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第十話

~前回までのあらすじ~

覚醒と言う名の十回目の転生で、大幅にパワーアップしたテツ。

砂漠での激戦を制し、大量の戦利品を持ち帰った。

 翌朝。

 昨日売りに出したレア素材の売り上げを確認し、教会に向かった。

 目的は勿論転生だ。

 資金が足らなかったので、カンスト無理だが、Lv70まで上げれた。

 因子は[羊飼い]を取得し、パラメータはそのままだ。

 スキルは、<生存本能><速度上昇>をLv40に、<シープドッグ>をLv40<羊の群れ>をLv20で取得した以外は、転生前と同じである


「さて、今日はどうしようか」

 現状[アース]での未攻略エリアは、北の豪雪地帯とその先。蛇の森を超え、リザードマンと遭遇した場所とその先。南の砂漠地帯とその先。西の海底とその先の陸地。

 更に湿地草原の先の干潟や汽水域も、直ぐ傍が海なので、やはり海を渡れば別の陸地が有るのだろう。

 その上、新たに[バグスター]に[フォレスト]も追加されてるので、現状で一通り攻略するだけでも。数百時間は掛かりそうだ。

 俺がそんなことを考えていると。

「あ、リーダーおはようです」

 シルクが声を掛けて来た

「おはよう」

「リーダー、コレを上げるです」

 そういって、シルクに渡されたのが。

 [シャツ]何の変哲もないシャツ。[保温][生命上昇5%]。コスト0。

 [ズボン]何の変哲もないズボン。[保温][生命上昇5%]。コスト0。

「良いのか?売ったらかなりの価値が付くぞコレ」

「リーダーには設備投資でお世話になってるので、どうぞです」

 シルクが恩返しとして、献上してくれたので、有難く受け取りる。

「早速装備させてもらうよ」

「上下に付加効果の、保温が付いてるから、雪山もある程度は平気になるです」

「成程、逆に保冷が有れば、灼熱地帯が攻略可能になるわけか」

 折角高性能なアパレルを貰ったので、北に向かってみた。


 豪雪地帯の手前、積雪地帯に到着。

「おお、寒さを感じないし、LPも減らないな」

 以前は寒くて、ゆっくりだったとはいえ、LPも減っていた。

「そんじゃ、環境ダメージの憂いが無くなったので、進んでみますか」

 誰も付いて来てくれなかったので、一人でテンションを上げ、出発した。

 普通だったら、積雪のせいで、歩きずらいことこの上ない筈だが。

「メェ~」

「わんわん!」

 [羊飼いの]使い魔達が、先行して、踏み固めてくれるお陰で、多少は楽になり、その後を俺と使い魔の大群で動くので。かなりのスペースが、踏み固めるなり除雪されるなりして、足場は思いの外悪くない。

 しかも、雪の下にあるシンボルも発見でき、色々と美味しい。

 そんな感じで、ウロウロしながら探索していると。

「あれは馴鹿か?」

 遠目に立派な角を持った、馴鹿らしき動物を見つけた。

 此方との距離が十分あった事もあり、少しの間視線が交差したが、程なく馴鹿が奥地に走り去って、ひと時の出会いは終わりを告げた。

 それ以降は、馴鹿も含め、定番の熊や、鹿に狐など、雪山に居る生物を何度か見かけた。

 ただ。食料の乏しい過酷な環境で生息しているだけあって、ここの生き物は皆強力で、危険になるとなりふり構わずに逃亡を図るなど、生への執着も強く、未だに戦果は0だ。

「足元は悪いわ獲物は逃げるわで、こりゃ人気が無いわけだ」

 先程よりも進んだことで、一面銀世界の景色に変わったが、一向に自分以外の人の気配を感じる事は無く、一人寂しく黙々と探索をしている。

 一応、[雪下草]という雪の下に生える薬草や、[雪月華]という、非常に香りの良い花などが採取出来、稼げないというわけでは無い様だが、面白みに欠けるので、イマイチ人気が出ず、人が寄り付かないのであろう。

 俺も、あまりに単調な作業に、割り切っていた心が軋んだので、帰還した。


「ただいま~、はいお土産」

 職人衆に、植物や動物の抜け毛や、羊毛を渡した。

 さて、次は何処に行こうかと考えていたら。

『全プレイヤーにお知らせです、間もなく全ベースの建設が完了し、[アース]浄化システムが完成します。これにより、NPCが航空機の運用を開始します。彼らの運用する航空機は、偵察や戦闘、物資や人員の輸送を受け持ち、プレイヤーもその恩恵に与る事が出来ます。是非NPCと友好を深め、協力して[アース]を開発してください』

 どうやら、これからは航空機がそこらじゅうで見られる様だ。

 外に出て、ふと近くのギルドを見ると。

「おお、屋上にヘリが止まってる」

 その新鮮な光景を眺めていると、早速ヘリが動き出し、空の旅へ飛び立っていった。

「お~なんかこういう風景も良いな…って、またヘリが止まってる!?」

 流石ゲームという事なのか、少し目を逸らした隙に、またヘリが屋上に出現していて、そのヘリも程なくして、飛び去って行った。

「あの方角は砂漠か、俺も行ってみるか」

 なんとなくヘリの後を追い、砂漠に向かった。


「やってるやってる」

 予想通り、二機目のヘリは、砂漠の巣の駆除に駆り出された様だ。

 機体下部に装着された機関銃で、巣をハチの巣にしている。

 当然怒り狂った、飛行型の虫の反撃に遭うが、上手い事捌いている。

 そんな空中戦から視線を映し、砂漠と南山や樹海の境界線を見ると、以前は沢山あった屋台が無くなっていた。

 疑問に思いつつも、結局拠点として確立された場所に来ると答えが分かった。

「ああ、皆拠点内に場所を移したのね」

 この短期で更に充実した拠点内を観光し、前線に向かう。

「ん?なんで羊が逃げて来るんだ?」

 前線に向かって移動中、いつもなら元気に先行し、犬に追い掛かられる羊が、今は何かから逃げる様に、俺の後方で走り回る。

「おかしいな、巣も敵もまだまだ先に居るのに…何故だ?」

 なんだか胸騒ぎがするので、羊の挙動を見ながら動き、俺と巣と拠点を線で結んで、直角になる辺りまで移動すると、羊の挙動が正常に戻ったので、巣に向かう。

 現在ヘリが飛行戦力を引き付けているからか、巣の防御は薄く、多くの戦士が巣を取り囲み、巣を破壊せんと攻撃を加えている。

 取り敢えず邪魔にならない様に、壁の薄い所を探し、拠点から死角になる巣の真後ろが空いていたので、そこに張り付いて攻撃に加わる。

「しかし、間近で見るととんでもないデカさだな」

 100mは優に超える、聳え立つ虫の高層マンション。例えるのならこんな感じか?

 見上げてるだけで首が痛くなってくる巣からは、今も夥しい数の蟲が、外敵を退けようと巣から飛びだし攻撃を仕掛けて来る。

 取り敢えず、傍には<ガーディアン>が控えているので、後方の羊の動向に目を配りながら、巣に44体の使い魔を送り続ける。

 暫く戦いを眺めていると、いつの間にかコストいっぱいまで素材が集まり、周囲に拾いきれない素材が散乱し始めた。

「しゃあない、一度拠点に戻るか」

 戻りの道中も、羊の挙動を見て移動する。


「ありがとうございましたー」

 拠点に居るNPCの商人に、戦利品を売り8000円の収入を得る。

「流石に供給過多で、単価が安いな」

 一応毒薬の素材はキープし、拠点にチェストがあったから収納した。

 軽く食事を取り、用も済んだので、再び前線に向かった。

 やはり、羊が巣と拠点の直線上を嫌がり、迂回し巣に近づく。

 そんな俺の行動を、大半のプレイヤーは一瞥するが、直ぐに興味を失って視線を巣に戻していく中、一部のプレイヤーが近づいて来た。

「なああんた、どうしてこんな離れた位置から、迂回して近づくんだ?」

 パーティーを組んでいるのか、一人が代表して聞いてくる。

「ああ、どうにもな…、ほれ。あの羊たちの挙動が気になってな」

 俺は、先を走る羊を指さし、羊が明らかに巣への直線上を避けている事を説明。

「確かに。明らかに避けているな…」

 犬に追いかけられてる中、あからさまに避けているので、判り易い。

「これは怪しいな…分かったありがとう、これで失礼するよ」

 そう言うと、パーティーは前線では無く、拠点に引き返していった。

 俺は再び巣を目指し、歩き難い砂漠を闊歩する。

 巣に到着し、素材を確保し、拠点に戻る。

 このサイクルを何度か繰り返し、PA(プライベートエリア)に戻った。


 昼食を取り、再びログインする。

「おうテツか、聞いたか?砂漠の地下に超巨大なダンジョンが出来たって話だ」

「いや初めて聞いた、出来た?まさか!」

「ああ、蟲共が地下に巣を広げてたようだな、それも桁違いな規模に」

 マサにあらましを聞くと、不穏な気配を感じたプレイヤーが、ギルド職員に報告し、早速運用され始めたばっかのヘリで、巨大なスキャナーとアナライザーを運び、周辺の土地を調べたそうだ。

 すると地下100m程に、大規模な蟻の巣状の迷宮が築かれていた事が発覚した。

「どうも地上の巨大な巣はフェイク。本命は地下迷宮の方だった。って話だ」

「へ~」

「でだ!テツ、何をした?」

「なんだ唐突に?」

「ギルドに情報を提供した連中曰く、情報元は使い魔を沢山連れた男だった。そういう情報が上がってるんだが、どうだ?」

「どうだ?って言われてもな」

 取り敢えず、砂漠での出来事を搔い摘んで話す。

「成程、そいつらも目立つ奴が目立つムーヴをかますもんで、不安だったんだな」

 なんだよそれ、マサの俺の印象が大分おかしい。

「それにしてもダンジョンか、大分世界観が混沌としてきたな」

「だな、さて行くか」

「行ってら~」


「で、何で俺まで砂漠に?」

「そりゃダンジョン発見の第一人者として、来るべきだろう?」

 現在マサに強制連行され、砂漠に来ている。

「ところで、来たはいいけど、何処から入るのよ」

「パッと見入り口何て無いわよね」

 いつの間にかついて来ていたユキとアコ。

「ギルドがボーリング機を手配して、入り口は確保したそうですが」

 ベルも居た。

「アレだな、取り敢えず近くに行ってみよう」

 ということで、マサをリーダーに、五人で入り口に向かう。

 ダンジョンの入り口は二つに分かれており、垂直に伸びたトンネル状の筒を、高速で降りる物と高速で登る物だ。

 それぞれの出入り口の上下に、ポータルと言う移動装置が取り付けてあり、中に入れば、片道切符のエレベーターの様に移動できる。

 ポータルのサイズは大きく、一度に二十人は軽く移動できるので、ポータル前は大行列にも関わらず、次々と人が地下に吸い込まれていく。

 俺達も順番になり、他のプレイヤーやNPCと一緒にポータルに入る。

 高速で地下に降りるので、気圧の変化で、耳や平衡感覚が狂う。

 僅か数秒で地下に降りる事が出来、ポータルから出る。

 先で待ち構えて居た職員に、何やら銃の様な物を渡され、説明を受ける。

「これは、狙ったところにワイヤーを飛ばし、飛び移ったりぶら下がる道具だ」

 どうやら、高い所にはこれを使って移動しろって事だろう。

「これがダンジョン…蟻の巣の内部か」

 そこはいかにも蟻の巣の一部屋といった感じで、普通では無いのはその大きさだ。

 無数にある部屋の一つに過ぎない筈だが、床から天井まで軽く30mは有る。

 ギルド職員が立てたのか、看板には、地下130mと書いてあった。

 そりゃ、一部屋一部屋がこのサイズじゃ、深くしなきゃ無理だよな。

 あ、ちなみに使い魔は、ポータルに入りきらなかったが、使役者と距離が離れれば、一定時間で自動的にワープしてくるので、今はキチンと俺の傍に居る。

 現在俺達や大勢の人が居るここは、巣の端っこの部屋の様で、この先の部屋から、無数に分岐していて、巨大な蟻やワーム、蝗や蟷螂も確認されているらしい。

「しかし暗いな、テツが光源持ちで良かったぜ」

「まあ、工夫の護衛に最適な道具だしな、こういう時こそ輝く」

 ギルドにより、ある程度補強されたポータル部屋の先は真っ暗で、各々が持ち込んだ明かりを頼りに先に進んでいた。


「マサ隊長、どう動きますか?」

「そうだな、幸いここは俺達五人が全員持ち味を活かせる立地だ、無理に進むより、どこかで定点狩りが望ましい」

 マサの尤もらしい意見に反対も無いので、取り敢えず先に進む。

 次の部屋に進んだ時点で、分岐が三ヶ所。どうするか。

「蟲共の本格的な反抗が始まれば、間違いなくここが激戦区の一つになるな」

「そうだな、ここを押さえておけば、こちらは巣全体への攻勢を掛けれるな」

 でも、現段階では、偵察をキッチリ処理しているからなのか、敵との遭遇率も低く、現段階で此処の防御を固める意味は、少なくともプレイヤーには意味が無いな。

「なら進みましょう、流石に先を見越し過ぎて、何もしないのは暇すぎるわ」

 アコの意見を採用し、一番人の少ない下に行ってみる事に。

 相変わらず羊の挙動はおかしいままで、常に何かから逃げる様に動いている。

 地上に居た時は、単に地下からダンジョンの気配が漂い、それを避けてたのかと思ったが、現在見せている挙動は、既にダンジョン内にも関わらず、羊が明確に避ける箇所が幾つかあり、不信感が募る。

「ユキ、ちょっとあの辺に<クラスティオーブ>を撃ってくれないか?」

「え?良いけど…<クラスティオーブ>!」

 俺達が通って来た穴の横で、羊がVターンをかましたので、どうにも怪しい場所を、ユキに攻撃して貰った。

「ギギギ!、カチカチカチ!」

 すると、存在をまるで感知出来なかった、巨大な蟻が姿を現し、こちらに襲い掛かって来る。

「うわっ!?こんな所に?しかも他にも沢山!?」

 俺達も吃驚しているが、ユキが突如何もない空間を爆撃した事で、びっくりしていた他の連中も、部屋に姿を消して潜んでいたであろう蟻が一斉に襲って来たことで、更に驚いている。

 幸い羊の挙動で、ある程度敵の位置を予測していたので、俺達の動揺は少なく、他の連中も奇襲を免れた事で、直ぐに迎撃態勢を採り、難を逃れた。

 ただ事態がこれで済むわけなく、俺達は直ぐに引き返し始める。

 他の連中も、察した様で、急いで最初の部屋に引き返す。

 どうにか最初の部屋に辿り着き、周りの訝しむ視線に晒されながら、俺達の後に引き返して来た連中を迎えたところで。

「助けてくれーっ!」

 そこらじゅうで悲鳴が木霊する。

 必死に逃げ戻って来る者や、状況が理解できずに困惑する者をよそに、俺達や奇襲を免れた連中は、冷静に入り口に陣取り、敗走者を受け入れる。

 程なく、逃げ遅れた者や、奇襲を受けた者が力尽きたのか、夥しい巨大な蟲が、ポータル部屋を目指し向かってくる。

「道理で敵が居なかったわけだ、こちらの侵入に気づいてないどころか、知ってて引き込んだ上に、罠に嵌めようとは」

 奥に進み過ぎた連中は、伏兵に退路を断たれ、袋叩きに在ったのだろう。

「それにしても、光源を翳しても、陰すら出来ずに透けるとかどう見破れと?」

 此方の部屋に、侵入しようとする蟻を迎撃しながら、アコが愚痴る。

「実際誰も気づかなかったって事は。全ての感知系スキルや効果を防いだわけだしな」

「ですね、これからはカラーボールみたいな、目印を付ける物を、怪しい所に投げてみるしかありませんね」


 暫くして、逃げて来た者や、混乱していた者も立ち直り、攻防に参加した。

 十数分後には、なんとかポータル部屋を守り切り、攻守が入れ替わった。

「…という感じで、味方への誤射には十分気を付けて行うように、以上」

 ギルドの職員が情報を纏め、広範囲攻撃を使って隠密を探すという、只の力押しが推奨される事態となった。

 ギルド並びに政府は、この巨大な巣を、出来る限り綺麗な状態で占領し、自分たちの技術で補強して、地下基地に改修したい様だ。

 その為、地下ダンジョンの攻略が、ギルドの依頼として記載され、かなり魅力的な報酬が提示された事で、先程より更に人が増えた。

 更に、攻略の為にギルドから派遣された、占拠した部屋を改修する作業員や、火力や防御の補強の為に、豆戦車が十両ほど降りて来た。

 ただ戦車と言っても、俺の知ってる戦車と違い、その装甲は、有機的な素材…何かの皮?で出来ていて、随所に木材や骨も組み込まれている、不思議な見た目をしていた。

 だが性能は折り紙付きらしく、堅牢強靭で軽量な素材を使った事で、重量が非常に軽く、砲塔を魔導兵器にする事で、弾薬の重量をカット。

 なんと搭乗員込みで、その重量は2t弱だそうだ。

 なんか、某ゲームの、ジャンプしたり、しゃがんだりする戦車を思い出す。

「どうする?」

「まあ、参加するで良いんじゃないか?」

「そうね、これだけの戦力なら、乱戦も楽しそうだし」

 俺もユキも参加を表明し、反対が出ない事から、マサも参加で決めた。


 現在最初の分岐部屋を占拠し、攻略勢が3方向に進むのを見ている。

「今度は下が一番人気で、上が不人気か。上に行こう」

 ワイヤー銃を使い、上の部屋に移動する。

 さっきの騒動で、隠密蟻[カメレオンアント]は引っ込んだ様で、今の所いない。

 念の為に、歩ける部分を隈なく歩くが、羊が通常の挙動を取っているので、大丈夫だろう。

 部屋を見回すと、この部屋への侵入口とは別に、一つ穴があった。

 穴の位置は、そのまま歩けば通れる場所に在るので、次の部屋に向かう。

 今度の部屋には、分岐が四つもあり、既に人が疎らになっていた。

 取り敢えずそのまま真っ直ぐ進み、次の部屋に移り、確信する。

「どうやら今いる部屋の座標が、巣全体で一番高い座標の様だな」

「上に来て、3部屋上への分岐が無ければそう考えるよな、実際は地上の巣の真下がどうか分からんから、何とも言えんが」

「そういえばそうか、でもスキャナーとアナライザーで、巣が地下100m程というデータが有るんだから、概ね正解で良いんじゃね?」

 取り敢えず、マサの推測を確かめる為に、高さをそのままに真っ直ぐ進んでみる。

 二部屋程進んでみて、上への分岐が無いので、マサの説を取り敢えず仮定しておく。

 一旦四ヶ所分岐の部屋に戻り、今度は最初に部屋に来た時の穴を基準に、左に行く。

 五人で、巣をマッピングしつつ、退路の確保を優先。

 なんとなく、未知の場所を探索する場合、端から行った方が、安全な気がする。

 そんな考えの元、端へ端へと動いているのだ。

 一応、同じような考えの、先行組が居るのか、先々で戦闘音は聞こえるが、俺達が敵と遭遇する事は無く、今の所、ただ歩いているだけだ。

 それに巣の上部ともなると、重要な部屋も無いためか、行き止まりが多く、引き返してくる人とすれ違う事が増えて来た。

「既に要所の防御を固めた後なのか、上部には敵が居ない様だな」

 途中から探索方法を変え、分岐のある部屋で、下以外の分岐には、俺とアコの二人で突っ込んで、分岐を調べ終わったら、次の部屋に皆で移り分岐を調べる。

 これを繰り返し、ある程度の部屋を調べたところで、荷物がいっぱいなり、一度地上に戻った。


「思ったより、良い収入になったわ」

「キノコやカビがいっぱいだったもんな」

 実は、巣の中、採取出来る物が思いの外多く、敵が居ない所を探索していたのは、こういった素材が取れるからという理由もあった。

 素材の売却で得た金で、換金率の良い消耗品を買い込み、再びダンジョンに潜る。

 ポータル部屋に着くと、先程より慌ただしい雰囲気に包まれていた。

 どうやら先行組が、敵側の第一防衛ラインに辿り着き、戦闘を開始した様だ。

 いつの間にやら設置された依頼板(クエストボード)を見ると、前線に物資を運ぶ、お使いクエストが載っていたので、皆で受ける。

 そして、人の流れに乗って前線に辿り着くと、物資を入れる箱がこれ見よがしに設置してあるので、物資を入れ、依頼完了。

 そのまま最前線を観察しに行く。

「成程、この部屋とあっちの部屋が要だな」

「じゃあひとつ前の部屋で待機するか」

 最前線を観察し、その内大群が押し寄せてきそうな部屋に向かい、待機。

 時折抜けて来る巨大な蟻やワーム、何故か地下なのに居る巨大な蜂を迎撃しつつ、周囲の状況に目を光らせていると。

「ダメだ、戦線を崩された!」「もう持たない!」「助けてくれー!」

 要の片方が崩壊し、人が雪崩込んでくる。

「さて、ここが占拠されると、もう片方も挟撃されるから、出来る限り粘ろう」

 俺達も何時でも退けるように、退路を確保しつつ、戦闘に入る。

「皆、無理に攻撃しないで良いぞ、ランタンの範囲内に入った奴を集中砲火で頼む」

 陣取りゲームの様相を呈してきたこの戦い。攻め込んでいるこちら側は、どうしても援軍の移動距離の関係で、圧倒的に不利だ。

 一度やられたプレイヤーは、基本的には、ホームでリスポーンするので、移動速度が初期値だと、どんだけ早くても、二十分は掛かる。

 そう考えれば、どれだけ重傷を負おうと、死に戻りだけは避けたいのは明白だ。

 だから、こんな状況でも自分本位な奴は居て、盛大にやらかしてくれる。

「ちょ、テツ君後ろ!」

「な!?、おいマサ!退路から敵が!」

「何!?クソッ、どうやら他の部屋で戦ってる連中に嵌められたな」

「通路先付近に複数のプレイヤーが居るわ」

 どうも、自分たちが逃げ切る為に、態々俺らの背後まで近づき、大群を擦り付けて来た連中が居るみたいだ。

「良し、ちょっくら行って来る、持ち堪えてくれ」

「応、しっかり現場を押さえてくれ」

 さて、ギリギリ間に合うかどうかだが…。


 擦り付けをかまして来た連中を、動画に収める為に、敵が犇めく通路を必死に征く。

「ああ邪魔だ!」

 噛まれて刺されて、全身ボロボロになりながら、タブレットポーションを、ガリガリポリポリと噛み砕いてLPを回復させ、どうにか使い魔を間に噛ませて追っ手を振り切り。

「見つけたっ!」

 俺達に大群を擦り付け、逃亡を図る一団を補足した。

「っ!?」

「ああ、逃げて良いぞ、どうなっても知らんけどな、じゃあな」

 動揺で、困惑する連中に、警告だけ発し、マサ達の元へ戻る。

「ただいま!」

「おかえり。どうだ?」

「アコのレーダーの動画と、俺の動画をセットにすれば、確実に擦り付けを証明できる。連中には警告だけ発して、引き返して来た」

「そうか、で、アコ、どうだ?」

「ダメね、全員そのまま逃げたわ、きっと証拠不十分で、言い逃れ出来ると踏んだんでしょうね、テツ君が駆け付けた時点で、動向がバレてるのに気づかないお馬鹿さん達なんでしょう」

 まあ、アコの言葉がすべてを物語っているな。

「さて、いよいよキツイな、いっそのこと前の連中に合流するか?」

 大群を斧で、押し返しながら、マサが提案。

「そうしましょう、僕の回復も、人が増える程効率的ですし」

 ベルの回復は、比較的取り回しが良く、何とか間に合わせていたが、ここにきて被弾が増え、やや回復が遅れ気味になっていたので、回復の効率化の為にも、他の集団に合流する事にした。

「急いだほうが良いわ、アッチも既に余裕が無さそうよ」

「分かった急ごう、テツ、露払いと先触れを頼む」

「了解」

 マサの頼みで、高耐久高機動を活かし、敵陣を割り使い魔をねじ込ませ、味方の通り道を確保し、先に居る集団に共闘を申し入れに行く。

 後方で弾かれた羊を、蜂が世紀末バスケをしながら、エアリアルを決めているのを見て、妙な感動がこみあげて来るが、今はそれどころではない、急がなければ。

「助太刀しに来た、これより戦闘を開始する」

 漸く、敵に囲まれている集団を見つけ、共闘に移る。

 別に俺達には此処までする義務も無いのに、此方から共闘を申し入れるのは、なんか違うなと思い、あくまで助けに来た風で通す事にした。

 逃げる事は出来たが、この後擦り付け連中を、地獄に落とす為にもこういったアリバイ工作が有れば、なお良いと考えたのも有るがな。

「援軍か!?助かる!共にこの難局を乗り越えよう!」

「直に仲間が来るが、俺も含めてたったの四人だ、しかも…」

 集団に、擦り付けの事などを説明し、外堀を埋めつつ、全員で退却する事を提言。

「分かった。このまま粘っても意味が無い事が分かっただけでも良しとしよう、しかも少数でも助っ人が来てくれただけでも有難い」

 嬉しい事に、NPCやギルドの職員も混ざっていた事で、俺達の評価は上昇、逃げた連中は急降下した。最早恐れるものは無い。

 マサ達も合流し、先ずは立て直しから図る。

「では回復していきます。<ライトヒール>」

 最近増々磨きのかかって来た、ベルの<ライトヒール>。因子[神官]専用の魔法だけあり、因子の重複で、効果や範囲が、初期状態の数倍にも増し、ライトと付く通り、リチャージラグは無く、クールタイムも短めだと言う。

 そんな感じで、ベルの支援で、短時間で耐性を立て直した一行は、生還の為、過酷な退却戦に移行していった。


「はあ…数が多い!」

 周囲を、蟲の軍勢に囲まれ、思うように退却が出来ない。

 なんせ、ここは敵の本拠地。敵の増援は短時間で戦線に加わるが、こちら側の追加の戦力は、アウェー故に遅延が酷く、当てには出来ないだろう。

「メェ~~!」

 幸い、妙な中毒性でもあるのか、蜂が羊を空中でしゃぶる事を覚え、積極的に羊をドリブルし、空中バスケに勤しんでいる。

 羊の尊い犠牲により、制空権はとられているが、空爆の危険性は減っている。

 ともなれば、周囲の囲いさえ突破できればいいのだが、これが難しい。

 全員が、俺みたいに、高耐久で、移動速度が高ければ、強引に突破する事は可能だろうが、火力職で、耐久が低い人も多いので、どうしても、立ちはだかる蟲を倒してからでないと、進む事が出来ない。

「クソ…相手が巨大な分、思うようにノックバックが効かん!」

 本来こういう時にこそ、真価を発揮するマサも、敵が巨大すぎる為、思うように押し返せず、苦戦を強いられる。

 それでも、攻撃範囲の広さと、ノックバックこそ想定を下回っているが、ヒットストップは機能しているので、ごく短時間とはいえ、敵集団を足止めできるのは流石としか言いようがない。

 敵の圧倒的物量の前に全員が奮闘し、なんとか持ち堪えてはいるが、遅々として進まぬ退却に、消耗する物資や装備の事を考えれば、何かきっかけが無ければ、このまま押し切られるのも時間の問題だ。

 皆薄々結果が見えたのか、やる気が下がっている。だが。

「こっちに向かう勢力を確認、援軍よ!」

 アコが援軍の存在を感知し、皆に伝える。

「「「うおおおおお‼」」」

 この朗報に皆の指揮はV字回復を果たし、援軍まで粘る。

 そして。

「助けに来た!今度はこちらが助ける番だ」

 援軍は、先に崩壊した、要所のメンツの様で、俺達や、もう一方の要所を担当していたメンツが、帰っていない事に気づいて、急いできてくれたようだ。

 当然の様に、擦り付けをかました連中は、援軍の中には居なかった。

 この援軍のお陰で、全員無事に帰還できた。


「それにしても、清々しい程屑だったな」

 全員で脱出した後、ちょっとした反省会みたいなものを開催したんだが。

 なんと、先に崩壊した一団も、擦り付けを受けていた事が判明。

 彼らは、探知で擦り付けをされた事は分かったが、誰が仕掛けてきたかまでは、分かっていなかった。

 そこで、俺達が抑えた証拠と照らし合わせた結果、一連の擦り付けは同一犯の犯行であると判明し、すぐさま運営に報告した。

 運営曰く、レーダーの動画だけだと証拠能力が無く、言い逃れされてしまうが、俺の姿をハッキリと映した動画が決め手となり、連中を厳罰に処すことが出来たと言う。

 どうもこれまでも、同じ手法で、擦り付けと獲物の横取りで暗躍していたようで、奴らの誤算は、敵の大群を抜けて追いかけた俺の存在だったようだ。

 連中のペナルティは、全てのアイテムの没収。闘技場での一千万円分の奉仕となった。

 没収した物資の売却額が、今回の被害者に分配され、一人当たり7万円受け取った。

 どれだけ汚い手段で、財を貯め込んだんだ!と憤ったが、これまでの被害者の仇も討て、臨時収入を得る事が出来ホクホク気分で、ログアウトした。


 夜。ログインし、荷物の整理を行い、教会に向かいLvを92に上げた。

「さっきの巣穴攻略で思ったが、ああいうお真面目なイベントは、性に合わない」

「俺もだ、折角こんだけぶっ飛んだゲームなんだから、もっと緩いのが良いな」

 マサと駄弁りながら、ガチガチの集団行動は、疲れるという話で盛り上がる。

「最近は、匍匐でカサカサと超高速移動をする、通称[G部隊]なるクランの話題を聞くが、そういう自分たちだけの楽しみ方は良いよな」

「ああ、あの連中か…」

 マサの言う[G部隊]、俺も一度見かけた事が有るが、そのインパクトは絶大だった。

 全身黒タイツで、背中に大盾を背負い、ナイフを2本持って、超高速で匍匐移動する様は、付いてもいない触覚や翅を幻視してしまう程、印象に残る連中だった。

「しかも匍匐したまま超高度ジャンプまでしやがるからな、何処までらしくする気なんだと」

「腹這いの状態で、人間が跳躍する様を見れるのは、このゲームだけかもしれない」

「だな、そういえば[バグスター]のホームがまた制圧されたらしいな」

「またか、これで三度目か?中々入植が上手くいかないな」

 マサの話によると、Ver1.3で実装された惑星の開拓は、遅々として進んでない模様。

「星間移動をこなすまで進化した蟲が蔓延る惑星だもんな、そりゃ苦戦もするわ」

「[バグスター]の蟲は更に巨大で強いらしいからな、楽しそうだけど…」

「まあ、俺達は俺達のペースでいいだろ、今はのんびり遊べればいいや」

「そうだな、じゃあ稼ぎに行くか」

 マサとPAを出て、ギルドに向かう。


「お、これが良いんじゃないか?」

「砂漠の蟲を只管討伐する、か。良いんじゃないか?地上でもOKだし」

「決まりだな、早速向かおうぜ」

 現地に到着し、巣を見上げる。

「地下で大乱闘してるのか、地上は数が少ないな」

「まあ、これがダミーってのが、俺らにバレた時点で、半分破棄されたようなもんだろう。今なら近くで観察できるし、二人で狩るなら丁度いい感じだ」

 他にもチラホラ居るプレイヤーや、NPCの合間に入り、巣を突く。

 湧いてくる蟲を、モグラたたきしながら、更に近づく。

「お、マサ見ろよ、あそこから侵入できそうだぜ?」

 テツが指さした先は、緩やかなスロープ状になっており、人でも歩いて登れそうだ。

「なら入ってみようぜ、何か素材でもあるかもしれないしな」

「そう来なくっちゃ!」

 こうしてマサと二人で、巨大なハチの巣に侵入した。

「どうだテツ?」

「蜜蝋、花粉団子、蜂蜜、ローヤルゼリー、割とお宝だらけだ」

「マジか!?雀蜂の巣の見た目なのに、蜂蜜が取れるのか」

「そういう野暮なツッコミは無しで」

 他にも、抜け殻や繭の残骸等、そのままでは使えないが、加工すれば価値の出る素材を次々に採取してい行く

「しかしやってる事は完全に火事場泥棒だな」

「良いじゃん、空き巣サイコー」

 時折遭遇する、蟻や蜂の見回りを倒し、素材を回収しまくる。

 一度では回り切れないので、3往復した頃には、全回収出来たので、帰還した。

 ギルドで報酬を受け取り、PAに戻り、解散した。


 十日後、俺は四回目の転生を行った。

「うーん…迷う!」

 俺は目の前の選択肢に、唸っていた。

「どれも魅力的だ…ク~!」

 前回の転生で、[羊飼い]を取得し、大体元のビルドを復刻出来たので、これからは初見の因子を取得していくのだが…。

「[吸血鬼][養豚家][養蜂家][酪農家]どれも捨てがたい」

 え?なんか偏りが酷いって?気にすんな。

「良し、[養豚家]を取ろう、直感がコレを取れと囁いている」

 [養豚家]を取得し、パラメータもそのままで、転生完了。

 金を用意し、Lvも60まで上げる。金はまだ有るが、一応温存しておく。

「取り敢えず、<生存本能>と<速度上昇>をLv50に、それ以外を転生前と同じにして。<養豚>を取り敢えずLv20で取ってるか」

 <養豚>は、[養豚家]の専用スキルで、豚の使い魔を4体使役出来るスキルだ。

「多分こいつも、非戦闘員だろうけど、一応確認しておくか」

 フィールドに出て、森に突撃する。

「やっぱ、逃げるばっかか、まあ予想通りだし、こいつも羊と同じで、何かしらの特徴を持ってるだろうし、気長に調べるか」

 豚の確認を済ませ、会社に戻る。


 さてこの十日間、ゲーム内で起こった事が二つある。

 先ずダンジョンだが、依然拡張を続けているが、人類側も幾つかの部屋を制圧し改修する事で、乗っ取る事に成功した。

 これにより、ダンジョン内に、ダンジョン攻略の前線基地が出来上がった。

 次に、[フォレスト]の勢力が、いつの間にかジャングルに根付いていて、ジャングル全体が巨大なダンジョンに変貌を遂げた。

 内部に侵入すると、四方八方から胞子や棘、蔦や溶解液が飛んでくる魔境だ。

 中心に聳える巨大なバラが原因の様だが、未だ詳細は不明。

 以上が、この十日間の出来事だ。


 PAで装備や道具を揃え、ジャングルへ向かう。

 ダンジョン化したジャングルは、危険度最高クラスの魔境だが、採れる素材も一級品で、敵性植物の猛攻に耐えれるのなら、良い稼ぎ場になる。

「はは、相変わらず凄い歓迎だ」

 もうね、敵の射程内入った途端、凄い勢いで攻撃が飛んでくる。

 この入り口に辿り着くのが既に困難だが、俺には使い魔と言う弾除けが居るから、強引に侵入する事が可能だ。

 しかし、今回は少し様子が異なった。

「プギィー!」

「ん?」

 何故か後方に居る豚が、悲鳴を上げる。

「流れ弾でも当たったか」

 そう思い、特に気にもしなかったが。

「おかしい、いつもより使い魔の消耗が少ない?」

 先程から、豚だけが異常に被弾して、前に出てる使い魔は、消耗している様子が無い。

 不思議に思い、敵の射程ギリギリで様子を見ると。

「プギィ‼」

 全使い魔が、俺の傍に侍っている状態で、一番前に居た大蛇に棘が刺さるかという場面で、何故か豚がダメージを受けた。

「もしかして身代わり能力か?」

 暫く検証を重ね、因子やスキルの効果を見て、仮説が立った。

「もしかして、被ダメージ判定が広いのか?」

 豚が一番前に来るように調整し、豚が被弾する様を観察した。

 すると、豚の半径2m程の距離で、棘が止まり、豚にダメージが入ったのだ。

 これで大体分かったので、更に、<養豚>をLv30に上げてみたら。

「やっぱり、ヒットボックスが拡大してるな」

 どうやら、<養豚>のスキルを上げると、Lvに応じて、豚の能力とは別に、当たり判定が大きくなる様だ。

「こうなると、もう一つのスキル<過剰肥育>も気になるな」

 <過剰肥育>は[養豚家]のもう一つのスキルで、Lv毎に豚が大きくなるというものだ。

「これもLv取ってみるか」

 <過剰肥育>をLv20にしてみると。豚がかなり巨大化した。

「凄いな、二回りはデカくなったんじゃないか?」

 検証を続け分かった事は。

 ・<養豚>では当たり判定のみ拡大

 ・<過剰肥育>では見たサイズが拡大

 ・<過剰肥育>でも、当たり判定が拡大

 ・<過剰肥育>で増大した見た目は、接触判定にも影響し、触る事が出来る。

 以上のことから、当たり判定は、豚の被弾面積が増大するもので、接触判定は無い。

 逆に、サイズが増大すると、見た目通りの接触判定になる。

 なので、弾除けに使いたいなら、<養豚>だけでも良いし、敵を塞き止める壁にしたいなら、<過剰肥育>で、サイズを大きくしてやれば、バリケードに使えない事も無い。

 まあ基本敵から逃げるので、バリケードにはならないし、弾除けに使うなら、<養豚>は勿論サイズと当たり判定両方を増大させる、<過剰肥育>も取る必要があるだろう。

 ちなみに、<養豚>Lv30<過剰肥育>Lv20で、半径5m位の当たり判定を持つようになった。


 改めて、ダンジョンで採取を試みる。

「うん、一度侵入してしまえば、豚が最高の壁になるな」

 非常に狭い空間で、逃げ場のない豚が、俺や他の使い魔に降り注ぐ攻撃を悉く受け、その高い耐久力でもって耐え凌ぐので、採取が凄く快適だ。

 ただ一応注意しないといけないのは、範囲攻撃と、貫通攻撃だ。

 範囲攻撃は、ユキが良く使う<アイススピア>や<ブラストウインド>等の、障害物の影響を受ける攻撃は、豚の判定で防げるが。

 マサの通常攻撃の様な、攻撃判定が、広範囲化している様なものは、豚も含め、範囲内の全てがダメージを受けてしまうので、相手の攻撃を見極める必要がある。

 貫通攻撃も同様に、敵や壁を貫通する攻撃は、一度豚の判定に当たったとしても、射線が通って居れば、ダメージを受けるので、注意が必要だ。

 絶え間なく続く豚の悲鳴をBGMに、採取を続ける。

「まあこんなもんかな」

 流石に一人で進むのは無謀なので、ここらでお暇する事にした。


「いや~[養豚家]は中々面白い因子だったよ」

「相変わらず変な因子ばかり増えてるな」

 PAでマサと談笑しながら、情報交換を行う。

「どうも惑星開拓が行き詰ってるっぽくて、近々大規模作戦が行われるらしい」

「へ~ならその機会に、追加惑星デビューするのも良いかもな」

 未だに[バグスター]と[フォレスト]に行った事が無い我が社一同。

 ここ等で、新鮮な空気を味わうのも一興かもしれない。

 そんな会話をしてから十日後。[バグスター]への大規模効果作戦が実施された。


「じゃ留守番宜しく」

「いってらっしゃい。お土産期待するです」

「商売は任せて下さい。たんと儲けておきます」

「ヒヒ…殺虫剤は持ったな?」

「皆さん無理はなさらない様に」

 職人たちに留守を任せ、八人でギルドへ向かう。

「凄い行列ね」

 ユキの言う通りギルド前は、長い行列を作る人で溢れ返っていた。

「仕方ないわね、ギルドの地下に在るテレポーターでドロップシップに移るんだもの」

 アコの言うドロップシップとは、バグスター衛星軌道上に待機している降下艇の事で、作戦従事者は、そこから飛び降りて[バグスター]に降り立つのだ。

「順番が来たみたいだな行くぞ」

 転移はスムーズに行われている様で、数分で順番が回って来た。

「八人一組ですね、ではテレポーターの上にお進みください」

 職員に促され、テレポーターに乗る。

「ようこそドロップシップへ、ここは地獄の一丁目だ」

 いかにも叩き上げな感じの艦長に出迎えられる。

「愚図愚図するなよ、既に待機してる者が居るからな、さっさとあっちに行け」

 艦長の指さす先には、俺達の前に並んでいた人が何人か居た。

「良し、50人を超えたな、では手短に説明する。お前達は今から大気圏を突破し、上陸先の安全を確保するのが仕事だ。なお降下中は非常に危険であり、上陸先もばらける可能性も大きいから、先ずは仲間との合流を目指す様に、以上」

 いうや否や、足元が光ったと思ったら。

「うわ!?なんじゃこりゃ!?」

 問答無用で大気圏内に放り出された。

「はっはー!中々洒落た突入だな!」

 上機嫌ではしゃぐマサ。

「…私高所恐怖症なのに…」

 直ぐ隣にいたユキがボソッと呟く。ご愁傷様です。

「ほら、俺の背中にでもしがみ付いとけ」

「何?テツ君こんな時にセクハラ?」

 さいですか。

「冗談よ。じゃあ失礼して」

 ユキが後ろにピッタリと付き背負う形になる。

 周りを見渡すと、既に皆散り散りなっていて、一番近そうなのがベッタラだ。

「ベッタラ!こっちに寄れそうか?」

「何とか…ッダメだ!対空が始まった」

 地上からバラエティーに富んだ攻撃が飛んできて、一層仲間との距離が離れる。

「パッと見孤立してるのはベッタラとサーモンか」

「サーモン君は召喚士だから少しは凌げそうだけど」

「ああ、やっぱり近いしベッタラと合流しよう」

 そうこうしてるうちに、地面が見え直後に着地した。


「流石ドロップシステム。着地が無反動で済むとか」

「一切衝撃を感じなかったわね」

 背中から離れる柔らかい感触に、名残惜しさを感じながら周囲を観察。

「あっちが陥落したホームか。だが先にベッタラと合流しなきゃな」

 俺はカンパニーのメンバー表から、ベッタラを選択し。

「ベッタラ、無事か?」

『無事とは言えない!激しい攻撃を受けている!』

 非常にまずい状況の様で、直ぐに通信が途絶えてしまった。

「ベッタラが危険だ、急ごう」

「ええ」

 ユキと一緒に、ベッタラの要る方向に向かう。

「不味いな…ここにきてビルドの火力不足が浮き彫りになって来たな」

 最近ヒシヒシと感じるようになった、ジェネレータービルドの火力不足。

 今までは、周囲に対して、転生1~2回分のLvアドバンテージがあり、推奨Lvを大きく上回った状態での攻略だったから、どうにかなっていたが、現状明らかに火力が足りていない。

「ユキが居なかったら相当不味かったな…」

 異常な生命力と防御力を誇る、巨大な蟲を蹴散らすユキ。

 だがユキも同様に、テツと一緒で良かったと安堵していた。

「それは私も同じよ、こんなの相手じゃ前衛が一人二人居たって同じよ。これだけの枚数があってこそ私も攻撃に参加できるんだから」

 地上から空からと、次々に突撃してくる蟲共。

 幾らユキの魔法が火力と範囲を兼ね備えていようと、隙は生じるし、ユキ自身は決して打たれ強い方ではないので、テツの使い魔様様であった。

「流石に攻略最前線は、役割分担が必須というわけだな」

 テツは、これまでの数のゴリ押しで、どうにかなっていたのを忘れる事にした。

「テツ君、ポーションの在庫は?」

「十分有るが…ベルとの合流も急がないとな」

 二人で虫除けを飲み、歩みを速める。

「ベッタラ!どうにか間に合ったか!」

 力尽きる寸前だったベッタラにポーションを投げ当て、どうにか合流した。

「二人とも助かった。もうダメかと思ったよ」

 ベッタラの態勢を立て直し、仲間と連絡を取る。

「こちらテツ、ベッタラと合流。孤立してる者は?」

『こちらベルです。僕はサチさんと一緒に居ます』

『こちらマサ、アコと一緒に居る』

『こちらサーモン、孤立中だ。そう長くは持たない』

 直後、サーモンとの通信が途絶え、急ぎ救援に向かう事に。

「全員大体同じ距離だな。ではサーモンの救出と合流を急ごう」

 どのグループが、一番近いかと整理したが、大体同じだったので、全員集合も兼ねて、皆でサーモンの場所まで急ぐ。

 道中激しい攻撃に晒されながら、急いでいると。

『こちらマサ、サーモンの救出に成功。合流を急いでくれ』

 マサ達がサーモンと合流した様だが、ここで問題が発生。

『こちらベル、非常に厳しい状況です。可能ならば救援を…』

 これを聞き、今度はベルとサチの元へ向かう事に。

 合流するに当たって、大量の敵を引き連れる訳にもいかず、間引きながらの進行なので、歩みは非常に遅く、焦燥感が募る。

『こちらマサ、何とかベルたちと合流したが、救出を優先した為、敵の数が多いままだ。テツ、なるべく早く合流してくれ』

 あの五人が揃っても、なお厳しいとなると、急がないとヤバいな。

 方針を変え、マッドの用意してくれた殺虫剤をじゃぶじゃぶと使い、包囲網を強引に突破していく。

 そうしてどうにか、マサ達に合流できた時には、壊滅寸前だった。

「はは…遅いぞテツ…」

「フ、ヒーローはなんちゃらかんちゃらだ」

「ヒーローって柄かよ、まあ助かったぜ」

 全員に注射器ポーションを大盤振る舞いし、即座に立て直しを計った。

「さて、ホーム跡地を目指そう」

 こうして[バグスター]降下作戦で、何とか合流を果たし、次の段階へ移行した。


「流石に八人居て、使い魔が60を超えてれば、安定するな」

「漸く狙う事が出来るわ」

 漸くしっかり狙える状況に安堵しつつ、飛行戦力を確実に削るアコ。

「しかし足元はゴツゴツしてるわ岩は高さがあるわで大変だ」

 [バグスター]は、陸地の大半が森と荒野の惑星だった。

 現在俺達が居るのは、ホーム跡地の南西で、起伏に富んだ荒野となっている。

「確かに移動は大変だけど、さっきの森よりは、まだ良いわよ」

 ユキが言うように、荒野の方が、起伏を利用して敵の攻撃方向を限定でき、空への射線も通り易いからダメージも取れる。

 [アース]に居着いた蟲共と比較にならん程、巨大な蟲がうようよしている。

 今回の依頼、報酬は生存時間、敵の討伐数、ホーム修復の貢献度で決まる。

 それらに重きを置き、かなり高額設定故に、従事している間の採取や素材の回収は一切禁止されているという徹底っぷり。

 そんな暇や余裕が有るなら、さっさと跡地に集結しろって事だな。

 なので、いつもは余裕を持ってコストに空きを作っておくところを、目一杯消耗品を持ち歩く事で、生存率を高めている。

「ベル、どうだ?」

「<ライトヒール>と<ハイヒール>は何時でも行けます、<ヒール>と<キュア>はそれぞれ五分と二分のクールタイム中です」

 <ハイヒール>は取り回しは悪いが、範囲と回復量に秀でた回復魔法。<ヒール>はライトとハイの中間。<キュア>は軽度な状態異常を直せる魔法だ。

 ヒーラーはパーティーの生命線だ。ベルの魔法の状況は常に把握せねば。

 5mを超えそうな蟷螂を相手にしつつ、何かの幼虫の突進を受け止める。

 4000近いLPが、HPとARM越しに10%程削られる。

 そこへユキの<クラスティオーブ>が炸裂し、巨大幼虫を鎮める。

「大丈夫かテツ?」

「なんとかな…俺とベル以外は直撃したらヤバいかもな」

 コスパ最強な、軟膏タイプのポーションを使い、傷を癒す。

「こっちも片付いたわ」

 アコが蟷螂に止めを刺し、再び進み始める。


「これは…」

 何度も激しい攻撃に晒されながら、マーカーに従い辿り着いた先で俺達が見た物は、夥しい数の蟲に群がられ、今にも崩壊しそうなホーム跡地とそれを奪還しようとする側の、激しい攻防だった。

「こういう時は、火力を集中するべきか、独自に動くべきか」

「分からんが、今から味方の本体に合流するよりは、正面の蟲を叩いた方が時間のロスは少ないだろうし、敵の火力を分散する意味でも、独自に動いた方が良いと俺は思う」

 マサの意見に反対は出ず、直ぐ行動を開始した。

 最前線に俺、その後ろにベッタラとマサ、ついでユキとベルとアコ、最後にサーモンの、1・2・3・1の陣形で、蟲共に近寄る。

 直後、巨大な顎をカシャカシャと動かし、迫って来る巨大な蟻。

 それに呼応するかのように、次々とこちらに向かって来る蟲の大群。

「うはっ、盛大な歓迎だな」

 全員で虫除けを飲み、地面の窪みを利用し迎撃する。

 窪みという空間のお陰で、敵の射線は限定され、逃げ場のない豚が、その詐欺判定でもって蟲の攻撃を受けてくれるから、意外とまともな戦いになっている。

「出荷よ~」

 [獣人⁵]の<生存本能>Lv50で、スタミナは即座に回復するので、ひたすら豚の出荷とその他の使い魔の復活を眺める。

 勿論ランタンの二刀流で敵の弱体化を図りながら、消耗品による味方の支援も欠かしてないので、ちゃんと仕事はしている。

「これ豚が居なかったら、一瞬で全滅していたわね」

 ユキの言う通り、豚が居なかったらヤバかった。

 なんせ、先程から豚が蟻に銜えられては運び出され、その先でリンチされて、俺の傍でリスポーンするのを繰り返している。

「本当は俺らを咥えたいんだろうけどな、何故か豚がヒットして、蟲共も困惑してるだろうな」

 人型を狙ったら、豚を銜えてたでござる。こんな感じか。

「豚マジチート」

 かつてこれほど豚が活躍したゲームが在っただろうか。

 こうして、諸々の条件が揃った事で、パターンにハマり、戦いは長期戦へ。


「外の様子はどうなってる?」

「本隊がホーム跡地へ大分接近してるわ」

 索敵が得意なアコに、周囲の状況を視て貰う。

「敵の数も減ってきたな、頃合いを見て本隊に合流したいが…」

 何しろここは敵の本拠地だ。敵の流れが一旦止まったといっても。どうせ直ぐに大群が押し寄せるに決まってる。

 チャンスを窺いつつ、周囲を観察すると。チラホラと作戦従事者が集まり出し、一時的とはいえ蟲の大群を押し返した。

「良し、今の内に本隊に合流しよう」

 こうして無事本隊に合流し、ホーム跡地に足を踏み入れた。

「見事に破壊されるくしてるな」

 内部で生き残ってた人員と本隊の隊長が、何やら話し始めた。

 暫く待機していると、工兵の様なギルドの職員が到着し、作業を始めた。

 その間、参加者は周囲の警戒を命じられた。

 そして瞬く間に職員が、跡地の中央にアップリンクを設置した。

「これで、物資や人手を直接此処へ運び入れれるし、戻る事も出来る。補給や用がある者は戻り、平気な者は引き続き警戒を頼む」

 そう言うと、隊長は即席の本陣へと入っていった。

「何とか、ホームの確保に成功した様だな」

「機能不全もいいところだけどな」

「まあ、アップリンクが設置されたんだから、テレポーターも使えるし、直ぐに拠点らしく改修されるだろうよ」

 それでも、一度は陥落してるから、整ったから安心でもないが。

「さて、補給もしなきゃだし一旦戻ろうか」

「賛成」

 こうして、[バグスター]降下作戦の緒戦をを勝利で終える事が出来た。

 ギルドで報酬を受け取り、PAに戻りログアウトした。

 明日は休みだが、結構良い時間までやってたので、眠い。

 それじゃお休み~。

今回からあらすじを入れました。

…寧ろ何で今まで付けなかったんだと、過去に自分に問いたい。

投稿済みの各話にもその内あらすじを入れます。

後衝撃的な事実と言うか、投稿を始めてから初めて感想を頂いたのですが、

これ…てっきり執筆者ページなら直ぐに分かると思ってたんで…

10日以上も前に感想が付いていた事に今気づきました…

多分見過ごしてたんでしょうね…

アレだね、思い込みは止めて、毎日作品ページの確認はするべきだと思いました。

感想ありがとうございました。次話も2週間後位を予定しています。

ではでは。

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