宇宙へ 1
同日 日本標準時 午後4時12分
学校から帰ろうした俺はリーリヤに呼び止められた。
「食器を安く買えるところ? 100均にでも行ったらいいんじゃね?」
どうやら食器を買いたいらしい。
確かにリーリヤの家で食器と呼べるものはコップしか無かったからな。
「……どこにあるか分からない。一緒に行って」
今日はくるみは用事があるとかで一緒には帰らないし、別に急いで帰る必要があるわけでもない。
つまり特に断る理由は無いか。
「いいぜ。ついでに俺もノートを買うわ」
そういった経緯で、リーリヤと一緒に駅前の100均ショップにやって来た。
「ここにある奴全部100円なんだぜ」
「……安い」
「ああ、だけど調子に乗って買い捲ると結構いい値段になるという罠があるから気をつけろ」
「……がんばる」
そう言ってリーリヤが両手をグーに握って気合を入れた。
「……裕樹はどのコップがいい?」
大小様々なコップが並ぶ売り場の前でリーリヤが真剣な表情で尋ねてきた。
「そうだなー、このでっかい奴かな? つーか俺の好み聞いてどうすんだよ?」
「……秘密」
「お前が秘密って言うとなんかこえーんだよ」
その時、100均ショップの中に能天気な声とヒステリックな声が響いた。
「あーゆっくんだー」
「あら裕樹って、なんでロシア女といるのよ!」
くるみとフィアだ。
くるみの用事ってフィアと買い物に行く事だったのか。
しかしいつの間にそんな仲良くなったんだろう?
フィアとリーリヤの視線があった瞬間、リーリヤが俺の腕に抱きついて来て、
「……デート」
などとぬかしやがった。
「はあ!? 俺はお前が買い物に付き合って欲しいって言うから……って、もしかしてこれってデートになるの?」
「知るかぁ!!」
何故かフィアが激怒しながら銃を抜こうとした時、フィアのスマホが鳴った。
「ちっ、こんな時に……もしもし? 今立て込んでるの! あとで……。あ! 申し訳ありません! はい……はい……了解しました」
いきなりしおらしくなったフィアがスマホを俺に渡してきた。
「裕樹、レオン長官がアンタに話があるって」
うわーなんだろ。嫌な予感しかしねーんですけど。
「……はい、代わりました」
『荒川裕樹君、早速だが借りを返してくれないか?』
「いきなりだな。だけど内容によっては断るぞ」
『それは大丈夫だ。今回我々が求める事はただ一つ……君に世界を救って欲しい』
詳しい事を聞くため、俺たちはCIAの事務所(俺を監視するために特別に設置したらしい)にやって来た。
「荒川様、お久しぶりです」
オリバーがにこやかに握手を求めてきた。
「……つかぬ事を窺いますが、長官に何か言いましたか? いや、フィアリス捜査官の件で散々嫌味を言われた後、何故か特別ボーナスが出たんですが……」
「よかったじゃん」
「まあそうなんですが……っと、こんな話をしている場合ではありませんでした」
慌ててオリバーがリモコンを掴んだ。
「まずはこちらをご覧下さい」
部屋の壁に掛けられたかなり大きなモニターに岩の塊が映し出された。
「これは現在地球に向かっている隕石、リトルサターンです」
「隕石!?」
「はい。地球直撃コースに乗っています。このまま行くと後4日で人類は絶滅します」
話がでかい上にいきなりすぎて頭が追いつかねえ。
「絶滅って死んじゃうって事? あと4日で?」
「残念ながら」
「ちょっと! それが分かってて何もしてないの!? 大統領とかなにやってるのよ?」
フィアがオリバーに食って掛かった。
「もちろん世界を挙げて対策を講じてきました。具体的には核を使ってリトルサターンの軌道をそらす計画です。計画その物は順調に行っていたのですが、リトルサターンが突如速度を上げたため、間に合わなくなったしだいで。そこで荒川様に白羽の矢が立ったのです」
全員の視線が俺に集まる。
「なんでゆっくんなの?」
場の雰囲気に全くそぐわない、気の抜けた声が響いた。
「くるみ!? 何でここに?」
「何でって、一緒に付いて来ただけだけど?」
そういや誰もこいつに帰れって言ってなかったような。
「ミスった! まあ、あれだ、いろいろあるんだよ!」
何の説明にもなってねえな。
「ふーん。良く分からないけど頑張ってね」
……納得するんだ。
あー俺、こいつの事好きかもしれない。




