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第四十話

~前回までのあらすじ~

再誕を越えた成長要素、進化を経て、ビルドは新たな領域へと突入。

そんな中、DIYオンラインに対し、不穏な動きが見られ…。

「今日も蟲の駆除をするか」

 Lvを63に上げ、効率の為、<神の使い>と<黒いダイヤ>のスキルLvを200に。

「これで大分効率よくなるだろうよ」

 今日の目標額は、花金という事も考慮して、500万越えだ。

 早速バグスターへ跳び、移動を開始するが。

「やっぱ長い事[速度]10000の11倍補正を受けてると、6倍程度じゃ遅く感じるな…」

 しかも、ロケーション次第では、敵の移動速度や、攻撃の追尾性、リーチも馬鹿みたいに強化されてたりするから、11倍でも防御面で不安を感じる事も。

 それでも、普段の移動や、畑を広げる時に、未開墾の区画に移る時とかの。ちょこっとした移動時には[速度]の恩恵を感じるので、やはりなくてはならないパラメータだ。

 言ってる間に目的地に到達。狩りを開始した。


「うん!流石スキルLv200だ。強さがダンチだ」

 蟲がHPしか持たない境界付近だと、クロマグロの突撃一発で蟲1体が消滅。

 金蛇も、父蛇母蛇は勿論、小蛇も単体で蟲を圧倒し、凄い勢いで撃破数を稼ぐ。

 そんな、かつてのヒュドラと青龍の目覚ましい活躍に、心なしか他の使い魔も、早くLvを上げてくれと訴えている気がする。なわけねえか。

「このまま荒野浅層で狩るか、もっと中心地へ行くか…」

 単価が安い分、瞬殺で高効率の浅層。ちょっと手間取る分、単価も高くて戦力の遊びが無い中心。

「やっぱ、デフレとはいえ、素材の売却額も馬鹿にならんし、中心に向かうか」

 方針を固め、荒野の中心へ近づく。

 程なく蟲がARMを持ち始め、能力も上がって撃破ペースが落ちる。

 それでも、まだまだ余裕が有るし、遊んでる使い魔が勿体ないので、更に進む。

「結構進んだが、漸くBARを持ちだしたか」

 此処まで来て、使い魔もフル動員の総力戦に。

「でも、まだ余裕が有るから位置取りを工夫するか」

 少しの間、辺りを行ったり来たりし、定位置を決めた。

「ここなら、巣穴8ヶ所に囲まれてるから、敵の沸き効率は良いな」

 本当は、15ヶ所に囲まれてたりと、もっと多数の蟲に襲われる場所も有るが、流石にソロじゃ無理だし、既に他グループに抑えられてるので断念した。

 周囲から湧き続ける蟲に対し、ドッペル連合で地の利を得つつ数的有利を押し付ける。

 バスケされる羊に魅了されつつ、畑を維持。

 引き寄せに遭い、ガチガチの農地に閉じ込められた蟲を蹂躙。

 更に、空からは豆粒判定の癖に、妙に強い蜂が纏わり付き、足元は鼠とマウスがちょこまかと動き、【ドリス】の効果で同士討ちが発生。

 かなりハチャメチャな光景を楽しみつつ、就寝まで続けた。

 今日の成果は報酬と売却額合わせて430万。目標を大きく下回ったけど、十分な収入だろう。


 翌日。

 Lvを65に上げ、<増蜂>をLv200に。これで蜂の数は968体に。

 これで[制圧][包囲]の効果を最大限発揮出来、敵が強い程効果を実感出来るだろう。

 今日は朝から蟲狩りに勤しむので、目標額は1200万!!

 早速現地に赴き、1000体近い蜂と[制圧][包囲]の力を活かすべく、中心地へ向かう。

 そして、昨日より巣穴6ヶと少ない場所に陣取り、狩りを開始。

 早速4倍に増えた蜂が蟲を囲み、疲労ダメージとデバフを与える。

 当然弱体化した蟲は、使い魔の餌食となり、効率は昨日の比じゃない。

 やはり、数は力だ。数を活かすなら、更なる数を投入してこそだ。

 勿論質も大事なので、他のスキルのLvも順次上がていく心算だ。

 コストに余裕が無い為、何度か素材の売却に行き来しつつ、昼まで狩り続けた。

 午前中の成果は計620万なり。


 休憩後、Lvを68に上げ、<戦闘蜂>と<島亀>をLv200に上げた。

 午後も引き続き駆除依頼を受け、荒野へ赴く。

 蜂と亀の能力を大幅に上げた効果は遺憾なく発揮され、更に効率が上がった。

 蜂は1000体近いユニットが、強化されたので、総火力は桁違いに増し、亀は大型の使い魔に相応しい一撃の火力を得た事で、壁兼アタッカーの地位を確立した。

 大分余裕も出て来た事だし、最初に陣取ってた、巣穴8ヶ所の場所に移動。夕飯までずっと狩り続けた。

 昼の成果は計700万なり、既に目標を越えてしまったな。


「さて、目標額を稼ぎ終えてしまったし、夜は方針を変えるか」

 デフレで、物価が下がったからこそ、歩合制の討伐依頼を受けていたが、主力の使い魔のスキルLvをある程度上げ切れたので、従来の大物の素材狙いに回帰する。

 先程の収入をつぎ込み、Lv71にし、<高価な蛇壺><名工の蛇笛>をLv200に上げた。

 これで狙うは超射程の成体デスワームだ。

 つい先日と違い、7種のスキルがLv200になってるからな。討伐に掛かる時間は大分短くなってる筈だ。

 準備も整ったし、早速現地へ向かう。

 現場に到着し、超射程ワームのテリトリーを目指す。

 当然幼生体が襲ってくるが、1体あたり十分も掛からずに倒せてしまう。

 成体のテリトリーに着くまでに、10体以上討伐したが、今となってはノーマルドロップでは端金なので、有難みは無い。

 成体エリアも駆け抜け重視で突っ切り、超射程ワームの領域に到着。

 早速足元からの奇襲で、豚が膨張していく。

 床下のワームはそのまま隔離したいので、わざと畑を破壊させ、姿を晒したワームを狙って即座に開墾。

 ワームを畑に打ち上げ、孤立したところを数の暴力で蹂躙する。

 大体十分ほどで[制圧]が効き始め、そこから二分足らずで討伐。衰弱させてからが本当に早いな。

 さて、目新しいドロップ品は[ワームの肺]という、用途不明の素材だ。

 残念ながら酸袋はドロップしなかった。

 そんな感じで、討伐に掛かる時間が短縮され、稼ぎ効率が駆除依頼を上回った。

 尤も、相変わらず消耗も激しいし、ワームを孤立させるのに工夫も居るので、神経も使うから一長一短ではあるか。

 今回はワーム狩りと決めているので、最後までやり切るけどね。

 今回の成果は1400万なり。


「今日はどうするか」

 昨日の収入でLv77にし、<野生の脈動><不死の根源><生命超強化><生命超増強>をLv200に。

 これで、[生命]が225920871になり、【生への執着】と[死への免疫]で[生命]が約187億…

 これだけ[生命]を盛れば、そう簡単にはやられないだろう。

 なので、今日はベースシップに乗って、ホームの反対側を目指す遠征に参加する。

 以前、海洋生物にボコボコにされ、成す術無く撤退していた艦体だが、時が経ち、強化を経てどうなってるか楽しみだ。

 テレポーターで港へ跳び、ベースシップへ搭乗。

 折角だし、端っこに陣取ろうとしたが、既に抑えられていたので、仕方なく中心で待機。

 どの道、戦闘が始まれば出番は有るだろうし、のんびりと物資を生産するか。


「お、大カジキだ…ってこっちに来る!?」

 バイ―ン!!と海中から飛び出して来たカジキが、甲板の乗組員を串刺しにしようと突っ込んでくる。

「あっぶな!!てめえこの野郎!!」

 大カジキの突撃で破壊された畑を作り直し、宙に浮くカジキをフルボッコ。

 周囲と協力し、数秒で三枚に卸されたカジキ。哀れ。

 ふう、と息を付くが、危機が去ったのも束の間、大王蛸に大王烏賊が群れで襲って来た。

 これは駆逐艦が素早く迎撃に当たり、損耗無しで切り抜けた。

 やはり、何度も遠征を試みては敗走してるだけあって、練度が見違える程上がってる。

 それから暫くは、カジキと烏賊蛸がメインで攻めてきたが、問題無く対処。

 ベースシップの乗組員も、1人の脱落者を出さずに、いよいよ大海原の玄関口に到達。

 早速、巨大イルカの群れが襲って来た。

 個々がクジラ並みのサイズになっていて、強い堅い速いと三拍子揃った超強敵だ。

 更に、ソングで高度な連携を取り、巡洋艦を執拗に狙う様はちょっとしたホラーっぽい。

 そんなイルカの群れも、潜水艦や駆逐艦の魚雷、重機関銃を搭載した戦闘ボートにしゃぶられ壊滅。

 遠洋の緒戦は無事勝利となった。


 航海を開始して二時間。

 度重なる襲撃、敵に鯱やマンタが混ざり始めた事で、艦隊の損耗率は15%を超え、危機的状況となっている。

 また、ベースシップの乗組員も半数が海の藻屑となり、艦上も大分スカスカに。

 艦体の目が鯱やマンタ、カジキにいってる間に、押し寄せた烏賊と蛸に大半がやられてしまった。

 俺も二桁回数以上海に引きずり込まれたが、常軌を逸したLPと、膨大な数の使い魔、その中でも豚とガーディアンとクロマグロに大いに助けられ、今回の参戦者の中では、生還数最多を誇っている。これも、超級試験の時の逃避行の経験が活きてるな。

 リソースの方も、異常な程高い耕作地ランクのお陰で、薬草を栽培し、生き残りの薬師に簡易調合で、タブレットにして貰う事で、現地調達に成功。

 全体の消耗に対し、俺は割とぴんぴんしている。

 それに、何度も死線を潜った同士という事で、士気も高く、結束力も最高の状態だ。

 何が何でもこの航海で、アースの反対側に行ってやるぞという機運が高まっている。

 ちなみに、あたかも大航海しているような感じで言っているが、実際は遠洋に出て直ぐに、常に左手に陸地が見える様に航海し、右側からしか責められない様に進むという、慎重だし姑息な航海となっている。

 なんにせよもうひと踏ん張りだ。


 更に二時間後。

「何とか切り抜けたな」

「だね~、テツやんは相変わらずやったけど」

「ははは、まさかタロウと再会するとは思わなかったぜ」

 大分前に、砂漠で屋台を一緒にやったタロウと艦上で再開し、協力して危機を切り抜けたのだ。

「さて、いよいよ新大陸に上陸か」

「生き残りも随分減っとりますなぁ…」

 上陸目前にして、艦隊損耗率は42%、残存歩兵は1200人程らしい。

「これより上陸を開始する。上陸を完了した者は、安全の確保、偵察、生産、輸送。各々の得意分野で仕事をしてくれ」

 責任者の号令を経て、艦隊は輸送船の護衛に移り、乗組員は入植の為上陸を開始した。


「ここがホームの真裏か、見た感じ草原に山に川に森と自然豊かだな」

「そやね、けど怖いわ~、自然が豊かって事は野生生物の脅威も確実に存在してはるだろうし」

 言ってても始まらないし、とっとこ輸送船に乗り込み上陸した。

 久々の陸地はVRであってもなんだか安心感が有るな~、そんな事を思いつつ、少し歩けば鬱蒼とした森が立ちはだかる。

 そんで、先に上陸した人たちに合流しようと進むと、既に激しくドンパチやっていた。

「パッと見普通の野犬だけど、此処まで生き残った猛者が苦戦するって事は、超強いんだろうな」

「そやね~、うちらも本気出さんとマズイかも」

 前方の戦闘状況を確認し、苦戦してはいるが、直ぐに崩壊する程でもないので、退路兼補給線の確保を開始。

 タロウはタロウで、以前よりも充実した屋台を展開し、料理を開始。

 事前に俺が豚肉やハチミツに、野菜果物を提供してるので、次々にバフ付き料理が量産されてゆく。

 俺の方も、既に100面以上開墾し、後続と負傷者を迎え入れる。

 野犬は数も質も十分な強敵で、此処まで生き残った猛者でも一筋縄とはいかず、上陸初戦から大激戦へと発展。

 コチラの人数は1000を超えるとはいえ、犬も途絶える事なく増援が来るので、消耗戦では圧倒的に不利に思える。

 でも、この状況を自分がどうにかしようとも思わないし、出来るとも思えないので、他力本願で状況の好転を祈る。

 そして、祈りが通じるとかそんなドラマティックな事が起こるわけでも無く、普通に全員が無事上陸し、数で野犬の群れを圧倒。

 ともあれ、これで上陸戦は無事に完了する事が出来た。


 休憩を終え、無事にログイン出来るよう祈りつつ、ゲームを再開。

「…良し、何とかなってる様だな」

 上陸に成功し、前哨基地として寄港用の簡易港の建設と、砦の建築を始めたところで、昼飯となったので、戻って来るまで陣地が無事な事を祈りログアウトしたが、祈りが通じたようで、未だに多数のプレイヤーが作業をしている。

 俺が周囲の様子を確かめていると、近くにタロウがポップ。

「ふう、どうやら無事ログインできた様やね、やあテツやん」

「ああ、これだけ人数が居ると、自然と休憩のローテーションが出来てるんかな」

 さて、これから何をしようか。

「アップリンク立ち上げの護衛か、周囲の偵察か」

「この辺で待機しつつ生産でいんちゃう?」

 俺は農耕、タロウは料理が出来るので、テレポーターで帰れるまではそれで良いかもな。

「んじゃあそうするか。はい豚肉とハチミツ」

「あいよ、これで料理を納品すれば、そこそこ稼げるやろ」

 新大陸かつホームから最も遠いエリアという事もあり、タロウは兎も角、俺の火力が他のプレイヤーに比べてあまりに低いので、余程味方が追い詰められない限り、前に出るのは自重する。

 逆に、耐久に関して…総合的な堅さなら、間違いなく上位なので、その時が来たら頑張る心算だ。

 で、タロウに関してだが、料理バフモリモリで、ショットガンを至近距離でぱなすというビルドで、鬼のような火力を実現している。

 本来、銃器は補正の掛るパラメータが少ないから、火力が出し辛い筈なんだが、これでもかとSTAをブーストして、消費STA補正で威力を底上げしているらしい。

 そんなわけで、俺らに戦闘役のお鉢が回ってきても、俺がディフェンス、タロウがオフェンスを担当すれば、戦闘は十分に可能だ。


「思ってたより、直ぐに戦う羽目になったな」

「そやな。まあ、丁度ぶっ放したくなってたとこだし丁度ええ」

 そんなタロウの獲物は、銃身が短いソードオフタイプで、大型のマガジンが装着された、少々歪な構成のショットガンとなっている。

 おっと、状況の説明が無かったな。

 俺ら2人は、アップリンク設置場所から少し距離を置いて、耕作と料理に勤しんでいたが、偵察や安全確保に動いていた班が、大量の猿を引き連れ敗走。

 護衛や建築勢を巻き込み、俺らを含む生産組も戦闘に巻き込まれたのが発端だ。

 そんな、偵察組を敗走に追いやる猿共はというと、棍棒や投擲用の石で武装しており、能力も高く数も多い超強敵だ。

 なんせ、投石1発で3~40万程喰らうので、身体を無防備に晒せば、一瞬で死に戻りする事必至だ。

 まあ、豚に柵付き鎧付きの畑で守りを固めてるので、滅多に直撃を受ける事はないのだが。

「しかし数が多いな」

 猿があまりに多く、俺ら2人も含め、各所で人が孤立状態に陥っている。

 更に可哀想な事に…

「うわ!?どういう状況よこれっ!!ぎゃあああああ」

 といった感じで、休憩から戻り、ログインしたプレイヤーが出待ち狩りに遭う悲劇も散見される。

 それにしても困ったな。俺とタロウなら、猿の包囲を突っ切ってベースシップに逃げ込めるが、アップリンクがオンラインにならない限り、ホームへの帰還が叶わない以上、こうして少しでも敵を引き付ける必要があるのだが…流石にずっとはもたないからなぁ。

「マズイよテツやん。アレ見てみい」

「ん…ボス猿的な?」

 タロウに促され、視線を向けた先に居たのは、他の猿とは一線を画す大きな猿が佇んでいる。

 しかも、ギャグなのか、分かりやすい事にこってこての王冠まで被ってやんの。

 このボス猿の登場により、猿共の連携が強化され、孤立した仲間が続々とリタイヤしていく。

 これはマズイかもしれんな…。


「テツやん、物資はどんな塩梅なん?」

「物資はまだまだ余裕だが、装備の損耗がな。タロウは?」

「弾が心もとのうなってきおった」

 うーん、タロウが弾切れしたら、途端に火力がガタ落ちしてしまうな。

「仕方ない、死んだら元も子もないからな。ベースシップに戻って弾の補給を受けよう」

 と、簡単に言ったが、ボス猿のせいで強化された猿の手前、逃げるのも厳しい状況だが…やるっきゃないっしょ。

 そうと決まれば畑の修復を捨て、海側に向け鍬を振るう。

 俺自身2億もの[生命]に守られ、その使い魔も補正で堅くなっているので、そう簡単に俺らに敵の攻撃が届く事は無いが、人に近い猿だからか、柵を乗り越え鎧を避けて通る等、畑の中でもある程度動いてくるので、一時たりとも油断できない。

 そういった迷路を越えて本陣に迫った猿は、タロウが都度駆除するが、やはり弾の不足がボディブローのように効いていて、こちらの撤退を遅々として進まないものとする。

 それでいて、こちらの目的を察しているのか、ベースシップへの最短距離の道は常に先回りされ封鎖。幾度となく遠回りを余儀なくされ、余力が更に削られる。

 そして、ついにはタロウの弾薬が尽き、撤退も儘ならない状況へ陥る。

 粘るだけなら幾らでもやってやれるが、状況の好転を人任せにする時点で詰みかけなのだが、ここに来ての捨てゲーは俺とタロウの矜持に反するので、最期まで足掻く所存だ。

 と覚悟を決めた事が良かったのか、こちら側に最強の援軍が到着した。

「おい!!マローダーが到着したぞ!!」

「やれやれやな…後は粘るだけやね」

 窮地に到着した援軍は、僅か十両のマローダー級戦車だが、その圧倒的な重装甲を笠に、超精密射撃が可能な重機関砲が火を噴く。

 一発一発がアコの本気の一撃以上に重い上に、ファイアーレートが毎分200を超える連射速度で撃ち出されるので、瞬く間にサルの群れを駆逐していくマローダー。

 ただ、相変わらず弾切れが速すぎるのが玉に瑕だが…短時間での戦果はなんと華々しい事か。

 弾切れで、砲身から煙を拭いて沈黙する様は、やり切ったという誇らしげな姿に見える。

 ボス猿も、いつの間にかハチの巣にされていたようで、統率を失った猿共は烏合の衆と化し退散。

 大勢の犠牲が出たものの、俺達2人はどうにかこうにか生き残る事が出来た。


 二時間後。

「これでホームに帰れるな」

「やっとや…ところでテツやん、さっきの話は本気かい?」

「勿論、無理強いはしないけどね」

「いやいや、無理も何も是非仲間に入れておくれや」

 折角の再会と、死線を共に潜り抜けた事もあり、我がゆるーいカンパニーへの加入をタロウに打診。

 そしてたった今、了承の意を受け取ったので、正式に加入手続きを踏み、タロウを迎え入れた。

 PAに帰還し、仲間に紹介した。

 早速、トリオにカメキチさんに闘技場に連行された。PvP研究に付き合うとの事だった。

 まあ、飲食バフモリモリの散弾銃ビルドはかなりの希少種だからな、存分に楽しんで来てください。


「どう?やっていけそうか?」

 夜、PAで料理を量産していたタロウに声を掛ける。

「ああ、大丈夫、皆常識人だしエンジョイ勢なのがええね」

 どうやらうちは、タロウ的にも悪くない居心地の様だ。

 聞くと、以前別のコミュニティに入っていた様だが、ちょこちょこガチ勢の声が大きくなったり、エンジョイ勢がガチ勢と揉めたりと、ギスギスオンラインに嫌気がさして抜けて以降、ソロでいたようだ。

「それは良かった、まあ気楽にやってくれ」

 タロウも含め、まだまだメンバーとLv差が有る為、再びソロで行動を開始する。

 とその前に、先程の収入でLvを上げなければ。

 Lvを81に上げ、<皇虫>と<軍鼠>をLv200にし、装備を修理した。

「そんじゃ、新大陸に跳んでみるか」


「予想はしてたが、やっぱベースが完成するまでは不安定極まりないな」

 テレポーターから出た瞬間、目に入った光景は荒れた未完成ベースという、お馴染みの景色だった。

 犬、猿ときて、今度はキジの群れが大暴れし、ベースの建築を阻んでいる。

 桃太郎と言えば、百歩譲って帯刀した桃太郎は兎も角、犬猿キジがどうやって鬼に太刀打ちするんだよって思ったが、ここのなら戦えるなと思える。その位強いんだ。

 到着早々戦闘に巻き込まれたが、やはり先程同様深刻な火力不足に悩まされる。

 その分圧倒的なタフネスのお陰で、持久戦をしかければ、いずれは相手を衰弱させて倒せるが、時間が掛かるのはどうしようもない。

「これは早めに[制圧]と[包囲]のスキルもLv200にする必要が有るな」

 それに、なんだかんだで、<魔道人形>2体と<ゴーレム>2体、マウス4体と犬がLv50なので、これらをLv200に上げれば大分マシになる筈なので、伸びしろは十分だ。

 その為には、先立つものが要るので、視界内に沢山居るキジをしゃぶって銭を頂かなくては。

 少しでも駆除効率を上げる為、被弾上等で畑で囲うようにゴリ押し。

 こうする事で、デバフを重ねたうえにガーディアンが近接を仕掛けられるので、リスクに見合ったリターンを得る事が出来る。

 そうこうしている内に、キジを追い払う事に成功。

 未完成ベースが再び機能をし、建築も再開された。

 その後は、現地に留まりながら、豚肉とハチミツ、収穫物を納品しながら野生動物と鎬を削り、建築に貢献。

 就寝までにかなりの野生動物を狩り、納品も相当数したので、収入も700万と中々なものになった。


 一週間後。

 Lvも90まで上がり、<精鋭部隊><煽動者><圧制><殲滅><煽動><見せしめ>をLv200にした事で、飛行ユニットの蝙蝠が大幅に強化され、使い魔の移動速度が劇的に早くなり、数で押している時の衰弱が明らかに早くなり、新大陸の犬猿キジをかなりスムーズに倒せるようになった。

 それに、ベースの建築も程々に進み、防衛システムの構築も始まったので、跳んだ際に戦闘中という状況はかなり減り、新大陸での活動の安定に一役買っている。

 今後はベースの要塞化、軍港の建築により、未だに近海にプカプカ浮いている艦体の再編が目標との事だ。

 と、新大陸の情勢が動いていたのと同様に、他の場所、他の惑星でも様々な動きがあった様だ。

 当事者じゃないのでわからないが、取り敢えず攻略度だけ表すとこうなる。

・アース72% ・バグスター40% ・フォレスト28% ・アニマル36% ・エルフィン56% ・鬼ヶ島8% ・ドラグーン4%

 といった感じで、全体的に攻略が進み、順調にコンテンツを消費していっている。

 見ても分かる通り、アースの攻略度がかなり高まってきた。

 だが、ホームの存在するエリア以外の5エリアの全容がある程度判明してくると同時に、この先の攻略の厳しさが浮き彫りになった。

 というのも、各惑星からの侵略者が根付き、在来種との熾烈な生存競争で、淘汰進化共生交配を繰り返し、極めて危険な生態系を形成。

 かつてない魔境と化している様だ。

 しかも、現在進行形で状況が激しく推移していて、酷い場所だと複数の惑星からの侵略者が共生交配を経て、新種の生物が増えているらしい。

 長い事、人目に触れずにいた事で、勝手に高難易度化するという、傍迷惑な仕様ではあるが、それもこのゲームの味なので、仕方ないか。

 それはさておき、この一週間で俺に起きた大きい変化と言えば、『案山子職人』の超級試験を受けれるようになった事だろう。

 問題は、またしても試験が高難易度化して、何度も失敗している点だな。はあ…


「兎に角Lvを上げにゃあな」

 1回目の進化としては、Lvカンストまで20も伸びしろが有るし、全てのスキルをLv200まで上げれたわけでもないので、頑張って金稼ぎをしなければ。

 その為に、ホーム傍の森にゴミ拾いに行く。

 並行して、変異した生物、魔物、怪物を駆除する事で、歩合制の討伐依頼の報酬もゲット。

 近い為、単価が安くても数を熟せるので、効率は悪くない。

 程々の物資を持って、商業地区から外に出る。

 直ぐ傍が、魔境と化した森という事で、警備も物々しいが、稼げるとあってか人通りはかなり多い。

 そんな人波と距離を取りつつ移動し、森の入り口に到着。

 早速七色に発色する油を除去。すると七色に光る馬鹿でかい蜘蛛に襲われた。

「いきなり樹上から降って来るなよ!!」

 VRの弊害で、こういうシチュエーションもリアル感満載で体感出来てしまうので、冷や汗が半端ない。

 幸い、ファーストコンタクトは豚が肩代わりしてくれたのでノーダメ。

 即座に反撃で、畑をお見舞いするが器用に柵や鎧をスルスルと躱し、再び樹上に…とはいかず、蜂に群がられ、蛇の猛毒を浴びせられ、弱った所をゴーレムに引き寄せられタコ殴りに。これも相手視点なら軽くホラーだよな。

 そんな感じで、この依頼のルールを理解し、森を探索する。


 あれからずっと、ゴミを掃除→何かが襲ってくるというのを繰り返し、中層へ到達。

 目の前には、七色…なのだがラメのようなキラキラ入りの粘液が掛った樹が有るのだが、その樹がものっそ捩じれてるんだよね。

「これ掃除したら何がどんな状態で出てくるんだ…」

 恐怖一割興味九割で、ラメ入り粘液を掃除。

 そして頭上から降って来る熊。しかも両腕が捩じれている熊。

「どうでも良いけど襲ってくる何かは、上から降って来なけりゃいけないルールでもあるのか?」

 全部このパターンなので、流石に驚きはしないし、既に万全の状態で迎え撃っているので、心配は無い。

 なんて思ってたが、この捩じれアームが中々の強敵で、攻撃力だけならこれまでの敵の上位に入る勢いだ。

 それでいて、堅さもそれなりで、浅層の変異生物とは別格の強さを誇った。

 討伐自体は時間も掛からず、余裕を持って終える事が出来たが、こんなのが群れで押し寄せたらヤバい事請け合いだ。


 中層を探索しつつ、掃除と駆除を続けて一時間。

 コストが心許なくなり、一旦戻って空きを作ってから、今度は採取をしながら浅層から探索をし直す。

 汚染で、薬草が取れなくなった代わりに、毒草や毒キノコが豊富に取れるようになったので、少しでもお金に換える為に、採取も並行する。

 かつての薬草の産地がこんな有様じゃ、また薬草の高騰が始まるんだろうな。

 薬草の種は相変わらず溜め込んでいるので、高騰したら一財産築くのも良いかもしれん。

 そんな事を考えつつ、浅層と中層のゴミとシンボルを粗方回り、作業を終えログアウトした。


「今日はどうやって稼ごうかな」

 やはり、毎日同じ作業で金策していると、飽きとの戦いになってしまう為、なるべく日替わりでやる事を変えたいと思うが、やはり効率と天秤に掛けると如何にもな…

「いかんな、こうやって悩むくらいなら、その分動いた方がマシだ」

 という事で、効率とか度外視で、先ずはアースの完全入植を目指してみる事に。

「久々に東の大陸に行ってみるか」

 確か森のダンジョンを攻略していたのを最後に、それ以降行ってなかった気がする。

 行き先を決めたので、ギルドへ行き、テレポーターに乗ると、行き先が3つ表示される。

(ほお、既にベースが3つも完成していたのか)

 最初に上陸した半島に1つ、森を越えた先に1つ、更に南東に進んだ先に1つ、といった感じで拠点を築いた様だ。

 で、東の大陸を制覇するには、2つ目のベースから、東北東にずっと進んだ先のベースを完成させる必要がある。

 目的地に一番近い2つ目のベースへ跳び、北上してから海沿いに東へ向かった。


「おお~、やってるやってる」

 ダッシュする事数分。漸く東エリアの最後のベースの建築現場が見えてきた。

 最後のベースは、港と隣接した海運都市的な作りにする様で、砦と港を同時進行で作っている。

 そして、それを妨害するために、様々な生物や魔物が襲い掛かっていた。

「見た感じ、フォレスト勢の影響を色濃く受けてる感じか」

 以前森で戦った、甲羅にラフレシアを乗せた亀。こいつをもっともっと植物っぽくした感じの海亀が此方へ向かってくる。

 甲羅には、色とりどりの花が咲き誇り、隙間は苔でびっしりと覆われ、手足は茸や粘菌に寄生されている。

「なんて気味の悪い…」

 既に迎撃準備も整っているので、そのまま迎え撃つ。

 そして、少し戦ってみて、前言を撤回する考えに。

「寄生じゃないな、見事に共生してやがる」

 本来、陸での活動が苦手な海亀の手足を、粘菌が保護しサポート。

 使い魔が迫れば、キノコや花が胞子や花粉を出し応戦。

 亀が傷つけば、粘菌や花が回復し、植物が傷つけば亀の生命力で回復。

 それでいて、光合成でエネルギーを生み出しつつ、常に亀に供給しているという徹底っぷりである。

「成程、こんなんが無数に跋扈してりゃ開拓が進まんわけだ」

 幸い、此方に向かって来たのはこの亀だけだったので、数の暴力で沈める事が出来た。

 そのまま未完成ベースに近寄ると、今度は複数の共生体が迫る。

「お次は虎と兎か」

 虎は全身茨塗れで、兎は丸い粘菌を纏った状態だ。

 先程の亀に比べれば、随分とマイルドに見えるが、これが奴らの完成形態って事なんだろう。

 その予想は正しかったようで、虎は本来の素早い動きを損なわずに、純粋に防御力と茨の絡みつきという絡め手を手に入れ、使い魔相手に大立ち回りを展開。

 兎は、小さい当たり判定を最大限に活かしつつ、要所要所で粘菌の補助を受け、爆発的な力を生み出し飛び跳ね、超火力の体当たりを繰り出したり、回避行動を取るなど使い魔を翻弄する。

 まあ、圧倒的な数の差で潰しましたけどね。


 程々に外から敵を間引き、戦闘が収まったので、ベースに入る。

 内部で情報を収集し、港が完成した際のメリットが判明。

「成程、ここが完成すれば海の安全性が向上するし、ホーム真裏の大陸への支援もしやすくなるのか」

 ふと浮かんだのが、此処が完成してからアースの裏側を目指した方が、安全だし確実だったのでは?と思ったが、観測の及ばない場所で、共生生物が猛威を振るうようになってからでは遅いかと思い直す。

 他に得た情報としては、ここから海沿いに南下していくと、ここを襲撃する生物の巣がある事が分かった。

「取り敢えず現場に行ってみるか」

 初見の行き先だけど、行き来する人の往来で、大体の方角が掴めたので、ダッシュで向かう。

「しかし、今となっては[速度]が1万あっても、戦闘では遅い位だな」

 周りの人を見ると、移動速度がデフォルトの人が4割、多分だが[速度]が5万以上の人が5割り、俺みたいに移動の補助程度で半端なのが1割と、かなり両極端な感じになっている。

 半端者1割を加えれば、およそ6割の人間が移動速度を重要視しているという事になるし、4割の人は無くても困らない、又はリソースを割く余裕が無いかだろう。

 戦闘を見ると良く解るのが、やはりデフォルト又は鈍足派は、俊足派と比べて攻撃の破壊力がダンチなのだ。

 当然防御に関しても互角以上なので、足を捨てるか諦めるかした分、別の部分で突出している。

 まあ、これはビルドの方針の話になるので、何が強い何が弱いって事ではなく、各々の好みの差だ。

 そんな事を考えていたら、巣に到着した。

「あー、地下ダンジョン型ね」

 ただ、出入り口が様々なバリエーションで複数存在するという、変わったタイプだが。

「成程、それで封鎖しきれなくて襲撃が度々起こるわけか」

 さて、ここの攻略にどう貢献しようかね。


 共生生物共の巣。ここの攻略にあたり、俺が選んだ役割は、人気のない出入り口からの潜入だ。

 別に、外で出待ちするだけでも良かったのだが、入っていった方が敵との遭遇率も高そうだったので。侵入を選んだんだ。

「んじゃまぁ…入ってみるか」

 俺が選んだのは、岩肌にぽっかりと空いた出入り口で、ちょっと高い丘の頂上に位置している。

 場所柄、アクセスが悪く、崖を背に戦う羽目になるので、不人気故に人の気配0という場所だ。

 入り口はそれ程広くは無いので、開幕から豚が詰まるなどグダるが、少しずつ螺旋状に伸びた空洞を下って行く。

 少しして、やや開けた空間に出た。

 入り口からの雨水が溜まっているのか、足元の窪みにはいくつもの水溜まりが。

「なんて騙されるわけないんだよな」

 先程から、羊が水溜まりから逃げるので、擬態なのは看破済みだ。

 向こうも、未だに狸寝入りを決め込むので、構わずランタンの光を浴びせつつ、足元と周囲を畑に変える。

 流石に浄化の光に辛抱堪らなくなったのか、無色透明の粘菌が動き出すが、時すでに遅し。

 ランタンのデバフを最大まで受け、足元と周囲は畑で使い魔だらけ。

 状況を悟った粘菌は、再び窪みに収まれずに、水溜まりのフリを再開したが。使い魔にフルボッコにされ昇天した。


 擬態粘菌の居た空間から、緩やかな坂を下る事数分。

 つららのみならず、床も壁も天井も、薄っすらと発光する水晶だらけの鍾乳洞へ辿り着いた。

 それに伴って、一面シンボルだらけで、俺は小躍りしながら採取採掘を行なった。

 その際、岩陰などに潜む[結晶蟹]という、蟹が変異した魔物に襲われたが、大苦戦の末に全て討伐した。

 結晶蟹のドロップ品は、結晶甲殻や、発光カニみそという、かなり希少な素材だった。その中でも…

「結晶蟹のハサミか、加工すれば使えそうだけど、小さすぎて剪定鋏くらいにしかならなそうだな」

 ただ、そんな小型の選定鋏が、高額で売れ、思わぬ収入となる事を、この時は知る由もなかった。


 翌日。

 水晶や、結晶蟹の素材を職人に預け、鍾乳洞の先を目指す。

 鍾乳洞以降、広い空間が続き、動き易いのはありがたいが、敵も笑えるレベルで強くなっている。

 更に、茨のような棘が生えた[茨昆布]という、空間丸ごと覆い尽くす怪物と遭遇。

 火力も結構高いし、高濃度のヒアルロン酸を喰らうと、一定時間身動きが取れなくなる上に、頭部に直撃を受けると[窒息]状態になるという、大変恐ろしい敵だ。

 何度も何度も死に戻りしつつ、六時間掛け討伐に成功した時は、雄たけびを上げてしまい、横に居た雪乃に脛を蹴られた。痛い。

 ただ、報酬は破格もいいとこで、なんとアビリティを獲得出来てしまった。

 その名も[超純度ヒアルロン酸]、効果は保水度の減少速度を30%軽減といものだ。

 ギフトには遠く及ばないものの、アビリティらしく強力な効果となっている。

 試しに、フュージョンボックスを起動してみるが、確かに減少速度の低下を実感出来る。

「これは良いな、日頃から保水度の回復には手を焼いていたからな」

 今後、増々[ドッペルゲンガー]を使いやすくなった、と喜んだ。


 十数日後。

「良し、行くか」

 Lvも110とカンストし、状態は万全。いざ『案山子職人』超級試験へ。

[生命]も3億を超え、執着免疫込みで250億を超える様に。

『ではこれより、『案山子職人』超級特別試験を開始する!!』

 おっさんの宣言を合図に、何も無い平地の草原へと転移した。

 試験の目的は、これまで同様時間内に作物を一定量収穫するというもの。

 早速[ドッペルゲンガー]<百姓連合>を発動し、全速力でその場から退避する。

 直後、開始地点に眩い光が注ぎ、数舜後には耳を(つんざ)く轟音が鳴り響く。

 開幕から、敵の初手はオービタルストライクという、豪華仕様の本試験。

 直撃で100億、余波で100万を超えるダメージのオービタルストライクとあっては、流石のドッペルも耐え切れず、発動した[スワンプマン]と豚諸共消滅。

「チッ!!こっちを狙ってはくれなかったか」

 本体である俺ならば、走って逃げているので、直撃を貰う事無く耐えられるので、開幕は俺が狙われ、ドッペルが開墾でスタートダッシュが理想だったが…初っ端運が悪い展開だ。

 衝撃が収まり、景色が元通りになった所で、人類連合の軍が続々と降下してくる。

 円盤や爆撃機、空中空母に戦闘機とバラエティーに富んでいる編成だ。

 そして、それらに紛れて自立型殺戮兵器…要はドローン兵器がこれでもかと投下され、歩兵共々全力で殺しに来る。

 ここからの行動も実にシンプルで、兎に角逃げる。

 特に、爆撃機の真下、マローダーやデストロイヤー級の戦車の射程内に留まらない、この2点を厳守しだ。

 だが、鈍足(それでもそこそこ速い)超重装甲のマローダーは兎も角、俊足鬼装甲のデストロイヤーから逃げ続けるのは、例え[速度]11000でも厳しく、かなりの頻度で捕まってしまう。

 幸い、デストロイヤーは火力は程々止まりなので、今の[生命]ならば、直撃を受けても致命傷二歩手前位で済んだ。

 さあ、先ずは当たりを引くまで逃げ切るぞ。


「キタコレ!!」

 敵全体が[速度]換算で、平均7000超えで迫る中、何度も何度もしゃぶられつつ凌ぎ、ビッグチャンスが訪れた。

 直前まで纏わり付いていた無人機以外の歩兵や兵器が退避し、俺にビーコンが照射される。

「グオオオオオ!!」

 漸くオービタルストライクが俺を狙い、俺を突け狙うように照射されるターゲティングビーコンから逃げ、発射された衛星砲の余波に身を焦がされながら逃走。

 衝撃が収まり、のこしてきたドッペルと百姓を見ると、戻って来た戦力に襲われつつも、広大な農地を開墾していた。

 ここまでは順調。逸る気持ちを静め、こちらでも開墾を開始。

 当然、向こう側の方が、ドッペルと俺が呼んだ百姓、ドッペルが呼んだ百姓の3ユニット体制なので、凄い勢いで農地を広げる。

 少しして、<百姓連合>のCTが切れたので、2体目の百姓を召喚。ドッペルも同様に百姓を召喚した。

 そろそろドッペルの時間切れなので、百姓を捨て駒にあちらの農地に合流を図る。

 敵の群れを誘導し、射線を遮りながら切り返し合流を急ぐ。

 豚を円盤にキャトルミューティレーションされ防護を剥がされ、戦闘ヘリに機関銃で掃射されつつ急ぐ。

 そして、運悪く敵の榴弾に巻き込まれ、吹っ飛びダウンし大幅なロスが発生。

 このせいでドッペルが時間切れとなり消滅。百姓も消えてしまい、管理者不在の畑が連合に荒らされ放題に。

「…ここで焦ったらダメだ。まだ畑は大量に残ってる、大丈夫だ」

 自分に言い聞かせ、未だ遠くの農地が蹂躙される光景を受け入れる。

 タブレットを噛み砕き、LPを全快させ再度走り出す。

「クソ…こんな事なら[速度]も大事にするべきだったか?」

 最早、[速度]1万がなんのアドヴァンテージにすらなっていない状況に、苛立ちが募る。

 だが、何かを伸ばせば何かが引っ込むし、全部伸ばせば器用貧乏…今の方針は悩み抜いた末の決断だ。どんな結果も受け入れなければ。

「ハア…ハア…良し、ドッペルのクールタイムが切れた!!」

 直ぐにドッペルを呼び出し、ついでに丁度再使用可能になった百姓も置いて行く。

 少々歯抜けになってしまったが、広大な農地はもう目前だ。


「うおおおおおおおお!!」

 農地に辿り着き、直ぐに畑の修復と作付を開始。

 次のオービタルストライクまで猶予は短く、ここで少しでも収穫出来なくては時間がヤバい。

 ここで少し捕捉をすると、この試験の合格条件の、一定量の収穫だが、量だけでなく作物の質や希少価値にも左右される。

 早い話、[大根]と[極上の完熟マンゴー]だったら、後者の方が圧倒的に少ない収穫量で、合格を捥ぎ取れる。

 ただ、良い物は栽培時間も長いし、収穫数も少ないので、一概に高級品が有利とは言えない。

 で、今回俺の作戦は大根やジャガイモなどの、簡単に育つ価値の低い作物で勝負をしている。

 こいつ等なら、今のステータスだと作付から十秒程で収穫出来、[品種改良された太った極鮮上質大根]が1回で5~60本収穫できる。

 ただ、これまでダメだった試験では、少なくとも計5000本程の大根を収穫しても合格にならず、時間切れか俺の死亡で不合格となっていた。

 まあ、当時の状態では、生育時間も三十秒以上掛ったし、質も劣るし収穫量も半分ほどなので、Lvがカンストした今、条件は格段に良くなっている。

 それに、今までならオービタルストライクをやり過ごすだけでも大変だったが、今は多少は余裕が有るのも希望に繋がっている。

「やべ、重爆撃機がすぐそこまで来てら」

 重爆撃機フライマンタ。名前の通りイトマキエイのような形状の航空機で、機体上部に対空軽機関砲を8門、機体下部にロケット砲8門搭載という、制空権争いのカギとなる兵器だ。

 既に、下部の砲塔が俺に向けられており、射程に入り次第空爆が開始されるだろう。

 畳みかける様に、歩兵やドローンが、足止め用の畑やドッペル百姓を打ち破り、此方に迫って来る。

 折角大収穫のチャンスだったが、此処で粘っても仕方ないので、後ろ髪引かれつつ農地を放棄し逃走を再開した。


「参ったな、一体どこまで頑張れば合格なんだこれ?」

 既に、これまでの最高成績を凌駕し、未だに更新しているが、こうノルマ的な表記が無い為、あとどの位頑張れば良いのかが分からず、気持ちが萎んでいく。

 残り時間も後十分を切り、敵は倒しても倒しても補充され、突破の糸口すら見えてこない。

 頑張ったんだよ?歩兵は数十人、ドローンは数百機、デストロイヤーも3両沈め、フライマンタも1機撃墜したが、無情にも替えが直ぐに現れ無駄骨に。

 いや、一応補充自体はされるが、戦線復帰までの時間を考えれば、1回分の収穫分位の時間は稼げるのか…?だめだ、現実的じゃねぇ。

 そんな事を考え、集中力が切れた隙をマローダーに咎められ、豚も一瞬で消滅し、俺自身も危うく昇天するとこだった。

[生命]…LP3億を、豚込みで一瞬のうちに8千万程まで削られ、冷や汗が止まらない。

「ヤバ過ぎる、これはフュージョンボックスも使わないと満タンでも即死圏内だ」

 急いでアウトプットをオンにし、タブレットを噛み全快。

[スワンプマン]を捨て駒に全力で逃走。

 いやーキツイ。


 残り時間あと五分。

「まだか!まだ終わんねぇのか!?」

 既にコストギリギリまで作物を持ち、回復も底を尽きかけている。

 作物を収穫する為に、物資を必要最小限にした事が仇となった。

 既に残り時間も少なく、これまで取ってきた方法、大きく逃げながらの栽培も不可能。

 オービタルストライクは、撃たれてもあと1回だろう。

 という事で、最後の足掻きに入る。

「ガハッ!!」

 全力で畑を修復しつつ、マローダーにLPを削って貰い、執着免疫を発動。

 流れ弾が怖いから、匍匐状態になり、開墾修復はドッペル百姓たちに一任。

 爆撃から逃げる為、都度立ち状態になりながら、畑をグールグル。

 この際、マローダーの機関砲が掠り、あわや死亡という危機に瀕したが、九死に一生を得る。

 ただ、悪い事だけではなく、この戦法にした事で、羊が爆撃で宙に舞い、かなりの火線を上に引き付けてくれ、結果として畑の被害が減るという、嬉しい現象が発生。

 一度まき上がった羊は、攻撃されることで、再び吹っ飛び、遥か上空で円盤と航空機にジャグリングされている。

 これも、瀕死状態を維持する事で、羊が尋常じゃないLPになっているからこそだ。

 これまで、制空権を常に奪われていたが、蜂がまともに対抗できるようになった事で、爆撃の頻度も低下。

 ここに来てかなり良い状況だが、やはりマローダーが危険すぎて、開幕から採るには安定しない戦法だと思い知らされる。

 そして試験終了十秒前、衛星ビーコンが照射され、最後のオービタルストライクが。

 俺は、ギリギリまで作物を収穫し、とっておきのシリンジャ―ポーションを打ち、退避。

 そして、余波に巻き込まれ、大ダメージを受けるが、ダメージを受ける傍からLPが凄い勢いで回復し続ける。

 流石虎の子の最高級品だ。即死さえなければ、二十秒間実質無敵だコレ。

 そんな切り札のお陰で、試験は終了を迎えた。


「さて、時間内に合格とはならなかったが…八時間の生存とコスト14300分の作物か…」

 おっさんの判定を、固唾を呑んで待つ。

「ふむ、文句なしの合格だ。へっよくやったな!!」

「よっしゃ!!」

「いや流石だわ。実を言うと、あの試験は収穫量だけでなく、時間いっぱい生き延びるのが絶対条件なんだ。だから、これまでの試験とは比較にならん難易度だったんだ。さらにお前さんの場合、特別試験に移行したからな、敵が人類連合という、規格外の難易度になってしまった」

 そうか、最低限二時間(ゲーム内で八時間)生きた上で、収穫量等の判定が待ってたのか。

「さ、ライセンスを超級に更新するぞ…ほら終わったぞ」

 ステータスから確認。確かに超級になっているな。

「確かお前は『案山子職人』はセカンダリだったな?」

「ああ」

「全く、勿体ない話だ。まあいい、お前は2回も特殊試験に移行し、突破してきた。最早その力はセカンダリライセンスの枠に収まらないだろう」

「プライマリライセンスと同等ってことか?」

「そうだ。どれ、早速試してみな」

 言われるがまま、鍬を振り下ろす。

「どれ…鎧が金ぴかになったのと、帯剣する様になったみたいだな」

 おっさんが言う通り、鎧がゴールドカラーになり、剣を腰に提げてるな。

「じゃあ性能チェックだ」

 おっさんが倉庫に向かい、何故かマローダーに乗って戻ってきた。

『んじゃいくぞ!!』

 砲塔が金ぴか鎧に向き、大口径機関砲が火を噴く。

 ガギィンガギィンと金属音を響かせ弾を弾く鎧。続けると流石に壊れたが、大体5発前後は耐える感じだ。

『とんでもねぇ堅さだな…それに帯剣してるのが如何にも気になるな、どれ』

 今度は蜘蛛型のドローンを畑に侵入させるおっさん。

 ドローンが畑に入るや否や、鎧が剣を引き抜き、おもむろにドローンに振り下ろし、同時に4撃もの斬撃を受けたドローンは鉄屑となり果てた。

「「…」」

 薄々そんな気はしてたが、想像通りの光景を目の当たりにし、言葉が見当たらない。

 セキュリティ万全の畑っていいよね。


 工場を後にし、PAにて次の目標に向け準備する。

「さて、望外の強化を果たせたが、何処まで通じるか…」

 今回『案山子職人』が、晴れて超級に昇級したが、『ジャックオーランタン』も神級への昇級試験が解放されたのだ。

 正直、特殊試験とはいえ、超級であれだけ苦戦した事を考えると、神級とかどんだけヤバいのか想像つかないな。

 いかんな、取り敢えずやってみて、無理かどうかを判断するべきだ。

 ……

 無理でした。

 先ず内容だが、人数制限は1人で、この間解放した、廃都エルフィンを再現した舞台での、アンデッドの殲滅だ。

 いや、1人でとか無理にも程がある。

 そりゃ、進化10回目でLv200とかなら、ゴリ押しでも鼻をほじりながらでもイケるだろうけど…。

 で、開幕あの瓦礫だらけの廃都内に放り込まれ、再現の癖に無意味に強化されたドローンにしゃぶられ、這う這うの体で地下に逃げ込めば、これまた強化されたゴースト以上のアンデッドに纏わり付かれ、それを引き剥がしながら動いてもまた新手が…

 といった感じで、探知能力を含め、全てのステータスが強化されたアンデッドとドローンを、1人で処理しなければならないという、頭のおかしい仕様となっている。

 うーん…金に糸目を付けなければ、恐らく現状でもイケそうだが、長クラスのリッチが呼び出すスナリーガスター…あいつが聖水をメタってくるからなぁ。

 しかも、1人だから、水と火以外にも、風と土も相手取るわけだから…。

 これはもう1回進化してからで良いな。


 休日。

「良し、2回目の進化を済ませるか」

 で、今回新たに選べる肩書はこんな感じ。

《生命マニア》[生命]の覚醒数を30増やす。

《デコ畑》畑の装飾品が撃ち返すようになる。

《アンタッチャブルファーム》畑がダメージを反射するようになる。

 以上の3つが新規に選択可能となり、《生命マニア》の代わりに、《生命フリーク》は選択肢から消えていた。

 どれもかなり強力な効果を持っていて、魅力的だ。

 更に、前回から選択可能な、《キメラ》と《ゴールド免許》も欲しいが…

「うーん、火力の事を考えると《キメラ》でスキルLvの上限を上げるべきだが」

 それも、進化2回目となると、因子の重複数は2倍、パラメータのLv補正も2倍、獲得ポイントも1Lvで200になるから、十分に補るしなぁ…

「やっぱ[生への執着]と[核細胞保護]の+値を稼げる《生命マニア》にするか」

 お次は因子パラメータの追覚醒に入る。

「今回はそれぞれ2回ずつだから…」

 パラメータは[観察]を2回で決まり。因子は…

「やっぱ火力も欲しいし、[獣人]と[養蜂家]を1回ずつにするか」

 当面は、[獣人]が[吸血鬼]の覚醒数25と並ぶまで振り、並んだら[養蜂家]が[蛇使い]と並ぶまで振ってみる心算だ。

 それと、[生命]の覚醒数が90を超えたので、5回目のスキル変化が発生。以下の様に変更された。

<生命超強化>[生命]が128上昇し[生命]を下げる効果を1%軽減。

 ↓

<生命超強化+1>[生命]が256上昇し[生命]を下げる効果を2%軽減。


<生命超増強>[生命]が64%上昇し[生命]を下げる効果を1%軽減。

 ↓

<生命超増強+1>[生命]が128%上昇し[生命]を下げる効果を2%軽減。


<超奮起>LPが80%以下の時、防御力が6上昇し[生命]を下げる効果を1%軽減。

 ↓

<生命強化+2>[生命]が128上昇。


<超奮戦>LPが60%以下の時、攻撃力が6上昇し[生命]を下げる効果を1%軽減。

 ↓

<生命増強+2>[生命]が64%上昇。


 という感じになった。

<生命超強化>と<生命超増強>が、それぞれ+1に強化され、<超奮起><超奮戦>が、それぞれ<生命強化+2><生命増強+2>へと、変化した。

 4つのスキルの内、2つは順当に効果が倍に強化され、非常に強力なスキルとなった。

 そして、残り2つのスキルも、これまでの行動やビルドの方向性から、不要と判断されたのかオミットされ、<生命超強化><生命超増強>以前の、<生命強化+2><生命増強+2>に変化…というより置き換わってくれたという方が適切かな。

 実際、ちょっとばかし攻撃防御が上がった所で、ビルドの関係上恩恵が少なかったので、この措置は有難い。


 これで、進化も完了し、Lvは資金の都合で8までしか上げれなかった。

 取り敢えず、全てのスキルをLv1で取ってから、<積載増加>をLv200にし、後は防御系と火力系に均等にLv50になるように振り分けた。

 これだけで、[生命]が5000万を超えてしまった。これでLv一桁とはな…

 この状態で、【生への執着Lv1+10】[死への免疫]ありだと、LPが3150万程で、[生命]が43億程まで上昇する。

 さて、今ならステータスも丁度いいし、皆の今のビルドでも見させて貰うかな。

次回も二週間程で。

コメントに在った、他のメンバーのビルドに関しては、次回で程々に触れます。

あと、恥ずかしい限りですが、パラメータの[速度]について重大な勘違いが発覚しました。

二話で、[速度]100で10%の補正って言ってるのに、いつ間にか1で1%掛る様になってしまってましたので、気づいた箇所に関しては修正しておきました。

かなり齟齬が生じるミスですが、多めに見て下さると幸いです。


追記

コメントで書かれた、スキルの変化に関しては、仕様と受け取ってくださって大丈夫ですが、<超奮起>が<超奮戦>に変わったのではなく、この2つが<生命強化+2><生命増強+2>に変化したという事です。

正直、投稿する時に、この表現だと解り難いのは懸念してたので、改行等編集を行いました。

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[良い点] 面白い [一言] 性能アップではなく、超奮起(防御力アップ)から超奮戦(攻撃力アップ)に変わるのは仕様?
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