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おまけ

午前の講義を終えて大学の建物から出た俺は、門のところでカバンの中を漁っている幼馴染みの姿を見つけた。


あいつ、何でこんなところに…。


変な男に捕まったらどうするんだ、と思わず舌打ちをした。

俺の幼馴染みである蓮花は、霊にも憑かれやすいが男にも寄り付かれやすく、何かと面倒ごとに巻き込まれる。

毎回漏れなく俺も巻き込まれるため、問題になりそうなものを早いうちから潰し始めたのはいつからだったか。

魔除けの石を渡して雑魚霊が近寄れないようにし、蓮花に秋波を送る男には蓮花に近寄る度に殺気を込めて睨み付けていたら、いつの間にか俺をめぐってお互いに牽制し合っていた女子たちが、いつからか蓮花を認め、さらに俺の意図を汲んでか男から遠ざけるように動き始めたため、これ幸いにと害虫駆除を任せた。

もちろん、睨みは効かせていたが。

そんな感じで高校はそこまで心配することなく卒業したが、大学は話は別だ。

高校みたいに誰も彼も知り合いというわけではないため、誰が蓮花に手を出してもおかしくはない。

春からここに入学してくることを考えると、少々頭が痛い。


首輪でもつけとくか。


いっくん、と毎回大好きオーラを撒き散らしながら駆け寄ってくる蓮花の姿は、飼い主に纏わりつく犬を連想させる。

つまり、俺を男として意識してないことをまざまざと思い知らされ、何度苦々しい思いをしたことか。


そんなことを考えている時に、横から純香が突撃し腕を絡めてくる。


こいつは、アメリカ留学から帰ってきてからスキンシップが激しくて煩わしい。

この間臣にこっぴどく叱られていたのに、全然堪えていないらしい。

煩わしさにイラつきながら、腕を振りほどこうとして、止めた。

蓮花が純香の存在にショックを受けたような表情をしたあと、木陰に隠れたからだ。


今までにない行動に、胸が沸き立つ。

そんな俺の様子を純香が不思議そうに見上げたあと、俺の視線を辿って蓮花に気付く。

その途端、しまったと腕を解こうとしたため、そのままでいいと短く伝える。

それだけで、俺が何を考えているのか悟ったらしい純香は、面白いものを見つけたように目を爛々と輝かせ、ノリノリで乗ってきたのだった。


ーーーーー


俺たちが門をくぐってしばらくしてからとぼとぼと帰り始めるのを、純香と物陰に隠れて見守る。

途中、臣が蓮花に声を掛け、蓮花が臣に泣き顔を見せたときには、臣の目を潰そうかと思った。


「蓮花ちゃんが泣いてるのは、そもそも斎のせいでしょ?」


隣からいちいち釘を指して来る純香の言葉に舌打ちしつつ、俺に彼女がいるかもしれないことにショックを受けて泣く蓮花がとてもいじらしく、愛おしかった。

隣にいる臣は気に入らないが。


駅に向かう2人の後を追いながら、そういえば、少し前からあそこのホームには少しやっかいなやつがいたんだと思い出す。

大学まで来れたんだから、行きは大丈夫だったんだろうとその時は楽観的に考えていた。


そうではなかったのだと気付いたのは、ホームへ上がる階段で蓮花が躊躇いを見せたとき、そして、ホームからの念が真っ直ぐに蓮花へ向けられていたのを感じたとき。


蓮花は既に目をつけられている…ーーー!


焦る心そのままに階段を駆け上がろうとするが、人が多くてなかなか思うように先に進めない。


「斎!?」


突然焦り始めた俺を追いかけて、純香が声を掛けるがそれに応えている余裕さえない。


なかなか近付けないもどかしさに、舌打ちしたその瞬間、蓮花が後ろから階段を上がった人にぶつかられて、ホームに躍り出る。

その拍子に、首から下げていた魔除けの石がころりとホームに転がり落ちた。


まずい…ーーーー!


俺は無理矢理前の人たちを掻き分けて上へ上がる。

迷惑そうな目を周囲から向けられるが知ったことではない。

やっとホームに上がれた俺の目に飛び込んで来たのは、今にもホームに飛び込みそうな蓮花の姿と、それを歪な笑みを浮かべ見ている女の地縛霊。


沸き上がるのは、地縛霊の思いに同調してしまうほど蓮花を追い詰めた己と、蓮花を道連れにしようとする地縛霊への激しい怒り。


ホームの淵へ向かう蓮花を引き留めるように片腕で抱き締めると、もう一方の手で印を結ぶ。

浄化などという優しさなど微塵もかけず、一気に霊を調伏した。

同調していた分、その反動で意識を失った蓮花が倒れないように抱き直す。


ようやく俺を意識したと思ったら、そこを霊に付け入られる隙のありすぎる幼馴染みを、目が覚めたら名実ともに自分のものにする算段をつけながら、抱き締める腕に力を入れた。

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