第三十一話
~前回までのあらすじ~
アニマルからの侵攻を退け、巨獣の住処となるクレーターも発見。
一方バグスターでは、南のダンジョンが攻略され、ホーム周辺に存在する最後のダンジョンの攻略も開始された。
そんな中、新たに毒蛇が犇めくロケーションを発見し…。
「いや~~お陰でテイムマラソンの地獄から解放されましたよ」
「すみませんね、態々ライバルに見せないように協力して貰って」
「いえいえ、こっちも大金を貰ってしまったしな」
彼らはペットを主軸に戦うカンパニー【ペットマスター】のメンバーで、結構な強豪だ。
「しかし、毒防御を盛れば良い訳だから、どうせ転生で戻せるんだし、一時ビルドを変えれば良かったんじゃ?」
先程から思ってた疑問を口に出すと。
「それは当然試しました。でも何が足りないのか…やはりビルドの段取りを崩したくないからと、覚醒を渋ったのが良くないのか…毒防御50程度じゃとても足りないんですよ」
「そうだったのね、俺は150有るから、確かに3倍差も有れば大分変るだろうし」
『150!?』
お、いいねぇ…こういうリアクション。
「あ、でも前に毒防御110の人に頼んでけど、全然ダメだったよね?」
「…そういえば…40差は馬鹿にならないとはいえ、無効化と瞬殺じゃいくら何でも差が有りすぎる」
これはアレか、やっぱランタンのデバフが鍵なんだろうな。
「ほら、俺は『ジャックオーランタン』で、ランタン5個持ちだからな。それで毒の威力と、その辛属性だっけ?それも効いた覚えも無いし、これが理由だと思う」
「そういう事か…正に奇跡のかみ合わせだったからこそ成し遂げた偉業だったのか」
やはり、俺が想像していた以上に試行錯誤と、協力者を募っていたようだ。
結果は芳しくなかったようだが、その努力と熱意は尊敬する。
結局、仮定として高い毒防御、ランタンのデバフで辛属性の無効化と毒の弱体化。これらが噛み合った結果の無力化だと結論付けた。
「それじゃまた会いましょう」
「おーう、何かあったらまた手を貸すぜ」
こうして【ペットマスター】にホームまで送った貰い、分かれてログアウトした。
「フー…疲れた」
肩を解しながら、時間を確認すると深夜の三時だった。
「寝るか…」
PCを落とし、軽くのどを潤して今を出ようとすると。
「…まだ起きてたんだ」
「美雪か、そういうお前だって。子供は寝る時間だぞ」
「…、…明かりが点いてたから、誰かさんが寝落ちでもしてると思って、親切にも見に来たのよ」
皮肉を交えつつも、真剣に心配して見に来てくれた美雪の心遣いに胸が温まる。
「そうか、アリガトな―――…」
「ん?なに?」
「何でもない、お休み」
「もう、そっちこそおじさんなんだから夜更かしは体に毒だからね」
お前は俺の母ちゃんか!…まあ悪い気はしないな。
翌日。
「あー…ねみーー…」
何とか体を起こし、朝食をかっ込みまた就寝。
昼近くに起きてまた飯をかっ込んで漸く体と脳が覚醒した。
「急な仕事が入ってるな」
仕事用のPCを起こし、メールなどを確認し、仕事が回ってきているのを確認。
「しゃーない、ちゃっちゃと片付けるか」
記入欄が一ヶ所ずつずれた入力を修正し、未完成の書類を作成し転送。
二時間ほどで片付いたので、一息ついてからゲームにログインした。
「こんにちは」
「こんにちはテツさん、あの後どうなりました?」
丁度居合わせたベルに、昨日の事を搔い摘んで説明。
「はえ~、六時間…お疲れ様です」
「その代わり1億も手に入れたからな、大儲けだったよ」
さて、大金を持ったままだと怖いので、換金物に換えて来るか。
「これで全部物に換えたから、後は使い道だな」
これだけあれば、鍬の更新も装備の新調も思いのままだ。
「でもLv上げにつぎ込んじゃおっと!!」
確かに装備の更新も魅力的だが、やっぱLv上げにつぎ込んでこその俺って感じだもんな。
そうと決まれば今しがた物に換えた金をを再び金に戻し、教会に向かった。
そして何度も換金しつつ往復し、三度目の再誕もしつつLvを上げまくる。
しかしこれ、一々転生する度に、所持金と所持品をロストする仕様如何にかならんもんかね。
いや、物を貯め込ませない為の処置ってのは分かるけど、一気にレベルを上げる場合は一回で済む様にしてくれれば良いのに。
まあ、この手間とチェストの容量のリセットで、物流が活性化されてる面も有るから、やっぱこのゲームには必要な制限なのかもな。
Lv上げが終わり、再誕三回、覚醒六回、転生九回Lv100まで上げることができた。
それじゃ今回のビルドとギフトの話に移ろうか。
先ず三回目の再誕に向けて、覚醒させた因子とパラメータだが、やはり上げる手段が少ない毒防御を上げれ、使い魔も毒攻撃持ちで数も多い[蛇使い]を二回。
使い魔の状態異常耐性を上げれる[観察]を、ギフトで解放するために二回覚醒させた。
これで、今回の覚醒因子パラメータの内訳は、[獣人]二回[吸血鬼]二回[蛇使い]五回。[生命]一回[観察]二回[速度]六回となった。
そして今回解放されたギフトがコレだ。
【獣人】覚醒済みの[獣人]を取得。スキルは取得できないが、キャラメイク時に[獣人]を選択した場合、スキルを取得できるようになり、スキルを強化する。
【神獣の加護+1】STAゲージが三本追加される。
【引きこもり】屋内に居る場合、夜間の判定を受ける。
【遮光】夜間の判定が長くなる。
【自家製血清】毒ダメージを50%軽減する。
【育毒】[蛇使い]の使い魔の毒攻撃力が15上昇する。
【腐食毒】[蛇使い]の使い魔の毒攻撃がヒットした敵の防具の耐久度を1%低下。
【麻痺毒】[蛇使い]の使い魔の毒攻撃がヒットした敵を確実に3f停止させる。
【毒を殺す血】毒防御力が50上昇する。
【ライフチェンジャー】LPにダメージを受けた時、十秒間ダメージと同じ値HPを得る。
【急ブレーキ】ダッシュ時にダメージを受けても、カウンター扱いにならない。
【珍走団】ダッシュ時に、状態異常[混乱]を誘発する音を発生させる。効果は移動速度に比例。
【空気摩擦】ダッシュ時に炎を纏い、自身と周囲に炎ダメージを与える。移動速度と[体力]が高い程ダメージが上昇し、[精神]が高い程自傷ダメージが低下する。
【バター化】一定時間ダッシュすると、LPに50%のダメージを受け、バターが手に入る。質は移動速度と[生命]が高い程上昇する。
【ドップラー】自身が出すあらゆる音の発生位置がランダムになる。
【速度】パラメータの[速度]を取得。スキルは取得出来ないが、キャラメイク時に[速度]を選択した場合、スキルを取得出来る様に成りスキルを強化する。
【番観察】各スキルで使役出来るマウスが2体に増え能力も上昇。
【毒の克服】マウスが毒ダメージを受けた場合、LPが回復する。
これが今回解放された18のギフトだ。
それじゃ一つずつ触れて行こうか。
では【獣人】から。
これを取得すると、最初から覚醒済みの[獣人]を取得した状態になるギフトで、当然転生する度に重複されていき、因子の効果も応じて上昇するが、これ単体だとスキルを取得する事が出来ない。
スキルを取得したい場合は、キャラメイク時に因子の[獣人]を選択すれば、通常通りにスキルを取得する事が出来る様に成り、ギフトの効果でスキルの効果も上昇する、というものだ。
これは、流石十個目のギフトだけあって、非常に強力だ。
因子の場合、スキルを取ってなんぼな所があるから、これ単体で強いって事は無いが、因子で[獣人]を一回でも選択して、転生九回Lv100状態なら、因子の効果で[生命]が5500上昇し、スキルも<野生の力>なら効果が二倍になり、Lv毎に66上昇するので、相当打たれ強いビルドにする事が可能だ。
お次は【神獣の加護+1】
[獣人]の覚醒数が11回になったので、強かされたギフト。
効果がSTAゲージ二本追加から三本追加に強化されている。
まあ、間違いなく強いよね、二本追加の時点でワイドがあんだけ大技を連発してたんだからな、更に余分にゲージ一本増えれば、その分回転率が上がるから非常に強力なギフトだ。
使い魔の復活以外にSTAの使い道が少ない俺には、今の所必要無いギフトだが、ビルド次第では必須クラスのギフトかもしれない。
三番手は【ひきこもり】
[吸血鬼]の五個目のギフトで、屋内に居る限り夜間扱いを受けるという、一風変わった効果のギフトだ。
これは他の、夜間に強くなるギフトをサポートするもののようだ。
限定的だが強力なギフトの恩恵が、意図的に得られるようになるから強いのか?
いや、やっぱロールプレイ用のギフトだな。
お次は【遮光】
これは[吸血鬼]六個目のギフトで、夜間判定が長くなるギフトだ。
確かゲーム内時間の18:00~4:00までが夜間だった筈だから、これが広がるわけか。
ゲームの一日がリアルの六時間で、ゲーム内の十時間…大体リアルの二時間半くらいか。
伸び率がどれ程か分からないが、これは結構強いのでは?
仮に夕方が夜扱いになるなら、リアルで四十五分、ゲーム時間で三時間夜間が伸びる事になるからな。
あくまで仮定ではあるが、そう外した考察でも無い筈だ。
お次は【自家製血清】
[蛇使い]1個目のギフトで、毒ダメージを50%軽減する効果だ。
処理の順番としては、防御力で差し引いた分のダメージをカットするので、ボス級の毒攻撃には相当威力を発揮するギフトだろう。
逆に、ある程度の毒防御で無効化できる毒であっても、半分は喰らうので、雑魚相手でしかも多数に囲まれた際の過信は禁物だろう。
お次は【育毒】で[蛇使い]2個目のギフトだ。
これは良く解らないのが正直なところだ。
だって毒攻撃力15って言われたって、そもそも元が幾つよって話だからな。
ただ[蛇使い]一個の毒防御上昇が5だから、それ三個分と考えれば結構な上昇幅なのか?
何せよ、これは実際に取ってみない事には分からないギフトだな。
お次は【腐食毒】で[蛇使い]3個目のギフト。
少なくとも、敵に使われたら嫌なギフトなのは間違いない。
毒蛇の数は4体で、毒噴射がストレートとミストのツーショットで、少なくとも8ヒット。
そしてスキルLvがある程度上がれば、攻撃頻度も上がり、毎秒攻撃してくれるので、秒間8%防具を傷ませる事が出来る。
ある程度近づく事が条件とはいえ、使い魔を処理できずに十秒程纏わり付かれるだけで防具がお釈迦になるのはあまりに凶悪だ。
今後防具を装備した敵を相手にする機会が増えるのなら、かなり凶悪な攻撃手段になるだろう。
お次は【麻痺毒】で[蛇使い]4個目のギフト。
さあ、やって参りましたよヤッベーのが。
3fは、このゲームで言う所の1/20sで、<蛇壺><蛇笛>の攻撃がヒットする度に、3f相手の動きを停止させる。
これの何がヤバいって、確実にってところだ。
これの上位互換にも思える<魔道人形>の麻痺光線は、一部敵やボス級には殆ど効かないのだが、こいつは説明通りならば、如何なる相手でさえ3f止めれるとあるので、かなりヤバい。
8体×3f×2回攻撃rpsで、毎秒48f…4/5秒は動きが止められる。こう聞けば如何にヤバいか分かるというものだ。
尤も、ボス級相手に射程範囲まで近付けるのか?拘束し続けられる状況を作れるのか?といった問題点は有るが。
お次は【毒を殺す血】で[蛇使い]5個目のギフト。
シンプルに毒防御を50上げる効果で、[蛇使い]十個分だ。
なんと言うか、実に悩ましいギフトだ。
ビルド設計を崩したくないけど、毒防御が欲しいって人には覚醒五回は非常に重いし、かと言って実質上位互換であろう、十個目のギフトを解放してしまえば、恐らく出番はなかろうかという性能。
あ、でも覚醒十五回目なら、ギフトの効果も上がるし、そうなれば住み分けは出来る…ダメだ、そこまで[蛇使い]に入れ込む人が、今更50ぽっちの毒防御に靡くわけがないか。
って事で、どうしても毒防御が欲しくて[蛇使い]を五回覚醒させた。っていう人しか選ばないギフトだろう。
お次は【ライフチェンジャー】で[生命]五個目のギフト。
中々強いギフトだと思う。
十秒間限定とはいえ、受けたダメージ分HPゲージが追加されるんだから、ステータス次第じゃパラメータを一個余分に持ってるようなものだ。
例えば、LP100で50ダメージを受ければHP50を得た状態になるので、十秒以内に同じ攻撃を受けてもそのHPでチャラに出来るというわけだ。
ただし毒や酸には全く意味が無いのが玉に瑕か。
それでもLPさえ高くすれば、強力な効果を発揮するお手軽さを考慮すれば、LPが高い事も相まって弱点と言う程でも無いか。
次は【急ブレーキ】で[速度]五個目のギフト。
ダッシュ中のカウンター判定無効と有るが、なんとなく移動速度が上がるにつれて、移動中の被ダメが上がってるなって認識だったが、カウンター扱いだったとは。
しかしこの説明だと、カウンター判定無効は、あくまでダッシュ中だけらしいな。
確かにある程度移動速度が上がって来ると、通常移動だけで事足りて、ダッシュってしなくなるからな。その差別化のギフトかもしれない。
ちなみに、槍衾の様な迎撃態勢に全力で突っ込むと、それだけで通常の十倍位ダメージを受ける様だ。
尤もそんな無謀な事をする機会は少なそうだけど、今後改めて気を付けておこう。
お次は【珍走団】で[速度]六個目のギフトだ。
移動速度が速い程、状態異常を起こす音を発生させるという、実に愉快なギフト。
ここに来て随分と攻撃的なギフトが出てきたものだ。
想像して欲しい。敵の近くダッシュで駆け巡り、不快な音を撒き散らすのに使うのだ。
これほどツッパったギフトはそう無い…いや寧ろこんなんばっかだな…。
お次は【空気摩擦】で[速度]七個目のギフトだ。
前述の【珍走団】に引けを取らない尖ったギフトで、ダッシュすると火だるまになるという刺激的過ぎるギフト。
これを【急ブレーキ】【珍走団】と併せて取れば、必要以上のダメージに怯える事なく、火だるまになりながら不快音垂れ流して敵陣に突っ込めるな。
しかも、これの効果を高めるのに移動速度の他に[体力]で補正が乗ったり、自傷ダメージを抑える為に必要な[精神]で魔法のダメージまで抑えられるから、割と無駄がないのも良い。
実際の所、どれ程のダメージが出るかは未知数だけど、特化すれば楽しい事請け合いだろうな。
お次は【バター化】で[速度]八個目のギフトだ。
虎が高速で移動した結果、身体が融解し、バターと化した童話がモチーフであろうギフト。
一定時間ダッシュすると、LP50%を犠牲にバターを生成するという、色々な意味で怖い効果だが、使い放題の回復手段さえ確保すれば、バター使い放題というのは嬉しい。
質が[生命]に依存しているのは、やはりそういう事なのだろう…。
お次は【ドップラー】で[速度]九個目のギフトだ。
これは、相手の聴覚を惑わす効果が期待できるので、ビルド次第で凄い威力を発揮しそうではある。
想像しか出来ないが、目の前の相手がナイフを振った音が、自分の真後ろから聞こえた日にはたとえそれがフェイクであっても、精神的に来るものがある。
後は少数同士のチーム戦でも地味に活躍しそうだ。
まあ、俺のビルドには向かないので取らないが。
お次は【速度】で[速度]最後のギフトだ。
今回の大本命、と言うかこれを取る。
これが有れば、パラメータ選択で[速度]を選ばなくても、パラーメータに[速度]が表示され、Lvアップに伴い能力値も上昇する。
欠点は、これ単体だとスキルを取る事が出来ないが、元々[速度]のスキルはどうでも良くて、パラーメータとしての効果が欲しかったので、キャラメイクでは[速度]切る。
お次は【番観察】で[観察]一個目のギフトだ。
これを取れば<マウス1号>~4号までの使い魔数が2に増えるのだが…。
このパラメータを覚醒させ始めた事で分かると思うが、俺が[観察]求めるのは使い魔の状態異常耐性でスキルはオマケでしかない。
つまり十回覚醒させて、ギフト[観察]を解放したらパラメータの[観察]はおさらばなので、余程強力な効果でない限り、【観察】以外のギフトを取る事は無いだろう。
お次は【毒の克服】で[観察]二個目のギフトだ。
このギフトも取る事は無いが、一応触れておく。
マウスが毒ダメージを吸収する様になるという、特化すれば相当化けそうなギフトではある。
まあ取る事は無いだろうが…。
という事で以上18のギフトでした。
では今回のステータスをば。
名前:テツ。 Lv100 ★⁶ ☆⁹
LP:1749300 STA:16100 COST:16100
ギフト:【生への執着Lv1】【速度】
因子:[獣人★²][吸血鬼★²][蛇使い★²][農家²][百姓²][養豚家²][養蜂家²][パイパー²]
パラメータ:[生命★³]28000[持久]7000[積載]7000[筋力]7000[魔力]7000[制圧]7000[跳躍]7000[幸運]7000[観察★³]28000[園芸]7000【速度】7000
スキル:<生命増加>Lv130 <積載増加>Lv130 <持久増加>Lv130 <魔道人形>Lv130 <ゴーレム使い>Lv130 <圧制>Lv130 <殲滅>Lv130 <煽動>Lv130 <見せしめ>Lv130 <跳躍上昇>Lv130 <蛇の王>Lv130 <山亀>Lv130 <青龍>Lv130 <金甲>Lv130 <マウス1号>Lv130 <マウス2号>Lv130 <マウス3号>Lv130 <マウス4号>Lv130 <肥料追加>Lv130 <剪定>Lv130 <生存戦略>Lv130 <野生の息吹き>Lv130 <血の海>Lv130 <不死の眷属>Lv130 <蛇壺>Lv130 <蛇笛>Lv130 <品種改良>Lv130 <土壌改良>Lv130 <百姓魂>Lv130 <鍬の一振り>Lv130 <養養豚>Lv130 <過剰肥育>Lv130 <養蜂>Lv130 <分蜂>Lv130 <群鼠>Lv130 <誘導>Lv130
アビリティ:[ドッペルゲンガー][種苗袋][ボロボロの防柵][死への免疫][スワンプマン]
装備:[タングステン鋼の鍬][シャツ][ズボン][阿修羅の骸][試作型アンデッド殲滅用ヘルメット][50フリーホルダー]
という風になった。
LPが大きく伸び、因子は変わらずだが、パラメータ構成は大幅に変更。
ギフトの【速度】を取った事で、パラメータの[速度]を切り、[栄養]と[保水]もリストラした。
[栄養]も[保水]も間違いなく強力だが、ドッペルで常に満腹度と保水度を消費する俺には、バフ用の食料飲料を用意しておくのが面倒で割に合わなかったので、短い使用期間だったがここでお別れとなった。
代わりに採用したのが[筋力][跳躍][園芸]の三つだ。
[筋力]は他に選ぶものが無かったから、使い魔の火力用で選択。これ以上の説明は不要だろう。
[跳躍]はジャンプ力を強化出来、[速度]の空いた枠に入れてみた。
スキルは<跳躍上昇><飛躍><腹筋跳躍><自由落下>となっており、効果はそれぞれジャンプ力上昇、ジャンプ上昇速度上昇、匍匐状態でジャンプ出来るようになる、空中で動ける距離が上昇、というものだ。
一応余裕が有れば、[跳躍]も十個目のギフトを解放してみたいので、変な癖が付かないように、スキルはジャンプ力だけ上がる<跳躍上昇>のみを取得した。
[園芸]は作物の質を高める。しれっと選択肢に有り、何時解放されたかは不明だが、今の俺にはピッタリのパラメータだ。
スキルは<肥料追加><剪定><病気対策><ハーブ畑>で効果は、質の上昇、収穫量の減少と質の上昇、作物の耐久度の上昇、畑内での状態異常耐性上昇だ。
このうち<肥料追加>と<剪定>とパラメータの効果で、どれ程質が上がるかは未知数だが、多少収穫量が減っても、その分質がしっかりと上がれば、これまで以上に稼げるだろう。
後はスキルLvの上限が130に上がった程度の変化かな?
それじゃ肩慣らし運転でもしてくるか。
「良し、いってみよう」
448体に増えた蜜蜂を熊に嗾ける。
「ゴアー!」
攻撃系パラメータが三つに増えた事で、個々の上昇率こそ僅かだが、400を超える数での僅かは馬鹿にならず、六秒ほどで熊が溶けてしまった。
他の使い魔も同様に熊に嗾け、スキルLvの上限解放と、[筋力]の補正を受け上がった攻撃力を遺憾なく発揮した。
使い魔の火力の検証を終え、ジャンプをしまくってみる。
「おおーー!!ヤバい、これは快適過ぎる」
デフォルトのほぼ9倍になったジャンプ力で、木の枝に飛び乗ったり、ちょっとした岩壁を登ったりと、これまでにない位置取りと行動の自由度に感動が込み上げる。
「ジャンプ力が上がると此処まで世界が変わるのか…しかもギフトのお陰で移動速度も速いままだし最高だ」
そして最後に[園芸]とスキルの効果のほどを測る。
ホームの壁際で大根を栽培してみる。
これまでだったら、[選別された大根]を基準にちょっと良い物が取れたりする程度だったが…。
サクッと栽培して収穫すると、[上質な選別された太った瑞々しい大根]という、ゴテゴテしい名前の大根が収穫出来てしまった。
OPも三つほど付いていて、そこそこ高値で売れそうだ。
ただ、<剪定>のでメリットが結構聞いてる様で、[幸運]7000の力をもってしても、8本しか収穫できなかった。
まあ、これだけ質が上がってれば誤差の範囲だろうよ。
検証を終わらせ、熊の素材などの副産物を売っ払う。
「テツ君お帰り。どう?再誕三度目の感じは」
「良好だよ、ギフトでパラメータを十一個にしてるから、凄い汎用性が増したよ」
と、ジャンプしてPAの天井に頭をぶつけて、ユキにアピールする。
「そ、そう…」
「さて、ちょっくら地底湖に行って来るわ」
ユキや他のメンバーは、哺乳類地帯に行くと言ったら遠慮すると言うので、仕方なくソロで向かった。
「うん。相変わらず不人気エリアだな」
途中のアッシーの巣へ進めるエリアは人でごった返してたのに、フジツボ通路を超えたここは僅かに人が居るだけで、寂しいものだ。
「これだけ距離が有れば、防毒マスクの類が有れば平気だが…」
このエリアがあまりに不人気な理由に触れる為、水際の大群に近づいてみると。
「うお!?本当にダメージを受けるのか!」
そう、このエリアの本当の不人気の理由は、セイウチなどが出す臭い息の、臭いだけでなく息に因るダメージが原因だったのだ。
そしてこの状況下でも活動する人は、マスクだけでなく、宇宙服のような全身防護服に包まれており、そうまでしないと此処ではダメージを受けずに活動するのは困難な様だ。
「流石に地肌を晒してると、皮膚呼吸等でダメージを受けるってわけね」
だが俺には100の毒防御があるので、言われていたほどのダメージは受けていない。精々秒間100前後済んでいる。
これが対策なしの場合、酷い時だと秒間数万ダメージは受けるらしく、とてもじゃないが生身での攻略は無理があるとの事だ。
でも毒防御と防毒マスクだけなら、割と用意できる人は多かった筈だ。それでも困難を極めたという事は、ここでもランタンが活躍してるのだと推測する。
なんせ[フォレスト]の花粉や胞子すら無害化するんだからな。
臭い息の有害な微生物位、ランタン五個をもってすればどうとでもなる筈だ。
という事で、LP170万超えの俺には、秒間100程度なら、タブレットをポリポリしてれば問題無いので、このまま先に進んでみることにした。
攻略を決め、更に敵との距離を詰め、毒やらなにやらの濃度が濃い中へ突入。
使い魔達が白クマやセイウチなどに襲い掛かる中、LPの減り具合を確認。
「やっぱ発生源に近い程ダメージが増えていくのか」
ある程度距離が有った先程までは、100程度の秒間ダメージだったのが、今は300程に増えていた。
「成程、使い魔の射程距離で、群れを丸ごと相手取ると、この位のダメージになるのか」
使い魔の射程でも、まだ幾ばくかの距離は有るのだがそれでもこれほどのダメージになるのだから、対策なしに至近距離まで行けば、秒間数万も納得だ。
そして使い魔達の方に目をやれば、哺乳類をボコボコにし終わったとこだった。
「今のステータスなら、このエリアも全く問題無いな」
という事で、全く人が居ないわけでも無いので、例によって邪魔にならない様、端に寄って水上を行く。
水際のアザラシを退かし、鍬を振るい田んぼを拵える。
少しづつ足場を確保しつつ、進むと水中からの刺客が襲ってくる。
「イルカにオットセイか」
水中から田んぼを破壊しようと、田んぼの床下(?)を叩いたり、ジャンプからの水鉄砲など、中々鬱陶しい攻撃を執拗に繰り返してくる。…まあ、全部豚に吸われてるんですけどね。
そのまま、敵の妨害など気にも留めず進み続け、対岸に到着した。
こちら側の水際にも哺乳類が密集してるので、近辺を掃除してから探索を開始した。
「フムフム、基本は此処までのエリアと一緒か」
通路を抜けると新しいエリアに出て、何らかの手段で対岸に移動して、そこからまた通路を潜って次のエリアへ、という一連のサイクルは変わらない様だ。
パッと見た感じ、どの通路も行き先は変わらなさそうなので、意を決して通路を覗く。
今回はこれといって攻撃を受けるわけでも無く、そのまま足を踏み入れても何もない。
一応、これまで出てきた敵が相応に強化され配置されているが、真新しい変化は無い。
「そんじゃ進んでみるか」
使い魔でギュウギュウになりながらも歩き続け、新たなエリアに到着。
其処はすり鉢状の地形に巨大な湖が有り、まるで洗濯機の様に大規模な渦が発生していた。
「おお…凄い景色だけど…これだけ?」
すり鉢状になっているので、対岸まで普通に徒歩で行く事が出来、いってみたとこで特に何も無く、ここが終着点である事を現していた。
…この渦の底に何も無ければだが…
そしてこのエリアには、さっきのエリアと比べて人がそれなりに居る。
先程から気にはなっていたが、どうも彼ら彼女らはこの渦を突破して湖の底を検めたい様だ。
どう見ても、昨日今日で作ったとは思えない前哨基地が水面付近に構えられ、そこから頻繁に潜水艇らしきものが出撃帰還を繰り返していた。
「あの連中はプレイヤーだよな…よくもまあこれだけの建築物を維持し続けているものだ」
プレイヤーが時間無制限の建築をする場合、かなりの制約があって、色々と大変な筈だ。
「さて、帰るか。流石に生身じゃどうにもならんしな」
地底湖の行き止まりから引き返し、アッシーの住処に行ってみる。
今日も賑やかなアッシーの住処。
アッシーの素材が出回るようになって、常に需要が供給を上回り高騰が続いている。
そんな状況な為、一獲千金又は自力での素材入手の為、沢山の人がアッシーに戦いを挑んでいる。
「俺もちょっくら挑んで…お、G戦隊が居る」
どこかスペースが無いかと周囲を見渡したところ、彼女らを見つけたという事だ。
「あ、向こうもこっちに気付いたな」
おーい、と手を振ってくるので、此方も振り返し合流する。
「テツさんもアッシー狩りに?」
「行き止まりからの帰り道のついでに」
『ああ…』
行き止まりでしっかりと通じた様だ。
「皆も?」
「ええ、買うと高いので如何にか出来ないかと…」
回避と防御に絶対の自信のある彼女等だが、火力は壊滅的なので、言葉尻がどんどん小さく。
「良かったら共同で当たろうか?火力なら数で補えそうだし」
『是非!!』
という事で、G戦隊と共同でアッシーを狩る事に。
「それで狙いは?大中小と居るけど」
「子供を狙うメリットが無いですし、一番大きいのを狙いましょう」
何しろ小さいのは直ぐ逃げるからな、マジで時間の無駄にしかならん。
一番大きい祖父母級に狙いを定め、戦う場所を決める。
「さて、何処で戦い始めるのが良いんだろう…あいつら追い込まれると逃げるよな?」
「ええ、最大で三回逃げるようですね。なのであまり初期位置にこだわる必要は無いかと」
「そうなんだ…でもそうなると足場の確保が困難だぞ…」
幾ら水田を作っても、6人が満足に動ける様な広さにはとても…。
「あ、そこは平気です、私達水の上も移動出来るようになりましたから」
「はい?」
そう言い、カサカサ…と高速で水面に向かい、近場のアッシーを煽って帰って来たレイナさん。
「ね?」
「うん…」
なんだろう…あまりに様になっててリアクションに困る。
そんな感じで、良くも悪くも俺次第だと判明し、戦闘へ移行する。
先ずは先陣を切ってアッシーへ肉薄を試みるG戦隊。
この戦いは終始運ゲーな部分が多く、兎に角標的以外のアッシーに目を付けられないというのが、前提条件に入ってくる。
何しろ聞くところによると逃走は三回。その先で他のアッシーに合流…は仕方ないと割り切るにしても、偶々近くに居た個体に横槍を入れられる可能性も有る為、三回当たりを引く必要があるので、中々面倒な条件だ。
そして最初の運試しには勝った様で、無事アッシー単体と戦闘を開始した。
俺も後に続き、足場を築きながらアッシーに迫る。
<青龍>と蜂の射程に入り、一斉にアッシーに群がる使い魔達。
それを非常に鬱陶しそうに身を捩り、ブレスで追い払おうとするアッシー。
その隙に首元をチクチクとナイフでつんつんするG戦隊。
「グヲオオオオ!!」
…なんかダメージにというより、あまりのウザさにウザさにキレているように感じられる。
それもそうか、匍匐状態で妙にすばしっこい連中が、痒い攻撃を擦ってくるのだ。
海竜からしたら、こんな矮小な連中に、開幕からずっと煽られっぱなしだと思うと、ショックも大きいのだろう。
そんな苛立ちと共に、胸元に群がるG戦隊にブレスをお見舞いするが、ササーッっと素早く散開し逃げる様は、紛う事無く古より生存競争に勝ち抜いて来たアレそのものだ。
ブレスが止むまで脇や尾の付け根を只管しゃぶるG戦隊に、尾っぽの横薙ぎを繰り出すが、腹這いからのジャンプであっさりと交わされ、再び怒りを爆発させる。
お陰で完全にノーマークだった俺が、いよいよアッシーの眼前まで水田を設置。使い魔の総攻撃が始まった。
俺の接近に伴い、大ダメージを受けたアッシーは直ぐさま水中に消えた。
周囲で他のグループと戦うアッシーの合間に視線を巡らし、俺らがダメージを与えたアッシーが浮上するのを確認。
この時点での運試しはというと、まあまあの結果だと言える。
そのアッシーの周りには、中アッシーが2体ほど居たが、それだけで他とは距離が離れているので、横槍の心配はなさそうだ。
再びアッシーの元へ向かうが、今度は俺にブレスが注がれ、G戦隊がフリーで肉薄する。
どうやら誰を警戒すれば良いかを、しっかりと学習しているらしい。
距離も有るし、豚も居るのでどんどん田んぼを広げ距離を縮める。
その間G戦隊は中アッシーを翻弄し、しっかりとヘイトを稼いでいる。
チャーシューを幾つか出荷し、大アッシーに使い魔を嗾ける。
そしてここで、ふとアイデアが浮かぶ。
(これもしかして、足元を田んぼに変えてやれば逃げられないんじゃ?)
この閃いたアイデアを試す為に、先程より更にアッシーに畑を寄せていく。
アッシーが、これ以上近づく必要が無い筈の俺が、なお接近してくる事に、危機感が働いたようで、ブレスと尾っぽと爪による攻撃で、水田を悉く粉砕。
(近づけば、物理攻撃がと届くのに、遠ざけようとするって事は、当たりか?)
しかし、このままだとアッシーのLPが減って、また逃げられそうなので、少々強引に田んぼを拡張する。
そしてアッシーのヒレの薙ぎ払いが終わった隙を突いて、<鍬の一振り>をお見舞い。
そしてアッシーの居た場所に水田が発生し、柵や案山子によって空中に浮かび上がるアッシー。
「よっしゃ!!成功だ…」
なんて喜んだのも束の間。どうやらアッシーには自重による攻撃判定が在るようで、真っ先に案山子が、そしてボロ柵、最期に水田がドゴン!!と煙を吹いて爆散。
アッシーはそのまま水中に消えていった。
しかも運試しにも負け、大アッシーの中に浮上し、事実上の討伐失敗となってしまった。
「上手くいったと思ったんだけどな~」
「いや、実際上手くいってましたよ…私達に火力が有れば、あの数秒間で決めれたはずなのに…」
僅か数秒とはいえ、宙に浮いたアッシーは無防備な上、弱点の腹が晒され、使い魔の攻撃によって相当に追い込まれていた。
「まあ仕方ないさ、どうする?あの感じだと、中アッシーならもうちょっと長く中に浮かせられそうだけど?」
『やりましょう!!』
そして結論から言えば、効果は絶大な事は証明できたが、討伐は出来なかった。
と言うのも…
「…皆逃げていきますね…」
「そうだね…」
実のところ、アッシー戦に臨むファーマーというのは結構居たりする。
だが、俺と同程度に堅い人は大勢いても、畑に柵や案山子が生えている人は皆無で、皆田んぼでアッシーを押し上げるっていうのは、一度は試していた様だ。
当然アッシーの重さに耐えられず、水田は消滅し、豚みたいな特殊な防御法が無ければ、至近距離のブレスに耐えられるわけもなく、ホームでリスポンする羽目になる。
あの現象は、俺みたいに高耐久で、ブレスをやり過ごして接近出来た上に、畑に装飾が無いと実現出来ないという、現状において、俺専用の技と言える。
そんなんだから、全アッシーに情報が共有されたのか、俺が近づくとサイズ問わずアッシーが逃げていくので、最早狩り以前の状態になってしまった。
しかも、ファーマーに対しての危機感なのか、先程から農具を持っている人が集中砲火に晒されるという、特殊な状況にまで発展してしまった。
「折角対アッシーの必殺技が誕生したのに」
結局、広大な地底湖を縦横無尽に逃げられたのでは、どうしようも無いので、G戦隊とは別れ帰還した。
ホームに着き、そのまま【防犯防衛設備販売製造所】に向かう。
そう、先程の戦闘で『案山子職人』の特級試験が解放されたのだ。
「たのもー」
「おう、お前か!!流石に特級への道のりは長かったようだな!!」
本当に長かった…如何にセカンドライセンスが上がり難いかを、身をもって知ったわ。
早速試験を開始して貰い、畑を拵え敵を迎え撃つ。
「って、えーー‼?何で円盤や戦車が出てくんだよ!!」
『何言ってんだ?円盤や戦車が作物を狙うのは常識だろう?』
そうか。
常識なら仕方ない。納得はしていないないが、理解は出来たのでマシン相手に死闘を演じる。
これの何処に案山子云々の要素があるのか全くの意味不明だが、ここの親父曰く、案山子が有れば作物は守られるとの事なので、頑張って畑を守り収穫数を稼ぐ。
「おいおっさん!!まだ終わらねーのか!?」
『おかしいな…いくら何でも厳しすぎるな…(ちょいと難易度を弄った位でこうはならんぞ)』
何やら小声で聞き捨てならん事言っているが、どうやらおっさんも想定外の出来事らしい。
『お、そのまま戦闘しながら聞いてくれ。どうやら過去にも同様の事が有った様だが、トラブルでは無く、特別試験に移行した様だな』
過去の試験データを漁っていたと思われるおっさんが何やら語り出す。
どうも、特殊な経験を積み、見込みの有る者向けに、試験が勝手に超高難易度なものに変わり、昇級した際の特典が大幅に強化される様だ。
それはまあ嬉しいが、敵の攻撃が激しすぎて、中々収穫数が稼げない。
それどころか円盤からのビームや、戦車の主砲でごっそりとLPを持ってかれ、ポーションもどんどん減っていく。
しかし、初めての戦車との戦闘が、こんなのとかアリなのか。
そんな疑念が中々晴れない中、刻々と試験時間が削られていく。
既に何度目か分からないドッペルと<鍬の一振り>を発動。
[スワンプマン]も何度目かの発動をする位、火力が凄まじい。
勿論こちらも反撃はしているし、円盤戦車共に何台もスクラップにはしている。それでもなお無限湧きしてくるから苦戦しているのだ。
そして、何度目かの大根を引き抜いた時、試験が終わりを告げた。
「おめでとう、これで君も立派な案山子ストだ」
「おいコラ、誤魔化されんぞ。難易度がどうとか言ってたなゴルァ!!」
何事も無く、締めようとおっさんを詰めて、色々とディールを引き出す。
「いや、お前なら多少ムズくなっても問題ないかな~って…」
当然問題行為なので、強請りまくってどんどん俺のライセンスを強化させる。
「ったく、流石にこれ以上は肩入れできんぞ?まあ俺の遊び心に、特別試験が重なるたぁなあ…自業自得とはいえ、全く…」
ぼやきながらも、しっかりと俺のライセンスに色々と仕込んでくれた様だ。
「おし、早速どうなったか見てみようぜ!」
既に反省と贖罪は終わったと見ているのか、元の調子で促すおっさん。
共に庭に出て、早速畑さ拵えてみるだ。
「そいや!!」
鍬を振るい、畑を一面作る。
「おお、良いじゃねえか!!案山子が立派になってやがる」
まあそれは良いんだが…。
「案山子じゃない!!」
其処には、どう見ても案山子では無い、古い洋館などに有りそうな、甲冑が4セット四隅に立っていた。
「何言ってんだ?どう見ても鉄で出来た案山子だろ?」
「案山子の定義から見直さなきゃな」
…でも人型で、金属なら実際に動物避けとして有効なんじゃ…と、ついどうでも良い事を考えてしまった。
「おし、強度テストだ、ウラァ!!」
大木槌で鎧にぶちかますおっさん。しかし鎧はビクともしていなかった。
「ッ…痛ってぇ!!なんだよこれ!!堅すぎんだろ!!」
「そんなに凄い事なのか?」
「あったりめえだろ!!俺の一撃は、戦車の装甲もへこませるんだぞ!それを耐えるなんて…」
どうやら特別試験とやらの恩恵は遺憾なく発揮された様だ。それにおっさんの贖罪も効いているのかな?
普通に考えて、特級になれば案山子が8体になるだけだと思っていたが、今回のイレギュラーのお陰で、案山子の数は据え置きだが装甲が劇的に向上したのだから、これほど嬉しい事は無い。…少々斜め上過ぎる現象だけどな!!
「そんじゃ超級試験が解放されたらまた来るわ」
「おう、そん時はまた厳しくしてやらぁ!!」
こうして無事『案山子職人』を特級にすることが出来た。
休憩を取ってから再開。
新しい案山子の力を試したいと思ってたら、おあつらえ向きに巡回が始まった。
という事で、準備を整え現地に向かった。
「やあやあこんにちは」
通知から速攻で来たため、ウィル以外誰も居なかった。
「おうテツか、こんにちは」
「早めに来たとはいえ、随分と少ないな…」
「なんだテツ、さっきの通知をしっかりと読んでないのか?」
「フム?」
改めて、先程の通知を開いて読み進めると。
「…成程、皆エルフィンの応援に行っちゃったのか」
「そうみたいだな、一応ギルは残ってるからもうそろそろ…来たみたいだな」
「こんにちはテツさん」
「こんにちは」
結局ベテラン勢はお休みで、その他は報酬が良いとエルフィンに行ったみたいだ。
「さて、3人しか集まらなかったわけだが…どうする?」
「どうするって…帰るわけにもいかんし、2人の今の状態ってどんな感じだ?」
俺は超級試験の時を10として、今の強さを25位と伝える。
「俺はそうだな…17位か?」
「僕は…20位ですかね」
どうやら強さ的には全く問題なさそうだ。
「一応大事を取って、安全な内側を回るというのは?」
「「そうし(ましょう)よう」」
「ふぅ…最近そこまで廃棄体がなかっとはいえ、ライセンス保持者全体への通知はやり過ぎだよな」
石のベンチに腰掛けて、ウィルが愚痴を零す。
「流石に3人じゃ厳しいよ…テツさんが居なかったら今日は休業でしたよ」
「それにしても、新人まで含めて人手を募るって、よっぽど御上は廃都と基地の土地が欲しいのかね」
「そうなんだろうよ、まあ組織を大きくしようとするのは構わんが、現場を軽んじるなと」
3人で御上の愚痴を言ったり、休んでるカイル達を小馬鹿にしたりして、身体を休める。
巡回を再開し、魔物化した熊を駆除する為、戦闘を開始。
今の俺達なら、半分も力を出さずに倒せるので、畑を作り塞き止めている間に、2人がボコボコにして熊を退治。
「しかし随分と厳つい案山子になったもんだな~」
鎧をコンコンと叩きながら、ウィルが感心したように呟く。
「もの凄い丈夫ですよね、魔物の猛攻に耐える時点で一線級なのは疑いようが無いです」
「一応戦車の装甲と同等以上みたいだからな」
「それはまた…」
ギルの呆れともとれるリアクション。まあ気持ちはよーく解るけどな。
「話は変わるが…熊なんて前から出てきたっけ?」
「ここ最近だな、やはり人口が増えた弊害とも言うべきか…住処の縮小、人肉の味を覚えた、魔物化に因る狂暴性の増幅、どれも人が住む場所で原生生物に起こる事だからな」
「そう考えると、追い払うのが正解かね?」
「いや、どの道遅かれ早かれの違いしかない、これも人の業だ、向かってくるケダモノはガンガン狩って良いぞ」
そんな会話をしてる最中にも、猪の魔物と、犬の怪物が襲って来た。
「なんだこれ!?魔物はまだ分かるが、何で怪物級が前触れもなく襲ってくんだ!?」
あまりの緊急事態に、動揺しまくるウィル。
しかし流石ベテラン、アレが怪物だと一目で見抜くのか。
「俺には違いが判らんが、間違いなく怪物なのか?」
「ああ、気配が違うからな…なんだってこんなところに[ヘルハウンド]が出やがるんだ」
わお…聞くからに強そうな名前だこと…ヤベーじゃん。
「ギル!!テツ!!最初から全力だ!!」
もう間もなく接敵するが、まだ若干の猶予があるうちに、此方に少しでも有利な状況を造り上げる。
「任せろ」
ドッペルと一振りで、数を増やし陣地を構築。西瓜を食べて腹と喉を満たし潤す。
ウィルを畑の中心に据え、俺が前衛ギルが遊撃に回る。
「先ずは猪を殺る、それで良いか?」
「ああ、先ずはヘルハウンドを孤立させてからだ」
ギルも異論は無い様で、敵の側面を突く為に敵の接近に身構える。
直後、猪4体とヘルハウンドと激突。…うん案山子が良い仕事してくれた。
犬は後方で高みの見物らしく、猪だけが突っ込んできたが、柵と案山子が猪を塞き止めた。
それを見た瞬間犬も即参戦してきて、案山子に攻撃。一撃で案山子が吹き飛ばされた。
「直撃は痛そうだな…」
間近で見たヘルハウンドは、その漆黒の毛並みに鋭い牙、しなやかな骨格、何より体高4mは有りそうな巨体から発せられる闘気が凄まじい。
そんなヘルハウンドに、ドッペルが吶喊、猪と犬にフルボッコにされ、ものの数秒で[スワンプマン]を置き土産に昇天。
「あれ?思ってたよりずっとぬるい感じ?」
突然湧いた[スワンプマン]に驚きながらも、果敢に攻撃を仕掛ける猪と犬だが、今度は豚が傍に居た為悉く攻撃は吸われ、取り巻きの猪に大ダメージを与えていく。
「ウィル、今の内に奴の注意点を教えてくれ」
ウィルがあれ程警戒する相手だ。こんな程度で済むはずが無いので、抑え込めている今の内に情報を共有しておく。
「奴は追い込まれれば追い込まれる程狂暴化し、攻撃力も青天井に高まっていく」
「…厄介な…」
「さっき、無傷の状態で鎧を一撃で破壊してたんだぞ…」
兎に角追い込んだら、距離を取ってチクチクするのが正攻法らしい。
沼男が消え、取り巻きも駆逐したので犬の包囲網を強化していく。
ドッペルを惜しみなく発動し、一振りでかなり広範囲に畑を敷設。
だがウィルの言った通り、LPを減らす程奴はどんどん狂暴になり、その火力は豚を一撃で引き裂くほどにまでなっていた。
でも、このヘルハウンド。俺にはそこまでの脅威ではなかった様だ。
「後は俺が始末するから2人は下がっていてくれ」
範囲攻撃を持っているわけではないので、足元を畑で崩し使い魔で囲んでランタンで弱体化してるだけで、見る見るうちにLPが減っていき、最後はドッペルと一緒に倍の使い魔と倍のランタンで圧殺してやった。
「いやはや…あのヘルハウンドをほぼ単独で仕留めるとは…」
「流石はテツさん…」
「いや、相性の問題だからね?ってかウィル、お前<極卒>を使えばどうとでもなっただろうが」
「アレは疲れるからパス」
「ギルも力を開放して、ブレードを双刃じゃなくて長剣タイプにすればリーチ差で安全に殴れただろう」
「いや~、テツさんが何とかしてくれそうだったので、甘えさせてもらいました」
なんとも締まらない感じだが、難は去ったようなので、巡回を再開。
その後は何事も無く、事務所に戻って来れた。
「しかし良いのか?ヘルハウンドの素材を貰っちゃって」
「構わんさ、殆どお前さん1人で斃したんだからな」
「そうですよ、今回は万が一を考えて余力を残しておきたかったし、それが出来たのもテツさんのお陰ですので、どうぞ受け取ってください」
との事なので、2人の好意を受け取っておく。
「それで、テツは助っ人に行くのか?」
「強制ではないんだよな?」
「勿論、別に何か制限があるわけでも無いしな、ただ単に報酬が良いってだけだ」
「ギルは?」
「僕はパスします、本業を疎かには出来ません」
「カイル達は?」
「あいつらもパスだ。別に緊急って話でもないしな、ただ今日の事を伝えて、シフトを組み直すけどな」
「それが良い、流石に怪物が唐突に現れるとか洒落にならんぜ」
今回は相性が圧倒的に良かったから事なきを得たが…。しかし何だったんだろうな?ゲートキーパーだったのかね?
まあ考えても答えは出ないか。さ、帰るさね。
2人に帰ると伝え、事務所を後にした。
「ただいま~」
職人以外全員出払っていたので、作業中のパミルに話し掛ける。
「こんにちはリーダー、皆さん各々出掛けてますよ」
「みたいだね、ところで良いもんが手に入ったんだ。どうよ?」
「これは…[ヘルハウンドの牙]!?ゲートキーパーを倒したんですか!?」
「あ、やっぱゲートキーパーなのか」
「私の知る限りでは、普通には遭遇しない筈ですよ」
俺は、パミルに巡回時の出来事を搔い摘んで伝える。
「うーん…確かにそれだと出現した原因が不明ですね」
「何しろゲートキーパーって、誰かを追いかけない限り…ってかそもそも人が居ないと出現しない筈だしな~、それに取り巻きも居たからやっぱ違うんと思うんだ」
「そうですか…つまり脈絡なくモンスターが出る事もある…かもしれないと」
「ああ、そこは分かんないわ、で?他にも骨やら皮やら有るから、シルクマッドおりょうさんと共有して金目の物でも作っといて」
「分かりました、幾つか譲っていただいても?」
「ああ、何かしらで売り上げに還元しておいてくれるなら好きに使ってくれ」
「了解!!腕が鳴りますね!!」
さて、素材はこれで良し。次は何をしようか。
するとマサとベルが戻って来たので、軽く言葉を交わす。
「俺は一旦寝るから落ちるわ、お休み~」
「僕はまだ続けるんで御一緒しますよ」
マサはログアウトし、ベルとパーティー組んで出撃。
この2人で稼げそうな場所となると…。
「うっは!!凄い大群!!」
「隊長!!前が見えません!‼」
ベルと2人で訪れたのはエルフィンの渓谷。
畑を沢山用意し、そこに寝そべって使い魔がバレットフライを倒すのを眺めている。
今の蜂のスペックと、ベルの回復と支援が合わされば、数の力も相まってかなり効率よく蝿の素材が集まるので、短時間で相当に稼げる。
サチが居ればもっと効率が良いんだが、居ないものは仕方ない。
暫く使い魔が蝿を倒すのを眺めていたら、蝿が来なくなってしまった。
「アレ?お終い?」
「どうやら放置稼ぎ対策でしょうか?無限湧きの敵が、一旦出てこなくなる事象は他にも聞いたことが有ります」
「そうなんだ。でも定点稼ぎが封じられただけでしょ?先に進めばまた湧くはずだよな?」
少し渓谷を降りたところで、再び蝿の集団に襲われたので、再び同じ要領で寝転んで使い魔の活躍を眺める。
終始そんな感じで、寝る、移動する、寝る、を繰り返し、大量の蝿の毒袋を持ち帰る事が出来た。
夜。
全員が揃ったのでバグスターのダンジョンに乗り込む。
「どれどれ…大分攻略が進んでいるな」
入り口に設置されたマップを見ると、既に地下数百mまで詳細に描かれていた。
「各所にこれまでのダンジョンボスが、中ボスとして湧くのか」
「厄介と言えば厄介だが、素材に有り付けなかった大多数には救済措置でもあるな」
確かにそういう側面も強いんだろうな、ゲーム的にも序盤のボスが、中盤終盤に雑魚で出てくるのはよくあることだし。
折角だし復習も兼ねて、中ボス部屋を巡ってみる事にした。
「とはいえ、目的の部屋に行くだけでも大変だな」
先ず、最初の分岐部屋を安全に抜けなくては、進行どころではないからな。
皆で軽く打ち合わせをし、ダンジョンへ乗り込んでいった。
次はお盆後辺りを目途に。




