第二十二話
~前回までのあらすじ~
再誕で弱体化しながらも、資金集めに奔走してる中ハイエルフのシーラと出会う。
故郷の復興に協力してくれと言う要請に応え、惑星再生プロジェクトが始まった。
ホームから出て、目に飛び込んできた来た光景に絶句する。
「…驚きましたでしょう?」
大地は荒れ、川は干上がり、大気は濁り、そこら中にクレーターが存在する。
「魔素汚染により魔物の大量発生。その後の科学に依る環境破壊…それがこの惑星の今を造り上げました…」
「これは…何から手を着ければ良いのやら…」
「取り敢えずはホームを盤石の状態にするのが先決ですが、それには先立つものが要ります…つまり金策を行います」
「えっと?」
「狩りです。野放しに出来ない危険な魔獣を間引き、その素材を資金に換えます」
無駄な殺生云々はどこ行った?
「言いたい事は分ります。ですがあまりに強力な魔獣は、放っておけば必ず後の障害になります。ここは割り切って下さい」
うん、まあそれで良いなら否定はしないよ?
「ここは?」
シーラに先導され、一際巨大なクレーターが姿を現す。
「ここに強力な魔獣が居ます。戦闘の準備を」
その直後、クレーターから何かが飛び出して来た。
「[ハングリータイガー]です。食い意地が張ってる厄介な魔獣です」
名前の通り、空腹なのかガリガリに痩せている虎の様な魔物。
しかし、その体格に見合わない程の敏捷性を誇り、虎視眈々とこちらの隙を伺うハングリータイガー。
「[ドッペルゲンガー]」
速攻を掛ける為ドッペルを発動し、一気に肉薄。
流石に、突然の増殖と大群が押し寄せる迫力に気圧されたのか、動きが鈍る虎。
そこへ、シーラが魔法を行使して虎の脚を凍結。
ユキの<クラスティオーブ>が直撃。
だが、大ダメージこそ受けた様だが、未だ健在の虎はすぐさま反撃に移る。
「はい、迎撃っと」
マサがカウンターで弾き返し、ユキの<アイススピア>とシーラの<アイススピア>の様な魔法が炸裂し、決着が付いた。
「流石です。再誕ご間もないというのにこれほどの成果を挙げるとは」
どうやら、俺らの能力は及第点は超えたみたい。
「これだけでも結構な収入になるのですが…まだイケますか?」
「問題ない」
「では、今度は温厚な魔獣の様子を確認しに行きましょう」
再び先導され、辛うじて木の原型をとどめているものが、群生してる林に来た。
「か、可愛い~~!!」
そこには、角の生えた白いポニー、ダックスフンド、リスなどが居た。
ユキがメロメロになりながら、フラフラと近づいていく。
「あ、ユキさん。そんなに近づくと…」
「ぐ!?」
いよいよ手が触れるという距離に入った瞬間、ポニーの角がユキの鳩尾に吸い込まれた。
数分後。
「いや~惜しかったですね~ユキ選手。今のお気持ちは」
リスポンして此処まで来たユキを煽る。
「痛!!」
隣に座る美雪に足の甲を踏まれ、大ダメージを受けた。
「良いですか?彼らはその愛らしい見た目とは裏腹に、攻撃能力は一級品です。くれぐれも魔獣だという事をお忘れずに」
「お手数掛けますた…」
まあポニー版ユニコーンだもんな、そらリアルでポニーをペットにしてりゃ、ウズウズして仕方ないだろう。
「さて、お次は…」
何やら杖を掲げながら、端末を注視するシーラ。
「…彼方に魔獣の群れが居ますね。様子を見に行きましょう」
どうやらソナーの様な事をしていたらしい。
「む、どうやら駆除の必要がある魔獣ですね」
反応を頼りに現地に辿り着くと、巨大な蝸牛がホームを目指していた。
「放置すると、建築物に使われている無機物を食い尽くされます」
という事で、駆除を開始し、数分で片が付いた。
どうやらホーム付近に限れば、ここ[エルフィン]の難易度は、ダンジョンの序盤位の様だ。
「お、皆も来たんだな」
ホームに戻ると、職人とアコ以外の残りメンバーも再誕を済ませ、[エルフィン]に来ていた。
そういえば今日は祝日で、ここの事はメールで知らせてるからこれたのか。
俺ら4人は[アース]のホームに戻るので、入れ替わる形でバトンタッチした。
PAに戻り、魔獣の素材を職人衆に渡す。
「これは良い素材ですね…直ぐに加工に取り掛かります」
パーティーを解散し、各々行動を開始。
俺は有り金を持って教会へ行き、2回転生させLv100にした。
因子は[養豚家]と[パイパー]を選択し、ステータスはこうなった。
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神²]。 ★。 ☆⁶。
LP:39655 HP:1400 STA:1400 COST:1420/2240 残りポイント0
パラメータ:[生命]39655 [持久]1400 [積載]2240 [体力]1400 [魔力]1400 [制圧]1400 [幸運★]2800 [速度]1400 [傀儡]1400 [観察]1400
因子:[獣人★] [吸血鬼³] [スライム] [聖人] [養豚家] [パイパー]
スキル:<速度上昇>Lv110 <親子蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50 <血の海>Lv110 <野生の力>Lv110 <代行の剣>Lv50 <代行の盾>Lv50 <生存本能>Lv110 <養豚>Lv50 <過剰肥育>Lv50 <群鼠>Lv50 <誘導>Lv110 <圧制>Lv110 <殲滅>Lv110 <煽動>Lv110 <見せしめ>Lv110 <積載増加>Lv60
装備:[シャツ] [ズボン] [阿修羅の骸] [50フリーホルダー] [ランタン] [ランタン]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
ギフト:[生への執着]
うん、豚も復活したし[パイパー]で移動速度も補強。
さらに[制圧]のスキルを全てLv110に上げ、<積載増加>でコストを増やし、一気に強さが増したな。
…代わりに残りポイントは0になってしまったが…
しかし<積載増加>…今まではカンスト後の検証用にポイントを残す為。そもそもコストがカツカツになる事態が少なかった為。低Lv時には効果が低い為。これまでは意識しても直ぐに存在を忘れていたが…。
ここに来てスキルLv1毎に[積載]を1%上昇させるのは、強力だと気が付かされた。
やっぱ現状の取得可能なスキルは、しっかりと確認する癖をつけるべきだな、
そんな今後への反省を胸に、俺は商業地区で斧を購入し、森に突撃。
復活してる薬草と、木のシンボルを片っ端から伐採する。
二時間後。
「これで中層までは採り尽くしたな」
何度もホームと往復し、薬草と木のシンボルを枯渇させた。
「お次は深層だが…」
深層に踏み込み、採取と伐採をしながら、己の地力を確かめる。
おあつらえ向きに熊が群れで襲って来た。が、あっさりと殲滅。
豚が活躍したのは勿論だが、[傀儡]でかなり堅くなっている鼠が、[制圧]の効果とそのスキルで熊を疲弊させ、なんと鼠8匹だけで熊1頭を仕留めて見せた。
…これは[養蜂家]が恐ろしい因子に化けてしまうな。
その時を楽しみにしながら、深層も問題ない事が判り、ここでも資源を食らい尽くす。
最深部は…うん。ちょっと意味不明なレベルで危険度が上がっていて無理だった。
大蛇が体長20m以上有ったような?流石に目を疑ったが、変化が無かったので逃げて来た。
最深部から逃げ戻り、今度はスコップを買って、久々の渓谷へ。
此処は依然と然程難度は変わって無かったので、先ずは上流から攻める。
手当たり次第シンボルをスコップで穿り採取。
上流が済めば、今度は下流を同じようにさらう。
PAに戻り西の小山に向かい、資源を取り尽くす。
次は樹海を攻め、その次はと近場の資源を根こそぎ集め…。
夕飯後、職人衆の加工済み品の売り上げを確認。
中々良い感じで金が貯まってる様だ。
これで近場で出来る事も無くなったので、湿地帯へ向かい、一帯の資源を枯渇させた。
干潟に居たシーラの分体に声を掛け、潜水艦に案内してもらう。
そのまま[エルフィン]に跳び、活動中の仲間に合流した。
「今はサーモンとカメキチさんだけなんだ」
「他は皆飯落ちだ」
「俺は既に済ませました」
取り敢えず3人でパーティーを組んで、魔獣を間引きに向かった。
ちなみにシーラは休憩中だそうだ。
取り敢えず、好戦的な魔獣だけ仕留める為、当ても無く荒野を彷徨う。
「そういえば、カメキチさんが普通に歩いてるの初めて見るかも」
勿論移動速度はもっそ遅いが。
「ええ、再誕したので、まだビルドの途上ですから」
「アレか、中途半端な構成だと匍匐する意味がないのか」
「そうなんですよ、寧ろ却って弱点を晒すだけになるんで、暫くは立って戦いますよ」
いつもゾンビの様に這ってる姿しか知らないから、なんか新鮮だ。
そんな話をする間に、襲って来た野犬の群れを迎え撃つ。
目が怪しく光、涎をまき散らす様は異様だ。
「これはもう手遅れだろ。始末するぞ」
「「おう!」」
3人で使い魔と共に前に出て揉みくちゃになる。
密集する事で[制圧]の効果が直ぐに現れ、一分掛らずに殲滅できた。
その後も彷徨い続け、魔獣を間引き続けた。
ホームに戻り、シーラに活動報告を行う。
「ご苦労様です、良いペースで危険な魔獣が減っています」
再び魔獣退治に出掛けるが、今度はそれぞれソロで散る事に。
この方が効率が良いと判断した。一応すれ違えるように進路は所々被るように設定したが。
3人それぞれの方向に進み始め数分。また狂った野犬が現れた。
先程と違いソロなので、多少慎重に立ち回る。
それでも転生回数が増えた事で、かなり楽に戦闘を行なえている。
途中サーモンにカメキチとすれ違い、いつの間にか来ていたマサ、ユキ、ベルともすれ違った。
少しすると、職人衆以外も参加し、巡回ルートは徐々に広がり、仲間とすれ違う回数も増え、安全に駆除作業が行えている。
そのまま終日までホーム周辺をグルグル周り、魔獣の屍の山を築き上げた。
翌日。
午前中をピンチヒッターとして過ごし、午後は美雪と一緒にDIYにログイン。
昨日と比較して、ホーム内の景色が変化していた。
「おお!?なんかより要塞っぽくなったな」
「外壁も昨日より高くて丈夫そうになってるわ」
2人で変化したホームを眺めていると、シーラがやって来た。
「どうです?皆さんのご活躍により、空いた時間を使ってホームを改築しました」
「これも一人で?」
「ええ、皆さん方が入れ替わりで周囲を回ってくれるので、建築に専念出来ました」
なんというか、ハイエルフってのは超人なんだな。
「そういえば今更聞くが、何処までやれば復興した事になるんだ?」
復興って最盛期並みかそれ以上だもんな…、それって可能なのか?
「そうですね、取り敢えずはホームの完全なる要塞化と、周囲の緑地化の完了を目途に見ています。その先は…まあ細々とやっていきますよ」
成程。一応段階を踏んでいて、俺達は周囲の安全と足掛かりを作れば良いと。
具体的な目標も定まり、今日も魔獣の駆除をする。
それと並行して、シーラから緑地化の一環として、水源造りを依頼された。
「この装置をクレーターに設置し、完了まで守ってください」
と何やら巨大な柱に幾つもの吸気口と、ファンが付いてる装置を受け取る。
ユキと2人で手近なクレーターに向かい、装置を設置した。
「うわ!?すんごい煩いな!!」
ファンが回り、コンプレッサーの駆動音が周囲に響き渡る。
当然その音に引き寄せられた、魔獣との戦闘に発展する。
暫く魔獣と戯れつつ、経過を見ていると、徐々にクレーターに水が溜まっていく。
そして水がある程度溜まると装置が静音状態になり、クエストが完了した。
ホームに戻り、報告すると。
「ご苦労様です。では次をお願いします」
と、同じ装置を渡され追い出された。
その時に、置いて来た装置は良いのかと聞くと、静かに動く分には、壊されることは無いだろうとの事だ。
その後も同じようにクレーターに装置を設置し、守り切る作業を繰り返す。
夕飯前には十ヶ所に設置出来、シーラが凄い喜んでいた。
夕方になり、アコもインしてきて3人で造水装置を設置して回る。
他にもラーク達3人組や、サチ ベッタラ、サーモンの3人も別の場所で行動してるので、結構ハイペースで水場が増えている。
「これで近隣のクレーターは全て水源になりましたね。では水源の傍にこれを植えて下さい」
今度は木の苗をを渡され、根付くまで守るように言われ追い出される。
造水装置の時と同じ手順で、苗を植えて一定時間防衛する。
苗を狙ってか、鹿の魔獣が襲ってくるが余裕を持って殲滅。
守り切った苗は急成長し、成木のなって土壌に栄養を与えてる様だ。
ホームとクレーターを、何度も往復して同じ事を繰り返す。
「これで緑地課の足掛かりは出来ましたね。これでスタート地点に立てましたね」
どうやらここからが本番で、この仕込んだ環境を如何に維持するかが大事だそうだ。
「造水装置の破壊や樹木の食害…脅威は一つも取り除かれてません。寧ろここからが魔獣との根気比べと言えましょう」
こうして復興への第一ステップが完了し、この日はログアウトした。
土曜の今日は朝っぱらからゲーム三昧だ。
昨夜ログアウトした潜水艦から[アース]のホームに戻り、職人に素材を渡す。
ついでに消耗品を目一杯補充し、再び潜水艦に向かい、[エルフィン]に跳ぶ。
ちなみにユキとアコはそれぞれ用事で留守だ。
「おはよう。状況はどうかな?」
「おはようございます。極めて良好ですよ。水源では順調に雑草も増えてます」
シーラが見回りをお願いしてきたので、縄張りの視察に赴く。
水源を順に巡り、温厚な魔獣が、少しずつ縄張りを移してる事が窺える。ただ…。
「ああ…一極集中しちゃうとこうなるわな…」
鹿が木を食み、馬や牛の魔獣が草を喰いつくし、造水装置を破壊した場所も出てきている。
まあ、これは想定済みの事態で、対処法も完備している。
「えーっと…これで良いのかな?」
煙を吹いている装置に近づき、ヤモリの様なロボットを装置に取り付ける。
これは自動修理ロボで、これで装置を修理するのだ。
これも、興味本位で食べたり壊そうとする魔獣を追い払って守る事数分。修理が完了したのでロボを回収し、次の水源へ。
二時間ほどで全ての水源を回り、シーラに報告。
「やはり自然の循環が出来上がるまでは、完全放置とはいきませんか」
「そりゃそうだ。そもそも川が干上がってるんだから、造水装置が壊れた時点で衰退確定なんだから、端から破綻してるだろ」
「仰る通りです。…そうですね。もう少ししたら山を手配しなければなりませんね」
山を手配?条件に有った山を探すのか?難しい言い回しだな。
小休止後。再びログインすると。
「お待ちしておりました。さあ、山を作りに行きますよ」
うん…手配ね、そう言う事ね。
「どうやって?」
「そこは魔法と科学の力でチャチャッと」
さいですか。
「マジで滅茶苦茶だな」
「なあ」
横でマサが呟くので同意する。
「ふう…皆さん誤解がある様ですが、再誕前のあなた方なら、今の私と大差ない実力の豪傑。戦闘面だけなら並外れてるわけではありませんよ」
つまり、戦闘面で一番強かった俺らと互角な上に、ビルディングも超一流と…。うん。
俺らの疑わしい視線に居心地が悪いのか、急いで出発を促すシーラ。
皆と相談し、俺とベッタラとサーモンが山造りに同行。それ以外は巡回に回った。
「さて、この辺で調査してみましょうか…、…、駄目ですね。地盤が弱い上に水害にも弱そうですね」
何度も場所を変え、調査をする事数十分。
「ここにしましょう。ここなら標高数千mにも耐えられるし、水にも強いでしょう」
更に数十分周辺を調査し、最早ここがどこだか分からない程ホームから離れ。
「うん。ここを中心に山を造りましょう」
そう言い、シーラが次から次へと大量の岩、土や木材などを取り出してゆく。
途中、魔法でゴーレムを数十体程呼び出し、山造りを指示。
その護衛を俺達に任せ、再び建材を取りだす作業に戻っていった。
一体どれ程の[積載]が有れば、これほどの建材を持ち運べるのか…。
シーラの底知れぬステータスに慄きながらも、護衛を開始した。
「はあ…はあ…しんど過ぎる…」
ゴーレムが作業を開始して早々。これまでとは比較にならない程、凶悪な魔獣が攻めて来る。
これは流石に流しでは無理だと悟り、[ドッペルゲンガー]を発動し、迎え撃つ。
超級試験の時に、ゾンビ姿を見たキマイラ。
闘技場のイベントで遭遇したアースドラゴン。
こいつ等が一定間隔で襲ってくるのだ。今の状態だとかなりヘビーな相手だ。
幸い一度に1体だけなので、囲んで[制圧]で衰弱させれば良いのだが、やはり相手が強くなる程、弱体化には時間が掛かる。
シーラは未だにせっせと建材を取り出しているし、当てにならない。
チョット戦力の配分をミスったかもな…。
「お待たせ」
流石に辛いので、増援を要請し、サチとカメキチさんが来てくれた。
お陰で随分と負担は減り、魔獣を狩る事で、恐らく相当に希少な素材が大量に手に入った。
「今はこれくらいにしましょう。ホームに戻って英気を養いましょう」
ゴーレムを送還し、建材を結界で囲み、ホームへ帰還した。
昼食後、職人へアースドラゴンやキマイラの素材を届ける。
「おお~これは削り甲斐が有りますね」
「上質なレザーです」
「ヒヒ…中々上等な体液だぜ…」
「これは染め甲斐が有りそうですね」
どれも職人の眼鏡に適ったようで、創作意欲が否が応でもましたみたいだ。
売上金を確認…俺の取り分は300万程か。
これなら2度目の覚醒は出来るが、ちょっとそれじゃ物足りないか。
どうせならもう一度周辺のシンボルが復活して、それらを枯渇させてからでも良いな。
ということで、Lv上げはもう少しだけお預けしておこう。
そういえば再誕後で、まだ手付かず薬草の群生地が有ったと思い出した。
渓谷の橋は渡らずに渓流を下る。
下流から北側に登れば、以前コボルドに絡まれた場所に到着。
いつもの通り、資源を根こそぎ集めていく。
ついでに今まで踏み込んだ事のない、奥地に進んでみる。
…これはダメだ。熊や鹿が相当強くて、現状では何をしても打破は不可能だ。
まあいい、次のシンボル復活とLv上げの暁には、ここ等一帯を蹂躙してやろう。
そうリベンジを誓い、急いで逃げ帰った。
舞台は再び[エルフィン]へ戻る。
引き続き山を積むというので、先程の教訓を活かし、ポーションは程々に食料を沢山持ち込む。
これで[ドッペルゲンガー]を多用出来るので、大分楽になるだろう。
人数も、先程の4人に加え、マサ、ベル、ラーク、ワイド、ショーも加え、10人体制で臨む。
目的地に到着し、シーラは先程同様に、建材の取り出しで手いっぱいの様だ。
…マジでなんちゃらポケットみたいな容量だな。
早速襲って来たアースドラゴンを料理する。
流石にこれだけの人数が居れば負担も少ない…って最初は思ったが。
「成程、人が増えれば襲撃もきつくなると」
ゲーム的補正なのか、楽には楽だが、頻度が増した分常に張り詰める空気が疲労を誘う。
しかし…こんもり土が盛られている、山予定地を見る。
確かに驚異的なペースで、土台が出来上がってはいるが、何時になったら山になるんだコレ?
そんな俺達の考えを、知ってか知らずかシーラが。
「山の完成には、皆さんが心配する程の時間は掛かりませんよ。寧ろ完成後の管理が大変なので、覚悟しておいてくださいね」
との事だ。つまり、この状態から目を離した隙にレベルで一気に山になっていくと…。
「本当に目を離した隙にだったな…」
巨大な鷲が数羽飛来し、そこへキマイラが5頭も押し寄せ、阿鼻叫喚の地獄を命辛々凌ぎ、ふと山を見ると。なんというか…そう!!発酵したパン生地の様になっていた。
「取り敢えず、一次発酵は完了です。二次発酵三次発光も頑張りましょう」
と、シーラが追い打ちを掛けるように、意味不明な事言い、俺達は考えるのを止めた。
そんな発酵した土の塊が、落ち着いたのか、先程よりは萎み小さくなった。
それでもただ土を盛っていた状態よりは数十倍にも大きくなってるので、確かにこれが建築物としてしっかりと残留するなら、山を造るというのは造作もない事かもしれない。
暫くすると、シーラが農薬散布機みたいなものを背負い、山もどきに何やら薬品を撒いていく。
それからゴーレムたちに新たな指示を出し、山の周りを岩や木材で土留めの様な囲いを作る。
そろそろ夕飯時だなと思っていたら、再び山に変化が訪れ…。
「今度は液状化か?」
スライムの様なねばねばした状態になった土。先程のパン生地状態より更に緩い感じだ。
「良い感じでね。一旦土を休ませるので、戻りましょう」
という事で、ホームに戻りログアウトした。
夕食後、再ログインし、現場に向かう。
既に先程のメンツが作業をしていたので合流した。
「では三次発酵に入ります」
寝かした事で、ねばねばだった土が、葛餅の様な張りと弾力を伴い、ホヨンホヨンと揺れる。
其処へシーラが薬品を掛けると、直ぐ様変化が現れた。
「おおおお!?なんだこれ!?」
まるでカルメラ焼きの様に、ブワーッと膨らむ土の生地。
その膨張率は想像を遥かに超えた。膨張した生地は、全体の1%にも満たないが、たったそれだけの部分でも軽く数十m程の標高の山になった。
「さあ、この騒ぎに魔獣が引き寄せられてきます。頑張って下さいね」
シーラの宣言通り、突如として遠目にも解る地形の変化に、大量の魔獣が山を目指して押し寄せて来る。
かなり厳しい防衛戦だったが、用事が済み帰宅したユキとアコが途中参加した事で、戦況を安定化せる事が出来た。
その甲斐あって、シーラが薬品の散布を終え、特大のカルメラ焼き改め、山の様な物体が誕生した。
ただその見た目は、山と言うには少々歪で、人一人すっぽり収まる穴ぼこが無数に存在する、溶岩石の塊の様な山だった。
「これで基礎部分が完成しました。ここからは空白に土を充填していきます」
新たな指示を受けたゴーレム達が、大量の土を抱え、スカスカの穴ぼこに土を注いでいく。
これを終日まで続け、何とか麓の穴ぼこは、全て土で塞ぐ事が出来た。
こうしないと、命を育む良い山にはならず、何も始まらないとの事だ。
にわたまになるが、良い山が有るから良い海が出来上がり、良い海が有れば良い山が出来る。その循環の第一歩として、滋養に満ちた水づくりをの為の、山造りだとシーラは言った。
素晴らしい考えだと思う。命は海から始まったと言われるが、生物は等しく大地の恵みで活かされている。山の存在は偉大だと改めて思い知った一日だった。
翌朝。
ゲームを起動すると、アップデートの告知が来ていた。
内容は細々とした調整と、ライセンスのプライマリとセカンダリの実装だった。
ライセンスのプライマリとは、従来のライセンス制の延長で、早い話本命のライセンスの事を言う。
そして今度実装される、セカンダリライセンスは、もう1個ライセンスを取得できるようになるが、セカンダリライセンスは、プライマリよりは効果が低くなるという。
これはかなり嬉しい追加要素だ。
ライセンスもビルドを形作る重要な要素の1つだ。
それを、効果が下がるとはいえ、もう1つ取得出来るようになるというのは、かなり大きな変化だと言える。
アプデは四日後に行われるというので、楽しみに待っていよう。
確認を終え、ログイン。
今日は美雪も亜紀も横でプレイ中だ。
先ずは素材の受け渡しをしに行くか。
職人衆に会いに行き、魔獣の素材を受け渡す。
ついでに売上金を確認すると、魔獣の素材が相当に効いてるようで、1000万程の資金が貯まっていた。
「グフフ…うち以外では殆ど手に入らない素材だからな…笑いが止まらんな」
なんせ、アースドラゴンにキマイラ、大鷲の魔獣の素材だ。
しかも、これらの魔獣は[エルフィン]の比較的安全な地域の魔獣だ。
今後より危険な地域に赴き、そこで魔獣の素材を手に入れれば…。
さて、此処まで大金が手に入れば予定変更だ。
直ぐに転生と覚醒を重ねて、より効率アップを目指す。
という事で、教会とPAをなんども往復し、覚醒2回転生7回Lv100まで上げた。
ステータスはこのようになった。
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神²]。 ★²。 ☆⁷。
LP:113000 HP2400 STA:2400 COST:4450/5040 残りポイント50
パラメータ:[生命]113000 [持久]2400 [積載]5040 [体力]2400 [魔力]2400 [制圧]2400 [幸運★²]7200 [速度]2400 [傀儡]2400 [観察]2400
因子:[獣人★] [吸血鬼★] [養蜂家] [聖人] [養豚家] [パイパー] [農家²] [百姓²]
スキル:<速度上昇>Lv110 <親子蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50 <血の海>Lv110 <野生の力>Lv110 <代行の剣>Lv50 <代行の盾>Lv50 <生存本能>Lv110 <養豚>Lv50 <過剰肥育>Lv50 <群鼠>Lv50 <誘導>Lv110 <圧制>Lv110 <殲滅>Lv110 <煽動>Lv110 <見せしめ>Lv110 <百姓魂>Lv110 <鍬の一振り>Lv110 <品種改良>Lv110 <土壌改良>Lv110 <積載増加>Lv110 <魔導人形>Lv50 <ゴーレム使い>Lv50 <ブリキ兵1号>~4号Lv50 <養蜂>Lv110 <分蜂>Lv110
装備:[シャツ] [ズボン] [阿修羅の骸] [50フリーホルダー] [ランタン] [ランタン] [タングステン鋼の鍬] [試作型アンデッド殲滅用ヘルメット]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
ギフト:[生への執着]
再び[農家]と[百姓]を採用し、ポイントに余裕が出来たので<積載増加>をLv110に。
これでコストも大幅に余裕が出来たので、満を持してヘルメットを再装備。
使い魔も<魔導人形><ゴーレム使い><ブリキ兵1号>~4号をLv50。<養蜂>と<分蜂>をLv110で取得し、大幅なパワーアップを果たした。
本当は、ここに<体力上昇>や<体力増加>、<好反応>に<不死の眷属>を入れたかったが、ポイントが足らず、諦めた。
さて、どれ程強くなったか、試し切りといこうか。
[エルフィン]に向かい、シーラと合流。
「…これはまた短期間で随分と化けましたね…」
周囲を飛び回る208匹の蜜蜂達。良い羽音だろう?
早速山に向かい、穴埋め作業の護衛を始める。
並行し、畑を拵え作物を栽培。[ドッペルゲンガー]のリソース確保にも余念がない。
其処へアースドラゴンが突っ込んでくるが、相変わらず極悪な<ゴーレム使い>の引き寄せ+<魔導人形>のモルヒネ光線で、身動きが取れずに使い魔の餌食になった。
同様に、キマイラや大鷲も余裕で狩り、気分はアゲアゲ。
ユキにアコも合流し、少ししてマサにベルも加わり安全になったので、少し冒険をしてみる事に。
「それじゃ少し遠出してくるよ」
より強い魔獣を求め、山を目印にホームからぐんぐん遠ざかって行った。
そして僻地にて、恐ろしい魔獣に成す術もなく蹂躙され、死に戻りを果たした。
「いや~参ったね。[観察]が2400も有るのに、巨大なワームの息で使い魔が悉く[混乱]して戦力外。丸呑みされて消化されてしまった」
再びシーラ達と合流し、どんな目に遭ったかを報告する。
「今のテツさんでもそんな有様ですか…やはり惑星全体の復興となると、一筋縄ではいかぬようですね」
「そういえば、利権に食い込もうとする連中は?」
「その件でしたらもう大丈夫ですね。ホームは堅牢に改築し、水源も増やし山の完成も時間の問題。私が主導で行っている事業へはもう割り込みは出来ません」
但し、と繋がり。
「何れ復興の為に、[エルフィン]が大規模入植の対象になるでしょうから、その時に何処かに寄生するのではないかと。尤も大規模入植が始まれば、私達が使っているのとは別にホームが築かれるので、そう簡単には蜜は吸えないでしょう、そもそもの組織も別ですしね。私は何もしない老害に蜜を吸わせたたくないだけで、入植は大歓迎です」
うんうん。よっぽどハイエルフの長老筋ってのは屑なんだろうな。
「それでも少数で此処までやった実績が有るので、私の一族の派閥の発言権は相当に強いものになるので、皆さんの報酬に、この惑星での優遇措置も付帯しておくので、楽しみにしていて下さい」
そのまま午前中は護衛を続け、山の中腹辺りまでは土入れを完了した。
午後。
早々に頂上までの土入れを完了し、植林を開始する。
植えるのは落葉樹で、先ずは土の栄養向上を目指すそうだ。
土を盛った穴ぼこに苗木を植えていく。
植えた傍から、まるで早回しの如く急成長する苗木。
大木とはいかずとも、成木と言うには十分すぎる程に成長している。
山頂から渦を描きながら植林していき、山に青々しい若い葉が生え広がる。
作業中、鹿が木を狙い、その鹿を狼が付け狙う食物連鎖が発生。
これも目指す山の姿の一部なので、此方に手出しをしない限りスルー。
少しずつ山の上層が賑やかになり、麓からは数多くの魔獣が登山を始めていた。
「良い具合ですね。これなら予定より早く循環が始まるかもしれませんね」
大体一時間程で植林も終わり、俺達の携わる計画はいよいよ最終フェーズに入る。
「では仕上げの説明を始めます」
ホームに戻り、職人衆以外の全員が揃い、説明に耳を傾ける。
「現在この惑星に圧倒的に足りない資源は水です」
クッソ難しい話だったからチンプンカンプンなので端折るが、魔法を控え、化学が急成長した過程で、対消滅ドライブなる動力を開発。
その燃料に水が採用され、更にドライブの冷却にも水を利用。
その際に発生する水蒸気を更に燃料にする事で、[エルフィン]から水がどんどん減少。
これによりあらゆる用途の水が激減し、汚染が急激に進み死の星に。これが[エルフィン]滅亡の真実だという。
でも水素って資源として見るなら、最高峰の量…と言うか宇宙の殆どが水素と言われるから、それで水を生成すれば良いじゃんと思ったが…。
「そうですね…順序が違っていれば結果も違っていたかもしれません」
なんでも深刻な魔素汚染により、収集した水素から水を生成しても、汚染水にしかならず、濾過や浄化もお手上げだった様だ。
まあ、当時の[エルフィン]の科学レベルで浄化が出来てたら、そもそも魔素汚染なんて問題にならんもんなぁ…。
それに工業用水とか、ほんの少しの不純物でも製造ラインがお釈迦も珍しくないし…。
成程、魔素汚染の前に科学が発達してればって事か。
でもそれはたらればの話だし、深刻な魔素汚染を引き起こす位だ。先に科学が発展していても、恐らくは別の要因で同じ結末を迎えてただろう。
「仰る通りです。当時の我々は未熟すぎたのです…魔法も…化学も…舐めていたのです」
行き過ぎた技術は一歩間違えば破滅を招く…恐ろしい話だ。
「尤も、発展した科学…対消滅ドライブのお陰で様々な産業が成長したからこそ、我々は宇宙に活路を見出す事が出来たので、常に自戒を忘れずに、目を逸らしてはいけない過去ですね」
「話を本筋に戻しまして、圧倒的に足りない水。ここは手っ取り早く他所から持ち込もうと思います」
…うーんと…惑星規模で不足してる水を余所から?
「勿論不法な汲み上げ等はしませんよ。有料で水を買い上げるのです」
地道だなぁ…でも綺麗な水を復活させるなら…ってダメじゃん。魔素汚染を如何にかしないと。
「魔素汚染は良いのか?それを解決してからじゃないと」
「そこはまあ大丈夫でしょう。数千年経った今、大気の汚染は昔ほどではなく、土壌の汚染も地中深くに沈んでいるので、そうそう多量の魔素が飲料水に混ざる事は無いでしょう」
それに今の他種族の技術を取り入れた濾過装置を用いれば、魔素は問題無いとの事だ。
…その濾過装置がべらぼうに高い事は除けばだが。
まあなんにせよ、今からチマチマと造水装置と濾過装置で水を増やし、雨が降るの待っていたら、時間が掛かりすぎるので、手っ取り早く水を輸入する事にした。
「と言うわけでテツさん。お宅のカンパニーに1億投資します。これで井戸関連を大幅に増設改修して貰えますか?」
1億!?…でも会社のリソースが大丈夫かな…
「フム…今調べたところ、ギリギリ収まりそうですね…ただ今後の増築はかなり厳しそうですが…受けてくれると嬉しいのですが」
これは流石に一存では決めれないと思い、皆に目配せすると、好きにしてと言われ、職人衆にメッセージで聞いても同じだった。
まあ既に設備に関しては充実してるしな。ここ等で何かに特化するのも良いだろう。
「解った。その投資受ける事にするよ」
こうして一億もの投資を受け、会社の井戸関連を最高の物へ改修する。
「それでは参りましょう。老害たちとのごたごたも決着が着いたので、もうすぐ…あ、来ました。私の一族の者たちです」
ホームのテレポーター付近で、待っているとハイエルフが数人来て紹介された。
「この人は私の父です」
「紹介に与ったローレンスです。シーラの父です。娘お世話になっております」
「こちらは母です」
「娘がお世話になっております。母のエレノーラです」
「こちらは兄です」
「妹が世話になっている。兄のハンニバルだ」
「そしてこの方は私達の長であり、私の父型の祖父です」
「ハイエルフ族、水の族長ハイドライクだ。孫が世話になっている」
うーん、全員ヤバい程強いのがヒシヒシと伝わって来る。
特にシーラのお父さんのローレンスさん。再誕前の俺達全員で掛かって勝てるか分からん程の力を感じる。
一通り自己紹介を終え、俺達はシーラを会社へ連れて行く。
「どうぞ無名の我が社へ」
そういえばどうして無名の我が社に依頼してきたのだろうか。聞いてみると。
「そこが良いんですよ。柵が無いのでお互いに一切の妨害を受けませんでした。…受けてませんよね?」
「全く。ってか協力を仰ぐ相手次第じゃ、そんな事にもなり得たのね」
「ええ…何も利権と言うのは直接的なものだけでなく、相対的に自分の利権の価値が下がる事を良しとしない者も居ますので…」
確かに…かつての[エルフィン]、そしてハイエルフがどんな産業に強いか知らんが、独占市場を崩される連中も居るかもしれないしな。
「では、宜しいですか?」
頷き1億円を使って、井戸関連を強化していく。
要望を聞いたところ、質よりは量が欲しいとの事なので、[井戸]のLvを100まで上げた。
途中会社の共有チェストに、一日分が収まりきらないくなったので、併せてそちらも増築。おこぼれごっつあんです。
更に、水量大幅にを上げる[地下水脈]をLv100に上げる。
最後に井戸とほぼ同じ扱いの[泉]を増築してLv100に上げ、自動汲み上げ機を設置して完了した。
予算を少しオーバーしたが、そこはうちで負担した。
これで一日(二十四時間)に、コスト200万分の水が生産される。
流石にこれだけの水は、チェストにも入りきらないので、リアル時間で日に何度かシーラが水を受け取りに来ることに決まった。
タイミング次第では、無人の場合も有るので、シーラの常時立ち入りを許可した。
水の所有権は0.01%はうちの物、それ以外はシーラに全て譲る事に。
それでも十分な取り分だから、何れは使い放題な事を考えれば、会社の庭の増築スペースが無くなった事は痛いが、利益は十分だろう。
秒単位で溜まっていく水にニヤニヤが止まらない。
これで一先ずの復興の目途が立ったので、完遂時の報酬の話に移る。
「皆さんはどのようなものをお望みですか?」
シーラは、自分達に出来る事なら何でもすると言う。
「あの、それって魔法の稽古とかも可能ですか?」
先陣を切ってユキが提案する。
「魔法の手解きですか。確かにユキさんは高い素養をお持ちで。良いですよ。魔法なら私と母と祖父が得意なので、色々伝授出来ますよ」
「やった!!なら私はそれでお願いします。
どうやらユキは報酬の内容を稽古にしたようだ。
それに続き、皆がそれぞれ希望を伝え、報酬が決まっていく。
「他の皆さんは決まりましたが、テツさんは如何しますか?」
「え?うーん。今は保留で頼んます」
これといって強い要望もないので、保留にしておいた。
あれから十分な水が貯まったので、シーラが帰還したので俺らも夕食を取る。
休憩し、風呂にも入りゲームを再開する。
丁度シーラが水を取りに来てたので、一緒に[エルフィン]に向かう。
ユキはそのままシーラ、エレノーラ、ハイドライクに魔法を習うそうだ。
既に来ているメンバーや、今しがた到着した他のメンバーも同様に、それぞれのハイエルフ達の元へ向かい、何かしら師事する様だ。
手持無沙汰になったので、適当に魔獣でも見に行くか思ったたら。
「君。ちょっと良いかね?」
「えっと、ローレンスさんでしたっけ?」
「ああ、単刀直入に聞くが、君は[吸血鬼]や[獣人]の因子を持っているね?」
「そうですが、それが何か?」
「いや、それだけなら珍しくは無いんだが…妙な能力を授かっているなと」
「妙な?」
「うん。なんと言えば良いか…そう、自身の危機に対し、生命力が上がる?いや…最大値が上がる感じか?そんな変わった能力だ」
[生への執着]の事か、何で分ったんだ?って疑問は意味ないんだろうな。
「良く解りましたね。天邪鬼なんで、他人が避けそうな能力が好きなんです」
「成程。それで提案なんだが、君は報酬を保留中なんだろう?そこで私の訓練を受けるというのはどうかな?報酬の肩代わりになる代わりに、絶対に損も後悔もさせない」
おお、凄い自信だ。しかし訓練ってなんだ?
「具体的にはどういった訓練で、どんな結果が得られると?」
「訓練自体はシンプルに、枷を嵌めて実戦を繰り返す事だ。得られる結果だが、枷を嵌める時に、潜在能力を引き出す為の魔法も一緒に掛けるから、乗り越えれば無意識に望んでる力が発現する可能性が高い」
フムフム…聞いた感じ強力なアビリティ取得イベントって感じか。
「宜しくお願いします」
折角だし受けてみる事にした。
「ではそちらの都合上、長時間は無理という事だから、取り敢えず枷がどれ程かお試しで掛けてあげよう」
そう言い、ローレンスさんが何やら俺に術を施す。
「どうかね?」
「とんでもない虚弱体質になってるんですが…」
ステータスを確認すると、[生命]が驚異の1となっていた。勿論LPも1だ。
「ん?他は問題無いのかね?」
「え?ええ」
「これは初めての事例だな。興味深い」
そのままホームの外に連行され、ハングリータイガーの相手をさせられた。
どうやらSTAペナルティの解除と同じで、この状況で敵を倒すほど熟練度が上がり。完了すると何かを得られる様だ。
幸い使い魔のLvは最低でも50は有るし、[生命]以外のパラメータは正常なので、思っていたよりはずっと魔獣と戦えた。
しかし<ゴーレム使い>の引き寄せが怖い。<魔導人形>のモルヒネ光線が当たってる対象なら良いが、それ以外を引き寄せたら、位置取り次第じゃ俺が即死してしまう。慎重に立ち回らねば。
時間も時間なので、訓練を短時間で切り上げ、そのまま[エルフィン]のホームでログアウトした。
あ、勿論枷は訓練ごとに嵌め直すので、普段は大丈夫なのであしからず。
あれから数日間。
[生命]1の地獄の特訓を重ね、なんと[生命]が上がったのだ。2に。
おおおおおお!!二倍だよ二倍!!スゴイヨネー。
…先は長そうだな。それに純粋に2になったかというとそれも違い、LP:1/2といった感じで、最大値だけ改善された様だ。
さて、今日はVer1.6のアップデート日。
つつがなくダウンロードとインストールが終わり、ゲームを起動しログイン。
早速ステータスを確認すると。
ライセンス:プライマリ『ジャックオーランタン』 セカンダリ無し。となっていた。
折角だし今日はライセンスの見学でもしようかな。
ローレンスさんに今日の特訓は休むと伝え、[アース]に跳んだ。
ホームに向かい、散策を開始。
周囲もセカンダリライセンスを吟味してるのか、様々な場所が賑やかだ。
途中マサと鉢合わせし、情報交換をする。
「マサはセカンダリはどんなのにするんだ?」
「そうだな…重量防具のコストを抑える『甲冑取扱管理者』が有力かなぁ…」
確かに誰にとっても腐らない良いライセンスだよな。
お互い模索中なので、直ぐに分かれ散策を再開。
しかし賑やかだ。もしかしてと思い、少し調べると。
(ああ~、今回のアプデでライセンスの種類も増えたのか)
それだけではなく、隠しライセンスの条件を満たして解放されてたものが、一気に表に出た事で、そこらじゅうがライセンスを取得できる場所と化している様だ。
確かに意識してみると、『ジャックオーランタン』のプロになる前は、基本的なライセンスの場所しかわからなかったが、今は良く解らないライセンスの情報が、マップに沢山映っている。
現に今も右前方に、『パティシエ』の体験会場が表示されている。
マップから情報を見ると、一定数料理をすると、解放されるライセンスみたいだ。
会場を通る時、なんの気なしに会場内を覗くと。
「あ~ら~、ミーネさん大変お上手ですね~」
何やら体験生の一人がべた褒めされているようだが。
「えへへ、私甘い物が好きで食べるのは勿論作るのも興味が有るんですよ~」
そう返事をする女の子。うん。女装(?)したギルだった。
何時だか見た鬘を装着し、ピンクのエプロンを着ている。
うーん、これは見なかった事にしよう。と、その姿をスクリーンショットに収め、そのまま通り過ぎた。
え?盗撮だろって?まあまあ。
そしてもの凄い力で腕を引かれて路地裏に拉致された。ギルに。
「こんにちはテツさん。何をしてるんですか?してるんですか?」
満面の笑みで、ほんのりと怒気を含んだ声音で詰めて来るギル。
「ん?ギルか?こんなところで奇遇だな」
取り敢えず惚けてみた。
「そうですか?なんかカシャッという音が聞こえたので、振り返ったらテツさんがいたので、挨拶しようと追ってきました」
スクショの効果音が何で聞こえんだよ!?そして言葉の端々に棘がある。
「まあ趣味は人それぞれだし、良いんじゃないか?」
「何で私がやましいとこを見られた風になってるんですか!さっさと画像を消してください!!」
えーー!?勿体ない…。が、流石にギルの目が怖くなってきたので削除した。
「しかしミーネって…偽名いくない」
「あの…私の本名ギルミーネなんで、何もおかしくないんですが…」
初耳ですね。
何とかギルの機嫌を取り、無事解放され散策を再開する。
しかし惜しい事をした。なんせ女の子バージョンのギルはドストライクだもんな。
まあいっか。その内また見れるだろうしな。
気を取り直し、マップの位置情報を見ていると、研究地区に目が行く。
「お、農業関係のライセンスが幾つかあるのか…行ってみるか」
早速目当ての建物の前にやって来た。
「農業センターでは『種苗類取扱管理者』に『有機肥料生産者』があるのか」
取り敢えず中に入り、双方の概要を見てみた。
先ず『種苗類取扱管理者』は、種苗類のコスト軽減と効果の上昇が特典の様だ。
そして『有機肥料生産者』は、シンプルに作物の質が上がる様だ。
まあ便利には違いないが、俺にはそこまで必要でも無いな。次を当たろう。
結局ピンとくるものも無く、セカンダリは保留にしておく。
結局時間が余ったので、[エルフィン]に向かった。
丁度ローレンスさんが暇を持て余していたので、稽古を受ける事にした。
今日も荒野を連れ回され、お陰で[生命]が5になり、LPも2/5となった。
「フム。これで最弱の攻撃ならば、一度は耐えられるな」
このLPが2になった事に、ローレンスさんも満足して、次のステップに入れると言った。
嫌な予感がヒシヒシと伝わって来る。
翌日も訓練を受けるが、内容が少し変化した。
いつもの荒野での魔獣討伐の前に、弱い攻撃を受けてLPを1にされて、回復されるという事を只管されるドMな訓練だ。
ステータス画面を見ながら耐えていると、LPが変な事に。
(ん?1/6?うん?)
直後、回復を受けるとLPが5/5と全快する様になっていた。
そしてもう1回攻撃を受ける。今度は4/5になった。
そして3回攻撃を受け、残りLPが1になると、再び1/6となった。
(!!もしかしてLPが1減る毎に[生命]が0.25上がってるのか!?)
てっきり、[生への執着]と似たような効果のアビリティかと思っていたが、此方は%上昇ではなく固定値加算の様だ。
だから残りLPが1の時、最大値は1増えて6になっていたのだろう。と思う。
(良いぞ良いぞ!![生への執着]とシナジーしまくりじゃないか)
発動条件が最大値の5%以下の[生への執着]。ここにこのLPが減った分だけ[生命]が増える現象が加われば…。
これはモチベーションが大分上がったぞ。
その後は荒野に出て魔獣を狩り、[生命]が10になり、LPも全快状態だ。
この日はこれで終了し、ログアウトした。
土曜早朝。
朝から訓練に励む。先ずは鞭打ち等の身体を追い込む訓練。
一応命を危機を感じる事で、[生命]が上がるというのはまあ分からなくも無いが…。
まあそういうもんだと思ておこう。
鞭打ちの準備体操が終わり、荒野に出る。
このところ、各々で魔獣を狩りまくってるので、狂暴な魔獣は付近から減った。
「今日は遠出をしよう」
そう言い、ちょい前にボコボコにされた、凶悪なワームが出る地帯に来た。
早速こちらを補足したワームが向かってくるが、<ゴーレム使い>が引き寄せ<魔導人形>がモルヒネ光線で拘束。
此処までは良い、問題はこれからで、ワームが混乱の息を吐こうとする。
「少し手助けするよ」
ローレンスさんが、何やら魔法を行使すると、不気味な亡霊の様なものがワームに取り憑いた。
「これで奴の能力は下がった。君の使い魔も機能するだろう」
直後ワームの息が使い魔達に浴びせられるが、混乱する事は無く、ワームに襲い掛かる。
次々に薙ぎ倒される使い魔達。スマンのう…俺の[生命]が低いばっかりに。
それでも尋常じゃないSTA回復で無限湧きする使い魔。
かなりの長期戦になったが、最後は衰弱したワームを嬲り殺しにして幕引きとなった。
かなりの激戦だったが、[生命]が50になった。
その後も襲い掛かって来る魔獣を、介護して貰いながら討伐し、ホームに帰還した頃には、[生命]が120まで上がっていた。
良い感じで枷に抗えてるようだ。
そして再び始まる訓練と言う名の折檻。
ぺちぺちと鞭で打たれては回復され、を繰り返す。
その甲斐あって、LPが90まで減った時。90/129となり、1当たりの[生命]上昇値が0.3に上がっていた。
更に打たれ続け、LPが7になった時。7/153でLPが最大値の5%を切ったので、[生への執着]が発動し、[生命]が1683に跳ね上がった。
本来だったら、LP6まで低下しなければならなかったのが、7で発動する様になった。
更にモチベーションアップしたぜ。
休憩後も同じ要領で訓練に打ち込み、[生命]が200になり、1当たりの上昇値は0.4になった。
どうやら[生命]は一度上がり始めれば、強敵と戦いさえすれば、良いペースで上昇する様だ。
「さて、あまり根を詰めるとよくない。気分転換でもすると良い」
枷を外され、羽を伸ばすよう言われた。
という事で[アース]に戻り、ホームに戻る。
素材を共有チェストに収め、周辺を散策。嬉しい事に資源が回復していたので、先ずは森からローラーしていく。
二時間ほど素材集めに奔走し、近場の資源を取り尽くした。
ちなみにもう一度、北の未踏破地区へ挑んだが、まだ若干の危険を感じ自重した。
それじゃ訓練に戻るかと思ってたら、墓地の巡回が始まる様だ。
「おし、いっちょギルの顔でも拝みに行くか」
残念ながらギルは欠席の様で、特に何も起こらず巡回は終了した。
まあ気分転換も出来たので、再び訓練に戻る。
「効率化を図る為に、これを飲んでくれ」
そう渡されたポーションを飲むと、少しずつLPが減少していく。
「毒を食らえば、体内が毒素を消そうと抵抗するから、一層訓練の効果が高まるよ」
実に爽やかで良い笑顔を見せるローレンス。生粋のドSだコイツは。
だがその言葉は事実で、鞭と毒のダブルパンチでLP1辺りの上昇値が0.6に上昇した。
実戦の方も順調で、ワームや、芋虫の魔獣ヘビークローラーを相手取り連戦連勝。[生命]が一気に1000まで上がった。
その後も終日まで訓練を続け、[生命]は2000に、1当たりの上昇値は0.8まで上がった。
「おお~大分様になって来たな~」
日曜の早朝。
先はまだまだ長いのだが、既に相当な量の水を輸入している[エルフィン]。
訓練の合間に山を見に来たのだが、いつの間にか麓には湖が出来ていた。
一応山にも水を撒いているようだが、湧き水になるには早すぎるので、直接貯めた水なのだろう。
既に水辺には様々な魔獣が寄ってきており、山にも居着き始めている。
後は雨が降り始めれば、循環の開始だな。
さて、今日も今日とて訓練。朝から毒薬鞭打ちの刑に処される。
ジッと痛みに耐える感じはまるで滝行だな。
俺はこんな感じだが、他の皆も似たような感じだ。
強制的にハンデを背負わされてのシゴキ。
お互いまだまだ完遂には遠そうだとマサ達と語った事を思い出す。
そして今度はフィールドワークに移行し、魔獣との連戦。
ただ最初に比べれば、倒す魔獣を選ぶようになってはきた。
「キチンと生態系は維持しないといけないからね。ボトム、ミドル、ハイ。それぞれの草食肉食、温厚苛烈、バランスよく保たないとね」
今は増え過ぎたボトムの魔獣。鼠を駆除している。
まるで俺の使い魔の如く、数で押してくるのが非常に厄介で、時としてヒュドラクラスの魔獣を狩って、下剋上をする事もあるそうで、油断ならない相手だ。
そんな鼠の津波をバッサバッサと薙ぎ払う使い魔達。
[ドッペルゲンガー]を使い、ランタン×4と<親子蛇>のガラガラデバフ×20の前に、成す術無く弱体化する鼠の波。
それを[代行の盾]が過去一の活躍で蹂躙する。
やっぱこういう雑魚を多数相手取る時は、範囲攻撃の有難みが身に染みる。
厄介度ではワーム以上の鼠だが、俺との相性は良い様で、最高のカモと化している。
お陰で[生命]は5000まで上がって、大分余裕が出てきてくれた。
これからも頑張ろう。
次も二週間ほどで。




