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渡米 1

 次の日の昼休み。

 俺は前日の悲劇を繰り返さないため授業が終わった瞬間に教室を抜け出した。


「ふう。とりあえず購買でパンも無事買えたし、屋上で食うか」


 すっかりなじみになった屋上へと向かう。

 ドアを開けようとした時、誰かの話し声が聞こえた。


「……申し訳ありません。未だに荒川裕樹との結婚には至っていません」


 この声……フィアか。


 声の感じからして誰かと通話しているようだ。


「……いえそんな事は……待ってください! 必ず、必ず任務は果たしますから!」


 いつものフィアと違ってなんだか、かなり追い詰められた必死な声だ。

 声を掛ける雰囲気じゃなかったので、俺は屋上を諦め、校庭のベンチで昼飯を食う事にした。


「ふう。食った食った」


 腹も一杯になったし、とりあえずすることも無かったのでそのまま空を見上げてぼーっとしていると、

「あ、こんな所にいた! ちょっと来て!」


「フィア!? 飯なら食ったからもう入らないぞ?」

「いいから来て!」


 そう言うとフィアは俺の腕を掴んで強引に校舎に連れて行った。


「入って」

「? ここ保健室だよな。怪我でもしたのか?」


「いいから!」


 フィアに押し込まれる形で保健室に入る。

 どうやら保健の先生はいないらしく、今ここにいるのは俺たち二人だけのようだ。

「こっち」


 言われるままにベッドの傍まで移動する。


「なあ、一体何なんだよ? って!」


 フィアがいきなり俺をベッドに押し倒して馬乗りになってきた。


「ちょ! え?」

「何も言わずに私を抱きなさい!」


「はあああ? お前なに言ってるのか分かってるのか?」

「分かってるわよ! とにかくこれで既成事実を作るの」


 そう言ってフィアが俺に抱きついてきた。

 やわらかい女の子の感触と共に、小刻みな震えが俺に伝わってくる。


 明らかに無理をしている。

 俺はフィアの肩に手を伸ばす。


 俺の手が触れた瞬間、フィアの体がびくっと跳ねる。

 そしてそのままぐいっとフィアを引き剥がした。


「え?」

「……お前、震えてるじゃねえか。何でそんな無理をするんだよ」


「そんな事あんたに関係ないでしょ! とにかく私には時間がないの!」

「どういう事だよ? ちゃんと説明してくれ」


「……もういい!」


 そう言い残してフィアは保健室から飛び出していってしまった。


「なんかいつもと様子が違ったな」

「そうね」


「やっぱりさっき屋上でしていた通話が原因かな?」

「そうかもね。それよりあんた意気地がないわねえ。据え膳食わねば男の恥って知らないの?」


「食ったら人として終わりな飯もあるんだよ」

「ご立派な事」


「うるせえ。しかしなんだか面白くねえ話だな。フィアの言っていた時間がないってのが気になる」

「本人に聞けばいいじゃない」


「聞ける雰囲気じゃねえよ。……こうなったらオリバーに聞くしかないか。でもアイツの連絡先しらねえんだよな」


 今の状況でフィアに聞いても教えてくれなそうだし。


「ネットで調べてみたら? 端末だすわよ」

 空中にモニターとキーボードが現れた。


「腐ってもCIAだぜ? そんな情報ネットに晒さないと思うんだけどな」


 まあ、ダメ元でやってみるか。


「ええと、『CIA オリバー』これで検索っと」


 検索結果が瞬時に表示される。


『CIA日本支部オリバーの奮闘日記』


 いきなり見つかった。


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