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第十一話

~前回までのあらすじ~

新たな惑星である[バグスター]と[フォレスト]からの刺客が、[アース]にダンジョンを作り、更に[バグスター]では何度もホームが崩壊するという事態。

これ等の脅威に挑みつつ、[養豚家]という新たな戦力を得たテツの冒険は、一層シュールになっていくだろう。

 さて、やっていこうかね。

「おはよ」

 ログインし、メンバーと挨拶を交わす。

「おはようテツ。[バグスター]のホームが陥落寸前だそうだ」

「相変わらず激戦区過ぎるな」

 昨日の今日で、もう潰されそうなホーム。

「今なら救援に向かえば、それだけで2万円貰えるが…どうする?」

「良いね、参加しようぜ」

 って事で、陥落寸前のホーム救援に向かう。


「うわぁ…」

「陥落寸前というか、陥落済みだなこれは」

 ギルドのテレポーターで、直接[バグスター]のホームに跳んだ二人。

 二人が現地で見た光景は、既に内部に蟲が入り込み、攻撃を受けてる最中だった。

「取り敢えずリスキル防止に、アップリンク回りを守れば良いか」

「だな、それが一番無難な選択だろう」

 そういう訳で、テレポーターの出入り口やアップリンクを守る。

「クソッ、空からの攻撃が鬱陶しいな」

「対空持ちを連れてこなかったからな」

 俺とマサでは、満足に攻撃できない空中の敵が厄介極まりない。

 だが、アップリンクを守り続けた甲斐があり、徐々に味方が増え。

「先ずはアップリンク周辺の敵を追い返すぞ!」

 俺でも知っている有名カンパニー、[ブルートフォース]が参戦し戦況が変わる。

 ブルートフォースは、徹底した規約違反の取り締まりを掲げ、自由なゲームプレイを売りにした、DIY最大規模のカンパニーで、そのメンバー数は1000を超えると言われている。

 そんな彼らの中心メンバーらしき者たちが参戦した事で、カジュアル層も祭り感覚で乗り込み、現場はプレイヤーで溢れ返る事になった。

「大規模カンパニーの影響は凄いな」

「ああ、今の内に一旦戻ろう」

 敵に対しプレイヤーが多過ぎて、何もする事が無くなったので帰還した。


「さて、どうしようか」

 マサと一息付きながら考える。

「二人ともおはよう」

「「おはよう」」

 ユキがログインしてきたので、三人で考える。

「あんまり他のプレイヤーと競合しちゃうとね~」

 そうなんだよ、稼げないんだよな。

「ああなると、暫くは[ブルートフォース]の独占市場だろうし、素直に離れよう」

「じゃあ西の巨大薔薇のダンジョンに行こう」

「「OK!」」

 例のダンジョン化したジャングルを攻略することになった。


「ちょっと待って、…これで良し。行こうか」

「何をしたんだ?」

「<養豚>と<過剰肥育>をLv50に上げてみた」

 そうしてホームの外に出ると。

「デカい!」

「サラブレッド位ありそうね…」

「これは良い弾除けになりそうだ」

 巨大化した豚を確認し、ダンジョンに向かう。

「ほっほ~!<養豚>のLv50特典は、河豚化なわけか」

 ダンジョンに近づいたことで、とんでくる弾幕が豚にヒットすると、なんと豚が少し大きくなったのだ。

 まるで河豚の様な反応に気分は高まり、確認も兼ねて更に被弾させる。

「プギイーー!」

「マジで河豚だな、どんどん巨大化するぞ」

「ヒットボックスも大きくなってる様ね」

「なんかそんな詐欺判定のボスキャラがいたゲームがあったな」

 こうして検証を重ねた結果。豚は死ぬまで肥大化し続け、見た目も当たり判定も巨大化し、敵を押し出す能力も高まる事が判った。


「これは[養豚家]最強の因子説有るな」

「そうだな、この弾幕の中無被弾はヤバい」

「それでいてこっちの攻撃はちゃんとすり抜けるんだから、あり得る話だわ」

 現在、狭い茨の通路を、採取をしつつ進んでいる所だ。

 そして豚のお陰で、今の所一度もダメージを受けずに済んでいる。

「後は、マサの様な範囲攻撃をどう攻略するかだな」

「逆に俺の視点だと、攻撃力と防御力を盛りまくればイケそうだが…」

「そうね…後はメタリ合いだから、相性ゲーね」

 三人で弾幕の中、豚の攻略法や弱点の克服を議論しつつ、先に進む。

「分かれ道か…どうする?」

「右には誰か進んでいるようだな」

「なら左にしましょう」

 どうも右側は、プレイヤーパーティーが先行してるらしいので、左に行く。

 左側を進むと。成程、これは引き返すよなという光景が。

「触手祭りとか勘弁」

「狭い中これはキツイな」

「うげぇ…女の子だってプレイするのに…」

 ユキよ…触手にトラウマでもあるのか。

 まあ俺らには最強の豚が居るからな。どうという事も無く進んでいく。

「ストップ。アンデッドだ」

 こんなところにまさかのアンデッド。

「植物に寄生されてるのか…エグイな」

「これは中々キテルわね…」

 体中の穴と言う穴から蔦が生え、花を咲かせたゾンビが三体迫りくる。

「ここは専門家の俺に任せな」

 俺は使い魔を盾にしつつ。ランタンの光をゾンビ共に浴びせる。

「良し、浄化完了っと」

 本来だったら、不意のアンデッドで、プレイヤーを苦しめるのだろうが、寧ろアンデッドの退治が専門の俺には、大した脅威にもならない。

「テツがゾンビと戦うのを始めて見たが、専門だと此処まで楽に倒すのか」

「ゾンビは遅い代わりに物理属性魔法全てに強いから、ホント嫌」

 まあ、そんなゾンビも俺があっさりと倒せるので、更に進む。


「しかしゾンビのオンパレードだな」

「それもだけどこの状況の方が凄いわよ?」

 ダンジョンを進めば進むほど、植物の浸蝕具合は酷くなり、ゾンビの種類も人から在来種に変わっていった。

「まさかダンジョン内だと在来種が完全に味方扱いとは」

 そう。ユキの言うこの状況とは、本来ジャングルに居たジャガーや蛇などの在来種が、味方として俺らの傍に集まってる事だ。

「そして隠しイベントだ。在来種を保護して逃がせだとよ」

 まさかの護衛クエストの開始だ。

 クエスト開始と同時に、在来種がゆっくりと移動を開始する。

「ん?こっちは出口と逆だが?」

「多分仲間と合流したいんだろう」

「これは厳しい戦いになりそうね」

 そんなユキの予想通り、クエストは困難を極める。

「ああもう!隊列が伸び過ぎ!」

「こら!ポークフィールドから出るな!」

「ジャガーの赤ちゃんが孤立してるわ」

 使い魔以上に統率の取れない在来種の扱いに、悪戦苦闘する。

 幸い豚の当たり判定内、命名ポークフィールドとランタンのお陰で戦闘自体はこちらが優位で、ポーションも俺が大量にもっているから回復は大丈夫。

 コレ、ゾンビ対策が出来てなかったら地獄だったな。

 そんな感じで、敵の半数はゾンビだったお陰で、何とか犠牲を最小限に留め、ダンジョンの外に出る事に成功した。

「さて、取り敢えず脱出には成功したが」

 在来種を眺めていると、一斉にそれぞれの避難場所に逃げていった。

「これで完了かな?俺達も戻ろう」

 こうして在来種を逃がし、PAに帰還した。


 休憩を挟み、再開する。

「お、戻ったか、[バグスター]のホームが陥落したぞ」

「あちゃー、ちなみに理由は?」

「[ブルートフォース]がしゃしゃって、中堅以下のカンパニーが皆離れて、カジュアル層ばっかで実力不足に陥ったからだ」

「ふーん…別にマナーが悪いって感じじゃなかったけどな」

「そうだな、でも真っ先に離れた俺らが言っても説得力無いな」

「はは、確かに。[ブルートフォース]はちょっと気の毒だな」

 何にも悪い事してないのに、この一件で評判が下がりそうだ。

「それで、陥落って事はアップリンク周りは全壊って事だよな?」

「ああ、また降下からやり直しだ」

「めんどくせー。でも攻め続けないと今度は[アース]が攻められるしな」

 攻撃は最大の防御とは言ったもんだ。

「そういえば[フォレスト]はどうなってるんだ?」

「あっちは完全に膠着状態らしい」

「そうか、さて何処に行こうか…」

 他の皆は出払っていたり、クラフトに専念したりで、俺とマサだけだ。

「まあ、降下作戦で良いだろう。手っ取り早く稼げるし」

 行き先が決まったんで、行動開始!。


「なんか男同士で、くっ付くのはキツイな…」

「言うな…悲しくなる…」

 降下先で離れ離れは危険という事で、マサと抱き合う事に。

 その甲斐あって、一緒に着地出来たが…色々と酔った。

 辺りを見回し、マーカーを確認すると。

「お、ホームまで直ぐだ。とっとこ本隊に合流しようぜ」

 そういうわけで、襲撃を躱しながら、ホームの南に陣を構える本隊を目指す。

「誰か!誰かポーションを持ってないか!?」

「物資が足りない!」

「医療に長けた者は居らんのか!?」

 簡易的な防護柵で守られた本陣に着くと、そこは修羅場だった。

「何でこんな事になってるんだ?」

「どうも物資を持ち込む予定の職員が、悉く逸れてやられたらしい」

 それは…ご愁傷様です。

「これじゃどの道無理そうだし、死に戻り前提で、物資を全部売っちまうか」

 二人でそう結論付け、陣地内の納品箱に、コスト400分の物資を投入した。

「これでギルドで貰える報酬も相当上がるだろう」

 こうして身軽になったので、早速前線に突撃をかました。


「そしてあっさりと死に戻りと」

「まあ計画通りだな、流石にあの数には対抗出来ん」

 折角だし、と一番敵の濃い部分に突っ込んだら、ものの数分でチーンした。

「だが報酬は破格だ。ホレ半分」

「サンキュ…って20万!?どんだけ納品したんだよ…」

「ん?コスト400分だ、それでも市場価格なら8万程か?」

「大体五倍か、相当美味しいな」

 とはいえ、これで貯め込んだ物資も底を着いたので、また節約しなきゃ。

 二人でPAに戻り、俺は売り上げを確認すると。

「俺の取り分として30万か…良しちょっくら教会に行って来るわ」

 そして教会で転生し、さっき換金した素材を再び現金化する。

 そして取り分の30万も引き出し、Lvを一気に90まで上げた。

 因子は[酪農家]を取得した。パラメータはそのまま。

 スキルは転生前に戻した上で、<生存本能><速度上昇><養豚><過剰肥育>をLv60にし、<野生の力>をLv60、[酪農家]のスキル<牛>と<山羊>をLv1で取得した。

 これで俺のLPは5000を超えた。一番しょぼいタブレットでも1粒200以上は回復するので、乱戦でもかなりしぶとく生きれるだろう。

 <牛>と<山羊>の検証はこれから行う。


「と言うわけで、検証がてら降下するけどどうする?」

「勿論行くぜ、ある意味DIY最先端の情報だしな」

 マサは当然とばかりに来るそうだ。

 そして、今回は職人も含め総出で行く事にした。

 これまでの経験を踏まえ、全員で手を繋ぎ円陣になる事で、無事一ヶ所に纏まって降下する事が出来、非常に幸先の良いスタートだ。

 検証の方も無事に済み、大体把握出来た。

 先ず<牛>だが、取得すると牛の使い魔を1体使役出来るという効果だ。

 そして調べた結果。こいつの特性は何事にも動じない事だ。

 ランダムでのんびり移動し、草が生えてれば草を食べる。例えどれだけ激しい攻撃に晒されようとも、逃げも隠れも反撃もしない。但し鬼の様に堅い。

 Lv60の豚が何度も破裂する中、Lv1の牛は豚の十倍は攻撃を受けてもやられることは無かった。流石に十五倍程でやられたが、Lv1な事を考慮すれば異常な堅さだ。

 つまり、<牛>は鬼の堅さを持つデコイだ。

 続いて<山羊>だが、こっちは牛のオマケの様な感じで、羊同様一つのスキルで4頭の山羊を使役出来るが、これといって特徴も無く、逃げるだけだ。

 まあインパクトは無いが、コストパフォーマンスを考えれば十分強い。

 以上が新たな使い魔の検証でした。


 検証を済ませた俺達は、本隊を目指しつつ、道中で素材を集める。

 今や状況は変わり、少しでも物資の確保が優先されるため、採取が解禁された。

 [酪農家]の効果で、荷物にねじ込まれた牛乳を飲んで、渇きを癒す。

「甲殻に毒腺に翅と素材はタンマリだが、やっぱキツイな」

 引っ切り無しに襲ってくる蟲の大群。

 牛と山羊が増えた事で、安定性は増したとはいえ、やはりキツイ。

 巨大な蜻蛉に連れ去られた牛を眺めながら、愚痴が零れる。

「こんな無尽蔵の敵相手になにが出来るって話だよな」

「確かに、でも惑星規模のドミネーションなら仕方ないかな」

 いつだかの、[ゲートキーパー]大量湧きの時のギルド職員を思えば、この蟲の湧き具合も許容できてしまう不思議。

 そうこうしているうちに、本隊が見えてきた。

「大分押されてるわ」

 アコの言う通りなら急がねばなるまい。

 一同歩みを速めて、本隊を目指した。


 本隊に合流した俺らは、クラフトエリアに赴き、職人に素材を渡す。

「じゃあちょっと追加で素材を集めるから、クラフト頑張って頂戴」

「「「「了解」」」」

 職人四人を残し、戦場に参加する。

 と言っても目当ては職人に渡す素材。戦闘は手段に過ぎない。

 ランタンを片方しまい、シャベルを取り出す。

「お、結構シンボルが有るな」

 思いの外、砂系のシンボルが多くある事が判り、テンションが上がる。

 ちなみに俺達が居る場所は、激戦区では無く、人手が回らない側面だ。

 これなら邪魔にもならないし、文句があればそいつに守らせる心算だ。

 素材を集めつつ、蟲を駆除する事30分程。

 十分な素材が集まったので、職人に渡しに戻る。

「ただいま、はいお土産」

「ありがとうございます。完成した物資です。どうぞ」

 パミルが代表でやり取りを行い、俺らは物資を納品しに行く。

「ポーションに毒染めの建材に布…それにネジやギアか」

「これだけの必需品なら報酬も期待できるわね」

 俺が、物資をざっと見ていると、覗き込んだサチが期待を漏らす。

「さっきは俺とテツの二人で、テツの持ち込んだ物資で40万だったが、今度は12人居るからな。もっと納品しなきゃな」

 マサの言う通り、12で割ったらそこまでの額にはならないだろう。

 稼ぐ為に、気合を入れなおし、再度戦場に出る。


 時間が経った事で、戦場は激しさを増していた。

「それでも俺達は素材優先ですけどね」

「誰に言ってるんだ?」

 そんなやり取りをしつつ、採取をしようとするが。

「ああ!(トン)・ルイがやられた!」

 巨大な蚊に捕まれ、空中に連れ去られた豚が破裂する様を眺めながら、砂利を採取。

 呼んでも居ないのに、次から次へとやって来る蟲のお陰で、コストが直ぐにいっぱいになってしまうという、嫌がらせに晒されながらも素材を仲間に届け続ける。

 暫く同じ工程を繰り返すと、少しずつだが陣に変化が表れて。

「漸く壁が出来上がったか」

「しかもあれ殺虫剤入りの砂で出来てる様だぞ」

 真新しいコンクリ製の壁には、蟲が寄り付こうとしていないので、多分そうだろう。

「マッドが[エマルション]を持ってるのが大きいな」

「そうね、数あるアビリティの中でも最上級の利便性を秘めてるわ」

 サチ曰く、クラフト関連のアビリティでは、ダントツの希少性らしい。

 こんな設備も満足にない現場で、有り合わせの素材で消耗品が作れるんだから、その利便性、可能性は測り知れない。

 …いいなあ…俺も早くアビリティを手に入れたいよ。


「虫除け防壁のお陰で陣地の安全が高まったな」

 他にも大手クラフトカンパニーの参戦で、大型の虫除けパルス発生装置が等間隔で設置され、凄い勢いでこちら側が蟲を追い返している。

「おい、ありゃなんだ?」

 そんな言葉が出る様な奇抜な兵器も飛び出した。

「達磨?しかも棘だらけの?」

 動力、移動方法共に不明だが、ゆっくりと移動する巨大な達磨。

 当然の様に、敵認定された達磨が攻撃を受けると。

「おお!達磨だ!」

 仰け反った達磨は、達磨らしく、勢いをつけて元の体勢に復帰。

 そして、その時に全身に付けた鋭い棘を叩き付けていた。

「成程、カウンター専用のビークルって事か」

「戦車で良くね?」

 ベッタラの至極真っ当な意見。

「まあ…ロマンと弾代が掛からないのは良さげ?」

「そういう考えもあるのか、最も知的生命体には意味無さそうだな」

 確かに。飛び道具の集中砲火がオチだな。

 だが敵は数に物言わせた蟲の集団。欠陥兵器が威力を発揮する事もある。

 棘達磨が、ゴロンゴロンと巨体を揺らし、次々とカウンターで蟲を沈める。

 そして、達磨が切り開いた道に、新たなビークルが投入された。

「超巨大なバスか?」

 パッと見、サファリパークを走るバスの様な車両が登場した。

「タイヤがキャタピラになってるな、それに装甲重視なのか、火器も付いてない」

 どうやら超重装甲の輸送車両らしい。

 そんな車両が10台も列を成し、敵陣へと突撃していく。

 激しい攻撃に晒されながらも、円陣の様な陣形を組み上げる装甲車。

「出入口を内側に円を組んだな」

 直後車両のドアが一斉に開き、大量の戦闘員が出てきた。

「成程、車両を盾に歩兵で駆逐するのか」

 車両には、地面との間に歩兵が中腰で入れるほどの隙間があり、キャタピラもそれを活かせるよう、前後で四つに分けていて、歩兵はその隙間を活用し、蟲を翻弄していた。

「蟲共は巨体が仇になってるようだな」

 車両同士、地面との隙間に入り込めず、一方的に攻撃される蟲共。

「そして後方には狙撃兵か、味方が姿勢を低くしているから狙い放題だな」

 的に困らず、誤射の危険も少なければ、狙撃兵の独壇場だ。

 蟲の外殻を易々と突き破る狙撃の前に、数を減らしていく蟲共。

 ビークル投入からあっという間に、ホームへの道を切り開いて見せた。

 さあ、ホーム奪還戦の始まりだ。


 職人組に素材を届け、クラフトの完了まで本陣を護衛。

 クラフト終了と共に合流と納品を済ませ、ホームへ突撃する。

 激戦区へ近づく程、敵の攻勢はその激しさを増し、行く手を阻む。

 俺達は、前線の邪魔にならない様に、側面の迎撃に専念。

 こういう、地味な貢献こそが勝利への鍵なのだ。

 そう自分に言い聞かせ、敵の集団を引き付ける。

 周りを見ると、同じような考えを持つ層が結構いる様で、ホームへの一直線上に、味方を守る壁が形成されていた。

「こんなに居るなら俺達もホームへ…」

 そう思って持ち場を離れようとしたら。

 僅かに空いた穴から、大量の蟲が列に突っ込んで行った。

「ダメか…しゃーない、ここを死守しよう」

 結果勝てれば良いんだからな。裏方万歳!。

 それから暫く蟲相手に格闘し、味方を戦線へと送り続ける。

 そんな甲斐あってか、ホームの奪還に成功した様で勝鬨が聞こえる。

 これでやっとアースに帰れそうだな。


 アップリンクとテレポーターの修理が完了した事で、アースへ帰還した。

 ギルドで受け取った金額は130万円、一番素材を採取したという事で、俺が20万受け取り、後は10万ずつ分配した。

 取り敢えずLvを100に上げ、余りを換金物の購入に充てた。

 PAに戻ると、皆それぞれ活動するようなので、俺もソロで動く事に。

 取り敢えず治験を受けて、薬草集めをする。

 [速度]1200と[幸運]2400が大いに作用し、短時間で20万程稼げてしまった。

「でも、これで暫くは森の薬草は全滅だろうな」

 資源の回復は、キャラの成長具合に反比例するらしく、覚醒一回転生五回の俺は、資源の回復が初期に比べ、異常な程遅くなってしまった。

 これは、採取で稼ぎ続けたければ、色んな場所に行けという、運営のメッセージなんだろう。

 俺はそれに従うように、近場をぐるっと一周回り、取れる素材を全回収し、売ったり納品したりして、夕飯まで稼ぎまくった。

 これで向こう一週間は、近場での採取は出来なくなった。

 けどその成果は凄まじく、70万も稼げてしまった。

 しかも、加工出来る物は温存してだ。

 ホクホク気分で、ログアウトして、夕飯を喰らった。


「よ~し!転生だ!」

 金を物に換え、転生した。

 今回は、なんと面白いパラメータが解放されていたので、それを取得。

 代わりに[装甲]を切る事にした。

 取ったパラメータは[観察]、効果は使い魔の状態異常耐性が上がる。

 スキルは、<マウス1号>丸々太った愛らしい鼠を使役する。

 これが4号まである。

 次は因子だが、これは迷う!。

「さっきの様な大規模戦になると、後方で手持無沙汰気味なんだよな~」

 前線に出ても、火力の密度が物言う状況だと、数だけ多くても意味がない。

 そんな現実を突きつけられてしまった。

「今後は増々火力が重視される機会も増えるだろう」

 いよいよ前線が厳しくなってきたようだ。

「ここは思い切って、新たな道を模索するか」

 そう思い、因子のリストを眺める。

「守りが堅い、広範囲をカバー、でも前線では二軍落ち…」

 自分の現状と照らし合し、選択肢を絞っていく。

「一定時間毎に蜂蜜が手に入る[養蜂家]。開墾に有利な[百姓]。作物が早く育つ[農家]。どれも捨て難いな」

 これらなら、後方で燻っていても何かしら成果が出る。

「良し、ここは方向転換で[農家]を取得しよう」

 農家を取得し、転生を完了した。


「というわけで、農業とのハイブリッドになりました」

「「「ええー!?」」」

 一様に驚く皆。

「もう転生数でゴリ押しが効かない段階になったからな」

「そんな大規模戦を意識してビルドを変えんでも」

 マサの、それでよかったのか?的な言葉にも。

「良いんだ、それに後方支援の楽しさも有るしな」

 激戦区一歩手前で採取出来るのも、このビルドならではだし、これからはより強みを活かしていくだけだ。

「まあ私達はがっつく心算も無いからテツ君に合わせるわ」

「そうね、戦場で畑を守るのも楽しそうよね」

 ユキとアコが、畑を守るタワーディフェンスを想像していた。

「まあ、元々攻めるより守るのが得意な集まりですしね、僕は楽しみですね」

 ベルも前向きな言葉を発した。

 そんな感じで、俺のビルド変更を知ってもらった。


「どれどれ…」

 ホーム内の店で、安物の鍬を買い、ホームの外壁前で開墾する。

「おお!結構リアルな手応えだ」

 ザクッザクッと鍬を振るい、変哲の無い地面を畑に変える。

 1m四方の地面を耕したところで、漸く畑とみなされた。

「1m四方で一マスで、制限時間が30分か」

 元々は20分の所、[農家]の効果で50%延び、30分になっている。

「ここに種を蒔くわけか」

 適当に買って来た種を蒔き、暫く待機する。

 そして20分後。

「おー、シンボルで収穫できるのか」

 畑に、輝く大根のシンボルが現れたので、早速収穫する。

「よっと…すげえ!大根が6本も取れた!」

 どうやら収穫物にも[幸運]が適用されるらしい。

「けどデフォルトだと収穫は一回が限界か」

 畑の残り時間が7分で、大根が20分掛るので、もう無理だ。

「そこでスキルの出番か」

 [農家]の専用スキルは<品種改良>と<土壌改良>だ。

 <品種改良>は、作物の生産速度がLv毎に2%上昇する。

 <土壌改良>は、作物の生産量がLv毎に1%上昇する。

 このままLvを上げて検証したいが、時間切れなので、明日に持ち越しだ。


 翌日。

 金を工面し、Lvを74まで上げた。

 スキルは、<生存本能>Lv30 <魔導人形>Lv10 <ゴーレム使い>Lv10 <家族蛇>Lv20 <鏡亀>Lv1 <鯉の群れ>Lv20 <甲虫王>Lv1 <ブリキ兵1号>~4号Lv1 <蛇壺>Lv1 <蛇笛>Lv1 <群鼠>Lv1 <誘導>Lv30 <代行の剣>Lv20 <代行の盾>Lv20 <速度上昇>Lv70 <シープドッグ>Lv40 <羊の群れ>Lv20 <養豚>Lv70 <過剰肥育>Lv70 <野生の力>Lv70 <牛>Lv1 <山羊>Lv1。

 これに新しく。[観察]の<マウス1号>~4号をLv1で。

 [農家]の<品種改良><土壌改良>をLv70で取得した。

 これで総コストが571。残りポイントが465となった。


「じゃあ早速試運転といくか」

 ホームの外に出て、外壁回りを耕し畑にする。

 種を蒔き育つのを待つ。

「早ぇな、10分掛らずに収穫できるぞ」

 作物を収穫して、二度目の感動。

「一回の収穫で10本!スキル様様だぜ!」

 結局1区画の畑が消滅するまでに、三回の収穫を行い、大根34本を得た。

 その大根を、ギルドの納品やらカンパニーの競売で金に換えたら、1000円の収入になった。

「大体一つの畑を作るのに2~3分だから…」

 収穫までの間に次の畑を作り、また収穫まで畑を…と、ローテーションしていけば、この30分という時間に稼げる金はもっと増えるだろう。

 という事で、開墾速度を上げる為に、鍬を買い替える事にした。

 ホームの露店を冷かしたり、カンパニーを検索して良品を探した結果。

 [タングステン鋼の鍬]:非常に強固なタングステン鋼で出来た鍬。[開墾速度上昇10%][5%の確立で周囲も開墾][自動種蒔き] 攻撃力32。コスト20。

 このような鍬を、30万円で購入出来た。

 かなり高そうに見えるが、俺としては良い買い物をしたと思う。

 先ずアイテム説明には明記されてないが、素材が上位になる程開墾速度が上がるので、タングステンと言うだけで、壊れにくく開墾速度もおよそ50%アップする。

 更にオプションで[開墾速度10%]も付いてるので、デフォルトの1.6倍だ。

 そして[5%の確率で周囲も開墾]だが、文字通り鍬を振り下ろした時に5%の確立で、周囲8方向を耕せるものだ。例えば、鍬一振りが5%開墾ゲージを増やすとして、一区画開墾するのに二十回鍬を振って、オプションが一回発動したら、周囲の開墾は鍬十九振りで済むというものだ。

 最後の[自動種蒔き]は、開墾出来た畑に、手持ちの種がランダムで撒かれるもので、撒かれる種は運だが種蒔きの手間が消えるので、効率はぐんと上がるだろう。

 これだけのオプションが付いたタングステン製の鍬なら、30万円しようとも十分安い部類だと言える。

 装備も整え、再度外壁周辺で試験運用を行う。

「ハハハ!種蒔きが省略されるだけでこんなに快適とは!」

 2~3分の開墾所要時間が、1~2分に短縮され、種蒔きが自動化したので、あまりの爽快さに思わず笑いが出てしまう。

 しかも、確率開墾のお陰で常に周囲に未開墾地が6~7ヶ所隣接する様に耕す事で、開墾時間は増々短縮され、最初の畑が消滅する頃には所要時間は1分を切っていた。

 こうして手持ちの種を全て作物に換え、それを現金化。

 総額で5万程になった。

 種も大根なら1粒5円とお安く、1粒で大根10~13本程収穫出来、1本2~30円になるので、かなりのぼろ儲けが出来た。

 こうして新たな収入源の確保に成功し、上機嫌で就寝できた。


「と言う感じで、農業は凄い稼げることが判った」

 翌日、マサ達に得意気に言うと。

「そりゃ覚醒済み六回転生後ならそうだろ」

「普通は収穫しても移動速度は遅いしコストのせいで輸送できないし」

「高い鍬も初心者には買えないわね」

 という冷静なコメントで、結局はLvのゴリ押しだと分からせられた。

「でもスキルと装備さえ整えば稼げるのは本当の様ね」

 うんうん、サチは優しいな~。

「生粋のファーマーはその装備やスキルを伸ばすのが大変だがな」

 まあLvが低い内は、どうしても戦闘か採取で、身を危険に晒す方が実入りは良いからな。ホームの傍だけで一線級の稼ぎが叩き出せたら、外に出る意味がない。

 なんにせよ、態々ビルドの方向性を変えた価値があるか示す必要がある。


「というわけで、[バグスター]に来たわけだが…」

「ホーム大ピンチじゃん…」

 アップリンクが生きているし、問題無く跳べたので、平和だと思ったら。

「何て言うか…プレイヤーサイドの平均Lvが全然足りて無いって事だな」

 まあ廃人が多くインしてる深夜帯以外は、エンジョイ勢ばかりだしな。

「まあ良いか、俺は外に出て土弄りしてくるわ」

 俺の鶴の一声で、農業を見たいと付いてきた全メンバーも追従した。

 敵が溢れ返る外に、破壊された門から続々と出る俺達。

 それを見て、何かあると思ったらしい連中が追従してくるが…。

「じゃあここで始めるから護衛宜しく」

「了解(一同)」

 それを見て露骨に項垂れるのも居れば、面白そうと混ざる者もいた。

 何故か野良のファーマーも混ざり、どんどん広がる畑。

 そして収穫して気づいた。

「難易度の高いエリアは作物も良くなるのか?」

「ああ、だからこういう場所で農業をやりたいんだが、普段はそれどころじゃないからな~。今回は便乗させてもらって助かるぜ」

「んだんだ」

「こういう突発的なユーザーイベントもっと欲しい~」

 傍に居た野良ファーマーが色々と教えてくれた。

 成程、危険エリアは作物が良くなるが、畑と自身を守り切れないと。

 そういう事情もあり、普段は[アース]のホーム近辺で農業をやっている層が、今夜に限り続々と[バグスター]に乗り込んで来ては、俺達に混ざってきている。

 ちなみに横取りの心配は無い、作物もシンボル扱いなので、個別に採取判定を持っている。つまり人が増えれば増える程、爆発的に収穫量は増えていくのだ。

 そして人が増えた事で、ホームも敵を追い返し、再び物流が復活した。

 これだけ人が増えると、護衛も全員が気を張る必要が無いので、交代制で護衛も収穫に参加し、続々とホームに作物を売りに走る。

 結局このお祭りは天辺近くまで続き、最後は値崩れと就寝で終わった。

 ちなみにマウスはかなり弱かったが、毒や酸に対してだけ異様に耐性が高く、思いの外猛攻に耐えて見せた。


 翌日。

「昨日は凄かったな」

 PAでアコとサーモンと昨日の収穫祭を語り合う。

「なんと言うか…隠れ農家居すぎでびっくりしたわ」

「だな、でも作物の値崩れを目の当たりにすると納得だよ」

「確かに、人が集まらないと畑の維持すら困難なのに、軌道に乗ると値崩れのリスクが増大して、最終的な利益が減るんだもんな~」

 ちなみに、あまり知られてないが、畑は開墾者のステータスに依存して、耐久度が決まるらしい。

 なので、戦闘系パラメータや因子が無いと、敵に対し貧弱な畑しか作れないのも、普段比較的安全なエリアでしか、畑を見かけない理由でもあった。

「畑に開墾者依存の耐久度とか…なんというテツ君向きなのかしら…」

 うん、俺も天職かと思た。

「高耐久に数の暴力か…それが有れば危険なエリアでも開墾できるってわけか」

 狙ったわけじゃないが、ビルドの見直しは良い感じらしい。

「ばんは~」

「「「ばんは~」」」

 マサがインしてきたので、出撃する事に。

「まってました~!」

「先に始めてたぜ!」

 今夜も[バグスター]に来ると、既に外壁周辺では畑が無数に存在していた。

「あれだけ値崩れしていたのに、良く今夜もって思ったな」

 近くに居たファーマーに聞くと。

「それでも[アース]で作るよりよっぽど稼げるからな」

「今[バグスター]に農業の波が来てる!今が稼ぎ時だ!」

 との回答を頂いた。

 まあ皆でワイワイするのも楽しいからな、今夜も祭りに参加しよう。


「なんと言うか…既に開拓済みじゃんって言いたくなるな」

 寄って来る蟲を悉く駆逐し、見渡す限り畑が広がる光景。

「ギルドが人の流出を恐れて、作物の最低買取価格を設定したお陰だな」

 折角人が押し寄せて、入植の足掛かりが出来たのに、値崩れが原因で振出しに戻るのは、ギルドとしても放っておけないのだろう。

 作物が潤沢に流通すれば料理人が集まる。良質な料理を求めて戦士が集まる。戦士が集まれば武具や消耗品が売れる。

 こんな感じで経済が循環し、入植にも好影響が出るのだ。

 俺も開墾や収穫の傍ら、豚肉やミルクも提供し、コックに料理して貰ったバフ付き料理を食いまくったお陰で、更に効率よく開墾出来ている。

「料理のバフも相当強力だな。[LP20%上昇]とか専用のビルドを組んで食ったらどれだけ効果が上がるんだろう」

 そんな新たな発見もしつつ、今夜も収穫祭は大盛り上がりだった。


「さて、遂に本番が始まったぞ」

 翌日。墓地に向かうとこんな事を呟くルーカスが居た。

 どういう状況かと言うと、遡る事数分。

 帰宅し、ログインすると。

「巡回の緊急招集か」

 指示に従って、急いで墓地に来ると。

「前衛はしっかり守るを固めろ!」

「強力なランタン持ちを守れ!」

 何やらただ事ではない様子だった。

「おう、テツか!早く混ざってくれ!アンデッドの大量発生だ」

 ここで遂に、入植や侵略での犠牲者がアンデッドになり始め、冒頭に戻る。

「ん?なんだテツお前、ランタンはどうした?」

「ああ、ちゃんと持ってるぞ。だが今の俺は農業での後方支援が本業なんだ」

「なんだって!?」

 どうも俺を壁として充てにしていたらしく、焦るルーカス。

「ほら、こうやってどこでも畑を作って、作物を生産できるんだぞ」

 戦場で唐突に土弄りを始める俺を、周りが白い目で見る。

「そんな怖い目で見んなよ…、大丈夫だ邪魔はしないから」

 どうも歓迎されて無い様だから、端っこに移動して畑作りを開始。

 一応この戦場で、俺がダントツでLPが高いようなので、まあ群がって来るわアンデッドの集団が次から次へと。

 まあこれだけ敵を引き付けているなら、誰も文句は言えんだろう。

 俺はアンデッドが破壊する以上のペースで畑を作り、収穫をしていく。

「おい、あいつ畑を作りながらアンデッドを相手にしてるぞ」

「てかあの畑の堅さはなんだ!?」

「畑に見せかけたバリケードなのか…?」

 そんな声が聞こえて来るが、よそ見する暇があるなら戦ってくれ。

 俺は収穫したスイカを食べて、腹と喉を癒す。

「おいおいなんだこの戦法は…」

「どうだ?これが俺の新境地よ!」

 様子を見に来たルーカスが呆れ気味に呟く。

「てか何でアンデッドが畑に攻撃してるんだよ!?」

「さあ…?まあ俺の耕した畑だから、生命力迸ってんだろう」

「俺は一体何を見てるんだ…」

「まあ深く考えなさんな。ホレ、差し入れだ」

 採れたての西瓜をルーカスにおすそ分けした。

「…旨いな…」

 傍で戦ってた連中の視線が西瓜に釘付けとなる。

「良し…テツ、別途手当を出すから作物を提供してくれ」

「了解、ここに積んでおくから手の空いた者から持ってってくれ」

「「「おおーー!」」」

 戦場に居れば喉も乾くし腹も減るからな…。西瓜は良い食料だろう。


「結局一番活躍してたのはテツだったな…」

「ふふん!どうよ?」

「認めざるを得ないな、しかし何でまた農業なんだ?」

 戦闘に一区切り着いたので、世間話をする。

「使い魔ってさ、どうしても火力が乏しいんだ」

「そうだな、そもそも堅いのですらおかしいんだが…」

「でさ、前に出るだろう?敵が一定水準の強さだと、戦況が膠着するんだ」

「まあ…、だが膠着状態に持ち込めるんなら、それも十分な強さだろう?」

 まだ俺が言いたいことが判らないルーカス。

「それって、自分では状況を動かせないって事なんだよな」

「…あ!成程…そういう事か」

「ああ、味方が状況を好転させない限り動けないし、下手に動くと悪化させちまう…。そうなるとその場からは動けなくなっちゃうんだよな」

「少々理論が飛躍した感は有るが、納得した。確かにそれなら農業と相性が良いな、前線で動けなくても前に出れなくても、その場で何かを生産出来るのは農業しかないもんな」

 これなら偶々動けなくなっても手持無沙汰にならないし、端から前に出ない時も稼げるので、時間を一切無駄にしなくて済む。

「しかし、そんなことを気にするって事は、折角壁になってやってんのに、動く事での状況悪化に文句をつけて来る輩が居たのか」

「ああ、さっきのあんたらみたいな怖い目をしてたぞ」

「む…それは悪かった。ちょっとスタイルに落差があり過ぎたからな」

「ははは、まあ気にしてないがな。そんなわけでこれが最新版の俺だから宜しく」

 ルーカスとの世間話も終わり、第二ラウンドの開始だ。


「…で?何で俺が最前線なんだ?」

「そりゃあの最強の畑を作って貰う為さ」

「作物じゃねーのかよ!」

 先程の戦いで見せた、畑のヘイトの高さに目を付けられたしまった。

 バリケードじゃねえんだから、普通に踏み越えて来るんだが。

 まあボヤいてても仕方ないので、作業を開始する。

 凄まじい物量のアンデッドが、畑に首ったけなのは非常にシュールだ。

「なんで畑にゾンビが…」「あいつ西瓜を貪ってるぞ…」「何がなんだか」

 俺も何が何だかだよ。

 オプション[自動種蒔き]のお陰で、初回時の1工程が省かれ実に快適だ。

 流石に最前線だと、畑を潰される方が早いが、その分味方が頑張ってる。

 隙を見て収穫したスイカを付近の味方と一緒に食べながら、戦線を維持。

 ここぞという時に、ランタンを取り出し二刀流で攻め立てる。

「なんだ!?あいつランタンを2丁持ってるぞ!?」

「農家の助っ人じゃなかったのか…」

 本気で農家と思われてたらしい。

 これでも[ジャックオーランタン]の特級ですけどね。

 てか使い魔を60体以上連れた奴を本気で農家だと思うって、相当キテルな。

 …うん、俺もあんまファーマーを自称するのは止めよう…。


 結局終始緊張感のないまま、アンデッドの氾濫は沈静化された。

「いや、助かったぜテツ。ウィル達が居ないから結構ヤバかった」

 どうやら、他のベテラン勢は[バグスター]や[フォレスト]の救援に駆り出された様で、留守はルーカスと中堅が担ってたようだ。

「[バグスター]か、最近よく行ってたから分かるが凄い激戦区だもんな」

「ほう、ならウィル達は[バグスター]に駆り出されてる。援軍に行けるか?」

 まあ、最近のライフワークになりつつある、危険エリアでの農業。

 そのついでの助っ人として向かってみるか。


 これでもかと様々な種を用意し、[バグスター]に乗り込む。

「このホームいつも陥落寸前だな」

 最早こすり芸の領域で、今回も襤褸切れ状態のホームに呆れる。

 救護テントに行ってみると、知った顔が有ったので声を掛ける。

「ウィルにカイルが怪我したのか」

「テツさん!」

「おお、テツじゃねーか!」

 負傷は軽い様だが、それぞれに付きそうギルとミーチャが俺の名を呼ぶ。

「ほれ、差し入れだ」

 収穫したばかりの西瓜、軟膏ポーションを渡す。

「最近こっちによく来てたから知ってんだが、沢山のファーマーが居たろ?なんでこんなに押されて戦況が芳しくないんだ?」

 ファーマーとその護衛を入れれば、相当な人数が居たはずだが。

「馬鹿な役人が横槍入れて、買取保証を取り下げられたせいで人が減った」

 ウィルの簡潔な説明で、状況が判明した。

 …なんていうか、この刻一刻と変わる状況は何だろうな。

 流石にスタッフが全部操作するわけないだろうから、マザーコンピューター的なAIが管理操作してるんだろうが…もの凄いリアルだな。

「その馬鹿も責任を取る形で、本体で最前線に送られ蟲の餌になったがな」

 けど、一度切られた予算が直ぐに戻るわけもなく…って事か…。

「あーあ、折角あれだけ波が来てたのにな」

 嘆いても仕方が無いが、残念な事だ。

 見舞いを済ませ、戦場に出ようとすると。

「付き合うぜ」

「お供しますよ」

 ミーチャとギルが同行してくれる様だ。

「一応言っておくが、農家との二足の草鞋になったからその心算で」

「「え…?」」

 うん…、そんな反応になるよね。


「なんだ…この…、なんだこれ!?」

「流石テツさん。斜め上過ぎる…」

 外壁から飛び降り、アンデッドと蟲の乱闘には目もくれず開墾を開始。

 直ぐにアンデッドと蟲と使い魔の3つ巴に発展する。

 そんな中、一つ目の畑が完成すると。

「何でアンデッドが畑に夢中なんだよ!」

「ははは…なんだこれ…?」

 畑に群がるアンデッド、膨らんでは破裂する豚、空中でバスケされる羊。

 目の前の狂った光景に、口が開きっぱなしの二人。

「さあ呆けてないで援護してくれ」

 俺の言葉で醒めた二人が、俺の左右を守る。

 豚が攻撃を吸ってくれるので、攻撃は二人に任せて開墾を続ける。

 ホームの外壁だったものの周囲を回りながら、開墾していると。

「敵の攻勢が弱まった!今こそ反撃の時だ!」

「「「おおー‼」」」

 一斉に兵士が飛び出し戦闘を開始した。

「あの指揮官は餌になった馬鹿の部下だ。点数稼ぎに必死な様だな」

 ミーチャが攻勢に出た指揮官をバッサリと切り捨てる。

「指揮もダメダメですね。兵が可哀想です」

 ギルにも呆れらる指揮官。

「まあどうでも良いよ、邪魔さえしてこなければな」

 そう思ってたんだが…。

「おい、連中こっちに向かってるぞ」

「大方自分達だけでは如何にも出来ないから、指揮下に加える気でしょう」

「なんというテンプレ。まあこの距離なら振り切ってホームに帰れるけどな」

 そう言って、丁度西門が有るので一旦帰還した。


「この度は数々の御無礼お許し下さいまし」

 突然やって来たおっさんが頭を下げ、指揮官が目の前で土下座をしている。

 何が起こったかと言うと。

「おい貴様ら!何故我らを置いて引き上げたのだ!」

 俺らを追っていた指揮官が、ボロボロになった状態で怒鳴り込んできた。

 この状況既視感が半端ねえな。

(めんどくせえからガン無視で良いか?)

 居合わせたウィル達に確認すると。

(それで良い)

 との事なので、一切の反応をしない事にした。

 なんか意味不明な論法で攻め立てて来るがスルー。

 向こうは人目がある手前、暴力を振るえないので、ひたすらに喚く。

 俺達は西瓜を食べながら待機していると。

「貴様は自分が何をしているのかわかってるのか‼」

 突然乗り込んできた強そうなおっさんが、指揮官を詰め始める。

 要約すると。[ジャックオーランタン]がそちらの指揮下に入った覚えがない、今後一切ギルドとの連携は無いものとするが宜しいか?。

 こんな感じの文言が、ギルド上層部当てに届いたそうだ。

 ただでさえ安定し始めた[バグスター]の情勢をひっくり返しただけでなく、[ジャックオーランタン]にまで喧嘩を売ったこの派閥はもう終わった様だ。

 基本的に、ギルドと各ライセンス局との力関係は互角だが、[ジャックオーランタン]は非常に特殊な環境での行動が前提のライセンス。

 貸し借りで言えば、ギルドが頼る事は有っても、ギルドに頼る事は皆無。

 その[ジャックオーランタン]が、今後一切の協力を拒否するとなれば、今後のギルドの立場そのものが危うくなる一大事だ。

 それ故に、ギルドのお偉いさんが駆け付け事態の収拾を図っているのだ。

 ちなみに今回の事を上にチクったのはウィル。

 どうやら権力闘争にも精通している様で、実に痛快な結末となった。


「お前達も気の毒だったな」

 後処理を済ませて戻って来たウィルが、申し訳なさそうに言って来る。

「なに、矢面に立ってもらったしな。気にするな」

 俺とギルの代わりに、ミーチャが受け答えする。

「なに、こうして十分な医療を受けれたのもお前達のお陰だからな」

 ちなみにカイルも関係先に報告と称し、ギルドの暴走を宣伝しに行っている。

 ちなみに、今回ポカをやらかした指揮官。見事に餌役が決まった様だ。

 越権行為、職権乱用に加え、不必要な出撃で人的被害を出したのだ。

 この処遇は当然の結果だろう。

 取り敢えず今回の一件は、ギルドが責任をもって[バグスター]の入植に貢献する事で、各所に対して償う事となった。

 ギルドから大量の戦闘員が派遣されたのを見届け、PAに戻って来た。

 時間も時間なので、そのままログアウトした


「おめでとう。ついにナノマシンを克服し、制御できるようになったな」

 翌日も日課の治験を済ますと。マッドな博士から遂にお墨付きを貰った。

「さあ、目覚めた力を見せてくれ」

 言われるがまま、メニューから名称不明のアビリティを発動してみる。

「こうか?ん…」

 若干の脱力感に晒され、身体から何かが抜ける感覚に襲われる。

 そして感覚では無く、実際に何かが抜けた様で、その何かが蠢いて…。

「これは…俺?」

 そう、目の前に居たのは俺そのものの姿だった。

「ほほう…まさかクローン、いやドッペルゲンガーが発現するとは」

「ドッペルゲンガー…」

「これは歴史上稀にしか発現しない激レアアビリティだ」

 博士曰く、ドッペルは俺と完全同位体の存在らしい。

「君の体内のナノマシンが、君の細胞を君自身のエネルギーを使って体外に排出。その細胞を使って同位体の存在を作り出すのだ」

 装備はどうやって?と聞くと。それもナノマシンがやってくれるらしい。

 ご都合主義ありがとう。ただデメリットというか、満腹度と保水度が50%消費されるので、出先なら飲食の携帯は必須だ。


 取り敢えず、治験はこれで終わりというので、研究所を後にした。

 検証がてら、ホームの外に出る。

「丁度人も少ないし、使ってみるか」

 [ドッペルゲンガー]:自身の同位体を生み出す。効果時間30s。クールタイム10分。

 と、説明はこんな感じで、記載は無いが満腹と保水が50%減る。

 早速生み出したクローンを見て吃驚。

「そうか…完全同位体だもんな」

 なんと、使い魔も再現されていて、この場には計140近いユニットが存在。

 クローンは、完全に思考が独立してるようで、独自に開墾を始めたが、畑を完成させる前に時間切れで消滅した。

「30秒…短いな」

 だが、可能性を大いに秘めたアビリティではあるな。

 クールタイムも10分と、効果を考えれば短い部類だろう。

 色々と検証したが、流石に採取の判定は同じで、俺が採取した場合、ドッペルは同じシンボルからは不可、その逆もしかりで2倍取れるとはならなかった。


 さて、ある程度の検証を済ませたので、本日の活動を開始する。

 危険エリアでの開墾は、メリットが大きいのでダンジョンに向かう。

 早々に植物の暑い歓迎を受けるが、最早そよ風。

 膨らむ豚を尻目に内部に侵入した。

「じゃあ早速、[ドッペルゲンガー]」

 ドッペルを生み出し、ダンジョン内に畑さこさえるだ。

 ごく短時間とはいえ、周囲の敵を圧倒する数を生み出し2倍の速度で開墾。

 周囲を数で蹂躙し、畑を一つこさえてドッペルは消滅した。

「それにしても…やっぱ防御系パラメータを削ったから使い魔が柔い」

 常に四方八方から攻撃が来る環境では、使い魔の弱体化が顕著に表れる。

 まあ、覚悟の上の選択だ。甘んじて受け入れるしかない。

 暫く敵の攻撃を凌ぎ、作物を収穫する。

「…流石ダンジョン…作物の質がかなり良いな」

 ホーム周辺取れるのが[大根]、[バグスター]で取れるのが[太った大根]。

 そしてダンジョン内の畑で取れたのが[上質な大根]だ。

 価格も、10~30が50~70、80~100と上がっていく。

「ダンジョンで一回収穫すればおよそ1000円の収入か」

 単体効率では、薬草集めには敵わないが、危険なエリアならその分敵の素材が手に入るから、トータルでは負けていない。

 こうして、かなりの近場に稼ぎスポットを見つける事が出来た。


 ダンジョン内で粘る事2時間。

 相当な量の作物を収穫し、帰還した。

 収穫物を様々なルートで売り捌き、20万弱を稼ぎ出した。

 やっぱ流通量が増えると、値崩れの発生は避けれない様だ。

 本来なら40~50万はいってもおかしくないんだが…、仕方ないか。

(作物でこれ以上稼ぐなら、加工は必須だな)

 レトルト、缶詰、冷凍、乾物etc.…。

(大根ならおでんの缶詰に、切り干し大根か)

 今後を見据え、食品加工を検討するテツであった。


 土曜早朝。

「…缶詰機と厨房を増設っと」

 増設した厨房で、早速調理を始める。

「さて、パラメータも因子も無い状態で、どの程度の料理が出来るか…」

 大根の皮をピーラーで剥き、面取りをして弱火で糠と一緒に炊く。

 その間に剥いた皮を乾燥機に掛ける。そして出来たのが。

 [切り干し大根]:なんの変哲の無い切り干し大根。コスト0.5.

「良くも無いが、特別酷い物が出来るわけでは無いのはありがたい」

 てっきりスキルが無いと、[不味い切り干し大根]とかが出来ると思ってたので、最低限品質に問題ない事は嬉しい。

 アクを抜いた大根を、カツオ出汁で炊いて出来たのが。

 [一手間掛けたふろふき大根]:アク抜きの工程を挟んだ美味しいふろふき大根。満腹度30%回復。[LP5%回復]。コスト0.5.

「何してるの?」

「うわ!?ユキか、ビックリした…」

「おでんの大根?テツ君料理するんだ…」

「おでんじゃないけど似たもんか。まあ人並みには出来るかな?」

 取り敢えず試食という事で、大根を食ってみる。

「うーん…なんか一味足りないな…」

「やっぱ料理用のパラメータ因子はあった方が良さそうね」

 どうもすっぴんでは限度がある様だ。

「でも普通に大根のまま売るよりは良いんじゃない?」

 ユキは、決して不味い訳じゃないというので、売ってみる事にした。

「缶詰機なんていつの間に?」

「ついさっきな。お、意外と沢山出来るもんだな」

 大根10本、寸胴一杯分で缶詰80個分用意できた。

 [ふろふき大根の缶詰]:日持ちする缶詰のふろふき大根。満腹度10%回復。[保水回復5%][LP回復2%]。コスト0.2。

 これが缶詰1個分の、ふろふき大根だ。

 満腹度の回復量は下がったが、出汁を沢山居れた事で保水回復効果が付いて、缶詰で量が減った事でLP回復効果は下がったが、コストも下がった。

「値段は…1個50円にするか」

「安くない?」

「[上質な大根]が1本100円位だからな、こんあもんだろう」

 なんせ、ホームでは腹いっぱいになれる定食が、100円で食えるのだ。

 費用対効果で考えれば、50円は妥当な値段の筈だ。

 そうして値段も決まり、販売して見ると。

「あ、売れた」

「早くない?」

「しかも全部」

「ええ!?」

 まさかの即完売。

「うーん…ちょっと不可解だな…」

 料理を専門に扱うカンパニーは、それなりにある筈。

 そんな中、これといって特色の無い料理の即時完売はあまりに異常だ。


「少し調べたが、どうも本格的な料理は凄い高い様だな」

 確かに効果も凄いのだが、携帯食一つが500円以上は中々お高い。

「それでもトップランカーなら買いそうね」

「ああ、だから商売が成り立ってるんだよな」

 けど高すぎて変えない層も、一定数居ると。

「そして缶詰機。これの解放条件が不明で、缶詰を作れないカンパニーが殆どのせいで、缶詰に付加価値が付いてるから、安いのもあって完売した様だ」

 最初は何処も、お手頃な価格で売っていたみたいだが、原価が高くなり効果が上がって来ると、もう元の値段では売れなくなると。

「良く缶詰機が解放されていたわね」

「多分増設した設備の種類数だと思うんだけどな」

 うちには職人の為に、増設した設備が沢山あるからな。

 いつの間にか解放出来てたのだろう。

 さて、今日はどんな事をしようかね。

次も二週ほどで

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