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南の町、バーニーラス


「アメスさん、南の町ってどちらですか?」

「きゅう……」

「ええ? 嘘でしょ? 気絶している……」


 仕方ない、『覇王の集い』で立ち寄った南の町、魔王が生まれた海沿いの一番大きな町、バーニーラスに行ってみよう。

 バーニーラスは魔族国南部最大都市。

 近くの山は海と隣接しており、魔王が居を置くのに適していたラストダンジョン前の最後の町。

 言うてデカい割にすでに滅ぼされており、回復アイテムなどの販売は行われていない。

 せいぜいキャンプ地にして、HPとMPの回復場所になる。

 ただ、最終ダンジョンなら[瞬間転移]が使える場所。


「やってみるか。――[瞬間転移]」


 手を掲げ、魔法陣を描く。

 次の瞬間、目を開けばそこには西の大都市バーニーラスが広がっている。

 おっ、成功した。


「う、ううん……。ん? え? あ、っ! バーニーラス……! 人が、いる!」

「ええ」


 空中に浮いて、見下ろしているとよく見える。

 失っていた意識を取り戻したアメスも声を上げるほどに、現在のバーニーラスには近隣の村々から人が集まってきているのか、多くの人々が瓦礫の撤去を行なっていた。

 それを見て、少しだけ安心する。

 アガレスに流れてきた人々は、あまりにも疲弊していた。

 自分の故郷を失って、大切な人を奪われて立ち上がれなくなっている。

 それは当たり前のことだと思う。

 でもバーニーラスの人々は、もっとも被害が大きな地だというのに復興のために働いている。

 ちゃんと前を向いて、自分たちの居場所を作り直そうとする人たちがいるのだ。


「ぐす……」

「アメスさん?」

「す、すみません。自分、南部出身で……。今回魔王がここバーニーラスで生まれたと聞いて、自分は真っ先に自分の家族をアガレスに呼び寄せたんです。生まれ育った村の人も……。でも、バーニーラスはずっと憧れの町で……知り合いもこっちで働いていて……。それがこんなにボロボロになって、でも……でもこの町の人たちは復興をしようとしていて……っ。なんか、感動してきちまって……!」

「そう」


 他国の私がそう思ったのだもの。

 この地方出身のアメスには特にそう感じたのだろう。

 よかったわね、と背中を撫でて町に下りる。

 アメスに町の人へ話しかけてもらい、スライム状の汚染魔物の目撃情報について聞いてもらう。


「バーニーラスから見えるあの山の麓の森で目撃されているようです。すでに三メートル近く巨大化しており、見つけてすぐに逃げられたとの話です」

「三メートル!? ……かなり大きくなっているわね。その目撃はいつ?」

「最新は一昨日です」

「なら、今はもっと大きくなっているかも。すぐに捕らえないと。案内して」

「は、はい」


 アメスをもう一度持ち上げ、[高速移動]で街道を敷きながらその森に向かう。

 森の入り口で[探索]を行うと、やはりすぐに汚染魔物の魔力を検知した。


「汚染魔物を見つけた。危険だからあなたは待っていて」

「い、いえ! 行きます! 見届けなければなりませんので……」

「そう。わかった。でも、近づいてはダメよ。一瞬で呑み込まれる。魔力遮断の術をマスターしているのなら近づいても大丈夫だけれど」

「そ、そんなすごい技使えませんよっ」


 でしょうね。

 だから遠くで見ていろ、ってことよ。

 地面におりて、汚染魔物の魔力を追う。

 以外に森の入り口に近い。


「止まって」

「っ!」


 ズル、ズル、と音を立てて、全長五メートル近いスライムが木々を薙ぎ倒しながら移動している。

 おそらく生き物を探しているのだろう。

 だが、あんな魔力を垂れ流しで動いていたら普通の魔物だって近づいてこない。

 気づかれる前にさっさと[空間倉庫]に閉じ込めてしまおう。


「[空間倉庫]――」


 魔法陣を展開した瞬間、木々の隙間か、黒いスライムが飛び出してきた。

 これは……!


「待ち伏せしてたってこと! 生意気!」

「ひいい!」

「動かないで!」


 咄嗟に炎の渦を作り出して身を守る。

 アメスを渦の中に入れて飛び出してきたスライムを見ると、炎に驚いて後退りしていた。

 スライムの生態の根幹は水分が九割。

 残りの一割に属性が付与されている場合が多い。

 汚染魔物の場合は、闇属性。

 炎と闇なら対組織の水分の多さの関係で炎が負ける。

 だが、それは“普通の炎”の場合。

 私の作り出した青い炎は、通常の火属性魔法の中でも上級に位置する“超高温”!

 普通のスライムなら蒸発させる温度。

 それを瞬時に察して襲う手を止めるあたり、このスライム、相当に賢い。

 つまり、こいつ……知的生命を……を食っている。

 一匹二匹の知性のある生き物を食っても“待ち伏せ”なんて思いつかない。

 こいつ、おそらく村一つは食っている。


「……………………そう。もう、わかった」

「レ、レイス様……?」


 魔力を、込める。

 私を中心に半径一キロを囲む。

 キン、と甲高い金属音に近い音が聴こえて、範囲すべてが炎の渦に呑み込まれる。


「上級火属性魔法、[広炎渦柱(エヴフレイム)]」


 魔法名を唱えれば、半径一キロを青い炎が満たす。

 スライムの『ピギャアアァ』という悲鳴があちこちから聴こえてくるが、知ったことではない。

 お前たちが何人食ったか知らないけれど、知性を持つほど生き物を食ったのは間違いないのだ。


「お前の中に閉じ込められた魂を一つでも多く解き放て! 聖人と聖女に浄化してもらう前に! 一つでも!」




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