第二十話
~前回までのあらすじ~
遂に始まった超級試験。
アンデッドの執拗な攻勢に気力もリソースも削がれ、這う這うの体で洞窟へ退避。
残り九日間、地獄のサバイバルが始まる…。
残り九日間、地獄の後退劇を始めて直ぐに悟る。
「うわぁ…なんだこのアンデッドの質と数は…」
狭い洞窟の入り口に殺到するアンデッド共。
「俺は先行して罠を仕掛ける。足止めは任せた!」
ミーチャがが先に退却し、罠作りを開始。
俺達は罠が十分設置されるまで、時間を稼ぐ。
そしてここに来て、モンドが真価を発揮する。
「フフフ…特濃の聖水は痛かろう!!」
どこかで見たことある、このゲームで初めて見る、炸裂してから燃えて持続する聖水。
更にアンデッド特効があるのか、中々に効いている鞭。
狭いとはいえ、横に5人は並べる広さが有る為、リーチの長い武器は有利だ。
「無理に倒す必要は無い、足を破壊して後続の妨害に専念するんだ」
カイルがローキックでゾンビの脚をへし折りながら、俺ら若手に対アンデッド戦における、時間稼ぎのコツを教えてくれた。
俺に出来る事は無いので、[ドッペルゲンガー]を都度使用し、原木畑をぎっしりと敷き詰めていく。
ギル、やっくん、モンドの3人は指示に従い、実体を持つアンデッドは足を潰す方向にシフトした。
これにより、無傷のアンデッドが腹這いのアンデッドを追い越そうと混雑し、敵全体の進行を大幅に遅延させる事に成功した。
二十三日目。
存分にアンデッドの脚を破壊し、畑で塞き止め、豚と象のコンビが大暴れして押し返し、正直退く必要があるのかと思ったが、直ぐに理由を悟った。
結局アンデッドをどれだけ防ごうと、此方の空腹や睡魔によるガス欠は、遠からず発生する。
その時に時間を稼ぐ為の退却だったのだ。
ミーチャが十分な罠や溝を作り終えて、知らせに戻って来てから全員で下がり、今しがた一人数時間ずつの休憩を終えたところだ。
既に目の前には無傷のアンデッドが迫っており、再び時間稼ぎが始まった。
だがしかし、現在のウェーブ数は不明だが、昨日に比べ、アンデッドが増々強力になり、足止めも中々に厳しくなってきた。
「遂にこの時が来たか!」
今までの俺は、基本的には鍬を振るう位で、使い魔をメインに支援に徹していた。
だが最早それでは足らず、徐々にアンデッドに押し込まれ始めている。
「皆!俺は奥の手を使うから、少しでも力の温存をしてくれ!」
俺は即効性の取り回しに優れたタブレットポーションを準備し、アンデッドの大群に対面する。
そう、奥の手とは俺自身がタンク役を引き受ける事だ。
当然凄まじい勢いで攻撃が飛んでくるが、ある程度は豚が吸ってくれる。
しかしそれでも間に合わない猛攻に、俺のHPは消し飛びLPも一瞬で10万20万と削られる。が、そんな事には動じず[ドッペルゲンガー]と<鍬の一振り>を発動。更に豚がリスポンし、俺へのダメージが短時間だが遮断され、その間にHPとLPを全快させる。LP約84万は伊達じゃないのだ。
更にダメ押しとばかりに、ドッペルも<鍬の一振り>を発動する。
今の俺は、ランタンをホルダーに着けてる為、武器は鍬のみ、当然鍬を使うしかないので、ドッペルも必ず…とはいかないが<鍬の一振り>を使ってくれる可能性が非常に高いのだ(方向は兎も角)。
全身ゾンビに噛まれ、スケルトンに殴られ、レイスにお触りされながら、ポーションや殺菌剤等のリソースを、貴重な時間に変換。
ああ、こんな時にマサが居たらウィニングラン状態を満喫出来ただろうに。
居ない人間を思い浮かべても仕方ないので、思考を切り替える。
兎に角一秒でも稼ぐ為、周囲をアンデッドと使い魔で埋め尽くされた、満員電車状態で足元に鍬を振るう。
ただ流石にこれでは不自由過ぎるし危険なので、再び退却を敢行した。
二十四日目。
数々の足止めを乗り越え、目前に迫るアンデッド。
昨日と同じ手段を取ろうとしたが、もう使い魔が通じなくなってきた。
辛うじて、[聖人]の2体が抵抗出来、豚はリスキル状態に陥っている。
[ガーディアン]と<親子蛇>の父蛇は相変わらず超強くて、未だにアンデッドを切り伏せたり締め上げている。
象はその耐久力と巨体で一瞬持ち堪える程度だ。
後は鼠とマウスが判定の小ささで頑張っている程度で、それ以外は事実上の戦力外になった。
という事で、ここは仲間に奥の手を使ってもらう。
最初に札を切ってくれたのはルーカスだ。
「漸くこいつの出番が来たか…」
そう言い、今まで使っていた弾薬を仕舞うルーカス。
「これはタングステン鋼製の弾薬で、ダイヤモンドコーティングを施した逸品だ…実体を持つものならアンデッドだろうが関係なしに吹き飛ばせるぜ」
如何にも高そうな輝くマガジンを取り出し、リニアライフルに装填した。
「記念すべき一発目だ、吹っ飛べ!」
キュイーン…ドシュッと音と共に発射された弾丸がゾンビの胸部に直撃、煮あがった大根に箸を刺すかの如く、あっさりと貫通した弾丸は、後列のゾンビを3体消し飛ばし4体目に食い込んで止まった。
『おおおお!!』
感動で声が出る俺とギルにやっくんとモンド。
「ハハハ、ルーカスのやつ張り切ってやがるな!」
「後輩に良いとこ見せたくてたまんねえんだな」
「随分と奮発しやがって…ハードルが上がっちまったじゃねえか」
ウィルにカイルにミーチャがヤジを飛ばす。
ルーカスの活躍が、他のおっさん3人に火を着けた様だ。
二十五日目。
「秘蔵の弾は昨日使い切ったから、俺は半分脱落状態だ」
「分かった、お疲れ様。引き続き援護射撃を宜しく」
「ありがとうございます、最後まで宜しくお願いします」
昨日大活躍したルーカスを、俺とギルで労う。
「んじゃあ今日は僕が時間を稼ぎましょう」
どうやら今日はやっくんが頑張る様だ。
今まで使用していたランタンを仕舞い、鳥かごの様な入れ物に、何やら文字やら模様やらが刻まれた球体が収まっているランタンを取り出した。
「ほう…これはまたとんでもない骨董品を出してきたな」
「知っているのかウィル?」
物知り顔のウィルに説明を求める。
「アレは[ランタンオブスピリット]。ざっくり言えば、魂にまで影響を及ぼすランタンだ」
「ええ、これは偶然手に入れた物ですが、今ではここぞという時の切り札です」
その性能はというと、兎に角強力な浄化の光を発し、アンデッドを大幅に弱体化させ。レイス等の実体を持たないアンデッドには劇薬レベルの効き目だという。
更に非常に広範囲に届き、LPを注ぎ込むとその効果と範囲が更に高まるという。
反面、非常に壊れやすく、兎に角直ぐに熱が溜まり、連続使用に耐えない代物だとか。
「持って今日一日です」
との事なので、存分に奮って頂こう。
[ランタンオブスピリット]の効果は一目瞭然だった。
やっくんが取り出して直ぐ、戦力外だった使い魔達が息を吹き返し、アンデッドを抑え始めた。
これまでだって、俺やウィルにやっくんのランタン、それにヘルメットのランタン機能と<家族蛇>のガラガラ音に晒されてきたアンデッド達。
それでもなお、大半の使い魔が歯が立たなかった状況が、あっさりと覆る。
一体どれだけえげつない弱体率だろうか。
これまで防戦一方、後退のみの籠城戦が、ここに来て初めて押し返し始めている。
ランタンにLPを注ぎ、消耗するやっくんにポーションを提供し、この千載一遇の機会を活かし、少しでも逃走空間を広げに掛かった。
二十六日目。
昨日、僅かながらアンデッドの群れを押し返し、大活躍をしたやっくん。
宣言通り、一日でランタンがお釈迦になり、力を出し切った形だ。
「今日は俺が身体を張らせてもらうね」
モンドが宣言し、前に出る。
「さあ、ここからは俺の切り札、[状態変化]を解禁するよ!」
これまで通り、聖水を取り出し放り投げる…と思いきや。
「[状態変化]気体!」
と聖水に何かをし、アンデッドの手前に投げつける。すると容器が爆発し、霧が広範囲に発生。一斉に動きが鈍くなるアンデッド。
「これは俺のアビリティ、[状態変化]を使った攻撃さ」
「これは…聖水を気体に変化させたのか?」
「そうだよ、こうすれば広範囲に効果が及ぶでしょ?」
「確かに。でも密度が減った分効き目は?」
「勿論下がるよ、だからこれ用に更に濃縮した強力な聖水を使ったんだ」
曰く、超高級な秘蔵品故に、在庫は心許ないという。
だが甲斐あってかなりのアンデッドの弱体化に成功した。
他には固体化して、切ったり刺したりも出来るとの事だが、今回はしない様だ。
二十七日目。
モンドの身銭を削る献身のお陰で、一日を凌いだ。
この切り札のリレー。今日そのバトンを引き継ぐのは…。
「そろそろ俺の出番だな」
いつもの道着に見えなくもない防具の上に、何やらゴツいベルトを装着したカイル。
「カイルも漸く本気モードだな」
「久しぶりにあの装備を見るぜ」
「これは試験後は筋肉痛コースだな」
ウィル、ミーチャ、ルーカスの順で懐かしむ様な事を言う。
「恐らく全力は一日が限界。後のことは任せた」
カイルが前に出て、見事な手際でゾンビを転がし、そいつを捕獲してジャイアントスイングの要領で、ゾンビを敵の後方に投げ飛ばす。
それを次から次へと繰り返し、短時間で敵のラインを後退させた。
『おおおお!!』
またもや沸く俺ら4人。
「グ…やはり長くは持たないか…」
苦痛と悔しさを滲ませ、カイルが零す。
「[パワーベルト]は元々短期決戦用の装備だしな、おまけに体も若くない」
「違いねぇ…こうして客観的に見ると、年寄りに冷や水ってこういう事かってなるな」
「ホント、歳は取りたかねえな」
「おい!うるせえぞ外野共!」
好き勝手に言う3人に、抗議の声を上げるカイル。
ベテランは余裕が有って頼もしいな。
二十八日目。
「おおお…体が痛ぇ…」
無事。装備と身体を壊したカイルが半脱落し、ウィルとミーチャに後を託す。
「こうなれば儂も全力を尽くさねばな」
ウィルが出会った当初の様な雰囲気になり、本気を出す様だ。
いつものシンプルなランタンを仕舞い、頭蓋骨型のランタンを取り出す。
「ム…ウィルのやつアレをやるのか…」
ルーカスが呟く。アレとは?
「スーッ…ハー…んんん!!」
右手に持った骸骨ランタンを前に突き出し、左手翳して力を込める。
すると、地面に六芒星の魔法陣が3つ現れ、そこから鬼が現れた。
体色は赤く、鋭い牙に射殺すような眼光、強靭な肉体が引っ提げるは巨大な金棒。
「ハア…ハア…」
鬼の召喚を終えたウィルは疲労困憊だ。
「アレがウィルの切り札、最強クラスの従魔、[極卒]だ」
カイルが説明してくれた。
「ウィルは…[召喚士]だったのか…」
「いや、そういう訳ではないが、まあ奴の切り札がアレだったってだけだ」
俺の疑問をミーチャが解消してくれた。
「ハア…同時に3体か…若い頃なら5体はイケたんだがな…」
そう独り言ちるウィル。直ぐに気を取り直し、[極卒]達を統率する。
ウィルの命に従い、押し寄せるアンデッドを千切っては投げる[極卒]。
『おおおお!!!』
既にあり得ない程強くなっているアンデッドを、なお圧倒的な暴力で蹂躙していく様は圧巻の一言。
カイルが言った、最強クラスに偽りなく、送還されるまでの極短時間の間に、随分とアンデッドの波を押し返してくれた。
この貴重な貴重な距離と時間は、最後のスパートを見越し、休息に充てさせてお貰った。
二十九日目。
ウィルの大活躍で、背後に十分なスペースを維持しつつ、十分な休息を取れた。
「おっさん勢の大取りは俺が努めよう」
ミーチャが袖を捲り、両腕をブンブン回す。
「ミーチャの奴、大地を割る気だな」
「まあこの局面ではそれしかあるまい」
「さて、今の状態でどれ程割れるか…」
アンデッドとの距離がかなりある為か、目を閉じ静かに精神統一をするミーチャ。
暫くして、アンデッドの波が視界に入った時、ミーチャが動いた。
「うおおおおお!!」
裂帛の気合と共に、愛用のスコップを地面に突き刺す。
『おおおおおお!!!!』
ドゴォ!!という轟音が木霊し、洞窟の幅いっぱい、距離にして数十mの地面を深さ10m程陥没させた。
このあり得ない光景に俺達4人は感嘆の声を上げた。
「ぜぇ…ぜぇ…もうダメ…」
力を出し切り、フラフラのミーチャが後退し、眠ってしまった。
アンデッドの方を見ると、レイス系はそのまま向かって来るが、ゾンビ系やスケルトン系は次々と谷に落下していく。
その際、落下の衝撃で足を破壊されてるらしく、谷底で這いずるアンデッド共。
この様子なら、谷がゾンビで埋まり切っても、相当な数のアンデッドの移動速度落とせた事になるだろう。更に、這いずるアンデッドの上を歩く事で、後続のアンデッドの足場も悪化させたので、相当な時間を稼いでくれた。
最終日。
遂に此処まで来た。俺とギル以外はリソースも尽きた。
後はこれまで温存してきた背後の空間と、物資を投げうって生き延びるだけだ。
前方に目をやると、谷を埋め尽くし、それを足場に渡って来たアンデッドの群れが押し寄せて来る。
その1体1体が馬鹿げたスペックに引き上げられたアンデッド。
当然まともに張り合えるわけもなく、抵抗虚しくどんどん押し込まれて行く。
「まあ、想定通り…だがキツイ…」
使い魔も、[ガーディアン]のみが抵抗出来る状態だ。
そして、いよいよ逃げ道の終わりが近づいた時、ギルが動き出す。
「僕が時間を稼ぎます、その間に皆さんは立て直しを図ってください」
このままでは誰かが脱落するのも時間の問題。そうなってしまっては、そこから総崩れに発展し、全滅は必至だろう。
ギルがランタンの底に十字架を差し込む様にドッキングさせる。
すると今までの刀身とは比較にならない程の、長く太いエネルギーの刃が発生した。
「では行きます!でやーーー!!」
一瞬で先頭のレイスへ詰め寄り、袈裟切り一閃。一撃でレイスを浄化。
更に返す刃でゾンビを切り捨て、スケルトンのあばらを切り裂く。
だがアンデッドは怯むことなく前進し、ギルを囲む。
するとギルはしゃがみ込み、合体剣地面と平行に掲げる。
「顕現せよ![双刃聖光]!!」
ギルの宣言に呼応し、ランタンの底に嵌った十字架からも刃が発生。
背後から襲い掛かろうとレイスを貫き、そのまま周囲を薙ぎ払い、群がっていたアンデッドを一掃した。
「とんでもないな…だが…」
「ああ、あれは長くは持たない、テツ背中を守ってやってくれ」
「応!!」
ウィルに頼まれなくとも行く心算だ。
「スーッ…フー…やはり今の自分では厳しいですね…」
なおも迫る大群を前にし、弱気になるギルの横に立つ。
「いやあ大したもんだ、幾ら俺より早くこの業界に入ったとはいえ、こうも差を見せつけられると嫉妬しちまうぜ」
勿論、得手不得手の話になれば、また違った見解になるだろうが、少なくとも敵を確実に屠るという点において、ギルは俺の遥か先を行っているだろう。
「ハア…ハア…テツさん…それ本気で言ってます?」
「半分」
「フフ、僕もね、貴方には嫉妬してましたよ」
仲間の援護を背に、お互いの短所をカバーしながら会話を続ける。
「自分よりも後から入って来たくせに、とんとん拍子でプロ、上級と昇格するテツさんが羨ましかった…」
「そうか…隣の芝生はなんちゃらってやつだな」
「そうかもしれませんね…ですが今ではこれほど頼もしい人は居ないと思ってます」
ギルの負担を少しでも減らす為、マッド謹製の氷柱ポーションも惜しみなく投入。
「光栄だな、俺も心強く思うよ…そして…」
「どうしましたか?」
「いや…なんでもない(俺の考えすぎかもしれんしな)」
流石に会話をするのも億劫になるほど消耗し、ギルもランタンと十字架を分離させていた。
後は死力を尽くすのみ。
「いよいよ後が無いな」
長い洞窟を後退し、遂に避難してきた入り口に追い込まれた。
外は既に真っ暗で、この試験の残り時間が僅かな事が窺える。
しかし、その僅かな時間すら、このままじゃ凌ぎ切れないだろう。
「何もしないで諦めるのは性に合わない。もう一回海に出る!」
当然ルーカス達の言葉を思い出すが、どの道詰みなら可能性に賭けてみよう。
海に出れば、恐らく役に立たない聖水を全てアンデッドに投げつける。
その隙に<鍬の一振り>を海に向かって発動。即座に大量の鯱に荒らされる。
必死に畑を追加しつつ、氷柱ポーションも全て投じ、一時的に洞窟側のアンデッドを完全にシャットアウト。
[ドッペルゲンガー]と再使用可能になった<鍬の一振り>を発動し、足場を確保した。
全員で洞窟を脱出し、鯱の群れから足場である水田を守る。
そしていよいよとなり、俺は最期の悪足掻きに打って出た。
用意しておいた最高級のポーションを待機しておき、仲間の為に最後の<鍬の一振り>を使い、仲間の制止を振り切り海に飛び込んだ。
「うおおおおお!!」
「テツさーーーん!」
仲間たちの悲痛な叫びが薄っすらと聞こえて来る。
俺は今、鯱に銜えられ、海中を引き摺り回されている。
こうなると、例え84万ものLPが有ろうと、直ぐにレッドラインに到達。
幸い、<不死の眷属>により大量に召喚される蝙蝠が鯱の咥内で暴れ、豚がある程度ダメージを軽減し、使い魔が常に傍にリスポンし、僅かながらでも鯱に攻撃を加える為、極短時間解放されるので、息継ぎの機会も有り、溺死とポーションの使用失敗による紛失は避けらえていた。
何度も鯱に捕まっては解放され、また別の鯱に捕まってはを繰り返し、いよいよ物資の底も見えてきた頃、試験の終了と共に、俺達は教会の一室に戻っていた。
「コングラチュレーション!!見事だ!文句なしの合格だ!」
拍手喝采で迎えてくれたフレディ部長。
「たったの8名で三十日を生き延びるとは、しかも多数のアンデッドを浄化し、行動範囲も極めて広い、歴代で間違いなく一番の成績だ」
行動範囲は…そら海上は逃げ回ったからな。
「まあ、話はこれくらいにして、おめでとう。別室で手続きを行う、では解散」
俺は皆に礼を言い、別室に移動する。
「そうだ、ウィル、カイル、ミーチャ、ルーカス、お前らも残れ、久々に呑もう」
4人は頷き、ロビーのベンチに座った。
あ、今回協力してくれた6人には、教会から消耗品の補償と報酬が出るのであしからず。
「さて、改めておめでとう」
「「ありがとございます」
「まさかたったの8人で完走するとはな」
「ベテラン勢のお陰ですよ」
「ハハハ、あいつらは本来超級になってた筈の男たちだからな、頼りになったろう?」
「ええ、部長は父達のことを良くご存じの様で」
「ああ、なんせ昔のパーティーメンバーだからな」
「「えええーー!?」」
俺は兎も角ギルも初耳か。
「まあ色々有ってな、あいつらは最前線を退いて、俺は組織に染まったのさ」
これ以上は聞かない方が良さそうだな。
「おっと、今はそれよりも…2人共超級への昇格おめでとう」
データの送信が終わった様で、メニューで確認する。
「おお、超級になってる」
「遂に…此処まで来ました…」
なんか感極まるな。
「2人はどんな能力に目覚めるかな」
ああ、まだ能力の開花とかあるんだな。
「それはそれとして、合格の報酬が有るから選んでくれ」
目録を手渡され、目を通す。
…ワーオ。インチキ装備やアビリティ、道具の宝庫だな。
一通り目を通し、気になった物をピックアップ。
[極光のランタン]:非常に強力な浄化能力を誇るランタン。また、浴びせ続ける事で敵に掛かっているバフを解除する。コスト100。
[50フリーホルダー]:コスト50までランタンを装着出来る。コスト0。
[微睡の香炉]:範囲内のアンデッドを鎮静化させ、それ以外の生物を眠くする香りを出す。コスト300。
[不協和音のオルゴール]:アンデッドを混乱させ、機械を狂わせる音を出す。コスト300。
[聖人の抱擁]:アンデッドから受ける状態異常の効果を反転する。
[トリックゴースト]:ただただ敵を煽る無敵の使い魔のゴーストを使役する。
等々、超強力なものが目白押しだ。
ただ再誕を控えた身だけに、コストの高い品物は候補から外れる。
となると、[50フリーホルダー][聖人の抱擁][トリックゴースト]が有力だ。
[50フリーホルダー]は単純にコスト0で、効果が強力だから。
[聖人の抱擁]は、今回の試験でもし有ったらと考えると、是非とも欲しい。
[トリックゴースト]これも良い。無敵の使い魔とか最高じゃん。
迷った挙句、選んだのは[50フリーホルダー]にした。
理由は再誕後に一番有利だからだ。
ギルも選び終わったようなので、お礼を言って退出した。
「それではテツさん、そしてやっくんさんにモンドさん。今日はありがとうございました。また巡回時に宜しくお願いします」
「ああ、今日はありがとう、お疲れ様」
「お疲れ様です」
「お疲れ~」
皆と別れ、PAに帰還した。
「あ~~…疲れた」
チョット休憩したかったので、ログアウトする。
「うわ!?どうしたんだこんなに近くで」
美雪が、真後ろで俺のプレイを覗いていた。
「おーい、どうしたんだ?」
さっきから無言の美雪。亜紀は横で黙々とプレイしてて我関せずだ。
「哲也君、あのギルって呼んでた子」
「ん?うん」
「アレって女の子でしょ」
なぜ分かった!?…ってそれがなんだっていうんだ?
「そうなのか?意識した事なかったな~」
何でゲームのキャラの事で、一々惚けてるのか自分でも分からんが、何故かこうするのが正しい気がして、素知らぬふりをした。
「ふうん?まあ良いけど…(あれは絶対恋する乙女の目だったわ…)」
後半聞き取れない声量で何かを呟く美雪。
「おーい?」
「ねえ哲也君…やっぱり良いわ」
「えー?」
なんか良く解らないが、美雪が会話を一方的に会話を切り、ゲームを始めてしまった。
なんなんだ?まあいっか。
休憩中、ふとNPCの扱いに疑問が沸く。
(そういえばNPC…ギルは修行中という事で納得できるが、今回のウィル達の強さはなんだ?)
出会った初期の頃に、加齢で巡回がしんどいと言っていたが、今回の助っ人時のスペックなら、普段の巡回では傷1つ負わない筈だ。
(ただのイベント補正なのか?ゲーム的な都合と言えばそれまでだし…それともタイマーランクでも搭載されていて、時間と共にNPCもどんどん強くなるのかな?)
うん、次会った時に、元の強さに戻ってたら、このネタで揶揄ってみるか。
このゲームのNPCがどこまでメタな会話に付き合ってくれるか楽しみだ。
ゲームを再開し、現状の確認をする。
「えーっと…装備品の合計コストは…」
シルク謹製のシャツとズボンはコスト0だし、ランタンは1個10で2個あるから20。
さっき貰ったホルダーも0、[骸の鎧]は20で[タングステン鋼の鍬]が20。
ヘルメットは預かってもらえるから計60か。
「さて…」
俺は、さっきから矢鱈と存在をアピールしてくる、[昇華された骨]に目を向ける。
「これはそういう事なんだろうな…残り40で収まるかなぁ…」
俺は[昇華された骨]200と、ある物を持って、再び教会に向かった。
「お久しぶりです」
久しぶりに研究室のギブン先生を訪ねる。
「久しいな、今日はどうした?」
「実はですね…」
俺はアピールの激しい骨と、発光するランタン、それとずっと死蔵していた[阿修羅の核]をテーブルに置き、超級に昇格した事を伝えた。
「成程、つまりこの骨と核とランタンが惹かれ合っていると」
「ええ、なんか『昇華された骨]から『三枠より一枠の方がコンパクト!1体分より3体分の方がお得!良い物持ってるじゃないか、それを我々に使え!』という意思というか要求が伝わって来てまして…」
当然、この良い物とは[阿修羅の核]の事である。
先生は、骨、ランタン、核とそれぞれを調べ、こう述べた。
「フム、どうやら君の格が上がった事で、[ガーディアン]も更なる強さを求めてる様だな」
「つまり?」
「その鎧の改造を要求している。という事だ」
まあ流石に想像は付いていたので、鎧を脱いで先生に預ける。
「それではお願いします」
「ウム、そう時間は掛からんから少し散歩でもしてくると良い」
ならホーム内を軽く回ろうか。
教会を出て、行政地区に向かう。
「なんだ?何でこんなに人が多いんだ?」
行政地区には、プレイヤーと思しき人が大勢忙しなく動いていた。
なんか効率のいい依頼でもあるのか?それとも再誕でLvが下がって人達かね。
良く解らな現象に首を傾げながら、研究地区に向かう。
「農業センターか、入ってみるか」
種苗コーナーに向かい、売り物を眺める。
チラッと[薬草の種]の値段を確認。1粒3200!!まるで金相場だ。
虚しくなり工業地区へ移動。
商業地区へ向かいながら、周囲を見渡していると、車両整備工場が目に留まる。
「ビークルか、いいなぁ…うちも一両何か所持するのも良いかもな」
現状カツカツの懐事情では、とてもじゃないが手は出ないが、何時かは強力なビークルを運用してみたいな。
商業地区に着き、出店を冷かす。
これといって必要な物も無いので、教会に戻った。
「戻って来たか、出来てるぞ」
テーブルの上に置かれた、以前に比べ隙間が減り、ゴツゴツしく変貌した鎧。
早速装着してみる。
[阿修羅の骸]:ゲートキーパー[阿修羅スコーピオン]の核を繋ぎに、[昇華された骨]300本分を組み合わせた鎧。魂の器。コスト60。
おおお!ギリ再誕後のチェストに収まるコストだ。
今回もお代はいいと言うので、お礼を言い教会を辞した。
んだが、ひとつお願いがあって、フレディ部長を訪ねた。
「…と言う訳でして」
「成程、生まれ変わった[ガーディアン]の試運転をしたいと」
「良いんじゃないか?」
「ほうほう、あの[ガーディアン]が更に強力になったのか」
「これは良い見世物だな!!」
「良い酒の肴だ!フレディ!」
「分かった分かった!この酔っ払い共め!」
いや、貴方も大分顔が赤いですよ?
宴会状態の部長たちを訪ね、試験会場を貸して貰う交渉をし、見事に成功した。
「では行きます」
「イエーイ!!」
「やれ――!!」
完全に出来上がってる親父共に送り出され、試験の復習を開始。
十五日目。
今回は、殆ど物資を持っていないので、一度大ダメージを受けたら終わりだ。
だが今の所は大丈夫、なんせ最初から洞窟の陸地からの入り口を探し出し、そこに籠ったからだ。
横に佇む[ガーディアン]を見る。
島に転送された直後、バキャン!と鎧がパージされ、骨が集合してスケルトンになる。
ただその見た目は依然と違い、頭が3つ腕が6本脚も6本という異形だった。
うーん…なんか足が多い気がするが…まあいっか。
そんな[ガーディアン]の雄姿はまだ見れていない。
二十一日目。
使い魔が通じなくなってきて、いよいよ[ガーディアン]の出番が到来した。
6本の腕にそれぞれ骨の剣を2本。骨のクラブを2本。骨の槍を2本持ち、6本の足を巧みに操り見事な立ち回りを演じた。
敵との距離がある内は四本の足を地に根差し、残りの脚で踏み込み、尋常ならざる勢いで繰り出される槍の突きは、ゾンビを易々と貫く。
近寄って来たスケルトンは、ボーンクラブで粉砕。
レイスは剣で切り伏せた。
「おお…なんという安定感、ん?なんだ?」
[ガーディアン]の圧倒的な強さに感心していたら、ヘルメットが背後から迫る音を拾う。
暫くして、大量のアザラシのゾンビが押し寄せて来る。
「おいおいこんなの聞いてねーよ!?ぬわーーー!!」
あっけなく波に呑み込まれた。
「アッハッハッハ!!」
「いや~~、見事に罠に引っかかったな」
「まさか三度目の挑戦で初めて引き籠り防止キャラに遭遇するとか」
「ちょっと遅いが良い洗礼だったな」
「コレだよ!本当はこういうのが見たかったんだ!」
酒が入り、上機嫌な親父たちがものっ凄い嬉しそうに煽ってくる。
「さっきの試験で、最初から洞窟に籠らなかった本当の理由はアレか?」
「ああ、引き籠り防止キャラ…所謂永パ防止キャラだな」
俺の質問にルーカスが堪えてくれる。てか永パ防止キャラって…ケイ〇シャーク的なアレか。
「成程、聞く感じだと、一ヶ所に二十日以上居るとダメなのか?」
「察しが良いな、その通りだ」
ほえ~~、そんな初見殺しの罠まで有ったのか。
「そうなると部長の突破方法だと必ず襲われてますよね?」
「むざむざ侵入を許すとでも?」
「ですよねー」
知ってれば完封出来る模様だ。実際強い事は強いが、程々止まりだったな。
なんにせよ、実戦で[ガーディアン]の力も見れたので、親父たちの玩具にされる前にとっとこ退散しましょうか。
PAに戻り、いよいよ再誕を行う準備をする。
チェストの中身を全て売りに出し、丁度コスト100になった装備を代わりに突っ込む。
ヘルメットはさっき預けてきてるので心配ご無用。
有り金は全て種に換え、準備完了!
教会に行き、いつもの転生と同じ手順を踏み、再誕開始。
『あなたはこれ以上転生も覚醒も出来ません。ですが再誕の儀を経てば、再び高みを目指す事が出来ます。再誕しますかYes/No』
勿論Yesを選択し、話に聞いていた[ギフト]の選択に入る。
[神獣の加護]:STAゲージが2本追加される。
[獣王の威光]:範囲内の敵から受けるダメージを20%軽減。
[猛虎の化身]:移動速度とジャンプ力が50%乗算。
[ゴリラの力]:[筋力]が150%乗算される。
[百獣の王]:首から肩まで完全無敵になる。
[ワイルドハンター]:あらゆる攻撃に[出血]と[疲労]の状態異常を付与し、元からついてる場合は更に強化する。
[真祖]:[生命]を100%乗算する。
[原初の農耕牛]:犂を装備したオーロックスの使い魔を使役する。一度に開墾出来る範囲を4倍にする。
[農具の深奥]:農具に[科学][知力][精神][集中]の補正が乗るようになる。
[生命の泉]:毎秒LPが1%回復する。
[発狂]:LPが30%以下の時、最大LPの5%以上のダメージを受けると、3秒間与えるダメージが3倍になる。
[生への執着]:LPが5%以下の時、[生命]が1000%最終数値へ乗算される。
[超生命力]:LPが80%以上の時、一撃で死ななくなる。
[九死に一生]:十分間に一度、死んでもLP1でその場復活する。
[大吉]:ダメージを10%の確率で無効化。
[幸運の女神の加護]:[幸運]を300%乗算する。
[ランナーズハイ]:スプリントでSTAを消費しなくなる。
[散歩の神]:どんな傾斜や壁ですら歩く事が出来、悪路でもペナルティを受けずに移動出来る。
以上の18のギフトから1つ選ぶ様だ。
「うーん…流石に超強力を謳うだけあって、全部ぶっ壊れ効果だな」
見たところ、選択肢に登場したギフトは全て、覚醒させた因子やパラメータに関係してる様だ。
どれを取ろうか本気で悩むが、1つずつ触れていこうか。
[神獣の加護]はシンプルに、STAゲージを2本追加するもので、詳しい説明によると数値も回復管理も個別に行われるとの事だ。
つまり、インプラントとナノマシンで強烈なスタミナ回復阻害を受けている現状では、実質元の1.5倍程の効果しか得られない事になる。
でもそれらが何かしらの手段で改善されたら、とんでもない事になるのは明白だ。
[獣王の威光]。範囲内という制約は有るが、この割合軽減率はイカレテル。
これを[体力][装甲][防護][障壁]の、防御力の恩恵を受けない4つのパラメータと組み合わせた時、そのしぶとさは想像を絶するだろう。
[猛虎の化身]。これは移動速度とジャンプ力を全ての計算後に50%上昇させるもので、両方にブーストを掛けれまくるビルドなら化けるギフトだろうが…、ジャンプは伸ばす余裕が無いなぁ…。
[ゴリラの力]。筋力補正が乗る武器は新次元へ突入する。ウホッ。
[百獣の王]。うーん…狭い範囲だが完全無敵か…。可能性は感じる。
[ワイルドハンター]。コレ、ランタンがヤバい事になりそうだな。光を浴びているだけで二つも状態異常を掛けられるんだもんな。
[真祖]。これは[ヴァンパイア]由来のギフトで、[生命]を100%乗算するという狂った効果をしている。ついさっきまでの俺がコレを取ると、LPが170万近くになるのだから、イカレ具合は相当だろう。
[原初の農耕牛]。開墾範囲4倍化+壁用使い魔のハッピーセット。
[農具の深奥]。一体どんなビルドを想定したギフトなんだ?
インテリファーマー?でも全盛りすれば、土を弄くりながら敵も肥料にする愉快な事になりそう。
[生命の泉]。超強力な効果で、これが選択肢に出たプレイヤーは、これを取得する確率が相当に高くなりそうだ。
[発狂]。これはプレイヤーがボスの疑似体験出来るようなギフトだな。
[生への執着]。これはどうなんだろう…条件がかなり厳しい上に、この効果単体では何も生み出さないのがネックだ。
ついさっきの俺なら、LP42000以下の時に、[生命]が924万になるが、その状態で最安値最低コストのタブレットポーションを使うと、LPが46万も回復するので、他にもシナジーの強い何かが複数あるのなら、人によっては筆頭候補かもしれない。
[超生命力]。かなり便利なギフトだと思う。
[九死に一生]。[生への執着]との相性抜群。でも再誕が複数回行えるとしても、道のりが遠すぎて目先の利便性を取ってしまいそう。
[大吉]。このゲームでは、運が良い事は攻撃が勝手に避けた事を言うのか?
効果自体は単純に強い。10%は割と当てに出来るレベル。
[幸運の女神の加護]。乗算な上に300%なぶっ飛んだ上昇率。
金の力で周囲を圧倒したければ必須レベルだなぁ…。
[ランナーズハイ]。糞強い。ビルド次第で神と化す。
[散歩の神]。散歩って言ってるのにパルクールを軽く超越してるんですが…。
「うーん…迷うな…」
先ずこの中から外すなら、[獣王の威光][猛虎の化身[百獣の王][農具の深奥][発狂][大吉][ランナーズハイ]かな。
これらは現状、そして今後のビルドの展望を鑑みても、恐らくシナジーは生まれないだろうと判断し、除外した。
いや、厳密には[大吉]は捨てるには惜しいが、このラインナップの一番手で取るには、他に見劣りするから、ってのが正確か。
さて、残した候補について深堀していくか。
先ずは[神獣の加護]。
こいつは今後インプラントとナノマシンのペナルティが、何かしらの要因で軽減又は解除された場合、一躍ぶっ壊れの凶悪ギフトに生まれ変わるからだ。
と言うのも、ついさっき手に入れた、[50フリーホルダー]のお陰で、今後はランタンをお手軽に持ち歩け、鍬を常時装備するか、武器と交互に持ち換える事が容易となり、STAの使い道が格段に広がるのだ。
もし、ペナルティが解除されれば、<生存本能>で使い魔の復活はゲージ一本で事足りるので、武器を持ってかなり強力なスキルやCAを使う事も視野に入り、戦闘力が格段に上がる事が期待できる。
次は[ゴリラの力]。
これも最高ですよ。筋力補正のみの武器なら単純に攻撃力2.5倍。
当然パラーメータの[筋力]が上がるので、使い魔の火力も上がる。
勿論、使い魔のスペックはスキルLvにも依存するので、火力が2.5倍にはならないだろうが、その差で敵の防御力を貫けるかどうかが変われば、戦闘時の優位は相当に高まる筈だ。
もし、超級試験の時、最弱の蜂の攻撃がゾンビやスケルトンに通っていたら、それはもう快適な試験になってただろう。
そう考えればシンプルだが、俺との相性は最高のギフトとも言える。
次は[ワイルドハンター]。
これはヤバそうなギフトだ。一応状態異常は、乗る攻撃の威力に比例して蓄積値が決まる様なので、ランタンでは蓄積は微々たるものかもしれない。
しかし、あらゆると付いてる事からも、使い魔にも乗る筈だし、ランタンも数を増やせば効果を押し上げれるので、これはビルドの戦闘力を根幹から変える程の可能性を秘めたギフトだ。
次は[真祖]。
大本命の1つで、実質防御力2倍ポーションの効果2倍の壊れ効果。
当然これも[生命]自体を上昇させるので、使い魔も堅くなる。
前述の[ゴリラの力]でも語ったが、もしこれの有無で、最弱の蜂がアンデッドの攻撃から一撃耐えられるようになるとしたら、どれ程試験が楽なものになった事か。
最近STAペナルティと、試験の過酷さで、使い魔の堅さが如何に大事かを再認識したので、自身と使い魔の双方が恩恵を受けるこのギフトは是非とも欲しい所だが…。
お次は[原初の農耕牛]。
これは非常に期待が大きいギフトで、開墾範囲4倍も当然魅力的だが、ギフト由来の使い魔というオーロックスが凄い気になるところだ。
これ絶対[酪農家]の牛とは比較にならない程堅い使い魔でしょ。
しかも俺には[ボロボロの防柵]というアビリティまで存在し、このギフトが有れば守りは異常な程向上するに違いない。
次は[生命の泉]。
LPを瀕死に保つ所謂火事場系ビルド以外なら、恐らく全ビルドが欲しいであろうギフト。
LP1%/sというシンプルに強い効果。
[ヒール]系の魔法がクールタイム最低でも5分と考えて、このギフトなら5分でLP300%分回復するのだから、シンプルに強い理由は明白だろう。
そしてポーションの節約にもなるし、必要数が減ればコストの削減にもつながり、装備も強力になり、お金の節約にもつながる。
このギフト1つでどれだけの煩わしらから解放されるかを考えると、評価はストップ高間違いなしだ。
次は個人的に超気になる[生への執着]。
これ単体では条件の厳しさもあって、そこまでの強みは無い。
だが、いばらの道を踏破し、シナジーするものを揃えたら?その可能性を見たくないか?と欲望に突き動かされそうになる。
例えば[生命の泉]。今後ギフトを複数取得できた場合、コレを取得すると、再誕直前で言えばLPが42000を切った瞬間、秒間8400回復から92400回復に跳ね上がり、最低でもLP92401には回復する。
更に[真祖]も加えると、秒間16800回復から184800回復になる。
更に更に、[超生命力]が有れば条件を満たし易くなる上に、[生命の泉]の効果でLP80%以上維持もかなり現実的になり、[九死に一生]も有ればそのしぶとさは…。
という事で、今後の展開次第では鬼の様な効果を発揮するかもしれない、大器晩成型のギフトと言えるだろう。
お次は[幸運の女神の加護]。
[超生命力]と[九死に一生]は、[生への執着]で触れたので割愛。
効果自体は超強力だが、[幸運]を上げても戦闘力が上がるわけでも無いので、純粋に強さを求める場合は必要ないかもしれない。
しかし、このゲームはなにかと金がモノを言う事が多い。
売買、装備の強化、Lv上げ、ビークルの運用etc.…。
そしてもしもの話だが、採取でより多くの収穫が得られるという事は、流通が増え相場も変動する事になる。そんな市場操作にも威力を発揮出来そうなこのギフトは、ビルドと運用次第じゃゲーム内の経済すら左右しかねない可能性がある。
そう考えると末恐ろしいギフトでは無いか?
最後は[散歩の神]。
単体での効果では、ぶっちぎりの強さかもしれないギフト。
徒歩で谷の断崖を上り下り出来る。それだけで出来る事の広がりは凄まじい。
「ヤバい!敵に追い込まれた」ってシチュエーションで、背後の壁を悠々と登り始める事が出来るのだ。
戦闘時に本来出来ない位置取りが出来るだけで、俄然有利になるのは理解出来るだろう?
そんなこんなで、どれもこれも欲しいギフトばかりだが、決めなければ先に進めない。
「…[生への執着]を取ろう…将来性を信じて‼」
かなり迷ったが、これを含めたギフトが選択肢に出てきたユーザーなら、多分これを選ぶ人は相当少ない筈…、その点と将来性を取ってこれに決めた。
いやマジで頼みますよ!これで何にも相性の良いモノが出てこなかったら、欠陥ビルドも大概になってしまうからな…。
まあ…それならそれで良いんだけどさ…。
漸くギフトも決まり、お次は因子の選択に入る。
「記念すべき再誕後初の因子は勿論[獣人]!!…でなきゃSTA障害で身動きが出来ん」
と言っても、因子1つだけじゃスキルの効果もたかが知れる。まあ、今後への布石だな。
正直、持ってる薬草の種を売ったり、売上金を使ってさっさと2~3回転生しても良いんだが、折角だし心機一転初心に帰ってみようかと思う。
「お次はパラメータだな。さて…どうするか…」
先ず[幸運]は絶対取得する。なんせ<大蛇>が変化したスキルの<夫婦蛇>…が更に変化した<親子蛇>が有るからな。さらに<錦鯉>が変化した<鯉の群れ>や、<象亀>が変化した<鏡亀>に、<甲虫>が変化した<甲虫王>も有るから、かなり有利に戦える筈だ。
そう思うと他のパラメータも覚醒しといた方が良かったかもな。
調べたところ、良かったと言うべきなのか、スキルの変化が起きる覚醒回数は、因子やパラメータ毎に違い、合計覚醒数で決まる様なので、再誕前の状態の、[獣人]を6回、[吸血鬼][農家][百姓]を1回。[生命]を4回、[速度]を2回覚醒させたのは、無駄にはなっていないが、強化具合がリセットされると、強力なスキルが1つでも欲しい現状無駄が多かったかなと思ってしまう。
一応[獣人]が9回、[農家]が6回、[速度]が7回でスキル変化が起こるのは確認した。
[吸血鬼]と[百姓]は不明。それと変化は複数回起こる様だが、[幸運]の2回目の変化に必要な覚醒数は、不明。
ただ、たったの1回で変化が起きたので、もしかしたら必要数は少ないかもしれない。
「次は…[傀儡]だな」
これはスキルの利便性よりも、パラメータ自身の効果を目当てに取得する。
なんせ使い魔のLPを強化できるからな。Lvアップ時の能力の伸びが極端に悪い低Lv時には、スキルのLvを上げるのも困難、だからこのパラメータは非常に重宝する。
ましてやSTA障害で、やられた使い魔をリスポンさせるのも相当時間が掛かるので、そもそもやられ難くすることが急務なので、これも絶対に欲しいパラメータである。
「お次は[魔力]と…もう1つ攻撃系のパラメータが欲しいけど[筋力]は…」
先ず[魔力]は確定だ。2体の使い魔[魔道人形]と<ゴーレム使い>は、スキルLvが50を超えると凶悪になるのは確認済みだし、使い魔の火力に直結するので取らない理由は無い。
一方[筋力]だが、正直今後のビルド次第としか言いようがない。
物理攻撃をするなら有り、しないなら他の攻撃系パラメータも視野に入る。
そんな思考の最中、こんなパラメータを見つける。
「ん?なんだこれは…?[相撲]?[制圧]?」
今まで見た事のないパラメータ。どちらも攻撃系に分類されるようなので、詳しく見てみる。
「何々…[相撲]は移動時に敵に接触すると押す事が出来る?なんだこれ!?」
この感じだと、流石に使い魔には適応されそうにないが、移動だけで敵を押し退けられるとか使い道無限大じゃね?
「そして[制圧]は…相手に疲労ダメージを与える?んん?」
聞き覚えの無い言葉に疑問が生じ、調べた結果。
「プレイヤーに満腹度や保水度が存在する様に、NPCにも疲労度という隠しステータスが存在し、敵毎に定められた時間戦うか、条件を満たす事で疲労を蓄積させ、能力を大幅に低下させられる?」
んーと…アレか‼以前ザリガニのゲートキーパーが、何度かの脱皮の末、弱体化したけど要はあの現象を、意図的にかつ効率よく引き出すパラメータって事か!
コチラはプレイヤーの攻撃判定に乗る様なので、使い魔は勿論ランタンにも乗る様だ。
うん、少なくとも双方[筋力]よりはシナジーが強そうだ。
迷った結果、[制圧]を選択した。持久戦は俺の得意戦法だし、それと相性の良い[制圧]は是非とも使用感覚を知っておきたいからね。
「これで4つ、後の3つはどうしようか」
[速度]は当然候補だが、正直無転生の現在効果が薄いんだよな~。
何回か転生するまでは、他のを選ぶのも手だよな~。
[観察]も、高難度の場所に挑むなら、必須レベルだが、現状は必要ないよな…
[体力]もクッソ有能なのは分かっているが、こいつも同じだ。
…いや、どうせ直ぐに不満が募って、売上金で一気に転生する事になるだろう。
という事で、守りの補強と使い魔の生存率向上を図り、[体力]と[観察]を切って、[装甲][防護]を採用する事にした。
こうして再誕を完了し、ステータスは…。
名前:テツ。Lv100。祝福:[獣神²]。★⁹。☆⁹。(★が覚醒回数☆が転生回数)
LP839120 HP40000 STA:10000 COST:5990/1000
パラメータ:[生命★⁴]50000(839120) [持久]10000 [積載]10000 [体力]10000 [筋力]10000 [魔力]10000 [幸運★³]40000 [速度★²]30000 [傀儡]10000 [観察]10000
因子:[獣人★⁶][吸血鬼★][農家★][百姓★][聖人][パイパー][養豚家][蛇使い][養蜂家][酪農家][羊飼い][養鶏家][鷹匠][サーカス団]
スキル:<生存本能>Lv100 <魔導人形>Lv100 <ゴーレム使い>Lv100 <家族蛇>Lv100 <鏡亀>Lv100 <鯉の群れ>Lv100 <甲虫王>Lv100 <ブリキ兵1号>~4Lv100 <マウス1号>~4Lv100 <群鼠>Lv100 <誘導>Lv100 <代行の剣>Lv100 <代行の盾>Lv100 <速度上昇>Lv100 <養豚>Lv100 <過剰肥育>Lv100 <野生の力>Lv100 <品種改良>Lv100 <土壌改良>Lv100 <血の海>Lv100 <不死の眷属>Lv100 <百姓魂>Lv100 <鍬の一振り>Lv100 <蛇壺>Lv100 <蛇笛>Lv100 <体力増加>Lv100 <好反応>Lv100 <生命増加>Lv100 <鶏>Lv50 <鷹使い>Lv100 <偵察>Lv100 <調教>Lv100 <華麗な着地>Lv100 <危機感>Lv100
装備:[タングステン鋼の鍬] [シャツ] [ズボン] [骸の鎧] [試作型アンデッド殲滅用ヘルメット]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
これが。
名前:テツ。Lv1。 祝福:[獣神]。
LP:6 ARM:1 SHI:1 STA:1 COST:0/1
パラメータ:[生命]6 [持久]1 [積載]1 [装甲]1 [防護]1 [魔力]1 [制圧]1 [幸運]1 [速度]1 [傀儡]1
因子:[獣人]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
ギフト:[生への執着]
こうなった。
なんという事でしょう。はあ…見事なまでのみすぼらしい数値。
教会を出て直ぐにPAに駆け込む。
もうね、一歩動いた瞬間に、あまりの遅さにギブアップ。
即座に金を握りしめ、再び教会にとんぼ返り、スキルと装備を整えこうなった。
一気に転生を3回し、Lvを100に上げた。
名前:テツ。 Lv:100。 祝福:[獣神]。
LP:2090 ARM:400 SHI:400 STA:400 COST:290/400
パラメータ:[生命]1900 [持久]400 [積載]400 [装甲]400 [防護]400 [魔力]400 [制圧]400 [幸運]400 [速度]400 [傀儡]400
因子:[獣人³]
スキル:<速度上昇>Lv110 <家族蛇>Lv50 <鯉の群れ>Lv50
装備:[50フリーホルダー] [ランタン] [ランタン] [シャツ] [ズボン] [骸の鎧]
アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]
ギフト:[生への執着]
これで大分増マシになったぜ。
「ふぅ…此処まで移動速度を盛ればストレス無くて良いな」
前と比較すると、これでもまだ遅いが、まあ及第点だ。
何しろ[速度]を幾ら盛っても、最大速度で移動する事はそこまで多くなく、ましてや早すぎると制御が難しいので、わざと遅く動く事もしばしばあった。
勿論意図して抑えてるだけなので、システム的に数値を上げる意味は有るのであしからず。
何が言いたいかと言うと、移動速度はある程度あれば少なくとも不便は感じない、という事だ。
「あれ?テツさん?」
「ん?おおギルか」
なんとホーム内でギルと遭遇。何気に初めての出来事だな。
「丁度良かった、実は再誕したんで暫くは戦力外かもしれん。あしからず」
「ええ!?…そうですか、まあテツさんなら直ぐに元の状態に戻るでしょうね」
大事な報告をし、他愛の無い会話をしていると…。
「あらテツ君、何してるの?」
「おおアコか、ユキも一緒だったか」
偶々通りかかったアコとユキに遭遇。
「あらテツ君、こんなところで逢引きかしら?」
なんか矢鱈と刺々しいユキの言葉。
「逢い!?そんなんじゃありません!!なんですか!?貴方…は…、嘘…」
「おいおい声が裏返ってるぞ、逢引きって…傍からはそう見えんだろう…」
これは一応ギルが男性という建前と、男装という事での発言だ。
「え…?」
ん?ユキの反応が想像と違うぞ。てっきり「私の目は誤魔化せないわよ!」的な事を言うと思ってたが…何をそんなに驚いてるんだ?
「ユキ?おーいユキ‼」
「どういう事…いや流石に偶然よね…」
「あ、あの‼私はこれで失礼します!」
「あ、おいっ…ギルの奴最後まで声が裏返ってたな…」
…?アレ?…なんか…まあいっか。
「アコ、ユキはどうしたんだ?」
「…」
こっちもかよ。
「おーいアコ!」
「!?哲兄どうしたの?」
「おいおい素が出てんぞ…2人共どうしたんだよ…」
「何でもないわ、ほら、お嬢様、行きましょう」
「え!?え、ええ…」
素の出っ放しのアコが、ブツブツと独り言を続けていたユキを連れて行ってしまった。
一体何だったんだ?
お次も二週間ほどで。




