エピローグ
「そこのロシア女! なにしれっと裕樹の机とあんたの机引っ付けてるのよ!?」
「……教科書忘れたから」
すっかり日常になってしまったフィアとリーリヤの戦い。
地球滅亡の危機から既に1週間が過ぎていた。
あの後、オリオンで地球まで戻ろうとしたんだけど実はオリオンには燃料が残ってなかった。
どうやら少しでも早く俺と合流するためにエンジン全開で突っ走ってきたらしい。
俺と合流できなかったらどうするつもりだったんだろう?
インフェルノレッドに変身出来る体力は戻ったので、俺はオリオンを押して地球まで帰還した。
地球に帰還した後は大統領とか、なんか偉い人たちにやたら激しいハグされてすげー疲れた。
今回の件は無用な混乱を避けるためと、俺の事を公開する訳にもいかないので、一般的には隕石による地球滅亡の危機は無かった事になるらしい。
リチャード大統領が申し訳なさそうに、
「君というヒーローがいなければ我々は今日という日を迎えられなかっただろう。本来なら世界中を挙げて君の功績を称えねばならないのだが小さなパレードすら開くことができない。申し訳ない。せめて君の望む報酬を言ってくれないか? 合衆国大統領として出来ることは何でも応じる」
素直な感謝にうれしい気持ちが生まれるが、今回の件、はたから見れば完全なマッチポンプなんだよな。
もちろん俺が仕組んだわけじゃないけど未来からの誤配送品が原因なのは間違いない。
これで報酬をもらったりした日には罪悪感で起き上がれねえ。
だから俺は、報酬はいらない事、そしてこの力は近いうちに無くなって、ただの高校生に戻るからそのつもりでいてほしい事を伝えた。
大統領はすこし残念そうな顔をしていたがすべて了承してくれた。
大統領執務室を出る俺に、そこにいた全員がお辞儀をしてくれたのがなんだか強く心に残った。
「こんのっ泥棒猫がぁ!」
フィアが銃を抜いた。
「おいフィア! さすがにそれは不味いだろ!」
「ゴム弾よ! 当たっても死にたくなるほど痛いだけ。あっ、逃げるなぁ」
フィアが教室で発砲しやがった。
おや? 流れ弾が来栖に当たったようだ。
まあいいか。
地球の危機が公開されなかったのは俺にとっても助かった。
だって俺が欲しいのは世界を救ったって賞賛じゃなくて、普通の日常なんだから。
逃げるリーリヤを追ってフィアも教室から飛び出して行ってしまった。
「ゆっくん、一緒にお弁当食べよー」
相変わらず能天気な雰囲気全開のくるみがやって来た。
何かを感じ取ったのか、来栖がゾンビのように立ち上がる。
何気ない光景。
特別な事は何も無い。
「……守れて本当によかった……」
「? ゆっくん何か言った?」
「いやなんでも。さてリーリヤに食われる前に食べちまわないとな」
その日、家に帰ると珍しく母親が先に帰宅していた。
「おかえり、裕樹」
「ただいま。今日は随分早いじゃん」
「スケジュールのミスで仕事がなくなっちゃたのよ。あ、そういえば祐樹宛に荷物が届いてたわよ」
それって!
「よっしゃキター!」
送り主はホビーショップ ネネバシカメラ。
間違いない、ようやく届いたぜ!
俺は部屋に駆け込み一気に包装を破いてゆく。
「ウソ!? まじで届いちゃったの?」
「ようやくお前とおさらばできるぜ」
「本気!? さんざん私をもて遊んで、要らなくなったら捨てるの!?」
「……いやむしろもて遊ばれたのは俺の方だと思うぞ」
なんと言われようと、俺はコイツを外して、脱線した人生を元に戻すんだ!
堅い決意のもと、AIの抗議など一切無視して箱を開ける。
中には電池が2本入っていた。
へー、電池のデザインって200年後でも変わらないんだ。
いやしかしデザインは同じでも放つ迫力は全然違う。
だってこの電池、単3の癖にやけに太いんだぜ、さすが未来の電池様は貫禄が違う……
「って、これ単1じゃねえかばかやろう!!」
「ぶっ! あはははは、ばーか、ばーか」
夕暮れ時の穏やかな住宅地に、悲壮な高校生の叫びとやたら楽しそうなAIの笑い声がいつまでも響いていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
第二弾の連載を始めました。
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