第二十一話
~前回までのあらすじ~
超級試験を突破し、再誕を果たしたテツ。
だが天邪鬼故に、賭けに出て現状役立たずなギフトを選択。
最早後戻りは出来ない…
「結局何だったんだか」
気を取り直してギルドへ向かう。
「どれどれ…ん!【格納庫の害虫駆除と清掃業務】とな」
当然この依頼に釘付けになり、概要に目を通す。
「フムフム…先ず格納庫に立ち入る為には複数の行政機関の許可が…ああ、これで沢山の人が行政地区で走り回ってたのか」
この依頼を受ければ、以降格納庫での依頼を受けた際に、簡単に立ち入れるようになるとの事だ。
「内容自体は普通だが報酬は矢鱈と良いな」
…なんか裏がありそうだし、今はスルーしておこう。
ギルドを出て森に向かった。
「おおおお!!薬草が‼薬草があるぞ!」
見なくなって久しい薬草のシンボル。それが眼前にいっぱい広がる光景。
まあ、既に転生三回目だし、この光景も直ぐに見納めだろうけどな。
「それにしても、以前にも増してホームから直ぐ傍に有るんだな」
ホームに四つの区間が出来てそれなりに経つが、改めて商業地区と森の立地関係に驚いている。
なんせ、商業地区の検問所から直ぐ左手に森の入り口が在るのだ。
普通は敵性生物が怖くて切り開きをするだろうに。
けど森は資源の宝庫、天然の市場みたいなもんだ。おいそれと破壊は出来ない様だ。
勿論敵襲に備え、しっかりと警備はされているので、大丈夫だろう。
早速1つ目のシンボル目掛けて歩き始める。
「お、久々の兎ちゃん」
実に懐かしい最初期の敵。
当然鎧袖一触で瞬殺…かと思いきや。
「ん?おおおお!?」
想像を遥かに上回る兎の抵抗に思わず声が出る。
「え!?強化済みの兎なのか?」
流石にLv50の<家族蛇>と<鯉の群れ>には歯が立たなかったが、意外な程粘って見せた兎。
流石におかしいと思い調べてみると、時期は定かじゃないが、徐々に森の獣等が強化されていき、今ではとてもじゃないが低Lvでは歩ける環境では無い様だ。
そして初心者や低Lv向けの稼ぎ場所が、格納庫になっている様だ。
格納庫では、Gや百足に鼠と言った害虫害獣が巣食っていて、そいつらを駆除する事で収入を得て強くなることが、現在のセオリーらしい。
「そうか、これで色々と説明が付くな。いくら格納庫に入れるからって、あの人の多さは不自然だったが、新規の稼ぎ場が格納庫に移行してるのなら納得だ」
なんせ未だにユーザー数が増えているからな。
「そして薬草類にポーションの価格が中々下がらんのも納得、そりゃ[再誕]組ならいきなり森に入れるから流通はそれなりに増えるが、何とか敵をやり過ごして採取した新規は、ポーションが高くて買えない分自分で確保する人も多いだろうしな。そりゃ価格が落ち着くわけないわな」
最近のちょっとした疑問が氷解した瞬間だった。
未だに薬草が貴重な理由に納得がいき、採取を続けるが、ふと気になる事が。
「そういえば森の難度が上がったからか、薬草の質も気持ち上がってるな」
これなら新規もリスクを冒せば、一気にLvを上げれるし、増々先行組との差を縮めるのが楽になったようだな。
そんな事を考えつつ、薬草を集め続けていると。
「今度は野犬の群れか、ここ本当に浅層か?」
周囲を見ても、俺以外にも人は居るには居るが、少ないのだが…。
俺は迎撃する気満々だし、他の人も獲物が来たといった感じで構える。
そんな野犬の群れは、やはり相当な強化を受けており、無覚醒無転生ならLv100でも即死する程の数と質だった。
浅層でこれなら中層以降は一体…。
これは良い攻略場所が出来た様だ。
(なんて楽観的に考えてしまったが、そもそも何で敵が強くなったんだ?)
それを言ってしまったら、ベース建築時の囮はどうなるんだって話になるが…。
あっちはまだ歩合制だから、ゲームの都合上敵が徐々に強くなるのは解る。だがこっちは特に何かあったわけじゃないのに急に敵が強くなり始めたみたいだし…。
(待てよ…何も無いじゃなく、何かあったから敵が強化された可能性も有るのか?でもそうなると薬草の質の向上は…ただのゲームの都合か)
変に疑ってみたが、結局ただのこじつけにしかならんので、考えるのを止めた。
浅層は兎と犬のだらけだが、こいつ等は問題なく処理出来るので、中層に入ってみる。
早速鹿が襲い掛かって来たので迎え撃つ。
「うーむ、かなりの強敵に仕上がってるな」
なんせ鯉の水鉄砲一斉射撃1回では倒せなかったからな。
そして鹿を倒した直後、又しても鹿が登場したが、様子がおかしい。
「これは…魔物化してるのか?」
先程の鹿とは比較にならない程立派な角、発達した両足、そしてなにより体がサラブレッド並みにデカい。
その強さも桁が違っていて、子蛇が何匹かやられてしまい、STAに大打撃を受けてしまった。
最後は父蛇が締め上げ、水鉄砲の集中砲火で決着が着いた。
そしてそのドロップ品がコレだ。
[過剰に成長した鹿の皮]:不自然なまでに成長し、強靭さを持つ鹿の皮。コスト10。
[過剰に成長した鹿の肉]:食べ頃を逸脱した肉の塊、筋張っていて妙な臭みが有る。コスト10。
うん、どう考えても普通じゃないよね、ってか魔物じゃなかったのか。
これは数で攻められたら、今の俺じゃひとたまりも無いな。
とっとこずらかるとしよう。
ホームに戻り、手に入れた素材のレートを確認…していたら馴染みの職員に捕まった。
「丁度良い所に、ポーションの在庫ってあります?」
「オレ サイタン レベル ヒクイ オーケー?」
「嘘ですよね?」
「ここで嘘ついてどうするよ…」
「そんな~今ポーションが無くて困ってるんですよ~」
「いや…知らんし。ヒーラーでも募集すれば良いだろう」
「勿論募集してますよ」
何でドヤ顔なんだよ…。
「そうだな…この薬草を高く買ってくれるなら売るが?」
「どれどれ…コレ天然ものですか?」
「ああ、さっき森で採って来た」
「そうですか…いつも納品してくれてるポーションって相当良い物だったんですね…」
「勿論、良い薬草に凄腕の調合人が揃ってたからな」
高難易度地帯、強化された[種苗袋]、マッドのスペックと[エマルション]。
こればっかりは、超一流処でも中々揃わない好条件だ。
「フフフ…漸くうちの有難みが染みてきたか」
「ええ…とっても…」
なんでも格納庫に巣食ってる害虫共が、塗料やオイルなどの工業用薬品を浴び、恐ろしい変異を起こし、大暴れしている様だ。
(やっぱり厄介事が起こったか…)
まあ、予想通りっちゃ通りだな。そんなわけで、大規模な討伐隊に支給するポーションが欲しいんだとか。
「残念だが他を当たってくれ、それに言ったよな?もう少し旨味が無いとこれ以上は協力出来ないって」
「う、それはそうなんですが…上に掛け合っても「どこの馬の骨かも分からん連中より、実績のあるコミュニティに頼るべきだ!」と取り合ってくれないんです…」
(ああ…名前未定のカンパニーって、裏でそういう扱いなんだな。こりゃ良い事聞いた)
「そうなんだ、まあ頑張ってくれたまえ、じゃあ」
何かが実る様な会話でもないし、適当に切り上げてPAに帰還した。
「昼まではまだ結構時間が有るな…」
時間を確認し、昼食までまだまだ時間が有るのでゲームを続行する。
そこへ、マサがインしてきたので[再誕]の報告をした。
「成程、しかし分かってはいたが能力のリセットは面倒そうだな」
「おう、面倒何てもんじゃないぞ。ただギフトは強力なモノばかりだからな、やっぱするなら早い方が良いと思うぞ」
「そうだな、その時が来たら躊躇しない方が、後々楽だよな」
一通り話をすると、マサは出掛けると言って出て行った。
「さて、もっかい薬草でも取りに行くか…」
兎に角Lv上げが急務なので、金稼ぎに邁進せねば。
再び森にやってきて、外周をローラーする。
流石に空きコストが110もあるので、外周分は1回で集め終える。
チェストに放り込み今度は浅層をローラー。兎や犬の猛攻に晒されながら、何度か往復し資源を根こそぎ掻き集める。
「お、マッド。丁度良かった、はいこれ」
作業中のマッドを見つけ、素材を押し付ける。
「ヒヒ…また随分と集めたな…どうだ?[再誕]の具合は?」
「ヤバいよ、ステータス画面がみすぼらしい数値でいっぱいだからな」
「おっかねえな…でも覚悟はしておかないとな…」
そんな会話をしてる内に、良い感じに時間が過ぎたので、昼飯の為ログアウトした。
昼食時、美雪と亜紀はこれといって変化も無く、先程の挙動不審が嘘のように普通だった。
そんな2人は、俺に追い付こうと金策を頑張るそうで、食後の休憩をする俺を余所に、とっとこログインして冒険に出てしまった。
遅れて俺もログインし、Lv上げを再開する。
共有のチェストを覗くと俺用の領域に、先程の素材で作ったアイテムが入っていた。
早速それらを売りに出し、売上金を確認する。
「フム、現在の売上金は約300万か…」
チェストの容量確保に素材の放出をしたが、売れ残りも結構あるのでイマイチな金額だ。
この額だと覚醒1回と転生2回もしたら金が尽きるな。
「どうするか…Lvが高い方が金も稼ぎやすいし、上げちまうか?」
もしかしたら、急な入用もあるかもしれないが、このままじゃ効率も悪い。
やはり思い切って上げてしまうか。復活したシンボル1回は採取出来るわけだし。
「っとその前に…」
間を置くと気まずくなりそうなので、ギルに会いに行く事に。
墓地の事務所に着き、戸を叩くが反応が無い。
「留守か…」
「テツさん…?」
「おお、さっきは連れがなんか悪かったな」
「いえ、わ…僕も取り乱しました」
ほっ…特に気まずい事にはならずに済んだようだ。
「その為に態々?」
「そうだよ、結構真面目だろ?」
「んー?なんか違くないですか?あ、そういえば診療所の人が用が有るそうですよ」
「そうなん?分かった。向かってみるよ」
「それではまた」
ギルに見送られ、診療所に向かった。
「おお、来たか。調子はどうだ?」
「ペナルティがキツ過ぎますね」
「だろうな…今回呼び出したのはその件でだが…そのペナルティ、克服してみないか?」
おお!!!これは望んだ展開が来たか!?
「その表情は是と見て良いのだな?では話を進めよう」
そして話を聞くが、概要を聞く限りやる事はこれまでと同じで、より重い不可の掛る薬物を投与し、身体を慣らしていくというものだ。
お馴染みの医療ポッドに入り、薬品を投与する。
そして恐ろしい事態になってしまった。
「な…なな…なんじゃこりゃあああああ!!!」
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神]。
LP:2090 ARM:400 SHI:400 STA:400 COST:290/400
パラメータ:[生命]1900 [持久]400 [積載]400 [装甲]400 [防護]400 [魔力]400 [制圧]400 [幸運]400 [速度]400 [傀儡]400
因子:[獣人³]
スキル:[速度上昇]Lv110 <家族蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50
装備:[50フリーホルダー] [ランタン] [ランタン] [シャツ] [ズボン] [骸の鎧]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
ギフト:[生への執着]
これが。
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神]。
LP:1653 ARM:3 SHI:3 BAR:3 STA:3 COST:0/3
パラメータ:[生命]1653 [持久]3 [積載]3 [装甲]3 [防護]3 [魔力]3 [制圧]3 [幸運]3 [速度]3 [傀儡]3
因子:[獣人³]
スキル:[速度上昇]Lv110→Lv0 <家族蛇>Lv50→Lv0 <鯉の群れ>Lv50→Lv0
アビリティ:[ドッペルゲンガー]*機能してません [種苗袋]*機能してません [ボロボロの防柵]*機能してません
ギフト:[生への執着]
こうなってしまった。
ちなみに装備はポッドに入る段階で解除済み。
「これは…殆どの能力が封印されている?」
「その通り、そしてその副作用を取り払うには、多くの経験を積む必要がある」
説明を聞くと、要は敵を倒したり依頼を達成したりすると、少しずつ元の能力に戻る様だ。また、敵が強い程、依頼が難しい程、いい経験になるそうだ。まるでリハビリだなこりゃ。
辛うじてLvは100のままで、因子とギフトが生きているから良いのだが…ギフトが役に立たねぇー。
どうするんだこれ?
装備は診療所にあるチェストで、自分のチェストにアクセスし収納。
コスト0の[シャツ][ズボン][50フリーホルダー]のみ装備して放浪中。
暫く思考を巡らせ、予定通りLvを上げる事にした。
因子は活きてるのだ。ならLvを上げる意味自体は有るはずだ。
遅い歩みでPAに戻り、有り金全て引っ提げ教会に突撃。
覚醒し、転生を2回済ませ、[獣人]と[幸運]を覚醒させ、因子は[吸血鬼]を2つと[スライム]を取得した。
これにより、[幸運]とそのスキルの数値が正常になった。が…。
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神]。 ★。 ☆²
LP:2710 ARM:6 SHI:6 STA:6 COST:100/6*コストオーバーによりスキルは機能しません。
パラメータ:[生命]2710 [持久]6 [積載]6 [装甲]6 [防護]6 [魔力]6 [制圧]6 [幸運★]12 [速度]6 [傀儡]6
因子:[獣人★] [吸血鬼²] [スライム]
スキル:[速度上昇]Lv110→Lv0 <家族蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50
アビリティ:[ドッペルゲンガー]*機能してません [種苗袋]*機能してません [ボロボロの防柵]*機能してません
ギフト:[生への執着]
という感じで、スキルが依然機能しないので、攻撃も出来なければ、コストが無いので輸送も出来ないので、普通なら詰んだと思うかもしれないだろう。
しかし、俺はこの状況で[獣人]を覚醒させ、高LPを確保しつつ攻撃能力を得る抜け道を使わせてもらった。
その鍵こそ因子[スライム]だ。
[スライム]は、攻撃を受けた際に周囲に毒と酸をまき散らし、ダメージの10%を与えると効果を持っており、因子を[獣人]に拘る場合、数少ない攻撃手段となる。
他にもサチの代名詞[罠師]や、Lvアップ時に[積載]を上げる[飛脚]を取得して、武器を装備するなり輸送するなり幾らでも手段は有るが、今回は一番無駄がない方法で、この窮地を打開する事にした。
と言うのも、元々[スライム]は何処かで試しておきたかったからだ。
こいつの効果は使い魔にも乗る様だし、攻撃時に酸と毒を乗せる、専用のスキルである<酸液>と<毒液>は、サチのまきびしにも効果が乗っているので、使い魔の攻撃にも乗る筈だ。
尤も、コストが無いのでスキルは使えないけどね!
さて、方針も固まったので、早速行動に移る。
PAにて、良いタイミングでベルと遭遇。事情を説明し、助力を請う。
「それ位お安い御用ですよ、行きましょう」
ベルの協力を取り付けたので、森に向かった。
此処からは忍耐の勝負で、俺はただ棒立ちでサンドバックに、ベルは俺が死なないように回復をする役をしてくれる。
人気が少ない外周部を探し、そこで兎を釣って無抵抗で攻撃を受け続ける。
強化されてるだけあって、攻撃が非常に痛い。
コレ何が辛いって、ベルに弱らせて貰った獲物を倒しても、大して経験値にならないという事だ。
あくまで自力である必要があるとの事だ。
まあ、回復をして貰うのはOKの様なので、ある意味これも抜け道だけどね。
そんな感じで、ベルの回復が追い付かない事も暫し有り、自力で逃げたり躱したりしながら十数分。何とか反射ダメージで兎1匹を仕留める事に成功した。
「どうですか?」
「ダメだ…何にも戻ってない」
まさかの成果ゼロ。厳しい道のりだ。
その後、兎を反射ダメで3匹倒したところで漸く変化が。
「おお、やっと[生命]が10%分戻ったよ」
これで[生命]が1710から1802になった。
僅かだが活路が見えてきたぞ。
結局この日は、ベルやマッドに付き合って貰い、何とか全パラメータを10%戻す事が出来た。
翌早朝。
早朝からログインし、昨日戻った分のコストのお陰で、<家族蛇>が復活し、余りでポーションを持って森に向かう。
流石にいつまでもベルやマッドに頼れないので、頑張って自力で復活を目指す。
うん、<家族蛇>が復活したので、攻撃能力を得た事でペースは格段に上がり、昼前には全パラメータを20%まで戻せ、<鯉の群れ>も復活し更に効率は上がった。
休憩後は更にランタンを1つ[50フリーホルダー]に提げ、ポーションを増やし、終日まで兎と犬狩りに徹した。
お陰で全パラメータを30%まで戻す事が出来、リハビリはいよいよ本格始動する。
更に翌日。
軽く仕事を手伝い、美雪の話し相手になりながら、黙々とリハビリを続ける。
今は[積載]が180まで戻ったので、ランタンをもう一個提げ、[阿修羅の骸]を装備。
これで[ガーディアン]も復活し、兎なら群れで来ても問題なく蹂躙出来るようになった。
それでも犬に数で攻められるとキツく、中々浅層から先には進めない。
そして効率も悪くなってきて、一日中頑張って40%に戻すのがやっとだった。
でも一人でどうにか出来る分、最初程の苦痛は感じなくなっていた。
「さあ、今日もリハビリを頑張るか」
こんな状況だから、金も物資も貯らず、相当な足止めを喰らっている。
少しでも早く復活したいので、安物のポーションを可能な限り持ち込み中層へ向かう。
早速狼が襲ってくるが、問題無く撃退出来た。
「流石にパラメータが4割あって使い魔が42体も居れば楽勝だな…」
元々弱い[幸運]の使い魔とはいえ、これだけの数にスキルLvが50も有れば、何とかなる様だ。
ただ流石に効率も落ちてきてるのか、この日は成果無しで終わってしまった。
次の日は[生命]と[持久]と[積載]を50%に、その翌日には残りも50%まで戻す事が出来た。
此処まで来れば使い魔も随分と能力を取り戻し、中層でも問題なく立ち回れるように。
そうだ、パラメータを50%まで戻した事で、未覚醒のパラメータのスキルも解除された。
これでコストは300まで戻り、[速度]も復活し、移動速度がかなり改善された。
そして週末は深層に潜り、鎧蜘蛛や大蟷螂、熊や大蛇を相手取り武者修行。
お陰で一気に能力を戻す事が出来、アビリティの封印も解けた。
「フム、どうやら副作用については克服した様だな」
診療所にて、薬品の副作用が解けた事を報告。
「では第二ステップへ移行する」
再びポッドに入る様促され。薬品を投与される。
「…え?…え?」
「どうかしたかね?」
「いや…あの…STAが機能していないんですが!?」
STAゲージが全て黒くなっていて、全く機能していない状況に。
「それで良い、同じように経験を積み、副作用を消し去った時、君のSTAは元通りになる。頑張ってくれ」
と言われ、診療所を追い出された。
「マジか…」
少しの間放心状態になってしまった。
さて、ウジウジしていても仕方ないので、さっさと事態の解決に動く。
なんだかんだでここ最近。素材を大量に持ち帰り、売れ筋を量産。
そこそこの金が用意出来ているので、教会へGO!!
取り敢えず1回の転生に留め、Lvを100にし、こんな感じになった。
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神]。 ★。 ☆³。
LP:22248 HP:800 STA:0 MP:800 COST:510/800
パラメータ:[生命]22248 [持久]0 [積載]800 [体力]800 [魔素]800 [魔力]800 [制圧]800 [幸運★]1600 [速度]800 [傀儡]800
因子:[獣人★] [吸血鬼³] [スライム]
スキル:[速度上昇]Lv110 <家族蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50 [血の海]Lv110 [野生の力]Lv110
装備:[シャツ] [ズボン] [阿修羅の骸] [50フリーホルダー] [ランタン] [ランタン]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
ギフト:[生への執着]
STAは驚愕の0。仕方ないので[防護]切って[魔素]を、ついでに[装甲]切って[体力]を採用した。
これなら使い魔の供給も問題なく出来、LPもこれだけあれば色々捗る。
さあ、何処に行こうかな?
結局、まだ森の資源を取り尽くしてないので、森を訪れた。
嬉しい事に、浅層のシンボルが復活していたので兎と犬をシバキながら採取。
粗方採ってからステータスを確認すると、[持久]が40になっていた。
これで5%戻ったというわけだ。
中層も同様に狩りと採取を平行し、終日には中層の資源は採り尽くした。
これで[持久]が200になり、25%まで戻った事になる。
流石に全パラメータと違い、[持久]のみという事もあり、ペースは悪くないな。
今日は火曜日。引き続きリハビリを続行する。
今日は森の深層に潜り、大物を狩ってゆく。
現在[農家]も[百姓]も無い上に、コストもそこまで余裕が無い為、食料飲料が乏しく[ドッペルゲンガー]を乱用出来ないのが辛い。
使うと満腹と保水50%消費は、今となっては痛すぎる。
無くして初めて有難みが身に染みる農業系の因子とスキル。
これらも早めに取得して、以前の様な乱用をしたいところだ。
今も鎧蜘蛛がダースで襲って来たので、[ガーディアン]が大活躍。
[ドッペルゲンガー]さえあれば、[ガーディアン]の出る幕すらなく処理出来たんだが…。
気を取り直して熊や巨大な鹿を狩っていく。
何度か往復して、素材もタンマリ入手し、[持久]も568と71%まで戻った。
そして翌日には深層の資源は採り尽くし、[持久]は完全に戻った。
「フム、では第三ステップに入ろうか」
翌日、再び診療所を訪れ、リハビリは次の局面へ。
(これでSTAゲージは完全に復活したわけだが…)
未だにSTA回復量も速度も1/10状態のままだ。これを元に戻すとなると…。
そこはかとない嫌な予感がヒシヒシとする中、ポッドに押し込められ…。
「…やっぱりこうなるのね…」
ステータス画面を開き、目に入る絶望の表記。
【STA回復速度0/1sec】
…うん、STAが回復しなくなりました。まあ予想通りだよこん畜生!!
診療所を追い出され、再び森に向かう。
[魔素]がある以上、使い魔の供給には問題は無いし、STAの使い道なんて現状走る位しかないので、どうとでもなる。
さて、今回は何日で元に戻るかな?
既に手順は確立されているので、STA回復速度は僅か二日で完了。
そして予想通り、最後はSTA回復量が0になり、再びSTAが回復しなくなった。
そして、コチラも二日で元通り、遂にSTA関連は完全復活を果たす事に成功した。
この時妙なテンションで、変な顔をしていたのか、美雪と亜紀に随分と気味悪がられたが、そんな些細な事には動じない程気分が良かった。
漸く快適なDIYライフが遅れるようになるんだな…。
「さて、完全復活したし、転生でもするか」
もう[魔素]はお役御免だからな、そろそろ[観察]を入れる時だろう。
教会に向かい、転生しLv100に上げる。
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神²]。 ★。 ☆⁴。
LP:28325 HP:1000 STA:1000 COST:720/1000
パラメータ:[生命]28325 [持久]1000 [積載]1000 [体力]1000 [魔力]1000 [制圧]1000 [幸運★]2000 [速度]1000 [傀儡]1000 [観察]1000
因子:[獣人★] [吸血鬼³] [スライム] [聖人]
スキル:[速度上昇]Lv110 <家族蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50 [血の海]Lv110 [野生の力]Lv110 <代行の剣>Lv50 <代行の盾>Lv50 [生存本能]Lv110
装備:[シャツ] [ズボン] [阿修羅の骸] [50フリーホルダー] [ランタン] [ランタン]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
ギフト:[生への執着]
因子の[聖人]を取得し、祝福を重複。[生命]を更に補強。
スキルもSTAが復活したので[生存本能]を取得。これで秒間300%回復する様になった。
他には<代行の剣>と<代行の盾>をLv50で取得。今は数より質を優先する。
さあ、ガンガン金を稼ぐぞ!!
とはいえ、未だ仲間内では[再誕]は俺だけ。まだソロ活動は続きそうだ。
「お、巡回時間か…一応顔でも出しておくか」
今の俺じゃそこまで強いアンデッドを相手取るのは無理だからな、出番が無さそうなら身を引く心算だ。
「おはよう、どんな感じかな?」
「おうテツか、お前[再誕]して糞雑魚状態だって?」
集合場所で待っていたルーカスに声を掛けたら煽られた。
「糞雑魚…まあそうだ」
「奇遇だな、俺もなんだよ」
「はい?」
「いや、俺もお前とギルをアシストした功績で、補助金が出たから[再誕]したんだよ」
補助金…なんか世知辛い気持ちになるのは気のせいか…。
「他の3人もそうだから、気にする事は無いぞ」
うーん?となるとルーカス達の強さも有る程度出会った時の強さに戻るのか?
これじゃ、NPCの強さが補正なのか成長なのか判断付かないな。
「俺らも若いのが頑張ってるのを見て血が騒いでな、もう一度鍛え直す気になったのさ」
成程…こういう感じでNPCの強さは変化していくと。
「おはようございます。テツさん」
「おはようギル。…なんか装備が…」
「ええ、お察しの通り僕も[再誕]しました」
「おいおいおい…此処の守りは大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ、今の所大きな騒乱も無いですし、後続も育って来てるので」
確かにやっくんやモンドを筆頭に、どんどん後続の実力が上がってきてるからな。
というわけで、再誕へなちょこ組は比較的安全な場所を、円熟組は危険な場所や外周を担当する事が決まった。
「なんだか久しぶりな感覚だな」
今回はギルとルーカスの3人で事務所の近場を回る。
「そうだな…しかし体が若々しいのはやはり心地いいな」
「若々しいって…ガッツリおっさんじゃねーか」
「見た目はな、これでも内臓系の核細胞を移植したから肉体的には相当若返ってるんだがな」
なんだそりゃ!?
「[再誕]よりそちらの方が本当の報酬ですね?」
「ああ、どうせ健康寿命が延びたんだからって事で、[再誕]を決めたのさ」
ギルの指摘に頷くルーカス。成程、老い先短い…って程じゃなくとも、全盛期を過ぎた以上は一から鍛え直しはしんどいもんな。
こういう所はプレイヤーとは全く事情が違うんだろうな。
「しかしテツさんの使い魔…随分と数を減らしましたね…」
「そうだな、それに鍬はどうした?」
「そういう2人だって装備がしょぼいぞ。鍬は暫くお預けだ」
ギルは防具と言うより厚手のコート。ルーカスはごついアーマーからチョッキに大幅ランクダウンしている。
2人共武器はそこまで劣化した感じは無いので、武器を優先したのだろう。
ビルドに関しては、プレイヤーNPC問わず千差万別だ。
さて、へっぽこ組の巡回だが中々にハラハラする展開が頻発する。
敵は野犬にアンデッドと変わりは無い。しかし稀に混ざる色違いや、突然変異なのか強化された個体が猛威を振るい、前衛の俺が何度もしゃぶられる羽目に遭う。
だが、俺ならそれでも耐えられるからまだいい、問題は2人が絡まれた場合だった。
ギルもルーカスもスタイルや経験の豊富さで、不意に接近されても慌てず対処はするものの、やはり手古摺る様で何度も傷を負っていた。
「おいおい大丈夫かこれ?」
「まあまあ、今だけですから」
「そうそう、ギルは若いし俺も蘇生権を大量に持ってるから平気だ」
「何その蘇生権って…」
「ん?万が一クローン体じゃなく本体が死んでも、バックアップに記憶を移植して貰う権利だ」
「増々分らんぞ」
「要は死んでも生き返れるって事ですよ。ちなみにバックアップは使い捨てではない、限りなくオリジナルに近い肉体の事で、クローンの様な劣化は起こらないので安心ですよ」
うん。そういえばこれぶっ飛んだ世界観のゲームだった。
「ふーん…バックアップねぇ…」
命の軽い世界だなぁ…。
まあそんわけで、NPCが完全に消滅する事は、かなりの事情が絡まない限り無い様だ。
「あ~お疲れさん」
「お疲れ様です」
「お疲れさん」
結局、俺が何度も犬やアンデッドにしゃぶられながら巡回を終えた。
流石に危機感の薄かった2人も最後の方は真顔になっていて、次回からはもっと人数を増やすか、脂が乗った人員を混ぜる事を誓ってくれた。
「えっと…今回はご迷惑を掛けました…」
「正直スマンかった」
2人から負担を掛けたお詫びとして、連名の紹介状を受け取った。
「これは?」
「それは非常に珍しい植物を扱った老舗への紹介状です」
「あそこは一見お断りだからな、それが有れば今後は顔パス出来るぞ」
よく分からないが、有難く受け取っておく。
墓地を離れ、早速お店に向かってみた。
「ここがそのお店ねぇ」
研究地区に着き、【有害危険植物研究所】という、如何にもヤバそうな名前の看板を見る。
「…取り敢えず入ってみるか」
入り口の受付に紹介状を渡し、少し待つと担当が現れた。
「この度は紹介状をお持ちしたとか、何か入用ですか?」
「そういう訳じゃないが、俺にとって良い物が有るかもという事で来たんだが」
担当者も納得した様で、個室に通されカタログを見せてくれた。
カタログに目を通すと。有るわ有るわ、危険かつ珍しい苗や種が。
[ラフレシアの種]:虫(蟲)に対し強力な誘因作用を発する臭い花の種。コスト0.5。
[ハードブッシュの種]:超硬いブッシュに育つ雑草の種。コスト0.1。
[マタンゴの駒菌]幻覚作用の有るマタンゴの駒菌。コスト0.1。
[ボルケーノマッシュルームの駒菌]:触ると危険なキノコの駒菌。コスト1。
[マンイータールートの種]人をも襲う人喰い草の種。コスト0.5。
[ウィスパーチェーンの種]霊体を捕らえて捕食する蔓の種。コスト1。
等々ヤバい品が目白押し。
これは今後も利用の機会が有ると思い、[ハードブッシュの種]を十粒購入した。
ちなみにお値段は一粒100円でした。
「やっほ~テツ君。私も[再誕]したわよ」
PAに戻ると、ユキがボロボロのローブに木の枝という、馬鹿弱そうな装備で出迎えてくれた。
「…ストレス半端ないだろ?」
「ええとっても」
だろうな。
「テツ君はどんな状況?」
「覚醒1回転生4回で、STA障害から解放されたよ」
「お~良かったね!私も覚醒を1回に転生2回だから、能力的には大差は無さそうね」
だから一緒にどう?と言うので、2人でパーティーを組んだ。
「ヒヒ…俺も混ぜてくれ」
とマッドも参戦し、3人で出かける事にした。
マッドは、金を貯めて一気にLvを上げる算段なので、俺らに対し圧倒的にLvが上だが素材確保がメインなので、格差は問題にならんだろう。
「現在の俺達は行ける場所が限られている」
3人で出かけるに当たって、問題提起をしておく。
「そうね、候補としては樹海、渓谷、砂漠辺りかしら?」
「…辛うじて[バグスター]も選択肢に入る位か」
検討した結果、樹海で採取を行う事にした。ついでに討伐依頼も受け、狩りも並行して稼ぎを水増しする。
樹海に着き、採取を始めようとしたんだが…。
「なんか随分と雰囲気が違う様な?」
「うん…なんか汚いね…」
「…こりゃまるで観光スポットになっちまった森や山だな…」
「それだ!!ポイ捨てゴミに踏み荒らされた雑草。正に観光地の森だ」
以前は如何にも獣の領域、といった感じの森だった樹海。
暫くこないうちに、ゴミが散乱し草花の色彩も毒々しい。
「あ、立て看板だわ…【ゴミを捨てないでください!!】なんか妙にリアルだわ」
「ヒヒ…こっちにも有るぜ、【不法投棄は厳罰に処す】…だとよ」
どうやらホームが拡張された事で、良からぬ連中が大勢流入した様だな。
気を取り直し、汚染された樹海に踏み込んだが色々と酷い。
「なんだコレ…魔物のオンパレードじゃねーか!!」
以前散々煽って来た猿が、カメレオン化した[カメレオンモンキー]。
ウザさが数倍増しになった事で、俺達3人は沸騰。火照った体を落ち着かせるために執拗に追いかけ始末。その際にドロップした品のお陰で名称が判明した。
「あ~、ホンっとイラつく猿だったわ!!」
他にも豹やジャガーも魔物化したり、色違いや変異種も確認できた。
ただこいつ等の素材は使える様で、落ち着いて周囲を見ると、結構人が居て狩りに精を出している、
中にはゴミ拾いをする人も居て、中々の賑わいを感じさせる。
溜飲も下がった事だし、本来の目的を果たすとするか。
「なんかさっきから騒がしいわね」
襲ってくる獣や魔物を退治しつつ、汚染された薬草を採取。
そんなの使い道有るのかって?有るんだなこれが。
毒薬に加工するもよし、サンプルとしてギルドに売るも良し。金になる事には違いない。
しかし本当に騒がしいな。ふと音のする方を見ると。
「巨大な豹?」
「あれってゲートキーパー?」
「…逃げるか」
「「賛成」」
巻き込まれるのは御免なので、いそいそとその場から立ち去ろうとする。
が、少々遅かったようで、戦闘をしていた一団が消滅。こちらに向かって来た。
「しゃーない、戦ってみるか」
覚悟を決め、俺が前衛を張り、火力は2人に任せる。
マッドがポーションを投擲し、それで決着が着いた。
「ええ…」
「まあこういう事も有るわよね」
そうなの?
「ヒヒ…ちょっと強い毒を使い過ぎたな」
調べてみたら、初期の弱めのゲートキーパーだという事が判明した。
それでいて、既に相当なダメージを負っていた感じだし、納得の結果だった。
そうだよな、今だったら前にボコられた烏。あれだって瞬殺だろうしな…。
なんにせよ、折角のゲートキーパーの撃破だ。希少素材をタップリと採取して帰った。
夕食後、のんびりと休憩中、美雪と亜紀がゲームを始めた。
俺は湯上り状態でマッサージチェアに夢中だ。
暫くすると、何時まで寝とんじゃと叩き起こされた。
仕方なくログインし、ユキとアコに合流。2人に強制連行された。
「という事で、私も[再誕]したから宜しく」
アコもこれで、へっぽこ組の仲間入りだな。
「アコは何処までLvを上げた?」
「取り敢えずテツ君に合わせて覚醒1回転生4回よ」
「私もさっき転生4回までしてきたから一緒よ」
2人共キッチリ俺に合わせてる様だ。
「じゃあ森の最深部に行こうか」
「流石に今の最深部は辛いな…」
最深部へ辿り着き、早速その洗礼を浴びる。
以前とは比較にならない程強化された大猪に大蛇。
それらが複数で攻めてくる状況。毎回ボス戦をしてるような感覚だ。
「うう…豚が居ないから奇襲が怖いわね…」
現状十分な防御を確保できていないユキとアコ。2人は恐る恐るといった感じで[ガーディアン]の傍に侍る。
「そうだな…やっぱ数って偉大だよな」
[再誕]前は200ユニットを超えてたからな。しかも蜂ですら結構堅い。
<代行の剣>と<代行の盾>が抑えきれず、抜けてきた熊の群れを喰い止める蛇と鯉達。
やはり数が以前より劣る分、視覚的な不安を抱くのは仕方ないな。
この程度の数の敵なら、姿が見えなくなる程群がっていたのに、今ではいつ抜けてきてもおかしくない程度に、壁の密度の薄い。
そんなハラハラドキドキな最深部探索は続く。
「なんか人が増えてきたわね」
アコに言われ、周囲を確認すると確かに人が多い。
「う、あれってギルドの職員じゃ?」
ユキが嫌なモノを見た風に言う。
「あの制服…間違い無いな。…良し帰ろうか」
「「賛成」」
何かイベントに巻き込まれる前に退散する事にした。
帰還後、何が有ったのか調べると。
「フムフム…どうやらどっかの業者が、ヤバい薬品を森の奥地に廃棄したようだな」
「つまりあの人たちはその調査に?」
「成程、それ絶対ボス戦か業者との捕り物に発展してたわね」
帰還して良かったと3人で安堵する。
しかしヤバい薬品か、あの過剰な成長具合の鹿とかそれの影響だよな…。
色々な意味で、森がデンジャラスゾーンになっちゃったな。
「さて、森はちょっとの間避けるとして、お次は何処に行く?」
「そうね、なんだかんだで行って無いとこも多いし、探索が少ないロケーションも有るし、一度そういう場所を巡るのはどうかしら?」
このユキの提案に乗っかり、湿地帯近辺を散策してみる事に。
ダンジョン跡地のジャングル、干潟地帯とかそこまで通ってないからな。
「それじゃあ行ってみよう」
商業地区を抜け、以前より整備された道路を歩き湿地帯へ。
「大分水も引いて元通りかな?」
梅雨と不法投棄の合わせ技で酷い事になっていた沼地。
現在は、ぱっと見異変を感じる様なモノは目に入らない。
相変わらずナメクジは居るので、ある程度の汚染は残ってるのだろう。
折角なので、今日は此処で素材集めに徹する事に。
ジャングルや干潟はまた後日で良いや。
3人でナメクジを処理し、粘液をタップリと集める。
途中、他のパーティーが[キングスラグ]を出現させ、便乗する。
十分に収穫を得て、コストがいっぱいになったので帰還した。
次の日。
「今日はジャングルに行くか」
昨日に引き続きユキとアコ、新たに[再誕]したマサとベルを加え、5人で出撃する。
商業地区から真っ直ぐ西に進み、小山の麓に着いたら山沿いに南西に向かう。
湿地帯を左手に進む事少々。ジャングルの入り口に辿り着いた。
「なんだかここに来るのも久しぶりだな…ん?」
入り口で、さあ行くかと思ってた時、何やら獣や爬虫類が沢山出てきて…。
「敵ではないのか?」
「もしかして前に助けた在来種?」
言われて見ると、ジャガーの子供等見覚えが有るな。
そんな子ジャガーが代表で俺らを先導するので付いていく。
他もそれに続くので、完全に非敵対状態なのだろう。
導かれる事数分。子ジャガーが茂みに入って行き、少しして何かを加えて戻って来た。
「なんだ?これをくれるのか?」
促されるままその何かを受け取ると、周りにいた動物たちが一斉に引き上げていった。
「なんだったの?それがお礼だってのはなんとなく分かるけど…」
「…急いでPAに戻ろう…これはとんでもない代物だ」
PAに戻り、マサが切り出す。
「で?一体何を貰ったんだ?」
俺は子ジャガーから受け取った品をテーブルに乗せる。
[茨のダンジョンコア]:薔薇のダンジョンが消滅した際に、エネルギーが凝固した物。凄まじい力を感じる。
「!?」
「ダンジョンコア…そんなものが存在していたとは…」
「砂漠の地下、[バグスター]でそんなの見つかったっけ?」
ベルの呟きサーモンが疑問を呈す。
「少なくともプレイヤーからの情報は無いな、多分行政が回収したんだろうな」
兎も角そんな貴重品が、思わぬところから手に入ってしまった。
「取り敢えずは保管しておけば良いっしょ」
使い道も無いし分からないしね。でも[コア]と名の付くアイテムは、大概クラフト時に強力なアイテムの素材になる。
なので、将来的な使い道は、カンパニーの財産になる様なモノの素材に決めた。
だが皆には言わなかったが、俺の中では既にプランが出来上がっていた。
まあ、その時になって、もっと素敵な案が出たら、そちらに乗り換えても良いしな。
まさかの御褒美を受け取り、改めてジャングルに向かうが。
「ん~~~…どうする?」
先程案内してくれた動物たちが、俺達の侵入を拒むのだ。
「止めときましょう。きっと私達とは敵対したくないからだと思うし」
「そうね、今更何か目的があるわけでも無いし、以後不可侵で良いと思うわ」
ユキもアコも、動物たちの意志を尊重する様だ。
マサもベルも構わないと言うので、その場を辞すことにした。
あくまで自然は野生の生き物の領域。そこへ人間が不用意に踏み込むべきでは無い。
自然との共存ってこういう事かもな。
この場に居ないメンバー全員に経緯を説明し、ジャングルへの侵入を禁止した。
さて、干潟へ向かいましょうか。
久々に訪れた干潟は、以前と然程変わりなく、復活した資源が光り輝いていた。
「そういえばスコップを持ってなかったな…」
他の4人もすっかり忘れてた様で、宝の山を前に地団駄を踏む羽目に。
「あのぉ…もし良ければこれを…」
フードを被り、顔を隠しながら、スコップを差し出す女性と思しき人物に声を掛けられる。
「えーっと…」
「申し遅れました。私はシーラ。ハイエルフです」
フードを外し、特徴的な耳とプラチナブロンドの長い髪が露わになる。
エルフということもあるのか、例によってとんでもない美人だ。
そして直感が告げる。これは面倒な事が起きると。
(俺は非常に嫌な予感がするんだが、皆はどうだ?)
俺はチャットを使い、仲間内で相談を始める。
(私は特に何も感じないけど…テツ君に任せるわ)
(うーん、確かに不自然さは感じるけど…)
ユキとアコは、俺に一任する様だ。
(俺はテツに賛成だ。いきなりスコップ片手には怪しさ満点だ)
(そうですね…僕達に気付かれずに会話を盗み聞き出来る距離に居る…これは何か有ると見て良いのではないでしょうか?)
マサとベルは俺と同じ様な感じか…男女で印象が判れる感じか。
(良し、なら上手い事誤魔化して…お、丁度蝦蛄が襲って来たから逃げるぞ!!)
(それには及びませんよ。この通り)
「「「「「え!?」」」」」
シーラがいつの間にか取り出していた杖を掲げ、魔法を発動。
蝦蛄の周囲に氷の杭が複数出現し、蝦蛄を貫いた。
「この通り怪しい者ですが、敵ではありません。どうかお話だけでも聞いて下さい」
どうやら逃げられない様だ。
シーラに連れられ、汽水域まで来る。
其処でシーラが召喚魔法を使い、見た事も無い巨大な亀の従魔を呼び出す。
「どうぞお乗りください。我が家に案内いたします」
促されるままに甲羅に乗り、揺られる事数十秒。
ある程度深さが有るところまで来ると、海中より何かが浮上してくる。
「こちらが私の仮住まいとなっております、お上がりください」
浮上した潜水艦のハッチが開き、乗り込んだシーラが手招きをする。
思わず躊躇してしまうが、今更意味が無いので、意を決しお邪魔する。
狭い通路を抜け、思いの外ゆったりとした空間に通される。
「どうぞ御楽にして下さい。今お茶をお持ちします」
どうやらこの部屋はリビングダイニングにキッチンも備えてる様だ。
「では本題の前にお詫びから。この度は突然の御挨拶誠、申し訳ありません」
ティーセットとお茶請けをお盆に乗せ、テーブルに着きこう切り出してきた。
「続けて」
このタイミングで、此方から聞けることは無いので続きを促す。
「はい。単刀直入に言いますね。貴方方をずっと見てました」
不気味だが、今驚くとこでは無いな。
コチラの沈黙を、続きの催促と捉えたようで、話を続ける。
「事の発端…は長くなるので、貴方方を観察する切っ掛けをお話します」
そうしてシーラの口から語られたのは、さっきのダンジョンコアの話…ではなく。
ジャングルの生物を救った事が理由と言った、
そして、今回接触の決め手となったのが、生物達の意を汲み取り、身を引いた事であると言う。
「端的に申せば、貴方たちの精神面に共感し、協力を得られないかと声をお掛け致しました」
コチラの首を傾げるリアクションに。
「と言っても、これでは訳が分からないでしょう」
それから長いという、事の発端を聞いたが…確かに長い。なので纏めると。
・かつてエルフ達が住んでいた惑星[エルフィン]。
・魔法の使い過ぎに因る環境汚染で衰退。
・必要に迫られ急速に科学を発展させるが、惑星の汚染を増長。
・なんとか箱舟の完成を間に合わせるも、[エルフィン]は死の星に。
・このゲームのバックボーンの船団に合流。
・現在に至るまでにエルフにも多様性が生まれる。(純血種はハイエルフと呼ぶそうだ)
・最近、様々な技術の融合で[エルフィン]再興の機運が高まる。
・新たな問題として、過酷な環境に適応した生物の脅威が挙がる。
・「ならば駆除すれば良い」という案が出るが、それでは何も変わらないという事で却下。
・ある程度の殺生は仕方なしにしても、積極的な排除は望まない。
・しかし生物が凶悪過ぎて、自衛しながらの再興など叶う筈もなく。
・なら理念を分かってくれそうな助っ人を探そう。
と言うのが発端で、ここからが本題。
「要はその凶悪な生物が跋扈する、[エルフィン]の再興に手を貸せと」
「はい、勿論報酬は弾みますのでどうか…」
何で俺達?と聞くと、繰り返しだが、動物の意志を尊重した点と、[再誕]直前の強さを知っているからと言う。
うーん、不気味だなぁ…。
「1つ気になるんだが、俺らの内輪話に乱入した絡繰りは?」
「あれですか?アレは大気中の魔素を利用して、貴方方のデバイスをハッキングしました」
ニコッと見惚れる程の笑顔で、空恐ろしい事を言ってのけるシーラ。
ってアレか、実際にPCを云々じゃなく、ゲーム内チャットを覗き見するスキルか何かが在る様だ。
…それはそれでこえーなおい!!
「そんなことをして、俺らの不信を買うとは?」
「勿論礼を失する事は重々承知してますが、貴方方なら大丈夫と確信してやりました」
ここまで言われたらもう断れないな。
「分かった。出来る範囲で引き受ける事にするよ」
こうして、我が社とシーラとの間に同盟が結成された。
翌日。
「おはようございます」
ユキと2人でログインし、潜水艦でスポーン。
「それで?具体的にはどうすれば良いんだ?」
目的については既に把握したが、手段についてはまだ説明が無い状態だ。
「勿論現地での力仕事ですよ。では参りましょう」
シーラに促され、別に部屋に入る。
其処はテレポータールームで、これで[エルフィン]に跳ぶそうだ。
3人で装置に入り、一瞬で転移が完了した。
「ようこそ、我が故郷[エルフィン]へ」
こうしてエルフの故郷へ足を踏み入れた。
周囲を見ると、円形の祭壇っぽいものの上に立っており、周囲はストーンヘンジの様な柱が規則正しく立ち並んでいた。
昔は魔法文明だった事の表れなのか、テレポーターもそれっぽいデザインだった。
「ここは[エルフィン]のホーム。今から基本的なルールと施設の案内…」
シーラ―が言い掛け、転移装置が発光。
「おおう、ここが[エルフィンか]」
「なんかここだけ純ファンタジーみたいですね」
「丁度私の本体も居りますので、彼方へ合流してください」
マサとベルとシーラの分体?が現れた。
分体がテレポーターで消え、マサとベルが此方へ向かって来た。
「では4人纏めて案内しますね」
そして、一通り案内と説明を受け、シーラともパーティーを組んだ。
「えーっと、2つほど良いかな?」
「どうぞ」
「分体って?」
「ああ、テツさんの[ドッペルゲンガー]に似た能力…では無いんですが、簡単な受け答えが出来るコピーみたいなものとお思い下さい」
「解った。じゃあもう1つ、ここってシーラ以外居ないのか?」
此処へ来て以来、案内の最中含め他のエルフを見かけないんだよな。
「そうですね…身内の恥ですが早いとこ言うべきですね。先ず[エルフィン]の復興ですが、ハイエルフ以外はさして望んでいないのです」
どうも多様性が生まれた事で、今更昔の生活に戻る気も無ければ、そんな事に汗を流す意味も見出せないとの事だ。
「これについては致し方ないと思います。既に他の種族に混ざりその恩恵に与った者が、今更堅苦しい伝統や規則に縛られるのを良しとしないのは、重々承知しています」
この辺りは納得できます。ですがとシーラは続ける。
「一部のハイエルフ達は頂けませんね。誇りだの矜持だの囀る事に関しては表彰台レベルで、いざ行動をとなると、動く事を拒否し、結果だけ享受しようとする始末」
「所謂老害ってやつか」
「その通りです。知っていますか?故郷そのものは手を伸ばせば届く位置に健在しているのに、再開拓すら消極的で、そのくせ血筋がどうのと他種族に混ざる事を拒否しといて、他種族に寄生しようとするハイエルフがどれだけ蔑まれているか…」
「それは…まともな人は何処に行っても辛いな…」
「ええ、ですからそういった連中を利権に絡ませない為に、大半が各地でロビー活動に従事し、再開拓は私1人で行ってます」
ええ!?それはあまりに後ろ向きな…もっと有意義に動けないのか…。
「言いたい事は分ります。ですが実物を見ればすぐに分かります…。あれらはもう動くだけで害を振り撒く存在です。なら例え非効率でも奴らを一ヶ所に封じ込め、いかなる場所にも干渉できないようにする方が、ずっとマシだと」
「どんだけ酷いんだよハイエルフの老害…」
「それはもう底なしに…何しろ寿命が長いので、一度権力の座へ着くと…」
…うん…確かに歪んだカルト持ちが長い事、権力を持つのは相当不味いな。
「まあ、この状況は解ったが…1人で此処までホームを築いたのか」
「凄いわね…クオリティだけなら初期のベース以上よ」
「そうだな、敵襲を捌きながら建築…超人だ」
「凄いですね、一体どれ程多芸なら此処までの偉業を…」
俺達は素直にシーラを賞賛。
「お褒めに預かり光栄です。幸い私もハイエルフですから…時間だけは有り余っているので、根気の問題ですよ。それに偶にですが手の空いて者が手伝ってくれたりするので、そのお陰でもあります」
話も一段落したので、お次はホームの外を案内してもらう。
さあ、いよいよ本番のスタートだ。
次も二週間ほどで。




