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第十九話

~前回までのあらすじ~

砂漠のダンジョンに引き続き、[バグスター]のダンジョンも攻略。

そしていよいよ超級試験が目の前に…。

 巡回から戻り、来たる超級試験へ向け金策に走る。

 チェストから薬草の種を取り出し、鍬を[オート種蒔き]の付いていない物に換える。

「えーっと…開墾で畑が出来る環境で一番難度が高いのは…」

 掲示板や攻略サイトを覗き、条件に合った場所を探す。

 そして総合的に良いと判断したのが、砂漠の僻地だった。

 準備中インしてきたベッタラとサーモンを連行し、砂漠に来た。

 周囲に人気が無い事を確認し、開始の合図をする。

「んじゃあ薬草栽培するから護衛宜しく」

 二人は護衛なんか要るのか?と言ってるが「俺のじゃない、畑のだ」と言ったら納得してくれた。

 早速[鍬の一振り]を使い、出来た畑に薬草の種を蒔いていく。

 作業中、気配に釣られて大量の蟲が襲ってくるが、豚が全て肩代わりしてくれるので、無被弾で物事が進んでいく。

 強化された[種苗袋]の効果と、32kの[幸運]のお陰で、ザクザクと貯まる薬草。

 それでもLvを上げようと思うと、あっと言う間に無一文になる程度の収入にしかならないだろう。

 なんせ、現在九回覚醒に転生七回の<>Lv100。この状態から再誕に持って行くには約一千万掛かるので、仮に1個10万のポーションを作っても、100個は売らないと目標額には届かない。当然1個10万で売れるポーションを作るには、かなりの素材を消費するので、道のりは険しい。


 あれから二時間ほど掛け、薬草を大量生産し、PAに戻る。

 ベッタラとサーモンに手間賃として一割ずつ薬草を渡し、ギルドへ向かう。

「姉御、今月分の鎬です」

「誰が姉御ですか!まあ良いです…こちらへどうぞ」

 馴染みの受付嬢に声を掛け、個室に招かれた。

「取り敢えず薬草2000枚を収めるよ」

「いつもありがとうございます、それで相談なのですが…」

「悪いがそれで限界だ、もっと欲しければ買取価格を上げるか種を安くしてくれ」

「う、それは前にも申しましたが、特定の個人を贔屓には…」

「分かってるが、こっちも便利屋でもボランティアでもないんでね」

 なんだかんだで買い占め以上に、薬草やポーションを還元してるんだ。これ以上を求めるなら流石に手を引かざるを得ない。

「大体最近は薬草の流通も復活傾向にあるんだろう?」

 再誕したプレイヤーや、新規の流入で、薬草やポーションの流通が増えた事に触れてみたが。

「分かってるくせに…流通は増えても需要と供給のバランスは過去最悪です」

 それはそうだ。どちらの品も第二の通貨と化している今、需要は天井知らずで確保は更に大変になったからな。

「なら2000で納得してくれ、こっちは自己強化に金が要るんだ。それとも教会に掛け合って無償でLvを上げてくれるのかい?」

 この問いに、当然首を左右に振る受付嬢。

 結局お互い平行線のままになり、向こうが諦める形で決着した。

 そもそも納品している薬草の質が、以前より上がっているのだからこちらとしては、評価を上げて貰いたいところだがなんだがな。

 まあこれ以上の押し問答は面倒なので、ここ等でお開きにした。

 帰り際に、一応薬草の種の相場を確認。

 はい、一粒3000円なり。

 …最後に確認した時の倍になっている。最早種の購入も絶望的か。

「ふぅ…休憩するか」

 現在の時刻は12時。一旦ログアウトし、少しだけマッサージを味わう。

「ただいま~って真昼間からマッサージチェアに夢中なの?」

 用事が済んだ様で、おじさん達が帰宅し、美雪が離れにやって来た。

「まあいいわ、お昼を買って来たから食べましょう」

 言うなりさっさと本宅へ戻っていった。


 昼食を済ませ、離れに美雪と亜紀も来てゲームを再開。

「お…来たな、出来上がったポーションはどうする?」

 ログインするなり、薬草を渡したマッドがポーションの取り扱いに言及する。

「勿論売るが…取り敢えず品質を見てからだな」

 そうして完成品を検品し、大体ハイクラスが二割、ローが八割といったところか。

「そうだな…ハイを1個10万、ローを1個5000で売りに出そう」

 それぞれの在庫はハイが30個、ローが200個となっている。

 更に、他にも仕上げて貰った品に値段を付け、先程の薬草収穫時に得た敵のドロップ品も収入の足しにする。

「済んだ?じゃあ冒険に出掛けましょ」

 値段を付け終え、一段落したところでユキの催促が来る。

「何処に行きたい?」

「そうね~…アコは何処が良いかしら?」

「私は何処でも良いわよ」

 という事で、行き先は俺に委ねられた為、金策目当てで[フォレスト]に決めた。

 軽く準備を済ませ、[フォレスト]へ向かった。


 [フォレスト]に到着し、さあ薬草狩りだと意気込んでいたのだけど…

「うわ!なに!?砂嵐?」

 テレポートか一歩踏み出すなり、ユキとアコが驚きの声を上げる。

「ん?多少は強風を感じるけど…どうしたんだ?」

 二人のリアクションが気になり、ヘルメットを外してみると…。

「うは!マジで砂嵐みたいだな」

 いつもなら視界いっぱいに広がる濃い緑が、今は薄茶色で塗りつぶされている。

「あそこに掲示板が有るから見てみましょう」

 ユキに促され、人集りが出来てる掲示板の前に来た。

「何々…ただいま胞子や花粉が蔓延中…これ全部胞子に花粉なのか」

「うわぁ…あっという間に花粉症になりそうね」

「絶対それじゃ済まなさうな状況よね」

 さてどうしたもんか。


「ユキ、あっちにトレントが居るぞ」

「了解、[クラスティーオーブ]!」

 あれから引き返すかどうかを検討し、色々試行錯誤をした結果、ガスマスクを着けた状態で、ランタンの範囲内ならば状態異常にならずに動けると判り、視界不良の中薬草狩りに出撃した。

 ちなみに対策なしでホーム外に出ると、あっと言う間に毒や病気になり、胞子などに寄生されてえらい事になっちゃいます。

 ユキの放った[クラスティーオーブ]がトレントに炸裂し、幸先よく薬草をドロップした。

「どうやらちゃんと命中したようね」

 ヘルメットの効果で、俺にはほぼいつもと変わらない光景に見えてるし、ターゲティングタグで擬態もあっさり看破できるので、この様な有様でも問題なく狩りが出来る。

「私達には周囲の状況が全く分からないからね、頼んだわよテツ君」

 ユキとアコを先導しながら、暫くの間狩りを行なう。

 ここ最近では全く見ない程、人が少ない状況もあり狩りが捗る。

 十分な収穫を引っ提げホームに帰還すると、何やらNPCに呼び止められる。

「もし、そこの御三方。時間がお有りでしたらお話を聞いて下さいませんか?」

 声の主は白髪交じりの初老のおじさんで、聞くだけ聞いてみる事に。

「実は毎日経過を観察している大樹がありまして…」

 話を要約してみると、周囲の植生を大いに支えている大樹が、どうも病気がちで、治療の為に投薬をしていたが、この嵐でそれが出来ずに困っているとお事だ。

「あなた方はこの嵐の中、問題無くフィールドワークをこなせるご様子。出来れば協力を頼めませんかな?」

 俺の一存では決めれないので、二人を見ると、首を縦に振る。

「分かりました、依頼は貴方を現地に届けるか、俺達が指示に従って作業をするかですね?」

「おお、引き受けてくれますか!ただ私を現地に連れて行くとは?この嵐では流石に…」

 俺は、ガスマスクの着用と、ランタンの範囲内なら、外でも平気だと伝える。

「そうでしたか!それは吉報ですね。では私も同行しますので護衛を頼みます」

 そう言い、ヌメリコフと名乗るおじさんと、胞子の嵐へ飛び込んだ。


 ヌメリコフを守りながら、暫く歩き続け、目的の樹の下へ辿り着いた。

「な、なんと言う事だ!?」

「これは!?」

 ヌメリコフが驚愕の声を上げ、俺もあまりの光景に声を上げる。

「何かあったの?」

「良く見えないわ」

 視界不良が酷い為、女子二人には状況が分からない様だ。

 俺はヘルメットで鮮明に見えるから、ヌメリコフは経験から微かに見える景色で異常を把握した様だ。

「[母なる樹]マザーツリーが寄生され浸蝕されている…」

 マザーツリー…光合成により大地に豊富な栄養を供給する偉大な大樹。

 長年生きた大樹の中でも、若い内から大きく育った樹木が、極稀にそのような変貌を遂げ、こう呼ばれるようになるらしい。

 そんなマザーツリーに、毒々しい紫色のツタが絡みつき、巨大で鋭い棘が幹や枝に食い込んでいる。

 蔦を辿ってみると、これまでに見た事のないような巨大で禍々しいトレントが聳え立っていた。

「どうやらあのトレントが原因のようですね」

「その様ですな…一体どうすれば…」

 荒事になれていないのか、早くも諦めモードのヌメリコフ。

「今すぐアレを如何にかすれば、マザーツリーを救えますか?」

「アレを倒す気で!?…た確かに直ぐに処置出来れば可能性は高いですが…」

 その言葉が有れば十分だ。俺はユキとアコと頷き合い、ヌメリコフを背後に庇い巨大トレントに挑んだ。


「く…なんてタフなトレントなの」

 戦闘開始直後、俺達は急いでマザーツリーに絡んだ蔦を排除し、ヌメリコフを治療に専念させた。

 そのヌメリコフをランタンの範囲に収めつつ、マザーツリーとヌメリコフを守るようにトレントとの間に立ちはだかる。

 陣形は俺が前衛、アコが遊撃、ユキが後衛兼護衛で行く事に。

 少々心許ないが、今は三人しかいないのでこれが精一杯だ。

 そんな状況の中、ユキの[クラスティーオーブ]が炸裂したが、思っていたよりもトレントが堪えた様子が無い事で、冒頭のセリフに繋がる。

「テツ君、あのトレントはどうやら土や周囲の樹木から生命力を吸収してるみたいだわ」

 アコが戦闘開始時から観察し続けた結果、このような事が判明。

「成程、それは根や蔦がその役割を担ってるのか?」

「多分ね、見てて。フッ」

 アコが荒れた視界の中、辛うじて見えているであろうトレントの根に矢を当てた。

「普通のトレントは根や枝の部位破壊は有っても、再生はしないわ、でもこいつは」

 その言葉の先を肯定するかのように、自身の根を再生させるトレント。

 それにいつの間にか枝も再生し、その先端が蔦となってマザーツリーに迫る。

「マズイ!使い魔は…」

 現在両手が塞がり、攻撃手段が使い魔しかない俺。

 慌てて使い魔を見渡すと、運よく使い魔達が蔦に群がっていた。

「良かった…しかし手が圧倒的に足らんな…」

 使い魔は一度攻撃し始めた標的が要ると、それ以外の敵は無視して攻撃し続けるので、こういう時に咄嗟に迎撃出来ないのがもどかしい。

 一応距離を見極めれば、疑似的にターゲットコントロールは出来るが、まあ、このような行動範囲が制限された状況では非常に厳しい。

 ああ、何とも面倒な状況だ。


 暫く小康状態だった戦況が、何度目かの[クラスティーオーブ]が炸裂で変化した。

「痛!」

 突如トレントのツタの動きが激しくなり、鞭の様に襲い掛かって来た。

 一撃のダメージとしてはそれ程でもないが、どうやら毒を含んだ攻撃の様で、HPが残ってるのにも関わらず、LPにも僅かにダメージが通っていた。

 俺には一応[蛇使い]で毒防御力が5有るので、まあ耐えれんことも無いが…。

 大きく動けない事もあり、俺に向けて放たれた鞭の殆どを喰らう俺。

 だがここに来て、漸く戦闘が方に嵌った様で、俺が攻撃に耐えさえすれば、ユキとアコは攻撃し放題となった。

 アコもチマチマ根を攻撃する事を止め、敵に向かって[聖域の御旗]と[挑発の御旗]を撃ち込み、妨害に専念。

 ユキは[クラスティーオーブ]と[アイススピア]を交互に撃ち続け、ダメージを加速させる。

 途中普通サイズのトレントや食人植物等が乱入してくるが、此方はイマイチ活躍できていなかった使い魔が面目躍如し、雑魚など存在しなかった状態に出来、俺もなんだか誇らしくなった。

 そんな感じで、発狂と雑魚の乱入の二段階をそつなく凌ぎ、ユキが巨大トレントに止めを刺し、戦闘は無事終わりを迎えた。


「ヌメさんどう?」

「何とか持ち直しました、御三方が身体を張ったお陰です。お疲れ様でした」

 本当ならこのままマザーツリーを守りたいとこだが、流石に無理なので、ホームに戻る。

「今回はありがとうございました。何かお礼をしたいのですが…生憎と植物関連しか無くて…」

 と言い、幾つかの候補を提示してくれた。

 ユキもアコも、さっさと選んだ様で、俺待ち状態だ。

(うーん…ヌメさんは生憎と言ったがとんでもない。これはかなりの報酬だぞ)

 提示された報酬はどれも素晴らしく、どれにしようか非常に迷う。

 先ずはシンプルに[大きな薬草の種]1000個。

 何?大きなって?初めて見るぞこんな[薬草の種]。

 お次は[薬草農家の採取鋏]。

 これも強烈で、薬草系を採取した時、10%の確率でシンボルが残るという物だ。

 三つ目は[薬学白書]。

 これは所持品に入ってるだけで、ポーション類の効果が5%加算され、保水が10%回復する様になる逸品だ。

 そして最後は[ボロボロの防柵]というアビリティだ。

 なんか名前だけでは糞使えなさそうなアビリティに聞こえるが、効果は凄いの一言。

 なんと開墾した田畑に、かなり脆い木の柵が最初から付くようになると書いてある。

 うーん…どれも捨てがたいなあ…。


 結局[ボロボロの防柵]を選ぶ事にした。

「ではこのアビリティにして下さい」

「!?…この項目が見えているのかね?」

 ヌメさんが驚愕の表情と共に、さっきまでと違う口調で聞いてくる。

「え?全部で選択肢は四つで、この一番下のを…」

「そうか…いや失礼した。流石こんな嵐の中手を貸してくれた御仁だ。喜んでアビリティを授けよう」

 どうも条件を満たしていないと、選択肢に現れない系のやつらしい。

 ヌメさんが俺に手を出す様に促し、何やら端末を取り出しそれに繋がったパッドを、ペタペタと俺の腕に張り付けた。

 ヌメさんが端末を操作すると、低周波治療器の様な刺激が発生した。

「これで君にアビリティが付与された」

 …もうちょっとやり方が無いんだろうか。

 こうして突発的なイベントは終了し、PAに帰還した。

 ちなみに、またマザーツリーが襲われないか心配なので、直ぐに準備を済ませ、再度様子見をしに行くとヌメさんは言い残し去っていった。


「は~疲れた、ちなみに二人は何を貰った?」

「「[大きな薬草の種]」」

「まあ、それが一番無難か」

「テツ君は?なんか一悶着あった感じだけど?」

 俺は先程の経緯を詳しく説明した。

「へ~新たなアビリティね~」

「それをこういうランダムイベントでね~」

「だな~。さて、早速アビリティの検証でもするか」

 ユキとアコ、今しがた帰還したベッタラとサーモンを加え、地底湖に向かった。


 現在地は地底湖干潟エリア。周囲の人気も疎らだし、良い感じだ。

「じゃあ始めるか」

 サクっと鍬を地面に突き立て、開墾する。

 程なく畑が完成し、観察を開始。

「ほ~確かに防柵が出来てるな」

 目の前には、取り敢えずで拵えた畑一面を囲う様に、今にも壊れそうな木製の柵が設置されていた。

「どれどれ…え!?ナニコレ!?触れないんだけど!?」

 何の気なしに手を置こうとしたら、まるで霞でも掴もうとしたかの如く、手がすり抜けてしまう。

 おいおいマジかよ。只の見た目だけのアビリティか?なんて焦る気持ちを抑えきれず、少々取り乱すが、取り敢えず実戦で試してみる事に。

「んー…お!良かった、ちゃんと敵の侵入は防げるのか」

 どうやら敵だけ通せんぼする柵の様だ。

 調べてみると、ビルディングの建築物の中にも、こういった敵味方を識別する物もあるようで、このぼろ柵はその便利機能付きらしい。

 釣って来た沢蟹をの様子を観察し、柵の大体の耐久力は把握した。

「ここの沢蟹の攻撃を2~3発って事は…大体LP換算で1万程か?」

「そうなの?」

「まあ大体の目安だからな、細かい事は無しで」

 その後も畑を幾つか開墾してみたが、一面一面にしっかりと柵が設置され、[鍬の一振り]にもしっかりと適応されていた。

「これはかなりの戦力向上じゃないか?」

「ただでさえ堅い畑に、見た目以上に堅い柵が四方に設置か…これは凶悪だ」

 ベッタラとサーモンがこのアビリティの感想を述べる。

(確かに強力だが、多分インプラントとナノマシンの効果で、アビリティが強化されてるのが大きいんだろうな)

 実際の所、本来のこのアビリティで設置される柵は、LP換算で精々500程で、テツのパラメータの補正を加味しても5000行くかどうかだ。

 なので1万というのが如何に強力で、インプラントとナノマシンの恩恵が大きいか理解出来るだろう。尤も重すぎるデメリットは抱えているが…。

 

「はいコレ」

「うんありがとう」

 ユキとアコに、ついでに栽培した薬草を渡す。

 以前も触れたが、畑などで育てた作物のシンボルも、個別に判定を持っているので、人が居れば居る程収穫が増えると思ってたんだが、どうも物や質によって制限がある様だ。

 具体的には[大根]なら無制限、[太った大根]なら数十人、[上質な大根]なら十人程とどんどん減っていく様だ。

 この仕様に気付いたのは最近で、昨日のダンジョン攻略時に、エノキを収穫していたら、全員が収穫できずにシンボルが消えてしまったらしい。

 なんせ既に収穫した人は、状況が分からない為、てっきり居合わせた人全員が取れるとばっかり思ってたので、驚きが大きい。

 それでも貴重な薬草なんかを、これまでこそこそ収穫してたのは勿体なかったなと思い、今朝二人を連れて薬草を栽培したところ、俺が収穫した途端二人からもシンボルが消えたのだ。

 つまり、養殖物の薬草は一人しか収穫でき無い様だ。

 まあ残念だけど、これまでの行為が損では無かったと判り、ある意味ホッとした。

 そんなんだから、二人の[大きい薬草の種]を俺が受け取り、栽培し収穫した物を二人に渡したのだ。要は代理栽培ね、その方がより沢山より高品質になるからだ。

 とまあ、フィールドにおける開墾と収穫の新事実でした。


 小休止で目の疲れを癒し、ゲームを再開。

 ユキとアコは疲れたと言い、夕飯まで寝るそうだ。

「さ~て何をしようか…」

 考えていても何も思いつかないし、ギルドで依頼でも見繕うか。

 そう思い、出発しようとしたら。

「うーっす!」

 マサがインしてきた。更に。

「こんにちは~」

 続いてベルもインしたので、三人でギルドへ向かう。

 ギルドで何か面白い依頼が無いか物色中、こんな項目が。

『この顔にピンと来たら!』

 と書かれた欄に、ずらっと手配犯の顔と情報が載っていた。

 誰々が何をした、何処で最後に目撃された、潜伏場所は…。

 こんなデータの中から、横領で手配されている者が、工業地区に潜伏しているという情報を見つけた。

 また工業地区か、と思ったが、確かに後ろめたい者が身を潜めるには確かに良いいロケーションだろうなと思う。

 さて、良い感じの依頼も見つけたし、現地に向かいましょうか。


「さて、やって参りましたよ地底湖に」

「誰に言ってるんだ?」

 マサからツッコミが入るが気にしない。

 周囲を見る。俺達以外にも大勢の人が居る。

 今いる場所は[アッシー]の住処でも干潟でもなく、岩礁地帯だ。

 どうやらこの先はかなりの難易度の様で、調査の為に大勢の人手が必要との事で、ギルドで募集が掛けられていた。

 普段だったらこういった依頼は受けないんだが、報酬に釣られてしまった。

 だって参加するだけで10万で、歩合でどんどん吊り上がるんだもの。

 これは多少の面倒には目を瞑らざるを得ません。

 現場監督に従い、遠くに見える穴を目指す。


「一応岩場を伝って行けそうだが…流石にこの人数だと狭そうだな」

 先行く人たちが、岩場の上を狭苦しそうに歩く姿を見て、別の手を考える。

「ここは水田でも作って進むか」

 一応行列から離れすぎずに、水田を拵える心算だ。

 これなら敵に襲われてもお互いに援護が出来るし、邪魔にもならない。

 あと個人的には、水田で水上で行動するのは、超級試験の良い予行演習にもなるので、是非とも場数を踏んでおきたいのも理由だ。

 そうと決まれば開墾開始だ、

 周囲を見ると、同じように水面に鍬を始めとした農具を突き刺したり、中には「そんなのあったのか!」と驚いた、手で押すタイプの耕運機を使う人が散見された。

 他にもボートや筏、舟を使う人も居る。

 てか水に対し、ミニ耕運機を使用する様は、過去一でシュールな絵面かもしれん。

 回転する刃が水に触れた途端、ズモモモ…と徐々に水田が形作られる様と言ったら…。

 ま、まあそういうもんだから気にしてはいけないんだろう。

 気を取り直し、お隣御近所さんに目配せで挨拶し、一定距離を離した場所から水田を作り始めた。


「ピギィーーッ!!」

 岩礁地帯の水上を進む事数分。敵の襲撃を受け豚が悲鳴を上げる。

「ダツ?」

「ダツってあのカジキの小さい版みたいなやつか?」

「確かに頭の先端が尖ってますね」

 豚から数m離れた虚空に突き刺さるダツっぽい魚。

 最早慣れなのか、パッと見何も無い空間に魚が刺さるという現象には驚かない一行。

 更に被弾により肥大化する豚。増々突き刺さるダツ。最高ですよね。

 その後も鰯や鰊かよ、というくらいの大群で豚に襲い掛かるダツの群れ。

 嬉しい事に、豚が破裂して行き場をなくしたダツが水田に落ちるので、手掴みで捕獲すると、なんと活魚として所持できてしまった。

 これ幸いにと新鮮なダツを集めまくる。

 夢中になって作業をしていたら、いつの間にか周囲には誰も居らず孤立していた。

 どうも俺らがダツを引き寄せてる間に、先に進んだ様で、遠くに皆の背中が見えた。

「流石に遊び過ぎたな、急いで追いかけよう」

 [鍬の一振り]で広範囲に水田を作り、再使用可能まで地道に耕し続けた。


 遅れを取り戻そうと頑張った甲斐あり、岩礁地帯の中間辺りで集団に追い付いた。

 というか集団が戦闘中だったから、追い付けたというのが正解か。

 状況を確認すると、岩礁組は磯蟹やフナムシに、海上組は海月やダツに足止めを喰らっている。

「成程、磯蟹がタンクでフナムシが攪乱ってとこか」

「あれだけ小さいフナムシが、物陰の多い岩礁で攪乱してくる上に、強くて堅い磯蟹も神出鬼没じゃ苦戦するわな」

「海上はダツが水上を、海月が水中から水田やボートを破壊してるようですね」

 そんな風に、先行していた連中の苦戦理由を考察していると。

「おっと!こっちにも類が及びだしたぞ」

 突如豚がビクンビクンと痙攣し始め、追い打ちを掛けるようにダツの的になる。

 今度は置いてかれないように、周囲に気を配りつつダツを回収し、海月はマサが処理。海月からは[コラーゲン]や毒物が手に入り、戦利品的にも非常に美味しい。

 戦闘をしながらも、、少しずつだが前進し、対岸まで大分近づいて来た。

 それから程なくして対岸に辿り着いた。


「こっからはまた狭い通路か」

「調査が目的の様だし端の穴にでも行こうぜ」

「そうですね、豚の進路妨害も有りますからね」

 結論が出たので、端に移動して通路に侵入した。

 直後凄まじい歓迎を受ける。

「うわ!?壁一面フジツボだらけだ!」

 そのフジツボの水鉄砲を盛大に浴び、一瞬で8000越えのHPが消し飛んだ。

 これはそのまま突っ込んだらあっという間に溶けるので、マサに頼る。

 通路入り口の脇に位置取り、フジツボの射線を塞ぐ。

 後は壁越しでも当たる、範囲攻撃を振るだけで、無傷で入り口付近のフジツボの処理は完了した。

 他の人たちの攻略を見てみると、魔法を撃ち込んだり、グレネードを投げ込んだり、大楯のシールドチャージで突っ込んだりと、様々な方法で乗り越えようとしていた。

 中でも一番目を引いたのが、入り口を僅かな穴だけ残して塞ぎ、熱々の煙を流し込んで燻蒸するという方法だった。

 確かにあれなら時間は掛かるだろうが、入り口から動かず奥まで攻撃出来るので、効率的だろう。

 いいものも見れたし、俺達も先に進むとしよう。


 現在4パーティー合同で進行中。

 なんだかんだで穴の数より調査隊の方が多いので、穴被りは致し方あるまい。

 ただ、それもいつまでかは分からない、さっきまでうちを含め8パーティー居たが、途中で分岐があってそこで二手に分かれたからだ。

 そして今まさに新たな分岐に遭遇した。しかも都合の良い事に、4方向への分岐だ。

 そういう事で、それぞれ進む方向を決め、再び三人で進む事に。

「しかし大分苦しくなってきたな」

 下に進めば進むほど敵は強くなるし、先程よりも人数が減ったので、負担も大きい。

 敵はフジツボはそのままに、ヤドカリや超強化された蛸で、三人になった事で一歩進むのにも大分時間が掛かるように。

 それでもこの先の区画を見るまでは行こうと意地になり、[ドッペルゲンガー]や[鍬の一振り]を駆使し、マサとベルの力を合わせて強引に突破していった。


「ほー…岩礁地帯の先はこうなっていたのか」

 何とかフジツボの弾幕地獄を突破し、所見エリアに到達した。

 其処は最初の地底湖エリアに似ているが、陸地が存在しないのだ。

 だが遠くの対岸にはやはり穴が沢山あるので、ここが終点では無い様だ。

 周囲には同じように辿り着いた人がチラホラと居るが、皆ここまでで消耗が激しいのか、先には進まず人が集まるのを待っている様だ。

 俺らも、帰るかどうかは人が集まってから決めようと思い、待機する事に。

 少しして、大勢で固まって来たのだろう一団と、ギルドの現場監督が到着した。

「これよりこの一帯の調査を行う、引き続き調査に協力するもよし、帰還するもよし、好きに決めてくれたまえ」

 との事なので、少しだけ調査に関わってから帰る事にした。


 さて、と岸辺を見渡す。

「今度の敵は哺乳類系か」

 岸辺にずらっと並ぶアザラシやアシカ、トドにセイウチ、何故か白熊まで居て、それらが仲良く寝そべって居た。

 正直かなり可愛らしい光景で、ここにお邪魔するのは気が引ける。

 だが、そんなの関係ねぇとばかりに突っ込む人も。

 そんな人は数の暴力で蹂躙、白熊の圧倒的なスペックの前に襤褸切れに。そして…。

「う、なんだすっげー臭ぇ!?」

 突如マサとベルが蹲り、嗚咽を漏らす。

 何事かと見渡すと、セイウチに息やら唾やらを浴びせられている者が。

 そして気づく。

「おいおいおい!この距離でも状態異常が発生してるぞ…」

 マサが言うに、セイウチからはかなり離れているというのに、混乱(全ての攻撃力低下)酔い(スタミナ最大値半減)催涙(視界不良)の3つが発生した様だ。

「ゲホッ…ゲホ…テツさんは平気なんですか?」

 苦しそうな様子でベルが聞いてくる。

「ああ、ヘルメットのお陰で全くな」

 二人からズルいという風な怨嗟の視線が来る。

 しかし超強力な[臭い息]ね…モル〇ルやル〇ザウルスを思い出すな。

 そんな二人を介抱し、[臭い息]の影響が消えてから回復薬を渡した。

「あ゛~~…こりゃ堪らんな」

「そうですね…これは何か対策を取ったうえで、回復用の魔法やスキルも用意せねば…」

 結局この一連の件で萎えたのか、二人が帰りたがったので、帰還した。


「いや~とんでもなく厄介だな」

「ええ、アレは相当な難敵ですよ」

 俺自体はこのヘルメットのお陰で何事も無かったが…相当堪えた様だな。

「今調べてみたが、どうやら調査隊は岸辺から先に進めなかったみたいだな」

 どうも俺が帰った後、本格的に動物たちの逆鱗に触れ、調査隊が壊滅したらしい。

「陸地で既にあの脅威度なら水中はどうなってるんだろうな?」

 ふと、そんな事を思う。

「さあな、もしかしたら鯱やイッカクなんかが跋扈する魔境かもな」

「「ありそう(ですね)」」

 いずれにせよ、あの先は再誕後に相当Lvを上げてからの挑戦になりそうだ。


「さて、そろそろ夕飯だな」

 ログアウトし、硬直した体を解す。

「哲兄ご飯よ」

「ああ、直ぐに向かうよ」

 呼びに来た亜紀に返事をし、直ぐに本宅へ向かう。

 食事を済ませ、風呂でリフレッシュし休憩中。

 美雪と亜紀は、さっきまで寝てたからか元気が有り余ってるようで、ゲームに夢中だ。

 今日は早朝からガッツリやったので、今は二人のプレイをモニターで鑑賞しながらアイスを頬張る。

「しかし最高の環境だよな~」

 VRゲームであるDIYオンラインは、モニターは無くてもプレイ出来るが、この部屋には第三者にも解り易いように配慮してなのか、VRヘッドセットとは別に、しっかりと24インチモニターがそれぞれに完備されている。

 まあ、無いとPCの立ち上げも出来ないし、ゲームをしない時には普通にPCとして使うんだから当然なんだが。

 そんなわけで、二人の様子をモニターで観察。

「あ~~癒される~~~」

 亜紀は自らの手で捕獲してきた、白猫白兎白犬の白ちゃんシリーズに揉みくちゃにされ、至福の時間を味わっている。

 こうなると暫くは変化が無いので、美雪のモニターを見る。

「これで私も再誕一歩手前ね」

 何やら自身の財産を勘定しながら、Lvアップ計画を練っている。

 そして初期装備になり、PAを退出し、教会へ。転生を何度かしている様だ。

 そういえば、俺は美雪の遊び相手として居候になってるわけだし、他人のビルドを暴くのは良くないとされるこのゲームだが、今の俺達の関係なら覗き見じても大丈夫だろう。

「えーっと…[魔力]は強制取得で…」

 一人でブツブツ言いながら、ビルドを組んでいく美雪。

「[体力]も強制だからあと5つ」

 そういえば[兵士]の因子を取得したんだっけな。

「当然スペルの発動が早くなる[集中]は必須で…」

 [集中]…キャスターには非常に有用なパラメータで、スキルも粒揃いだ。

「お!これは新しいパラメータね…うーん…強力だけどシナジーが薄いわね」

 なんだかパラメータ選択で込み入ってるようだ。


「それじゃ俺も再開するか」

 休憩も十分したし、ログインする。

 アコは相変わらトリップしているし、PAにはユキは不在。

 更に珍しい事に、他のメンバーも出払っている様なので、ソロで動くとこに。

 行き先を決める為、ギルドで依頼の物色中。

「んー…西の大陸で新たなベースの建築か…」

 漸く最初のベースがまとも機能し始め、半島から先を開拓し始めるらしい。

 肝心な依頼内容だが、ベースの建築予定地までの開拓を支援して欲しいそうだ。

 取り敢えず、興味が湧いたので、現地に行ってみる事にした。


「どうも~」

 半島のベースまでヘリで移動し、現地人に話を聞く。

「ああ。それなら西に向かった先に作業員が居るから、そこで仕事を振って貰ってくれ」

 言葉に従い、走って数分。あっという間に作業員が屯する森の入り口に到着した。

「あんたは人足かい?それとも護衛かい?」

「どちらかと言えば護衛かな?」

「なら森の中に入って、生物がこちらに来ないように抑えてくれ」

 という事で、森の中に侵入。今回はただ食い止めるだけで良いらしく、例の紫水晶は渡されなかった。

 背後から、作業員たちか草木を除去する音を聞きながら歩くと、直ぐに獣に襲われた。

 獣の正体は全身保護色の毛に覆われた狼で、体長2mは有りそうな大物が五頭も居る。

 内一頭が即座に<ゴーレム使い>に捕まり、デバフの嵐を受け[ガーディアン]に切り伏せられた。

 その他の四頭も間を置かず此方に飛び掛かって来ていたが、単体で強力な[代行の剣]と[代行の盾]に阻まれ、使い魔の波に呑まれた。

 緒戦は苦戦のくの字も匂わせずに、圧勝で幕を閉じた。


 森を徘徊し、様々な生物に出会う。

 狼、猪、熊、猿…過酷な自然環境でしのぎを削ってきただけあり、ここの生物はどれも強力で狡猾だった。

 尤も、今の俺のステータスでは、ソロでも苦戦する事は無いがな。

 …と、油断してたのが良くなかった。どうやらこの依頼もウェーブ制らしく、刻一刻と強さを増していく生物達。

 最初の方は、最弱の蜂ですら猿の一撃に耐えていた。それが今や[観察]のマウスすら猿に一撃で屠られてしまう。

 だが、これで限界かと問われれば、首を横に振る。

 なんせ、蜂やマウスが一撃で仕留められようとも、そいつらに攻撃が届くには、豚を突破しなければならず、仕留められた個体は、偶々豚の判定内から出てしまったからであり、豚の耐久力はまだまだこいつ等には通用しているし、使い魔の攻撃はしっかりと通っているので、まだまだ粘れる筈だ。


「ハア…ハア…、流石にキツイ…」

 あれから時間が経ち、残していた余力が徐々に無くなりつつある。

 最初は働いている使い魔が全体の5%だとしたら、今は90%程になっている。

 現在俺が温存出来ている戦力は、[羊飼い]の羊、[酪農家]の山羊、[養鶏家]の鶏のみだ。

 今の所は、こいつ等が追われ続けるという事態にはなっていないので、総力戦と言うには至っていない。

 それに俺も鍬一本で凌いでおり、ランタンはまだ解禁していない。

 恐らくは、ランタンを解禁する時は逃げる時だろう。

 さあ、あとどれだけ粘れるかね…。

 更に時間が経過し、既に余力は無く、総力戦を挑んでいる。

 基本的に、ボーっと突っ立て居るだけで、使い魔が仕事をするというのが俺のスタイルで、普段は積極的には戦術を組まないが、今は違う。

 クールタイムが終わると同時に[ドッペルゲンガー]を展開し、使い魔の中で最も堅い牛を最大限に活かす為、牛が一番外側に居るように位置取りながら、遠隔持ちの使い魔の射線を確保する。

 此処までしないと、アッという間に囲まれてしまう程、敵の襲撃が激化しているのだ。

「もうダメだ!」

 最後に逃走経路に[鍬の一振り]を発動し、ランタン二刀流に換装。

 普通の畑と原木畑が混じった柵だらけの道を行く。

 背後から絶え間なく聞こえる柵の破壊される音と獣の息遣い。

 畑も種を蒔いた状態なので、ヘイトを稼ぎ、僅かだが時間を稼ぐ。

 そして、[速度]8000[速度上昇]Lv80の俺には、この僅かな時間が値千金と成る。

 地の利が圧倒的に獣共に有利な森の中でさえ、みるみるうちに獣との距離を引き離していき、奇襲を掛けてきた猿を三匹程抱きかかえながら逃走に成功した。

 やはりソロで活動する時には、[速度]は良い仕事するな。

 ちなみにお持ち帰りした猿は、しっかりと蹂躙しときました。

「ず、随分と長い間森に籠ってたんだな…」

 帰還し、開拓者の代表が心配した様子で駆け寄って来た。

「ええ、その方が其方も都合が良いでしょう?」

「それはそうだが、無理はしないで欲しい、怪我人が出たらただでさえ人手不足なのに、増々人が来なくなるからな」

 そんな小言を頂きつつ、証書を受け取りギルドで報酬を受け取った。

 アコもユキも先にログアウトしたし、俺も寝るか。

 PAに戻り、ログアウトして就寝した。


「良し、これで何時でも再誕が出来るな」

 週末、この数日間で貯めに貯めた資産を投じ、遂に覚醒九回、転生九回<>Lv100になった。

 これで、実質前Verのカンスト状態になった。

 名前:テツ。<>Lv100。祝福:[獣神²]。★⁹。☆⁹。(★が覚醒回数☆が転生回数)

 LP:839120 HP:40000 STA:10000 COST:5940/1000

 ライセンス:『ジャックオーランタン』特級

 パラメータ:[生命★⁴]50000(839120) [持久]10000 [積載]10000 [体力]10000 [筋力]10000 [魔力]10000 [幸運★³]40000 [速度★²]30000 [傀儡]10000 [観察]10000

 因子:[獣人★⁶][吸血鬼★][農家★][百姓★][聖人][パイパー][養豚家][蛇使い][養蜂][酪農家][羊飼い][養鶏家][鷹匠][サーカス団]

スキル:<生存本能>Lv100 <魔導人形>Lv100 <ゴーレム使い>Lv100 <家族蛇>Lv100 <鏡亀>Lv100 <鯉の群れ>Lv100 <甲虫王>Lv100 <ブリキ兵1号>~4号Lv100 <マウス1号>~4号Lv100 <群鼠>Lv100 <誘導>Lv100 <代行の剣>Lv100 <代行の盾>Lv100 <速度上昇>Lv100 <養豚>Lv100 <過剰肥育>Lv100 <野生の力>Lv100 <品種改良>Lv100 <土壌改良>Lv100 <血の海>Lv100 <不死の眷属>Lv100 <百姓魂>Lv100 <鍬の一振り>Lv100 <蛇壺>Lv100 <蛇笛>Lv100 <体力増加>Lv100 <好反応>Lv100 <生命増加>Lv100 <鷹使い>Lv100 <偵察>Lv100 <調教>Lv100 <華麗な着地>Lv100 <危機感>Lv100

 装備:[タングステン鋼の鍬] [シャツ] [ズボン] [骸の鎧] [試作型アンデッド殲滅用ヘルメット]

 アビリティ:[ドッペルゲンガー] [種苗袋] [ボロボロの防柵]

 これが現在の俺のステータスであり、集大成だ。

 先ず補足として、祝福は以前も触れた要素で、教会で対応した像に祈ると、一つだけ祝福を受けられ、バフが掛かるというものだ。

 んで、因子の[聖人]にはこの祝福を追加で受けれるという効果が有り、俺はその効果と合わせて、[生命]を上昇させる[命の神]の祝福を二つ受けている。


 じゃあ初出のものに触れていこうか。

 先ずは[鷹匠]からで、こいつの効果は視界が20%伸びるというものだ。

 この効果はヘルメットの望遠効果とも重複するので、中々便利だ。

 そして専用のスキルは<鷹使い>と<偵察>だ。

 <鷹使い>はスキル名の通り、鷹の使い魔を一体使役出来るスキルで、Lvを上げると鷹のステータスが上昇する。

 <偵察>はLvを上げると、鷹の行動範囲と索敵範囲が広がる。

 次は[サーカス団]で、効果はジャンプが20%強化される。

 専用スキルは<調教>と<華麗な着地>だ。

 <調教>は象の使い魔を一体使役するというもので、Lvで象のステータスが上昇。

 <華麗な着地>は、Lvを上げると落下ダメージが軽減される。

 これから検証に移る。


「フムフム、鷹はスキルの効果で相当広範囲に移動出来るのか」

 検証で[アニマル]に飛び、頭上を飛び回る鷹を眺める。

 鷹の行動範囲は、俺を中心として、他の使い魔と比較して大体三倍位だ。

 そして敵を見つけると、一切の躊躇もなく敵に突撃をかます。

 うん、スタミナを50%消費するオートミサイルの様な物か。

 俺のパラメータとスキルLvのお陰か、ここの怪獣サイズの獣相手にもそこそこ戦えてるので、中々に使える。

 今しがたやられた鷹がリスポンし、即座に同じ敵に突っ込んで行った。

 あ、そうそう。この<鷹使い>をLv50にした時の変化だが、敵が一定以下の重量だった場合、俺の傍に運んでくるという、これまた数の暴力を活かすのに便利な変化だった。…当然ここ[アニマル]では全く意味を成さないが…。

 この鷹ミサイルにキレたライオンが此方に突っ込んでくる。

 そして即座に<ゴーレム使い>が引き寄せるが、さあ大変。

 なんせこのライオン、体高が10mは超えてるからな。その巨体から繰り出された薙ぎ払いに、蜂が死滅し俺のスタミナをバカ食いする。

 俺は距離を取り、使い魔がライオンに群がっていく様を眺める。

 そしてここで活躍したのが象だ。

 あの鬼堅い牛ですら5~6撃で昇天するライオンの爪撃を、なんと8撃近く耐えたのだ。

 しかも[サーカス団]とかいう、ネタ臭い因子名にも関わらず、<調教>の象は戦闘用の使い魔で、果敢にライオンに挑み、しっかりとダメージを与えているのだ。

 そんな、初の好戦的な壁が出来た事で、ライオンを物量で押し込み、最後は<ゴーレム使い>に足を拘束され、[魔道人形]に動きを止められ、毒蛇の毒で嬲り殺しにされていた。

 そして<調教>の変化は、前足を振り下ろす事で地揺らしを発生させ、小物を一掃するのに便利な技と言える。当然これも[アニマル]では以下略。

 うん、鷹も十分使えるし、象はちょっとチート臭い性能だ。

 これで、明日には[ジャックオーランタン]の超級に挑めるだろう。


 土曜の早朝。

 おじさん達と朝食を頂き活力を得る。

 PCを立ち上げ、DIYにログインした。

 チェストから使えそうな物資を取り出し、万全の状態に。

「さて、行くかね」

 墓地に向かい、同じく準備万端なギルたちに挨拶する。

「おはよう」

「おはようございます、テツさん」

 ギルに続き、ウィルやカイル達とも挨拶をする。

 今日俺とギルの為に集まってくれたのは、いつもの4人とプレイヤー2人の計6人。

 プレイヤーは、王道のランタン特化型のやっくん。何処かで見た事ある様な、鞭や十字架で戦うモンドの二人だ。

 一応上限は16人だが、流石にそこまで集まらないので、8人で挑む。

 やっくんもモンドも、いずれは超級に挑みたいと言うので、予行演習になるだろう。

 今一度装備や持ち物を点検し、全員で教会へ向かった。


 教会へ着き、俺はコスト20のホルダーをレンタルし、ランタンを腰に装着。これで常時鍬を装備していられる。

 受付を済ませ、8人で転送部屋に入る。

「おはよう諸君。今回の挑戦者はウィルのむ…倅のギルにテツの2名で相違ないな」

 何故か試験管をしている、フレディ部長の言葉に全員で頷く。

「フム、では試験内容の説明をしよう。まあ知っての通りかつても実験用の惑星を再現した空間でのサバイバルで、ここでの生存記録や戦果、行動などを総合評価して合否を決める」

 うん、いつぞやの説明と概ね一緒だな。

「では説明は以上だ。これより試験を開始する。諸君らの健闘を祈る」

 こうして俺達は試験会場に転送された。


「さて、一月をどう乗り越えるか…」

「なんだ?今になってプランを練るのか?」

 ウィルが何を今更といった感じで聞いてくる

「いや、流石に8人となると勝手が違うからな、完全に手探りだよ」

「そうか、だが一応大まかな傾向と対策はあるんだろう?」

「そりゃあ有るさ」

 てなわけで、先ずは以前お世話になったログハウスへ向かう。

「前回は此処で七日目まで耐えて、以降は只管逃げてたんだ」

「確か十三日目以降に出るドラゴンゾンビ…アレと戦う気は?」

 俺の話を参考に、判明している出現する敵を纏めていたギルが聞いてくる。

「それなんだよな~、結局そいつらに対抗できるかで行動指針が大幅に変わるから、今の段階だと決めれないんだよ」

「なら逃げる心算で良いんじゃないですか?」

「そうだね、きっとその時には敵の強さを測る事すら困難だろうし」

 やっくんとモンドが提案する。

「そうだな、俺もそれに一票入れる」

「まあ、戦えるだろうけど逃げれるならそれに越した事は無いからな」

「賛成、ちなみにその十三日目に出る大物、俺達は普通に狩れてたぞ?」

 カイル、ミーチャと賛成し、ルーカスがとんでもない事を口走る。

「!?アレに勝てるのか!?」

「まあ若い頃の話だ。だがやっくんとモンドが言う通り、倒せるから戦うのが正解では無いからな、やはり逃げれるなら逃げた方が良いさ」

 俺もギルも後輩と先輩の意見を尊重し、十三日目からは逃げる事にした。


「じゃあ指針も決まった事だし、先ずは周囲の安全確保から始めよう」

 ルーカスはログハウスの屋根に上り息を潜め待機。

 ギルとウィルとカイルはやっくんとモンドを連れて周囲のパトロール。

 俺は食料の生産を始め、ミーチャは罠を作り始める。

 こうして安全の確保と食料を調達し、初日は難なく経過した。

 それから数日は問題なくサバイヴし、最初の関門の七日目。

 以前は物量に押されたが、今回は何もかもが違う。

 マジでどうやってんのか不明だが、ルーカスが姿すら見えない距離で狙撃を繰り返し、アンデッドを寄付けない。

 討ち漏らしたアンデッドは、ミーチャが作った聖水のお落とし穴にご招待。

 それすらも躱したアンデッドは、ウィルとやっくんが張った結界で蒸発。

 時折上位種が結界すら乗り越えるが、それはギルにカイルやモンドが即座に処理。俺の出る幕すらなく対処出来ている。

 これは楽で良いや。


 さあ、此処まで順調にきたが、いよいよ問題の十三日目を翌日に控えた十二日目。

 拠点を引き払い、砂浜に向かう。

 道中様々な種類のゾンビやスケルトンを捌きながら森を抜ける。

 浜に出て、ゾンビシャークがうようよしてる海を眺める。

「…行くか!」

 気合を入れ、景気づけに[ドッペルゲンガー]を発動し、[鍬の一振り]を発動。

 ドッペルも[鍬の一振り]を発動してくれた。…陸地に向けて。

 ま、まあ良い足止めには成るので、結果は悪くない。

 ドッペルを捨て駒にし、沖を目指し鍬を振るう。


「此処まで離れれば大丈夫かな?」

「ああ、これで暫くは大丈夫だろう」

 ウィルのお墨付きを貰い、水田を拡張し続ける。

 現在の田畑の持続時間は、現実時間の二時間。ゲーム内時間では八時間に相当する。

 これなら一晩は持つから、順番で仮眠もとれそうだ。

「フム、流石に田んぼの上では寝れんだろう」

 とミーチャが水田をスコップで弄くりだし、あっと言う間に土のベンチやベッドを作り出した。

 なんだろう、凄いし有難いんだ、なんか負けた気分だ。

 兎に角これで快適な空間に仕上がったので、先に休憩を貰った。


「起きろテツ、交代の時間だ」

「ん…」

 カイルに起こされ、状況を確認。

 一部水田が欠けていたが、寝てる間の襲撃は何事も無く処理してた様だ。

 欠けた部分を補修しつつ、次の水上拠点の仕込みに入る。

 先程ものより規模の大きい水田を拵え、ミーチャが環境を整えた段階で、とうとう十三日目が始まった。

 早速巨大な蝙蝠が急襲を仕掛けて来るが、鷹とルーカスが即座に撃ち落とす。

 水田をしたから破壊しようと企むサメも、ウィルとやっくんの結界が阻む。

 そして夜明けを迎え、砂浜にズラッと並ぶ化け物共が朝日に照らされる。

「ハハハ、流石にこの距離ではブレスも届くまい!」

 コチラに手出しできない化け物共を尻目に、漸くスタート地点に立った。

 そう、本当の超級試験は此処からが本番だ。


 十四日目。

 サメの襲撃が一層激しくなり、日中は鷹のゾンビが、夜間は蝙蝠と絶え間ない。

 それでも、俺自身が覚醒四回分と転生四回分強くなってるのだ。

 仮にソロだったとしても、まだまだ余裕が有る。

 それでいて超心強い相方に頼れる先輩に後輩が居てくれるのだ。

 こんな所で終わる筈がなかろう。

 今後の展開に備え、リソースを温存せねば。


 十五日目。

 少しづつだが、使い魔の稼働率が上がって来た。

 [鯉の群れ]も攻撃の機会が増え、徐々にだが余裕が減っていく。

 十六日目。

 ついに豚だけでは攻撃を防ぎきれず、他の使い魔の被弾が増えてきた。

 水田も破壊される機会が増え、補修の手間が増えた。

 十七日目。

 更に余裕が無くなり、象がやられ始めた。

 当然戦闘系の使い魔は、一回以上はリスポンした事になる。

 十八日目。

 ついに羊や鶏に山羊もやられ始め、俺のスタミナゲージが荒ぶっている。

 これで俺に余力は無くなった事になる。

 十九日目。

 ついに俺とギルがセーブを止め、全力を出す。

「さあ、ここからが正念場だ」

「ええ、此処までテツさんの使い魔に頼った甲斐あって、物資は潤沢ですよ」

 さあ、暴れるぜ。

 これでもかと持ち込んだ聖水を始めとした、攻撃用の消耗品を解禁し、積極的に戦闘に参加する。

 そして、短縮した戦闘時間で畑を補修拡張し、休憩時間に充てる。

 逆に、他の皆は力や物資をセーブし、ラストスパートに備える。

 このまま俺とギルの力で、どれだけ突っ走れるかが、今後を左右する。


 二十日目。

 試験も残り十日。ヤバい事になってきました。

 昨日まではサメだった水中の敵が、鯱のゾンビにランクアップ。

 これには豚も水田も次々と破壊され、皆大慌て。

「これは不味い、例の場所に行くしかあるまい!」

 なんだ!?例の場所って?

「テツ!このまま北東に向かって道を作れ!」

 有無言わさぬルーカスの激に従い、鯱の追撃を捌きながら北東を目指す。


 二十一日目。

 一昼夜掛け、以前俺が投身生還を果たした崖が見えて来る。

「ハア…ハア…良し。更に北に向かってくれ」

 休みなく逃避行を続け、皆かなり疲労が溜まっている。

 そんな中、ルーカスが目指していたであろう場所が見えてきた。

「アレは…断崖に出来た洞穴か?」

「ああ、あそこなら大型のアンデッドは入って来れないだろう」

 目的地がハッキリしたので、進行速度は増した。

 こうして、どうにか鯱を振り切り、一時だが安寧を手に入れた。

「なんだよ、こんな穴場を知ってたなら最初から教えてくれよ」

「ダメだ、最初にここに来てしまうと、逃げ場が無くなる」

 ルーカス達曰く、ここから退避するには、海かアンデッドが犇めく一本道の洞窟を抜ける必要があり、終盤では詰むという。

「そういうもんなのか?なんか順序が逆になるだけな気がするけど」

「簡単な理屈さ、前後の逃げ道をこれでもかとぎゅうぎゅうに詰められた状態から抜け出せるか?それは関節技を決められた状態から始まるのと一緒だぞ?」

「成程…という事は此処が最終地点という認識で良いのか?」

「ああ、どの道外ではもう動けないだろう?」

「身に染みてます…」

「そしてこれはお前達も知っていると思うが、これは挑戦者の姿勢を見るものでもある」

 そういえばそんな事を言っていた気がする。

「つまり、最初から引き籠るのは良くないという事ですか?」

 俺の疑問をギルが聞いてくれた。

「その通り。俺には合格の基準は分らんが、恐らく引き籠っていた場合、アンデッドの浄化数が足りなくて、例え三十日生き延びても、合格できるとは限らないからな」

 そうか…俺らの合格の為に、敢えてギリギリまで伏せていたのか。

「さあ、分かれば急いで陣地の構築を急ぐぞ!」


 二十二日目。

「どうして入り口まで来たんだ?」

 ウィル達に言われ、長い洞窟を一日掛け移動し、俺達は陸地側の洞窟入り口に来ている。

「ここがアンデッドにバレるのは時間の…というかもうバレてる」

 ウィルが指さした方を見ると、ゾンビが茂みから身を乗り出している。

「もう終盤だからな、こいつ等の強さは正に桁違いだ。まともに倒せると思うのは無謀だ」

「そこで残り九日間、一本道を少しづつ後退しながら凌ぎ切るのさ」

 ミーチャがそう言い切った。

 そしてこの間、鷹がゾンビに接敵し、瞬殺されたのを見て、意を決した。

「良し、その案に乗った!残り九日、少しずつ後退しながら生き残るぞ!」

 一同「おおおーーー!!」

次話は二週間後に。

アラビア数字と漢数字、難しいなぁ…

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― 新着の感想 ―
[良い点] 試験に参加したそれぞれが活躍の場所があり、試験の苛酷さがよく伝わってきていい。 [気になる点] [命の神]と[獣神]は同じと考えていいのでしょうか? [一言] 一話一話がボリュームあって読…
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