渡米 3
ただの高校生ならどうにもできないが、今の俺は不幸にもただの高校生じゃない。
「結婚は出来ないけど、俺の出来る事はする」
「え?」
驚いた表情を浮かべたフィアを残して、まずは屋上に向かう。
「とりあえずライルの事件について調べてみよう。端末を出してくれ」
目の前に再びモニターとキーボードが現れる。
「ええと、ライル、殺人事件、で検索っと」
検索結果 ゼロ件。
「ダメか。それじゃアメリカ、ライル、ギャングっと」
やはり検索結果はゼロ。
「これっておかしくないか? 13人も殺されたらちょっとぐらいニュースになるはずだろ?
いくらなんでもゼロってのは不自然だよな」
「21世紀のアメリカじゃニュースにならないくらい普通の事なんじゃないの?」
「さすがにそこまで世紀末覇王状態じゃねえよ」
俺はスマホを取り出して、履歴からオリバーにかける。
『もしもし、なにか御用ですか?』
「何度もわりい。フィアの兄貴って何処に住んでいたか分かるか?」
『ええと……テキサス州ダラスですね』
「さんきゅ」
『この見返りは……』
聞き終わる前に通話を切った。
「なあ、ダラスの裁判所とかのデータベースにアクセスできるか?」
「……うーん、無理ね。一般的なネットの回線とは別のネットワーク上にあるみたい」
「どうやったら入り込める?」
「直接行って電線とかに触れば入れるわよ。この時代の技術じゃ無理だけど、私なら余裕ね」
「よし、それじゃ今すぐアメリカに行くぞ!」
「えーめんどくさいわ」
「話は最後まで聞けよ。いいか、俺は変身してアメリカに行く」
「それなら話は別よ!」
午後からの授業を放り出して俺は頼りになる玩具と一緒にアメリカへ向かった。
初めての海外旅行は感慨もなにも生まれる余裕すらなくたった30分くらいで到着した。
光学迷彩で姿を隠していたので誰にも気付かれずにアメリカに入国できたようだ。
しかし、パスポートも作らずに渡米するなんて夢にも思っていなかったぜ。
「早速調べるか。この裁判所に繋がっている電線に触れたらいいんだな?」
「そうよ」
ちょっと怖かったけど思い切って電線を掴む。
当たり前だがビリっとはこなかった。
「データベースにアクセス完了。ライル、ライルっと。あったわ。…………なんか変ね」
「なにが変なんだ?」
「裁判記録がほとんど残っていないの」
「CIAの指示で消されたのかな?」
「他にもおかしい所があるわ」
「?」
「ライルの裁判が行われた日なんだけど、どの裁判の日も他の裁判で部屋は全部埋まっているの」
「キャパ以上の裁判が行われたって事か?」
「廊下で裁判を行う風習がない限り不可能よ」
「どうにも怪しくなってきたな」
「これ以上の情報は此処には無いようね」
「これはCIA長官って奴に話を聞く必要がありそうだな」
オリバーに連絡してみよう。
「って、変身状態じゃスマホ取れないな。つーか、俺のスマホ海外で使えたっけ?」
「私が繋いであげる」
耳元で呼び出し音が鳴り始めた。
『もしもし。……なにか御用ですか?』
さすがにオリバーの機嫌がちょっと悪い気がする。
「長官、ええとレオン・ダレスだっけ? 今どこにいるか分かるか?」
『おそらくCIA本部じゃないですかね』
「どこにある?」
『ヴァージニア州マクレーンです』
「わかった」
『長官の居所を知ってどうするんです?』
「いや、ちょっと話を聞くだけだ」
『嫌な奴ですよ。むかついたら殺してください』
「お前のところのボスだろ? そんな事いっていいのか?」
『上のポストが空くのは大歓迎でーす』
「オリバーがそう言っていたと伝えておくよ」
『ちょ! 今のはアメリカンジョー……』
最高のタイミングで通話が切れた。
こいつ人の嫌がる事に関してやたらフットワークがいいんだよな。
絶対に悪側の機械だと思う。




