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この村を拠点にするべく


「村が! 直ってる!」

「昨日の夜直しておいたわ。でも、細かなゴミは素材不足で直せなかった箇所や物もあるから気をつけて。それと、ディニールからもらってきた小麦粉は村長宅の食糧庫に入れてあるから好きなように使って。私とアーカーは村を私の拠点にしていいか許可を取ってくるので、ルナーシャとアルカが来たら対応をお願いね、エルワーズ」

「わかりました。ちなみに、いつお帰りになられるかとかはわかりますか?」

「頼まれごとをしなければ一度戻ってくるわ。だから、明日には戻るつもり。ここから中心の町まで半日くらいだし、向こうの状況やこの村の村人たちがどうなっているのかを黙認したいから泊まってくるわ。だから、早くとも明日の昼前ぐらいかしら」

「わかりました」


 エルワーズの事務能力を期待して選んで連れてきたので、思った通りの働きをしてくれそう。

 マイキーとナシュに朝食を食べさせてから、私とアーカーは荷馬車に乗って中心の町アガレスへ向けて出発。

 問題はあれなのよね……自分で各地の状況を確認して回る族王ディブレが、おとなしくアガレスにいるかどうかなのよ。

 責任感が強いからこそ、自分で各地に赴いて民を助けようとするのは……まあ、いいことだと思うけど。

 いや、それはそれとして実際人手が足りないのも要因だろう。

 そのくらい魔族国の人口は減少した。


「やはり道が整備されていると順調に走れるな。馬も走りやすそうだ」

「石畳みにできそうな石や岩が落ちていないから、新しい石畳みが作れない。[大岩落下]で岩を作り出して石畳み作ろうかな」

「やめろ」


 なぜかアーカーに叱られてしまった。

 新しく大穴が空いてもちゃんと[大地重圧]で整地するのに。


「落下しきる前に大岩を石畳みにするから大丈夫なのに」

「それでもそんな上級魔法、石畳みを作るためだけに発動させるな! 目撃した人に何事かと思われるだろう!」


 周辺にを[探索]しても人の反応はないんだけどなー。

 まあ、確かに上級魔法を連発するものではないか。

 それに魔法で生成した岩や水は術者が死んだあと消滅する。

 私の死後も残るほどの岩や水などを生成できているのかは、死んでみないとわからない。

 確か、死後も残る魔法で生成した物質は魔力の元素となる“魔素”から生成している、とかなんとか本で読んだことがある。

 魔素は魔力の素。

 魔力は魔法の素。

 魔法で出した物質が残るか残らないかは、この違いを理解しなければならない。

 魔素まで扱える魔法師は“賢者”を超えた存在――“大賢者”となる。

 だったかな?

 エルワーズは魔法を極めた“賢者”になるが、“大賢者”は歴史上、魔族国を興した祖王だけ、って書いてあった。

 魔族国になら、もっと魔法について書いてある書籍とかあるかも。

 お城に行ったら交渉してみようかな。

 もしかしたら――魔王を生み出さなくする術が開発できるかもしれない。


「アガレスが見えてきた。お? 今日は正門の前に誰かいるぞ」

「本当。行列ができているわね」


 街道を敷いたおかげで今日は迷うこともなく正門に辿り着いた。

 すると、正門の前には多くの人々が集まって列をなしている。

 見たところ避難してきた魔族のようだ。

 もしかして、入りきらない?


「あ! 使者殿!」

「ああ、すまないがディブレ様はお戻りになっているか? 街道についての報告があるんだが」

「はい! 城の方に戻っておられます。ディブレ様も使者殿たちに頼みがあるとおっしゃっておりました」

「頼みごと?」


 アーカーと顔を見合わせる。

 門番は数が増員されており、難民たちの受け入れ手続きに追われているようだ。

 その横をするりと馬車ごとすり抜けるのは少し申し訳がないが、私たちへの信用が高くてそっちの方が驚き。

 一応、一国の王が他種族の使者をこんなに素直に頼るなんてことあり得るのだろうか?

 そう思ったが、難民の数、その疲れ果てて絶望感を滲ませた表情を見て……多分、他国の手も借りたい状況なのだろうと納得せざるを得なくなった。

 そうだよね、国民の人口が半分減っている。

 差し伸べられた手を振り払っている場合ではない。

 汚染魔物はそのほとんどが魔王とともに消滅しているが、遠方にいて間に合わなかった汚染魔物は残っているし元々いた魔物だって、普通にこれまで通り襲ってくる。

 それになにより、平和に住んでいた場所が破壊され、日常だけでなく親類や恋人、友人、家族も奪われて元に戻る目処も立っていない。

 不安に押し潰されそうだろう。

 こうして見ると、前世の、日本人の災害におけるメンタルマジで鋼だったんだな。

 この人たちの顔には、生気がない。

 立ち上がり、前向きに生きていこうという意志が感じられなくなっている。

 マイキーやナシュも似た目をしていた。

 ただ、あの子たちには『ナシュの親が残した畑』という守る存在があったから、かろうじてあの廃村で二人、肩を寄せ合い協力し合いながら生きて来れていたのだろうけれど……けれど。


「ディブレ様」

「おお! レイス殿、アーカー殿! よく来てくださった。おや、エルワーズ殿は……」

「その件でご報告がありますの。実は……」


 城の応接間に通され、ディブレに面会する。

 今日はなにやら書類に囲まれて、事務仕事をしていたディブレ。

 いや、執務室でやれよ、と思ったがおそらく私たちと面会する待ち時間も惜しんでのことだろう。

 実際、やることは山のように多いはずだ。



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