第三十七話
~前回までのあらすじ~
カンパニーメンバーと最新のビルドのお披露目を行い、G戦隊とフォレストに向かい…
マサが新たな手札を披露し、危険度マシマシな森を征く。
前触れもなく、突然湧いてるのかワープしてくるのか不明なクロスイーターを捌きつつ、巨大な樹の根元に到着。
『女王の樹の候補を見つけました!!』
「お、なんかアナウンスが来たぞ」
メニューからジャーナルの概要をみると、この情報を持ち帰ると報酬を貰える旨が記載されていた。
まあ、別に困らないから良いんだけど、どうやって見分けた事になってるんだろうか?
とゲーム的都合に疑問も湧くが、気にしてもしょうがないので、ここで一旦引き返す事にした。
そして、樹の位置をホームに居る行政職員に伝えると、お礼として一人50万を受け取れた。
結局、碌に戦闘をしないで帰ってきてしまったな。
皆で一度アースに戻り、折角だからこのまま続けようとなり、バグスターに向かう。
程なくして、アースからバグスターへの星間侵略が始まった。
勿論俺達プレイヤーやNPCが、ではなく。アースの在来種が、バグスターへ侵攻しているのだ。
「どうやらゴブリンの軍勢が、ここバグスターに攻め入っておるようですね。残念ながら場所が遠すぎてどうなっているかは不明です」
どうも、ホームの真裏地域に侵攻した様で、戦況がどうなっているかまるで分らない状況だ。
だが、原則として侵攻側はかなり不利というのが定説なので、その内ゴブリンが駆逐されて終わるだろう。
「そうか、ならこっちには影響ないだろうし、北を彷徨ってみようか」
ゴブリンの事を思考から除去し、北に向かう。
そして、蟲が無限湧きする荒野に出たので、戦闘を開始した。
「流石にまだまだホームに近いから、蟲が弱いな」
その分素材の質は落ちるが、量を取るなら効率は良いので、ここらで狩るのも良いが。
「やっぱ少し物足りないですね。先に進みましょう」
G戦隊は、もっと張り合いが欲しいそうなので、何時でも逃げれるよう気を配りながら、先に進む。
暫く進み、蟲がHPを持ち始め、更に進むとARMも備えたので、ここらで腰を据える事に。
そういえば、G戦隊はただでさえ、火力が低いビルドの集まりなのに、敢えて堅い蟲を望んだのはどういう事なのか。
そんな疑問に答えるかの様に、彼らの攻撃が、蟲のHPやARMを無視してLPにダメージを負わせている。
「もしかして、武器に毒か酸を?」
「いえ、[スライム]のスキルです」
ああ、確かサチの<まきびし>も、それで強化していたな。
俺も一時世話になった因子だ。
ともかく、これで彼らの攻撃も、確実にダメージソースとして機能しているので、順調に蟲から素材を得る事が出来ている。
でも、こういう時こそハプニングって発生するもので。
「あ、来たよ」
唐突に蟲のスポン速度が急上昇。巣穴から蟲が溢れ出した。
あっという間に周囲を蟲の壁に覆われしまった。
「まあ10人も居るしな、この位が丁度良い」
激しさを増した蟲の攻勢に、緊張感と高揚感が否応にも高まった。
蟲の波を、畑と使い魔で押し止めていたが、そろそろ消耗も厳しくなってきた。
「レイナさん達はどうかな?」
「まだイケますけど、ちょっと物資が心許ないですね」
「なら引きましょう。こいつ等は逃げ切るまで、かなりしつこいですから」
ここらが潮時と決め、撤退を開始。
ノックバックを強化したマサのお陰で、一度に相手取る蟲が少なくて済むので、帰りもしっかりと素材を確保して、ホームのある地域まで戻って来れた。
ホームで荷物の整理をし、次の行き先を決める。
「大群の相手は飽きたし、今度は大物相手が良いと思うのだが?」
『賛成』
ってなわけで、大物と言えばアニマルなので、早速現地に向かった。
クレーターに到着し、暫く外側を行くと湖に出る。
「水場なら、勝手に敵が来るだろうし、隠れる場所も多くて良さそうだな」
直ぐ傍に森があり、遠くには荒野が在ったので、色んな巨獣が水を求めて寄ってきそうだ。
特に反対も無く、同じような考えのキャンパーも多数見受けられたので、戦力的にも申し分ない事で、湖を狩場に決定した。
早速陣地の構築を済ませ、敵が来るのを待ってると、対岸に居るグループに、巨大な鰐が襲い掛かった。
直後、俺らにもカワウソが群れで襲って来たので応戦。滅茶強くてビビる。ガ〇バの気分になれるな。
リアルの大カワウソも、群れで鰐を狩る獰猛な獣だからな。
ラブリーなコツメカワウソとはわけが違う。
と、そんな猛獣の巨大版なんで、まともにやり合うのは危険なので、敵にとっての糞ムーブを只管擦りまくる。
マサには三日月斧で、群れを分断する事を優先して貰う。
水上を動けるG戦隊、水中呼吸が可能なカメキチさん、サーモンの従魔を、水上と水中へ囮として向かわせる。
後は、俺が畑を湖上まで展開し、カメキチさんを回収すれば、カワウソに対し水田で蓋をする事になり、後はマサの範囲攻撃と、サーモンの従魔をベルが水田越しに回復しているだけで、決着が着いた。
途中、欠けた部分からガーディアンが水中に沈んだ事も、討伐を早めた要因だろう。
カワウソを撃破し、再び陸で待機していると、空から怪鳥が襲来。
何時だから、アースに侵略してきたのとは桁違いに巨大怪鳥。
とはいえ、別に魔物でも怪物でも無いので、魔法等特殊な攻撃をしてこないので、守りだけ固めて様子見に徹する。
一応、何とか攻撃が届かないか試してみたが、高度が高過ぎて、以前のマサでもまるでリーチが足りない高さなので、諦めて暫くの間、風に煽られながら待機。
その間、アルマジロがしゃしゃって来たので、そちらの相手をしている内に、漸く怪鳥が高度を落とし、物理的な攻撃にシフト。
丁度アルマジロを倒し、良いタイミングでの降下してきてくれたものだ。
だが、今から中途半端に攻撃したとこで、再び空に逃げられるのもあれなので、ギリギリまで引き付けようと待機。
そしたら、他のグループが横槍で怪鳥にちょっかいを掛け、逆鱗に触れ逆襲されていた。
折角なので、怪鳥の戦いっぷりを眺めてみたが、やはり基本的には侵略してきたのと大差は無い様で、爪や嘴がメインの攻撃の様だ。
だが、やはり本元の怪鳥だからか、LPが鳥の分際で矢鱈と高く、ちょこまかと飛翔しては攻撃を躱すので、傍から見ていても、襲われているグループがイライラしているのが良く解る。
まあ、自ら蒔いた種なのだ、頑張ってくんろ。
「ん、アレはコモドドラゴンか?」
遠くから、地響きを起こしながら、巨大な蜥蜴が湖を目指して突っ込んでくる。
早速、複数のグループが迎撃に乗り出し、激しい戦闘に発展。
「見た感じ、あの連中はアレを狩るのが目的っぽいな」
余程のレア素材をドロップするのか、周囲に居たグループも皆こぞって蜥蜴に殺到していった。
事前情報を集めていなかったから、完全に乗り遅れ、ポツンと取り残されてしまった。
今から混ざるにもアレだし、仕方なくその場で次の獲物を待つことに。
「どうせなら、湖の中心まで行ってみないか?」
このまま待機していても、直ぐに敵が来るとも限らない。なら能動的に動くのも悪くないだろう。
という事で、水際に立って鍬を振り下ろす。
じゃぶじゃぶと音を立てながら、水上に水田が出来上がっていく。
そして思った通り。水上を行くと、引っ切り無しにカワウソ、鰐、河馬が襲ってくる。
どいつもこいつも凶悪な強さなので、マサには兎に角河馬を近付けさせないよう頑張ってもらう。
なんせ、河馬はダメージ反射を持っていて、ステータス的にも、マンモスには遠く及ばないものの、異常なタフネスと火力を持っているので、反射を無効化しつつ、遠ざける事が出来るマサがいて良かった。
何度かカメキチさんが湖に引きずり込まれたが、地力で浮上も出来るので、良い囮となってくれた。
お陰で、先ずはカワウソを殲滅し、鰐の殲滅に移行。
この鰐もこれまたデカくて強いんだ。
全長が20m程で、兎に角テールスイングが速くて痛過ぎる。
幸い数が少なく、全部で3体しか居ないので、河馬と一緒に2体をマサに遠ざけてもらい。
「カメキチさん、頼んます」
「了解」
カメキチさんに、頭部以外を鰐に装備してもらい、噛み付きを封じた上で真正面で戦う方法で対処した。
幾らフレンドリーファイアの無いゲームとはいえ、鰐を装備したカメキチさんに攻撃を当てるのも悪いので、俺の使い魔とサーモンの従魔でダメージを与え、ベルがカメキチさんの回復をし、それ以外は鰐2体と河馬を抑えてもらう。
この手順で鰐を完封し、同様の手段で残りの2体も解体。後は河馬だけだ。
そしてメインディッシュの河馬も、これまた鰐と同じ手順で封殺出来てしまったので、これといって山場も無く戦闘は終了した。
「なんか凄い見られてる気がするんだが?」
先程蜥蜴に向かった連中が、各自持ち場に戻った様なのだが、その視線が俺れらに注がれてる気がしてならない。
「多分ですけど、河馬を倒したからだと思いますよ」
と、いつもの識者っぷりを発揮するベルのよると。
「河馬の皮は丈夫で、高い物理防御と水属性耐性を備える超が付くほどの優良素材です。それでいてあのスペックと生息環境のせいで、討伐例も少ないので、供給も非常に少ないんです」
つまり、希少素材を羨ましがっている、というわけだ。
ちなみに、素材の価値としては、コモドドラゴン(仮称)の皮より上だという。
視線への疑問も解けたところで、再び河馬が襲来。
一度倒しているので、カメキチさんに河馬の着ぐるみを着て貰い、フルボッコにして討伐。
巨大な湖の上で、そんな事を繰り返し、そろそろ夕飯で落ちる為、陸地に付いた途端人だかりに囲まれてしまった。
「頼む、河馬の素材を売ってくれ!!」「こっちも頼む」「鰐の素材も高く買うよ!!」
と詰め寄って来たから、識者のベルに任せて、急遽入札を執り行った。
カワウソの素材も含め、全ての素材が高値で売り捌け、一人頭600万相当の物資とトレード出来、ホクホク状態で帰還した。
夜。
河馬と戦った事で、マンモスへの戦意が高まってしまったので、メンバーを総動員し、G戦隊も巻き込んで雪山に来た。
「さて、今回は過去最高の状態だ。必ずマンモスを狩ろう」
『おおーー!!』
マンモスの生息する標高まで赴き、リベンジ戦を開始した。
先ずは、取り巻きの排除と、陣地の構築からだ。
[ドッペルゲンガー]と<鍬の一振り>で、瞬時に雪化粧された銀世界が、ボロボロの柵と鎧が生える茶色の大地に変貌。
使い魔を敵に嗾けつつ、畑を維持する俺の傍らで、サーモンも従魔を呼び出しマンモスに宛がう。更に。
「来い!!ワーム!!」
以前、糞雑魚っぷりを披露したワームを呼び出し、取り巻きのサーベルタイガーに嗾けるサーモン。
おいおい大丈夫か?と心配したのも束の間。地中からの奇襲で次々と脚をズタボロにし、取り巻きを追い詰めるワームに驚いた。
「熊にワンパンされたとは思えない活躍だな」
「まあな、なんせ核10個分だからな、それだけ伸びしろも凄いってことさ」
「そうか、従魔の強化は核を強化して行うんだったな。って事は召喚に10個持ち歩く必要があるって事は…」
「ああ、10個全部に施した強化がワームに乗るんだ。弱い訳がない…コストが異常な程掛かるけどな」
「…確か無強化の[ワームの核]がコスト500とかだっけ?」
「ああ…カツカツだよ…」
遠い目をするサーモンだが、目の前で一方的に、敵を奇襲で蹂躙する姿を見れば、その価値が有った事は大いに理解出来た。
全員が己の役割を果たし、取り巻きのサーベルタイガー10体の駆除に成功したが、マンモスのLPにある程度のダメージを与えると、今度は20体のサーベルタイガーが出現。
やはり、どうあっても一筋縄ではいかない様で、既に総力戦の気配が漂っている。
「この感じだと、どんどん取り巻きの数が増えて、強化もされてくんだろうな」
「そうっぽいな、テツの作物、マッドのポーションは出来るだけ温存したいな。頼んだぜベル」
畑の中から斧を振るい、マンモスの突進を退け続けるマサ。
本来なら、ノックバックを始めとした、物理的な衝撃に対し、非常に高い耐性を持つマンモスだが、ギフトのお陰で辛うじて押し返す事が出来ていた。
もしかしたら、隠し効果が有ったりして、耐性を貫いてたりするのかもしれないな。
「ええ、任されました」
作物は当然腹と喉の為、ポーションは咄嗟の回復の為になるたけとって置きたい。
その為にも、ヒーラーであるベルの手腕が中盤の戦況を握っている、と言っても過言では無い。
大役を任されたベルは、各種<ヒール>をCTのやり繰りをしつつ発動。
味方全体のLPを維持しつつ、自身もメイスで戦闘へ加担し貢献。
純粋な火力職に比べれば、流石に劣る火力だが、鈍器で殴ってダメージが通るのなら、怯みやよろけが発生するので、これだけでも仲間の負担を減らせ、間接的に回復の効果も上がっていると言える。
「ベル君のお陰で前衛が盤石だから、私も立ち回りが楽だわ~」
ギフトで、<まきびし>の殺傷力、耐久力、そして自身の生存力を高めたサチが、ベルの回復を充てに出来る事で、闇討ち気味に前に出ては<まきびし>を敵の傍に放る事で、地味に嫌がらせをしている。
切れたサーベルタイガーにちょこちょこ齧られながらも、[出血]と[疲労]を撒き散らし、強化された増援の防御を貫きやすくするので、ダメージ効率の向上に一役買っていた。
「取り敢えずデカいの行くわよ、<クラスティオーブ>!!」
他には目もくれず、マンモスへの攻撃を最優先のユキが、開幕から貯めていた魔法を発射。
再誕3回のキャスターの魔法は、例え特化型ではなくとも十分な威力を伴い、一撃でマンモスのHP、ARM、SHI、BARを消し飛ばし、LPにも僅かだがダメージを通す。
「ここだな、オラァ!!」
LPに十分なダメージを通すチャンスの到来に、ベッタラが一気に前に躍り出て、マンモスへ肉薄。
防御系のギフトを取っていないベッタラは、装甲に関してはそれ程高い訳ではないので、被弾を抑える為に、左右のメスを二振りずつに抑え、即座に離脱。
それでも回復しつつあったHPに各種バリアを再び枯渇させ、LPにダメージを通す。
そこにアコの数本刺さり、ついでとばかりにマンモスの足場に、攻撃力を下げる<脱力の御旗>を撃ち込み、デバフとオマケで呼び出されるスピッツを嗾け、ベッタラの離脱をサポート。
この間に、カメキチさんがマンモスに肉薄する為に、頑張って距離を詰めていた。
「これでも喰らうです」
シルクが【真冬のセーター】に依って[気絶]してる取り巻きに、これでもかと投網を投げつけ拘束。
それを使い魔が一方的に痛めつけ、順調に取り巻きを弱らせる。
その傍らで、シルクを闇討ちしようとする取り巻きを、おりょうさんが目を光らせ厳しく取り締まる。
「させませんよ!!」
今も、サイドから飛び掛かって来たサーベルタイガーを、薙刀の振り上げで迎え撃ち、見事に退けたおりょうさん。
そんな彼女の傍らには、青色の柴犬が控え、おりょうさんの索敵をサポートしている。
流石ギフト由来の使い魔で、無暗に敵に突っ込まないのは優秀だ。
【獣王の威光】や自作のアパレルやHPに各種バリアで堅牢なシルクに、同じくアパレルの域を超えた堅牢な着物と使い魔で隙のないおりょうさん。
この2人が時間稼ぎに徹している以上、突破の心配はそれ程しなくても良いだろう。
一方で、前衛の代表格とも言えるビルドの、ラーク、ワイド、ショーの盾剣トリオは積極的に取り巻きの排除に動いていた。
「ブモ~」
尋常ならざる堅さを誇るオーロックスを壁に、石器武器を構え取り巻きを迎え撃つショー。
ビジュアル的には、彼が一番マンモスと対峙するべきであろうが、ギャー〇ルズごっこするのは今ではないという事で。
そんな彼の石斧の一撃は非常に重く、取り巻きを順調に削っていく。
そんなショーを守る様に、ラークが死角をカバー。
【百獣の王Lv1+1】のお陰で、かなり広い範囲が完全無敵と化したラークの守りは鉄壁で、同時に三方向から飛び掛かられ、頭部への攻撃を盾で防ぎ、下半身への攻撃は分厚い脚甲と剣でいなし、首筋への攻撃はギフトで無効化。
それでも3体に飛び掛かられては、転倒は不可避だったが、直ぐさま傍のワイドがフォローに入る。
ギフト【メテオマン】の着地時の衝撃波と、CAの<シールドインパクト>で、取り巻きに大ダメージを与えつつ、ラークから引き剥がす事に成功。
ラークが体勢を立て直すのを補助し、ジャンプからの飛び道具系のスキルやCAを使い、取り巻きをけん制するワイド。
再びショーの死角をカバーするラーク。
2人の補助を受け、石器で暴れまくるショーの3人のお陰で、取り巻きの排除は順調に進んでいた。
同じ頃。
G戦隊、パミル、マッドが協力して、シルクおりょうさんペア、トリオが相手にしきれない取り巻きを相手取り、排除に勤しんでいた。
「ヒヒッ!!どっかーんだ…」
サーベルタイガーに向け、如何にもなラベルの張られた瓶を投擲するマッド。
当然、相手も喰らって堪るかと素早く身を翻し回避を試みるが、手元を離れ5つに増えた瓶を躱しきれず、なおかつ全てが小規模な爆発を起こすので、狙われた取り巻きは5つ全てを被弾し、大打撃を受ける。
「チャンスですね!!」
足元が悪い中、ふらつきながらもダウンから復帰しようとするサーベルタイガーに、パミルが肉薄。ロケットマトックによる、上段から渾身の一撃を浴びせ、頭部を粉砕。
そのまま追撃で止めを刺そうとしたが、他の取り巻きがしゃしゃって来たので、深追いはせずに退避。
「あれで仕留められませんか…」
近接の一撃なら、ショー、ベッタラに次いでメンバー中3位のパミル。
そんなパミルの火力ですら、爆薬で深手を負った取り巻きを仕留める事が叶わなかった。
「やっぱ堅すぎますよね、こいつ等」
そんな様子を横目に、ファイブマンセルで、倍の10体の取り巻きを抑えるレイナさんが言ちる。
因子等を工夫し、自分たちなりにダメージを取れる工夫をしたG戦隊だが、やはり本質は高機動超硬の囮なので、今回は抑え役に徹している。
尤も。この劣悪な地形で、【散歩の神】のお陰で普段と変わらぬ速度で動き、被弾しても大したダメージを負わずに、倍の数を引き付けられるだけでも相当凄い事なので、彼女らのお陰でかなり助かっている。
少しして、ラーク達が受け持った取り巻きが排除され、カメキチさんが悪路を走破しマンモスへ肉薄。
少し迷ったようだが、鼻にしがみ付く事を選んだ様だ。
凄くコメディー感溢れる光景だが、カメキチさん越しだと、鼻で打たれたところでダメージが0になっていたので、これで奴の手札を一つ封じた事になる。ちょっと想像の斜め上を行っているが、最近のカメキチさんの活躍は目覚ましいな。
皆が頑張っている間、俺も畑を広げに広げ、既にマンモスの足元も含め、戦場一帯を畑に変え、地の利は完全にコチラのものになった。
これで、俺のする事は畑の維持のみに絞られたんで、後は仲間の活躍に任せるとしよう。
「さあ、もう一丁行くわよ!!<クラスティーオーブ>!!」
ユキが二射目の<クラスティオーブ>を放ち、マンモスのバリアを剥ぎ取る。
本音を言えば、ここで纏まったダメージをとって置きたいのだが、さっきの感覚からすれば、LPを最大値から5%削る度に、増援がポップするようなので、バリアとHPとLPの回復を許容してでも、増援を出し切らせる事を優先した。
なので、追撃は先程のベッタラとアコ。今度はシルク、パミル、マッド、おりょうさんの4人を追加し、全快していたマンモスのLPを一割ほど削る事に成功。
予測通り、増援が発生。数も20から40へと激増していた。
やはり、一度にLPを削りすぎると、増援の物量だけで圧倒されそうだな…。
ってかこのままいくと、増援数があっという間に数百は下らなくなるなけどどうすりゃいいんだこれ?
ま、イケるところまでいってみようか。
戦い続けて三十分程経過。
何度か増援を乗り切り、二つ吉報があった。
回を重ねる毎に強くなると思っていた増援が、3回目で頭打ちになり、以降強くなることは無くなった。
お陰で、増える数のみ如何にか出来れば良いという事になり、マンモス討伐の機運が高まった。
とはいえ、既に増援も10回目となり、増援の数は既に5000を超えている…と思う。
只、此処で吉報その二で、一度に出現する取り巻きの限界数は40で頭打ちのようで、現在は方針を変更し、取り巻きは部位破壊などの状態異常を駆使して放置し、マンモスを集中砲火で倒す事にした。
そういう事情もあって、途中からは殆どサーベルタイガーを倒していないので、実際に増援数が倍々で増えているかは不明。なので先程は、…と思う、という表現をした。
さて、肝心な戦闘はというと、このまま何も無ければだが、既に勝負は付いていた。
勿論俺達が勝利するという結果で、だ。
前足後足を破壊し、動けなくなった取り巻きをマサが遠くに弾き飛ばし、全員でマンモスを囲んでいる。
それに、足元に畑を展開し、常に修復を掛けているのでマンモスは宙に浮きっぱなしで、突進と踏みつけは封じ込め、鼻はカメキチさんが抱き枕にしているので、無害。
既にマンモスは無力化されているのだ。
取り巻きは遠くで蹲り、宙に浮いたマンモスをタコ殴りにする事十数分。
凄まじい堅さに、自動回復を備えた驚愕の耐久度を誇ったマンモスも、素材という名の戦利品に生まれ変わり、激戦に終止符が打たれた。
そこそこ疲れてはいたが、消耗自体はそれ程でも無かったので、そのまま山頂を目指す事に。
既に頂上が近かったこともあって、数分登っただけで、広大な平地になっている頂上へ到達した。
「お、なんか人がいっぱい居るぞ」
頂上には、何やら祠の入り口のような穴が存在し、その周囲に色んな人がキャンプを設置し休んでいる。
「こんにちは、此処に辿り着いたって事は、あんたらもマンモスを倒して来たのか?」
「こんにちは、そうだがここは?」
「一言で言えばマンモスの巣だな」
マンモスの巣、周囲に展開されたキャンプ。定点狩りでもしてるのかな?
「この先には、マンモスを倒していないと通れない様になっているから、もしマンモスを倒しているのなら、一度入ってみると良い…ヤバいぞ…」
との事なので、念を入れてドッペルを展開し、入り口前から畑を敷設しつつ入場。
十秒程歩くと、直ぐに螺旋状のスロープのある、すり鉢状の巨大空間に出る。
そして眼下に犇めくマンモスの大群…。
「ヤバかったわ」
「だろ?」
コチラに気付いたマンモスが、巨体を震わせながらスロープを登って来たのを見て、急いで引き返して来た。
「ありゃちっとやそっとの人数じゃどうにもならんからな。今は斥候が抜け道を探しつつ、人が集まるのを待っているのさ。どうだ?あんたらも参加してみないか?」
そう問われ、皆に時間を確認し、イケるとの事なので、もう少し待機してから巣への突撃を敢行する事となった。
「良し、皆用意は良いな?」
マンモスの巣攻略の音頭を取るのは、カンパニー[シーサイドユニオン]の代表、くらげさん。
普段は名前から連想できるように、水辺を中心に動いているが、今後の活動に、マンモスの素材が要りようで、有志を募ていた様だ。
なら、普通に雪山で狩ればと思ったんだが、どうやら最初の1体はイベント用で、討伐すると外では遭遇しなくなるのだとか。
止めを刺した人しか素材が貰えないのに、何とも迷惑な仕様だが、そのために巣が存在するのだろう。
ちなみに、マンモスに止めを刺したのはユキで、素材は杖やマントに加工して貰う様だ。
さて、いよいよ巣への突撃をするんだが、注意事項が幾つかある。
先ず、外に居たマンモスと違い、牙でのかちあげが追加され、それによって前衛がスロープの底へと落とされてしまうそうだ。
そうなると、普通の盾職はやや厳しいので、正面からの相対は控えたいところ。
そこで、緒戦の先頭は俺が努め、スロープを畑で埋め、その間にガチビルダーの方々が、堅牢なバリケードを築くのだという。
これまでも、バリケードに依る蓋作戦は何回かトライしたが、時間が足らなくて早々に瓦解していた。
しかし、今回は俺とマサが居るので、短時間ならばマンモスの濁流を抑える事が可能な筈なので、今一度この作戦に賭ける事となった。
「GO!!」
斥候役が巣を覗き、マンモスが下の方に溜まっているのを確認してから、[速度]等で移動速度がブーストされた先遣隊が走る。
マンモスに気付かれ、スロープを登って来るが、限界まで距離を稼ぐ為に更に下っていく。
「良し、ここらが限界か、そおい‼」
スロープの丁度中間辺りまで食い込む事が出来たので、[ドッペルゲンガー]を発動し、<鍬の一振り>も発動。
直後、勢いをつけたマンモスが、先端の畑にカチコミ。
見ていて気持ちいい位に消し飛ばされる畑。
スロープの幅は、マンモスが3体程横に並べる程広いので、連中の勢いを削ぐには、最低限同時に3体の足止めをする必要がある。
くらげ氏は、何とか二分持たせてくれと言ったので、短期決戦上等で全ての手札を切る、というか切っていた。
事前にLPを極限まで減らし、【生への執着】と[死への免疫]を発動。
使い魔、畑共に尋常ならざる耐久力を誇る筈だが、それでもマンモスの突撃の前には儚く踏み荒らされているが…。
ドッペルが前に出て、畑を再生修復しつつ、ランタンでデバフを掛け、使い魔を嗾ける。
そして、十数秒後には[スワンプマン]を置き土産に、消滅していった。
これで、もう少しだけ時間が稼げる筈だったが、[スワンプマン]がかちあげを受け底へ落下。マンモスにズタボロにされ、十秒も持たなかった。
この誤算…でも無いが、即最悪を引き当てた際のケアとして、一瞬だけコントロールボックスを起動し、[スワンプマン]を発動。
このタイミングで、マサが追い付いてきたので、沼男と畑を守ってもらい、畑の維持に尽力する。
沼男の身を挺した献身と、マサのノックバックによる弾き返しで、ドッペルのCTが切れたので、再度ドッペルを発動。
<鍬の一振り>も景気よくぱなし、三十秒程時間を稼いだところで、漸くバリケードの用意が完了し、急いで後退した。
「ヤバかったな」
「ああ、まさかかちあげ以外にも、<地揺らし>まで繰り出してくるとは」
思いっ切り両前足を上げ、地面を踏みしめると、ダメージこそ無いのだが、広範囲にかなりの衝撃が走り、数秒間のよろめきが発生。
この数秒で、マサがマンモスに肉薄されかけたので、かなり紙一重な状況だった。
今も、バリケード隔てた先で、<地揺らし>を擦ってるマンモスが居る様で、宙に浮く等の対策をしている人以外、大幅に行動を制限されていた。
これにはくらげさんも困り果てていて。
「まさかまだこんな手札を持っていたとは…」
どうやら、これまでの突入では、マンモスたちの本気は引き出せていなかった様だ。
尤も、現状でも本気を出しているかは定かではないが。
そんな状況でも、段差や、スロープのカーブを利用して、マンモスにダメージを与える遠隔持ちの火力職も多いのだが、未だに1体のマンモスも撃破出来ていない。
これには訳があり、持ち前の自動回復に因るしぶとさも有るのだが、一番の要因が、危なくなった個体が下に落下していって逃げてしまうのだ。
当然底まで落ちてしまえば、大半の攻撃は射程外だし、距離が離れればダメージの通りも落ちるので、そのまま回復されて、チャラにされてしまう。
これの何がズルいって、連中が落下ダメージを無効化している事だ。ダ〇ボかよ!!
兎に角、これで落下死狙いも意味がない事が証明されたので、ここの突破には完全に力押しで行く必要がある。
「これは現状では打開不能だな、撤退しよう」
そう、くらげさんが決定を下し、皆仲良く敗走しました。
「今回は協力ありがとう、またいつか」
「お疲れ様」
ここの攻略を頑張っていた彼らも、今回の結果を受け、現状では無理があると判断し、撤収を決めた様だ。
俺らは一足先に帰還する為、別れを済ませ、PAに帰還した。
「いやぁ、酷く雑で面倒なロケーションだったな」
「俺は嫌いじゃないけどな」
「俺も嫌いでは無いけど、攻略法がゴリ押しのみって…」
「清々しい程の暇人仕様じゃないか、大縄跳びよりはマシだろう?」
「まあ…そりゃな」
連休終わりなので、皆それぞれ落ちるなり作業するなりで、パーティーを解散し、現在はマサとおしゃべり中。
「俺はもう少し続けるけどマサは?」
「そうだな…俺ももう少し付き合うか」
じゃあ、近場で軽く狩りでもとなり、森に向かった。
「なんか、増々ヤバくなってないか、此処…?」
不法投棄などの影響で、生態系が大分狂っていた森だが、更に輪をかけておかしさが増していた。
「なんで外周部に変異した熊が居るんだ…」
以前にも兎の魔物と遭遇した気がするが、流石に大物が外に居るなんてことは、前は無かった筈だ。
近場の森が、どんどん危険地帯となっていくのは、手軽に強敵と戦える意味では嬉しいので、ホームに悪影響が出ないなら寧ろ歓迎だが…。
気を取り直し、熊の魔物を迎え撃つ。
マサが先制し、攻撃を加えるが、ダメージこそ与えたものの、ノックバックがあまり効いていない。
「うおい!ボス並みの耐性かよ!?」
多少のノックバクなど構わず、突っ込んでくる熊に驚愕するマサ。
それでも直ぐに気持ちを切り替え、足止めを続ける。
その間俺は、畑を拵え守りを固める。
程なくして、熊が使い魔の索敵圏内に入り、熊に殺到。
これで終わりかと思ったが、猪や鹿の新手が次々と現れ、中々にタフな展開に。
それでも、今の俺達ならこの程度の相手、10倍差の戦力でも戦えるので、戦いを継続。
大体二十分程戦い続け、魔物の集団を殲滅した。
「浅層部どころか外周でこれか…」
「中は相当ひどい事になっていそうだな」
なんにせよ、今日は時間が無いので、そのままPAに帰り、解散した。
「ふむふむ、現段階でのLvキャップは再誕10回分か」
有志の情報を漁りつつ、最新Verの主な情報を集める。
と言っても、一月後には、Ver2.0のアプデが予定されているので、細かい調整は知った所で…って感じか。
さて、2.0の情報をピックアップすると、こんな感じ。
・Lvキャップの解放
・新たな惑星として、[ジェリーノイド]達の住処、移動惑星[ノウン226]の追加
・新たな惑星として、大商業区[バザー]の追加
・新たな惑星として、鬼の星[鬼ヶ島]の追加
・新たな惑星として、竜の星[ドラグーン]の追加
・カンパニーの上位版、コーポレーションの追加
以上が、一月後のアプデで追加される要素らしい。
気になるのは2つ目のノウン226か。多分だが、依然調査した未知の移動惑星の事だと思うんだよな、なんとなく[ジェリーノイド]って聞くと、あの海月人間を連想できるし。
まあ、それは一月後のお楽しみか。
取り敢えず、当面の目標として、Lvキャップを目指す為、金を効率よく稼ぐ必要がある。…つまり何も変わらないわけだ。
さて、金稼ぎをする上で欠かせないのが情報だ。
需要がある物を供給。物流の基本だ。
で、現在俺に工面出来て、効率が良さそうなのが…
「牧草、薬草、デスワームの素材…」
と色々と考えたが、やはり牧草栽培が一番効率が良さそうだ。
「となると、栽培場所か…」
アッシーの巣も既に大した耕作地ランクでも無い様だし、ここらでちょっと冒険してみるか。
準備を済ませ、バグスターに跳んだ。
「ここが噂の毒沼地帯か」
ここは、バグスターの西に進むと存在する毒沼地帯で、敵もタガメやアメンボ、蚊や水蜘蛛がうようよしている。
これまでも、毒を使って来た蟲共だが、この毒沼近辺の蟲は輪をかけて毒を好んで使う。
その威力たるや、対策なしでは例えLPが100万あろうとも、あっと言う間に蒸発してしまう程強力らしい。
そして、毒沼というだけあり、沼の中は凶悪な毒に満ちていて、シンボルから汚泥や蟲の死骸を採取するだけで、大ダメージを受けるという。
そんな毒沼は、周囲も相当な高難易度だが、沼の中は測りきれない程らしく、一説では現段階で最高峰の難度では?との声もあるそうだ。
それを証明するかのように、目の前で幾つものグループが採取からのとんずらに失敗し、壊滅しているのを目撃。
試しに俺も近寄ってみると、蟻や蜂等のスタンダードな蟲も含め、凄まじい数に襲われ、僅か十数秒で死に戻りを果たした。
そんな場所で、栽培なんて成立するのか?とお思いだろう。
それをこれから証明してみせよう。
「良し、やるか」
最近定番になりつつある、事前のLP調整を経て、コントロールボックスを起動。
今回は一瞬ではなく、常時起動だ。
先ずは沼地から少々離れた位置に、西瓜を大量に、椰子を少しだけ植える。
そしたらそのまま沼に近寄り、ドッペル一振りを使用。
直ぐに殺到してくる蟲を尻目に逃走。逃げながら畑を軌跡に興していく。
いい具合にドッペルと沼男が囮になり、執着と免疫で鬼のような耐久力を誇る畑が、蟲を足止め。
そんな畑を他人に使い捨ての盾にされたり、西瓜と椰子を幾ばくか盗られるというアクシデントも発生したが、何とか大半の素早い蟲を引き剥がす事が出来た。
「ここからだ…」
いよいよ本番で、凄まじい勢いで減っていく保水度を回復し、ドッペルを呼び出す。
良いタイミングでCTが切れ、[スワンプマン]も自傷ダメージで出現。
そして、示し合わせたかの様に沼に、それでいてそれぞれ別方向に<鍬の一振り>を発動。
瞬く間に広範囲に広がる水田。…水田。
「――――――ッ!!!」
声にならない叫びだった。
「…そうだった…水上じゃ畑にならないんだった…」
地底湖のような、屋内でも非常に明るい空間のみ、例外的に畑に化ける区間が有るのだが、いつの間にかそれが妙な固定観念として定着してしまったようで、何故か水上にも畑が出現するという謎な解釈が生まれてしまった。
というか、水田で畑の作物を作れるギフト、【水耕栽培】の存在をしっていたせいで、こんな勘違いを起こしてしまった。
…これ以上思い込みを顧みても仕方ないので、思考を切り替える。
という事で、牧草は陸地で栽培するとして、沼では稲を栽培する。
押し寄せる蟲から逃げながら、栽培を続け、手元には膨大な量の収穫物があった。
急いで帰りたい衝動を抑え込み、冷静に退却を開始する。
囲碁をリアルタイムストラテジーでする間隔で、兎に角蟲共に対して面で対抗するために、畑を広く広く拡張する。
こうする事で、蟲の密度を薄め、蟲耐性付の畑を一層長持ちさせ、使い魔の数的有利を生み出している。
焦らずじっくりと下がりながら、使い魔を援護し、蟲の数を減らす。
こうした、地道な行動が実を結び、ホームのあるエリアに帰って来れた頃には、毒沼の蟲は諦めるか駆除した後なので、最期に一波乱起こらずに帰還できた。
PAに戻り、収穫物を出品。
牧草も稲も、耕作地ランクと[園芸]のお陰で、過去最高の質を更新し、運よく人が消えたタイミングを狙い、こっそりと栽培してみた薬草もスンゴイ事になった。
薬草は、マッドに加工してもらうから、出品はしていない。
さて、牧草と稲の肝心な値段だが、牧草は1000円、稲は1500円で出してみた。
双方、出品直後から順調に売れ出し、二十分ほどで完売。
トータルで500万程の売り上げを叩き出した。
「でも、今回は作物の被害も甚大だから、効率的には地底湖と変わらないんだよな」
確かに、質の向上に伴い、単価高く設定しても売れてくれたが、原価が跳ね上がった事で、利ザヤはそれ程でもなくなった。
「ま、それでも時間当たりで考えれば、十分超高効率だから良いけどね」
それに、急激に探索範囲が拡大している今、収穫効率とのバランスの兼ね合いで、地底湖に代わる、ここだという農地が確立されていないので、安く作って高く売るなら今しかない。
という事で、暫くは毒沼で金を稼ぎ、5度目の再誕を目指して頑張る。
…でも、その前にやっておかなきゃならない事が有るな。
三日後。
「良し、これで[再覚醒]も済んだし、心置きなく再誕を目指せるな」
この再覚醒というのは、要はスキルリセットのようなもので、覚醒させる因子とパラメータを選び直せるというものだ。
その分、リセットした分のLvは上げ直さなければならないので、費用は相当掛かってしまった。
幸い、リセットした場合、元のLvまでの費用は半額になるので、多少はマシだ。
じゃあ改めて。今回覚醒リセットしたのは2回分で、因子はそのままで、パラメータの[跳躍]の覚醒2回分を取り消し、[生命]を2回分覚醒させた。
というのも。もし、予想通りギフトの数が10で限界だった場合、[跳躍]のギフトを取得する枠が既にないからだ。
ならば、【生への執着】に、今後とる予定の【核細胞保護】の強化を目当てに、[生命]を覚醒させた方が、無駄がないからだ。
その分、[跳躍]は普通に選べばいいので、この選択で困る事は特にないのも、再覚醒に踏み切った理由でもある。
折角ここまでやって、ギフトは10個以上取れますとなったら、まあ、それならそれで良いが…。
多分そうはならないだろうな。
再覚醒した事で、LPが大幅に増え、ある程度栽培が安定化し、利益率も改善。
このまま、高品質な作物で売り逃げしたいとこだったが、たったの数日で、毒沼は一大栽培スポットへ変貌していた。
ファーマーの、あまりに鋭敏過ぎる嗅覚に慄くが、この時点ではまだ負けたわけではない。
やはり、俺みたいに畑すら戦闘の補助にするファーマーと違い、所謂一般的な兼業農家では、毒沼はあまりに過酷なロケーションのようで、作物の維持はおろか、ファーマー自身が生き残るのに精一杯な感じだ。
それでも、人が多い分個々の負担が減り、なんとか収穫まで漕ぎつける人も多い様だ。
それならと、俺もこの状況を利用するまでだ。
人が多く、敵の密度が落ちているなら、逃げずに水上で栽培に専念する事も可能だろう。
そう確信し、LP減らしなどの諸々の準備を済ませ、水上栽培に着手した。
「思った通り、人が多い分俺に向かってくる蟲が大幅減ったぜ」
畑と使い魔の打たれ強さが上がってる今、向かってくる蟲を独力で退けられるので、水田栽培が凄い順調だ。
ただ人が多い分、耕作地ランクがやや下がっているようだが、それでも十分な品質の稲を収穫出来、効率が上がっている分、利益率も跳ね上がっている筈だ。
それを証明する様に、収穫数はここ最近ではぶっちぎりで多く、多少安く出品したとこで、痛くも無いし、飛ぶように物が売れる分、短時間で資金を集める事に成功。
しかし、これに味を占めるには、今の流行の移ろいは早すぎる。
このまま毒沼に人が集中すれば、増々ランクが下がるのは目に見えている。
なので、先んじて優良な耕作地を幾つか見繕っておかなければな。
「という事で、今から耕作地候補を探すから、誰か来るか?」
PAで寛ぐ数人に声を掛けたところ、シルクとサチが来てくれることに。
うむ、この2人なら、逃げに徹すれば自衛も問題無いし、畑を利用すれば戦闘も大丈夫だろう。
「それで、何処から探すです?」
「流石に候補は絞ってるのよね?」
「一応はな。取り敢えず、ここアースの南に行ってみようと思う」
「砂漠ですか」
「そう、デスワームをいなしながら栽培してみようかと」
他にも候補が有るので、時間も惜しいし直ぐに出発。
目当てのエリア入り口に着いたので、ワームの索敵圏内に入ってから、栽培を開始した。
そして収穫物を確認するが、やはり危険エリアと言っても、まだまだ端の浅い区画なのか、ランクはイマイチなので、耐えられる限界まで砂漠を進んでみる。
暫くワームの襲撃を凌ぎ、そこそこ危機感を覚える場所に来たので、再び栽培を開始。
収穫できたの作物は、毒沼と遜色ないか、それ以上の質の牧草が収穫できた。
「うん、個の強さはこっちの方が遥かに上だけど、デスワームは数が少ないから、俺にとっては毒沼よりこっちの方が相性良いな」
「お次はエルフィンの渓谷だな」
現地に着くと、早速大量の蝿に出迎えられるが、サチの<まきびし>とシルクの【真冬のセーター】で、次々と駆除されていく。
先ずは上層で収穫。うん、まずまずの質だ。
「もうちょい降りてみよう」
2人もまだまだ余裕が有りそうなので、中層に降りる。
上層より強さも数も上がった蝿が殺到してくるが、基本何も変わらないので、先程同様2人に蝿の対処を任せ、栽培を開始。
そして収穫。質は…いいねいいね、お手軽な割に人が殺到する前の地底湖並みの質だ。
「ランクは砂漠の方が大分上だけど、こっちは蝿、偶にその他の素材が美味しいから、気分で選べそうだな」
「次はフォレストに行こうと思ってたんだけど、3人じゃキツイから今回は見送るよ」
「そんなにヤバいです?」
「どんな感じだったの?」
ここで、前にG戦隊を加えた10人で挑んだ時の話をする。
「うわぁ…」
「なによそのザ〇もどき…」
サチよ、お前一体何歳だよ。
「な?流石に3人じゃ無理ゲーだろ?」
2人ともコクコクと首肯し、フォレスト行は中止となった。
「総合的に考えて、今一番稼げる可能性があるのは砂漠だな」
デスワームを畑で閉じ込める、又はかち揚げることで、無力化しつつ耕作地ランクを上げて、作物の質を上げる。
この方法は、現状では真似する事が非常に困難に思われるので、暫くの間俺だけの金策になってくれるはずだ。
という事で、Ver2.0までに稼げるだけ稼ぐ為、砂漠通いを開始した。
二週間後。
アプデまで残す事二週間弱に迫った現在。
ライバル農家達の、とんでも栽培方法に独占市場を崩されつつ、何とか再誕から再誕直後までLvを上げ切る資金を確保。
これから5度目の再誕を行うが、その前にとんでも栽培方法を幾つか紹介したい。
先ず最初に取り上げるのは、所謂工場野菜…というか工場型水耕栽培だ。
場所はバグスターの毒沼で、傍から見ていても、異様過ぎる光景に言葉が出なかった。
ではどんなかんじだったかというと、沼から少し離れた位置に、見るからに頑丈そうな基礎を築き上げ、その基礎にクレーンのような機械を建造。
そして、クレーンの先に小型化された工場を吊り下げ、沼地の上空に釣るして耕作地ランクを稼ぐというものだ。
当然、吊るされた工場を狙う蟲も出てくるが、基礎の周囲に配備された狙撃班が、工場に迫る蟲を悉く排除。
幾ら巨大で強靭な蟲とはいえ、飛行型の蟲は総じて脆弱で、狙撃銃や車両の火器に耐える事は到底かなわなかった。
こうして、安全を確保したクレーン式工場栽培は、瞬く間に高ランク地での農耕シーンを席巻した。
救いは、手法が大規模な為、純利益が少ない事だろう。
お陰で俺みたいな、個人又は少数の零細農家にも、付け入る隙だらけだった。
次はクレーン式工場栽培の発展型、輸送機吊り下げ式工場栽培だ。
まあ、文字通り吊るす方法がヘリに代わっただけの方法だ。
コチラは前者より、諸々をよりコンパクトに出来るが、非常に高性能なヘリを用意する必要がある為、ヘリが落とされる事を考慮すれば、リスキーな手法とも言える。ハイリスクハイリターンってわけだ。
次は耕運機を改造し、高速で動けるようにしたものを用いた、逃走栽培法だ。
やる事は至ってシンプルで、戦場を耕運機で爆速で走行し、地面を畑に塗り塗りしながら逃げ、運よく残った畑に種を蒔き再び逃走、運よく育った作物を搔っ攫って再び逃走を繰り返す。
要は、俺が良くやる事と同じだね。
これの良い所は、とっつきやすく、元手も少なく済むし、それでいてそこそこ回収率も良いとくるもんだから、今大人気な手法だ。
アレンジも豊富で、2人組で1人が運転、1人がバギーの荷台からミニ耕運機を地面に当てる役をし、往復時に運転手が畑に種を蒔き、開墾役が反対側を開墾するというものがある。
バギーを使う事で、より高速で移動が出来て安全も高まるし、一列開墾出来れば、そこからは効率よく種蒔きと開墾を同時進行出来るので、無駄がない。
とまあ、こんな風に様々な農法が生み出された事で、中々荒稼ぎとはいかなかったが、元手の少なさと個人でも出来る事で、利益の総なめが可能な分、価格競争の面では独走出来ていたので、埋もれずに売り抜く事が出来たというわけだ。
そんじゃ、再誕しますか。
さて、今回新たに選択肢に出て来たギフトを紹介しよう。
【ゴリラの力+1】[筋力]が180%乗算される。
[獣人]を14回覚醒させたことで、+1に強化された[獣人]4つ目のギフトだ。
元々の効果が150%乗算なので、2割強化された事になる。
これを重複させ、Lv1にしたら、それだけで[筋力]が4.6倍になるのか…正にゴリラだ。
打たれ強さを補強でき、STA回復も向上するスキルを持つ[獣人]のギフトという事もあり、非常に優秀なギフト。
恐らく、近接ビルドの選ぶギフトとしては、1、2を争う人気だと思う。
こいつの存在が、近接ビルドの破壊力を担保してると言っても過言では無い。
【百獣の王+1】顎先から鎖骨まで完全無敵になる。
[獣人]を15回覚醒させたことで、+1に強化された[獣人]5つ目のギフト。
元の効果は、首から肩までなので、殆ど範囲が増えていない。
でも、ラークの【百獣の王Lv1+1】は鼻下から肋骨まで広がっているので、+1の強化だけだと微妙でも、Lv1になると馬鹿にならない強化幅になる。突き抜ければ化ける典型例だな。
まだまだギフトに対する攻略が進んでいない現状、こういった癖の強いギフトが、もしかしたら覇権を取るかもしれないと思うと、ワクワクしてくるな。
【化け物同盟】LPが1%以下の時、狼男が三十秒間召喚される。CTは十分。
[吸血鬼]9つ目のギフト。
条件が矢鱈に渋いし、持続も短く冷却時間もそこそこ長いという三重苦。
これで召喚された狼男が弱かったら悲惨だが…。
ヴァンパイアと並んで称される化け物の筆頭格のライカンだからな、弱い筈はない、と思う。
もしイメージ通りの狼男なら。異常に素早く俊敏で、力任せに振るわれる鋭い爪は絶大な破壊力を誇るだろう。
決定力になりうる火力札が無い俺にとっては、窮地を逆転の機会に変えられる切り札になりそうだが、取る事は無いだろうな…。
【吸血鬼】覚醒済みの因子[吸血鬼]を取得。キャラメイク時に[吸血鬼]を取得した場合、スキルの取得が可能になり、スキルも強化される。
[吸血鬼]最後のギフト。
大本命のギフトではあるが、今回は見送る。
主力のスキル<血の海>とオマケで<不死の眷属>を強化できるので、覚醒済みの[吸血鬼]が取得出来る事も考慮すれば、とてもお得なギフトだ。
もしギフトが10までだった場合、ビルドの構想上既にギフト枠は既にかつかつだが、是非とも取得したいが…
【遺伝子組み換え】作物の質は下がるが、収穫量が3倍になる。
[農家]4つ目のギフト。
質こそ下がるものの、収穫量が3倍という中々素敵な効果だ。
質の低下がどの程度かは不明だが、因子やパラメータで補える程度であれば、金策は勿論戦場でも活躍間違いなしだ。
特に、大規模戦で不足しがちな薬草を、量産出来る点は、確実性においては【幸運の女神の加護】の[幸運]300%乗算より高いと言える。
【窒素配合】作物の栽培速度が2倍。
[農家]5つ目のギフト。
単純だが、恐ろしく有用なギフトだ。
効率も上がるし、その分危険も減るので、耕作地ランクの高い危険地帯での栽培には、是非とも取得しておきたいギフトの1つであろう。
【カリウム配合】作物の質が上昇。
[農家]6つ目のギフト。
ギフトである以上、効果は絶大な筈なので、単価を上げたい人には必須のギフトと言える。
恐らく、ゲーム内で最高の作物を作ろうとした場合、ギフト枠を可能な限り、これで埋めるところがスタートラインになるであろうから、質を至上とする農家には、絶対的なギフトなのかもしれない。
正直、戦闘面で多少のハンデを背負う事覚悟で、このギフトを取得する。兼業農家が増えてきたら、俺みたいな戦闘で農業を活用する者は、物流競争から強制脱落させられそうだな。
まあ、そうなるまでにはもう少し猶予があるだろうから、稼げるうちに稼いでおこう。
【兵農分離】武器で与えるダメージが半減するが、開墾範囲が10倍になる。
[百姓]3つ目のギフト。
デメリットが途轍もなく重いが、驚異の開墾範囲10倍という効果は度肝を抜く。
仮に、俺がコレを取得した場合、一度に90マス開墾出来る事に…そして<鍬の一振り>を使えば…
うん、とんでもない事が起こるなこれは。
そしてミソとなるのが、武器で与えるという一文。
使い魔含め、抜け道も多そうだし、ぶっ壊れギフトに名を連ねそうなレベルだ。
【一揆】三十秒以内に、畑が十ヶ所破壊されると、百姓軍団が戦ってくれる。
[百姓]4つ目のギフト。
先ず百姓は何処から湧いてくるんだという疑問が生じるが、土に潜ってたと解釈するか。
これは実際に試してみない事には想像がつかないなぁ…
百姓のスペック、数、思考位階…
仮に、思考が従魔と同等に賢く、数も条件と同等の10人、質が程々なら、かなり使えるギフトなんだが。
まあ、どの道取得する事は無いから、その内実戦で見れれば良いか、という感じだ。
次回も二週間後に投稿します。




