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アルカがなにか言い出した


「アガレスで伝言を聞いた? エルワーズがいた村には立ち寄ってくれたかしら?」

「うん。ナシュちゃんの畑は浄化したよ。そのあとすぐにアガレスに向かって、アーカーさんから南の町に向かったって聞いた。だから[探索]しながら来たよ」


 マジか。

 私は居場所をある程度絞って[探索]をかけたというのに、アルカは魔力と聖魔法でゴリ押しして超広範囲に[探索]をかけながら移動して私たちの居場所を突き止めて駆けつけたらしい。

 無茶をする。

 でも、DLC主人公だからこそできる無茶苦茶だ。

 DLC主人公、アルカは男性プレイヤーを想定して実装されたから、ルナーシャよりも全体的なステータスが高目の設定。

 特に物理攻撃力と物理防御力の伸びがいい。

 ただ、今回アルカがした[高速移動]を使いながら“超広範囲”を[探索]したのは“賢者”に至ったエルワーズが使うほどの魔力を要する。

 なんでそんなことが“賢者”でもないアルカができたのからと言われれば、『聖者の紋章』のチートだ。

『聖者の紋章』の特性は聖魔法が使える点だが、その聖魔法、本来なら眠って取り込まなければならない自然魔力を常時吸収して回復できる。

 簡単に言えばずっと魔物肉を食べ続けている状態、ってこと……!

 自動回復の恐ろしさは“魔法使い放題”。

 だから上級魔法を連発しても魔力切れになることがない。

 レイス()もかなりのチートキャラだが、魔力回復においては主人公ズには敵わない。

 ただし、もりもり食える。

 意外! レイス()は結構な大食いキャラ!

 ……まあ、それはいい。

 私が食いしん坊なのは前世少食だったからその反動ってことで。

 いっぱい食べられるっていろいろな味の料理をたくさん食べられるってことだからね。

 主にお肉。


「ナシュの畑を浄化してくれたのね。ありがとう。すごく喜んだんじゃない?」

「うん。たくさんお礼を言ってもらったよ。小屋の中に残っていた、ご両親の育てていた薬草の種を植えるって張り切っていた」

「そうなのね。よかった。では少し待っていてくれる? 南の町、バーニーラスまでの街道を繋げてしまいたいの」

「うん、わかった!」


 それにしても、アルカ一人で来ている?

 あたりを見回すがいつまで経ってもルナーシャの突撃がない。

 私を見つけたらとりあえず腰や腹に向かって突進してくる子なのに。


「ところでルナーシャは?」

「僕にレイスを口説いてこいと送り出してくれたよ」

「ああ、そう」


 確信犯かぁ。


「あ、あの……」

「そういえばこの人は?」

「アメスさん。南方面の村出身ということで、案内役としてついてきてもらったのよ。私たちも魔王討伐の旅の時に南に来たけれど、ここよりももっと南の孤島だったものね」

「確かに。町にはほとんど立ち寄らなかったものね」


 アイテムの売買とかなかったものね。

 マジ、バーニーラスには廃墟で休むためだけに立ち寄ったって感じ。

 だからアルカもきっと、復興に勤しむ人たちを見たら喜ぶだろうな。

 ルナーシャにも見せてあげたかったかも。


「汚染魔物はこの聖者アルカが浄化してくれたわ。アメスさん、バーニーラスに行って住民を安心させてあげましょう」

「は! はい! え!? こちらの方が、聖者様……!?」

「初めまして、アメスさん。アルカといいます」

「うわあ! お会いできて光栄です!」


 やはり魔王討伐の英雄。

 魔族にも受け入れてもらえて少し嬉しそう。

 ちなみにこの森にはバーニーラスの人が森の恵みを採りに来るらしく、道を整えれば喜ばれるのではないか、とアメスの助言を受けて道を繋ぐことにした。

 バーニーラスについてから、またアメスに住民へ報告をしてもらってから一旦同じ方向をしにアガレスへ戻ることに。


「[瞬間転移]で帰っていいかしら?」

「[瞬間転移]!? 上級魔法ですよね!? 人間の方が使えるんですか!?」

「まあ、それなりに」

「あ、あの、でも、ブッキングすると危ないので[瞬間転移]を使う場合町の外、町から十メートル以上離れた場所に飛ぶことが義務づけられているんです。便利だからと町中に飛んでものを破壊したり人にぶつかって……その、体内に出てしまうと双方死ぬ事故も過去にはありましたので……」

「なるほど。了解したわ。魔族国ならではといった事故ね」

「ひえ……」


 アーレシュア王国では[瞬間転移]を使える魔法師自体が少ない。

 しかし平民も魔法が使える魔族国は、それなりに才能さえあればアーレシュア王国の魔法師の中でも上級魔法として扱われている[空間転移]を使える平民がいる。

 そう考えるとヤバい国なんだよなぁ。

 もしも――もしも魔王が百年おきに生まれなければ、他のRPGみたいに魔族は“悪役”として人間の国を侵略する存在になっていたかもね。

 ……まさか、魔王って、魔族を抑制する存在……?

 いや、まさかね?

 だいたい誰が魔族を抑制するのよ。

 神様かよってーの。

 気を取り直して、アルカとアメスを連れ、[瞬間転移]で中心の町アガレスへと飛ぶ。

 アメスに言われた通り町からそれなりに離れたところに着地。


「なんか……中心の町って呼ばれているのにアガレス周り、寂しいね。草も生えていない」

「そうね。おそらくこの辺りも汚染魔物からの汚染の影響が残っているんじゃないかしら。今回の汚染魔物ではなく、前回や、前々回の、とか歴代の……」

「歴代の!?」

「はい。その通りです。アガレス周辺に限らず、魔王が生まれた土地は汚染が深すぎて五百年以上草の一本も生えないとされているんです。汚染魔物の汚染は『聖者の紋章』を持つ者が浄化してくだされば元に戻るのですが……」


 汚染魔物の汚染と魔王の汚染は別格、ということなのかな?

 ちらりとアルカを見ると、こくりと頷く。


「やってみるよ、僕」



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