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第十二話

~前回までのあらすじ~

Lvにと数に依るゴリ押しに限界を感じ、新たに農業を取り入れたテツ。

これが戦闘でも役に立つという思ってもみないシナジーを発揮した。

さらに[ドッペルゲンガー]のアビリティを取得し、増々戦力が増強された。

こうしてテツのビルドは増々奇怪なものへと変貌していった。

「おはよ!」

 ユキと加工食品の議論をしていたら、マサがインしてきた。

「缶詰か、確かに50円なら即完売するだろうな」

 マサの考察だと、現段階では貴重な缶詰で、しかも缶詰ゆえに保存が効くから、投資先に選ばれた可能性があるとの事だ。

「その発想は無かった!投資かー…」

 このゲームの食品は、時間と共に劣化するのは勿論。環境にその状態が大きく左右されるので、缶詰は携帯食の優等生として君臨する。

「現状でも、海底散歩や砂漠での活動、湿地帯は食料が腐り易いからな、缶詰はそういったフィールドをメインに活動するなら、是非とも確保したい物資だろう」

 只の思い付きが、意外な展開を見せる。

「なら西瓜が沢山あるから、ジュース缶でも作ってみるか」

 食品ミキサーも有るので、3人で種を取って投入する。

「どうせならミルクで練乳も作ってみよう」

 なんか楽しくなってきた。

 3人で仲良く作業して出来たのがこれ等だ。

 [西瓜の缶ジュース]:西瓜のジュース。保水度を40%回復。[魔法のクールタイムを10秒短縮]コスト0.1。

 [練乳の缶詰]:缶詰にされた練乳。満腹度を5%回復。[LP回復5%][CAのクールタイム10秒短縮]コスト0.1

「クールタイム短縮ってヤバない?」

「ちょっとお遊びで高値出品してみよう」

 両品共、1個ずつ1000円で一瞬だけ出品してみる。

「ポチっとな、そして取り消…せない!?売れた!?」

 3人で顔を見合わせる。

「間違いの可能性も有るな」

「購入者は別々なんでしょ?」

「ああ、一応確認も兼ねてもう一回」

 当然、2度目も即売れてしまった。


「さて、今度はどうだ?」

 急遽、ふろふき大根を仕込み、缶詰にして単品売りを試す。

 やっぱり速攻で売れた。

「ふろふき大根は100円に値上げしても売れるのか」

「転売目的かしら?」

「今の所はテツたちが売った物は出品されて無いな」

「という事は純粋に投資か物資としての需要か」

 取り敢えず、ふろふきは50円据え置きで。

 西瓜ジュースと練乳は1つ300円で、それぞれ100個ずつ出品した。

 そして、思いの外いい料理になったのは、素材の鮮度が良く高品質で、設備のLvや水が上質だからという結論に至った。

「これなら誰でも空いた時間に量産出来るし良い副業じゃ?」

「そうね、素材が全部、テツ君が大量に用意できるし」

「水も十分汲めるしな」

 こんな感じで、今後は料理も作る事となった。


 あれから、ベルとサチがインしたので、冒険に出掛けた。

「へ~、ダンジョン内でも開墾って出来るもんなのね」

「俺の知る限り、取れる作物も最上だぞ」

「「「へ~」」」

 現在巨大薔薇のダンジョンで、絶賛農作業中。

 撒く種は、スイカと大根とイチゴ。

 種が安いから、このチョイスとなった。

 周囲の植物やらアンデッドを倒しながら、収穫を待つ。

 そして作物が育ったので、収穫を開始。

 暫く作業を続け、コストいっぱいになったので撤収した。


 PAに戻り、設備を強化する。

「思い切って缶詰機と厨房をLv4にするか」

 大枚を叩き、設備を大幅強化した。

 そして、5人で缶詰を量産し売りに出す。

 先程売りに出した缶詰は全て完売しており、6万5千円の収入となった。

 この売り上げと、最近の儲けの一部を換金し、教会へ向かう。

 Lvをカンストさせ、ギルドで農業の情報を集める。

「蛇の森は畑じゃなくて原木になるのか」

 原木とは、店で買える駒菌を、原木に植え付ける事でキノコ類を栽培できる畑の一種で、場所によって畑の代わりに出現する。

 他に水田もあるようで、湿地帯を開墾すると出現するらしい。


「という事で、湿地帯にやって来たとさ」

「誰に言ってんだ?」

 連れのマサに突っ込まれつつ、水中に鍬を突き立てる。

「本当に水田になったな…」

「シュール過ぎて言葉が出ねえ…」

 沼に鍬を振ってたら水田になりました。

 その怪現象に絶句する野郎二人。

「で?何を育てるんだ?」

「取り敢えずジュンサイを育ててみる」

「…マニアックだなぁ…」

 バシャバシャと水遊びをしながら、鰐やナメクジを討伐する。

「最早範囲攻撃じゃなくて遠隔攻撃だな」

 軽く5mは離れている鰐に、マサの攻撃が当たる様子を見て感心する。

「覚醒前は、この4倍はリーチが有ったんだけどな」

「とんでもないな…」

 改めて、マサの攻撃範囲の狂いっぷりを認識した一幕だった。

「さて、収穫っと…品質はそこそこか」

「まあ、今となっては湿地帯の危険度はそれなり止まりだもんな」

 [ジュンサイ]を沢山収穫し、撤収した。


「さて、ジュンサイはどう加工しようかね」

 俺と、暇だから付き合うと言ったマサと2人で、ジュンサイの扱いを考える。

「…思い浮かばんな…」

「やっぱ瓶詰か?」

 マサは、何で米やレンコンにしなかったんだと、喉まで出掛かったが、何とか呑み込み考えるふりを続けた。

「!、あ…でも…」

 アイデアが沸いたには沸いたが、直ぐには実現できない為却下。

「なんだ?何か思いついたのか?」

「鍋をレトルトにしようかと思ったんだけど、設備が足りないし、鍋用の具材が無いから諦めた」

 なんせ、俺の実家は湯豆腐ですら、湯豆腐と言う名のごった煮にする文化だったからな。その影響を受けた俺は、鍋の具材が最低でも5種類は無いと、鍋とは認められないのだ。

「じゃ、仕方ないな」

 分かってくれるか!と、マサと熱い握手を交わしてると。

「さっきから何してるの…?」

「「!?」」

 離れた位置から、青ざめた顔色でこちらを窺うユキ。

 思わぬ事態に心拍数が急上昇の二人。

 だがここは歴戦の兵(何のだよ)たる2人、平静を装い握手を解く。

「なに、コチラの御仁が中々どうして…、モノの価値を知っていて感じ入ったのでな、友情の証に握手を求めたのだよ」

 突如謎のスイッチが入ったテツに、マサは思った。

(ダメだ‼ちっとも平静じゃないぞコイツ!)

 増々死んだ目をするユキ。

(視線が痛い!)

 最早限界のマサだった。

「…何時からそこに居た?」

 心の折れたマサによる、今更な牽制だった。

「…最初から」

「なら握手までの件もちゃんと知ってるじゃねーか!」

 マサが魂の叫びを上げた。

「いや、どんなリアクション取るのか気になって」

「その割に、表情の作り方といいかなり本気(マジ)な反応に見えたが…」

 あの「ええ、気にしないで、分かってるわよ、ふふふふふ」と言った感じの、無機質な表情はゲームとは思えない程リアルで、マサの心に刺さった。

「まあいいか、テツ、どうやら誤解されずに…って居ねえ!」

「テツ君ならとっくに出掛けたわよ?」

 どうやら焦っていたのはマサだけだった様だ。


「流石にアレは酷いと思うんだが?」

「すまんすまん、ユキが覗いてるのが分かったから、つい合わせちゃった」

 ギルドで依頼を吟味してたら、マサが追い付いて来て遺憾の意を表明された。

 何か面白そうなモノはと2人で吟味する。

「おいテツ、これなんかどうだ?」

『闘技場に、最強の軍団が登場!挑戦者を募る!』

 といった募集がマサの目に留まった様だ。

「どれどれ…参加人数は無制限、参加人数に応じて相手の数が増えたり補正が掛かるのか…。中々に面白そうだな」

「だろ?」

 という事でPAに戻り、準備を済ませて闘技場へ向かった。


「凄い活気だな」

 そこには、DIYプレイヤーの猛者たちが集まり、メンバーを募集していた。

「あ、テツさんマサさんどうも」

 ラーク達が話しかけてきた。

「久しぶり、俺でも知ってる強豪カンパニーが、同盟を組んだり野良を誘ってるんだが、そんなに運営の刺客がヤバいのか?」

「ヤバいですね、サモナーが平然とドラゴンを召喚してきたりします」

「スケールが想像の遥か上をいってた‼」

 そもそもドラゴンが居る事に驚きだが。

「他にも使い魔を30体以上使役する前衛が5人以上居たり」

「「うわぁ…」」

 その時は、合同で100人以上で挑んだようだが、100人いた時点で、敵の使い魔が150体確定する時点で相当ヤバいな。

「まあ、取り敢えずマサと2人で挑んでみるわ」

 百聞は一見に如かず、見てみないことには始まらないしな。


「マサ、最初から全力だ」

「応!」

 2人で全力のドーピングを行い、俺はドッペルゲンガーを発動。

 更にランタン二刀流でドッペルと共に特攻する。

 何やら敵の攻撃らしき霧が発生したが、特に何も起こらなかった。

「うおおおお!?」

 突如140以上のユニットが押し寄せる事で、驚愕の声を上げる敵のリーダー。

 更にランタン4個分のデバフが敵に圧し掛かり、大幅に能力を下げる。

「ええい!怯むな!迎え撃て!」

 敵も動揺を僅かに抑え、直ぐに攻撃を仕掛けて来る。

 しかし、攻撃の全てを豚に吸われてしまう。

「ぐあっ!?か、数が違い過ぎる‼」

 敵の総数はたったの40。内30は使い魔。その使い魔も…。

「流石マサだ。使い魔もおやつだな」

 圧倒的な攻撃範囲を誇るマサの前では、使い魔など物の数に入らず、次々に沈められ使役者のスタミナが枯渇する。

 結局敵の使い魔は機能せず、大幅な弱体化を余儀なくされた敵10人を、数の暴力で蹂躙するという、懐かしい感触を味わいながら、開幕20秒ほどで勝利を収める事が出来た。

 ただ、視界の隅に映ったドラゴンが、攻撃に参加してきてたら、多分押し切られたのはこちらだっただろう。

『おめでとうございます!闘技場の試練の初回突破特典として、アビリティを付与いたします。好きな物をお選びください』

 そんなアナウンスの後、目の前にスクリーンが現れ、幾つかのアビリティが表示された。

 [生命力強化]:[生命]を20%上昇させる。

 [幸運の使者]:5%の確立であらゆるダメージを無効。

 [小間使い]:安全地帯でも傍に控えあらゆる行動をサポートするゴブリンを使役する。

 [種苗袋]:種類がノーコストになり死亡してもロストしなくなる。

 この4つの中から1つ選ばなくてはいけない。

「ヤバいな…どれ一つ捨てるものが無い」

 それだけこの4つのアビリティは強力なのだ。

 先ず[生命力強化20%]、これはヤバい。全く同じ構成相手に、このアビリティの有無で2割も差をつけれるという事実。そして実質防御力上昇とポーションの効果上昇なのもヤバい。

 次に[幸運の使者]、これもヤバい。およそ20回に1回どんなダメージでも無効は、ここぞという時に発動すれば、値千金の結果を生み出すだろう。

 [小間使い]、これは憶測だが、農業も手伝ってくれる筈だ。そうなると今後の農業や料理での収入が増加する事になり、実質経験値アップ、しかも弾除けにもなるオマケつきだ。

 最後は[種苗袋]、一応俺の心はこれで決まりだが、一応他のフォローもしておいた。これはヤバい!マジヤバい!。種類のノーコスト化とノーロスト化は、ゲームのルールを変えるとんでもない効果だ。

 結局俺は、[種苗袋]を選んだ。他もヤバいがこれが頭2つ分抜けていた、ただそれだけの理由でこれを選んだのだ。


「どうでした?」

 俺とマサが闘技場から出てきたところで、ラーク達が結果を聞いてくる。

「ああ、ゴリ押しで押し切ったぞ」

「開始20秒で決着だったな」

 要は如何にドラゴンの召喚前に、決めるかが鍵だったわけだ。

 俺達の勝利報告に驚く3人。

「てかあの程度なら、こっちもジェネレーターを用意して数で押せばイケそうなんだがな。何で強豪揃いで苦戦してるんだろうな?」

 俺とマサには、それほどの難度とも思えなかった。

「…一応聞きますけど…テツさんの使い魔は正常に機能してましたか?」

「?勿論。寧ろ久々の蹂躙で気持ち良かった」

「10対140だもんな、圧倒的過ぎた」

 俺とマサの言葉に固まる3人。

「使い魔が正常に機能!?」「たったの10人!?」「140?何が?」

 こんなリアクションが帰って来た。

 かくかくしかじか。

「成程…使い魔の状態異常耐性を上げるパラメータですか…」

「何そのチートパラメータ…」

「アビリティの[ドッペルゲンガー]!?」

 驚愕しっぱなしの3人。

「まあそんな感じで、開幕押し切って勝ったんだよ」

 一通り説明し、納得した様子の3人、

 そして予想通り、協力を仰がれたので、5人で戦いに臨んだ。


「「「ありがとうございました」」」

 無事3人を勝利に導き、PAに戻る俺とマサ。

「しかし、人数が増えるとあそこまで露骨に難度が上がるんだな」

 まさかペット枠で、ケルベロスやキマイラが出て来るとは。

「俺とマサが突破できたのは、極限低ランクで相性が奇跡の噛み合いだったからだな」

 相方がマサ以外だったら、勝てるビジョンが浮かばねえ。

 そして判った使い魔不全の謎。

 開幕で霧が発生したが、アレが混乱の霧(パニックミスト)と呼ばれるCAで、アレが使い魔を暴走されてしまうそうだ。

 まあ、[観察]が1400なら効かない様だが。

 PAに着き、マサと別れ買い出しに出掛ける。

 なんせ[種苗袋]で種類をノーコストノーロスト。ノーノ―で持ち運べるのだ。溜め込まなきゃ損だろうの気持ちだ。

 1万円握りしめて色々物色し、次の種類を購入した。

 [種枝豆]:育つと枝豆になる種豆、放置すると大豆になる。コスト0.1。

 [ビンチの種イモ]:寒さに晒すと甘くなる芋。コスト0.5。

 [男爵の種イモ]:ホクホクが特徴の芋、バターが高相性。コスト1。

 [ハスの種]:水田でレンコンが収穫できる。コスト0.1。

 [エノキの菌糸]:原木畑でエノキを収穫できる。コスト0.1。

 他にもお馴染みの西瓜や大根も大量に購入した。


 休憩から戻り、さて…と思案していると。

『入植者の皆様。[バグスター]にて超巨大なダンジョンを発見。繰り返す…』

 アナウンスの続きに耳を傾ける。

『敵の繁殖場を刺激した事により、大規模な反抗に遭遇。至急、戦える者は[バグスター]のホームへと急行せよ。繰り返す…』

 丁度[バグスター]に行こうかと思ってたし、一丁観光に行くか。

 現地に到着し、視界を埋め尽くすほどの、ギルドの戦闘員に驚く。

(ああ、キチンと約束を守ってる様だな)

 [ジャックオーランタン]との約定を、ギルドは守ってる様だ。

 状況を確認する為周囲を見渡すと、電光掲示板を発見した。

「ダンジョンは北に有り…か…」

 まさか[アース]のベースと一緒で、東西南北にダンジョンがあるんじゃないか?と思ったが、まあだからなんだって話だし、どうでも良いか。


 ホームから北上し、戦場の後方に到着した。

「んじゃあ始めるか」

 一応確認したが、本陣では物資の買取も行っていたので、収穫した作物を売りつける為に荒れた地面を耕し始める。

 ザクザク…ザクザク…。

 後方の、それも味方の進路とは一切被らない位置なので、誰にも邪魔されずに黙々と開墾を続ける俺。

 鍬の性能を活かす為に、市松模様を意識して開墾する。

 そして最初の収穫をして吃驚。作物の質がかなり上がっていた。

 従来の[バグスター]だと、[太った大根]。

 今回は[上質な太った大根]になっていた。

 見た感じはダンジョン産の一段上って感じかな?。

 恐らくダンジョンが発見された事で、[バグスター]全域の危険度が引き上げられ、作物の質が上がったのだろう。

 次々に作物を収穫し、本陣に向かう。

「物資の買取をお願いします」

「おう、俺の所に来たって事は食材だな?見せてみろ」

 いかにも職人っといった感じの、角刈りの厳ついおっさんと話す。

「ほうほう!物自体の素性も上等だが、何より鮮度が異常な程良い。ついさっき畑から抜いたばかりじゃなきゃこうはいかん」

 どうやら俺の持ち込んだ食材は、この親方の眼鏡に適ったらしい。

「良いぜ、買うぜ。全部で10万でどうだ?」

 悪くない価格なので、同意して売却した。

「金はギルドに請求してくれ、いや~戦場はビタミン不足になりがちだからな、これで前線の戦士たちに良いもん食わせてやれるぜ、ありがとよ」

 こうして商談を終え、再び後方に戻る。


「さて、次は森の中に行ってみるか」

 思い付きで、東にある森に足を踏み入れると。

「げっ、何でこんなところに蟲の大群が!?」

 思いもよらない待ち伏せに、完全に後手に回る。

 このまま平原に出るより、森に突っ込んだ方が安全と判断し、突撃する。

「これで敵の攻撃方向は限定されたが…」

 如何せん敵の方が数が多いので、打開に時間が掛かる。

 使用可能になる度に、[ドッペルゲンガー]を出して何とかしようと試みる。

 一時は数で上回るものの、30秒では状況は好転しない。

「仕方ない…持久戦の構えだ」

 な~に、時間はたっぷりと有る…。

 蟲共に分際を分からせてやろうじゃないか。


 あれから40分、状況は好転どころか蟲の援軍で悪化していた。

「どうして誰も来てくれねーんだよ‼」

 流石にこれだけ長時間、本陣の近くの森で粘ってたら、誰か来てくれると思ったからこそ、頑張って粘ってたのに。

 収穫したスイカで、腹と喉を癒しながら考える。

(このままここで粘っても効率が悪いし…)

 考えた末に、徐々にホームに退却する事にした。

 これならホーム側の迎撃態勢も整うだろう。

 そもそも、あんな場所に蟲の大群が居たのは、どう考えても本陣への奇襲の為。それを食い止めてた俺が文句を言われる筋合いは無いだろう。

 そんな予防線を張りつつ、森から出て本陣を見ると。

「…なんだアレ!?」

 俺が見たのは、超巨大な蟷螂の化け物が本陣を襲っている光景だった。

「はは…道理で誰も来てくれないわけだ」

 こうなってしまっては仕方ない。蟲共を無理やり引き離し、ホームが生きてる内に駆け込んでとんずら決め込まんと。

 意を決し、一度森の奥まで進んでから、全力で切り返してホームを目指すテツ。

 おっさんの無事を祈り、何とか敵を振り切りホームに滑り込めた。

 どうやら本陣は早々に破棄し、人員は避難済みだった様だ。

「よう、お前さんも無事だったようだな」

「おっさん!無事だったんだな」

「応よ!お前さんが森の伏兵を抑えてくれてたお陰さ」

 !…気づいてたのか。

「誰も来ねえからおかしいと思ってたが…あの化け物じゃあな」

 遠目でも50mは有るように見えた蟷螂。

「まあ暫くはホームの防衛戦だ。後方組は引き上げるとするか」

 そう言いおっさんはテレポーターに入っていった。


「ではこちらが報酬になります」

 ギルドで食材の代金を受け取る。

(報酬は10万の筈だが15万…)

 どうも、俺が伏兵を抑えた事を知ってたおっさんが、色を付けてくれた様だ。

 その15万で、これでもかと(たね)類を購入し、PAに戻った。


「いや~、あの怪獣蟷螂はヤバいね。何人居れば倒せるんだか」

 着実に増えてく白モフ達を愛でるアコと、寛いでいたおりょうさんと世間話をしたり、さっきの出来事を話したりする。

「巨大な蟷螂ですか…特撮でも始まるのでしょうか?」

「ならこっちも変異した蜥蜴で対抗しなくっちゃ」

 おりょうさんの言葉に、白兎に揉みくちゃにされるアコが合わせる。

 マジでその位の救世主が居ないときつそうだよ、アレは…。

 アレがどうにかならんことには、[バグスター]は封印だな。


 という事でやってきました[フォレスト]へ。

 入植に関しては小康状態であり、危機的では無いが予断を許さない状況。それが現在の[フォレスト]の状況である。

 早速代わり映えしないホームを出て、周囲を観察する。

 天高く聳える大木に遮られ、日差しの届かぬ大地。

 薄暗い中、僅かな木漏れ日を巡る、熾烈な攻防を匂わす植物たち。

 また、進化により光合成への依存度を下げた植物や、動物性たんぱく質を糧にする肉食植物の数々。

 そして、それらにも負けじと巨大な背丈を持つに至る菌類。

 およそまともな生物の付け入る隙など在りもしない、過酷極まりない環境。

 そんな植物が覇権を取った惑星こそが、ここ[フォレスト]である。


 [バグスター]の蟲共に比べたら、まだ能動的な脅威が少ない分、ホームの安全は高いかもしれないが、一度外を闊歩すれば、熱い歓迎に身を焦がす事になるだろう。

 一旦ホーム内部に戻り、周りの服装を見る。

 どうもフィールドワークに出る者や、冒険者稼業の者は、大半が宇宙服の様なスーツを身に纏い、それ以外もガスマスクを着用していた。

 そして自分の両手にはランタンがある。

 つまり生身では危険極まりない[フォレスト]の環境も、ランタンの範囲内ならその影響を排除出来るという事だろう。

「成程、植物の種子や胞子が毒なわけか」

 そんな風に、生身の自分が何ともない理由を考察していると。

(なんだ?近寄って来る?)

 何やら宇宙服3人組が寄って来るので、サッとテレポーターに乗り込む。

 本当に俺に用があったかは定かじゃないが、本能に従い逃げの一手だ。

 PAに戻り、小休止する。


 そろそろ良いだろうと、ギルドに向かう。

 ガスマスクを見繕い、装備を鍬に変更し、再度[フォレスト]に。

 テレポーターを潜ると、先程の3人が電光掲示版を眺めている。

 何食わぬ顔で素通りしようとすると。

「ちょっとテツさん!さっきも今も何で無視するんですか!?」

「え?あ!ラーク達か!」

 知り合いだった。そりゃ向かってもくるわな。

「すまん、宇宙服なもんで気づかんかった」

「「「そうだった!」」」

 さてはこいつ等天然だな。

「それにしても2回目も良く俺だって分かったな」

「「「いや、使い魔…」」」

 入植が進んでいない惑星は、例えホーム内であろうと安全では無い為、常に使い魔が周囲に展開背れてるのだ。

「そうだった!」

(((さてはこの人天然なんじゃ…)))


 そのまま流れで、ラーク達と行動を共にする。

「[フォレスト]は初見だけど、ここでの活動指針はなんだ?」

「基本[アース]や[バグスター]と一緒で、調査ですよ」

「この試験管に、微生物を詰めて持ち帰ると、場所に応じてお金が貰えます」

「他にも、色々と公共事業が有ります」

「へ~」

 取り敢えず、ホーム周辺をグルっと回る事に。

「テツさんいつ農家に転身を?」

「最近だよ、もう数で押せるシチュエーションが限定されてきてな、使い魔一本では辛くなってきたから、ハイブリッドにしたんだ」

 初見の俺に合わせてか、外壁一周の旅にも嫌な顔せず付き合ってくれる3人。

 一応敵襲も有るし、実入りは発生するが、3人には物足りないだろうに。

 そう思ってたんだが。

「え、テツさん?収穫したんですよね?まだシンボルが残ってますよ?」

「ああ、畑の収穫物も判定は個別なんだ。3人も収穫すると良い」

「「「マジっすか!?やった!」」」

 ラークの疑問に答えると同時に収穫を進める。

 まあ、取れるのはエノキだけどな。

 どうも、木々に日光が遮られたこのエリアは、原木畑になる様だ。

 1周目の収穫物を回収しつつ、2回目の開墾をする。

 これを数周か繰り返す事で、かなりのエノキと敵の素材が手に入った。

 それらを売却し、ラーク達と別れPAに戻った。


「エノキか、やっぱバター醤油かな」

 厨房でバターを溶かし、エノキを炒め、仕上げに醤油をサッと一周。

「エノキバターの完成!」

 さも当たり前の様に居る、シルクとマッドと一緒に試食する。

「シンプルだからこそ素材が活きるな」

「バターと醤油の相性は最高です!」

「ヒヒ…、芋のロックが欲しくなるぜ…」

 2人にも中々好評な様だ。

 さて、お次は…。

「次は何を作るです?」

「ヒヒ…次は白飯が進むもんを…」

 なんかマッドがオヤジ化してる。

「まあ、奇をてらわずになめたけだな」

 油を引かず、中火でエノキを炒め、水分を出す。

 そこへ出汁と醤油、酒と砂糖を入れ焦げない様に炒める。

「どれ…まあこんな塩梅か。完成」

 2人に試食させる。

「コレかなり甘くないですか?」

「ちょっと甘いな…」

「ああ、冷えたら丁度良くなるようにするとこんなもんだ」

 まあ、好みも有るからそこは各々で。

 それにある程度甘くしないと保存も効かないしな。

 [なめたけの瓶詰]:甘しょっぱく味付けされたなめたけの瓶詰。満腹度10%回復。[ご飯類の効果を30%上昇]。コスト0.5。

 なんかよく分からないOPが付いた。

「なんだ?この[ご飯類の効果を30%上昇]って」

 項目をタップし、ヘルプを見ると。

『ご飯類と一緒に食べた場合、ご飯類のOP以外の有益な効果を30%上昇させる』

 つまりOPでは無く、満腹度20%回復の食べ物自体に、LP回復効果が10%あったとしたら、満腹度の回復が26%、LP回復が13%になるって事か。

「コストは重いけど…コレ組み合わせ次第じゃかなり強そうだな」

 3人で相談し、一瓶300円で売ってみる事にした。


「そして完売と」

「出した途端に売れたです」

「早すぎワロタ」

 段々マッドのキャラが崩れていく。

「今調べてみたんだが、[特上スタミナ丼]なんてもんがあって、こいつの効果が満腹度80%回復。1時間スタミナ30%上昇。1時間スタミナ500上昇。そんでOPも何個か付いてるっていうとんでも丼が有るから、そういうのと一緒に食えばその効果は凄まじい物になるな」

 スタミナ消費が割合で、なおかつ消費したスタミナ量に応じてアクションの効果が上がるシステムのこのゲームで、[持久]1000のプレイヤーがこの組み合わせで食べた場合。スタミナが約2300まで上がる事を考えれば、如何に狂ってるか分かるものだ。

「カンパニーを持てるプレイヤーが未だ少ない中、PAを農業特化にしてるとこは更に少ないだろうし、暫くは作物と料理で稼げそうだな」

 当然、その内高品質な作物を量産するカンパニーは出て来るだろうが、それはまだ先のことだろうから、今の内に甘い汁を吸いまくろう。


 夜、[バグスター]の怪物こと巨大蟷螂討伐に、戦略兵器が使用された。

 その名も衛星軌道砲(オービタルストライク)

 軌道上からの高熱量のレーザー砲だ。

 これにより、コードネーム[ギガントマンティス]は討伐された。

 しかし、蟲共も黙ってやられっぱなしなわけが無く、直ぐ様に反撃の狼煙を上げ、衛星軌道砲への反撃を開始した。

 何で蟲に星間航行能力が有るのか?とか野暮な考えは浮かぶが、まあそういうもんだと理解しなければならない様だ。

 そういう訳で、現在[バグスター]にて蟲共の大反抗が勃発し、標的の衛星軌道砲を守るために大規模作戦が展開されている。

 戦場は2つ、[バグスター]と[格納庫]だ。

 格納庫は、様々な戦略規模の兵器や重機を管理する施設で、さながら宇宙空間に浮かぶ修理工場の様な場所だ。

 現在その格納庫にも蟲の魔の手が伸び、衛星軌道砲を始めとした、人類側の至宝を破壊せんとする蟲側と、守る人類とで熾烈な攻防が繰り広げられている。

 ちなみに戦場の人気としては、普段は立ち入れない[格納庫]がダントツの人気で、[バグスター]は人手が足りて無い様で、報酬も[バグスター]の方が高い。

 当然我がカンパニーは[バグスター]の救援を選んだ。

 なんせ我々は現金には弱いので。

 何時だって札束は魅力的なのだ。


 幸いアップリンクは活きてるので、[バグスター]のホームに跳ぶ。

 そこには過去に見ない規模の戦力が揃っていた。

 狙撃に特化したレールガン戦車。

 対空に特化したスカイストライク戦車。

 地上戦に特化したブラスター戦車。

 歩兵を守る重装甲ブルドーザー。

 輸送車両の重装甲バス。

 他にも様々な車両が展開されており、周囲には歩兵も随伴している。

「なんか一気にSFチックになったな」

 まあ、俺達のやる事は変わらないけどな。

 職人4人をホームに残し、外に出たタイミングで敵の増援到来。

 遠くの空が真っ暗になる程の大群が飛来し、地面には夥しい程の蟲が波となって、ここを目指して進撃してくる。

 間髪入れずに迎撃する戦車によって、瞬く間に数を減らしていく蟲側だが、それでもなお圧倒的な物量に、最前線が蟲の波に呑まれる。

「凄い激戦だな」

 波に呑まれてもなお蟲を薙ぎ倒していくブラスター戦車。

 その戦車を支援する歩兵もまた、一騎当千の活躍を見せている。

「さ、俺達は俺達の戦いをしよう」

 ホームの傍に、丁度良い感じの空白地帯が有ったので、そこに陣取る。

 俺は開墾を始め、仲間が周囲を守る。

 幸い…では無いが、こんな状況なので、後方にも蟲の手が及び、俺以外が手持無沙汰にならないのは地味に嬉しい。

 こうして、適度な戦闘と開墾で、充実した後方支援が始まった。


 行動開始から30分程経った頃か、後方への敵の攻撃が激しさを増す。

「前線が崩壊したわけではないのか」

 周囲を見ても、前線の戦力は未だ健在だった。

「単純に敵の数が多過ぎるだけだな」

 あぶれたのが、後方やホームにも来ているだけの様だ。

 それも時間が経てば解決するだろう。

 定期的にホームから車両が出撃し、前線に加わっていから、その内均衡が崩れてコチラが攻めに転じる時が来る筈だ。

 そして更に30分後、戦況が動いた。

「どうやら前線が敵を押し返したようね」

 アコの報告で、コチラの優勢がハッキリした。

 …かに見えたが…。

『緊急事態発生!ホームの東、南、西に新たなダンジョンの入り口が出現!大量の蟲が飛び出しホームに接近中。繰り返す…』

「やっぱダンジョンも4つ有ったか」

「ダンジョンというより巣だよな」

 まあ名称は何でもいい、事態を乗り越える方が大事だ。

 幸い俺達が陣取ってる場所は、ホーム傍の一等地。

 これから始まる防衛戦も、ここで粘らせて貰おうか。


 さて、始まった防衛戦だが、もう大戦争状態だ。

 延々と追加される蟲の大群。

 それに対抗するべく、援軍として駆けつけるクローン兵。

 そして、蟲の供給先を絶とうとする、衛星からの攻撃と援軍。

 それにに対抗する、怪獣サイズの羽蟲どもの大群が衛星軌道上で交差する。

 様相は正に宇宙戦争を地でいく規模になっていた。

「あの蜻蛉ヤバいな…空母クラスのサイズじゃね?」

 そんな怪獣蜻蛉が、衛星軌道砲で撃ち抜かれ墜落する中、傍を同じ様なサイズの蚊や蛾が通り抜け、只管[格納庫]を目指している。

「もうあそこまで敵の規模がインフレすると、一般プレイヤーの出る幕何て無いな。まともにやり合って倒せる気がしないぜ」

 サーモンの独り言を聞きながら、心の中で同意する。

 うん。あんなの歩兵ユニットでどうこう出来るもんじゃない。

 歩兵は歩兵の仕事を頑張れば良いのだ。

 大量の収穫物を、何度か仲間に届けながら戦場に立ち続ける。

 前線の討ち漏らしが、頻繁に後方にも流れて来るので常に戦いっぱなしだ。

 そんな持久戦を戦っていると、戦況が動いた。

 惑星内の地下基地を空爆する、バンカーバスターの使用により、ダンジョンの出入り口の一つを破壊した様だ。

 バンカーバスターのクールタイムは1時間。

 後3時間バンカーバスターを守れば、人類の勝ちだ。

 しかし、ダンジョンの出入り口を潰した事で、蟲側にも変化が生じた。

 なんとダンジョンから全長10㎞は超えそうな、超巨大な百足が這い出て、此方の陣地を縦横無尽に動き、その圧倒的な巨体の暴力で被害を拡大させる。

 幸いそこまで気性が激しいわけでも無く、主な攻撃方法が噛みつきのみなので、そこまで深刻な被害は出て無いが、鬱陶しい事には変わりない。

 そんな百足のパレードが加わり、より混沌とした戦場で1時間が経過し、2度目のバンカーバスターが発射され、2つ目の出入り口が潰された。


「そして巨大百足が更に追加されると」

 どうやらダンジョンの出入り口を潰す度に、百足が出現する様だ。

「でもあいつら全然関係ない方に行っちゃったぞ」

 どうも気まぐれに移動するらしい百足は、いつの間にか戦場とは関係の無い場所でパレードを行っている様だ。

 まあ、あんなのが本気で攻め入ってきたら、地上戦なんてまともに出来っこないから、ある意味救済処置なんだろう。

 そして1時間経過し、出入り口をまた1つ潰す。

 更にまた1時間後、最後の出入り口を潰し、追加された百足をやり過ごし、大量の蟲の駆除という戦後処理を経て、何とか人類側の勝利で終わる事が出来た。


「結局超ド級の百足は4匹全て健在で、[バグスター]を自由気ままに移動していると」

「アレは最早天災だな、出会ったら息を潜めるしかない」

 翌朝、インしていたマサと昨晩の話をする。

「どうも深夜の間に、百足にオービタルストライクやバンカーバスターを浴びせた様だが、結果はイマイチらしい」

「まあ常に動いてる相手で、あれだけ巨大なら仕方ないさ」

 マサと話しながら、俺も情報を集める。

「お、あの百足の推定LPが有志の検証で出てるぞ」

「ほう、そいつは興味深い。幾つなんだ?」

「推定2兆だそうだ」

「…途方もねえな…」

 オービタルストライクで1000万、バンカーバスターで1000億のダメージらしいので、如何にこれまでの敵と比較して規格外か分かるってもんだ。

 勿論耐性とかははっきりしないので、実際はもっと少ないと思うが、あくまでLPに換算したらッてことで、納得してもらいたい。

 ちなみに[アース]のホーム傍にある森の熊さん。奴らで大体LP2000~5000程で、渓谷上流のグリズリーが1万以上は有る。


 百足と言う入植の妨げこそ発生したが、漸く[バグスター]に開拓の兆しが見えてから1ヵ月が経った頃。公式から次の大型アプデの情報が公表された。

 主な内容は次の4点。

 ・成長限界の大幅な解放。

 ・新惑星[アニマル]を実装。

 ・[アース]のベース間を線で囲った菱型の内側を安全地帯とする。

 ・[アース]のゲートキーパーの種類が大幅に増え、1区画で複数のゲートキーパーが出現する様になる(条件はそれぞれ個別に存在)。

 これらの追加要素が、2ヶ月後のアプデで追加される様だ。

 この久しぶりの大型アプデにプレイヤーは沸いた。

 特に成長限界の解放は、廃人達が待ち望んでいた要素だからな。

 現在の成長限界は、覚醒5回の転生9回まで、極少数とはいえ既にそこに至っている者が居るのも事実。そこまで行くと1Lv上げるのにも、もの凄い金が掛かるだろうから、成し遂げたプレイヤーは素直に凄いと言える。

 なんせ俺の現状は、覚醒2回の転生4回目だからな、まだまだ先は長い。

 アプデまでにどれだけLvを上げれる事やら。


 そして2ヶ月後、告知と寸分違わぬ内容でアプデが行われた。

 そんで成長限界は何処まで解放されたかは不明。

 廃人組が、為に貯めた資産を投じても限界に達した者は現れていない様だ。

 まあ流石にアプデ初日で、カンストは無理があるだろうよ。

 さて、現在の俺の状況はと言うと。

 覚醒5回の転生3回で、カンストには至れなかった。

 そんな俺のステータスがコレ…の前に、肝心な事を忘れてた。

 2回目以降の覚醒について、一応補足しておく。

 まあお察しの通り、1回目の覚醒時に起こった事が、そのまま倍率が掛かって起こる。

 2回目の覚醒ならチェストの容量は300にリセット。

 Lv上げに必要な経費は3倍。

 追加で因子とパラメータを覚醒。

 Lvアップ時のポイント及び能力上昇値が3倍。

 覚醒を重複させた因子は、転生時にその分多く重複される。

 覚醒を重複させたパラメータは、上昇値に覚醒回数の倍率が掛かる。そしてスキルは内容こそ変化はしないが、スキルLvの一定値への到達に伴う強化の敷居が下がる。(例:使い魔のスキルはLv50で使い魔の行動が強化されるが、パラメータを重複させるとLv25で行動が強化され、50で新たな強化が追加される)

 まあこのように、覚醒回数に応じてかなりの強化が見込めるのだ。

 では話を戻して、現在の俺のステータスを。

 プレイヤー名[テツ] Lv100。

 因子:[獣人★★][吸血鬼★][農家★][百姓★][聖人][パイパー][養豚家][養蜂家]*★は覚醒済みを表している。

 パラメータ:[生命]2400[持久]2400[積載]2400[体力]2400[筋力]2400[魔力]2400[速度★★]7200[幸運★★★]9600[傀儡]2400[観察]2400

 スキルは割愛するが、まあ大分インフレしたのが分かるだろう。

 それと補足だが、[速度]の専用スキルは一回目の覚醒時及び、二回目の覚醒時にも変化しなかった。どうも全てのパラメータが、覚醒させたからといって、スキルが強化されるわけでは無い様だ。

 …噂では何回か覚醒させると変わるらしいが…。

 話を戻して。一応初登場の[吸血鬼]と[百姓]と[養蜂家]の説明をしておこう。

 [吸血鬼]は、因子の効果として[生命]を30%上昇させる。

 スキルは[血の海]と[不死の眷属]。

 [血の海]はLv毎に生命を1%上昇。

 [不死の眷属]はLPが10%減る毎に蝙蝠を1体召喚するオートスキルで、Lv毎に召喚数が2%上昇する。

 [百姓]は、田畑を開墾する速度が30%上昇。

 スキルは[百姓魂]と[鍬の一振り]。

 [百姓魂]は、Lv毎に開墾速度が3%上昇。

 [鍬の一振り]はスキルでは無く、CAで幅1m長さ10mを開墾する。Lv毎に範囲が1%上昇する。クールタイムは10分。

 [養蜂家]は1時間毎に蜂蜜が手に入る。

 スキルは[養蜂]と[分蜂]。

 [養蜂]は蜂の使い魔を32体使役出来、Lv毎に採れる蜜の量が3%上昇する。

 [分蜂]は:Lv毎に蜂の使い魔の数を5%上昇。

 とまあ、こんな感じで能力も段違いに上がり、新たな因子も取り入れた。


 さてこの3ヶ月の出来事でも語ろうか。

 先ずラーク達3人がうちのカンパニーに入った。

 向こうがそれとなく入りたいと言ったので、それとなく勧誘して加入が決まった。まあ何度も共闘してるので今更感も有ったが。

 他にも色々あったんだが、最も衝撃的だったのが。

「おーい、ギル居るかー?…え?」

「イヤーーーッ‼」

 たまたまギルの着替え中に遭遇したんだが…。

 プルンプルンなプリンが2つ…。

 うん、ギルは女の子だったんだ。

 確かに初見時から美形だし、声も高いとは思ってたが…まさかねえ…?。

 非っ常に残念なことに、謎の霧に遮られ、肝心な部分は見れなかった。

 暫くの間、顔真っ赤で暴れるギルを宥めたのは内緒だ。

 この衝撃的な出来事のせいで、3ヶ月の記憶は曖昧な物になっていまった。

 まあ、何とかギルには許して貰ったが、大変だった…。

 なんせVRヘッドセットを外した時、何故か涙が流れてたからな。

 そんだけ俺も焦ってたんだろうか…、まあいいか。


「ではアプデ後の世界へ」

 いつもの見慣れたPAにスポーンし、行動を開始する。

「皆は…各々お楽しみ中か」

 なら俺も、巡回のタイミングが重なったので、そちらへ向かう。

「おはようギル」

 今回は早朝の巡回なので、挨拶も朝のものになる。

「おはようテツさん」

 一時気まずい感じだったギルも、吹っ切れたようで今では関係も元通り。

 いや…俺に対する視線に親愛の様な感情を感じるようになった。

 ただこの時の俺は、何度も共闘して、俺に対する好感度が最大になってるからだと思っていた。

 ちなみに対外的には、今もギルは男だという事になっている。

 理由?よく分らんが都合が有るんだとよ。

 だから、あくまで男の体で接する必要がある。

 勿論カイル達もこのことは知っていて、俺が知った時の状況を聞いて、大爆笑していた。

 その時の「こうなりゃテツに貰ってもらわなきゃなあ!」と言う、ウィルの冗談に顔を真っ赤にして本気で怒ったギルは、記憶に新しい。

 流石にAIとの結婚は厳しいなぁ…。

 まあ「父の冗談は真に受けないでくださいね?」と言う、目は笑ってない笑顔で念を押すギルに冷や汗が出ると共に、そんなにムキになって否定せんでも…と思う俺も居た。

 今回の巡回は、俺とギルに、NPCとプレイヤーが10人ほど加わったグループと、ベテラン勢が2組に別れ、それぞれ10に程率いたグループの3班で巡回する。

 色々と改革が有った事で、巡回の参加者は新人含め皆精鋭。

 大半のアンデッドは、近寄るだけで蒸発する。

 稀に出る強者のアンデッドも、精鋭の数の暴力で轟沈。

 ホント、初期に比べて安定した巡回が出来て安心だ。

 皆と世間話をしながらのんびりと周り、巡回を終えた。


 PAに戻り、人でごった返してるであろう[アニマル]を避け、[バグスター]に向かう。

 現地に到着し、思っていたより人が居て安心した。

 4つのダンジョンを潰した事で、入植が格段に進ん[バグスター]。

 それでも大百足のせいで、大規模な工事が出来ないのが現状だ。

 この3ヶ月間、気まぐれに襲って来ては、現場を荒らすだけ荒らして去っていく奴のせいで、思ったように進まない開拓。

 何度も討伐作戦が組まれては、有効打を与えられずに失敗を繰り返す。

 それでも何度かは良い線までいったようだが、百足の発狂で全てが覆され、現状打開策が無い為、討伐が一時中断されているのだ。

 成長限界の解放がどれ程影響が出るか分からないが、今後に期待しよう。

 さて、フィールドに出て北のダンジョン入り口跡地に向かう。

 そこには沢山の警備兵が駐屯し、入り口の残骸を監視している。

 そう、ダンジョンの出入り口は崩壊したが、ダンジョンそのものは地下にて未だに健在、だからこうして氾濫に備えて監視が成されているのだ。

 さて、何故崩壊済みの出入り口を警戒してるのかというと、崩壊してもなお人が数人は通れる穴が今なお存在してるからだ。

 そんなの塞げば良いじゃんと思うが、変に塞いで別の穴を掘られたり、塞ぐ作業で崩落が起こって更に穴が広がるリスクを考えて、手を出さないとの事。

 まあ大人の都合という奴だな。

 では、前振りも済んだし、ダンジョンに突入するか。


 [バグスター]の地下ダンジョン。

 その規模は未だ解明されていない。

 何しろ10㎞級の百足が4匹も居た場所だ。しかも東西南北の出入り口を有する程広い範囲に展開されたダンジョン。

 探索がどれ程スムーズだろうと、そうそう終わるものでもない。

 内部は、巨大百足が居ただけあり、一部屋が東京ドーム1個分位広く、かなりの人数が行動できる程スペースに余裕が有る。

 先に進むには無数の分岐を選ぶので、地下に潜る程人は減る。

 ちなみに人の手によって、ダンジョン内にはスロープが拵えてあり、徒歩で昇り降り出来るので、探索のハードルは低めだ。

 …此処まで手を加えておいて、崩落が怖くて穴を塞げない…?。

 まあ良いか。

 ある程度地下に潜り、一人になった所で蟲と遭遇し、アプデ後初の戦闘に突入する。

 ここで、改めてスキルを反映したステータスを。

 プレイヤー名[テツ] Lv100。

 因子:[獣人⁴★★][吸血鬼⁴★][農家⁴★][百姓⁴★][聖人][パイパー][養豚家][養蜂家]

 スキル:[生存本能]Lv40 [魔導人形]Lv40 [ゴーレム使い]Lv40 [家族蛇]Lv25 [鏡亀]Lv25 [鯉の群れ]Lv25 [甲虫王]Lv25 [ブリキ兵1号]~4Lv40 [マウス1号]~4Lv40 [群鼠]Lv40 [誘導]Lv40 [代行の剣]Lv40 [代行の盾]Lv40 [速度上昇]Lv40 [養豚]Lv40 [過剰肥育]Lv40 [野生の力]Lv40 [品種改良]Lv40 [土壌改良]Lv40 [血の海]Lv40 [不死の眷属]Lv40 [百姓魂]Lv40 [鍬の一振り]Lv40 [養蜂]Lv40 [分蜂]Lv40

 パラメータ:[生命]27968 [持久]2400 [積載]2400 [体力]2400 [筋力]2400 [魔力]2400 [速度★★]7200 [幸運★★★]9600 [傀儡]2400 [観察]2400

 残りポイント1220 残コスト1220。

 ここに装備や物資が加わるから、残コストは実際の数値とは違うけど、今回は判り易さを重視したので割愛した。

 見ての通り、[生命]がとんでもないインフレを起こしているが、これでもここの怪獣級の蟲に囲まれると、秒で溶ける程度でしかない。

 それに、[装甲]を切った事で、防御力も低下してるので、そろそろ[体力]のスキルを本格導入する時期が来たかもしれない。

 尤も、導入したからといって、どうこうなる場所では無いが、雑魚相手の安定感は増すだろうから、真剣に検討しておこう。


 さて、戦闘に意識を戻そう。

 敵は巨大な蝗が10匹。

 鋭い歯をカチカチと鳴らしながら襲ってくる。

 対してこちらは、先ず俺の先制攻撃として、CA[鍬の一振り]を発動し、前方に20面程の畑を作る。そしてOPの[オート種蒔き]の効果で全てに種が蒔かれる。

 最初、畑に攻撃するのはアンデッドか、敵が手持無沙汰の時だけの行動かと思ってたけど、どうも違う様で、敵にとって目障りな位置に畑が有れば、優先度は低いものの攻撃対象になる事が判明した。

 ただ、100%開墾済みで、種が蒔かれていることが条件だが。

 これにより、開幕の[鍬の一振り]で、デコイを20個以上設置出来るので、戦闘が大分楽になる。最近はこの戦法が俺のお気に入りだ。

 畑の持続時間は諸々込みで1時間。

 装備をランタン二刀流に換え、攻撃に転じる。

 此方の切り込み隊長は、96匹の蜂達だ。

 1匹1匹は、それはもう最底辺の雑魚だが、非常にすばしっこい上に極小の当たり判定、それでいて個のLPは4000近く、一撃は耐えて敵に纏わり付く蜂は正に切り込み隊長に相応しい活躍ぶりだ。

 そこへ浴びせられる水鉄砲の弾幕、ぶっちゃけこの程度の相手だと、これで決着が着いてしまうので、他の使い魔の活躍は後のお楽しみで。

 最近、何度も転生覚醒をするうちに、使い魔スキルのLv自体を上げる事に意義を感じ、コストに余裕が有る時は、なるべく限界まで上げるようにした。

 すると、以前感じていた火力不足は多少緩和され、転生覚醒を重ねた事による、俺自身のスペック向上も後押しとなって、今では火力不足を感じる事は少なくなった。

 やっぱ、幾らプレイヤーのパラメータに依存するとは言っても、スキルLvが低ければそりゃ能力も低いままだわ。

 そんな当たり前の事に気付くのに時間が掛かったものだ。

 ちなみに、3回覚醒させた[幸運]のスキルだが、なんとLv25に上げた時点で、攻撃内容が3段階も強化された。

 先ず、従来のスキルLv50の変化である、水鉄砲の貫通がLv7で発生し。覚醒後のLv50で追加される水鉄砲の高速弾化がLv13で。そしてLv50で発生する強化である、水鉄砲の2連射化がLv25で発生する様になっている。

 こういった、使い魔の攻撃方法の大幅な強化も相まって、雑魚戦を圧勝で終える事が出来たのだ。


 撃破した蝗の素材と作物を回収し、更に下を目指す。

 ちょこちょこNPCや他のプレイヤーと遭遇し、中には追い込まれてる者も居たので、助けたりしながら探索を続ける。

「ん?この先に人が沢山居るな…」

 下層から、人の喧騒が伝わって来る。

(他に分岐も無いし…行ってみるか)

 意を決し、スロープを降り下層に降りる。

「お、新たなお客さんだ。ここまで一人で来たのかい?」

「ああ、早速で悪いが状況の説明を」

 ギルド職員だと名乗った男が言うには、この下の階層が恐らく上層と中層の関所の様な役割を持っていて、敵の数が尋常じゃない程居るらしい。

「幸い、この部屋なら敵の侵攻ヶ所を限定できるからな、俺達は監視がてら戦力が整うのを待っているってわけさ」

 成程、地上の入り口警備と合わせて二段構えという事か。

「なんならお前さん、威力偵察でもどうだ?」

 職員曰く、他にも何組か先行していて、報酬も出すという。

 まあ面白そうだし、現状ここが攻略の最前線らしいので、ロケテの心算と先行組の手助けを兼ねて、行ってみる事にした。


「さて、吉と出るか凶と出るか」

 正直先行組が敗走してきて、撤退戦になる未来しか見えないが。

「そしてこの既視感のある状況…」

 取り敢えず[鍬の一振り]で開墾し、ランタン二刀流で部屋を隈なく調査すると…、はい、居ました。カメレオンタイプの蟻や蜘蛛がわんさかと。

 気づかれた蟲共が俺に殺到するが、豚の判定に阻まれ、美味しいケーキにでも見えるのか、畑に向う蟲も居て、負担が大分軽減される。

 相変わらず強い[聖人]の使い魔2体が蟲を切り裂さく。

 空を翻弄するのが蜂なら、地面は俺らだと言わんばかりに鼠が縦横無尽に駆け回り敵を翻弄。

 [鏡亀]がスキルLvを上げた事で得た、ARM(アーマー)SHI(シールド)BAR(バリア)の超防御力で蟲を食い止める。

 [甲虫王]は、吹き飛ばし無効、挟む、投げ飛ばすという追加能力で、蟲共の分厚い壁に穴を空ける。

 [親子蛇]は噛み付きに加え、毒牙、テールウィップという能力で、巻き付きながら毒を注入し、尻尾で叩くという攻撃で凄まじいDPSを叩き出す。

 そして、それぞれの穴を埋める様に[傀儡]と[観察]の使い魔が突撃し、カメレオンタイプの蟲共を殲滅した。

 部屋の安全を確保し、3つ有る分岐の1つに進んでみる。

 着いた部屋には偵察隊が通った痕跡が有ったが、やはりと言うべきか、この部屋にもカメレオンタイプの蟲が居たので駆除した。

 引き返し、残り二部屋の伏兵を処理したところで動きが有った。

「助けてくれ~!」

 なんともまあ予想通りな展開で、謎の安心感が芽生える。

 といっても危機的な状況なので、急いで上層に戻る。

「どうした!?何かあったのか?」

 俺は、直ぐに敵を引き連れた偵察隊が逃げ込んでくることと、伏兵を出来る範囲で潰した事を報告した。

「そうか、お前の働きに感謝。後は我々に任せてくれ」

 既に戦闘配備を済ませた職員達が、逃げて来た偵察隊を迎え入た。

 そして、そのまま迎撃戦に入るのを見届け、撤退した。


 PAに戻り、荷物の整理をし、ホームの散策に出掛ける。

 今回のアップデートから、東西南北のベースの内側も街の一部になるので、完全に街になりきる前の状態を見ておこうと思ったのだ。

 西門から下町に出て、森方面に向かう。

「成程、ギリギリ森は巻き込まれなかったか」

 西と南のベースの直線上の外側に、森は存在するので、今まで通り森は存続出来る様ようで、薬草等の供給先は残るようで安心。

 現在ベース同士の直線上には、木製の簡易防柵が建てられていて、各ベースが新たな入場口として機能する様だ。

 流石にまだまだ更地だらけで、見応えもへったくれもなく、早々に飽きが来たので種類を買い漁ってPAに帰還。

 そのままログアウトして寝た。

続きは二週間ほどで

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