宇宙へ 5
「…………まだ生きてる」
誰かに呼ばれたような気がして意識が覚醒する。
目を開けると煌めく星々で出来た川が見えた。
天の川とはよく言ったものだ。
「かろうじてね。あれからもう30時間は過ぎているわ。でももう少しすれば私を維持するエネルギーも無くなる」
「変身が解けちまうのか」
「……そうなるわね」
「やっぱり苦しいのかな?」
「ほぼ即死するから苦しまないはずよ」
何とも言えない無言の時間が過ぎる。
「……俺は止まっているのか?」
「いいえ、爆発の衝撃で地球に向けて飛んでいるわ」
「それじゃ、俺は地球へ帰れるんだ。……まあ体だけだろうけどな」
「………………」
もう喋る力も無くなってきた。
「……どうやら……ここまでみたいだな」
「…………ちょっと待って! 通信!?」
『…………樹…………返事…………』
妙に聞き覚えのある声な気がする。
「ウソ! これってオリオン!? なんでこんな所にいるの?」
最後の力を振り絞って出されたモニターに丸い羽を生やした宇宙船オリオンが映っていた。
『聞こえてるの裕樹! 死んでたら殺すわよ!』
『……勝手に死なないで』
間違いない、フィアとリーリヤだ。
「……もしかして俺助かったのか?」
「もう少しよ! 気合でエネルギーを搾り出しなさい!」
AIに励まされながら、何とか変身を維持したままオリオンの所まで辿り着く。
動けなくなった俺を宇宙服に身を包んだ二人がオリオンの中に引きずり込んでくれた。
船内に入った瞬間、タイミングを計ったように変身が解ける。
「ちょ! 大丈夫なの!?」
「……酷い顔」
心配そうにこっちを見る二人の顔をみながら、俺は再び意識を手放した。
その後、栄養剤の入った点滴をしてもらったようで、ようやく話せるまでには回復し意識を散り戻す。
「……なんで二人がここに?」
「心配だったからに決まってるじゃない! ちょうどオリオンが要らなくなって転がってたし。でも来て正解だったみたいね。どう? 私に凄く感謝していいわよ?」
操縦席に座ったフィアがこちらを見ながら得意げにしている。
「……打ち上げたのはロシアのソユーズ。だから私の方が感謝されるべき」
なぜか俺に膝枕をしてくれているリーリヤがやり返した。
「はあ!? 実際ここまで来たのはアメリカのオリオンよ。というか、アンタどさくさに紛れてなに裕樹といちゃいちゃしてんのよ!? 放り出されたいの!?」
「……運転手は黙って運転してればいい」
フィアとリーリヤの目線が戦いを始める。
「どっちにも感謝してるって。…………しっかし、なんでお前らそんなに仲が悪いんだよ」
二人の目が俺に向けられる。
一瞬の沈黙の後、
「死ね!」
「……死ね」
見事に同じ台詞が来た。
まったくこいつら仲が悪いんだかいいんだか。
だけど俺は本当に感謝してるんだぜ?
再び始まった二人の口喧嘩を聞きながら、俺は再度深い眠りに落ちていった。




