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第二十四話

~前回までのあらすじ~

全身痛めつけられるという、アレな訓練を完了し[死への免疫]を獲得。

新たなライセンス『案山子職人』という愉快なものまで加え、

高難易度のロケーション、[モンスターバレー]の攻略を開始した。

 思いの外溜まっていた入力作業を片付け、小休止。

 昼食後にDIYにログインした。

 先ずは溜め込んだ資金でLvを上げる為、[アース]の教会へ向かう。

 素材の整理を行い、資金を確認。十分な額が溜まってるので、予定通りLv上げを敢行。

 覚醒2回転生7回から、覚醒4回転生9回まで一気に上げ切った。

 そんな感じで現在のステータスがこんな感じ。

 名前:テツ Lv:100 祝福:[獣神²] ★⁴ ☆⁹

 LP:218120 HP:21500 STA:5000 COST:4310/10500 残りポイント2790

 ライセンス:『ジャックオーランタン』超級 『案山子職人』プロ

 パラメータ:[生命]218120 [持久]5000 [積載]10500 [体力]21500 [魔力]5000 [制圧]5000 [幸運★⁴]25000 [速度]5000 [傀儡]5000 [観察]5000

 因子:[獣人★] [吸血鬼★] [農家★] [百姓★] [聖人] [パイパー] [羊飼い] [養蜂家] [蛇使い] [養鶏家] [酪農家] [養豚家] [鷹匠] [サーカス団]

 スキル:<親子蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50 <血の海>Lv110 <野生の力>Lv110 <代行の剣>Lv50 <代行の盾>Lv50 <生存本能>Lv110 <養豚>Lv50 <過剰肥育>Lv50 <群鼠>Lv50 <誘導>Lv110 <圧制>Lv110 <殲滅>Lv110 <煽動>Lv110 <見せしめ>Lv110 <百姓魂>Lv110 <鍬の一振り>Lv110 <品種改良>Lv110 <土壌改良>Lv110 <積載増加>Lv110 <魔導人形>Lv50 <ゴーレム使い>Lv50 <ブリキ兵1号>~4号Lv50 <養蜂>Lv110 <分蜂>Lv110 <シープドッグ>Lv50 <羊の群れ>Lv50 <蛇笛>Lv50 <蛇壺>Lv50 <牛>Lv50 <山羊>Lv50 <鶏>Lv50 <鷹使い>Lv50 <偵察>Lv110 <調教>Lv50 <華麗な着地>Lv110 <マウス1号>~4号 <不死の眷属>Lv110 <生命増加>Lv110 <体力増加>Lv110 <好反応>Lv110

 装備:[シャツ] [ズボン] [阿修羅の骸] [50フリーホルダー] [ランタン] [ランタン] [タングステン鋼の鍬] [試作型アンデッド殲滅用ヘルメット]

 アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵] [死への免疫]

 ギフト:[生への執着]

 使い魔の総数も275体になり、[生への執着]の発動も[死への免疫]込みで、37040以下で発動する様に成った。ちなみにこの時の[生命]は約900万にまで上がる。

 後は<速度上昇>を切った事かな。パラメータの[速度]の値が十分有れば、効果が加算のこのスキルはほぼ意味が無いと今更気づいたので、お役御免となった。

 まあ再誕後の貧弱な時でも、スキルLvが110まで解放された事で序盤から随分と助けられたが、流石にLv毎に1%加算じゃ現状要らないスキルなので取得を見送り。何れはまた使う機会も有るだろうが、それまでお休みだ。

 こんなもんかな?それじゃ巡回の時間だし、墓場へ向かうか。


 特に何事も無く巡回を終え、ウィルから伝言を聞く。

「やっくんとモンドがいよいよ超級に挑むみたいだぞ」

 予定日が現実時間の土曜夜で、都合が良ければ参加して欲しいそうだ。

 これといって予定は無いので、当然参加する心算だ。

 さて、今度は工業地区へ向かい、『案山子職人』を上級へ上げに行く。

 前回のプロ試験から、[農家]と[百姓]を覚醒させ、転生も9回してるので、前回以上の早さで、ものの数分で試験を突破した。

「ぬがーーっ!!納得いかねーー!!」

 おっさんの憤慨を無視し、早速変化の確認に移る。

「そいや!!」

 サクッと畑を耕し、じっくり観察…するまでもなく、一目で変化が判った。

「また案山子が増えた…」

 畑の四隅、柵の角を守るように生える案山子。最早何かの儀式みたいな構図だ。

 そして案の定というか、耐久力は据え置きだった。

 まあ、実質二倍だから良いんだけどね。

【防犯防衛設備販売製造所】を離れ、PAに帰還した。


「折角こっちのホームに居るんだし、装備でも探してみるか」

 現在俺の装備状況は、アクセサリ無し、腕装備無し、足装備無しといった感じだ。

 工夫さえすれば、もっともっといろんな部位に色んな装備を付ける事が出来るが、金が無ければ強化もメンテナンスも出来ないので、これまでは無しでやって来た。

「鍬も良いのが欲しいけど、そろそろ防具も充実させても良さそうだな」

 という事でPAを出て、インターホンで防具を検索し物色する。

(出来れば壊れにくくて特殊効果が有るのが好ましいけど)

 結局これだという物が無く、断念。別に無理する程でも無いからね。

 ついでに鍬も検索して物色する。

 コチラは金に糸目を付けなければ、良い物が目白押しだった。勿論スルー。

(しゃーない、[エルフィン]で開墾を再開しよう)


 [エルフィン]に到着し、先ずは既存の畑に[修復の鍬]を掛け、案山子を4体に更新する。

 何気に<鍬の一振り>にも修復が乗るので、既に畑が有る場所に被って使っても、無駄撃ちにならず、上手く活用して時間短縮を図る。

 それでも流石に時間の無駄かもと思い、切り上げようとしたが。

「精が出るねテツ君」

 と、いつの間にか傍に居たローレンスさんに、笑顔で圧力を掛けられ、逃げ場を失う。

「あの、流石にしんどいんで少しは手伝って下さいよ」

「そうしたいんだがね。うちではこの手の作業はシーラが一番なんだが、それでも畑に柵や案山子を生やすなんて芸当は出来ないからね。やはり君に頑張って貰うしかないよ」

 そう言い、またしても大量の牧草の種をねじ込まれ、何処かに去っていった。

 その後、二時間ほどかけて全ての畑を更新し、新規の畑を作り始める。

 徐々にホームから離れ、再び魔獣の襲撃が再開される。

 敵はアースドラゴンやキマイラで、数が多く手強い。

 しかもこいつ等。火球を飛ばしたりと火を使うので、牧草に良くないのだ。

 燃える畑を、[修復の鍬]で鎮火(怪奇現象)し、象がドラゴンを押しつぶす様を眺める。

 こいつ等の相手をしていると、今度は大鷲が襲来。牧草に潜んでいたジャッカロープを襲い返り討ちに遭っていた。何しにきたんだこいつ。

 …というかジャッカロープがなにしれっと住み着いてんだ。

 だが既に牧草に身を潜め、見失ってしまった。

 なんかUMA感あって良かったな、今の。


 数日後。

 とうとう牧草地が水源を呑み込み、様々な魔獣が住み着いている。

 これだけ柵と案山子が在ってはさぞ住み難いだろうに…。そう思ってたんだが、どうも牧草地に住み着いた魔獣は非敵対状態になり、柵と案山子をすり抜けれるようになる様だ。

 この状態になり十分な緑地化が出来たとして、開墾は気が向いたらで良いと言われた。

 寧ろまだ広げる気が有るのかと戦慄したが、またしてもねじ込まれた牧草の種が、彼らの謎の野望を物語っていた。

 そんな現在。遂に念願の初雨を観測。ホーム周辺に極小規模の雨雲が発生し、一時間程降って止んだ。

 これにハイエルフ一家が大盛り上がりして、宴会に突入。

 俺はそれを尻目に渓谷に向かった。


「さて、今ならゴリ押しでも行ける筈だが…」

 これまでと違い、悪魔の手を気にせず無暗に突っ込む。

 早速ジャッカロープに襲われ、その最中俺自身が引き寄せに遭うが、冷静に手の群れに<鍬の一振り>を発動。

 更に俺の傍に瞬間移動してきた使い魔達が手をフルボッコ。遅れて辿り着いたジャッカロープも多勢に無勢で圧殺。今のステータスなら周辺と上層は問題なさそうだ。

 ゴリ押しが通じると判り、心にゆとりが出来る。

 のんびりと、だが堂々と歩を進め、中層を目指し坂を下る。

 [サーカス団]で象を加えた事で、戦闘開幕時の安定感が抜群に増した。

 何しろ巨体が勢いよく突っ込んで行くのだ。それだけで牽制としては十分、しかも堅さも攻撃力も高く、良い露払いになっている。

 そんな感じで上層を安全に攻略し、これまでと雰囲気の異なる空間に来た。

 正面から見て、左側の壁が無くなり、谷底が見えるようになった。どうやら中層に入った様だ。

 そして早速敵の襲撃が発生。相手は武装したスケルトンで、初っ端魔法を放ってきた。

 多分風魔法の<ブラストウィンド>だと思うが、かなりの高威力で、突っ込んで行った蜂が全滅し、鷹も瀕死で接敵直後に切り伏せられた。

 直後<ゴーレム使い>が引き寄せ、デバフの嵐と数の暴力で浄化出来たが、いきなり相当な強敵と雄遇してしまった。


「うーん…いくら何でも厳しくなり過ぎだろう…」

 上層から中層と思しき場所に着いた途端。難易度が急上昇して困惑する。

 魔獣もモンスターバレーの名に相応しく、アースドラゴンを悍ましくしたような緑色の四足の化け物が出現。

 こいつも兎に角タフで、浴びると呪い状態になる瘴気を撒き散らし、突進と噛み付きを武器に襲い掛かって来た。

 勿論徹底抗戦を試みるも、その圧倒的なパワーと強靭な体に成す術無く敗走した。

 幸いこの怪物?は滅多に出現しないレア魔獣の様で、一度撒いた後様子を見に戻ったら姿が消えていた。

 格はかなり落ちるが、同じく超強敵だったエルフのと思しきスケルトンもレアだった様で、あれ以降は遭遇していない。

 その代わりと言ってはなんだが、何故か魔獣でも何でもないグリーンマンバの亜種っぽい、[シルバーマンバ]と[ゴールデンマンバ]が岩壁の亀裂から襲ってくる。

 この2体もそこまで頻繁には出てこないが、一度噛まれたが、最終的にLPが4000弱まで減ってしまった。

 成程。こんなところで生き残るだけは有るな。

 更に谷底からもスティンガーの色違いが沸いてきたりと、ただでさえ地形が絡んで厄介なのに、敵も凶悪極まりない危険地帯にへ辟易する。

 とまあ、これで中層の主な危険は大体把握出来た。

 殆ど出てこないスケルトンと四つ足の怪物は兎も角。金銀マンバと色違いスティンガーは要注意だ。


 中層を進む事数十分。

 一角ジャッカロープと赤スティンガーの大群にしゃぶられ撤退を決意。

 ダメだ。敵の数と質が高すぎて、数で圧倒できなくて死に掛けた。

 [ドッペルゲンガー]で捨て駒を用意し、<鍬の一振り>で畑を作り、そこを匍匐で移動して、何度も尻を蚊に食われながらも、ポーションをじゃぶじゃぶ使い立て直しを図り生還できた。

「さて、まだ現状での攻略の余地は有るが、一度ホームに戻ろうか」

 希少素材を抱え、ホームに帰還しお持ち帰りに成功。

 荷物を整理し、メニューを開いてスキルのLvを上げる。

 コストの圧倒的な余裕は消えるが、全ての使い魔のLvを110まで上げた。

「これで上層は更に楽になるだろうし、中層もさっきよりは良い線行くだろう」

 という事で再び渓谷に突撃する。

 思惑通り上層は余裕を持って通り過ぎる事が出来た。

 そして肝心な中層だが、流石に蜂以外の使い魔のLvが60も上がったので、目に見えて戦闘が楽になった。

 さっきは、赤スティンガーの群れに、蜂が蹂躙されていたのが、今回は<鯉の群れ>の弾幕が相当強烈になったのか、次々に撃ち落とし、蜂の空戦を援護している。

 更にLv110の<鷹使い>も堅くなった事で、赤スティンガーを捕獲して傍に連れてきくれる。

 <ゴーレム使い>と合わせて2体ずつ確実にタコ殴りにし、殲滅していった。

 ただ。それでも金銀マンバの毒は脅威で、Lv110の象ですらあっさりと処理されてしまうので、事故には気を付けたい。


 中層を問題無く攻略できるようになって、調子よく進んだ結果。あっという間に死に戻りを果たした。

 雰囲気が変わる、中層と下層との境界と思しき場所を過ぎ、鷹が何かを見つけ戦闘を仕掛け返り討ちに遭う。曲がり角を超え少しするとスケルトン2体と遭遇…と言うか遠目に発見。

 次の瞬間。<ブラストウィンド>×2と<ファイアーオーブ>×2のコンボで使い魔諸共蒸発した。

 あまりに一瞬の出来事で、リスポンしたホームでポカンとしてしまったのは内緒だ。

「明らかに最初に遭遇したスケルトンとは格が違ったな…アレがローレンスさんが言ってたハイエルフスケルトンだな」

 まさかあれ程の怪物だとはな、しかも前触れもなく曲がり角で遭遇とか…。

 まあこんなもんだよな。上層から中層で異常に難易度が上がるんだ。下層はそれ以上の落差なのは当然と言える。

「しかし参った。火力はともかくあの射程は厄介だ」

 なんせ、<ゴーレム使い>の引き寄せの範囲外からの魔法での攻撃だ。

 幾らヘルメットで索敵自体は出来たとしても、先制出来ないんじゃ有利はとれないなぁ…。

 このままLvを上げていけば、その内豚の判定でねじ伏せる事は出来そうだけど。

 それで下層を如何にか出来たとして、その先はどうなるのか。Lvを上げて強化する余地がその時に残っているのか?別の解決法右方も何かしら用意する必要があるのでは?

 とまあ考えてはみるものの、やっぱLv上げに依るゴリ押ししか思いつかん。

 所詮使い魔と農業に特化してる分、噛み合わない部分が出るのは仕方ない。

 うん。こんな事を悩む間に少しでも金を稼いだ方がよっぽど有意義だ。危うく迷走しかけるが、改めて自身の立ち位置を確認し、踏みとどまる事が出来た。

 …なんて言ってみたが、ビルドなんて幾らでも変わるもんだしな。今は急な路線変更こそ考えて無いが、その時が来たら流れに身を任そう。


「さて、時間か」

 日が変わって今日は土曜日。試験協力の約束日だ。

 消耗品は全て教会が補填してくれるので、ありったけ用意して墓地に向かう。

 丁度タイミングが良かったようで、協力者が集まりだしたタイミングで到着。

「こんばんは。テツさんも協力してくれるんですね?」

「勿論。ただ。ステータスは以前より下がってるからサポート役しか出来ないよ。それで良いなら参加するよ」

「充分です。お願いしますね」

 ふと周囲を見ると、NPCは居ない様だ

 聞くと、やっくんとモンドの希望で、プレイヤー軍団で挑みたいそうで、頑張って声を掛けて、20人以上集めた様だ。

 補欠として来てくれた人も、後の試験やらに協力する事を条件に辞退し、精鋭16人で超級に挑む事が決まり移動した。

 教会で受付を済ませ、例の無人島に跳び試験が開始された


 初日。

「ところで方針は?」

「人数が多いので、王道の籠城しての持久戦で行こうかと」

 他の人と能力の摺り合わせをすると、ビルディングに明るい人が5人も居た。

「永パ防止キャラは大丈夫?」

「!?そんなの居るんですか!?…ってそんなの居なかったじゃないですか」

「いや、あの後試し切りで此処を借りたんだけど、その時に籠城してたらやられた」

 俺のこの情報で、ホスト2人と主要ゲストが慌ただしくなる。

 俺も意見を求められ、永パ防止キャラの強さを教える。

 そして議論の末、当初の予定通り籠城戦で行く事にした様だ。

 俺はあくまでサポートなので、決定に従い取り敢えず食料を生産する。

「はい。西瓜に大根に蜂蜜に豚肉にミルクに鶏卵」

 因子の効果で生み出した農産物を、仲間の料理人に提供。

「うわ~、新鮮な材料をこんなにも!!ありがとうございます!!」

 これで食時のバフが潤沢になるだろう。

「はい。羊毛と綿」

 今度は縫製職人とビルダーに繊維を提供。これでアパレルの修繕やカーテンや旗を作ってください。

 コチラも大いに感謝された。ちなみに旗は建築物にバフを掛け、カーテンは窓の魔法と属性防御力を大幅に上げる効果が有るらしい。

 試験中は、因子の効果や農耕等以外での資源の確保が出来ない為、定期的に各種素材を捻出出来るのは、状況次第では非常に強力な武器になる。

 こうして初日は中盤終盤へのリソース確保へ向け生産に勤しんだ。


 二日目。

 何度か襲撃が有った様だが、見張りが全て撃退した様だ。

「いや、殆どがテツさんの使い魔が勝手に…」

 俺の睡眠中も使い魔は頑張ってくれてた様だ。

 そうそう。要塞を築いて籠城っていうけど、制限時間の問題はどう解決するのか疑問に思い聞いたら、初耳な情報を得る事が出来た。

「実はデメリットは有るんですが、NPCみたいに時間制限の無い建築が可能になるライセンスが有るんですよ」

 聞くと、パーティーメンバー以外からの味方からもダメージを受ける様に成る代わりに、建築物の制限時間が取っ払われる様だ。

 デメリットとしては他にも、消費素材が増加、通常より耐久力が低下する、他人に悪意を持って壊されても犯罪行為として立件できない等、中々キツイ制約は有る。それでも状況に応じて使い分けられるようなので、十分強力なライセンスと言えるだろう。

 そんな事情もあり、現在も急ピッチで建築が進められ、どんどん要塞化が進む。

 俺の提供した綿や羊毛も、暖簾やカーテンに加工され、敵の侵入経路になりそうな通路に、これでもかと設置されている。


 三日目。

 そろそろアンデッドの強さがグンと上がるので、要塞の消耗を抑える為、周囲を巡回。

 要塞も増々その規模を増し、寄って来るスケルトンを防御システムで粉砕している。

 六日目。

 アンデッドの攻勢が本格化しだし、慌ただしさが生まれ始める。

 九日目。

 徐々に大物のアンデッドが混ざり始め、要塞の防御システムだけじゃ抑えきれなくなってきた。

 十三日目。

 キマイラやアースドラゴンのゾンビが登場し、空からの襲撃も激しさを増す。

 これに対し、要塞周辺に聖水を霧状にして散布。アンデッドの弱体化を図る。

 そして此処に居る16人は全員『ジャックオーランタン』だ。当然何かしらのランタンを所持しているので、更なる弱体化の嵐に晒され、衰弱するアンデッドを浄化する。

 要塞の堅牢さが有るからこその横綱相撲とも言える。

 二十一日目。

「さあ、永パ防止キャラが出て来るぞ」

 いよいよ本番を迎えた超級試験。

「俺の時は海からアザラシが奇襲を仕掛けてきたが…」

 この日まで欠かさず強化を続け、難攻不落の要塞から周囲を探る。

 程なくして現れたのは超大量の蝙蝠だった。

「…アレが永パ防止キャラ?よりによって飛行戦力ですか…」

 やっくんが苦い表情で呟く。

 当然要塞には対空機能も備わっているが、比重は対地に重きを置いている。

 これから残り十日。空からの物量攻めに耐えながら地上の波を防げるかが勝負だ。


 永パ防止キャラが出現して少し経った頃。

 今の所は対空砲が良い仕事をして、空襲での被害は抑えきっている。

 地上も幾重にも改修を重ね、分厚い高密度コンクリートの壁が、アンデッドをシャットアウト。

 すり抜けてきたレイス、飛び越えてきたキマイラゾンビを、内部で確実に処理。

 更に、打って出ては時限式のビルディングで防壁を作って群れを分断したりと、時間稼ぎにも余念がない。

 流石に参加人数が16人も居ると、余裕が段違いだ。

 個々のスペックも高く、殆どが再誕直前で止めてると言うので頼もしい。

 寧ろ俺が足を引っ張らないよう気を付けよう。


 二十八日目。

「これは厳しい状況だな…」

 試験も残す事四日間。要塞の分厚い壁が頻繁に破壊されるようになってきた。

 補修の素材も乏しく追い付かない。徐々にだが、要塞が収縮していく…。

 三十日目。

「しゃーない。切り札を切るか」

 アンデッドの猛攻に晒されながら、仲間に奥の手を提案する。

「流石テツさん!!ここに来てまだ手が有りましたか!!」

 やっくんが歓喜し、案に乗ってくれる様だ。

 既にやっくんとモンドは全力を出した後。最後は皆の切り札で凌ぐ算段だったが、四方八方を囲まれてる状況ではそれも芳しく無かった。

 一番Lvが低い俺は、あくまでサポートと思ってたが、見かねて手を差し伸べる事にした。

 俺の案が採用され、急ピッチで要塞が改修される。

 あっという間に俺の思惑通りの形に仕上がった要塞。

「さて、いよいよ全力を出す時が来たな」


 まあ、難しい事は何もない。只瀕死になって引き籠るだけだ。

 アンデッドの前に身を晒し、限界までLPを減らす俺。

 そして目標値まで減らせたのでそのまま隔離部屋に隠居した。

 現在の俺の[生命]は900万越え。そして要塞の中心地に拵えた隔離部屋に居ながら、使い魔を前線に送り続ける。

 先程まで一蹴されていた使い魔達。無理もない。今の俺のステータスだと、最終ウェーブのアンデッドに太刀打ち出来る道理はない。

 だが[生命]900万にもなった状態の使い魔は違った。

 最弱の蜂ですら蝙蝠と空中戦を演じ、撃破している。

 出現当初から、見違えるほど強化された永パ防止キャラの蝙蝠。そんな相手に蜂が戦いを成立させているのだ。

 鷹も黒い波に突っ込み暴れ回っている。

 そしてそれらを援護する飛び道具持ちの<鯉の群れ><魔導人形>にブリキ兵。

 最早空中戦力は完封したも同然だった。


 最終日。

 制空権は最早此方のもで動かないが、地上戦はギリギリだった。

 今や要塞は形骸化し、俺の隔離部屋が有る塔だけを残し、消滅済み。

 仲間は俺の周囲に集い、時間稼ぎのビルディングをして最後の足掻きをしている。

 幾ら使い魔が戦えているからといっても、数で負けてるからな。

 非戦闘タイプの使い魔も巻き込まれてるが、それでも敵の波を防ぐには至らない。

 尤も、俺を中心に16人も集まっている現状、ランタンの効果がとんでもない事になっているので、使い魔がダメージを与えてたやつは、傍に来るだけで蒸発していた。

 結構追い込まれた感じはしたが、この状況は勝ち確を現していた。

 そのまま時間が過ぎ、試験は終了した。

 終わってみれば全員生還で、圧勝だった。


 やっくんとモンドは手続きを、他は解散。俺は呼び出しを受けたので待機中だ。

 諸々終わった2人が礼を言い去ったので、俺も用事を済ませよう。

「おう来たか。まあ座ってくれ」

 例によって担当の部長と相対する。

「先ずは礼を言おう。あの戦法を最初から使わないでくれた事を」

 あくまでも実力を見る試験で、ゲストがホストを喰うような活躍は、やはり推奨はされていない様だ。

「それと君は今後は超級試験の助っ人は禁止だ。流石に戦力としての比重が高すぎた」

 まあ仕方ないか。俺1人で食料や枚数を補えるのは試験に則さないよな。

「まあ、それでも彼らを立てる立場を取り続けたのは見事だ。さて、君の昇級請負人としての活躍に褒美をあげないとな」

 そう言い、部長は俺の愛用しているのと同じ、[スチールランタン]を3つ取り出す。

「これを君に差し上げよう」

「…良いんですか?」

「ああ、その方が元の持ち主もランタンも喜ぶだろう」

 俺がおずおずと尋ねるのには理由が有る。

 この最初に協会から支給されるランタンは特別で、基本1人1個までとなっている。

 何故俺は2つ持ってるって?実はこの押し付けられた1個は引退した『ジャックオーランタン』の所持品だったもので、後進育成の為と引退時に協会へ返還したものらしい。

 流れ的に察してるかもしれないが、ランタンには基本、使用者が登録されそれ以外の人は使えないようになっている。

 例外は今言ったように、返還された物の貸し出しや譲渡、他には戦死した者の遺品の貸し出しや譲渡等が有り、俺のは返還された物で貸し出しの後、現場の判断で譲渡と言う名で押し付けられたものだ。

 さて、そんな『ジャックオーランタン』の象徴でもあり根幹をなすアイテムが3つも。

 俺が聞き返すのも分かるだろう?

「では…有難く頂戴します」

 こうして基本のランタン5個持ちという異常な状態になってしまった。


 PAに戻り、新たに受け取った3つのランタンを装備する。

「あら、テツ君戻ってたんだ…ってなんかすんごい眩しい!?」

 寛いでいたユキと遭遇し、大層驚かれた。

「へえ~。お仲間の助っ人は上手くいったのね」

 ランタンが増えた経緯を説明し、納得した様だ。

「さて、まだまだ時間も有るし、ランタン五刀流でも試してくるか」

「それなら私も行くわ、何処に行く?」

「そうだな…豪雪地帯にでも行ってみるか」

 ユキも異論は無い様で、直ぐに出発した。


「さて、今まで浅い場所にしか行った事無いけど、確かサーベルタイガーにマンモスが出るんだっけ?」

「ええ、ただ気を付けたいのは、同じ種類であっても、奥に行けば行くほど強くなっていくらしいので、油断は禁物です」

 と、何故か居るベルが補足してくれた。というかマサもアコもベッタラも居た。

「そりゃ腰にランタン5つも提げてたら付いていくだろう」

 まあ仲間は多い方が良いか。

 そんな感じで渓流に掛かった橋を渡り、雪山に突入した。

 暫くは馴鹿や狐がチラホラと視界に入っては逃げる、引き寄せられる、鷹に捕まるなど戦闘らしい戦闘も無く進む。

 そして皆対策済みだが、いよいよDOT(時間経過性ダメージ)が発生するエリアに突入。

 そこから更に奥に進み、遂に猛獣と遭遇した。

「ん?何か…雪豹が待ち伏せしているな」

 ヘルメットが既に看破し、タグまで付けてバッチリ補足。

 そのまま奇襲し返してやろうと思ってたら。

「あ、感付かれたのに気付いて逃げやがった…」

 なんともまあ、狡猾なこって。


 あれから何度か獣と遭遇するが、そのどれもが非常に狡猾かつ強力で、環境ダメージと相まってここが高難易度地帯ということを如何に証明している。

 今まで何度も戦ってきた狼も、足場が悪く、十全に動けない此方を取り囲もうと執拗に張り付いて来るが、敵わないと見るや即時撤退だ。

 それでも<ゴーレム使い>と<鷹使い>のお陰で最低限素材は手に入るので、まだ良い方だ。

 そしてさらに進んだところで、漸く噂のサーベルタイガーに遭遇した。

「ふー…これは奇襲を完璧に防げてるからこそ余裕を持って叩けてるけど、そうじゃなきゃかなり厳しい戦闘になるな」

 襲って来たサーベルタイガーを返り討ちにし、感想を零す。

「これでも最低クラスなんだから恐ろしいな、更に奥地に行けばこうはいかんだろうな」

 マサも危機感を感じたようで、これ以上進む事を止めるよう言った。

 俺もそれに賛成し、帰還を選んだ。

 ちなみにランタンの効き目はイマイチ測りきれなかったから、場所を変えて検証する。


「という事でバグスターに来ました」

 此処なら戦闘経験も多いので、比較がし易いだろう。

 早速バグスターに移動し、東のダンジョンに向かう。

 ダンジョンに入り、ヘルメットも外し、ランタン0~5個で蟲と戦闘する。

「今まで体感で弱体化してるのは感じてたけど、こうして数を用意して調べると、やっぱ具体的な幅が判りやすくなるな」

 今回の検証で、ランタン1個あたりの敵の弱体率は、5~10%という事が判明。

 上振れと下振れは敵にも依り、強い敵程効き辛くなる。多分ボス級には2~3%効けば良い方になるだろう。

 それでも5個も有ればボス級ですら一割は弱くなると思えば、相当な壊れと言える。

 後、ついでにヘルメットの効果も検証したが、思ってたよりもずっと低い弱体率で、およそ7~12%程しかなかった。体感だともっと強いと思ってたけど、他の効果と相まってそう錯覚してた様だ。

 あ、でも照射型とはいえ、射程が相当長いから、余計に強く感じたのかも。

 なんにせよ検証も済んだので、お土産の素材を確保し帰還した。


 PAに戻ると、珍しく全員揃ったので、[エルフィン]の渓谷へ向かう。

 そして職人衆も再誕を済ませ、暫くは戦闘にも積極参加してくれる様だ。

 道中魔法を使うハイエルフスケルトンの情報を共有し対策を練る。

 其処はマサとアコが何とかしてくれるそうなので、任せる事にした。

 現地に到着し、渓谷を下り始める。

 上層中層は問題なく進み、下層に到達。恐怖の曲がり角に到達した。

「それじゃ任せて」

 アコが曲がり角に向け、旗を射出し旗技を発動。直後出現したスピッツ諸共旗が消滅した。

「おし!!任せろ!!」

 マサが飛び出し、曲がり角を抜け、直後即死した。

 そしてメールで、『連中は谷底に落としておいた、少し待っててくれ』とメールが来たので、安全確認をしつつ、十分程待機しマサと合流した。

「いくら何でも攻略雑過ぎない?」

「いや、思ってた数段上の火力で、そうなっただけで、死に戻りは想定してなかった」

 まあなんにせよ、下層の最初の関門は突破できた。


 下層は地獄だ。谷底からは更に強力になったスティンガーに、[バレットフライ]という超高速で飛び回る蝿が常時襲ってくる。

 兎に角過酷な状況なので、皆して中腰になりながら畑を盾にして、牛歩戦法で進む。

 ハイエルフスケルトンは、距離が有ればアコが弓でチクチクと。そうでなければマッドのポーションでドーピングしたベッタラが、瞬殺するというゴリ押しで対処した。

 残念ながらベルのバフはディスペルで消されるので、ポーション頼みとなった。

 そんな地獄の下層だが、遂にご褒美に有り着く事が出来た。

「おお!!採掘シンボルが有ります。少し待ってください」

 とパミルが興奮気味にロケットマトックを壁に振るう。

「良いですね…ミスリルにアンバーですか…ふふふふふ」

 かなりの希少鉱物にトリップ寸前のパミル。

 これは掘り尽くすまで梃子でも動かないんだろうな。

 という事でシルクがつるはしを持ってたので、全員でシェアしながら交代で採掘をした。

 かなり良い物が沢山取れたが、一番の目玉は鉛に似てるけど非常に軽くて柔らかい、[軽軟鉄]という謎の金属だ。

 こいつの謎さに拍車を掛けてるのが、この金属が精練さえすればそのまま食べれるという事だ。

 細かく砕いて料理に添加すれば、防御力上昇の効果やOP付与も見込める超優良素材という話だ。

 そんな金目の物を手に入れ、ロストのリスクを避ける為、急いで撤退した。

 いやー、流石超危険地帯。見返りは大きかった。


 あれから数日。

 今日はアップデート日で、予告通りの内容で行われた。

 そして既に二度目の再誕をした人間がチラホラと居る様で、予想通りスキルLv等が120まで解放されたとの情報が出回っている。

 どんだけやり込んでればそこまでLvを上げれるんだ突っ込みたくなる。

 ログインして周囲を見ると、丁度シーラが水を取りに来ていた。

「やあ、[エルフィン]の復興が始まったようだけどどんな感じ?」

「あらテツさんこんにちは。そうですね。まあ予想通りと言うか…行政側と老害共の足並みがイマイチ揃ってないようですね」

 どうやらこの期に及んで、人任せな上に甘い汁は吸う気満々の様だ。

「まあ、入植地は私達のホームの丁度真裏に位置するので、暫くは大丈夫でしょう。ただ、此方の開拓した場所は一部以外は立ち入り禁止なので、不法侵入を見つけたら教えてくださいね」

「それは良いけど…どうやって見分ければ?」

「そこは大丈夫ですよ。一目で分かるようになってるので」

 うーん…なんかピントのずれた答えだ。まあ言った通りなんだろうな。

「そうか、まあシーラ達のホームが使える俺達が態々降下から始める事はないな」

 PAを出て、人だかりを作るギルドを尻目に潜水艦に向かい、[エルフィン]に跳んだ。


 アプデで大規模な入植が始まったが、俺のやる事は変わらない。

 今日も縄張り拡大の為、牧草地を拡大させる。

 最近は湿度も高まり、地面の色も湿り気を帯びたものになってきた。

 なんとなく、ホームを起点に環状に開墾して、山の麓まで到達するのを目標にしてるので、野望達成にはまだまだなので張り切って鍬を振るう。

 途中非敵対のポニータイプのユニコーンに癒されつつ、ふと遠くの空を見ると。

「お‼降下作戦か?」

 遥か彼方の地平線に沈みそうな位置に、チカチカと光る発光体を捉える。

 まあ、この距離なら干渉はまだまだ先になるだろう。

 それまでにはこの環状牧草地帯という大作を完成させねば。

 再度気を引き締め、諸々駆使して野望達成を目指す。


 週末。

 漸く遠目にだが、ハッキリと山の麓が見えてきた。

「何とか此処まで漕ぎつけたか」

 現在牧草地は凄い事になっている。というのも荒らされ畑が破壊された箇所を、今までなら再度畑に修復していたのを、今では監視塔を設置してるのだ。

 更に牧草地を徐々に破壊し、街道の整備なども始める始末。

 そんなんなら最初からその部分は無視で良かっただろ!!と遺憾の意を表明したが。

「大丈夫。決して無駄にはなってないから」

 と何が大丈夫なのか良く解らない返答が返ってくる。

 まだ別の畑にするとかなら解るんだけどね…。舗装した道路に栄養は関係ないじゃん。

 まあ、報酬の希少な種や苗に色を付けてくれるそうなので、グッと我慢した。

 そんなここ数日のやり取りを回想しつつ、遂に山の麓に到達した。

 後はホーム中心に、綺麗な円になる様整えるだけだ。

 そして夕飯後には、環状牧草地帯が完成した。

「ご苦労様です。いやはや…よくぞここまで開墾しましたね」

 ホームの展望台から牧草地を一望。己の力作に感動を覚える。

「では約束の種をどうぞ」

 報酬は、苗を辞退してその分薬草の種を多めに貰う。

「それで追加の報酬ですがどうしますか?」

「そうだな~…寧ろ何が出来る?」

 直ぐには思いつかないので、ボールを投げてみる。

「色々出来ますよ?物でも、設備の改修でも、能力の付与でも」

「設備の改修?」

「ええ、貴方方の会社の設備を、我がハイエルフ水の一族の技術でより優れた設備へと変えて見せます」

 凄そうだけど…良く解らないな。

「そうですね…シンプルに良い物が作れる時が有る様になると思っていただければ良いかと」

「へ~…ならそれでお願いしようかな、恩恵も広そうだし」

「分かりました。では次にお邪魔した時にでも。ああ、一応補足しますと、ここで設備にハイエル…水エルフの技術を取り入れたからといって、今後他の技術を入れれなくなるとか、そういう制約は無いのでご安心ください」

 うん。確かに安心できる話だ。


 開墾も終了し、シーラからの報酬も受け取り、これまた復興に一段落着いた。

 まあ、雨量の調整とかまだまだ時間は掛かるだろうけどね。

「さて、後は時間の問題だから、改めて探検でもしてみようか」

 ホームから出て適当な方向に向けて移動する。

 今なら山に展望台と、目印が有るので多少の遠出は問題ない。

 そうして暫く走り続けると、これまで見てきた中で最大級のクレーターを発見。

 最近の雨の影響か、遠目に微かな水溜まりが見える。

「う…それにしても酷い匂いだな…」

 干からびていたヘドロが水を吸ってドロドロになったせいか、酷い悪臭がする。

 でもヘッドセットを外すと、途端に不快感が消えるんだから、ホント謎技術だわ。

 そんな泥沼を好奇心に促されるままに探索。

 少しして初見の魔獣と遭遇。ぱっと見は巨大な蛙だが、…その大きさがおかしい。

「うん。これは無理だ」

 推定20mは有りそうな蛙が、象を丸呑み。数秒で斃されてしまった。

 そんな蛙がにーさんしー…退却!!

 十分に距離が有ったので、無事に逃げ切る事が出来た。

「ここもいずれは制覇しなきゃな」

 別に何が有るって訳じゃなさそうだが、なんとなくそういう気分になってしまった。

 そのためにも金だ金。…取り敢えず一旦戻るか。

 新たなロケーションを発見し、ホームに戻ると見知らぬエルフを発見。

「…」

「…」

 お互い目が合ったが、どうすれば良いか分からずフリーズ

 ただ女性で、ご多分に漏れず美人だという事は判明した。

「ああ、ここに居たのね…あらテツさん。丁度良かったわ、この娘は火のハイエルフの族長で…」

「フレイアよ。よろしく助っ人さん」

 シーラの紹介を食い気味に引継ぎ謎のエルフことフレイアと自己紹介を済ます。

 その後は特に何も起こらず2人で何処かに出掛けて行った。

 俺も次の行き先を考えてたら、美雪が帰宅してきて亜紀と別宅に乗り込んできた。


「お待たせ!!」

「いや、待ってはいないけど」

「なら良かったわ」

「そういう意味じゃねーから!」

 と、茶番を演じてから、3人でパーティーを組んで[フォレスト]に向かった。

 現在、[エルフィン]に人が集中し、最近落ち着いて来た薬草の価格が再び上昇。

 折角なので、この機に一稼ぎしようとやって来た。

「お~ランタンの数が増えたから、胞子を防げる範囲が広くなったわね」

 ユキが少しずつ離れていき、その身で検証を行う。

 結果としては、順当に今までの2.5倍といったところか。

 これまで以上に俺から離れて動けるようになり、戦闘も楽になるだろう。

「そういえば…今気づいたんだが伐採する様になったんだな」

 今まで無暗に伐採が出来ないと放置されてきた大木が何本か消えていた。

「それはマザーツリーの発見と保護が進んだからさ」

『ヌメさん!!』

 以前胞子の嵐で、共闘した植物学者のヌメリコフと再会。

「見ての通り、マザーツリーを見極めて残せば十分自然は維持出来る。寧ろ日が当たって以前より生き生きしてる」

 どうやら[フォレスト]の本格的な開拓が始まる様だ。

「そうなると人が分散して何処も大変ですね」

 今の所動きの無い[アニマル]は兎も角。ダンジョン攻略中の[バグスター]、マザーツリーの選定が可能になった[フォレスト]、新たに降下作戦中の[エルフィン]、そして未だに全容が掴めない[アース]。

 これだけ攻略対象が多ければ、人も分散するってもんだ。

「そうなんだよ。マザーツリーを見分ける手順は確立したものの、それを活用して開拓する人が居ないんじゃなぁ…」

 そう言いながら、チラチラと目で訴えて来るヌメさん。

「まあ少しくらいなら手伝いますよ」

「そう来なくっちゃ!!では新たに目を付けてる区画が有るのでそこに向かおう」

 という事で、ヌメさんのアシスタントを務める事に。


「この辺りだな。ここ等の樹木の生育状態からこのうちのどれかがマザーツリーの筈だが…」

 と言いつつ周囲を示すが、大量に同じような木が生えてるので、全く分からん。

 まあ、深く考えたところで意味もなさそうなので、素直に護衛に徹する。

 ヌメさんから甘い匂いでもするのか、矢鱈と襲撃に遭う。

 これって、一時トレントが駆逐されてた時期でも、護衛クエスト時には敵が湧いてくるんだろうか?

 …って何ゲーム的都合に対して、マジに考察してんだ俺は。

 そんなくだらない事を考えつつ、暫くすると。

「コレだ!先ずは1本目…と」

「え?まだあんの?」

「勿論、取り敢えず今回のノルマは5本だから」

 …時間大丈夫かな…。

 まあ、結局は良い感じの時間にはノルマを達成し、ログアウトする事が出来た。


 翌日。

 早朝からログインし、ヌメさんのお手伝いをする。

 なんせ報酬で薬草の種をくれるからね、非常に美味しい仕事だ。

「今回は伐採の選定を行う。選定中の護衛を頼むよ」

 ヌメさんについて行き、昨夜マザーツリーを探した区画に到着した。

 どうやら、近々ここ等の伐採をする様だ。

「マザーツリーの選定が済んでるのに、態々伐採する木を選定するんですか?」

「ああ、流石にマザーツリーだけ残せば万事万端とはいかんからね」

 それもそうか、斜面なら土砂崩れとかも有るしな。

 そんなわけで、植物の襲撃を防ぎながら、調査は続く。

 護衛の片手間に作業を覗くと、伐採する木には印を付けている。

 ぱっと見何を基準に決めてるか分からんが、日当たりとかなんだろうな。

 そんな感じで伐採する木に目星を付け、次の場所へ向かう。


「今回もありがとう。はい薬草の種ね、また頼むよ」

 一仕事終え、ヌメさんと別れる。

「さて、薬草の相場でもチェックするか」

 [アース]のホームに戻り、ギルドで消耗品の相場を調べる。

(NPC売りの通常ポーションが一個1000円か…中々にお高い。そして種は一粒4200円…)

 そんな風に情報を更新する俺の背中を、馴染みの受付嬢がジーッと凝視している。

 まあ、無視して帰るんですけどね。

 だって種の購入自体めっきりしなくなったし、ギルドに卸すだけ損だもん。

 まだ、少しの手間賃で、栽培代行なら受けてもいいけどねー?

 それは無名のカンパニーじゃ絶対にありえないし、土台無理な話だ。

 そんなわけで熱い視線をスルーし、PAに帰還した。


「お、リーダーお帰り」

 PAに戻ると、マッドがシーラの改修作業を眺めていた。

 マッドが俺の代わりに、詳しい説明を受けたそうなので、礼を言っておく。

 程なくして作業が終わり、シーラが声を掛けて来る。

「お待たせしました。あらテツさんこんにちは」

 早く設備を使いたくてうずうずしてるマッドの代わりに、シーラの相手をする。

「ところでテツさん。貴方つけられていますよ。それも公的機関から」

「ああ…多分薬草関係だな。まあどうしようも無いから無視するよ」

「そうですか。もし何かされたら一声かけて下さいね。良きに計らいますよ?」

「それは心強い、もしもの時はお願いします」

 お水を大量に持って、シーラは帰っていった。


 休憩後、今度はサチと[バグスター]のダンジョンに向かう。

「最近<まきびし>が有効な敵が限られてきてね…その点蟲は単純だから良いわ」

「一度着地すれば超強いのにな」

「ねー、今じゃその<まきびし>の着地が妨害されるからね~」

 まあ、元々真正面から仕掛ける様なビルドじゃないんだから、そりゃそうだろうと思うが、特化してるサチにとっては死活問題だよな。

「ふと思ったんだが、<まきびし>の耐久力もパラメータ依存で上がんないの?」

「勿論上がるわよ。有志の検証では[生命]の0.1%加算されるらしいわよ。あ、当然防御力なんて存在しないからね」

「1000で1か…しかも紙装甲…」

 やっぱ、本来は闇討ちで使うものだな。

 さて、現地に到着したので早速潜り始める。

 取り敢えず2人で行ける限界までという事で、道行く人達と適度に協力しつつ進む。

「しかしエッグイ戦法だな」

「そうね、まるでスパイクシールドだわ」

 俺が設置した畑にばら撒かれた<まきびし>。

 四方をボロの柵に囲まれ、案山子が4体も設置された畑に大量のトゲトゲ。

 リアルでこんな光景に遭遇したら素通りは不可能だろう。

 そんなシュールな光景に反し、近寄る蟲が急激に衰弱して死に至る様はかなりキテル。

 そんな感じで蟲をしゃぶってご満悦なサチだったが…。

「ああ、また着地前に壊された…」

 ダンジョンを調子よく進んでいき、別段蟲の行動が変わったわけでは無いのだが、攻撃に見えない判定が加わり範囲攻撃化し、<まきびし>が機能し始める前に巻き込まれて破壊されてしまう。

 さっきまでは、蟲に近づかれる前に撒いておけばよかったのだが、ダンジョンを進めば進む程リーチと範囲が広がり、遂には<まきびし>の範囲外から破壊されてしまうようになった。

「うーん…やっぱ攻めには向かないのかな…」

「状況次第だろ。壁も貫通するんだから、使い道は幾らでもあると思うが」

「そうね、例えば何処で?」

「え!?…地底湖ダンジョンのフジツボゾーンとか…」

「限定的過ぎる!!しかもその場合マサ君の方がずっと効率が良いじゃない」

「サチ。自分のビルドを信じなくてどうする?」

 この一言で丸め込む事は当然出来なかった。まあ使えるシチュエーションは今後幾らでも増えていくだろう。


 [バグスター]から帰還し、クラフトに夢中なマッドに声を掛ける。

「設備はどうだ?良い物が出来る時が有る様な説明を受けたんだが」

「…そうだな…その認識で良いんだが…確率がおよそ5%と低いんだ…」

 5%…20回に1回位質が上がる感じか。

 作業に一段落着いたマッドに、丁度インしてきたサーモンを加え、4人で出撃した。

「お~、道が出来上がってるな」

 [フォレスト]へ跳び、様変わりした光景にサーモンが感心する。

 伐採が進み、土が剥き出しとはいえ道が出来上がり、格段に移動しやすくなった。

 更に、以前では考えられなかった程日当たりも良くなり、ここが未開拓の危険な惑星でなければ、森林浴にピッタリなロケーションだ。

「薬草狩りの前にちょっと検証を」

 ホームの傍で、日当たりのいい場所を開墾。

「フム…原木畑から普通の畑に変わったな」

 お次はマザーツリーと思しき木の根元(日陰)を開墾。

「こちらは予想通り原木畑になると…」

 検証を済ませ、4人でトレントを狙い彷徨う。

 ここ最近人がめっきり減っていた[フォレスト]だが、今はぽつぽつとだが人を見かける。

「見た感じ<ヒール>系を使わない人が殆どの様ね」

 俺ら以外に、トレント狩りをしてる連中を観察していたサチが、このように分析。

「…ヒーラーは無茶しなければ回復は自前で済むからな…」

「ポーションは隙も少ないからな、戦士系なら絶対にストックしておきたいしな」

 そんな感じで、少しずつ賑わいを取り戻しつつある[フォレスト]で、薬草狩りに勤しむ。


 薬草狩りから一時間程経ち、手付かずの場所を散策中に寄生されたマザーツリーを発見。只今絶賛防衛中。

 と言っても激戦という程でもなく、周囲を畑で囲み、サチが<まきびし>を撒いて、サーモンがオークとコボルドを突っ込ませるだけで終わりそうだ。

 程なくして、オークが寄生していた巨大なラフレシアを狩り、決着が付いた。

 本来だったら臭くて近寄れないラフレシアを、従魔に処理させたので、損耗は0で済んだ。

「やっぱ従魔は動きを指示できるのが大きいな」

「使い魔だと運だもんな」

 適当に目に付いた敵と交戦する使い魔と違い指示が出せる従魔は、「向こうに行って敵を見つけたら戦え」といった感じの命令が出せるので、魔法の射程外や弓や銃の射線外でも攻撃が出来るので、護衛しながらの討伐戦では無類の強さを発揮する。

 尤も。指示を出せるだけで、従ってくれるかは、従魔次第だが。

 さて、マザーツリーも守れ、薬草も十分集まったので帰還するか。


 PAに帰還後、資金が十分に溜まってたので、Lv上げを敢行。

 覚醒4回転生9回から覚醒6回転生9回に上げ、因子は[獣人]と[吸血鬼]、パラメータは[幸運]を2回覚醒させた。

 その他の因子やパラメータはそのまま。スキルも同じ構成だ。

 これで[生命]が691480まで上昇。[死への免疫]込みで、[生への執着]が発動するのにLPが約11万7千まで減れば良い事になった。そしてその場合の[生命]は約2千6百万に跳ね上がる。

「その状態の使い魔はどんだけ堅くなるのか検証するか」

 程よい難度を求め、地底湖に向かう。

 道中アッシー一族を素通りし、干潟地帯へ行き、使い魔を引き剥がしながらなんとかLPを減らす。

「おお~、蜂ですら全然やられないな」

 もう少し掘り下げる為、先の岩礁地帯へ向かう。だが殆どの攻撃を豚が吸うので検証が困難だったので、仕方なく引き返し、アッシーを使う。

 先人が頑張って設置した目印を頼りに、豚をブレスの射程内に誘導。

「ピギィーーー!!」

 豚が範囲内に入った瞬間、おじいちゃんおばあちゃんのブレスが飛んできて豚に命中。

 単発式の弱いブレスだったからか、見事に二発を耐えきって見せた豚。

 偶々近くで見てた人が「豚SUGEEEEEEE!!」と叫んでいた。

 その後も頑張って豚を誘導し、[生命]26M越えで防御パラメータ計5kなら、祖父母の弱ブレスなら6発は耐えれることが判明した。

 中々の結果に気分が高まり、更に掘り下げにいく。

「どうせ大した戦利品も無いし、特攻してみるか」

 特攻と言っても、流石に真正面からでは厳しいので、先ずは端に寄るとしよう。

 周囲を見ると、ややではあるが右側にに人が多いので、左に向かう。

 壁沿いに移動し、無事ブレスに射抜かれる事なく左端に到着。

 さて、何処まで進めるかな?


 左端に引っ付き、使い魔がy軸線状で俺よりアッシー寄りに居るように調整。

 これで少なくと、俺より先に使い魔が被弾するはずだ。

「良し行くか」

 意を決し前進を開始。先ずは水際を目指す。

 数秒進み、祖父母の射程内に入りブレスが飛んでくる。

 これは問題なく防げると分かってるので、そのまま前進しようと思ったが…。

(ん?デカいのの片っぽが居ない…?まさか!!)

 嫌な予感がして全力で後退。直後、進路上に消えていた片割れが水中から浮上。直前まで俺が居た場所に強烈なブレスが浴びせられた。

「成程、どの道突破するにはガチンコ必須って訳か」

 これで手詰まりかと思えばそうでは無く、大きな収穫が有った。

「[速度]7kも有れば、水中から浮上してのブレスは逃げ切れるのは大きいな」

 以上を踏まえて、堅さ確認と並行してアッシーのパターン解析に入る。

 先ずは射程重視の弱ブレスを撃ってくる距離を測る。

 恐ろしい程の爆音が響き渡るが、豚がその全てを受ける。

 そしてボーダーラインを割り出し、そこでテケテケとラインを割ったり戻ったりを繰り返す。

 何度も不発になるのが面白くて、煽りも込めて暫く擦ってたら発狂モード?に入り攻撃が激化。

 さっきまで球体のエネルギー弾だったブレスが、収束レーザーの様な見た目に変化。凄い勢いでチャーシューを量産する。

 幸い、これにも豚の高い耐久力と広い当たり判定、スタミナの高速回復に因るリスポンで凌ぎ、何とか射程外に退避出来た。


 あれから射程外で待機したが、元の状態には戻らなかったので、腹を括って再開。

「うーん。プレイヤーの行動で徐々に本領発揮するタイプなんだろうけど…射程際を使った煽りに発狂するとかどういう仕組みなんだか」

 もしAIがそういうのを理解して、リアクションを取ってくれるなら、面白い攻略法とか出てきそうだな。

「まあ、今は検証を済ませちゃうか」

 待機中に量産したエノキで、物々交換して手に入れた食料も有るので、ここからは[ドッペルゲンガー]もガンガン使っていく。

 少し話が逸れるが、アッシーが発狂したからか、現在このエリアの難易度がとんでもない事になてるようで、エノキの質が凄い事に。

 [選別された最高級のエノキ]:煮ても焼いても炒めても最高なエノキ。満腹度10%回復。

 という、菌類の癖に腹が膨れる謎の性能に昇華された。

 ただ、これはブレスの射程内で採れたものなので、決して簡単には量産出来ない事を留意して貰いたい。

 そしてこの交易で検証仲間も出来たので、彼らと協力して事に当たる。

 さて、本題に戻るとしますか。

次も二週間で行けるよう頑張ります。

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