渡米 4
テキサスからヴァージニアまではかなり距離があるが、未来の玩具にかかれば数分で到着してしまった。
「さっきと同じ要領でまずはデータベースにアクセスしてみよう」
2回目なので躊躇なく電線を掴む。
「どうだ? いけるか?」
「さすがに裁判所よりもガードが固いわね。でも所詮子供だましよ。……はい、アクセスオーケー」
「よし。まずはライルで調べてくれ」
「……あったわ。トップシークレット扱いね。ハニーリターンって作戦にライルに関する記述があるわ」
「ハニーリターン? どんな作戦なんだ?」
「用は女をつかってあんたをたらしこむ作戦ね」
「作戦名にひねりが無さ過ぎだろ」
「作戦名なんてそんなものじゃないの?」
「とにかくその作戦がフィアが志願した奴だな」
「ライルはフィアをこの作戦に参加させるためのエサにされているわ」
「ライルの事件についてはなんか書いてあるか?」
「……あるわよ。胸糞悪いのが。ライルの事件はでっち上げみたいね」
「でっち上げ? じゃライルは何もしていないのに死刑にされかかっているってことか?」
「そういう事。最重要機密事項の中に指示した内容がはっきり残っているわ」
「面白くねえな。全く面白くねえ話だ」
「どうする? ここふっとばす?」
「そんな事をしてもライルの死刑は変らないだろう。こうなったら正面から乗り込んで話つけてやる!」
「かっこいいー。だけど忘れてない? ここアメリカよ? 英語喋れるの?」
「……喋れません」
「仕方ないわね。私が翻訳してあげる」
「マジで!? お前すげえな!」
「当たり前でしょ。私を誰だと思ってるの」
「性悪欠陥品」
「スワヒリ語に翻訳してやる」
CIA本部の近くの林に降り立って変身を解く。
そしてそのままCIAの正面入り口から堂々と中に入った。
中はかなり立派なホールで床には鷲と星みたいなマークが描かれている。
そのまま奥に進むと、電車の自動改札みたいなゲートがあった。
カードを翳すみたいだが、もちろんそんな物は持っていない。
無理やりゲートに入った瞬間、警報がなり警備員が飛び出してきた。
「なにをしている!? 両手を上に上げてそのまま頭の後ろへ!」
四人の警備員全員が銃を構え、すげえ形相で叫んできた。
さすがアメリカ、対応がやたらバイオレンスだ。
だけどこんな所で追い返される訳には行かないんだよ。
「誰でもいい。長官に荒川裕樹が会いに来たって伝えてくれ」
「はあ? アポイントメントはあるのか?」
「ねーよ」
「分かっているのか? いたずらじゃ済まされないぞ?」
「いいから伝えろ!」
ただならぬ雰囲気が伝わったのか、警備員の一人が無線で連絡を取り始めた。
「……了解」
警備員が無線をしまいつつ口を開いた。
「その少年は長官の客らしい。案内するからついて来い」
ようやく警備員達の緊張が緩み、銃をしまう。
そして俺はそのまま無線で連絡を取っていた警備員に連れられ、CIA本部の中を案内された。
「此処だ」
案内されたのはいわゆる応接室だった。
中に入ると、白いスーツを着た細身の男が座っていた。
「初めまして。私がCIA長官のレオン・ダレスだ」
レオンが立ち上がり握手を求めてきた。
思いっきり手を握り締めてやったたがびくともしやがらねえ。
「……荒川裕樹です」
「まずは座りたまえ」
言われたとおりにソファに腰掛ける。
フワッと沈んだ後、しっかりと体をホールドしてくれた。
良く分からんけど、多分すげえ高いソファなんだろうな。
「さて、わざわざ密入国までして私に会いに来てくれた事は光栄の極みだが、理由を教えてもらえるかね?」
「フィアの事だ」
「彼女が何か? もしかして君のタイプではなかったのかね?」
「ふざけんなよ。なんでフィアにあんなひどい事をした!」
「ひどい? この任務は彼女が自ら志願したのだよ?」
悪びれもなくレオンが言い切った。
「白々しい! お前がライルをハメてフィアに無理やりこの任務をさせているのは分かっているんだよ!」
薄ら笑いを浮かべていたレオンの表情が微妙に強張った。
「……なるほど。破壊力だけではなく情報収集能力も桁違いという事か。これは由々しき問題だな」
「今すぐライルを釈放して、フィアの任務を解け」
「嫌だと言ったら?」
再びレオンが薄ら笑いを浮かべる。
確かにオリバーの言っていた通り、こいつむかつく。
「なら、まずはこのCIA本部を更地に変えてやる」
「それでも嫌だといったら?」
「だったらうんと言うまでアメリカ中を焼き払ってやる!」
レオンが俺の目をじっと見つめてきた。




