宇宙へ 4
俺はリトルサターンから一気に離脱し、前方に回りこむ。
「どうするの!?」
「ジェノキャノンでぶっ壊す!」
「だから無理だって!」
「そんなもの、やってみなきゃわからねーだろっ!」
「エネルギーを無駄にするだけよっ!」
「何でも良いからさっさとジェノキャノンを出せっ! 俺が、俺が何とかしないと皆死んじまうんだぞ!」
「落ち着いて!」
「落ち着けるか! 俺は失敗する訳にはいかないんだよ! 体当たりでも何でもいい、何か方法は無いのか!?」
「だから……」
「お前、未来から来たスゲー奴なんだろ? なあ、頼むよ……お前だけが頼りなんだ!!」
「………………一つだけ方法があるわ」
「!?」
「実は私、時間跳躍の影響で所々にバグが発生しているの。そのせいで本来私にはない管理者権限を使うことが出来る」
「管理者権限?」
「私の中にあるプログラムを書き換える権限よ。それを使ってセーフティキーを開錠すれば性能以上の力を出す事が出来る」
「あの隕石を吹っ飛ばせるって事か?」
「多分可能よ」
「それを早く言えよ! 早速やっちまおうぜ!」
「…………イヤ」
「なんで!?」
「……私のエネルギー源が何か分かってるの? あなたの生命力その物なのよ。普段はちょっとお腹がすく程度のエネルギーしかつかえない設定なの。でも安全装置を外して攻撃すればほぼ全ての生命力を使い切る。即死はしないけど指一本動かせない状態になるわ。当然エネルギー補給の為の食事もできない。ただ息をしているだけ。それも持って1日か2日。……つまりあなたは死ぬ」
そう言う事か。
誰もが笑えるハッピーエンドが必ず用意されているほど世の中は甘くねーって訳だ。
それでも皆死んじまうバットエンドだけにはしたくねえ。
「確かに面白くねー話だよな。……でもここで俺がやらなきゃ皆が死ぬんだ。……頼む、やってくれ」
「イヤよ! これでも私アンタの事気に入ってるのよ! アナタが死ぬって分かってる事なんて出来ない!!」
AIの癖に泣きそうな声を出すなよ。
「ありがとうな。……でもここで俺がやらなきゃ地球は無くなる。そうすりゃいずれ俺も死ぬ。そうだろ?」
「…………それは」
「どっちに転んでも死ぬなら……誰かのために死にたい。犬死なんて御免だぜ」
「…………」
「……頼むよ、俺に地球を救わせてくれ」
「…………格好いいじゃない。まるでヒーローみたい」
「忘れたのか? 俺は撃滅戦隊ジェノサイダー、インフェルノレッドなんだぜ」
「そうだったわね。……分かったわ。一緒に地球を救ってあげる」
「嫌な仕事させてすまねえな」
「いいわよ最後ぐらい。それじゃ始めるわよ……管理者権限にてアクセス開始……レジストリ介入……セーフティに関する項目42から561まで削除……全ての警告を非表示…………準備完了よ」
「やってくれ」
「了解。インフェルノモード発動」
俺の体が赤く光始め、次の瞬間大きな炎の翼が背中に生まれた。
「ぐっ」
体中の力が一気に抜けていくのが分かる。
油断すると意識を持っていかれそうだ。
「がんばって! 気を失ったら終わりよ」
「……任せとけ」
「ツインジェノキャノン!」
AIの言葉に答えて、俺の両腕が巨大な砲に変わる。
「モードチェンジ、メギドバスター展開」
すると両腕の砲が合体してさらに巨大な砲へと変化してゆく。
「メギドバスター展開完了」
俺の身長のゆうに三倍はある厳しい無骨なデザインの大砲がそこにはあった。
「……こりゃすげえな」
「メギドバスターへの全エネルギー充填完了。ターゲットロックオン。…………いつでもいけるわよ」
これで俺の人生は終わりか。
終盤で随分脱線したけど、大切な人達を守って死ねるんだ、そう悪くない人生だったんじゃないかな。
刈り取られそうな意識を必死に繋ぎとめ俺は最後の命令を下した。
「発射!」
「yes! My lord!!」
泣き叫ぶかのようなAIの言葉と共にメギドバスターから輝く真っ白の光が撃ち出され、狙い違わずリトルサターンにその全てが突き刺さってゆく。
何の変化も起きない、そう思った瞬間にリトルサターンが膨張を始め、ひび割れた地面の隙間から真っ赤なマグマが噴出す。
そして膨張が限界に達すると、リトルサターンは眩い光と共に爆発しその姿を消した。
「おめでとう、ジェノサイダー! これで地球は守られた。ありがとうジェノサイダー」
聞き覚えのあるナレーションが流れる。
「……どう致しまして」
そして俺の意識は深い海の底に沈むように消えていった。




