった。


 あれからゲーム内で数日経ち、アンデッドの処理面で大差がついた事で、オーガ側が降伏し終戦。

 今後は、この二氏族とは同盟関係となり、協力しながら入植を行う。

 知的生命体が居て、意思の疎通が出来ると、こういう事が出来るのはメリットだよな。

 …勿論、聞く耳持たず争いになる事もある、というかその方が多いんだろうけど。

 なんにせよ、これで足掛かりも出来た事だし、鬼ヶ島の入植も軌道に乗る事だろう。

 さて、状況の説明が終わった事だし、俺が今何をしているかの話に移る。

 現在、鬼ヶ島には、シャーマンなどの、僧侶や坊主に相当する人材が不足していて、アンデッドの脅威に晒されてるという。

 そこで、俺達『ジャックオーランタン』を始めとした、浄化や除霊を行なえるライセンス持ちは、鬼ヶ島で出張供養を敢行中。

 俺は、浄化をメインに、許可された地域を行脚し、骨を掻き集めている。

 その最中、俺を骨収集家と勘違いしたのか、お礼として、骨で作られた杖なども貰い受ける。

 それが引き金か知らんが、音沙汰なかったガーディアン関連に、進展があった。

 ランタンが明滅し、今すぐ骨を全て持ってギブンのとこへ行くよう促されたので、言われた通り向かった。

次回も二週間程で。

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― 新着の感想 ―
[一言] 覚醒数が増えるのは美味しすぎる...しかも次に好きなのを+5するのまで貰っちゃって... でも暫くは別件でお金稼ぎなのでお預けですねぇ...コスト0耐久無限には替えられない価値がある 次回…
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