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第四十一話

~前回までのあらすじ~

新たにタロウをメンバーに向かえ、仲間が増えた。

更に『案山子職人』を超級に昇格させ、2回目の進化も済ませ、戦力の向上が進む。

「あらテツさん」

「シーラか、水運びに精が出るな。それじゃ」

 とっとこ退散しようと踵を返す。しかし回り込まれてしまった!!

「フフフフフフフ」

「またかよ…もう良いと思うんだが?」

「貴方が落としたのは、この金の鍬、それともこちらの銀の鍬ですか?」

「金でも銀でもないし、そもそも落としてねえよ」

「なんと、どちらでもないし、エルフィンの牧草地を全て更新してく…」

「そんな事言わないよ…」

「正直者の貴方には、依頼完遂後に素敵な装備を贈りましょう」

 という感じで、またしても牧草地の更新を押し付けられてしまう。

 こりゃ、皆とのビルドのお披露目会は、当分先になりそうだな…


「仕方ない、報酬の装備も気になるし、気張ってやってくか」

 矢鱈と人口が増えた、ハイエルフ勢のホームから出て、作業を開始。

 今回の更新は、今までとは違い楽なものになる筈だ。

 以前は、[ドッペルゲンガー]に、LPを工夫して[スワンプマン]を使ってたが…

「先ずは[スワンプマン]を」

 事前にLPを調整済みなので、一瞬だけアウトプットを起動。沼男が発動したのを確認し、直ぐに移動。

 今度は[ドッペルゲンガー]を発動。また直ぐに移動。

「んで最後に<百姓連合>発動っと」

 振り返ると、沼男もドッペルも、それぞれ<百姓連合>を発動し、2ユニット体制に。

 これで、大雑把な開墾は<鍬の一振り>が使える百姓に任せ、細かい部分は俺とその分身がカバーすれば、以前とは比較にならない程、効率的な開墾が可能となるだろう。

 既に分身たちがせっせと鍬を振るってるので、俺も鍬を振るう。

 やはり、指示が出せず、好き勝手に動く百姓の開墾は、整然とした農地とは程遠い出来だが、範囲とスピードは申し分ない。

 細かな更新漏れを、俺が補う事で、実にスムーズに事が進んでいく。

「は、速い、速すぎる!!」

 あまりのテンポの良さに、自分でも驚く。

 それに、以前にも増し、ホーム周辺の開発が進み、更新の必要がある面積が減っているのも、作業スピードの上昇に起因している。

 取り敢えず、今日の所は水源地まで牧草地を更新し、作業を切り上げた。


 今日も、更新作業を続ける。

「流石に水源地以降は、まだまだ開発されてない分、手間が増えるな」

 そこら中でハイエルフが土木作業に従事する中、畑を金ぴか鎧仕様に更新。

 既に、大半の者が柵や鎧の世話になっている様で、金色になった鎧に興味深々な様子で近寄って来る。

 その中に、見知った顔が居たので、取り敢えず先制。

「サボってて良いんですか?」

「問題ないよ、それに後輩達にも経験を積んで貰わないと」

 とまあ、相変わらずなローレンスさんと遭遇。

 今回は、本当に問題なさそうで、心底暇そうにしているローレンスさんを共に、更新を続ける。

「ほうほう、鎧が攻撃をねぇ…実際にみたいねぇ、ちょっと渓谷まで行ってみよう」

 渓谷に着き、すっかり荒れ地に戻っている周辺を開墾。

 そして襲ってくる夥しい数のバレットフライ。

「おお~、本当に剣を振り下ろしているね~」

 蝿が畑内に入った途端、剣を振り下ろす鎧4体。

 あくまで、条件反射でそれぞれの正面を切るだけなので、命中率は高くはないが、それでも地味に畑だけで蝿を倒しているので、非常に心強い光景だ。

「素晴らしい。これなら我々が見張れない間も、ある程度の維持が可能だね」

「やっぱ渓谷近辺は手が回らないですか」

「流石にね、いずれは縄張り全体をキチンと管理したいんだが…やっぱ私達ハイエルフは数が少ないからね~」

 まあ、どれだけ個々が強かろうと、広大な土地を維持管理するのは厳しいだろうな。

 そら、原生生物の大半が魔物化してしまった惑星じゃ、時間稼ぎも兼ねて堅い畑が重宝されるわけだ。


「さて、折角こうして渓谷まで来たんだ。ちょっと下まで降りて調査するから付き合ってくれ」

「いや、俺更新作業で雇われているんですけど?」

「大丈夫、私がお願いしたと言えば、誰にも文句は言わせないよ」

 …この人若い頃だけじゃなく、今でもやんちゃなのか…

「まあ、構いませんけど」

 という事で、2人で渓谷を下る事に。

 そんで、やっぱこの人狂った強さだわ。

 蝿は勿論、瘴気が消え去り、従来の強さを取り戻したゴールドマンバ、シルバーマンバすら、<ファイ―ボール>で一撃。アースドラゴンの火球を素手で握りつぶし、頭部を杖で殴打し撃破。正に無双状態だ。

 そんな化け物の後ろを、開墾しながら付いていく俺。

 俺らが通った軌跡には、黄金の鎧が煌めくぼろ柵に囲まれた畑が連なる。

 そんな景色を満足気に眺めるローレンスさん。

「やはり1人より2人だね」

「確かに、楽ではありますね」

 楽過ぎる感はあるが、越した事はないので、肯定しておく。

 その後も順調すぎる谷下りも終盤に移り、特に山場も無く谷底へ到着した。

「へ~、いつの間にか谷底らしく、渓流になってたんですね」

「シーラが毎日頑張って水素の補充に勤しんでいるからね」

 ローレンスさんが、渓流の生態調査を始め、俺も谷底の開墾を進める。

「テツ君、岩魚を捕まえたよ」

 コチラの開墾が一段落した頃、ローレンスさんがいつの間にポリバケツを背負っており、捕らえた川魚を見せてくれた。

 その場でローレンスさんが魚を焼き魚にしてくれ、2人で頂く。

「ううむ、まだちょっと魔素を含め、毒素が強いね」

「んー…舌がピリピリする」

 とまあ、まだまだ自然の恵みを頂くには、時期尚早だという事が判った。


「今回は助かったよ、それじゃまた」

 たっぷりの川魚を背に、仲間に合流していったローレンスさんを見送り、自身も作業に戻る。

 思わぬ共闘で、渓谷周辺を一気に片付けられたので、今はそこまでの中間地域を塗り替える事に注力。

 直線を、幅100m程で進んだので、一時間程で渓谷に戻ってきたが、既に相当数の畑が破壊されたようで、今も渓谷下部から凄い金属音が轟いている。

 ともあれ、時間稼ぎという、大事な役割は果たせているので、そのまま渓谷を後にする。

 今度は、水源地に戻りがてら、ジグザグに動いて塗って行こう。

 時折、怪鳥やジャッカロープに襲われるが、Lv8でも2回進化済みの俺の敵ではなく、アッサリ返り討ちに。

 そして、水源地から、渓谷までの道中を塗りきり、本日の終了報告をシーラにする。

「お疲れ様です、父の我儘を聞いて下さりありがとうございます」

「我儘…理由としては、結構筋の通ったものだったが?」

「いえ、ただのこじ付けです、…確かに生態調査も畑で蓋をするのも大事ですが、今すぐする必要は有りませんよ」

 ローレンスさーん、娘さんのあなたに対する株が落ちてますよー。

「兎も角、余計な手間を取らせてしまったことに対する穴埋めを」

 と言い、現金100万円が贈られてきた。

 勿論遠慮なんかせず、有難く受け取っておいた。


 翌日。

 軽めのアップデートを終え、更新作業の続きを行う。

 昨日の報酬で、Lvを10に上げたので、更に効率も増すだろう。

「今日は山方面に向かって塗っていくか」

 超巨大カルメ焼きこと人工山。

 近づくにつれ、今の姿が露わになる。

 草木がボーボーに生え、シーラが根気よく水素を供給した甲斐あってか雨量も増え、か細いながらも川が出来ていた。

 更に近づくと、草木がボーボーどころではなく、樹海と化していることが判る。

 何かの生物の鳴き声から、不気味で不吉なサウンドが漏れ聞こえてくるが、ここがちゃんと生態系を築けている事が解る。

 シーラから、山に関しては、干渉しないよう言い含められているので、その麓から50m程離れた場所から囲うように塗る。

 ただ、不干渉とは言ったものの、自分たちのテリトリーの周囲を、ぼろ柵金鎧の生える異物が囲みだしたとあっては、黙ってはいられず…

 うん、少々乱痴気騒ぎに発展したものの、何故か俺のコストが圧迫される以外、何事も無く山の周りを塗る事が出来た。


 十数日後。

「ご苦労様です。今回は随分とお早い更新でしたね」

「この鍬のお陰でもあるからな」

 便利なアビリティ、スキル、装備。これらが合わさり、一週間足らずで牧草地の更新は完了した。

「ではお約束通り、素敵な装備を進呈致します」

 そして受け取ったのがコレだ。

 [靴]:アルファ版に存在した、初期装備仕様の防具。没データから拝借しました byシーラ。

「……」

「あら、お気に召しませんでした?」

「いやなんと言うか…」

「まあまあ、ちゃんと合法なので安心してください」

 なら安心だな。

「で…初期装備仕様って事は耐久値の概念がないんだよな?」

「ええ、それにプレーンな状態ならコストも無いですよ」

「改造は…?」

「勿論可能ですよ」

 うわぁ…またしてもぶっ壊れ装備だ。

 さて、今度こそお披露目会といくか。


 エルフィンの牧草地の更新を終えPAの戻ると。都合よくタロウを含め全メンバーが揃ったので、久方ぶりのお披露目会を行う。

 会場はバグスター北のエリアで、その中でも中心地の危険地帯にした。

 ここならば、蟲が常に湧き続け、他と競合することなく戦えるからだ。

 取り敢えず、全員の成長段階を聞くと、全員が進化済みとなっていた。

 エルフィンでの活動が長かった為、その間に皆も俺にLvが追い付いた様だ

 それじゃお披露目会を始めようか。


「んじゃあ俺からね。俺のギフトは【生への執着Lv1+10】【核細胞保護Lv1+9】【獣人+1】【吸血鬼+1】【蛇使い】【植物人間】【速度】【ドリス】。肩書が《生命フリーク》と《生命マニア》だ」

「《生命マニア》の効果は?」

 ユキから質問が出たので、答える。

「《生命フリーク》の上位互換で《生命マニア》は[生命]を30増やす効果だ」

「凄いわね…肩書だけで[生命]の覚醒数が50も増えてるのね」

「おう、だから皆も速く2回目の進化した方が良いぞ」

「そうね…でもデフレのお陰で、かなり良い装備がお手頃価格で市場に流れるから、買い漁ってると中々Lvを上げれないのよね」

 確かに。装備に金を掛けてるプレイヤーなら、今は無理にLvを上げるより、放逐された強力な装備を買い漁った方が、後々合成や分解でより良い装備に出来るだろうしな。

 装備も強さに大幅に影響するだけに、デフレな現状は、掘り出し物を見つけるには最高の環境かもな。

 さて、いい加減戦闘を見せなきゃな。

「戦闘に関しちゃ、『案山子職人』が超級になったくらいしかないから、それを見せるよ」

 あ、あと一応<百姓連合>も見せて無かったかも。という事で、連合を発動し、鍬を振るう。

「んん?ドッペルじゃないのか?」

 マサが、呼び出したのがドッペルではないと気付く。

「ああ、[百姓]の<百姓魂>が<百姓連合>に変化してこうなったんだ」

「召喚系CAになったって事か」

 そして、百姓と俺とであっという間に100面畑に変え、蟲を迎え撃つ。

 ライセンスが超級になった事で、畑に侵入した蟲が、金鎧の剣に打たれる。

「おいおい、遂に鎧までも攻撃する様になったのかよ」

「まあな、といっても畑の中、それも丁度中心に来ないと当たらないけどな」

 それでも複数の畑に跨り、滅多切りに遭う蟻を見ると、攻撃能力の有無の差は大きいと感じる。

 いままでと違い、畑が単なる足止めに留まらなくなり、敵の殲滅に一役買うので、使い魔の負担も減るし、畑の被害も減るので、結果防御力も向上し、いいこと尽くめだ。


「お次は俺の番か。俺のギフトは【ゴリラの力+2】【ミノタウロスLv1+3】【圧縮波Lv2+3】【牧場経営+3】【獣人+1】【吸血鬼+1】【トマホーク+3】で、肩書が《冥府の王》だ」

「【圧縮波Lv2】ですか、本格的に攻撃範囲を抑えるんですね」

 ベルが指摘。

「一応、反射ダメを軽減するギフトは有るんだが…」

「[モンク]の9つ目のギフトですもんね、ちょっと噛み合わな過ぎますね」

「ああ、仕方なく、範囲を抑える方向に突っ切る事にしたんだ。ちなみにLv2+3で、攻撃範囲が大体1/10000000…初期値まで抑えられるぜ、その分ノックバックは24倍まで上がってるぜ」

「そこまで抑えるって事は、攻撃力0の斧は捨てるんですね」

「アレはアレで強かったんだけど、使い分けが面倒過ぎて挫折したわ、ってか敵が強くなってくると、その隙に殺されかねんからな。だったら火力を確保しつつ、ノックバックで安全を確保出来た方が、反射を警戒しつつ守りも堅くなるから強いんだ」

 2人のやり取りを聞き、成程なと思う。

 武器の使い分けは、確かに柔軟で強いんだが、マサみたいに、移動速度を上げていないビルドだと、いざ追い込まれてからだと、そんな余裕もなく却って隙を晒す羽目になる。

 ならばいっそ、範囲を捨て、ノックバックを伸ばし、武器の一本化を図る方が安心安全という結果は、様々なビルドにも通じる話題だろう。

 で、マサのギフトの中に、少々異彩を放つものが有るので紹介。

【牧場経営】使い魔の牛を10体使役する。 [ミノタウロス]6つ目のギフト。

【トマホーク】投擲用のトマホークを所持。 [ミノタウロス]5つ目のギフト。

 しかも、マサはこれらを+3にしてるので、牛も数が26まで増えている。

 幾ら牛が堅い使い魔と言えど、26体も使役するとなると、不意のSTA不足が怖いので、【獣人】を取得したのだろう。

【トマホーク】は、コスト0投擲用斧を所持出来、使うと十秒間クールタイムが発生する様だ。

 コチラは+3になった事で、弾数が2に増えてる様だ。

 そして肩書は。

《冥府の王》死亡時に30%の確率で復活出来る。

 と聞いて、なにそれ強いと思ったが、十分のクールタイムが存在するとの事だ。それでも超強いな。

「今から戦闘に入るが、察しの通り、強力なノックバックと、この牛の群れを盾に戦うのが、今の俺のビルドだ」

【原初の農耕牛】のオーロックスには遠く及ばないものの、ギフト補正も相まって、[酪農家]の牛より遥かに堅い牛の群れ。

 そんな存在を盾にし、一方的に透過できるマサは、蟲を下からの切り上げで空へ打ち上げる。

 何故空へ?と思ったが、数十秒後に落ちてきた蟲が、落下ダメージで死んだので、納得。

「ほ~、一撃で敵が間合いの外に出ちゃうのを、落下ダメで補うのか」

「良いだろ?これなら連続で切れなくても十分ダメージを取れるんだ」

 ここに来て、ダメージソースが落下ダメージになるとは…

 効かない相手にはどうするんだろうと…成程、そこで【トマホーク】を使うのか。

 ギフト由来な事もあって、普通にアコの弓並みの威力を見せるトマホーク投擲。

 射程が短いが、これを十秒待てば2回投げれるのは、マジで強いな。


「私の番ね。私のギフトは【命の泉+4】【速度】【獣人Lv1+2】【魔法接射+3】【吸血鬼Lv1+1】【魔導士+3】【コメットLv1+3】で、肩書が《省魔導士》よ」

【コメット】魔法攻撃に攻撃力の10%分の物理、水、火属性攻撃力を加算する。 [魔導士]8つ目のギフト。

 この初出のギフトは純粋な火力アップではなく、少しでも敵の耐性をすり抜ける為のギフトと言える。

 後は【魔導士】も初出だが、まあ説明は不要だろう。んで肩書は。

《省魔導士》魔法のクールタイムを二十秒短縮する。

 という、とんでもない効果となっている。

 これで、<アイススピア>に<ファイアーオーブ>を十秒、[ダークニンバス]と[旋風]を四十秒で再使用出来るのだから、恐ろしい話だ。

「随分とLP増し増しな構成ね」

 そんな手数が増えた事より、サチが指摘するのはギフトの構成についてだ。

 確かに、火力よりも、打たれ強さを重視した構成と言える。

「そうね、大火力も魅力的なんだけど、局所的な活躍しか出来ないのもアレだし、耐性を貫けなくて足手纏いも嫌だから、汎用性を重視したわ」

「私のような、LPに直接ダメージを与えるビルドには天敵だわ」

 そうだな~、サチの場合、どうしても近寄らなきゃあいけないからな。

 それも、高いLPに加え、近づくほど威力の上がる魔法に、【速度】まで採用して、逃げ足も確保してるとなると、構造的にサチがユキに勝つのは厳しいだろうな。

 で、戦闘だが、火力と防御をバランスよく確保しているため、至近距離からの魔法の威力が素晴らしい。

 能力も大幅に上がり、HPにバリア3種を揃えた蟲を、<アイススピア>の一撃で、複数纏めて消し飛ばすのだから、俺でも当たれば致命傷になりかねない。

 それでいて、被弾しても素のLPで耐え、リジェネで回復し、魔法のクールタイムが切れるまで走って逃げれるから、安定感が半端ない。

 やっぱ守りって大事だわ。


 お次はアコの番。

「次は私ね。私のギフトは【狩りの友+2】【ケンタウロスLv2+2】【獣人】【スイッチファイター+2】【重装甲+2】【コメディームーブ】【半馬の騎士】で、肩書は《ゴールド免許》よ」

【スイッチファイター】パラメータの[射撃]でランスに、[腕力]で弓に補正が乗る様になる。 [ケンタウロス]6つ目のギフト。

【重装甲】カウンターダメージを50%軽減する。 [ケンタウロス]7つ目のギフト。

【半馬の騎士】ランス装備時の<チャージ>の威力と速度が3倍になる。 [ケンタウロス]5つ目のギフト。

 この3つを取り入れたという事は、アコのビルドが大きく変わった事を現している。

「移動速度を落としてまでダメージ軽減を採用し、カウンターダメージも抑えるんですか」

 超鈍足、鬼耐久、近接オンリーのカメキチとは、対局の位置に居たアコだが、ここに来て随分とビルドの毛色が変わった事で、カメキチさんが喰いつく。

「そうですね…先ず前提として、[ケンタウロス]を重ね過ぎて、移動速度が速すぎて持て余してたんですよね、だから《ゴールド免許》は都合が良かったんですよ。【重装甲】も速過ぎる移動速度からの、事故防止の意味が強かったんですが、どうせカウンターダメージを抑えるなら、何か突撃系の攻撃もしたいなーって」

 と、カメキチさんとのやり取りで、アコなりにあれこれ考えて、弓とランスの複合にしたようだ。

 その分、旗技は捨てたみたいだが、本人曰く、その価値は大いにあるそうだ。

「それじゃ行くわよ」

 先ず先制攻撃で、向かってくる蟲5体の先頭を弓で射殺す。

 次に、陣形が崩れて、距離の空いた蟲に、持ち替えたランスで<チャージ>を仕掛け、一瞬で遥か先の蟲を突き殺し、【コメディームーブ】でフワフワジャンプしながら再び弓で蟲を攻撃。

 結局、あれだけ防御を固めておきながら、一度も被弾せずに、5体の蟲を撃破してみせたアコ。

 ってか【コメディームーブ】を駆使した、弓とランスの三次元殺法が強力過ぎて驚いた。

 足場のない場所で、三秒間動ける効果だが、一度のジャンプ中に累計で三秒の様で、自由落下と滞空を切り替える事で、かなり自由度の高い動きをしていた。

「ところで、あれだけ熱心にペットの育成してるのに、実戦に取り入れないのか?」

 最近、犬猫兎が強くなってきたのか、ちょこちょこ独立行動で出撃させてるのを見るが。

「そうね、大分お金で強く出来たし、もうそろそろ連れ歩くのも有りかしらね」

 まあ、そのうちお披露目されるのを期待しておくか。


 5番手はベル。

「では僕の番ですね。僕のギフトは【届いた祈り+7】【神のお膝元Lv1+7】【聖なるメイスLv1+7】【獣人Lv2+2】【教会兵Lv1+7】で肩書は《神官フリーク》です」

 取り敢えず、恒例の初出ギフトと肩書の紹介。

【教会兵】メイスの攻撃力を2000加算する。 [神官]7つ目のギフト。

《神官フリーク》[神官]の覚醒数を20増やす。

 2000加算だと、なんか弱そうに見えるかもだが侮るなかれ。【聖なるメイス】のメイスを魔法触媒にする効果は、メイスの攻撃力に魔法威力も依存する様に成るものなので、2000加算というのは結構馬鹿にならない数値だ(実際の威力補正としては20%程)。

 これが、Lv1+7だと…

「約20万加算されますね」

 皆の思考を先読みし、大体の数値を教えてくれた。

「20万加算…ヒーラーが出せて良い火力じゃねえな」

 うちで最強の近接ビルドのベッタラから見ても、相当イカレタ火力との事だ。

 勿論、《神官フリーク》で、[神官]の覚醒数20増込みでの数値なので、それなりの犠牲は払ってはいるのだ。

 そして、ベルの戦闘シーンに移る。

「では始めます。<リジェネレイト><岩の体><パワーアップ>!」

 素早く3つのバフを自身に掛け、蟲の群れに吶喊。

 メイスでは、リーチが短いので、蟲に好き放題齧られ酸や毒を浴びせられるベル。

 でも、<リジェネレイト>でダメージを受けた傍から回復し、物理攻撃は<岩の体>で軽減。

「ちょっと鬱陶しいですね。<ホーリーライト>!!」

 光属性の範囲攻撃魔法で、自身を中心に円形の波動を放つ。

 生粋のキャスターではなく、ヒーラーなので、致命的な火力が出るわけではないが、それでも対多において、使い勝手の良い魔法で、蟲に満遍なくダメージを与える。

 そして<パワーアップ>で攻撃力が増しているので、弱った蟲が殴りで派手に仰け反り、反撃を許さず1体撃破。

 続けて2体目3体目と蟲を駆除し、あっと言う間に戦闘は終了した。

 途中、回復が追い付かなくても、事前に仕込んだ<フューチャーヒール>と素早使える<ライトヒール>で即座に立て直し、持久力も併せ持つことも証明した。

 うん、まだまだ本気を出していないし、相性的にPvPでは俺に勝ち目は無さそうだな。

 逆に、近接ビルド相手だと、ジリ貧で負ける感じかね。


 6番手はパミル。

「私のギフトは【強靭な肺+2】【剣にも劣らない+2】【擦り傷は勲章+2】【ルビーシールド+5】【鉱夫+2】【宝石商+5】【獣人】【吸血鬼】【クリスタルゴーレムLv1+5】。肩書は《宝石商フリーク》です」

【ルビーシールド】打撃ダメージを50%軽減。 [宝石商]9つ目のギフト。

【クリスタルゴーレム】魔法を反射するゴーレムを使役する。 [宝石商]7つ目のギフト。

《宝石商フリーク》[宝石商]の覚醒数を20増やす。

「出たわね、【クリスタルゴーレム】」

 分かりやすい位天敵だもんな。ユキの反応も当然と言えば当然か。

「本来戦闘向きじゃない[宝石商]が、【クリスタルゴーレム】と【ルビーシールド】のお陰で、一気に戦闘向き因子になりますからね、当然取得しますよ」

「そうね、ガチガチの戦闘職が取ろうと思うと、色々と無理が出るから、そうそうお目に掛るものじゃないだろうけど…キャスターとしては詰み案件だわ」

 しかも、Lv1で+5のせいか、数が18体も居て、最早パミルに魔法を通すのは不可能に思える。

「でも、私とユキさんが戦えば、7割ユキさんが勝と思いますけどね」

 というのも、ユキはビルドが完全に戦闘型なので、その時点でクラフトとハイブリッドのパミルは不利だし、ユキにはパミルと殴り合えるだけのタフネスが有り、パミルには敵の接近を防ぐ手段が無いので、肉薄された時点で、先につるはしで殴り殺せなかった時点で、至近距離からの魔法で消されるのがオチ。というのがパミルやカメキチさんにトリオの見立てだ。

 尤も、パミルはアクセサリのプロフェッショナルなので、相手をメタるアクセサリ次第で、勝率もガラッと変わるので、一概に有利不利は語れないそうだ。

 そんなパミルの戦闘力だが、まあ化も無く不可もなくといった感じだ。

 キチンとLPを伸ばし、ダメージ耐性も盛った上で、一撃の火力も持ち合わせているが、まあそれだけだ。

 やはり、真価は【クリスタルゴーレム】だろうが、今相手にしている蟲は魔法を使わないし、ゴーレム自体は、ギフト由来にしては、そこまで強力でも無いので、ホント対魔法使い特化の使い魔なんだな。

 それでも、それなりに強い囮が18体も居て、魔法を反射する事を考えれば、状況次第でパミルが仲間内最強になる可能性も十分に有ると見た。


 7番手はシルク。

「私の番です。私のギフトは【多重縫い+2】【獣王の威光+2】【真冬のセーター+2】【裁縫職人+2】【獣人+2】【聖人+2】【お告げLv1+2】【神の落とし子Lv1+2】で、肩書は《聖布の織り手》です」

 先ずは初出のギフトから。

【お告げ】祝福1つに付きパラメータが20%上昇。 [聖人]2つ目のギフト。

【神の落とし子】祝福を追加で3つ受けられる。 [聖人]3つ目のギフト。

【聖人】と【裁縫職人】は、説明不要だろうから割愛。んで肩書は。

《聖布の織り手》布をクラフトした場合、神聖なものに由来した何かしらの強力なOPが付く。

「シルクちゃんの布にはいつも助かってるわ」

「私もおりょうさんのお陰で、超強いアパレルを作れるので持ちつ持たれつです」

 シルクが織った布を、おりょうさんが染め、シルクがアパレルにする。

 そういった関係上、この2人は特に仲が良く、2人のアパレルは相当強力な物になっている。

 さて、シルクの現在のビルドは、これまでと何も変わっていないが、ギフトの補正で能力値が相当高まっている。

 戦闘でも、超強化された<代行の剣><代行の盾>を前衛に、後ろから投網を連発し、使い魔を援護。

 前衛を抜かれ、蟲に肉薄されても、【獣王の威光】や【獣人】で高めた[生命]で余裕で耐え、【真冬のセーター】でスタンさせた蟲を、馬鹿げたステータスから繰り出されるナイフで切り刻んでいた。

 それもその筈。ギフトの補正で、シルクのパラメータは6.7倍もの強化を受けているのだ。

 そら雑魚の単体程度、楽々処理出来るに決まってる。

 バリア3種に、火力パラメータ2種、生産パラメータ2種のバランスの良い構成ながら、各ポテンシャルも相当高いビルドとなった様だ。


 8番手はベッタラ。

「俺のギフトは【ゴリラの力+2】【剣の声を聞く+2】【剣の意地+2】【競り勝ち+2】【鍔迫り合い+2】【重い斬撃+2】【楔打ち込みLv1+2】【獣人Lv1+1】で、肩書は《剣の達人》だ」

 サクサク紹介するぞ。

【競り勝ち】お互いの攻撃判定が重なった場合50%の確率で相手を怯ませる。 [剛力]2つ目のギフト。

【鍔迫り合い】お互いの攻撃判定が重なった場合25%の確率で相手をよろけさせる。 [剛力]3つ目のギフト。

【重い斬撃】刀剣類の攻撃に50%分の打撃攻撃力を追加。 [剣士]5つ目のギフト。

【楔打ち込み】三秒間ダメージを与えた相手の物理防御力と物理ダメージ軽減効果を20%低下させる。 [穿孔]1つ目のギフト。

《剣の達人》刀剣類の一撃が二撃になる。

「ベッタラさんは完全に王道路線で来ましたか」

「まあな、ショーの極限特化も良いんだが…[原始人]の解放がめんどくてな」

 後に出てくるが、完全に色物枠に収まったショーと違い、ベッタラの構成は近接ビルドの王道に近い。

 それでも、耐久に難ありのメスを使う以上、ちゃんと個性は出ているが。

「ギフトも育って、ネックだったメスの脆さも大分克服できたしな、打たれ強さを確保しつつ、攻めきれる様に火力と圧力を盛った感じだな」

 早速戦闘を見せて貰ったが、見てて爽快だった。

 巨大蟷螂の斬撃に対し、メスの斬撃を合わせる事で、【競り勝ち】が発動し蟲が数舜硬直。

 そして、この時の一撃でHPにバリア3種が消し飛び、【楔打ち込み】で耐性が大幅に低下した蟷螂に、【ゴリラの力】と【重い斬撃】でブーストされた一撃が襲い掛かり、討伐。

 戦闘開始から僅か二秒未満の出来事だった。

 その後も、複数で押してくる蟲を、1体1体瞬殺し、数の優位を発揮させないベッタラが敵を圧倒。

 メスも、壊れる事なく、ベッタラは出番を終えた。


 9番手はサチ。

「私のギフトは【ワイルドハンター+2】【ダイヤモンド加工+4】【生命Lv2+10】【罠師Lv2+4】【小型化Lv1+4】で、肩書はテツ君と同じ《生命マニア》よ」

「1回目の進化で既に《生命マニア》が解放されてたのか…」

「ほら、前にも言ったけど、パラメータで<まきびし>に補正を掛けるのってないから」

「そら[生命]ガン振りになるわな」

【小型化】10%の確率で<まきびし>が受けるダメージを無効化する。 [罠師]9つ目のギフト。

 これが初出のギフトの効果で、Lv1+4だと、96%の確率で無効化する様だ。

 そうなると、斬撃軽減の【ダイヤモンド加工】の意味が無いように思えるが、こういった軽減や無効化効果を低下させるものも多く存在するので、意味は大いに有るし、100%を超える軽減率、無効化率も無駄になる事は無い。

 さて…もう構成でスタイルが透けて見えるが…一応確認しよう。

「それじゃ行くわよ」

 実践が始まったが、まあ予想通り真正面から殴られながら、敵の足元に<まきびし>をねじ込むという、近接ビルドも真っ青なゴリ押しっぷりを披露。

 一応、このビルドでこの戦法を取るメリットデメリットを羅列。

 先ずメリット。

・直接LPにダメージを通せる ・範囲内なら地形も射線も無視してダメージが通る ・複数相手取っても均等にダメージを与えられる ・因子のみで完結するのでパラメータの自由度が高い

 今度はデメリット。

・<まきびし>の火力を上げるものが乏しい ・<まきびし>の着地前に破壊されるとダメージを取れない ・敵の行動を阻害し辛く殴られ放題

 こんな感じか。

 まあ、デメリットに関しては、サチも対策済みなので、問題無いだろう。

 実際、蟲共がどんどん駆除されていき、サチはぴんぴんしているので、火力も耐久も問題無いのだろう。

「でも、やっぱ前衛より中衛よね」

 設置型の範囲攻撃だからな、そらそーだ。


 10番手はマッド。

「俺の番だな…俺のギフトは【厳重管理+1】【散歩の神+2】【万能薬+1】【神獣の加護Lv2+3】【獣人Lv1+2】【塔に住まうスライムLv1+1】…肩書は《駄目科学者》だ」

【塔に住まうスライム】全てのSTAゲージが99%のペナルティを受ける代わりにダッシュ中完全無敵になる。 因子[スライム]の9つ目のギフト。

《駄目科学者》薬品使用時に50%の確率で自傷ダメージ0の大爆発を起こす。

 両方共かなり激しい効果だなぁ…。

「マッドさん…随分と突き抜けたんですね」

「フフフ…カメキチさん程じゃあないがね…いい感じだぜ…」

 さて、マッドのビルドがどういうものかというと、完全無敵を使った爆破魔だ。

 あ、そういえば先に捕捉。【ランナーズハイ】というギフトを覚えているだろうか?

 スプリント…ダッシュ時のSTA消費を0にするというギフトなんだが、【塔に住まうスライム】とは、相反関係にあって、どちらかを取得した時点で、どちらかを永久に取得出来なくなるというものだ。

 なので、完全無敵のまま、延々と走り続ける事は出来ない。おk?

 で、恐ろしい程のペナルティを受けたSTAで、どう遣り繰りするかの答えが【神獣の加護Lv2+2】だ。

 コレだと、例え各ゲージが1%のSTAしか無くても、ゲージが11本分で11%有るので、走るだけならそこそこの時間無敵を維持出来る。

 だが、薬品を投擲使用する場合、STAを20%消費するので、このままだと投擲が儘ならないし、投げたら投げたで超過ペナルティで走るのも一苦労。

 そこで大事なのが【塔に住まうスライム】のLv1と+1という部分だ。

 このギフト、重複数と+値で、STAペナルティが1%減るとの事で、これでペナルティは3%軽減され96%になり、総STAが44%となる。

 更に、【獣人】がLv1+2なので、STA回復には余裕が有るはずなので、無敵の維持も現実的になっているだろう。

 それに、しくっても打たれ強さも有るから事故死も防げるしな。

 そんな感じで、おおよそビルドの概要も把握したので、実戦を見せて貰ったが、まあなんと言うか…思ったより制約が多く、全然無敵じゃないなと思った。

 まず完全無敵だが、確かにダメージは一切受けない、怯みや衝撃も受けないが、ダッシュが結構簡単に解除又は妨害されてしまうという問題が伸し掛かる。

 地形関係は【散歩の神】で完封出来るので問題無いが、体に付着した粘液や糸の判定が残り続け、ダッシュを止めた途端にデバフで走れなくされる。

 蟲に行く手を阻まれダッシュを解除される。

 等々言うほど無敵では無いのだ。マ〇オだって穴に落ちたり時間切れすれば、星を取って無敵中だろうと死ぬんだしそんなものだろう。

 それに、やはり手数が少ないのも問題だ。

 爆薬はそれなりに強いんだが、補正を掛ける手段がどうしても他の攻撃手段に比べ少ないので、手数で補えない以上火力面では相当に厳しい言わざるを得ない。

 一応、《駄目科学者》で、ある程度のフォローは出来ているが、それでもな…。

「…まあ、無敵の代償だからな…」

 抜け道も多い無敵な上、火力も乏しいが、本気で粘ればどうにでも出来そうな可能性を秘めたマッドのビルド。

 短所を潰すのか、長所を伸ばすのか…今後に期待だな。


 11番手は、トリオの先鋒ラーク。

「俺のギフトですが、【百獣の王Lv1+2】【強靭な肺】【銅製武器Lv1+2】【常識マスターLv4+2】で、肩書は《知識人》です」

【銅製武器】武器攻撃力の15%分火と水属性攻撃力を加算。 [知力]1つ目のギフト。

【常識マスター】効果は一般スキルのLvと上限を30上昇 [知力]8つ目のギフト。

《知識人》一般スキルの効果を20%強化しLv上限を50上昇させる。

 が、初出のギフトと肩書の効果だ。

「【百獣の王】がLv1って事は…」

「はい、結局Lv2は存在しなかったようですね」

「まあなぁ…流石にアレ以上無敵部分が増えたら、召喚使役系のビルドじゃ太刀打ち出来んからな」

 とはサーモンの言。

 確かに、命令不可な使い魔は勿論、ペットやサポーターに従魔等は、賢さにも依るがそれ程高度な知能があるわけじゃないから、「無敵ヶ所以外を狙え」と言っても、そう簡単には沿った動きをしてくれない。

 それこそ、ゴブリンなどのなまじ賢い従魔だと、どうしても人型の弱点は頭部と定める様で、やはり指定は難しい。

 まあ、結局は無敵ヶ所はかなり限定的で済んだので、完封は無いだろう。

 で、一般スキルについて改めて触れておく。

 よくお世話になる<生命上昇>や<野生の力>は、それぞれ[生命][獣人]に紐づけされた専用スキルという括りなる。

 一般スキルは、それらとは関係なく、無条件若しくは何らかの要因で解放された、誰でも取得できるスキルの総称だ。

 当然効果もまあ雑魚過ぎて話にならん程だ。

 例えば<剣攻撃力微増>とか<LP上昇>とかの、ステータスを直接上げるスキルですら、Lv1当たりの上昇値が1としょぼく、費用対効果に乏しいし、<生命微増>や<積載微増>等のパラメータを上げるスキルに至っては、上昇値が0.5という体たらく。

 ポイントを1振って得られる上昇値がそれ未満というダメっぷりは相当なものだ。

 勿論、シナジーが有るのなら、取る価値は十分に有るのだが、それでも…といった感じだ。

 しかし、ラークの今のビルドに限れば、ポイントを1だけ振って、スキルを取得さえすれば、それが呼び水となりスキルLvは251となる。

 こうなると話はガラリと変わる。何しろ一般スキルは種類だけは馬鹿みたいに充実していて、前述の<剣攻撃力微増>のバリエーションで、<短剣攻撃力上昇><大剣攻撃力上昇>などがあって、これらは効果が限定される代わりに、上昇値が2と馬鹿にならない数値となっている。

 なので、<剣攻撃力微増>と対応した一般スキルをLv1で取るだけで、753も武器攻撃力を増す事が出来る。

 更に、《知識人》を加えれば、上昇値は約900にもなり、ポイント2で得られる効果としては破格と言える。

 実戦でも、数多くの一般スキルを薄く広く取る事で、抜群の安定感を発揮。

 無敵ヶ所以外を重装甲で覆い、スキルの恩恵と【銅製武器】で火力を盛った剣で蟲を切り伏せる。

 これはまた、随分強力なビルドへと昇華したものだ。


 12番手はトリオ中堅のワイド。

「俺の番ですね。先ずギフトは【神獣の加護+3】【真祖+2】【メテオマンLv1+2】【ジャンプ台粉砕Lv1+2】【太陽を背にLv1+2】【重力下+2】【ホッピングブーツ+2】で、肩書は《二段ジャンパー》です」

【ジャンプ台粉砕】着地時に衝撃波を発生させる。 [跳躍]2つ目のギフト。

【太陽を背に】ジャンプ中姿が霞む。 [跳躍]9つ目のギフト。

【重力下】環境の影響でジャンプ力が下がらなくなる。 [跳躍]7つ目のギフト。

【ホッピングブーツ】[跳躍]に対するデバフの無効化。 [跳躍]8つ目のギフト。

《二段ジャンパー》二段ジャンプが可能になる。

「最早バッタだな」

「そうですね、戦闘中は常にジャンプを欠かさないですね」

 早速実戦に移り見物するが、まあ常に衝撃波が発生するので、凄い派手だ。

 二段ジャンプ時には、着地とジャンプの判定が重なるようで、一際大きな衝撃波が発生するのも、また派手さに拍車を変えている。

 肝心な強さで言えば、間違いなく強いと言える。

 ジャンプすれば、【太陽を背に】の効果で蟲がワイドの姿を見失い掛け、ただでさえ衝撃波で困難な着地狩りがより困難になり、潤沢なSTAから放たれるスキルやCAが蟲を痛打する。

 いや、実際PvPなら俺的にはほぼ詰んでるビルドだこれ。

 使い魔は簡単に撒かれ、畑はジャンプで越えられつつ破壊され、最後はランタンデバフとガーディアンと抵抗しても、俺だけ執拗に狙われるのがオチだ。

 …一応ドッペルやスワンプで、数の暴力を押し付ける事は出来そうだが…やっぱ衝撃波と霞化で使い魔が機能不全を起こしてキツイか…

 うん俺自身のビルドの参考にもなった。


 13番手はトリオのトリのショーだ。

「さあ…問題のショーだ」

「なんですか問題のって…、俺のギフトは【生命の泉+4】【原初の農耕牛】【革の鎧+3】【獣人Lv1+1】【吸血鬼Lv1+1】【原始人Lv2+3】です。肩書は《バーバリアン》にしました」

 特に説明の要るギフトも無いので、肩書に触れよう。

《バーバリアン》非金属の単一素材で出来た装備の性能を2倍にする。

 ギフトの構成的にも、清々しい程の脳筋ビルドだ。

「しかし非金属単一素材か…中々キツイ縛りに見えるけど?」

「そうですね、でも[原始人]の強みを活かす上では、端から避けられない問題なので、今更感ありましたね」

 そんなショーの現在の装備は、全身レザーアーマーに、革製のアパレルを着こみ、棍棒と石の盾を持った蛮族仕様。

 全ての装備を、非金属単一素材製という徹底っぷりだ。

「では戦闘をお見せしましょう」

 前に出て、蟲と対峙するショー。

 すかさずリーチ差を活かした蟷螂の斬撃が飛んでくるが、石の盾でブロック。

 僅かにダメージを受けたものの、【命の泉】で即座に完治。

 反撃にと棍棒を振るえば、一撃で鎌が消し飛び藻掻き苦しむ蟷螂。

 その隙にと他の蟲が殺到するが、悉くを盾で防ぎ、堅すぎる防具で受け、反撃で確実に部位破壊を齎していき、あっと言う間に戦闘不能の蟲を量産。

 後は悠々と止めを刺し、ショーの実戦は幕を閉じた。

 うん、ベッタラとはまた違った近接の到達点とも言えるビルドだな。

 一撃の重さと手数、更に攻撃時に敵の行動を挫いて、攻撃の成功率を高めたベッタラ。

 それ以上の一撃の重さに、圧倒的な防具の性能に依るカウンターを取っていくショー。

 どちらもそれぞれの強みがあって、頼もしい限りだ。


 14番手はサーモン。

「漸く俺の番か。俺のギフトは【確かな顕現+9】【先ずはその身から+9】【制式装備Lv3+9】【獣人Lv1+2】【召喚士Lv1+2】で、肩書は《召喚マニア》にしたぜ」

 初出のギフトは【召喚士】だけだが、まあ名前の通り因子[召喚士]最後のギフトだから説明も良いだろう。

 肩書も察してると思うが、パラメータの[召喚]の覚醒数を30増やすというものだ。

「結局、従魔主体の王道型にしたんだな」

「まあな、俺自身の装備にあれこれとコストを掛ける位なら、従魔に寄せた方が効率的なんだ」

 さもありなん、といった感じか。

 諸々のリソースを遣り繰りするに当たって、何でも出来るようなビルドというのは…まあ出来なくもないが、手を出した分野数に応じて限界が低くなるからなぁ。

 ただでさえコストが重い従魔関係を充実させた場合、自身の装備にまでコストを掛けようとすれば、[積載]の覚醒数も増えていき、他を伸ばせなくなる分…となってしまう。

 帯に短し襷に長し、又は器用貧乏化待ったなしである。

「それにしても【制式装備】をLv3にしたって事は…」

「そう、従魔に追加の装備を持たせない代わりに、数を大幅に増やしたんだ」

 早速その従魔軍団を見せてもう。

「おおー!これだけゴブリンやらオークやらコボルドが揃うと壮観だな」

 従魔を次々と呼び出し、ゴブリン8、オーク4、コボルド4の部隊が出揃う。

 そして、全員が【制式装備】により、最低限…じゃねえな、Lv3+9は伊達じゃなく、ロングソード、カイトシールド、フルプレート一式を装備した、騎士団風な出で立ちをしている。

 そしてリポップした蟲と戦闘に突入するが、凄いね。

 サーモン曰く、核の強化自体は程々にし、コストを抑えてるとの事だが、各ギフトの効果で、従魔の素のスペックが大幅に向上し、強力な装備まで加わり、蟲を蹂躙。

 それはもう、これでもかという程に一方的に、だ。

 ただ、順次時間切れで戦線離脱もしていくので、再召喚の隙も馬鹿にならないし、敵が強ければ従魔も普通に力尽きるので、やはり管理の慌ただしいビルドではある。

 まあ、そういった手間に見合った強さは保証出来ると言える。


 15番手はおりょうさん。

「先ずはギフトですね。私のギフトは【防虫処理+4】【二重染め+4】【シロLv1+4】【魔導士殺しLv1+4】【血清添加+4】【アルカリ染色+4】【超生命力Lv1+3】です。肩書は《着物の伝道者》に致しました」

【魔導士殺し】アパレルを着ている場合魔法ダメージを40%軽減。 [紺屋]8つ目のギフト。

【血清添加】染め物に毒防御力を付与。 [紺屋]3つ目のギフト。

【アルカリ染色】染め物に酸防御力を付与。 [紺屋]4つ目のギフト。

 以上が初出のギフトで。

《着物の伝道者》着物系アパレルの耐久度が減らなくなりコストを半減。

 が肩書の効果となっている。

「【魔導士殺しLv1+4】…私じゃ逆立ちしても勝てないわね」

「そうですか?ユキさんには【コメットLv1+3】が有るので、全然そんな事はないと思いますが…」

「いや…流石にワンちゃん9匹に鬼防御のアパレルで固められたら無理ですって」

 まあ、ただでさえ布系アパレルは魔法と属性防御が高めだからな、しかも青柴の大群まで居たら魔法が届かねぇしな。

 ちなみに、おりょうさんの魔法ダメージ軽減率は400%弱なので、余程貫通系の効果を盛らなければ、魔法でダメージを与える事は叶わないだろう。

 ただ、おりょうさんが指摘する通り、【コメット】で加算される属性ダメージは、魔法防御や軽減でカットされないので、注意が必要だ。

 さて、実戦に移りおりょうさんの本領が発揮される。

 先ず目に付くのはやはり増えに増えた犬コロちゃん達だろう。

 ただでさえ強く、おりょうさんがダメージを受けると傍にワープするので、守りが堅い。

 それでいて、【超生命力Lv1+3】のお陰で、LPが25%あれば即死しない上に、堅すぎるアパレルで自身の生存力も高いときた。

 攻撃面でも、着物のコストが浮いた分、薙刀を強化した様で、一撃の重さも程よい感じだ。

 青柴が蟲を蹂躙し、おりょうさんは自衛してるだけで戦闘は終了した。

 うん、柴犬が可愛かった。


 16番手はカメキチさん。

「俺の番ですね。俺のギフトは【クラシカルゾンビLv1+6】【ミイラLv1+6】【核細胞保護Lv1+5】【古典的アンデッド+6】【亡者Lv1+6】で、肩書は《浄化の克服者》にしました」

 初出のギフトと肩書は。

【古典的アンデッド】移動速度が99%低下するが魔法のダメージを50%軽減する。 [亡者]5つ目のギフト。

《浄化の克服者》回復効果を反転されなくなる。

 と説明不要の【亡者】だ。

「カメキチさんLP幾つっすか?」

「まだまだLvが20と低いんであれですけど…諸々込みで約3億ですね」

 TAKEEEEEE!!

「ところで、《浄化の克服者》の効果が聞き捨てならないんですが」

 ここで、ショーが会話に参戦。

「俺も最初釘付けになってさ、だって回復反転って事は回復でダメージを受けるって事だろ?今までそんな状態異常喰らった事ないけど、これから出てくることを示唆されたんだし、そりゃ取得するよ」

「俺、ギフトの効果で毎秒4.8%回復するんですが…」

「「…ご愁傷様」」

「いや、テツさんも他人事じゃないですよ!?」

 そうなんだよな~、俺なんて反転状態で、執着免疫下でタブレット食おうもんなら、即死だからな…こりゃ今後のゲームシーンに気を付ける必要があるな。

 話も一段落したし、カメキチさんの演武に入る。

 丁度向かって来た蟲に、単身匍匐で迎え撃つカメキチさん。

 頭部以外へのダメージを大幅に軽減し、全身しゃぶられながら蟲にレスリングを仕掛ける。

 まあ、絵面は酷く泥臭く地味…ではないか、でも長所を押し付ける丁寧なゴリ押しは、いつ見ても素敵だった。

 いや、マジで堅すぎですって。


 さて、最後はタロウの出番だ。

「ふう、やっとうちの出番やね、うちのギフトは【ザラ弾幕Lv3+2】【獣人+1】【オーク+2】【食える時にLv1+2】【超燃焼+2】で、肩書は《マタギ料理人》やね」

【ザラ弾幕】ショットガンのペレット数が2倍になる。 [銃器]5つ目のギフト。

【食える時に】満腹度と保水度のゲージを1本追加する。 [オーク]8つ目のギフト。

【超燃焼】STA消費行動時に満腹度と保水度が5%減少する代わりにSTA補正が5倍になる。 [オーク]9つ目のギフト。

《マタギ料理人》料理バフ中LPとSTAが3倍になる。

 以上が初出のギフトと肩書だな。

 あ、[オーク]と[銃器]も初出だったか。[オーク]は因子で、ざっくりいえば飲食に補正を掛けるものだ。[銃器]パラメータで、銃器の精度に補正を掛ける。

「ここまで特化すれば文字通り弾幕なんだろうなぁ」

「そうだね、元が300粒程で、ギフトで13.4倍やからね」

 およそ4000粒か…それでいて、[銃器]の覚醒数が最低でも30は超えてるから、収束もそこそこだろうから、中距離まではカバー出来そうだ。

「そんじゃ、早速実戦に移るわ」

 直ぐに、巨大な蛾が攻めてきたが、殺傷距離に入るなり、弾幕の嵐に沈む蛾の大群。

 凄い、結構な距離が有るにもかかわらず、60%程の粒が命中してる。

 本来一粒一粒は軽いペレットも、盛に盛ったSTAと【超燃焼】に依る驚異の補正率で、ザラ弾とは思えない威力に昇華される。

 その火力の源泉のバフも、【オーク】や【食える時に】で以前よりも長く強くなり、継戦能力も格段に上がっていた。


「良し、全員のお披露目も済んだし、このまま狩りを続けよう」

 そうと決まれば一番近くの巣穴に侵入。

 多数の蟲に出迎えられるが、問題無く対処。

 北のエリアは、地下が全て同一ダンジョンからなるエリアの様で、4体居るボスを討伐する事で攻略が完了するっぽい。

 なんせ、既に3体のボスが討伐済みで、都度攻略度が上がってたそうな。

 なら、折角フルメンバーで来てるんだし、少しくらい他の負担を軽減して、貢献するのも悪く無いなとなった運びだ。

「しかし、ホームエリアと違って、エリア全体の地下が丸ごとダンジョンだから、広さが半端無いな」

「だな、出入り口も無数にあるし、穴掘り系の蟲と合わさって、挟み撃ちが当たり前だし面倒だ」

 マサと駄弁りつつ、仲間の快進撃を眺める。

 暫くする事が無く、手持無沙汰で進み、途轍もない広さの空間に出る。

 其処では、敵と味方が入り乱れて戦闘をしていた、というかボスらしき存在が居た。

「ボスってあの超ド級の百足かよ!!しかも4体全て同時に相手取るのか」

「最近聞かないと思ってたら…こんなところでボスに収まってたのか」

 他にも、かつてボスで出て来た巨大ヤスデが無数に徘徊し、蟻や蜘蛛などの雑魚が無限に湧き続けるという、かつてない地獄絵図な現場。

「…今日の所は退却するか」

『そうしよう』

 と、撤退しようとしたら、背後から大量の人と蟲が押し寄せ、強制的に広間へログイン。

 なし崩し的にボス戦へと巻き込まれてしまった。

次回も二週間後辺りで。


一応、前回のコメントへの回答を、前回のあとがきに載せた上で、少しだけ編集もしときました。

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