ロシア 2
一緒に下校したくるみと別れ、昨日(というか今朝)片付けるついでに徹底的に掃除したのでやたら綺麗になった部屋に入る。
かなり眠たかったのでそのままベッドに倒れこんだ。
しかし、
「……寝れねえ……」
やはり昨日の様子がおかしかったリーリヤの事が気になる。
「……アイツ、ちゃんと薬とか飲んでるのかな」
「なに? あのロシア女病気なの? これはチャンスよ! 今なら簡単にとどめが刺せるじゃない!」
「だからそれは悪側の発想だっての!」
仕方ねえ、家はこの前の散歩で知ってる訳だしこのままほっとくのも気が引けるから見舞いにでも行ってやるか。
「変身していかないの?」
「コンビニでなんか買っていくし、そんなに遠くないからチャリで行くわ」
「なるほど。油断させておいて一気にかたを付ける作戦ね」
「だから見舞いだっつーの」
コンビニで栄養ドリンクやスポーツ飲料を適当に買ってリーリヤの家に向かった。
「近くで見るとさらにボロな」
「悪の組織って感じね!」
足をかけるのに少々勇気がいる階段を慎重に上り、二階へと向かう。
部屋は全部で4つあったが、一番右端以外は誰も住んでいないようだ。
消えそうな字で201と書かれたプレートの下に、汚い字でりーりや・かるなうふと書かれたノートの切れ端が貼り付けてある。
間違いなくリーリヤの家だな。
インターフォンが無かったので、扉をノックした。
何度か叩いたが反応が無い。
「おーい。リーリヤ。いるか? 俺だ、荒川だ」
やはり反応がない。
「留守かな?」
「生体反応はあるわよ。かなり発熱してるみたいね」
「まじかよ」
思わずドアノブを引くと、何の抵抗もなく開いた。
「……えーっと、リーリヤ、入るぞー」
「女の子の部屋に忍び込むなんて、あんたガチで変質者ね」
「頼むから黙っててくれ」
俺だって何とも言えない罪悪感を感じてるんだぜ。
リーリヤの家は縦に部屋が二つ並んでいるいわゆる2Kってやつだった。
ほとんど家具らしい家具は無い。
そして奥の部屋にしかれたペラペラの布団の中に苦しそうなリーリヤがいた。
「おい! 大丈夫か!?」
すごい汗だ。
いつもは真っ白な肌が熱でピンク色になっている。
「…………荒川裕樹、なんでここに?」
「お前が学校を休んだから心配して来たんだよ」
「…………余計なお世話」
「そんな事言ってる場合じゃないように見えるが?」
「…………唯の風邪」
「薬は飲んだのか?」
「…………持ってない」
持ってきたコンビニの袋を漁る。
念のためと思って風邪薬買っといて正解だったぜ。
「ちょっとキッチン借りるぞ」
そう断ってから俺は入り口の横にある小さなキッチンに向かった。
そこには小さなコップとやかん、そして綺麗に洗われたカップ麺の容器だけが並んでいた。
もしかしてアイツ、カップ麺しか食ってないのか?
まあ今はそれは置いといてまずは薬だ。
コップに水を注いでリーリヤに持っていってやる。
「ほれ。水と風邪薬。とりあえず飲めよ」
するとリーリヤが驚いた様な表情を浮かべた。
「…………わたしに?」
「俺が飲んでどうするんだよ。とにかく飲め」
しばらく逡巡した後、ようやくリーリヤが薬を飲んだ。
「あとこの栄養ドリンクも飲め。このコンボはかなり効くぜ」
あとは栄養のあるものを食べさせたら大丈夫そうだが、この家、食い物がある気配がまるでない。
「ん? そのダンボール……」
中には例の戦闘用レーションが詰まっていた。
駄目だ、今これを食わしたら確実にあの世に行ってしまう。
仕方ねえ、なんか買ってくるか。
「ちょっと買出しに行ってくる」
再びさっきのコンビニに戻る。
おかゆのレトルトパックを幾つか纏めて買った。
コンビニから戻ると、心なしかリーリヤの顔色がよくなっていた。
「またキッチン借りるな」
電子レンジはもちろん鍋さえないのでやかんでおかゆを温め、カップ麺の容器によそう。
「なんか見た目はいまいちだけど、気にせずに食え」
意地を張るのは諦めたのか、今度は素直に食べだした。
リーリヤの顔が嬉しそうに綻ぶ。
口に合ったようで何よりだ。
「しっかしSVRだっけ? あいつら薄情だな。こんなになってるのに助けにこないなんて」
「…………SVRには報告していない」
「なんで?」
「…………治療費が給料から引かれる」
「はあ? それで体壊したら意味ないじゃん」
リーリヤは食べるのをやめすっかり黙り込んでしまった。
そういやリーリヤはお金が目的だったんだっけ。
するとこのボロいアパートも酷い食事も全部、金を無駄にしないためなのか。




